転載元:キモオタ「ティンカーベル殿!おとぎ話の世界に行きますぞwww」七冊目

1: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/06/21(日)22:25:41 ID:67O

現実世界 キモオタの住む町の隣町
ピッツァ食べ放題の店

ウェイトレス「お待たせしました!シーフードピッツァとベーコンポテトピッツァです!」ニコニコ

コトッ

ウェイトレス「では時間内は食べ放題ですので御注文の際はそちらのベルでお知らせください。調理に少々お時間いただきますので追加の場合はお早めにお呼びください。ではごゆっくりどうぞー」ニコニコ

キモオタ「…どうも」

スタスタスタ

キモオタ「ちょwwwこれはうまそうでござるなwww正直なところ食べ放題でござるからある程度のクオリティの低さは覚悟してたでござるが取り越し苦労ですなwwwこれは久々に良い店に巡り合えましたぞwww」コポォ

ティンカーベル「ベーコンもチーズもたっぷりだね!キモオタ!早く早く!そのベーコンが一番たくさん乗ってるとこ取って!」ワクワク

キモオタ「落ち着くですぞwww本当にベーコン大好きでござるなwwwこれでいいですかなwww」ドゥフコポォ

ティンカーベル「ありがと!もぐもぐ…んーっ、おいしいね!でもいいのかなー?私達なんだか四ヶ月くらいなんにもしてなかった様な気がするんだよね、なのにこんなに幸せでいいのかなー」モグモグニコニコ

キモオタ「なんwwwwでwww四ヶ月www我々はつい先日ラプンツェル殿の世界から戻って来たばかりでござろうwww当然の休息でござるよwww」ムシャムシャ

キモオタ「次の月曜日は祝日で今日は土曜日、三連休初日ですからなwww今日はゆっくり休む計画でござろうwww明日には【シンデレラ】の世界の魔法使い殿の所へ行かねばならんですからな、我々もちゃんと頑張ってるではござらんかwww」

ティンカーベル「うんうん、そうだよね!なんか赤ずきんと赤鬼だけずっと頑張ってた気がしてたけど気のせいだね!私達、おとぎ話の世界救うの頑張ってるもんね!」モグモグ

キモオタ「そうですぞwwwつまりこの食べ放題は自分へのご褒美ですぞwww」ドゥフフガツガツ

ティンカーベル「よーし!明日から食べる量少なくするって事にして、今日はたくさん食べるよー!」ニコニコモグモグ




2: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/06/21(日)22:28:44 ID:67O


過去スレ
シンデレラ編 裸の王様編
キモオタ「我輩がおとぎ話の世界に行くですとwww」ティンカーベル「そう」
http://minnanohimatubushi.2chblog.jp/archives/1910272.html

泣いた赤鬼編
キモオタ「ティンカーベル殿!おとぎ話の世界に行きますぞwww」二冊目
http://minnanohimatubushi.2chblog.jp/archives/1912967.html

マッチ売りの少女編
キモオタ「ティンカーベル殿!おとぎ話の世界に行きますぞwww」三冊目
http://minnanohimatubushi.2chblog.jp/archives/1915009.html

桃太郎編
キモオタ「ティンカーベル殿!おとぎ話の世界に行きますぞwww」四冊目
http://minnanohimatubushi.2chblog.jp/archives/1917458.html

ラプンツェルとアラビアンナイト編
キモオタ「ティンカーベル殿!おとぎ話の世界に行きますぞwww」五冊目
http://minnanohimatubushi.2chblog.jp/archives/1920415.html

人魚姫編
キモオタ「ティンカーベル殿!おとぎ話の世界に行きますぞwww」六冊目
http://minnanohimatubushi.2chblog.jp/archives/1932482.html

これまでのあらすじ
キモオタは現実世界に住む人間だよ
ある日、私妖精のティンカーベルと出会い、おとぎ話の消滅を防ぐために様々なおとぎ話の世界を旅してるの!
詳しくは過去スレを読んでね!







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2: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/06/21(日)22:28:44 ID:67O


過去スレ
シンデレラ編 裸の王様編
キモオタ「我輩がおとぎ話の世界に行くですとwww」ティンカーベル「そう」
http://minnanohimatubushi.2chblog.jp/archives/1910272.html

泣いた赤鬼編
キモオタ「ティンカーベル殿!おとぎ話の世界に行きますぞwww」二冊目
http://minnanohimatubushi.2chblog.jp/archives/1912967.html

マッチ売りの少女編
キモオタ「ティンカーベル殿!おとぎ話の世界に行きますぞwww」三冊目
http://minnanohimatubushi.2chblog.jp/archives/1915009.html

桃太郎編
キモオタ「ティンカーベル殿!おとぎ話の世界に行きますぞwww」四冊目
http://minnanohimatubushi.2chblog.jp/archives/1917458.html

ラプンツェルとアラビアンナイト編
キモオタ「ティンカーベル殿!おとぎ話の世界に行きますぞwww」五冊目
http://minnanohimatubushi.2chblog.jp/archives/1920415.html

人魚姫編
キモオタ「ティンカーベル殿!おとぎ話の世界に行きますぞwww」六冊目
http://minnanohimatubushi.2chblog.jp/archives/1932482.html

これまでのあらすじ
キモオタは現実世界に住む人間だよ
ある日、私妖精のティンカーベルと出会い、おとぎ話の消滅を防ぐために様々なおとぎ話の世界を旅してるの!
詳しくは過去スレを読んでね!




4: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/06/21(日)22:33:07 ID:67O

ティンカーベル「そういえばさ、魔法使いからはおはなしウォッチに連絡があったんだよね?なんて言ってた?魔法具出来たってことかな?」モグモグ

キモオタ「そのようですなwww我輩とティンカーベル殿の武器が完成したから調整に来なさい。とのことでしたなwww」モシャモシャ

ティンカーベル「私とキモオタはドロシーやアリスと違って戦う手段がないから、これから激化する戦いに備えて魔法の武器を【シンデレラ】の世界の魔法使いにお願いしてたんだもんね!
キモオタはサイリウムをイメージした魔法具、私はスリングショット!魔法の素材を使っていろんな効果がでる弾をお願いしたんだったよね!」

キモオタ「ちょwww説明乙wwwしかし、これで戦いを有利に進められますぞwww」コポォムシャムシャ

ティンカーベル「これで私もジャム持って飛び回らなくたっていいんだね!」ニコニコムシャムシャ

キモオタ「ですなwww我輩は正直魔法を使う事が出来るとかで内心テンションあがってるでござるよwwwワクテカが止まらないwww」コポォ

ティンカーベル「うんうん!楽しみすぎるよね!」ニコニコパクパク

キモオタ「まぁ我輩はすでにある意味では魔法使いでござるがwww」ドゥフコポォ

ティンカーベル「そういえばさ、ピザお腹いっぱい食べたらどこか行くんだっけ?いつもの図書館にも本を返しに行かなきゃいけないよね?」モグモグ

キモオタ「そうですぞwww図書館にも寄らねばなりませんな、明日の朝食の買い物もせねばなりませんしなwwwしかしせっかくの休みでござるからちょっとショッピングとしゃれこみますぞwww」ガツガツ

ティンカーベル「わかった!ジャスコだ!ジャスコいくんでしょ!ジャスコなら本屋さんもあるし朝ごはんも買えるしゲームもできるもんね!」モグモグ

キモオタ「ドゥフwwwティンカーベル殿はジャスコがお気に入りですなwww」コポォ

ティンカーベル「大好き!デパ地下も好きだよ!私の事見える人ほとんどいないから試食とか食べ放題なんだよね、いいでしょ!」フンス

キモオタ「いや我輩は普通に食いますからなwwwまぁもちろんジャスコにも行くのでござるがwwwこの辺りで良い店を見つけた故、食べ終わったらいくでござるよwww」

ティンカーベル「へー?何のお店なの?アニメイト?」モグモグ

キモオタ「我輩がアニメ関連の店にばかり行くと思ってますなwww違いますぞwwwなんならクイズにするでござる、当ててみるでござるよwww」コポォ




5: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/06/21(日)22:34:43 ID:67O

ティンカーベル「アニメイト以外だと何だろう…わかんないからとりあえず次のピザ頼もうよ!私ね、ベーコンとほうれん草のピザが良い!」モグモグ

キモオタ「もうベーコンだけかじっていた方が早いのではないですかなwwwまぁ了解しましたがwwwポチッとなwww」

ピンポーン

ウェイトレス「はーい、ご注文お伺いします」ニコニコ

キモオタ「えっと、このベーコンとほうれん草の…ピザをひとつと。明太子の和風ピザをひとつ。とりあえず以上でいいです」

ウェイトレス「かしこまりました!ではしばらくお待ちくださいー」ニコニコ

ティンカーベル(キモオタ、私と一緒にいろんなおとぎ話を旅してちょっと変わってきてるみたい)

ティンカーベル(前はお店に行っても店員さんと話さずにメニュー指さして注文してたから、それを考えると成長してるよね!おとぎ話の世界では聞き込みとかするから慣れてきたのかな?だったら嬉しいな!)

ティンカーベル(キモオタはキモイけど……ううん、ちょっぴりだけキモイけど本当は優しくていい人だもん!だから話すの苦手なだけで変な誤解されてたら勿体無いもん!これでキモオタにも現実世界の友達ができたりしたらいいなー)ニコニコ

キモオタ「何をニヤニヤしているでござるかなwww」コポォ

ティンカーベル「ううん、なんでもない!でさでさ、これから行くお店って何なの?もう降参するから教えてよー!」

キモオタ「あきらめが早いですぞwww実はでござるな、ドールショップでござるよwww」

ティンカーベル「もしかして……!ドールショップならちっちゃい服とかたくさん売ってるし、私の服とか小物とか買ってくれるの!?」ワクワク

キモオタ「御名答www武器入手記念としてティンカーベル殿の洋服を新調しようと思いましてなwww」

・・・




6: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/06/21(日)22:37:00 ID:67O

食事の後 ドールショップ

ティンカーベル「すごい…!トイザらスやジャスコより本格的だよ!」

ズラーッ

ティンカーベル「右見ても左見てもかわいい洋服がたくさんある!ヒラヒラしたやつとかボーイッシュな奴とか!たくさんあるよ!」ヒラヒラ

キモオタ「専門店ですからなwwwさっきのピザ屋への道を調べている途中でヒットしましてなwww前回の旅では妖精の粉も使ってくれましたからな、日ごろの感謝の意味も込めてプレゼントしますぞwww」

ティンカーベル「やった!やっぱりキモオタはキモイけど優しいね!」ニコニコ

キモオタ「キwwwモwwwイwwwけどwww一言余計ですぞwww」コポォ

ティンカーベル「でもさ、土曜日なのに人が全然いないね?こんなに可愛い洋服がいっぱいあるのに!」

キモオタ「言われてみればそうでござるな、雰囲気は悪くないでござるのに」

ティンカーベル「しかたないから十着くらい買って売り上げに貢献しよ?」

キモオタ「ちょwww出来れば二、三着にしていただきたいwwwしかし、確かにちょっと不安になるくらいお客が居ませんな…」

店主「はっはっは、不安がらないで良いですよ。この時間はいつもこうなんですよ、うちはネット通販がメインですからね」ハハッ

キモオタ「ファッ!?ち、違…今のはそういう意味では無くて…」

店主「はっはっは、いいんですよ。まぁそう緊張なさらず、うちはお客さんのような男性の方も多くいらっしゃいますから。何かお探しで?」

キモオタ「えっと妖精の…いや、人形の服を探しに。これくらいの大きさなんでござ…なんですけど」ススッ

店主「ええっと、そのサイズでしたら…この辺りの洋服が丁度良いサイズですね。いろいろと取り揃えてますからごゆっくりご覧になってください」ハハハ




7: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/06/21(日)22:38:23 ID:67O

一時間後

ティンカーベル「むぅ…たまにはいつもと違う感じの洋服にしようかな?真っ赤なハデハデーの奴とか、お姉さんっぽい奴とか…それとかビジュアル系のとか!」

ティンカーベル「うーんでも、消えちゃってるっていっても私は【ピーターパン】のティンカーベルなわけだからイメージってものもあるしなぁー…あんまり派手派手だとなぁ…」

ティンカーベル「となるといつもの感じかぁ…森ガール…森ガールかぁ…それも面白くないなぁ…」ブツブツ

キモオタ「まだですかなwwwもう一時間は悩んでますぞwwwそんな心配しなくてもティンカーベル殿何でも似合うでござるよwww」

ティンカーベル「もー、急かさないでよー!女の子の服選びは覚悟と度胸が必要なの!キモオタみたいにパパッと選べるもんじゃないんだからね!」プンスカ

キモオタ「我輩はユニクロで二分ですからなwwwでは我輩は店の中ぶらぶらしてるでござるからゆっくり見ると良いですぞwww」コポォ

ティンカーベル「わかった!五着までだよね?」

キモオタ「何増やしてるんでござるかwww三着までですぞwwwそれ以上になると明日からの食卓が煮干しになりますぞwww」

ティンカーベル「煮干しかぁ……じゃあ三着にしとく!決まったら呼ぶね!」ニコニコ

・・・

キモオタ「ショーケースにはドールが並べられておりますな…しかし外見は可愛いのでござるがお値段は可愛くないでござるなぁwww」コポォ

キモオタ「衣装のチョイスと良いポージングといい、思わず欲しくなってしまうレベルの展示でござるなwww店主殿のセンスが良いのでござろうwww」

キモオタ「ティンカーベル殿もこういうのを見て参考にすればいいのではなかろうかwww」

店主「ティンカーベルというのはお客さんのドールの名前ですか?」

キモオタ「ファッ!?あなたはさっきの…」

店主「僕はこの店の店主です。いやはやセンスが良いなどと言ってくださって嬉しいですよ」ハハハ




8: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/06/21(日)22:39:56 ID:67O

キモオタ「いや、でも確かに…センスを感じるディスプレイです…よ」

店主「お世辞でも嬉しいですよ、折角飾ってもあまり店舗にはお客様がいらっしゃいませんからね。万人向けする趣味ではないですし、始めるにしても決して安い買い物ではありませんから」ハハハ

キモオタ「いやぁ…ははっ……確かに…で、でも立派なお店を持っていてすごいでござ…すごいですよ」

店主「ははっ、ありがとうございます。でも、店舗の方はもう畳もうかと思ってるんですよ。折角脱サラして始めたんですけど……」

キモオタ「…そうなんですか?」

店主「ええ、売り上げはまぁ…通販の方で取れてるんで赤字ってほどでは無いんですけどね。店舗に来て下さるお客様は少ない、だったら店舗を売り払って通販一本に絞ろうと思ってまして」

キモオタ「あんなに可愛くドールを着飾れる才能があるのに勿体無いですな…」

店主「実際に見て楽しんで欲しいという気持ちもありますから僕も残念なんですけどね。資金繰りが立ち行かなくなって経営できなくなれば意味がないですから」ハハッ

キモオタ「それは…そうですけど…」

店主「いやー、憧れて始めてはみたものの現実はそうそううまくいかないというか…」ハハッ

キモオタ「……」

店主「ああ、なんだか湿っぽい話につき合わせてしまいましたね。失礼しました、ごゆっくりご覧くださいね」ハハハ

ティンカーベル「キモオター!決まったよー!ふりふりのついたこのゆるふわ系の奴とねー、ちょっと派手なカジュアルな奴とねー、あと夏らしい奴!季節を先取りだよ!」ピュー

キモオタ「では早速会計しますかな…とその前にティンカーベル殿、もう一着だけなら選んでいいですぞ」

ティンカーベル「本当!?明日からご飯煮干しになんない?」パァー

キモオタ「大丈夫ですぞwww少し店主殿に感情移入してしまいましてなwww売り上げに貢献しようと思ったのでござるよwww」

ティンカーベル「わかった!じゃあすぐに取ってくるね、丁度悩んでたやつがあったんだよね!」ホクホク




9: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/06/21(日)22:42:15 ID:67O

店主「はい、ではお待たせしました。こちら商品です、チラシ入れておいたので…良かったらサイトの方覗いてやってください」スッ

キモオタ「あっ、どうも……」

店主「ではお気をつけて。ありがとうございましたー」

カランカラーン

ティンカーベル「折角良いお店見つけたのに無くなっちゃうんだー……残念だね」

キモオタ「まぁ仕方ないでござるよ……さて、図書館へ行きますぞwwwここで湿っぽくなっても仕方がないのでwww」

ティンカーベル「わかった!あーでも…図書館と言えば…あの司書のお姉さん……信用していいのかな……」ムムム

キモオタ「どうかしましたかなwww司書殿に何かあるんですかなwww」コポォ

ティンカーベル「……まぁ、いいや、とりあえず行こうよ!そっからどうするか考えるから!」

・・・

店主「……なんだか、妙に独り言が多いお客さんだったなぁ」ハハハ

店主「あんな風に言われてしまうと店畳むのも考え直そうかなってなるけど、そうもいかないしなぁ……資金繰り、どうするかな…」

カランカラーン

小柄な男「……」

店主「いらっしゃいませ、ごゆっくりご覧くださーい」ハハッ

小柄な男「……困っているみたいだな?店を畳むとか、資金繰りがどうのと……」

店主「お聞きでしたか…いやはや、大丈夫ですお気になさらず」ハハッ

小柄な男「俺が与えてやろう」



小柄な男「お前に……抱えきれないほどの黄金を」




10: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/06/21(日)22:45:19 ID:67O

店主「…運営資金を援助してくださると?いえいえ、どなたか存じませんが、見ず知らずの方にそこまでしていただくわけにも……」

小柄な男「遠慮などするな、これは善意なんかじゃあない。俺と契約を結べという話をしているんだ、まぁ見ておけ……」スッ

店主「藁の束…?あんなものを一体どうするつもりで……」

小柄な男「変われ変われ藁の束…!両手でも掬いきれない黄金へと姿を変えろ……!」ググッ

ジャラジャラ・・・ジャラジャラジャラー!!

店主「ゆ、床じゅうに黄金が…!さっきまでただの藁の束だったというのに!?」

小柄な男「糸車で紡げればもっと効率が良いんだが…まぁ良い。この黄金は全てお前にやる、店の運営資金としては十分だろう……ただその代償としてお前の心臓を貰い受ける」

店主「し、心臓!?あんた何を言ってるんだ!?」ガタッ

小柄な男「黄金の代償だ。お前からは微弱だが魔力の匂いがする…チマチマ魔力集めなんざ俺らしくないが、どうやらこの現実世界では魔力の存在自体が希少なようだから仕方ない。俺の居たおとぎ話じゃあ魔力も珍しくなかったがな」

店主「ま、魔力?おとぎ話?い、いい加減にしてくれ…あんたさっきから何を……」

小柄な男「決断しろ、待つのは嫌いじゃないがぐだぐだ長引くのは好きじゃねぇ。ゴミみたいな魔力だが、俺はお前の魔力が欲しい。その為には心臓を食うのが手っ取り早い」

店主「そ、そんなもの渡せるわけ無いだろう!死んでしまう…!」

小柄な男「とはいえ俺はもう黄金を貴様に譲渡した。俺の黄金とお前の何かを交換するという契約、今更反故になどできるものか。これはただの口約束じゃあねぇんだぞ」

店主「そ、そんな契約した覚え…一方的すぎる…!」

小柄な男「そうか、心臓は渡せねぇってか…ならひとつチャンスをやろう、俺が出す問題に答えられたら心臓はいらねぇ、しかも黄金はお前のものだ」

店主「も、問題…?一体何を答えさせるつもりだ…?」

小柄な男「なに、他愛もない事だ。お前はひとつだけ…ちょっとしたクイズに答えればいい。正解できれば黄金、答えられねぇなら心臓は諦めろ。さぁ、答えてもらうぞ、お前に問題だ」




小柄な男「この俺の名前を当ててみせろ、当てられたら心臓は勘弁してやる」




11: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/06/21(日)22:48:36 ID:67O

現実世界 キモオタの住む町 図書館

ティンカーベル「ねぇ、キモオタ。今日返す絵本って、前に来た時に借りて帰ったあれだよね?」

キモオタ「そうですな…【不思議の国のアリス】、アリス殿のおとぎ話でござる」

ティンカーベル「一緒に読んだもんね、アリスを倒すためのヒントになるかもしれないって」

キモオタ「そうでござるな、以前アリスどのが使っていた体の起きさが変わるキノコ…フラミンゴとハリネズミのクロッケー、トランプの兵士、そしてゴーテル殿に使ったと思われるコショウ……全て物語に登場してきましたからな」

ティンカーベル「ひとつのおとぎ話にたくさんの魔法具が出てきて、それをきっとアリスは自由に使えるんだよ。なんかずるいよね!私なんか妖精の粉と自分のものづくりの能力だけなのに!」プンスカ

キモオタ「そこは怒っても仕方ないでござるwwwそれよりも物語の中では所有していないトランプ兵をアリス殿が自在に操っているという事は、他の登場人物を支配している可能性が高いですからなー……あるいはアリス殿に協力しているという考え方が自然でござろう」

ティンカーベル「アリスが一人で悪い事しようって考えてるんじゃなくて、物語全体がアリスに協力してるってことなのかな?」

キモオタ「そうでしょうな、憶測でござるけど。読んだ限りではトランプ兵士の本来の主は普通にアリス殿に協力するような人物には見えませんでしたからな」

ティンカーベル「アリスじゃなくて【不思議の国のアリス】をまるごと相手にするってなると…大変すぎるよ、それにあいつには他の世界から奪った魔法具だってあるし、ドロシー達もいるもんね」

キモオタ「ですな、それに【不思議の国のアリス】の魔法具を全部使っているとは限りませんしな…隠し玉があると考えるのが当然でござろう」

ティンカーベル「うーん…ねぇねぇ、今日はドロシーのおとぎ話借りて帰ろうよ!あいつの弱点も知りたいしさ」

キモオタ「それがですな…我輩もそのつもりで昨日ググッてみたんでござるが…『ドロシー おとぎ話』ではヒットしなかったでござるよ」

ティンカーベル「現実世界には存在しないってことは……もうドロシーのおとぎ話は消えちゃってるってことかー……」

キモオタ「少しでも彼女らの情報を得られればよかったのでござるがなぁ……」



ロリ「……」




12: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/06/21(日)22:50:18 ID:67O

ティンカーベル「【不思議の国のアリス】はさ、ちょっとおかしな不思議の国をアリスが冒険するおとぎ話でしょ?それにきっと私達よりもいろんなおとぎ話に行ってるし、やっぱ私達とは経験の差があるのかなー?」

キモオタ「経験の差も、装備の差もあるでしょうな…なにしろ不思議すぎる世界をあれだけ冒険しているのですからな、度胸も経験も上でしょうな」

ティンカーベル「うん、それに……悔しいけど、【不思議の国のアリス】はおもしろいおとぎ話だったよね」

キモオタ「ですな、読む分には面白かったでござるけど……あんな世界とその住人を丸ごと相手にするとなると恐ろしいですな。場所も登場人物も狂っている部分が目立つ世界ですからな」

ティンカーベル「……駄目だー!なんだかアリスの弱点探そうと思って絵本読んだのに【不思議の国のアリス】の世界が敵になるとまずいって事に目が行っちゃうよー!」

キモオタ「切り替えねばいけませんなwwwどちらにしろ我々はアリス殿との衝突を避けられませんからなwww」

ティンカーベル「そうだね、頑張ってあいつらの悪だくみを……あれ?」

ロリ「……」ジーッ

ティンカーベル「なんかあの娘こっち見てる…キモオタが珍しいのかな?大人なのに絵本のとこに居るから」

キモオタ「ちょwww否定できないwwwいや、我輩を見ているというよりあの少女殿にはティンカーベル殿が見えているのではwww」

ティンカーベル「そうかも……こんにちわ!私、ティンカーベルだよ!ティンクって呼んでね!こっちはキモオタだよ」ヒラヒラ

ロリ「……」トコトコトコ

コトッ

ロリ「……あげる」ボソボソ

ティンカーベル「キャンディだ!キモオタ、キャンディ貰ったよ!」ヒラヒラ

キモオタ「やはりティンカーベルの事が見えているようですなwww」

ロリ「二人とも……なんだか、ちょっとだけ……元気なさそうに見えたよ……お菓子は元気がでるおくすりだから……あげる」ボソボソ




13: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/06/21(日)22:52:17 ID:67O

ロリ「でも…ここで食べちゃ……ダメだよ……?ここの本は……お菓子食べながら読んじゃダメなんだって……」ボソボソ

キモオタ「図書館内は飲食禁止ですからなwwwしかし、飴ならよさそうなもんでござるけどwww」

ロリ「ダメだよ……?ここでお菓子食べたら……すごく、叱られる……やっちゃいけない事……なんだよ?」ボソボソ

ティンカーベル「わかった!図書館の外で食べるね!」

ロリ「それに……私がキモオタお兄ちゃんやティンクにお菓子あげた事……内緒だよ……?」ボソボソ

キモオタ「内緒とはwww誰にですかなwww」

ロリ「ヘンゼルお兄ちゃん……私のお兄ちゃん……。ヘンゼルお兄ちゃんは……きっと、私と二人が一緒にいるの……嫌がると思うんだ……」ボソボソ

ティンカーベル「……?知らない人と仲良くしちゃいけないって言われてるの?」

ロリ「うん、知らない人は……やさしそうに見えても笑顔の人でも……魔女かもしれないって……。ここには……かまどもないから……知らない人と仲良くなって……その人が魔女だったら、今度こそ……危ないの」

キモオタ「ちょwww魔女ってwww良くわからんでござるけど、随分と過保護なお兄さんですなwww」コポォ

ロリ「ヘンゼルお兄ちゃんは……二人が……私を怖いことに巻き込むために……近づいたんだって、思うよ……きっと……」ボソボソ

キモオタ「過保護の様な気もするでござるが確かに近頃は物騒ですからな。それに我々は赤ずきん殿やシンデレラ殿のような海外の友人が多いでござるからマヒしていたでござるが、少女殿は西洋出身の様でござるし……」

ティンク「髪の色も瞳の色も違うと目立つもんね、この辺りじゃ外国の女の子ってあんまりいないから。悪い人に目をつけられるかもって思っちゃうお兄さんの気持ちわかるかも!」

キモオタ「考えてみれば当然の警戒かも知れませんなwww」

ティンカーベル「でもでも、折角知りあったんだから仲良くしたいな!ねぇ、あなたの名前は何?私に教えて欲しいな!」ニコニコ

グレーテル「……私は……グレーテル……グレーテルって名前……なの」ボソボソ




14: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/06/21(日)22:53:30 ID:67O

キモオタ「グレーテル殿ですなwww我々は悪い輩では無いので安心していただきたいwwwと兄上に伝えていただきたいところでござるwww」コポォ

ティンカーベル「グレーテルってさ!もしかしてお菓子好き?私達にくれるほどキャンディ持ってるんだもんね?」

グレーテル「……うん、お菓子大好き……ヘンゼルお兄ちゃんも……他の家族の事も大好き……。でも……魔女は嫌い、大嫌い……ザリガニも……嫌い……」ボソボソ

キモオタ「ちょwwwなんでwwwザリガニwww」コポォ

ティンカーベル「だってザリガニって生臭いし……ザリガニ好きな女の子なんていないよ!キモオタはなんかお腹すいてたらザリガニでも食べそうだけど」ケラケラ

キモオタ「ちょwww食べるわけが……いや、濃い味付けにしたらいけるやもしれませんな……意外とエビチリ的な味付けなら……」

ティンカーベル「えっ…」ヒキ

キモオタ「いやいやwww冗談でござるよwww流石によほどの事が無ければ食べませんぞwww」コポォ

ティンカーベル「よほどの事があったら食べるんだ……」ヒキヒキ

グレーテル「やめたほうが……いいよ……ザリガニの殻……おいしくない……戻しちゃいそうになるよ……」ボソボソ

キモオタ「ドゥフwwwもうザリガニの話題はやめにするですぞwww我輩の評価が不当に下がりそうですからなwww」コポォ

グレーテル「……二人は……ヘンゼルお兄ちゃんが警戒してるほど……悪い人じゃなさそうに……みえるね……」ボソボソ

キモオタ「何か言いましたかなwwwちょっと聞こえなかったでござるwww」

グレーテル「二人は……悪い人じゃないみたいだから……注意して……あげる……私と約束……しよ?」ボソボソ

ティンカーベル「なになに?なにか気をつけた方がいい事とかあるの?」



グレーテル「うん……お姉ちゃんには……近づかないで……絶対……約束」ボソボソ




15: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/06/21(日)22:55:45 ID:67O

キモオタ「お姉ちゃん……?グレーテル殿には姉上もいるのですかな?www」

グレーテル「いるよ……おち……ううん、ここだと私達のお姉ちゃん……私とヘンゼルお兄ちゃんのお姉ちゃん……」ボソボソ

ティンカーベル「ここだとってどーゆうこと……?本当のお姉ちゃんじゃないのかな?近所のお姉さんみたいな感じ?」

キモオタ「どちらにせよ近づかないでというのはwwwどういうことですかなwww」コポォ

グレーテル「私も……ヘンゼルお兄ちゃんも……お姉ちゃんの事が大好き……だから、お姉ちゃんに近づく人……どんな人かちゃんと見てる……」ボソボソ

グレーテル「だから……もしも、キモオタお兄ちゃんやティンクが……お姉ちゃんを不幸にしたり……泣かせたりしたら……それは……許せない……」ボソボソ

グレーテル「今の私は……二人のこと、好きでも嫌いでもないけど……もし、お姉ちゃんを泣かせちゃったら……辛い思いさせちゃったら……」ボソボソ

グレーテル「かまど、無くても……燃やす……最初っから……なんにも無かったように……燃やしちゃう……」ブツブツ

ティンカーベル「どうしよキモオタ……なんかグレーテル怖い感じなんだけど……」ヒソヒソ

キモオタ「ヤンデレというかwwwなんというかwwwとりあえず姉上も兄上も大好きな妹だというのはわかりましたがなwwwヤンデレ妹www」コポォ

グレーテル「……それにヘンゼルお兄ちゃんは……言ってた。お姉ちゃんが可愛いからって……近づく男の人は……本当は狼だって……魔女より悪い奴だって……だから……」ボソボソ

グレーテル「そういう……悪い狼には……ヘンゼルお兄ちゃん容赦しないって言ってた……お兄ちゃんがそういう気持ちなら……私も……燃やすよ……悪い奴は魔女でも狼でも……」ボソボソ

ティンカーベル「ま、まぁまぁ!大丈夫だよ!私達はそんな事しないから!ねっ?キモオタも女の人に話しかける度胸とか無いから大丈夫だよ、安心してね!」ニコニコ

キモオタ「ティンカーベル殿のwww暴言にwww反論wwwできwwwないwww」ドゥフコポォ

少年の声「……グレーテルー?どこにいるんだい?」ヒソヒソ

グレーテル「……ヘンゼルお兄ちゃんが……探してる……私のこと……」ボソボソ


グレーテル「いかなきゃ……じゃあね、キモオタお兄ちゃん……ティンク……私との約束……忘れちゃやだよ……?」ボソボソ




16: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/06/21(日)22:57:52 ID:67O


ティンカーベル「なんていうか……ちょっと変わった子だったね。どんなお姉さんなんだろ……でも会う事もないかな?」

キモオタ「そうですなwwwしかし我々含めて我輩の周囲も大概変わり者ぞろいですしなwww人の事を言える立場ではないでござるよwww」

ティンカーベル「まぁ…うん、みんなおとぎ話の主人公だからね、そりゃ変わり者にもなるよ」

キモオタ「確かにwwwさぁ、早いところ返却手続きをすませますかなwww」コポォ

ティンカーベル「そうだったね、そうだけど……今日も受け付けはあの司書のお姉さんだね……」ジーッ

キモオタ「なんなんでござるかwww司書殿に何か気になる事でもあるんですかなwww」

ティンカーベル「あるよ!こないだも言ったでしょ?あの司書のお姉さん私の事見えるんだよ?普通の大人は妖精なんか見えないのに」

キモオタ「と、言われましてもなwww現に今、ティンカーベル殿と話しているのは誰ですかなwww」

ティンカーベル「キモオタが私と話せてる事がもうすでに珍しいことなの!レアケースなの!普通に喋ってるから特別に感じないけど、本当に珍しいんだよ?」

キモオタ「だったら司書殿もそのレアケースだった、でいいではないですかなwww」

ティンカーベル「でも……初めて司書のお姉さんに会った時、読み聞かせの前にさ『妖精が居るから読む絵本を変えた』っていってたじゃん?それでさ、そのことをキモオタが指摘した時、なんて言ったか覚えてる?」

キモオタ「そんなこともありましたなwww確か…『読み聞かせに来てた子供が妖精を見たと言っていたから、妖精が登場する絵本に変えた』でしたかな…?」

ティンカーベル「なんで隠したんだろう……それが気になっちゃうんだよ、私達に気づかれないようにスパイしてるアリス達の仲間かも!」

キモオタ「いやいやwww普通は妖精が見えても他人に言ったりしませんぞwww信じてもらえませんからな、それどころか変な目で見られるwww」

ティンカーベル「うーん……」

キモオタ「考えすぎでござるってwwwさて、手続きしますかなwww司書殿w返却お願いしますぞw」コポォ




17: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/06/21(日)23:00:04 ID:67O

司書「あっ、キモオタさん。返却ですねー……はい、完了です」ニコッ

ティンカーベル「……」ジーッ

司書「うふふ、こんにちわ」ニコッ

ティンカーベル「……」スッ

キモオタ「ちょwwwなんで隠れるでござるかwww」ヒソヒソ

ティンカーベル「やっぱり……なんか気になる」ジーッ

司書「今日は、おとぎ話の絵本借りていかないんですか?」ニコニコ

キモオタ「えっ?あ、まぁ……今日はいいかなとw」

司書「そうですか、そうそう…おとぎ話が好きなキモオタさんに見て欲しいものがあるんですよ。今、○○ホールでこういうイベントしてるみたいなんです」スッ

キモオタ「なんですかな……『世界の童話展』……?」

司書「はい!日本の昔話や世界中のおとぎ話…昔からの物語や最近の児童文学まで、様々な童話が楽しめるらしいんです。それでですね、丁度明後日の祝日…特別なイベントをするんですよ!ここに書いてますよ」

キモオタ「……天才の再来といわれるあの有名童話作家……が来日……サイン会実施……?」

司書「そうなんです!あの有名童話作家の……さんが来日していてですね、サイン会が行われるんです!実は私もこの方の作品のファンで……童話展に行く予定はあったんで、お休みをいただいて祝日に行く予定なんですよ」ニコッ

キモオタ「ほうwそれはいいですなw」

司書「それでですね、もし良かったらなんですけど……」



司書「キモオタさん。明後日の祝日お休みでしたら私と一緒に、この童話展に行きませんか?」ニコッ




18: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/06/21(日)23:01:11 ID:67O

キモオタ「……」

ティンカーベル「ダメだよキモオタ!!こんな可愛い人がキモオタをデートに誘うわけ無いじゃん!絶対に罠だよ!!」キッ

キモオタ「……」

ティンカーベル「キモオタ、聞いてる?デートなら私がどこでもつきあってあげるから!ここはちゃんと断って!」グイグイ

キモオタ(ちょwwwwww我輩にもwwwwwwついにwwwwwwモテ期がwwwwww)ドゥフコポォ

キモオタ(彼女いない歴=年齢であることに疑問を持たず、このまま魔法使いへの道をまっしぐらだと思っておりましたがな……)

キモオタ(おとぎ話の世界を旅したおかげで、おとぎ話に興味を持ったおかげで、まさかモテるとはおもいませんでしたな!!)

キモオタ(今、ここから始まりますぞ……我輩のモテ物語……!)コポォ

ティンカーベル「キモオタ!聞いてんの!?」ゲシゲシッ

キモオタ「司書殿…」フッ

司書「あっ、もしかして他に予定ありますか?急でしたからもし無理でしたら……」

キモオタ「いえ、僕は司書殿の誘いを断るような無粋な男ではないので」キラキラッ

ティンカーベル「……っ!」

キモオタ「そのお誘い……喜んでお受けしますよ」キラキラッ

司書「わっ!ありがとうございます!それでは祝日、楽しみにしておきますね」ニコニコ

・・・




19: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/06/21(日)23:02:45 ID:67O

現実世界 キモオタの部屋

キモオタ「いやはやwwwこれは忙しくなりますぞwww我輩のスマホに女子のアドレスが入る日が来るとはwww」

ティンカーベル「……良かったね、登録件数合計で三つになって。自宅と職場と司書。すごいすごい、多いですねーっ」ムスッ

キモオタ「これはもう確実にデートでござるからwww服を買いに行かなければなりませんなwwwwちょwwwしかしwwwシャレオツな服屋に着ていく服が無いwww」ドゥフコポォ

キモオタ「まずwww明日は【シンデレラ】の魔法使い殿の所に行ってwww帰ってきたら服屋に行きますかなwww」コポォ

キモオタ「おっとwww事前にデート場所の下見をしておくのも紳士のたしなみでござるなwww明日下見に行きますぞティンカーベル殿www出来る男は事前準備を怠らないwww」

ティンカーベル「……手足の爪が全部剥がれちゃえばいいのに」プイッ

キモオタ「おおっとwwwやきもちでござるかなwww焼かない焼かないwww我輩に彼女ができたとしてもティンカーベル殿は我輩の相棒ですぞwww」キラキラッ

ティンカーベル「やきもちなんか焼いてない!それに私が相棒なのは当り前でしょ!」イラァ

キモオタ「何をそんなにイライラしてるんですかなwwwちゃんとお土産買って帰りますのでwwwおそらく、童話展の後にお茶でもとなりますからなwww何かしらテイクアウトしておくでござるよwwwあっ、しかし、あまりに盛り上がって帰りが翌朝になってしまったら申し訳ないwww」

ティンカーベル「ハゲちゃえバーカ!」チッ

キモオタ「どうしたでござるかwwwもうそれ我輩関係無いただの暴言ですぞwwwティンカーベル殿なら一緒に喜んでくれるかと思ったのでござるがwww」

ティンカーベル「そりゃあ、私だってキモオタに恋人ができたら嬉しいけど……なんかキモオタは先走り過ぎだし、私の話聞いてくれないからイライラすんの!」

キモオタ「まだ司書殿を疑ってるのでござるか?www」

ティンカーベル「疑ってるっていうかさ……私達はアリス達に取って邪魔な存在だからあいつらが何してくるかわかんないでしょ?だから何事にも警戒しようよって話だよ」




20: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/06/21(日)23:04:25 ID:67O

ティンカーベル「別にね、司書さんが敵だと思ってるわけじゃないよ?でも、言っちゃ悪いけど…キモオタが女の子に誘われたことなんか一回もないでしょ?」

ティンカーベル「キモオタが嬉しいなら私は良いけどさ……普段と違う事にはなるべく警戒しよ?現実世界だからって油断しちゃダメだよ。
実際、現実世界のキモオタに協力してもらってるのはおとぎ話の世界の私なわけなんだから、アリスが現実世界の人間をたぶらかして利用するなんて……ありそうな話でしょ?」

キモオタ「まぁ、おとぎ話からの刺客……可能性が無いわけではないですからな……」

ティンカーベル「もしも、もしもだよ?これがアリス達の罠だったら…キモオタは傷つくでしょ?それは私は避けたいよ。確かに、ちょっと警戒しすぎちゃったかもだけどさ…浮かれすぎちゃうのはやっぱり駄目だよ」

キモオタ「ふむ……まぁ確かに浮かれ過ぎておりましたな……申し訳ない」

ティンカーベル「…私もちょっと言い過ぎたかも。ハゲって言ってごめんね?キモオタはふさふさだよ?」

キモオタ「知ってますぞwwwまぁ、安心して下されwww油断せぬように務める故www我輩の油断でみんなに心配かけてはいけませんからなwww」

ティンカーベル「うん!そう言うなら信じる!じゃあ気を取り直して夕ご飯にしよう!私、テーブル片づけとく!」ピュー

キモオタ「では我輩は冷凍チャーハンでもチンしますかなwwwと、その前にBGM代わりにテレビでも付けておきますかなwww」

ピッ

「……次のニュースです」


「本日…時頃、○○県××市内のドールショップ店長の店主さんが遺体で発見されました」


ティンカーベル「…キモオタ!これ……!」

キモオタ「なんですと……ティンカーベル殿!音量上げていただきたい!」




21: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/06/21(日)23:05:50 ID:67O

「常連客が店を訪れたところ、店内で血を流して倒れている店主さんを発見」

「店主さんの胸は大きくえぐられており、心臓を持ち出した形跡が見られ……」

ティンカーベル「なんで…さっき元気だったのに!なんであの店主さんが殺されちゃったの!?」

キモオタ「強盗…?いや、しかし心臓をえぐるとは…なんの目的で……」

「犯人の目的は不明ですが、不可解な事に店内には無数の黄金が散らばっており」

「その点からも、レジにも手がつけられていなかったことから強盗ではなく私怨による殺人とみて捜査を……」

ティンカーベル「……黄金が散らばってるって言ってたね」

キモオタ「どういう事ですかな……とても普通の事件には見えませんな……」

キモオタ「えぐられる心臓、散らばる黄金……恨みを買うような人には見えなかったでござるし……」

ティンカーベル「黄金…そんな貴重な物なのに、犯人は見向きもしなかったんだよね」

キモオタ「不可解ですな……店主殿を殺した犯人は許せないでござるが……この事件」



キモオタ「何かの前触れで無ければいいのですがな……」




22: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/06/21(日)23:11:32 ID:67O

今日はここまで
今回もつきあってくれたら嬉しい

新シリーズ!
ヘンゼルとグレーテル、そして司書ちゃんにもスポットあたります
そして小柄な男とは!?

ヘンゼルとグレーテル。とある消滅したおとぎ話編 次回に続きます




23: 名無しさん@おーぷん 2015/06/21(日)23:18:28 ID:nL3

乙!
それにしてもついにキモオタのコミュ力が俺のを上回ってきたなwww




24: 名無しさん@おーぷん 2015/06/21(日)23:19:46 ID:Qx1

おつつー(・∀・)ノ
わくわくするせー!




25: 名無しさん@おーぷん 2015/06/21(日)23:24:31 ID:vaw


店主が普通に死んでビビった




27: 名無しさん@おーぷん 2015/06/21(日)23:31:57 ID:OY6

乙!店主……(´;ω;`)

グレーテルの言ってる事といい、何かぞくってなった……




41: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/06/27(土)23:15:30 ID:t3T


現実世界 某所

小柄な男「ったく、誤算だったな。この現実世界には魔法って概念が実在しねぇとは…」グビグビ

小柄な男「軽く調べてみたがどれもこれも空想だの伝説だのの作り話…それか自称魔法使いのペテン師ばかりときたもんだ」

小柄な男「自然も荒らされ放題で魔力は枯れ果ててるし、どうなってんだこの世界は。魔法使いどころか魔力を持つ人間も少ねぇ、例え持っていても微弱な魔力……嫌になっちまう」フゥー

テレビ『岡村さーん!何してはるんですかー!」』ワハハハハ

小柄な男「だがこの世界の人間どもは魔法が使えないなりに知恵を使っているみたいだな。この映像を映し出す機械は気にいったぞ、退屈しのぎにはもってこいだ」クックック

小柄な男「まぁいい、俺には時間がたっぷりある、焦る事はねぇんだ。ちまちまと魔力を集めて、十分に蓄えられたらこの世界の支配に乗り出すとしようじゃねぇか」


ガチャッ


強面グラサン「……おい、戻ったぜ」

小柄な男「おう、遅かったじゃねぇか。さっさと酒と食い物を寄越せ、心臓一つじゃ酒の肴になりゃしねぇ」

強面グラサン「……テメェの金で買って来たもんだ、好きに食いやがれ」

ドサッ

小柄な男「お前なぁ…それが主人に対する態度か?もう少し従順にしろや、俺はお前の主人なんだからなぁ」

強面グラサン「俺はテメェの子分になった記憶も無けりゃあ奴隷になった覚えも無ぇ」

小柄な男「……まぁいい、お前にはこの先俺の護衛として存分に働かせてやる。その程度の反抗には目をつぶってやろう、どっちにしろ俺には逆らえねぇんだからなぁ?」クックック

強面グラサン「……」ギロッ




42: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/06/27(土)23:18:04 ID:t3T

小柄な男「まぁそう噛み付いてくるな。この世界を支配できる魔力が貯まるまで相当時間がかかりそうだからな…お前とは長い付き合いになるんだ、仲良くしようぜ」

強面グラサン「……何が支配だ、馬鹿馬鹿しい野郎だ」

小柄な男「主従関係を組むのはこれが初めてって訳じゃねぇだろ?お前が今付き従っている主人は俺だ、従順になっちまった方が楽だぜ?」

強面グラサン「テメェなんざと親しくするつもりも忠誠を誓うつもりも微塵たりとも無ぇ」

小柄な男「その意地がいつまで持つか見ものだな、お前が従順になるのはそう遠くないと思うぜ?今から楽しみで仕方がねぇんだ」ゲラゲラゲラ

強面グラサン「俺が付き従うのは師匠ただ一人だ、師匠が消えちまった今でもそれは変わらねぇ。主従ゴッコがしたけりゃテメェだけでやってろ」

小柄な男「口の減らない野郎だ…いいか?今日は魔力持ちの心臓も手に入った、この世界は酒も肴もなかなかに旨い、だから俺は機嫌が良いんだ」

小柄な男「お前が生意気な態度を取っても許してやっているのはな、単に俺の機嫌が良いからだ。少しでも俺の機嫌を損ねてみろ、どうなるかわかるよな?」

強面グラサン「……」ギロリ

小柄な男「睨むな睨むな。たまには心を落ち着かせて夜空でも見てみろよ。現実世界もおとぎ話の世界も星空はたいして変わりゃしねぇからなぁ」

小柄な男「無数の星屑が輝く夜空で一際明るくそして気高く輝く……月の存在。だがこの世界の月は少し霞んでみえるぜ、地上が明るすぎるせいかもしれねぇなぁ?」

強面グラサン「何が言いてぇんだテメェ…!」

小柄な男「お前の大切な『月』は俺の気分しだいで輝きを失うって事、忘れるなよ?お前が俺に従わなけりゃあその場でお前の『月』は消しちまう、いいや死んじまうんだぞ?」

小柄な男「師匠とやらが消えちまった今、お前が守護してるのはあの小娘なんだろう?また見殺しにしちまってもいいのか?」クックック

強面グラサン「……」クッ




43: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/06/27(土)23:22:48 ID:t3T

小柄な男「そうだ、そうするしかねぇよなぁ?お前は口応えすら許されてねぇんだよ、本来はな」

小柄な男「あの娘も不憫だぜ、お前みたいな輩と一緒にいたせいで俺に目を付けられちまって今じゃあ人質だ。だがまぁ俺も契約には逆らえないからな、お前が大人しくしてりゃあ何もしねぇ」

強面グラサン「……わかってる、だからあいつには手を出すんじゃねぇっ!」

小柄な男「ああ、いいぞ。しかし、つくづく人質を取るって方法は合理的だよなぁ?」

小柄な男「俺が使える魔法なんか『藁を黄金へと変化させること』と『生成した黄金の形状を変化させること』ぐらい……腕力も体力も人間程度しかない弱い男だ。だがなぁ人質さえ取ればお前を支配することだってできる!」

小柄な男「愉快だよなぁ、おとぎ話の世界でも屈指の戦闘能力を誇るお前は俺の護衛として命令に従わねぇといけないってんだからな」

強面グラサン「……」ギリッ

小柄な男「俺なんか一捻りでねじ伏せられるお前が!幾多の魔法具を駆使するお前が!数多の妖術を使いこなすお前が!どれだけ悔しくとも俺にはもう暴言すら自由に吐けない!」

小柄な男「誰より力強く傍若無人…天下無双のお前はあの小娘に肩入れしたせいで俺に手が出せねぇ!自分の足元にも及ばないような弱い弱い俺に…手も足も出せねぇんだ!痛快だぜこりゃあ!」アハハハハ

強面グラサン「クソ野郎め…っ!」ボソッ

小柄な男「クソで結構じゃねぇか、過程なんざどうだっていいのさ。だが俺はお前にも救済措置は与えてやったろう?俺とお前の契約を破棄する唯一の方法だ、お前はいつだって一言口にするだけであの小娘を救いだし、自由を手に出来る」

小柄な男「さぁ言ってみろよ、俺の名前を。さぁさぁ、俺の名前を当ててみろ!」

小柄な男「『あの娘の命と貴様の支配権を交換する』契約、破棄したいのなら大声で叫んでみろ!俺の名前をなぁ!まっ、無理だろうがなぁ!」ガハハハ




44: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/06/27(土)23:28:15 ID:t3T

強面グラサン「テメェ……いつまでも調子に乗ってんじゃねぇぞ……!」グイッ

小柄な男「うぐっ…ゲホゲホ……なんなんだお前は、理解してないのか?俺に手を出すとどうなるかわかってんだろ?」キッ

強面グラサン「あいつの首には…テメェが生成した黄金が撒きついてやがる。俺がテメェに逆らったら、お前の合図であいつの首を絞め落とすって仕組みなんだろうが!」ワナワナ

小柄な男「よくわかってるじゃねぇか。だったら手を離せ、誰の胸ぐらをつかんでんのかわかってんのか?」ギロリ

強面グラサン「……クッ」バサッ

小柄な男「今のは大目に見てやる。だがなぁ、お前が俺の元から逃げたりおとぎ話の世界へ連絡を取ったりすれば娘の首はボトリと落ちる。他のおとぎ話の連中に協力を頼むなんてズルはさせねぇぞ」

小柄な男「俺のおとぎ話は既に消滅している。この現実世界には俺のおとぎ話を知っている奴は一人も存在しない、そりゃあつまり俺の名前を知っている奴も存在しないって事だ!」

強面グラサン「そいつを利用して…この世界なら自分の名前を言い当てられないと踏んでこの世界へきやがったのか!」

小柄な男「ああ、そうだ。この現実世界は俺達のおとぎ話の世界とは随分と様子が違うが…ひとつ共通するところがある。そりゃあな、金だ」

小柄な男「この世界の奴らも大体が金が欲しくてしかたがねぇんだ、俺のおとぎ話の国王のようにな!そしてそういう輩は金のためだったら多少無茶な契約でも結ぶ、あの粉引きの娘がそうだったように」

強面グラサン「金を餌に他人を利用するなんざ、まともな生き物じゃあねぇなテメェは…」

小柄な男「金に目がくらんで大事なもんを投げ出す奴の方がよほどまともじゃあねぇんだ。だがなぁ、何をわめいたところで俺の名前がわからない以上、お前は俺の支配下だ」

強面グラサン「……」クッ

小柄な男「どうやらテメェは少々厳しくしねぇと躾けられねぇみたいだからな。暴言を大目に見るのはここまでだ、わかったら返事をしろ」グイッ

強面グラサン「……」

小柄な男「返事しろっつってんだよぉ!あの娘を殺してぇのか!?」ガターン

強面グラサン「……承知した、俺に……指示をよこしてくれ」ギリッ

小柄な男「よぉし、まぁ今日は言葉遣いまでうるさくは言わねぇ。また明日から魔力集めだ、期待してるぜ?」クックック

・・・




45: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/06/27(土)23:29:55 ID:t3T

・・・

司書「キモオタさん!やっぱり彼女にするならおとぎ話の世界より現実世界の女の子が良いですよね?」ニコッ

キモオタ「ちょwww司書殿wwwそれってどういうwww」コポォ

ティンカーベル「そんなの関係無いでしょ!それにキモオタは私の相棒なんだから!ね!キモオタは私のだよね?」ギュー

シンデレラ「ちょっと待ってください!私はキモオタさんの思い出のおとぎ話【シンデレラ】の主人公なんです、だからキモオタさんは私のものです!」ムギュー

赤ずきん「困ったものね……キモオタ、ハッキリと断ってやりなさい。だってあなたは私のものですもの、そうでしょう?」ガチャッ

マッチ売り「お兄ちゃんは私が死んじゃう時も一緒に居てくれたよね、だからずっと一緒だよ?信じても良いよね、お兄ちゃん?」ソッ

シェヘラザード「キモオタさん、私を選んでくだされば魔法のランプ……いつでもお貸しします。ですから……ね?」ギュッ

ラプンツェル「あはは、キモオタはモテモテだねー!なんだかみんな楽しそうだから私も仲間に入れてもらおっと!」ニコニコ

キモオタ「ちょwww夢にまでみたハーレムルートに突入ですなwwwモテ男は辛いですぞwww」ドゥフコポォ

ゴゴゴゴゴ

ゴーテル「ほう……貴様、ワシの可愛い愛娘…いや世界一可愛い愛娘のラプンツェルにまで手を出そうとは良い度胸じゃな」ゴゴゴゴゴ

キモオタ「ご、ゴーテル殿!?違うでござるよ!これは誤解というものでして…故にその魔法の杖を収めていただきたいですぞ!」

ゴーテル「問答無用じゃ!ラプンツェルを手籠にしようとした己の愚かさを呪うがいいわい!豚のお主にぴったりの呪いで消し去ってくれるわ!」ゴゴゴゴゴ

シュゴォォォォォ

キモオタ「ぶひいいいいぃぃぃっっっ!!」ドロォォォ

・・・

・・・

・・・




46: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/06/27(土)23:31:48 ID:t3T

現実世界 キモオタの部屋 朝

キモオタ「ぶひいいぃぃ!ラードになるのは嫌ですぞぉぉぉぉ!」ガバァ

ティンカーベル「えっ!?なになに?なにがおきたの!?」ガバッ

キモオタ「なんと……夢でござるか」フゥー

ティンカーベル「もー!びっくりして目がさめちゃったよ!っていうかラードってなんなの?ラードになっちゃう夢って普通見ないよ!」プンスカ

キモオタ「失礼しましたな…なんというか、調子に乗った罰が下ったでござるよ……皆に申し訳ない」ズーン

ティンカーベル「……?まぁいいけど、目ぇ覚めちゃったからもう顔洗ってご飯にしよ!お腹すいたよー」フワフワ

キモオタ「そうですなwww美味しいものでも食べてこの悲惨な夢を上書きしたいですぞwww」

ティンカーベル「私ね!昨日ジャスコの中のパン屋さんで買ったレーズンパンすっごく楽しみにしてるんだよね!」ワクワク

キモオタ「それ昨日三回くらい聞きましたぞwwwこれでもかというほどレーズンのたっぷり入っていると評判の奴でござろうwww」

ティンカーベル「そうそう!楽しみにしてる事はたくさん声に出した方がいいの!食べるときの楽しみが増えるからね!」ニコニコ

キモオタ「そうでござるかwwwならば我輩は軽く朝食を作りますかなwwwティンカーベル殿、朝食の卵とベーコンはどうしますかなwww」コポォ

ティンカーベル「昨日ちょっと食べすぎちゃったから卵はいいや…ベーコンも少なくして今日は一枚……やっぱいつも通り三枚にする!お昼から!お昼からご飯の量減らすから!」

キモオタ「ちょwwwそれダメなやつではwwwまぁわかりましたぞwwwしばしお待ちをwww」

ティンカーベル「じゃー私はテーブル片づけて、パンと飲み物準備しとこーっと!レーズンレーズン♪」フワフワ




47: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/06/27(土)23:32:47 ID:t3T

キモオタ「しかし、司書殿と出かける時に着ていく服……どんなものを買えばいいのか皆目見当がつきませんな」ジュージュー

キモオタ「ティンカーベル殿の警戒もわかるでござるが、我輩としては司書殿の好みのタイプがマニアックだったという方向にワンチャン期待したいですなwww」コポォ

キモオタ「街を歩いてると結構な美人が微妙なメンズと歩いていたり…その逆も然りでござるしwww人の好みはそれぞれでござるwww」ジュージュー

キモオタ「このチャンスをモノにして司書殿とお近づきになれなければ、おそらく我輩はこの先ノーモテ期でござろうしここは気合いを入れて……んん?」チラッ

キモオタ「ちょwww玄関の鍵がwww開いてるwww」コポォ

キモオタ「ちょwwwなんででござるかこれwwwチェーンも外れてるでござるしwww物騒極まりないwww」ガチャ ジャララ

キモオタ「しかしおかしいですな、鍵もチェーンも昨日確認してから寝たはずでござるが……」

ティンカーベル「ねーねー、キモオター。なんか牛乳がもうないよ?夜中に飲んじゃった?」

キモオタ「飲んでないですぞwww昨日買い忘れた故、今朝ティンカーベル殿が飲む為にとっておいておいたはずではwww」

ティンカーベル「そうなんだけど無いんだよ、ほら!牛乳パック空っぽ!」フワフワ

キモオタ「おかしいですな…?まぁ無いものは仕方ないwwwオレンジジュースをあけるでござるwww」コポォ

ティンカーベル「わかったー、じゃあ持っていっとくねー」フワフワ



???「……」スッ




48: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/06/27(土)23:35:13 ID:t3T

ティンカーベル「準備できたよー!牛乳、今日は忘れずに買わなきゃだね!」

キモオタ「そうですなwwwさてwwwこっちも焼けましたぞwww召し上がれwww」コポォ

ティンカーベル「朝から楽しみにしてたレーズンパンとベーコンでごはんなんて最高だね!いただきまーす!」ニコニコ

キモオタ「我輩はこの厚切り食パンにチーズをたっぷりかけてピザトーストでござるよwwwチーズのうまさは軽犯罪レベルですからなwww」コポォ

ティンカーベル「チーズ!それも美味しそうだけど、別に羨ましくないよ!だって私にはこの美味しいって評判のレーズンパンがあるんだからね!」フンス

ゴソゴソ

ティンカーベル「レーズンレーズン♪……あれっ……?」

キモオタ「チーズうまいですなwww昨日もピザ食べた気がしますがなwwwピザとはまた別のうまさがピザトーストにはありますなwww」モグモグ

ティンカーベル「……ない」プルプル

キモオタ「どうかしましたかなwww」コポォ

ティンカーベル「キモオタァ!私のレーズンパン……レーズンだけ食べたでしょ!!」キッ

キモオタ「ちょwww何をいきなりwww知りませんぞwww」コポォ

ティンカーベル「見てよこれ!レーズンパンなのに…レーズンが全部ほじくられてる……!こんなのレーズンパンじゃない……!」ギリッ



ティンカーベル「レーズンの抜かれたレーズンパンはね……もうただのパンですらないんだよ!こんなのがっかりパンだよ!」キッ




49: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/06/27(土)23:36:53 ID:t3T

キモオタ「ちょwww落ち着くでござるよwww我輩が食べるわけ無いでござろうwwwそんな絶対ばれるようなつまみ食いをすると思いますかなwww」

ティンカーベル「それはしないだろうけど…!だったら誰がこんな事するの!?そっか…わかったよ、昨日の店員さんだ…!会計の時につまみ食いして…」

キモオタ「いやいやwwwとんだ言い掛かりですぞwwwしかし…そういえば……」

ティンカーベル「どうしたの?やっぱりパン屋さんの店員さんが犯人?」

キモオタ「いや店員からは一回離れるでござるwww実は玄関の鍵が開けられていたのでござるよ、昨日閉めたはずでござるのに」

ティンカーベル「誰かがこの部屋に勝手に入ってきたって事…?」

キモオタ「おそらく…それならレーズンの件も牛乳の件も納得がいくでござるよ」

ティンカーベル「誰かが勝手に上がりこんでつまみ食いしたって事…?だとしたら誰がそんなこと…」

???「遅い。そして鈍すぎだ、なぜ侵入者に気が付くまでにこんなに時間がかかるんだ?」

ティンカーベル「今の声…!誰かいるんでしょ!隠れてないででてこいバーカ!私のレーズン返せ!」プンスカ

キモオタ「声は聞こえど姿は見えぬとは…一体何者でござろうか…?」

ティンカーベル「あっ!違うよ…!見えないわけじゃない、小さくて見つけられなかっただけだったんだ!あそこにいるよ…テレビの上!」キッ




???「易々と侵入を許し、気が付きさえしないとは…随分と間抜けな連中だ。こんな奴らに協力をする必要があるのか、私は疑問だな」モグモグ




50: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/06/27(土)23:41:46 ID:t3T

キモオタ「な、何者ですかなあの娘は…親指ほどの大きさしかないでござるよ、それに協力とはどういう……」

???「お前が、現実世界のキモオタという男だな?」

キモオタ「いかにもキモオタでござるwwwお主は…『現実世界』などと口にするあたりおとぎ話の住人でござるな?」

???「当然だ。それ以前に私の姿を見れば察しが付きそうなものだがな。それとも、この世界には私のように背丈の小さな人間が存在するのか?」フンッ

ティンカーベル「なーんか嫌な感じの言い方!私のレーズン勝手に食べたくせに!あんた何者なの!?ちゃんと名乗ってからそれからちゃんと謝ってよね!」プンスカ

親指姫「いいだろう、名ぐらいは聞かせてやる。私の名は親指姫……ある方の命令を受けて、馳せ参じた。食料の件は謝ろう、貴様のものとは知らなかったのでな」

ティンカーベル「…まぁ許したげる。それはいいとしてさ、じゃあ親指姫も私達の仲間って事なんだね!」フワフワ

キモオタ「ある方の命令……おとぎ話の一件が絡んでいるのは確実でござろうが、一体誰が何のために親指姫殿を我々の元に送り込んだのですかな?」

ティンカーベル「もしかしてさ、あの方って前にシェヘラザードが言ってた協力者の事かな?私達と一緒にアリス達のたくらみを阻止するために戦ってくれるって事じゃないかな?」

親指姫「本来は貴様等に挨拶をするようにと言われていたが…私の独断で予定を変更する」チャキッ

親指姫「あまりに脆弱な守り、錆びついた危機察知能力………私は貴様等が足手まといになると判断する。あの方に迷惑をかけられないからな」シュタッ

シュタッ シュタッ

キモオタ「ちょwww突然我輩の肩に飛び乗ってくるとはwwwどういうwwwこれもモテ期の一環ですかなwww」コポォ

ティンカーベル「……っ!キモオタ!動いちゃダメ!親指姫は肩に乗ろうとしたんじゃない、キモオタの首筋に近づいたんだよ!」

キモオタ「首筋?一体何のために……」

親指姫「キモオタ、ティンカーベル…貴様等に問う。何故、貴様等はおとぎ話の世界を守ろうとしているのか…それを答えてもらおう」

ティンカーベル「キモオタ!下手に動いちゃダメ!親指姫が持ってるの、カミソリだよ!」

キモオタ「か、カミソリ!?そんなもので頸動脈をいかれては大惨事でござる…!」

親指姫「洗面所から一本拝借した。返答しだいでは、私の第二の刃が貴様の動脈を断ち切る」



親指姫「さぁ答えろ、貴様等の信念は我々が協力するに値するものなのか……あの方の代わりに私が判断する」




59: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/01(水)22:25:24 ID:7h6


親指姫「お前にとっては髭を剃る道具でも、私にとっては立派な武器になる。こういう形状の武器が日ノ本にはあるんだったな、確かナギナタという名前の」スッ

ピトッ

親指姫「私は針の剣を操りし騎士、ナギナタは扱った事が無いが…刃でお前の首を撫でるくらいは容易い」

キモオタ「ちょ…洒落になって無いでござるよ…!」

ティンカーベル「キモオタにヒドイことすんのやめてよ!いきなり上がり込んで脅かしてくるとか親指姫は本当に私達の仲間なの!?」

親指姫「仲間…?私はまだ認めてはいない。お前が早とちりしているだけだ」フンッ

ティンカーベル「じゃあやっぱ敵なんだ…!いきなり首筋にカミソリ添えてくるとか敵じゃなきゃそんな事しないよ!」キッ

親指姫「本当に早とちりが好きな奴だな。味方ではない…だけどお前達の敵でもない、少なくとも今はな」

ティンカーベル「味方でもないし敵でもないとかわけの分かんないことばっかり…!バーカ!この…バーカ!」

キモオタ「お、落ち着くでござるよティンカーベル殿。親指姫殿は我輩が何故おとぎ話の世界を救っているのか聞きたいのでござったな……話さなければ我輩ヤバそうでござるし…」




60: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/01(水)22:26:30 ID:7h6

親指姫「ああ、そうだ。誤解の無いように言っておく、私は耳触りの良い言葉を求めている訳じゃあない」

親指姫「私達の様なおとぎ話の世界の住人ならまだ解る、自分の世界を救うのは当然の事だからだ。だが現実世界の人間であるお前にはおとぎ話の世界を救う明確なメリットは無い。それなのに命の危険を冒してもおとぎ話の世界へ係わる理由は何だ?何が貴様をそうさせる?」

親指姫「異世界への好奇心やおとぎ話の世界への憐れみ、くだらない超常への期待…そんな興味本位で係わられたら迷惑だ。お前にとっては単なるおとぎ話かもしれないが、こっちは世界の命運をかけて戦っているのだからな」

ティンカーベル「ちょっと!キモオタはそんなふざけた気持ちでおとぎ話に係わったりなんかしてないんだからね!」プンスカ

親指姫「少し黙ってくれティンカーベル。私はその男の意思をその男の口から直接聞きたい」

親指姫「キモオタ。お前がおとぎ話を救う理由を私に聞かせてもらおう」

キモオタ「それは……約束したでござるからな」



キモオタ「我輩は約束したのでござるよ。マッチ売り殿と…もうおとぎ話は消滅させないと」




61: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/01(水)22:28:07 ID:7h6

親指姫「マッチ売りというと…【マッチ売りの少女】の主人公の事だな?」

キモオタ「そうでござる。我輩たちが【マッチ売りの少女】の世界へ向かった時出会った女の子で…父親から虐待を受け、寒空の下毎晩毎晩売れもしないマッチを売り歩く…そんな可哀そうな女の子でござった」

キモオタ「親からの虐待に耐え、空腹に耐え、辛く厳しい生活に耐え…それでもあの子は我輩に笑いかけてくれたのでござるよ。幸せになれる日が来ると信じて」

キモオタ「しかしでござるな、ドロシー殿が…自分がおとぎ話の世界の住人だと知らないマッチ売り殿に現実を突きつけたのでござる。寒空の中、彼女の健気さや努力は報われずに死んでしまうと…マッチ売り殿に教えたのでござる」

ティンカーベル「そうだったね…ドロシーが【マッチ売りの少女】を消滅させるために結末をマッチ売りちゃんに教えたんだよね。マッチ売りちゃんが死にたくないって言って逃げ出しちゃえばおとぎ話が消えるから…それを狙ったんだ」

親指姫「……続けてくれ」

キモオタ「しかし、実際にはそうはならなかったでござる」

キモオタ「最終的に…マッチ売り殿は自分の結末を受け入れたのでござる。報われず死んでいったとしても【マッチ売りの少女】のおとぎ話を読んだ現実世界の子供たちの糧になるなら…」

キモオタ「自分のおとぎ話が…自分の境遇が…みんなを幸せにするためのお手伝いができているのなら、みんなが幸せになるのなら嬉しいと言って息を引き取ったのでござる」

キモオタ「その時、マッチ売り殿はこうも言ってくれたでござる。おとぎ話の世界を救っているお兄ちゃんはもっとすごいと…みんなが消えないようにおとぎ話の世界を守ってねと…」

親指姫「……」

キモオタ「だから、我輩はおとぎ話の世界を守る旅を続けているのでござる」

キモオタ「マッチ売り殿は現実世界の子供たちの幸せのために自分の運命を受け入れた。ならば我輩に出来るのは…同じように子供達のために作られたおとぎ話を消滅から救う事でござる」




キモオタ「みんなが…子供たちが幸せになる事が、天国に居るマッチ売り殿を笑顔にする唯一の方法でござるからな」




62: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/01(水)22:30:39 ID:7h6

親指姫「…お前の考えはわかった」

キモオタ「もちろん最初からの目的であるティンカーベル殿の世界も取り戻したいでござるし事情を知って見過ごせないとか理由はほかにもありますがな、我輩がおとぎ話の世界を救う根本はここでござるよ」

ティンカーベル「親指姫!これでもキモオタが興味本位で首を突っ込んでるって言える?キモオタはちゃんと考えてくれてるんだよ、マッチ売りちゃんやみんなのこと!」プンスカ

親指姫「……お前h

ガターンッ!!

白鳥「ンナハハハ!話は聞かせてもらったよ…キモオタ君!ティンカーベルちゃん!」スワーン

キモオタ「ちょwww今度は何なんですかなwwwいきなりクローゼットから鳥が出てきましたぞwww」コポォ

親指姫「貴様!お前はまだ隠れている手筈d

白鳥「僕は感動した…!女の子との約束のために世界を守るなんて美しいじゃないか!それに僕達の妹同然のあの子をそんなに想ってくれてるなんて嬉しいよ!」

ティンカーベル「妹…?もうっ!親指姫もあんたも突然現れて良くわかんないことばっかり言って…混乱しちゃうよ!」プンスカ

白鳥「キモオタ君は外見はまぁアレだけど心は美しいってわかったよ!これは一番大事な事だからね!何より白く美しい心を持っていれば外見が少しくらいアレでもいいのさ!」スワーン

キモオタ「外見がwwwアレwwwそもそもお主は何者ですかなwwww喋る鳥でござるしwwwおとぎ話の住人でござろうwww」

白鳥「おっと、挨拶が遅れてしまって申し訳なかったね!僕は白鳥、みんなが大好きな超絶大人気おとぎ話【みにくいアヒルの子】の主人公にして絶世のイケメンなんd

ブスリッ

白鳥「痛っ!おい!なんで自己紹介してる時に針を突き刺すんだよ!もうちょっとタイミングとか考えて刺すべきで…」

親指姫「黙れ貴様ッ!何故当初の予定通りにやらないんだ!私の合図があるまでクローゼットに隠れている手筈だろう!」ギリッ

ブスブスッ

白鳥「痛っ!痛いって言ってるだろ!あのままじゃ僕達が悪い奴だと誤解されそうだから出て来たんだよ僕は!」


ギャーギャー ギャーギャー




63: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/01(水)22:32:23 ID:7h6

・・・

・・・

・・・

キモオタ「白鳥殿が何を飲むかわからなかった故wwwミネラルウォーターでござるがwww」ゴトッ

白鳥「いやいや、ありがとう!突然押し掛けたどころか忍び込んだのにもてなして貰っちゃって悪いなぁー」ハハハ

キモオタ「親指姫殿はオレンジジュースでいいですかなwww」スッ

ティンカーベル「私のカップ貸してあげるんだから感謝してよね!」

親指姫「……」フンッ

白鳥「おいー、お前折角キモオタ君が用意してくれたんだからお礼くらい言うのが筋だろー?」ヒソヒソ

親指姫「……結構だ、あいにく喉は乾いていないんだ」フイッ

キモオタ「そうでござるかwwwそれはさておきwwwこれでようやく落ち着きましたなwww」

ティンカーベル「うん、カミソリで脅されたりあんなに大騒ぎしてたら話なんかできないもんね。キチンとテーブルを囲んで、お話しできる状況を作らないとね!」

キモオタ「そうですなwwwではお二人が何故我輩たちの元にやってきたのか伺いたいwww」コポォ

白鳥「うん、そうだねぇ…まずは改めて自己紹介をしておくよ。さっきは途中になったからね!僕は【みにくいアヒルの子】の主人公、白鳥さ。白鳥って呼び捨てでもいいしイケメンでもハンサムでも超ハンサムでも好きなように読んでくれて構わないよ。それでこっちが…」

親指姫「おとぎ話【親指姫】の主人公、親指姫だ」フンッ

ティンカーベル「ぷーっ!自分で姫だってー!」クスクス

親指姫「貴様…!私を愚弄するか、その羽引き抜いてやる!」スチャッ

ティンカーベル「べーっだ!私よりちっちゃいのに出来るわけ無いじゃん!」ベーッ

キモオタ「ちょwww落ち着くでござるよwwwティンカーベル殿も挑発してはダメですぞwww」コポォ




64: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/01(水)22:35:06 ID:7h6

ティンカーベル「だって親指姫はキモオタに酷い事したのにちゃんと謝らないんだよ?正直に言うとさ、結構ヤな感じだよ…?」ヒソヒソ

キモオタ「まぁまぁwwwこっちまで挑発しだしたら収拾が付きませんからなwwwようやく落ち着いて話ができる状態になったのでござるしwww」ヒソヒソ

ティンカーベル「キモオタがいいならいいけど…私はあんまり好きじゃないな、親指姫の事……」ジーッ

親指姫「聞こえているぞ。だが私もその方が助かる、お前と慣れ合いをしなくて済むからな…虫は苦手なんだ」フンッ

ティンカーベル「私の事を虫扱いした!もういいでしょ!あいつと話なんかしても意味無いよ!」プンスカ

キモオタ「ティンカーベル殿が挑発したのも原因のひとつでござろうwwwお互い様ですぞwww」

ティンカーベル「うーっ……絵本で読んだ【親指姫】だともっと可憐で純粋な女の子だったのに、イメージと全然違うよ…がっかりだよ!」キッ

親指姫「…勝手に期待しておいてイメージと違うなんて言われていい迷惑だ」フイッ

ティンカーベル「もーっ!だからなんでそんな憎まれ口叩くの!?キモオター!あいつなんとかしてよ!」プリプリ

キモオタ「まぁまぁwww話が進まないでござるのでwwwここは堪えていただきたいwww」コポォ

親指姫「それにあのおとぎ話の私は…過去のものだ。私はもうあの頃の自分とは違う、その場の雰囲気や周りの連中に振り回されて、運命に流されるままの小娘じゃあない」フイッ

キモオタ(確か…【親指姫】は主人公の親指姫殿がその体の小ささゆえに周囲に翻弄される内容でしたな。カエルやコガネムシには誘拐され、モグラには嫁にさせられそうになり…)

親指姫「私はもう易々と誘拐されるほど弱くない。自分の居場所は自分で決める、望まない婚姻を受けることもないし行きたくない場所へ行く事もしない」

親指姫「自分の身の振り方は全て自分で決める。だからお前達を信用するのは私が心からお前達を信用したと思った時だけだ」キッ

白鳥「ああもう、こうなったらもう僕の話なんか聞かないんだよなぁ……」ボソッ

親指姫「女王からの指示はお前達への顔合わせだ。その任務は遂行する、だがそれ以上の慣れ合いは御免だ」フイッ




65: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/01(水)22:38:10 ID:7h6

白鳥「お前がキモオタ君に…現実世界の人間にそんな態度を取る理由はまぁ察しがつくけどさ、ここは仲良くやろうよ。同じ目的を持つ仲間なんだから」

親指姫「私はまだこいつらの事を認めていない。自分が認めてもいない奴と行動を共にするのは私の為にもならない…こいつらの為にもならない」フイッ

白鳥「頑固だなぁ…じゃあ今回ばっかりは僕が真面目に仕事するしかないかな!」キリッ

親指姫「普段から真面目に仕事をしろ。いつもは私が交渉や説明をしているんだ、たまにはお前がやればいい」

白鳥「やれやれ、イケメンは辛いよ…えっと、キモオタ君にティンカーベルちゃん、ごめんね!こいつ滅茶苦茶態度悪いけど…根は良い奴だから、ちょっとずつ慣れてやってよ!」ハハハ

キモオタ「親指姫殿がデレる日は来るのでござろうかwwwまぁ了解でござるwwwうちの妖精も大概口はよろしくないのでお互いさまでござるなwww」コポォ

ティンカーベル「ちょっと!私は口悪くなんかないでしょ!」ゲシゲシッ

親指姫「……」フンッ

白鳥「さてと、じゃあ真面目に本題へ入ろうかな!」

キモオタ「ところで先ほどの『女王』というのは……?」




66: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/01(水)22:39:01 ID:7h6

白鳥「やっぱりそこからかな、えーっと君達と僕達の目標は同じなのさ。今おとぎ話を荒らして周ってるアリスちゃんとドロシーちゃん、その一派を止める事。そしておとぎ話の消滅を防ぐ事」

白鳥「君達は単独で行動してるけど、僕達の女王はいろんなおとぎ話に協力を求めてるんだ。完結しているおとぎ話には有事の際の協力を、それ以外のおとぎ話には注意喚起を。そんな風に行動していて、その指揮をとってくれているのさ!」

ティンカーベル「簡単に言っちゃうと、アリスとドロシー対策本部のリーダーって感じ?」

白鳥「ンナハハハ、まぁそうなるね!だから女王は既に同じ目標に向けて動いている君達に挨拶をしてくるように僕達に命じたんだ。親指姫はこんな態度だけど、女王は君達に協力するつもりみたいだから安心していいよ!」

キモオタ「それはありがたいwwwしかしその様な大役を担っているとはwwwよほどの実力者でござろうなwww」コポォ

白鳥「うん、女王の実力はすごいよ!それにその美しさと言ったらもうね…ぶっちゃけ世界一だよ。まぁ、世界一は二人いるんだけどね?そしてそれは何を隠そうこの僕なんだよね…!これは既に周知の事実かな?ンナハハハ」スワーン

キモオタ「ほうwww」

ティンカーベル「……うん」ヒキ

親指姫「……真面目にしろ」ブスリッ

白鳥「痛っ!僕のペースでやらせてよ!僕はいつだって真面目なんだよ!真面目に自分の美しさに誇りを持ってるんだ!」




67: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/01(水)22:41:01 ID:7h6

ティンカーベル「ところでその女王?ってなんのおとぎ話の人?私達も会ったときに挨拶しなきゃだよね、教えてくれると嬉しいんだけど」

白鳥「もちろん!女王はおとぎ話【雪の女王】の登場人物……まぁタイトルそのままなんだけど僕達の指揮をとってくれている女王こそ、雪の女王なんだ!」

ティンカーベル「雪の女王…!!」

キモオタ「ほうwwwまさかの雪の女王ですかなwww」コポォ

白鳥「ん?どうかしたかい?雪の女王、意外だったかな?女王は屈指の魔力を持ってるし大役に相応しい方だと思うけど……」

キモオタ「屈指の魔力を持ってるとか頼りになりますなwww何も怖くないwww風よwww吹けwww」コポォ

ティンカーベル「白鳥!雪の女王にお願いして!雪の女王が生成した結晶が欲しいんだよ!それと悪魔の鏡の破片!」バッ

白鳥「ちょ、ちょっと待ってよ。どういうことだい?」

キモオタ「ティンカーベル殿がアリス殿達に対抗する為に依頼している武器があるのでござるが、雪の女王殿の生成した結晶と鏡の破片がその強化に必要なのでござるwww」

ティンカーベル「そうなの!雪の女王が手伝ってくれたら私のスリングショットで海が凍りつくの!」ワクワク

白鳥「ンナハハ、なるほど!そういうことなら僕からもお願いしておくよ!女王の生成する氷の結晶は美しいから驚くと思うよ!どれくらい美しいかっていうと僕n

ブスリッ

白鳥「痛っ!せめて最後まで言わせるとかそういう配慮をしてよ!」

親指姫「女王…雪の女王がお前達に好意的だという事は伝えた。女王はお前達に味方するだろう、だがせいぜい迷惑をかけないようにな。必要以上に頼る事も控えろ」フンッ

ティンカーベル「わかってるよそんなの!バーカ!」キッ

キモオタ「ティンカーベル殿wwwダメですぞwww」

親指姫「行くぞ、白鳥。任務達成でいいだろう。これ以上こんなところで油を売っている暇はない」




68: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/01(水)22:44:35 ID:7h6

白鳥「せっかちだなお前は…確かにこのあとも予定があるから長居は出来ないけど」

キモオタ「白鳥殿www女王殿に伝えていただきたいwww同じ目標を持つ者同士www我々はいつでも女王殿に協力をするとwww」

ティンカーベル「うん!私達は女王と比べたらちょっと頼りないかもしれないけど、頑張っておとぎ話が消えるの防ぐから!」ニコニコ

キモオタ「親指姫殿には認めてもらえてないでござるがwwwゆくゆくは協力し合いたいですぞwww仲間でござろうwww」

親指姫「それは今後のお前次第だな。私に信用されるような男になってみせろ、話はそれからだ」フンッ

キモオタ「ドゥフwwwわかりましたぞwww」

ティンカーベル「すぐにでも私達がすっごく頼りになるって思い知らせてやるからね!楽しみにしといてよね!」プンプン

親指姫「実力が伴っていない自信なんかに私は期待しない」フッ

ティンカーベル「キィーッ!キモオター!もう…あいつ…あいつー!!もうやだよー!なんなの…なんなのもぉぉー!」バシンバシン

キモオタ「落ち着くでござるwwwもう少し煽り耐性をつけるでござるよwwwティンカーベル殿www」

白鳥「もうちょっと君達と話をしたいけど時間もないし、これ以上長居するとティンカーベルちゃんの血管が切れてしまいそうだからね!悪いけど、そろそろ行くよ」スワーン

キモオタ「では窓を開けますかなwww」ガラガラ

白鳥「助かるよ!ではキモオタ君、ティンカーベルちゃん!今日は急に押し掛けて試すような真似までして悪かったね!お互いに頑張っておとぎ話の世界を救おうじゃないか!」

キモオタ「そうですなwwwではまたいずれwww」

ティンカーベル「うん!白鳥はまたいつでも遊びに来て良いよ!白鳥だけね!」キッ

親指姫「……」フンッ

白鳥「ああ!それじゃあまた会おう!次会うときは、僕はより美しく麗しくなっているから期待していてくれ!ンナハハハ!」

バサバサッ!




69: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/01(水)22:47:12 ID:7h6

・・・

現実世界 空

白鳥「いやー、良かったね!キモオタ君もティンカーベルちゃんも悪い奴じゃなさそうだ!ンナハハハ!」

親指姫「どうだか…一度会ったくらいじゃあ本性なんかわかったもんじゃない」

白鳥「まーたそんな事言って!本当はそこまであの二人の事を信用してないわけじゃないんだろ?」

親指姫「……何故そんな風に思う?」

白鳥「本当にキモオタ君を信用して居なかったら僕が飛び出す前に首を斬りつけていただろうしね。遠目でお前がそういうそぶりを見せなかったから、僕はすぐには飛びなさなかったわけだし」

親指姫「【マッチ売りの少女】の名前を出されて…少し迷っただけだ。思っていたよりはまともな理由を持っていたからな」

親指姫「だが、現実世界の人間を軽々しく信用するのは…どうかと私は思う」

白鳥「……まぁ、お前の言いたい事はわかるけどさー」

親指姫「覚えているか?以前…雪の女王が言っていた、もう自分が現実世界に行く事はなるべく避けたいと…。だからこそ現実世界へ行くのは私達に任せたんだろう」

白鳥「そうだったね、まぁ理由までは聞けなかったけど…女王は現実世界に何か辛い思い出でもあるのかな?」

親指姫「女王が現実世界へ足を運んでいた事があるのは事実だからな。その時に何か辛い事があったのかもしれない。現実世界の人間に裏切られたとか傷つけられたとか、そういった類の」

親指姫「だったら、軽々しく現実世界の人間を信用して…女王が苦しむようなことになってしまう事は避けたい。あいつと協力するのが女王の意向だとしてもだ」




70: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/01(水)22:49:27 ID:7h6

白鳥「それは僕も同じ気持ちだけどさ、女王は強い方だし大丈夫さ。それに彼の言葉通り、マッチ売りちゃんの事を想っての行動なのはきっと嘘偽りないと思うよ?」

親指姫「……そこは認める。マッチ売りについて話す時のあの目は信用に値するものだ。だが…それだけじゃあ不足だ」

白鳥「まぁ、そこはぼちぼちお互いの信頼関係を深めていくしかないか。だからもうちょっとその口の悪さなんとかしようよ。ティンカーベルちゃんには確実に嫌われてるよ」

親指姫「別に構わない。誰かに好かれるように気を使いながら生きれば、自分の事を好きでいられなくなるからな」

白鳥「またそんな風に言って…いずれは花の王国にも戻るんだろ?お前はお姫さまなんだからある程度は愛想よくしないとあとで困るぞ?」

親指姫「…花の王子には黙って出てきたと言っただろ。あの王国に私の居場所はもう無い、自分の好きなように生きたくて大空に逃げ出した私に帰る場所なんか、もう無い」

白鳥「…待ってるんじゃないの?王子様。アリスちゃん達の一件が終わったら一度帰ったら?」

親指姫「しつこいぞ、帰らないと言っている。私はもう花の王子の妃マイアじゃあないんだ。自分が納得できる生き方を探してあてもなく旅をする…ただの親指姫だ」

白鳥「やれやれ…頑固な奴だなお前はー…自分が納得できる生き方もいいけどさ、自分に嘘付いたって仕方無いだろー?」

親指姫「大きなお世話だ、それに誰が頑固だ?大体、お前の耳障りなナルシスト発言に比べれば相当マシだろう」フンッ

白鳥「ナルシスト発言…?いや、僕は事実を言ってるだけでナルシストなつもりなんて全然ないんだけd

ブスリ

白鳥「痛っ!?なんでだ!?今刺された理由は本当にわからない!」

親指姫「……黙れ真性ナルシストが。もういい、黙って飛べ」フイッ




71: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/01(水)22:51:08 ID:7h6

現実世界 キモオタの部屋


ティンカーベル「もぉー!あいつ嫌いだ、私!」プリプリ

キモオタ「まぁまぁwww冷めてしまったベーコンをチンしましたぞwww」

ティンカーベル「あいつ…なんなの!なんなの!あんな言い方しなくたっていいのに!」ガツガツ

キモオタ「しかしwwwシェヘラザード殿が言っていた協力者が雪の女王殿だったとはwww驚きですなwww」コポォ

ティンカーベル「うん!でもこれで私もついにものすごく強い武器が手に入るんだよ!」ワクワク

キモオタ「いずれ雪の女王殿に挨拶しなければなりませんなwww」

ティンカーベル「絶対にする!ちゃんとお礼言わなきゃいけないからね、でも今日こなかったって事は忙しいってことだよね?」

キモオタ「まぁ様々なおとぎ話に協力をしてもらい、それを指揮しているというのでござるからな…なかなか多忙でござろうwww」

ティンカーベル「でもさ、今まで以上にいろんな人が手伝ってくれるって事はもっと早くあいつらの悪だくみを止められるってことだし、それに……」

ティンカーベル「協力してくれる仲間が居るって事だけでも、すっごく嬉しいよね!」

キモオタ「そうですなwwwアリス殿達もこれまでのように易々とおとぎ話を消して周る事は出来ないでしょうしなwww」コポォ

ティンカーベル「よーし!やる気出てきたね!ごはん食べて魔法使いの所行こうよ!」ニコニコ

キモオタ(やれやれwww多少は機嫌が戻りましたなwww)

ピロリピロリ

ティンカーベル「あ、キモオター!おはなしウォッチがピロピロいってるよー?」モグモグ

キモオタ「おおっとwww誰でござるかなwww」コポォ




72: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/01(水)22:53:52 ID:7h6

ピッ

ラプンツェルの声「おーい!キモオター!ティンクー!聞こえてるー?」

キモオタ「おおwwwその声はラプンツェル殿ですなwww我々は元気ですぞwww」コポォ

ラプンツェルの声「キモオタだ!元気ならよかったよー!なんだか久しぶりな感じだね!」ニコニコ

ティンカーベル「久しぶりって、この間まで一緒に居たじゃん!まだ一週間くらいしか経ってないのにー」ケラケラ

ラプンツェルの声「だってさー、あの頃は毎日塔に遊びに来てくれてたでしょ?だからいつも一緒に居たのに急にいなくなっちゃったから、なんか久しぶりだなーって思っちゃったんだよ」ニコニコ

キモオタ「その元気そうな声を聞く限りwwwラプンツェル殿はいつも通りという感じですなwww変わりはないですかなwww」

ラプンツェルの声「うん!いろいろ調べ事したりして塔でおーじと一緒に暮らしてるよ!塔に出入り口作ってもらったからもう髪の毛たらす事もなくなっちゃったけど、そのぶんママといつでも会えるんだよ!嬉しいな〜♪」ニコニコ

ティンカーベル「いろいろ環境変わったから大変だね!そーいえば王子とはまだ結婚しないんだっけ?」

ラプンツェルの声「うん、でもおーじのママの病気と私のママの身体を治す方法を見つけてから結婚する約束したよ!」

キモオタ「夢をかなえてから改めて婚姻というわけですなwww相変わらずのリア充ですなwww」コポォ

ラプンツェルの声「あっ!それとねそれとね、おーじがケジメだからって言ってこの前、おーじのパパに一緒に挨拶に行ったよ!婚約のほーこく!」ニコニコ

キモオタ「確か王子殿は婚約者を探す旅の途中でしたからな、相手が見つかった以上国王に報告するのは道理ですからなwww」

ラプンツェルの声「でもね、なんか変な人だったよおーじのパパ」

ティンカーベル「変な人?王子は真面目そうなのに、お父さんはおかしな人なんだ?」

ラプンツェルの声「なんかねー……こんな感じだったよ」

・・・




73: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/01(水)22:56:25 ID:7h6

ラプンツェルの世界 王子の国の城・王座の間(回想)

王子「いいかい、ラプンツェル。遂に国王へ婚約の報告をする時が来た…でも国王は礼儀作法にとても厳しい、挨拶の時は静かに大人しくして欲しい。そして言葉遣いには十分に気をつけて、いいね?」

ラプンツェル「わかった!私と王子の結婚を認めてもらわないといけないからね!国王とも仲良くするよ!」フンス

王子「いや、仲良くするのではなくて…ちゃんとしてるところ、見てもらわないといけないって話だからね?」

ラプンツェル「まかせて!ちゃんと挨拶できるよ、ママと練習したからね!」

王子(ゴーテルさんと練習したのか…だったら大丈夫かな…?)

兵士「王子様、国王様が到着なさいました!」ビシッ

国王「……」ゴゴゴゴゴ

王子「(相変わらずの威圧感だ…!)父上…本日は急な話にもかかわらずお時間を頂k

ラプンツェル「こんにちわー!はじめましてパパ!私はラプンツェルだよ!」ニコニコ

国王「……一国の王に対しての振る舞いがそれか…貴様、国王たる私を前にしてパパとはどういうつもりだ……!」ギロリ

ラプンツェル「え?だって、国王は王子のパパでしょ?だから私が王子と結婚したら、国王は私のパパ!」ニコニコ

国王「そのような事を話しているのではない!貴様、ふざけているのか!?」

ラプンツェル「ふざけてないよ!あっ…おとーさんって呼んだ方がよかったかな?おーじ、私なんか間違えちゃった?」クルッ

国王「……」ゴゴゴゴゴ

王子(あっ、大丈夫じゃないこれ…)

ラプンツェル「でもでも!私ね!一生懸命頑張って王子のお嫁さんするから!だからよろしくね!おとーさん!」ニコニコ

国王「……王子、話がある。早急に私の部屋へ一人で来るように」スッ

王子「……承知しました」

・・・




74: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/01(水)22:59:44 ID:7h6

ラプンツェルの声「みたいな感じだったよ!シャイなおとーさんなのかな?」

キモオタ「絶対それ怒られてるやつでござるよwww王子殿がwww」コポォ

ティンカーベル「大丈夫なの?ちゃんと結婚させてもらえるの?」

ラプンツェルの声「それは大丈夫!王子がそれは絶対に説得するって言ってたし、どうしても駄目ならママが魔女だって言えば大丈夫だってママが言ってた!」ニコニコ

キモオタ「まぁ、国王からしてみれば『魔女の娘』というのは最大の口説き文句でしょうなwww魔女とのパイプがあればいろいろと捗るでござろうしwww」

ティンカーベル「なーんかいろいろ大変なんだね、愛し合っててもすぐに結婚できないなんてさー」

キモオタ「主に大変なのは王子殿でござるがなwww」

ラプンツェルの声「あっ、でもね?今日はその事をお話しする為に連絡したんじゃないの!もっと良い事があるんだよー」ニコニコ

ティンカーベル「いいこと?なになに?何があるの?」

ラプンツェルの声「実はね、ママと一緒に別の世界に出かけて来てるんだけどねー…すごいよ!今日だけでお友達が新しく二人も出来たんだよ!」フンス

キモオタ「ほうwww新たな友人が二人もwwwそれはおめでとうでござるなwww」コポォ

ラプンツェルの声「それでね、二人ともキモオタとティンクのお友達みたいだから一緒に遊ぼうよ!今ね、お城のすぐ下にある町に向かってるの!私、馬車って初めて乗った!」

ティンカーベル「行く行く!ちょっとくらいなら良いよね、キモオタ!」

キモオタ「まぁwww少しくらいならいいでござるけどwwwちなみにその友達とは誰ですかなwww」

ラプンツェルの声「それじゃあヒント!キラキラの靴を履いた女の子とキラキラした武器を持った男の子だよ!」


ラプンツェルの声「それじゃ、また後でね!先に町で遊んでるから、キモオタ達も急いで来てねー!」ニコニコ




75: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/01(水)23:09:36 ID:7h6

今日はここまでです

ざっくり説明【親指姫】
花から生まれた親指に満たない大きさの親指姫
その体の小ささと可愛らしさからカエルやコガネムシにお嫁さんとして誘拐されます。特にコガネムシが酷くて、誘拐した後は放置

お節介だけど優しいネズミのおばさんと出会いしばらく幸せに暮らすものの半ば無理矢理モグラのおっさんと結婚させられそうになる親指姫
断りきれない親指姫はツバメと一緒に花の王国へ旅立ち、王国で花の王子に見初められた親指姫はマイアという名前を貰い幸せに暮らす

前半の親指姫の振り回されっぷりがひどい

ヘンゼルとグレーテル。とある消滅したおとぎ話編 次回に続きます




80: 裸王のファン 2015/07/02(木)02:16:56 ID:L4v

更新お疲れ様です。
キモオタの意志かっこいいな!久々に、裸王の活躍も見たいです。




81: 名無しさん@おーぷん 2015/07/02(木)10:43:21 ID:J2i

更新乙です(´∀`)
親指姫は赤ずきんちゃん以上にツンがきついなぁ…。ツンツンツンデレ?
キモオタの格好いいところが見れて幸せです!マッチ売りちゃんのところで涙出たよ…




84: 名無しさん@おーぷん 2015/07/03(金)23:07:28 ID:49e


キラキラした武器ってなんだよ。と思ったけどそういえばあの刀デコられてたなwww




85: 名無しさん@おーぷん 2015/07/04(土)17:31:56 ID:lWN

>>84
ワロタwwwwww
そういうことかwwwwww




86: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/05(日)22:46:40 ID:We4


シンデレラの世界 街へと向かう馬車


パカラパカラッ ガタゴト

ラプンツェル「ねーねー、おじさん!街に付くまであとどれくらい時間かかるかなー?」ヒョコ

馬車の運転手「そうですねー…この調子なら二十分もあれば着きますよ」

ラプンツェル「そうなんだ!楽しみだなー…この世界にはどんな面白いものがあるのかなー?見た事が無いものいっぱいあるかなー?」ワクワク

シンデレラ「駄目ですよラプちゃん、馬車が動いている時は座っていないと危ないから。怪我しちゃったら大変ですよ?」

ラプンツェル「そうだった!馬車に乗る時言われてたのに忘れてたよー、馬車の中では大人しくしてないと危ないんだったよね」ストンッ

シンデレラ「そうですよ、馬車は急に揺れたりする事もあるから……さぁ、座席に座って到着するまでお話ししながら待ちまsy」

ラプンツェル「うわーっ!二人とも見て見て!あんなに遠くに見えるのにすっごく立派なお城!ねぇねぇ、あれがシンデレラの住んでるお城?」バッ

シンデレラ「ええ、国王と一緒に。でもこうして改めて見るとあの立派な城に自分が住んでいるなんて少し実感わかないなぁ……確かラプちゃんは塔に住んでr」

ラプンツェル「ねぇねぇシンデレラ!あっちにある大きな水たまりって海だよね!本で読んだことあるよ!海の水は塩っ辛い水なんだよね?」ウキウキ

シンデレラ「あれは海じゃなくて湖だね。少し街から離れているけれどこの辺りでも特に大きな湖だから観光目的の旅人で賑わっt」

ラプンツェル「あっ!向こう側からも馬車が来たよ!おーい!こーんにーちわー!あっ!手振り返してくれたよ!」ブンブン

シンデレラ「桃太郎さん……私、ラプちゃんに嫌われているのでしょうか……最後まで話聞いてもらえないんですけど……」ズーン

桃太郎「気に病む必要などあるまい…拙者ですら見慣れぬ西洋文化に心躍っているのだ、外界と隔絶された塔で生活していたラプンツェルが様々な物に興味を持つ事は詮無き事」




87: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/05(日)22:49:11 ID:We4

シンデレラ「確かに初めて見る世界というのはワクワクしてしまいますもんね…私も初めてお城に行った時そうだったなぁ…」

桃太郎「ゴーテル殿の話ではラプンツェルが塔の外に出たのはほんの何日か前。見る物感じる物すべてが新鮮なのだろう…少々羽目を外すくらい温かい目で見てやってもよいだろう」

シンデレラ「もちろん、ラプちゃんが楽しいなら私は良いんですけど…嫌われちゃったと思って心配しちゃいました」フフッ

桃太郎「嫌われるような事などしていないだろう…何故、そこまで気にするのか…?」

シンデレラ「えっと…恥ずかしながら私、同年代の女の子の友達って居なかったんです」エヘヘ

シンデレラ「お義母様やお姉様と暮らしている時は朝から晩まで家事に追われていて、同年代の女の子みたいにお洒落したり遊びに行ったりできなかったから…」

桃太郎「ふむ……故にラプンツェルはお主にとっては初めての同年代の友人というわけか」

シンデレラ「そうなんです。もちろんティンクちゃんやマッチ売りちゃん、赤ずきんちゃんもお友達ですけど…私にとっては妹みたいな感じなので、どちらかというとしっかりしたお姉さんしなくちゃって気持ちになっちゃうんです」フフッ

シンデレラ「だからゴーテルさんにラプちゃんを紹介された時は嬉しかったなぁ…やっと私にも一緒にお洒落したりお出かけしたりできる女の子の友達ができるんだって!そんな風に思ったら笑顔が隠せなくなっちゃいました」ウフフ

桃太郎「ふむ、ゴーテル殿がわざわざ拙者の世界に出向きこの世界へ案内した事…拙者をラプンツェルやシンデレラと引き合わせた事……その目的は察しが付くが……」

桃太郎「その本来の目的はさておき……こうして新たな出会いへ導いたくれた事、ゴーテル殿には感謝せねばなるまい」

シンデレラ「はい!もちろん、桃太郎さんとお友達になれた事も私はすごく嬉しいですよ」ニコッ

桃太郎「それは拙者とて同じ事、お主と状況は違うが……鍛錬や修行漬けであった拙者も似たようなものだ、おそらくはラプンツェルもな」

シンデレラ「それじゃあ私達は友達少ない仲間ですね」ニコッ

桃太郎「事実とはいえその呼び名はもう少し何とかならぬのか?」フフッ




88: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/05(日)22:50:23 ID:We4

シンデレラ「それにしても…何故なんでしょうか?」

桃太郎「何故、とは…?」

シンデレラ「魔女のゴーテルさんが娘のラプちゃんと別世界の桃太郎さんを連れて私達の世界へ来た理由です」

シンデレラ「今朝、魔法使いさんから「客人が来る、その者がお前にも用事があるようだ」と連絡があって…今日は特に重要な予定もなかったので向かってみるとそこには桃太郎さんとラプちゃんが居て…」

桃太郎「うむ、拙者も突然目の前のゴーテル殿が現れてな……事情を聴いた所キモオタ達の知り合いだという。信用できるようなので話を聞いてみたところ、力を貸してほしいと言うので着いて来た次第」

シンデレラ「でも少し一緒にお茶をしたらゴーテルさんは魔法使いさんと大事な話があるとかで……込み入った話だからその間に桃太郎さんとラプちゃんを街に案内して欲しいと言われて…」

桃太郎「こうして今、馬車なるものに揺られて街を目指しているわけだったな…」

シンデレラ「私は楽しいんですけど…ゴーテルさんは何故桃太郎さんや私も呼んだんでしょうか?魔法使いさんに用事なら一人で行くでしょうし……」

桃太郎「ゴーテル殿が拙者等を引き合わせた理由か。おそらくだが……拙者とシンデレラ、ラプンツェルの三人で街へ見物に行くことこそが真の目的ではなかろうか?」

シンデレラ「私達が街へ行く事がゴーテルさんの目的…?それってどういう事でしょうか?」

桃太郎「うむ、我らはアリスとの戦いを控えている。故に……」

ラプンツェル「ねぇねぇ桃太郎!桃太郎!」ニコニコ

桃太郎「うむ、どうした?景色を眺めていたのではなかったのか?」

ラプンツェル「あのね、桃太郎ってお菓子好きで有名なんだよね?日ノ本一のお菓子大好き桃太郎って呼ばれてるんでしょ?」ニコニコ

桃太郎「正しくは日ノ本一の侍だ。…何故そのような誤った情報が伝わっているのだ、拙者は甘味好きとして名を馳せた訳ではないのだが…」




89: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/05(日)22:51:54 ID:We4

ラプンツェル「えーっ?だって桃太郎は鬼っていう凄くおっきくて強い種族を退治する為に鬼ヶ島に行ったんでしょ?」

桃太郎「正しくは『悪鬼』だ、鬼の全てが悪ではないのだからな。だがしかし、悪鬼征伐の為鬼ヶ島へ上陸した事は事実」

ラプンツェル「ママに【桃太郎】のお話聞いたけど、その鬼退治って他の人がいっぱい挑戦したけど失敗したんだよね?」

桃太郎「左様、そして都に悪鬼が攻め入り…人々が困り果てたため拙者に白羽の矢が立ったのだ」

ラプンツェル「それって命懸けのすっごく大事な戦いだったんだよね?」

桃太郎「うむ、その通りだ」

ラプンツェル「でもその命懸けの戦いのときでも、桃太郎はいつでもお菓子が食べられるように腰につけてたんだよね?」

桃太郎「いや待て、ラプンツェル」

ラプンツェル「これから大事な戦いだよ!って時におやつの心配してるなんてすっごいお菓子好きだよね、でも私もお菓子好きだからその気持ちわかるよ!」ニコニコ

桃太郎「きび団子の事を言っているのだろうが……これはその様な意図で常に持ち歩いているわけではない、拙者のきび団子は空腹を満たす為だけのものに非ず」

ラプンツェル「そうなの?なーんだ、桃太郎はお菓子大好きじゃないんだー」

シンデレラ「すいません。私も桃太郎さんってすごくお菓子好きな方だと思って、美味しいお菓子屋さん案内するつもりでした……」

桃太郎「ちょ……お主らの拙者への印象どうなってるの……」




90: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/05(日)22:53:25 ID:We4

ラプンツェル「でも持ってるのは持ってるんでしょ?桃太郎桃太郎、お腰に付けたきび団子いっこ私にちょーだい!」ニコニコ

桃太郎「うむ、きび団子か。あるにはあるが…」

ラプンツェル「ホントはね、みんなで食べようと思ってお菓子作って来たんだけど魔法使いの家に忘れてきちゃったんだぁ。そんでね、ちょっとお腹すいたなーって思ったんだけど、桃太郎ならお菓子持ってるかなーって」ニコニコ

桃太郎「すまぬが、このきび団子はただの菓子ではないのだ。共に強敵へと立ち向かう仲間同士がその勝利を祈願し、契りとして口にする物だ」

ラプンツェル「契りって約束の事だよね?きび団子で約束するの?」

桃太郎「今の拙者等ならば強敵とはアリスになるな…数々の魔法具を使い優位に立つアリスを止める事はおそらく至難の業。しかし、拙者等は必ずそれを成し遂げねばならない。その勝利の祈願と共闘の誓いとしてきび団子を食べるのだ。その覚悟が、お主にあるか?」

ラプンツェル「うん、あるよ!だからちょーだい!」ニコニコ

シンデレラ「即答するようなものじゃないと思うよラプちゃん…?」

ラプンツェル「んー…でもね、ママが言ってたよ?アリスやドロシーは悪い事しててー…それを止める為に桃太郎やシンデレラはキモオタ達と一緒に戦うんでしょ?」

桃太郎「左様、奴らがおとぎ話を消して周っている事は聞いた。悪鬼以上の悪行…見過ごすわけにはいかぬ」

ラプンツェル「だったら私だって戦うよ!私には桃太郎みたいに強くないし、シンデレラみたいに速く走ったり跳ね上がったりできないけど、この長い長い髪の毛があるからね!」フンス

ラプンツェル「悪い奴を縛りあげたりとかー、引っ張ったりとか高いところに登ったりとかいろいろできるから私も戦えるよ!だからきび団子とか関係無くて、私は最初っからみんなと一緒に戦うつもりだよ」ニコニコ

シンデレラ「そっか…桃太郎さん、ゴーテルさんが私達にラプちゃんを紹介して下さった理由…私、わかった気がします」

桃太郎「うむ、キモオタに協力しようという思いは拙者等だけではなかったのだな」

ラプンツェル「あっ!でもお腹すいたからきび団子は欲しいかも」ニコニコ

桃太郎「うむ、ラプンツェルもまた共に闘う戦友なのだ……やらぬ理由はあるまい」フフッ




91: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/05(日)22:54:42 ID:We4

馬車の運転手「王妃様、もうそろそろ街へ到着いたします。御準備を」

シンデレラ「あ、はいっ……では、準備をしましょうか……」

ラプンツェル「お話してたらすぐだねー、じゃあ忘れ物しないように準備しよっとー。桃太郎もそのキラキラした武器忘れないようにね」モチャモチャ

桃太郎「問題無い…拙者の荷物といえばこの愛刀・鬼屠りくらいのものだからな」

シンデレラ「桃太郎さん、ラプちゃん。街に着く前にお願いしたい事があります」クイッ

ラプンツェル「あれ?シンデレラ眼鏡なんかかけてどーしたの?そーいえばママもたまに眼鏡かけるよ、それとおんなじ?老眼鏡?」

シンデレラ「ち、違いますよ!これは度の入っていないダテ眼鏡です、変装用の眼鏡で老眼鏡じゃないですよ!?」

桃太郎「シンデレラは王妃という立場、民衆の前に易々と姿を出す事は好ましくないのであろう」

シンデレラ「それも理由の一つですけど……二人とも私のおとぎ話知ってますよね?」

ラプンツェル「うん!イジワルなお母さん達にいじめられてたシンデレラが魔法使いに手伝ってもらって王子様と結婚する話!ガラスでできた靴とか舞踏会で恋しちゃうとかすっごくロマンチックだよぉー」ニコニコ

桃太郎「それが……どうかしたというのか?」

シンデレラ「私が国王…王子様と結婚してめでたしめでたし。で、お話は終わってますけど……実は最近困ったことになってしまって……」

ラプンツェル「困った事?なになに?私がお手伝いできる事なら手伝うよ?」

シンデレラ「他の国にまでウワサが広まりすぎてしまったんですよ……『平民でありながら王子と結婚して王妃になった娘』のウワサが……」




92: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/05(日)22:56:57 ID:We4

シンデレラ「この国の王妃シンデレラは平民の出でありながら、舞踏会で王子様に見染められて王妃となった……このウワサが余所の国まで広がりすぎてしまって……」

シンデレラ「『この国に住む平民の女性は王子の目に止まるほど器量良しだ』みたいに伝わってるようで、余所の貴族や王族がお忍びで結婚相手を探しに来ているみたいなんです」

ラプンツェル「…?でもお客さんがいっぱいだったら良い事じゃないの?賑やかなのは良い事だよ!」

シンデレラ「確かに…来訪者が増えて国の経済は上向きなんですけど……今度はその婚約者探しの貴族達がこの国に来ているというウワサを聞きつけた女性の観光客も多く来てしまってですね……」

桃太郎「二匹目のどじょうを狙っているのだな、シンデレラが平民でありながら王族になれた…その成功を真似て、自分も玉の輿に乗ろうという娘が多く訪れているという事か」

シンデレラ「そうなんです、私は玉の輿に乗りたくて王子様と結婚したわけじゃないんですけど……」

ラプンツェル「そんな風に思われるのは嫌だねー、私もおーじと結婚したらそんな風にいわれるのかなー?」

シンデレラ「それはまだ耐えられますけど、その女性達の間で私はなんだか伝説と化してるみたいで……この間も国王と街の視察に出かけた時にその女性達に囲まれてしまって、もう大きな騒ぎになってしまって」

桃太郎「目の前に王族との結婚という大きな成功を収めた人物が居る、あやかりたいという気持ちはわからんでもないが……」

シンデレラ「どうやって王子様に気にいられたのかとか、ドレスはどこで仕立てたのか、靴のサイズは幾つだとか質問攻めにあってしまって…」

シンデレラ「何故か『シンデレラのガラスの靴に触れると結婚できる』なんていうおまじないみたいなのも流行っているみたいで……挙句にシンデレラストーリーなんていう言葉まで作られてしまう始末でもう、私は変装なしでは街に出られないんですよ……」

ラプンツェル「触ると結婚できるんだぁ、へーっ……ガラスの靴ってそんな魔法もあるんだねぇー」ニコニコ

桃太郎「いや、無いだろう…。あまりの奇跡的な出来事に周囲が盛り上がりすぎているだけだ…拙者にも似た経験がある、桃太郎に撫でてもらうと強い子供に育つと都の母親の間でウワサになってしまってな……あの時は大変だった」




93: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/05(日)23:01:02 ID:We4

シンデレラ「ですから……街では私の事を大きな声で呼ばないようにしてほしいんです、大騒ぎになってしまうので。特に……ラプちゃん、お願いね?」

ラプンツェル「まかせてよ!私、絶対に大きい声でよんだりしないよ!安心してね、シンデレラ!」フンス

シンデレラ(大丈夫かな……)

桃太郎「偽名を使うというのは…?変装して居るのならば、偽名さえ使えば気づかれる事もそうそうあるまい」

シンデレラ「あっ、いいですね!それなら以前裸王様に付けてもらったシンディという偽名で……」

ラプンツェル「えーっ?シンデレラとシンディ似てるからきっとばれちゃうよ?他のにしようよー」

シンデレラ「他の…?例えばどんな?」

ラプンツェル「んーとね、シンデレラって名前は『灰かぶり』っていう意味なんだよね?」

桃太郎「確か……姉に付けられた別称だったと思うが……」

シンデレラ「ええ、元はお姉様にイジワルで付けられた名前ですけど……今は嫌いじゃないです、私は『灰かぶり』だったから今の自分があるんです」ニコッ

ラプンツェル「じゃあこうしよう!私の世界の言葉では『灰かぶり』の事をシンデレラって言わないんだよ、私の世界では『灰かぶり』の事はね……」




ラプンツェル「『アシェンプテル』っていうんだよ!だからシンデレラの偽名もそれにしたらいいよ!」ニコニコ

ラプンツェル「『灰かぶり』だけど『灰かぶり』じゃない、もうひとつのシンデレラの名前にしよ!」ニコニコ




94: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/05(日)23:03:23 ID:We4

シンデレラ「別の世界の言葉ならわかる人もいないし……いいかもしれないですね」

ラプンツェル「でしょ?シンディよりかっこよくてかわいいよ!」

桃太郎「拙者も良いと思う。それに偽名とはいえ、名前は神聖なものだ……適当に決めるよりはずっと良い」

シンデレラ「神聖な…ですか?」

桃太郎「うむ、拙者の世界には名前を言い当てられるとその力を失う鬼が存在したという言い伝えもある。確か……鬼六という名前だったか」

ラプンツェル「あっ、私も昔ママに聞いた事があるかも!名前を当てられたら魔法が解けちゃうおはなし!でもあのおはなしの名前何だっけ……?忘れちゃった!」ケラケラ

シンデレラ「全然別の世界なのに似たような言い伝えがあるんですね…」

桃太郎「それだけ名前というものは神聖視されているということであろう、それに名前が違うだけで印象もずいぶんと変わるものだ」

ラプンツェル「うん!シンデレラだと優しくて良い子のイメージだけど、アシェンプテルはなんか悪い子のイメージ!同じ『灰かぶり』って意味なのに不思議だね」ニコニコ

シンデレラ「悪い子のイメージの名前を友達に付けるってどうなのラプちゃん…」ズーン

ラプンツェル「大丈夫だよ!シンデレラが悪い子になっちゃっても私達が良い子に戻してあげるから!」ニコニコ

馬車の運転手「皆さん、到着しましたよ。さぁ、足元をお気をつけて」

ラプンツェル「わーい!じゃあ私が一番乗りー!」

シンデレラ「桃太郎さん…やっぱり私、ラプちゃんに嫌われてるんじゃ……悪い子になる前提って……」ズーン

桃太郎「案ずるな、おそらく悪気はないのであろう……」




95: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/05(日)23:05:09 ID:We4

シンデレラの世界 城下町

ザワザワ ザワザワ

ラプンツェル「わーっ!いろんなお店がいーっぱいある!あっ!今一番おしゃれな髪飾りだって!」タッタッター

シンデレラ「ラプちゃん!一人で走って行っちゃはぐれちゃいます!」

ラプンツェル「平気だよー!もしはぐれちゃっても私の髪の毛目立つから大丈夫ー!」ニコニコ

シンデレラ「もう…ラプちゃんは目をキラキラさせて子供みたいですね」フフッ

桃太郎「しかし、本当に女性が多いなこの街は……仮にシンデレラの存在がバレて騒ぎになったとして…これだけの人数に囲まれては確かに身動きが取れぬ……」

シンデレラ「はい。でも今日は変装もしてますし、ラプちゃんが考えてくれた偽名だってあります。目立たないようにしておけば見つからないはずです」ウフフ

桃太郎「確かにそうだが……しかしラプンツェルは少々天真爛漫が過ぎる、うっかり口にする可能性も無くは無いだろう。あまり離れないようにした方がいいのではないか?」

シンデレラ「いくらなんでもあれだけ言って偽名まで考えたんですから、流石に私の名前を呼ぶなんてミスしませんよ」ウフフ



ラプンツェル「おーいっ!あっちに美味しそうな食べ物売ってるよー!早く行こうよ!桃太郎ー!シンデレラー!」ニコニコ

シンデレラ「ラプちゃん!?なんで私の名前呼んじゃうんですか!?」ガーンッ

ラプンツェル「えっ?だってシンデレラはシンデレラ……あっ!言っちゃダメなんだった!」アセアセ

ザワザワ ザワザワ

桃太郎「……ラプンツェルの前では素の拙者を見せぬように気をつけた方がよさそうだ。いや、そんなことをいっている場合ではないな」ボソッ




96: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/05(日)23:06:44 ID:We4

「今シンデレラって聞こえたけど!?まさかこの街に!?」
「私達、婚活女子にとっては伝説の存在である王妃様に会えるなんて感激!」
「良い時に街に来たわね、王妃様に玉の輿に乗る秘訣を教えてもらわなくっちゃ!」
「うおおぉぉ!王妃様のガラスの靴に触れば私も玉の輿だあああぁぁぁ!!よっしゃああああ!!」
「シンデレラ王妃を探せぇぇぇ!!」

ザワザワ ザワザワ

ラプンツェル「ち、違うよ!間違えちゃっただけだから!この娘はシンデレラじゃないからね!?みんなー!この娘はシンデレラじゃないよ!だから人違いだよー!」アセアセ

シンデレラ「ラプちゃん!?な、なんでそんな目立つ事しちゃうんですか!」ガーン

ザワザワ ザワザワ

桃太郎「悪意が無いという事は時として悪意に満ちている事よりも恐ろしいのだな……」

「うおぉぉぉ!あの子シンデレラって呼んでたわよ!あの人が王妃様よ!きっと!」
「シンデレラ王妃ぃぃぃ!私に王族のイケメン紹介してくださいぃぃ!!」
「ずるいわよ!シンデレラ王妃!私にも、私も玉の輿に乗せてください!」
「やっぱり決め手はガラスの靴ですか!?履くならピンヒールがいいんですかね?ガラスの靴でうまいこと踏みつければ私も女王に…!」
「王妃様を捕まえろー!いろいろ聞きだすのよ!」

ドドドドド

シンデレラ「あわわ……」ガクガク

桃太郎「この人数……刀を使うわけにいかぬとなると難しいが……やむを得ん、友を守るため。桃太郎推して参る!」キリッ




97: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/05(日)23:08:31 ID:We4

「あーっ!あっちの路地の方にガラスの靴を履いた王妃様が凄い速さで走って行ったよー!」

「本当でござるなwwwあのガラスの靴に煌びやかなドレスwwwあれは間違いなく王妃様でござるなwww」

「なんですって!?あっちに王妃様が!?この娘がシンデレラ王妃なんじゃないの!?」
「確かによく見たら綺麗っちゃ綺麗だけど眼鏡だし洋服もそんな豪華じゃないし…まさかニセモノ!?」
「あの髪の毛長い子に騙されたって訳!?なんて人騒がせなうそつき娘かしら!キィィー!」

ラプンツェル「あーっ!うそつきって言った!私、嘘なんてついてないんだかr」モガモガ

シンデレラ(もう!ラプちゃんはちょっと黙っていてください!)ギューッ

「速く追いかけないと見失っちゃうよ!みんなあっちの路地だよ!急いで急いで!王妃に追い付けなくなっちゃう!」

「おそらくwww見事追い付けば王族のイケメンを紹介してもらえるのではwww」コポォ

「なんですって!?うおおおぉぉ!私が先だああぁぁ!!」
「させるかぁ!王妃待てぇー!逃がさないわよぉおおぉ!!」
「クッ、流石に逃げ足がはやい!でも諦めない…!」

ドドドドド

シンデレラ「な、なんとか誤魔化せました……」ギュー

ラプンツェル「んーっ!んーっ!」モガモガ

桃太郎「あの者達の鬼の様な気迫……この街、第二の鬼ヶ島と言っても過言ではあるまい……」

ティンカーベル「過言だよ!でも正直、私もちょっと怖かった…なにあれ……」

キモオタ「というかwwwお主ら一体何をしているのですかなwww危険な気配を感じたのでとりあえずあの者達を撒きましたがなwww」デゥフ




98: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/05(日)23:10:18 ID:We4

街の隅 隠れ家系カフェ

ラプンツェル「シンデレラごめんね…?私、ちょっと間違えちゃった」テヘヘ

シンデレラ「良いんです、私も友達とのお出かけに舞い上がってしまって……ちょっと軽率でしたね」

キモオタ「王子殿と結婚してめでたしめでたし…という訳にはいかなかったでござるかwwwまぁwwwウワサなど一過性のものでござるよwwwじきに収まりますぞwww」コポォ

ティンカーベル「私はあの騒ぎもだけど桃太郎とラプンツェルがここに居ることにびっくりしたよー!」

キモオタ「とは言ってもwwwラプンツェル殿のヒントのおかげでシンデレラ殿と一緒に居るのは予想できましたがなwww」

ティンカーベル「桃太郎の刀…本当にキラキラになってるね!なんか現実世界の女子高生とかがスマホにやってるやつみたい!」

キモオタ「デコ刀とは斬新なwww」コポォ

桃太郎「この装飾はとある友人が施した物……その友人とはもう会えぬ故、彼女が確かに世界に存在したという証。そして侍の魂を易々と手渡してはいけないという拙者への戒めだ」

ティンカーベル「よくわかんないけど……なんで桃太郎とラプンツェルはここにいるの?」

ラプンツェル「二人と友達になるためだよー、それに桃太郎にはもうきび団子も貰ったよ」ニコニコ

ティンカーベル「友達になるため……?きび団子……?えっ、本当にどーゆうこと?」

キモオタ「きび団子wwwきび団子を食べたからには拙者の家来だwwwとか言ってラプンツェル殿にwwwあんなことやwwwこんなことをwww命じるわけですなwww」コポォ

桃太郎「拙者は日ノ本の男児、その様な不埒な真似はせぬ…!」

キモオタ「冗談ですぞwwwシンデレラ殿www説明お願いできますかなwww」コポォ

シンデレラ「はい、そんなに複雑な話でもないんですが…えっとですね」

・・・




100: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/05(日)23:12:23 ID:We4

シンデレラ「ラプちゃんのお母様、ゴーテルさんが魔法使いさんのお家にいらしてですね、そのときにラプちゃんと桃太郎さんと知りあったんです」

桃太郎「拙者はゴーテル殿に力を貸してほしいと言われ、この世界へ同行した」

ラプンツェル「それでね、ママは魔法使いと大事な話があるから私と桃太郎とシンデレラで街に見物に来たんだよ」ニコニコ

ティンカーベル「そういうことなんだね!でもさ、なんで桃太郎も?ラプンツェルはまだわかるけど」

キモオタ「この世界で戦うことになる訳でもないというのにwwwボディーガードとしては気張りすぎでござるしwww」コポォ

桃太郎「その件は先ほど、シンデレラとも話したのだがな…拙者の推測だがおそらくゴーテル殿の我らに対する計らいだ」

ティンカーベル「どーゆうこと?」

桃太郎「我々は近いうちにアリスと刃を交えることになる。だが次々とおとぎ話が消えていっては戦う事が出来る人物は限られてくる」

桃太郎「拙者等ならば…おとぎ話は完結している、それに全員キモオタとも友人同士。何かしらの戦う手段を持っているという点も戦う役割を担うにはあつらえ向きだ」

シンデレラ「桃太郎さんは歴戦の戦士ですし、私も魔法のガラスの靴のおかげで多少は力添え出来ます。それに……」

ラプンツェル「私も長い長い髪の毛いーっぱい振り回してみんなと一緒に戦うからね!」フンス

キモオタ「三人とも心強いですなwww」




101: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/05(日)23:14:22 ID:We4

桃太郎「だが、共闘とは個々の力で戦うものではない。仲間同士の連携がうまくいかねば逆に実力すら発揮できないのだ…いくら各々が特別な力を持っていても、いざ戦闘になった際誰がどの程度どんな事が出来るのか…」

桃太郎「どういった戦局が苦手で、逆に最大限に力を発揮できるのはどういったあいての時か…それをお互いに理解していなければ難しい」

ティンカーベル「実際に戦うって段階で、ねぇねぇ君はなにができるの?なんて言ってる暇ないしねー」

桃太郎「そうだ、そしてお互いを理解するには共に行動をするしかない」

桃太郎「戦闘とは一見無関係な日常での会話、何気ないやり取りや、何という事のない生活を共にすることでお互いを理解し絆を深めあう……これこそが共闘を成功させる為に大切な事だ」

桃太郎「ゴーテル殿はそれをわかっていて拙者等が親睦を深められるように街の見物を提案したのだろう」

ラプンツェル「ママは私達の事を思って街の見物を勧めてくれたんだね!やっぱり私のママはすごい魔女だよ!」

シンデレラ「ゴーテルさんは優しいうえにそんなところにも気がきく素敵な方なんですね」フフッ

ラプンツェル「えへへー、凄いでしょ?私のママだからね!」ドヤァ

キモオタ「……しかし」

ティンカーベル「……うん、なんていうか」

桃太郎「どうした?何か解せぬ事でもあるのか…?」

キモオタ「こういうのも何なんでござるが…ゴーテル殿の真意はそこでは無いのでは……」




102: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/05(日)23:18:39 ID:We4

ティンカーベル「うん、私も違うと思う…」

桃太郎「あくまで拙者の推測、とはいえおそらく真実だと思うのだが…ならば二人が考えるゴーテル殿の真意とは?」

ティンカーベル「えっとね…多分だけど…ゴーテルは……」

キモオタ「ラプンツェル殿に友達を作ってあげたいだけでは……?」

一同「……」

シンデレラ「うふふっ、ティンクちゃんもキモオタさんもそんな冗談ばかりですね」クスクス

ティンカーベル「いや、冗談とかじゃなくてさシンデレラ……ゴーテルはそういう魔女だよ?」

桃太郎「フフッ、面白い冗談だが…シンデレラの言うとおりだ、何を言うかと思えば…それだけの為に我々を引き合わせたなど…フフッ、そんな魔女が居るわけないであろう」フフッ

キモオタ「二人はゴーテル殿の事そんなに知らないからそんな事を言えるんですぞwww」

桃太郎「しかしあまり失礼な事を言うのはよくないぞキモオタよ、ゴーテル殿の実力は本物だ。そのようなふざけた真似はせぬだろう」

キモオタ「まぁwww実際に聞いてみれば良いだけでござるがwwwどちらにしろ魔法使い殿に用事がありますのでwww」コポォ

ラプンツェル「じゃあさ!その前にしっかりと街で遊んでからにしよ!ママも街の見物しなさいって言ってくれたんだから遊ばなきゃもったいないよ」ニコニコ

シンデレラ「そうですね、ではもう少し念入りに変装をして…それから街を案内しますね」ニコッ

ラプンツェル「わーい!私ね、髪飾りのお店行きたいー!」ウキウキ




123: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/10(金)22:36:54 ID:mZC

しばらく後
シンデレラの世界 魔法使いの屋敷 


ラプンツェル「ただーいまーっ!ママー!魔法使いー!帰ったよぉー!」ニコニコ

ゴーテル「あぁ、おかえりラプンツェルや。街の見物は楽しかったかの?」

ラプンツェル「うん!すっごくたのしかったよ!シンデレラと髪飾りや洋服たくさん見てねー、桃太郎達が荷物持ってくれた!あとこれお土産のパンプキンパイだよ!ママと魔法使いで食べてね」ニコニコ

ゴーテル「おぉ……見たか魔法使い!?ワシらに土産じゃと!こんなに気が利く娘が他におるか?おらんじゃろ!?流石ワシの娘じゃ」バッ

魔法使い「……ああそうじゃな。ところでシンデレラと桃太郎はどうしたんだ?一緒じゃないのか?」

ラプンツェル「シンデレラと桃太郎はキッチンだよ。夕飯はシンデレラが作ってくれるって言ってた、美味しいごはん作るから楽しみにしててって!桃太郎達は買って来たお肉とかお野菜運んでたよー」

魔法使い「そうかい。シンデレラは王家に入る前は家事漬けの毎日じゃったから料理の腕はなかなかのものじゃぞ、楽しみにしてやってくれラプンツェル」

ゴーテル「シンデレラも料理得意なんじゃな…しかしまぁ、ウチのラプンツェルほどじゃないじゃろ?」

魔法使い「ほう、娘煩悩なのは結構な事じゃが……シンデレラよりお主の娘の方が勝ってるとでも言いたいのか?」

ゴーテル「シンデレラはワシの想像以上に良い娘じゃった。気が利く上に優しく品があるよくできた娘じゃ。まぁそれでもラプンツェルの方が可愛いがのぉ?」ホッホッホ

魔法使い「お主は魔法植物の権威だ。その実力は認めておる……だが、それは聞き捨てならんのぉ?『芽吹きの魔女』マザー・ゴーテル」ギロリ

ゴーテル「この地上に舞い降りた天使を目の前にしてその様な事をぬかすか、眼のかすみに効く魔法植物でも譲ってやろうかのぉ……『千変万化の魔法使い』よ」ギロッ

ゴゴゴゴゴ

ティンカーベル「もぉーっ!ゴーテルは相変わらずだしなんで二人険悪な感じなの?仲良くしなきゃだめだよ!」

キモオタ「それよりも我輩はお二人に二つ名があった事に驚きなんでござるがwww」コポォ




124: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/10(金)22:39:12 ID:mZC

ゴーテル「おぉ、キモオタにディンカーベル!久しい……というほどでもないが、変わりないようじゃな」ホッホッホ

魔法使い「お主ら、来ておったのか。遅かったな…その様子じゃと、シンデレラ達と街で会ったんじゃな?」

ティンカーベル「うん、そうだよ遅くなってごめんね…っていうかそれよりも!二人が喧嘩しちゃ駄目だよ!」

キモオタ「そうですぞwwwそんなことではシンデレラ殿とラプンツェル殿がwww悲しみますぞwww」

魔法使い「喧嘩などしておらん、少々意見が食い違っただけじゃ」

ゴーテル「魔法を専門にする者は我が強い事が多い、じゃから魔女の世界じゃこの程度の意見のぶつかり合いは喧嘩とは呼ばん。折角のママ友と争うのは避けたいしのぉ」ホッホッホ

キモオタ「ママ友wwwその表現正しいのでござるか?www」コポォ

魔法使い「そうじゃな、ワシはシンデレラの母親では無いのだからその表現はおかしい」

ラプンツェル「でもシンデレラがさっき言ってたよ?『魔法使いさんはとても良くしてくださって感謝してるんです、私は本当のお母さんの様に思っているんですよ』って!だからおかしくないよ」ニコニコ

魔法使い「そ、そうか……まったく、べらべらとあの娘は恥ずかしい事を……」フイッ

ティンカーベル「あーっ!魔法使いなんか照れてるー!」ニヤニヤ

魔法使い「ええい、お主らは魔法具を受け取りに来たんじゃろ!余計な事を言っておると渡すのやめてしまうぞ!」スタスタ

ティンカーベル「あっ、ごめん!もうからかわないからー!」ジタバタ

キモオタ「魔法使い殿をからかうなどwww良い度胸ですなティンカーベル殿www」コポォ

魔法使い「お主も大概じゃろうが……まぁよい、二人とも着いて来なさい。屋敷の庭で魔法具の試運転をするとしようか」




125: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/10(金)22:40:46 ID:mZC

魔法使い「さて……」チラッ

ゴーテル「うむ……どうやら大事な話のようじゃしワシらは席をはずすとしようかのぉ、ラプンツェル」

ラプンツェル「えーっ?私も魔法使いが作った魔法具見てみたいよ!一緒に庭に行って見学してようよ!」

ゴーテル「それも良いが…今キッチンに行けばシンデレラにこの国の料理を教えてもらえるかも知れんぞ?珍しい料理を王子に作ってやれば喜ぶと思うのじゃが、どうかの?」

ラプンツェル「それすごくいい!おーじはどんな料理でも美味しいって言ってくれるけど、見たこと無い料理ならもっと喜んでくれると思う!」ニコニコ

ゴーテル「と、いうことじゃから。あと任せたぞ魔法使い」

魔法使い「うむ、シンデレラと桃太郎にも庭には来ないように伝えとくれ」

ラプンツェル「それじゃあまたあとでね!キモオタ、ティンク!」フリフリ

ガチャッ

ティンカーベル「でも折角の魔法具だし、かっこいいところをゴーテルやラプンツェルにも見せたかったなー!」ワクワク

魔法使い「ゴーテルには前もってラプンツェルを連れて席をはずすようにワシが言っておいたんじゃよ」

キモオタ「ちょwww折角なので見てもらえばいいのではwwwゴーテル殿に助言頂けるかもしれぬのにwwwどうしてですかなwww」コポォ

魔法使い「どうしてって……お主……これからお主らの武器の試運転するんじゃぞ?」

魔法使い「巻き込んでは危険じゃからな……さぁ行こうじゃないか、時間が惜しい」スタスタ




126: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/10(金)22:43:38 ID:mZC

魔法使いの屋敷 庭

ティンカーベル「庭というよりほとんど森だねー」

魔法使い「では二人に頼まれていた魔法具…武器を渡すとしようかの。だがその前に……少し話をするとしようか」

キモオタ「ちょwwwここぞとばかりに焦らしますなぁwww」

魔法使い「キモオタ、ティンカーベルよ。今までお主らは多くのおとぎ話の世界を旅してきた事じゃろう。ティンカーベル、どんな世界へ行ったんだったか?」

ティンカーベル「えーっとね【シンデレラ】の世界行って【裸の王様】の世界に言ったでしょー?【泣いた赤鬼】に行ってそれからー……」

魔法使い「ふむ、どの世界でもお主らは戦いに巻き込まれる事があったじゃろう?」

キモオタ「そうですな、【マッチ売りの少女】の世界でブリキのきこり殿に歯が立たなくて、それで戦えるようになりたいと願ったんですぞ。そして武器を手にする事を決めたのでござった」

魔法使い「お主らは様々な世界で様々な敵に遭遇したじゃろう?」

ティンカーベル「思いだすといろんな敵が居たね、悪い大臣とか近くの国の兵士とか…あと鬼神になっちゃった赤鬼とか悪鬼とか……」

魔法使い「多くの敵に遭遇したじゃろう、ではここで質問じゃ……お主らは今までに何人殺した?」

キモオタ「ファッ!?こ、殺すとは穏やかではないですな……なんでござるかいきなり……」

ティンカーベル「そうだよ!なんなの突然、私達は悪い奴等を懲らしめたりはしたよ?でも殺しちゃうなんて……そんなの、違うよ。ねぇ?」

魔法使い「……ふむ、よかろう。では話を続けよう」




127: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/10(金)22:44:40 ID:mZC

魔法使い「少し話を変えるが……お主らはアリスとドロシーをどうするつもりじゃ?」

ティンカーベル「そんなの決まってるじゃん!すぐにでも悪い事するのをやめさせたい!だけど無理だからちょっとづつ力をためて勝てるようにする!」

キモオタ「捕えて、今までの悪行を反省させねばなりませんからなー…そしてなんとか魔法の力でおとぎ話を元に戻すとか……」

魔法使い「いや、ワシが聞きたい事はそうでは無くてだな……うーむ、それでは単刀直入に聞こうかの」

魔法使い「お前達はアリスやドロシーを殺すつもりなのか?」

ティンカーベル「ちょ、ちょっとまって!なんなの魔法使い、さっきから殺す殺すって……ちょっと落ち着こうよ」

キモオタ「そうですぞ?いくらアリス殿ドロシー殿が悪行の限りを尽くしたといえ、殺してしまってどうなるでござるか?何にも残らぬでござろう?」

魔法使い「お主らはアリス達を殺すつもりはない、というのじゃな?」

ティンカーベル「そりゃあ……あいつらは私の仇だから死んじゃえって思った事は……あるよ。でもそんなことしたって【ピーターパン】は元に戻らないし、殺しちゃうのってさ、あいつらがおとぎ話消してるのと一緒だよ?嫌だよそんなの」

キモオタ「むむむ……魔法使い殿はもしかして武器を持つ以上は殺しにかかれと言うのでは……」

ティンカーベル「そうなの!?もちろんあいつらにはお仕置きは必要だよ?罰を受けるだけの事はしてるもん、でも殺すなんて……」

魔法使い「待て待て、そうではない。お主らが殺意を持っていないことに関しては問題視していない」

キモオタ「ならば何故突然殺すだのなんだのの話を……」

魔法使い「武器を持つうえで必要な心構えの話をしているんじゃよ……わかるか、キモオタとティンカーベル」


魔法使い「お前達がこれから手のする武器は、容易く人を殺せる道具じゃ」




128: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/10(金)22:48:42 ID:mZC

魔法使い「殺す覚悟が出来ているから強いとか、殺す選択ができないから弱いなどという事は無いとワシは思う。強さはそんなところには存在せん、じゃからお前達の考えには口を出さぬ」

魔法使い「じゃがな、どうもお主らには武器を持つことへの自覚が無いように見える。武器を手にする事もせいぜい『アリス達に対抗する為の力』くらいの認識じゃろ?」

魔法使い「それでは駄目じゃ、武器を持つならばお主らは自覚する必要がある」

魔法使い「これから先、『自分は誰かを殺してしまう可能性がある』という事をな」

キモオタ「……」

ティンカーベル「ちょっと待ってよ!武器が欲しかったのは戦えるようになりたかっただけで……私達は誰かを殺しちゃおうなんて思ってないよ!」

魔法使い「……ティンカーベルはティーカップを割った事があるか?」

ティンカーベル「……何の話なの?」

魔法使い「あるじゃろ?あるいはグラスでも皿でも構わん。うっかり手を滑らせて割ってしまう、たんなる不注意で…自分は壊してしまうつもりなんか無くても床に落とせば食器は割れる」

魔法使い「武器を手にしているというのはな、ティーカップを手に持っているのと同じ状態じゃ。ふとしたはずみで、自分の意思とは関係なく、ちょっとした手違いで、ただの不注意でカップは壊れる」

魔法使い「それと同じように、武器は命を奪う。ふとしたはずみで、自分の意思とは関係なく、ちょっと操作を誤るだけで、ただの不注意で命を奪う、そしてそれは……味方の命かもしれない」

ティンカーベル「……」

魔法使い「武器と肉体を傷つける事に特化した道具だ、手にしていれば人の命など……ティーカップのように脆くなる」

魔法使い「ティーカップは買い直せるが、人の命はそうもいかない。だからこそお主らは自覚せねばならん、巨大な力を手に入れるという事はそれ以上の責任が圧し掛かるいう事をな」




129: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/10(金)22:53:40 ID:mZC

キモオタ「少し……軽く考えていましたな。そりゃそうでござるな、武器とはそういうものなんでござるから……敵を足止めしたり行動を止める為に武器を振るっても、しくじれば命を奪うに至ってしまう事も…ありますからな」

ティンカーベル「ごめん、魔法使い……私そんな事、全然考えてなかった」

魔法使い「待て待て、何を怖気づいておるんじゃ。ワシはお主らを落ち込ませる為にこの話をしたんじゃないぞ?」

ティンカーベル「そりゃそうだろうけど……なんか、ちょっと……考えちゃうよ。強くはなりたいけど……なんだか急に怖くなってきちゃったよ」

キモオタ「ティンカーベル殿www魔法使い殿は我々が軽い気持ちで武器を持って過ちを犯す前に忠告をしてくれたんでござる、ここで我輩達が落ち込んでどうするでござるかwww」

キモオタ「もう我輩たちは知ったでござるよ、うっかりしたり未熟だったりふざけていたり不注意だったりするとカップを滑り落としてしまうという事を、そうでござろう?」

ティンカーベル「そうだけど……」

キモオタ「だったらwwwうっかり手を滑らせないようにwwwしっかりとティーカップを持っていればいいのでござるよwwwそうすればカップは割れないでござるwww」

魔法使い「その通りじゃ、扱いをしっかりし注意深くしていれば問題無い。大事なのは危ない道具だと知る事、常に注意して扱う事じゃ。どうやら……少々脅かし過ぎてしまったようじゃな」

ティンカーベル「……じゃあ魔法使い、私練習しにこの屋敷に来ても良い?現実世界じゃ、あんまり武器の練習できそうにないからさ」

魔法使い「いいじゃろ、何もかまう事は出来んがこの庭は自由に使ってよろしい」

ティンカーベル「だったら頑張る!だって強くなりたいもんね!いっぱい練習してたくさん特訓して、ちゃんとした使い方が出来るようになるよ!」

魔法使い「うむ、自覚を持つ事は出来たようじゃな。じゃがなティンカーベル、今の気持ち……誰かを殺してしまうかもしれないという恐怖は大切な事じゃ、忘れないように鍛錬に励むようにな」フフッ




130: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/10(金)22:54:52 ID:mZC

魔法使い「まずはティンカーベルの魔法具…注文通りスリングショットと魔法弾を渡すとしようかの」

スッ

ティンカーベル「すごいね…私の手にしっかり馴染むちょうどいい大きさだよ!」ググッ

魔法使い「当たり前じゃろ、お主専用じゃからな。特に説明もいらんだろうが……いわゆるパチンコじゃな、弾をゴムの力で弾き飛ばす武器じゃ」

魔法使い「赤ずきんのマスケットの様な銃じゃないからのぅ、連射能力や単純な威力では流石に劣るが…かさ張る事は無いし何より重量をほとんど感じんじゃろ?」

ティンカーベル「うん、びっくりしてる!お花…ううん、小鳥の羽くらい軽いよ!」

魔法使い「軽いが強度の高い材質を使ったからそうそう壊れたりはしないぞ、これでお主の持ち味である機動力を落とさずに素早い遠距離の攻撃が行える」

魔法使い「肝心の弾は通常の鉛製の弾と魔法効果を付与した弾の二種類用意した。魔法弾は『高速で射出される弾』『皮膚に着弾するとかぶれる弾』『着弾すると圧縮したジャムが弾ける弾』の三つじゃ、他の弾はこれで慣れてからじゃな」

ティンカーベル「なんかズバーッ!って貫くとかボンッ!って爆発するみたいな攻撃的な弾が全然ないね……それとジャムの味って何?」

魔法使い「イチゴじゃ。慣れるまではそういう弾は避けた方がいいじゃろ」

キモオタ「我輩と戦っている敵を狙おうとして我輩に着弾してはえらい事でござるからなwww」

魔法使い「今渡した弾ではそうそうは大怪我にはならぬだろう、だが爆発やらおこす弾ではそうもいかん。そういう危険な弾は慣れてからじゃ」

ティンカーベル「うん、それは流石にちょっと困るなぁー……じゃあそうする」クスクス

キモオタ「ちょwwwっとwwwってwww大いに困っていただきたいwww」コポォ

魔法使い「なんにしろ当てられなくては意味が無い、あとはとにかく練習あるのみじゃな。では次はキモオタの魔法具じゃ」

スッ




131: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/10(金)22:56:15 ID:mZC

魔法使い「以前、お主が光る棒を振り回しながら珍妙な舞を見せておったじゃろ。あれから着想を得て作り出した魔法具じゃ」

ティンカーベル「あー、あのキモイ…ううん、キモチワルイ踊りでしょ?」

キモオタ「言いなおしたwwwというかまだ根に持ってるんでござるかwwwもういい加減に忘れていただきたいwww」

魔法使い「これは強力じゃぞ……?名付けて、おはなしサイリウム……!」

キモオタ「サイリウム……というよりも工事現場の作業員が振ってるアレに近いですなwww光る棒www」ピカー

魔法使い「この光を一定の動きで振ることで魔法を発動させる道具じゃ。これは魔法陣を媒介として魔法を発現させるという技法を応用したもので魔法具から放射される残光を利用して魔法を発現させるのに必要な門と発現させる魔法の情報を呼び出しそれを……」

キモオタ「ちょwwwもう少しわかり易くしていただきたいwww」

魔法使い「端的にいえば『一定の振り方をすれば特定の魔法が使える』という魔法具じゃな。呪文を唱えて魔法を放つ…という動作をサイリウムを振って魔法を放つ、という形式に置き換えただけじゃ」

キモオタ「ちょwwwつまりwwwいろんな魔法がwww使い放題www汎用性高すぎワロタwww」コポォ

魔法使い「サイリウムを握れば自然とお主の中に魔法を放つのに必要な動きが流れ込んでくるはずじゃ。そして、これがこの魔法具のキモなんじゃが……」

キモオタ「もしかしてwwwおはなしというからにはwwwおはなしウォッチと連動しているとかwww」コポォ

魔法使い「察しがいい奴だ。その通り、だからこそお前だけしかおはなしサイリウムは使えないんじゃ。お前が今までの旅で出会って来た大勢のおとぎ話の登場人物達……お主の友人達」



魔法使い「その友人との絆が、魔法の源になっているんじゃ」




132: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/10(金)22:58:36 ID:mZC

魔法使い「つまりお前の友人の数だけ魔法が扱えるというわけじゃな。シンデレラとの絆は『シンデレラ』の魔法を…同様にラプンツェルとの絆、桃太郎との絆……それぞれ別の魔法が存在する」

魔法使い「紡いだ絆の数だけお前は魔法の力を手にするわけじゃな」

ティンカーベル「絆が力になる魔法具!なんかかっこいいね!ゲームのキャッチコピーみたい!」ワクワク

キモオタ「テイルズ・オブ・なんちゃらみたいですなwww」コポォ

魔法使い「まずは脳内で『シンデレラ』の魔法をイメージしてるんじゃ、必要なサイリウムの動きが頭の中に浮かんでくるじゃろ?」

キモオタ「シンデレラ殿シンデレラ殿……おぉwwwこれはwww確かに必要な動きが頭の中に明確にwww」コポォ

魔法使い「それをまず動かせるようにイメージせよ。どういう事が出来るかも手に取るようにわかるじゃろ?」

キモオタ「なるほどwwwこういう事でござるかwww」コポォ

キモオタ「決められた動きをすることで、我輩の友人の力を借りる事が出来る……みたいな感じですなwww」

魔法使い「うむ、では早速実践に移ろうか。ワシが今からお前に向けて魔法を使う、お前はおはなしサイリウムで『シンデレラ』の魔法を使って回避するんじゃ」

キモオタ「わかりましたぞwwwちなみにwww魔法使い殿は我輩にどういう魔法を使うんですかなwww」



魔法使い「三秒後にお前の足元の地面一帯をマグマに変化させる。桃太郎の手を煩わせるのもなんじゃから失敗せんようにな。では開始じゃ、3、2……」



キモオタ「ファッ!?」ババッ




133: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/10(金)23:00:27 ID:mZC

キモオタ「ちょ、ちょっ!三秒!?余裕なさすぎでござろぉぉ!!」シュバババッ

ピカーッ

おはなしサイリウム「コード認識完了『シンデレラ』 魔法発現状態へ移行……モード『step』」

キモオタ「うおおぉぉ!間に合えでござるううぅぅ!!」グググッ

ヒュッ

ティンカーベル「あっ!キモオタが消えた!?」

魔法使い「……1、0。うむ、うまくいったじゃないかキモオタよ」ドロオォォォゴポゴポゴポ

キモオタ「ヒエッ…我輩が居た場所が赤々と燃えているのでござるが……」

ティンカーベル「キモオタが一瞬で木の上に移動してる!?ねぇねぇどういう事!?」

魔法使い「魔法の力であの高い木の枝までとび跳ねたんじゃ、シンデレラとの絆で発現した魔法『step』は舞踏を踏むような軽やかな跳躍と加速じゃからな」

キモオタ「まるでシンデレラ殿のガラスの靴のようでござるなwwwで、これどうやって降りるでござるかwww」コポォ

魔法使い「もう一度使って飛び降りれば良いじゃろ。さて、これで理解出来たじゃろ?おはなしサイリウムがどんな武器なのか」

キモオタ「わかりましたぞwwwこれは一度他の魔法も試してみる必要がありそうですなwww」コポォ

魔法使い「そうじゃが、跳躍と加速は扱いやすい基本の魔法じゃ。これを使いこなす事をまず目標にすればいいじゃろ」




134: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/10(金)23:02:43 ID:mZC

魔法使い「さて…これで説明は終了じゃが、このまま特訓へ移る。ある程度まで使いこなさねばな」

キモオタ「おおwww特訓とはいかにもですなwwwどれくらい特訓するんですかなwww三十分ですかなwww一時間ですかなwww」

魔法使い「うむ、まぁシンデレラの作る夕飯を楽しみにしておく事じゃな」

ティンカーベル「それって……夕ご飯までずっと特訓!?おやつは!?まだすんごく時間あるよ!?」

魔法使い「お主らはいつでも修行が出来るわけじゃないんじゃろ、出来るときにしっかりやっておかねばな。それともさっきの意気込みは見せかけかのぅ?ティンカーベルよ」

ティンカーベル「そんなことないよ!ちょっとびっくりしただけ!だからいくらだって特訓頑張るよ、なにしたらいい?なんでもやるから!」フンス

魔法使い「うむ、よろしい。では始めようか……デイジー、出番じゃ」

デイジー「チュウチュウ」チョロチョロ

キモオタ「おおwww今日は馬の姿ではないのですなwwwあれからここに住み着かせてもらっているのでござったかwww」コポォ

魔法使い「そやつがどうも二人の特訓に付き合いたいようなそぶりを見せていたのでな。特訓の内容じゃがデイジーと他の森の小動物達が的を持って木陰から飛び出す。ティンカーベルはひたすらその的を撃ち抜く。簡単じゃろ?練習用のもしも当たっても痛くない弾じゃ、これを使うと良い」

ティンカーベル「うん、ありがと!私の特訓は動く的を狙う練習だね!あとでお礼しなきゃ!」

キモオタ「森の動物達と特訓とはwww妖精となると特訓もファンタジーですなぁwww我輩の特訓はどのような内容ですかなwww」

魔法使い「ワシがただひたすらにお前に攻撃する。なに、くたばりかけの老人の攻撃など余裕じゃろ?どの魔法を使ってもよいからとにかく倒れぬように頑張れ」ゴゴゴゴゴ

キモオタ「ちょ……手のひらで渦巻いている明らかにヤバそうなその球体は一体……」

魔法使い「安心せい、魔力を圧縮したものじゃ…まぁ、死にはせんじゃろ。では特訓開始じゃ」ゴオォォ

ヒュン

キモオタ「ぶ、ぶひいいぃぃぃぃっ!!老人はそんな攻撃してこないでござるよぉぉぉ!!」ドタドタドタ




135: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/10(金)23:04:46 ID:mZC

数時間後… 魔法使いの屋敷 食卓

ラプンツェル「でねー、たくさんお世話になったお礼しなきゃと思ってシェヘラザードとシンドバットをお昼ご飯に誘ったんだ!」

ラプンツェル「でもシンドバットがすぐに女の子に声掛けに行っちゃってー、約束してた時間より遅くなっちゃってシェヘラザードがすっごく怒ってた!」

ラプンツェル「『あなたにはおとぎ話の主人公である自覚は無いのですかー!』って、でもシンドバット全然気にしてなかった」ニコニコ

ティンカーベル「ぷーっ!そのモノマネ似てるー」ケラケラ

桃太郎「一面砂地の国とは珍しい、拙者もまだまだ見聞を広めなければならんな……」

桃太郎「しかし、その者は見ず知らずの女性に軽々に声を掛けるなど…少々軟派が過ぎる者のようだ。拙者の国では考えられぬ」

シンデレラ「桃太郎さんはそういうの苦手そうですよね、恋愛に関して真面目そうに見えます」ニコニコ

桃太郎「うむ、男女の付き合いというのはそのような軽々しいもので無く、もっと厳かなものであるべきで……」

ティンカーベル「とか言って本当は女の子に声かける勇気が無いだけでしょ?」ニヤニヤ

桃太郎「……そんな訳があるまい、拙者は日ノ本一の侍桃太郎。我が故郷では引く手数多よ」フイッ

ラプンツェル「ウソだウソだー!桃太郎ウソついてる顔だー!」ニヤニヤ

ワイワイ ガヤガヤ

ゴーテル「可愛い娘が楽しそうに友人と談笑しておる……なんとも感慨深いもんじゃなぁ……」ホロリ




136: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/10(金)23:07:29 ID:mZC

魔法使い「夕食は静かに摂るのが好みなのじゃが、たまには賑やかな食卓も悪くない物じゃな」フフッ

ゴーテル「ワシは断然賑やかに食事派じゃ。しかし若者が楽しげにしている姿は見ているだけで自分も若返っていくようじゃなぁ……それに引き換え」チラッ

キモオタ「」ゼハーゼハー

ゴーテル「なんじゃキモオタ、会話に参加せんか!少々魔法使いに稽古をつけてもらったくらいで大げさな…」

キモオタ「跳躍にしろ加速にしろ体力を使うので……しかし……身をもって体感しましたぞ、死ぬかもしれないというギリギリの戦いを……我輩もこれで歴戦の戦士の仲間入り……ドゥフ……」ゼハーゼハー

魔法使い「まぁよくついて来たもんじゃ。割と本気の攻撃を織り交ぜたりしたからな、正直なところワシも今日はくたびれた。シンデレラや、ワシはもう一杯スープを貰おう」

シンデレラ「はーい、キモオタさんは全然食べてませんけど…何か取りましょうか?」

キモオタ「ありがたいでござるが……動きすぎて正直、食べる気しないでござる……腹は減っているのに入る気がしないという……なんでござるかこれ……」ゼハーゼハー

ティンカーベル「しかたないなー!私がお水持ってきてあげるよ、私も特訓し過ぎてあんまり食べらんないから辛いのわかるよー」モグモグ

魔法使い「肉を頬張りながら何を言っているんじゃお主。しかし若いんじゃからもうちょっとタフネスを見せんかキモオタ」

ゴーテル「そうじゃな、シンドバットの様になれとは言わんが。いい若い男が浮いた話の一つもないとは……」

ピクッ

キモオタ「デゥフフwwwところがどっこい……あるんでござるよ、ゴーテル殿……」フラァ

ティンカーベル「うわぁ……また調子に乗るよキモオタ……」




137: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/10(金)23:10:01 ID:mZC

ゴーテル「ほう、意外じゃな……色恋とは無縁だと思っていたが」

キモオタ「実は我輩、先日デートに誘われましてなwwwいやはや我輩にもモテ期が来ましたぞwww」コポォ

ティンカーベル「またそんな自慢げに言ってー……」

シンデレラ「まぁ!でも当然ですよね、キモオタさんは優しい方ですから。私、応援してますよ」ニコニコ

ゴーテル「お主……そんな見栄を張ったところで空しいだけじゃぞ?」

ラプンツェル「あっ、わかった!新しい魔法具でしょ?あとでどんな魔法具使ったのか教えてよー」ニコニコ

桃太郎「友の言葉だ、拙者は嘘などと思わぬ。だがうまい話には裏があるもの……用心せよキモオタ」

キモオタ「ちょwwwある程度の予想はしていたものの酷い言われようwww」

ティンカーベル「あはははっ!シンデレラ以外誰も信じてない…!ぷぷぷっ……」バンバン

魔法使い「お前たちもう少しキモオタを信用してやれ、相手の娘が物凄い物好きなだけかもしれんだろう。そしてティンカーベルは笑いを堪えるならちゃんと堪えろ」

キモオタ「まぁいいでござるけどwwwところで魔法使い殿とゴーテル殿に相談がありましてwww」

ゴーテル「ふむ、まぁお主の言葉が事実だとして……ワシらに力を借りたいという事は魔法絡みじゃろ?」

キモオタ「そうでござるwww実は当日に着ていく服をどうするか悩んでおりましてなwww我輩としてもこのチャンスをモノにしたい故に、恥ずかしい恰好は出来ないのでござるwww」

キモオタ「ファッションセンスが向上する魔法とかないでござるかねwwwあれば使ってもらいたいのでござるがwww」




138: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/10(金)23:12:34 ID:mZC

魔法使い「んなもんあるわけないじゃろ。服装のセンスの良さなんかワシらが一番程遠いじゃろうが」

ゴーテル「まぁワシは母親としてそこそこの服装をするよう心がけてはおるが、まぁ基本仕事着はローブじゃからなぁ…ワシらは」

キモオタ「駄目でござるか……他に誰か居ないでござるか?裸王殿に頼めば筋トレからになるでござるし、シェヘラザード殿や桃太郎殿や赤鬼殿は文化が違いすぎるでござるし、赤ずきん殿には一蹴されそうでござるし…シンデレラ殿は…」

シンデレラ「すいません、私…いつも着古しでしたしあまり洋服選びのセンスは無いと思います。ごめんなさい、力になれなくて…」

キモオタ「いやいやwwwシンデレラ殿は悪くないのでwwwしかしどうしたもんですかな……」

トントン

ラプンツェル「キモオタ!大丈夫だよ!私がいるよ!私が選んであげるよ!そーいうの得意だから!」ドヤァ

キモオタ「……」チラッ

ゴーテル「なんでこっちを見るんじゃ、ワシの顔色なんか窺わずに言いたい事言えば良いじゃろ」

キモオタ「ええwwwだってラプンツェル殿は先日まで塔に籠りっきりだったでござろうwww洋服のセンスなどないのではwww」

ゴーテル「そんなわけないじゃろ!ワシの娘じゃぞ!」バンッ

キモオタ「ほらwwwやっぱり怒るでござろうゴーテル殿www」

シンデレラ「でもラプちゃんは洋服のセンス素晴らしいと思いますよ?今日買い物した時も素敵な洋服を見立ててくれましたし、確か自分で洋服作ったりもするんですよね?」

ラプンツェル「そうだよ!確かに塔の中に居たから外の世界の流行りとかそーいうのはわかんないけど、でもキモオタに似あう洋服をばっちり選ぶ自信はあるよ!」フンス




139: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/10(金)23:16:33 ID:mZC

ゴーテル「まぁラプンツェルがワシの天使だという事を置いておいてもじゃな、この娘のセンスは信用してもいいと思うぞ」

桃太郎「うむ、拙者には着物のせんすなどよくわからぬが……ラプンツェルの着物は実によく似合っている、自分に似合う着物を心得ているように思う」

ティンカーベル「料理も得意だし絵もうまいし、全体のバランスとか色の選び方とか得意なのかもね!」

シンデレラ「髪飾りも可愛いものや似合うものをすぐに選んでましたし、きっと生まれ持った才能なんですよ」ニコニコ

ラプンツェル「いやー、そんなふうにみんなに褒められると照れちゃうなぁー」テレテレ

キモオタ「そう皆がいうのならばwwwラプンツェル殿に洋服選びをお願いしたいですなwww」

ラプンツェル「まかせてよ!おーぶねに乗ったつもりでいていいよ!何倍もカッコイイキモオタを見せたげるよ!」フンス

キモオタ「では頼みますぞwww期待しているゆえにwww」コポォ

ゴーテル(ワシの娘が皆に褒められ、そして頼られている……感無量じゃなぁ)ホロリ

ラプンツェル「それじゃあそういう訳だからいいよね?私、キモオタの洋服選び手伝いに行っても良いよね?」

ゴーテル「ああ、もちろんじゃ。皆がお前のセンスを信じて信用してるんじゃ、ワシに止める権利などありゃせんからのぉ」ホッホッホ

ラプンツェル「やった!絶対ママには反対されると思ってたよー!」

ゴーテル「本来なら反対じゃがな。いいんじゃよ、お前に何かあったらキモオタとティンカーベルを塵にすると言っておけば死ぬ気で守ってくれるじゃろ」ホッホッホ

ティンカーベル「私も!?」ガーン

キモオタ「ちょwwwなんwwwでwwwさらっと恐ろしい事を言わないでいただきたいwww」コポォ

ラプンツェル「それじゃあママ!しばらくの間、現実世界に遊……」




ラプンツェル「じゃなかった、キモオタのデートがうまくいくようにお手伝いしてくるね!」ニコニコ




152: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/13(月)23:08:10 ID:wfY

現実世界 キモオタの部屋 司書との約束当日



キモオタ「ラプンツェル殿www昨日選んでいただいた服を着たのでござるがwwwなんか違う感じになるのでござるwww助けていただきたいwww」ピチピチー

ティンカーベル「あれっ!?昨日お店で試着した時はかっこよかったのになんかハムみたいになってる!」

ラプンツェル「んー…っとね、全部ボタン留めちゃってピチピチな感じになってるから、ここをふわーって感じにしたらかっこいいよ!」ニコニコ

ファサファサ フワー

ラプンツェル「それとキモオタは髪の毛もっさーってしてるからちゃんと梳かさないとね!私は髪の毛梳かすの世界で一番得意だからね!まかせていいよ!」フンス

キモオタ「確かにwwwそれだけ長い髪の毛を毎日梳かしてたら得意にもなりますなwww」

トカシトカシ

ラプンツェル「はいっ!でーきた!いつもよりずーっとカッコイイキモオタになったよ」ニコニコ

キモオタ「おおwwwイケメン…とまではいかないもののwwwそこそこのぽっちゃり系が鏡の中にwww」コポォ

ティンカーベル「キチンと身だしなみ整えたらキモオタでもまぁまぁにはなれるんだねー…ラプンツェルのおかげだね!感謝しなきゃだよキモオタ!」

キモオタ「そうですなwww帰ったらサイゼリアに行くでござるよwww我輩、御馳走するでござるwww」

ラプンツェル「やった!でもこれならキモオタ誘ってくれた女の子も一緒に居て恥ずかしくない格好だよ!楽しいデートになると良いね」ニコニコ

キモオタ「ラプンツェル殿にお願いして正解でしたなwwwこの格好なら少なくとも引かれる事は無いでござろうwww」コポォ




153: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/13(月)23:09:41 ID:wfY

キモオタ「さて……まだ時間はあるでござるが早めに出発するでござるwww待ち合わせに遅れては一大事ですからなwwww」

ティンカーベル「そっか、忘れ物ない?お財布にお金入れた?ハンカチ持った?スマホの着信音アニメの歌じゃない奴に変えた?」

キモオタ「ちょwwwお主は我輩の母親でござるかwww問題無いですぞwww着信音も待ち受け画面も変えましたぞwww」

ティンカーベル「うん、キモオタは調子に乗ると失敗するから気をつけてね!あと司書さんに恥かかせない事!わかった?」フワフワ

ラプンツェル「ティンクと一緒にお留守番しとくから、私達の事は気にしないで楽しんできてね」ニコニコ

キモオタ「わかりましたぞwwwそれではいってくるでござるwww我輩、一世一代のチャンスをものにしてきますぞぉぉぉ!!」ウオオオォォ

ガチャッ ドスドスドス

ラプンツェル「すんごく気合い入れて行ったねー、キモオタ大丈夫かなー?」

ティンカーベル「大丈夫!…って言いきれないね、キモオタこういうの初めてだし。じゃあ私達もそろそろ、行こうか。はい、変装メガネと帽子」ゴソゴソ

ラプンツェル「うん!今日の私達はキモオタを影から見守り隊だね!相手の女の子どんな人かなー、可愛いかなー美人かなー」ワクワク

ティンカーベル「そんなじゃ駄目だよラプンツェル!これは遊びじゃないんだから!キモオタにもしもの事があったりなにか失敗しちゃったらフォローする大切な役目なんだから!」

ラプンツェル「そっか!友達が幸せになってくれたら私たちみんな嬉しいもんね、うまくいってほしいもんね!」

ティンカーベル「そうだよ!だから今日は絶対寄り道しない!約束ね!それじゃあ私達も出発しよー!」フワフワ




154: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/13(月)23:11:35 ID:wfY

現実世界 街

キモオタ「……先に司書殿が来ていたら時間に遅れてなくても『待たせて申し訳ないですな』……我輩が先に着いたらどれだけ待っても『今来たところですぞ』……それから」ブツブツ


ティンカーベル「なんかブツブツ言ってるけどイメージトレーニングかなあれ……」コソコソ

ティンカーベル「緊張しすぎて失敗しなけりゃいいけどなぁー」コソコソ

クイクイ

ラプンツェル「……ねぇねぇティンク、あの女の子達が食べてるのってなに?みんな同じお店から出てくるよ?」

ティンカーベル「あれはアイスクリームっていう冷たくて甘いお菓子だよ、口の中でとろけるの!それにあのサーティワンってお店にはいろんな味のアイスがあるよ。けど…」

ラプンツェル「アイス…口の中でとろける冷たいお菓子…!ティンクティンク、あれ買って半分こにしよーよ」ニコニコ

ティンカーベル「ほらー!言うと思ったよ!駄目駄目、今日はキモオタを見守るんだから寄り道なんかしてる暇は無いの!」

ラプンツェル「でも今なら二段のアイスと同じお金で三段に出来るみたいだよ?お得なんだね!半分こしてもたくさん食べれるよー!」ニコニコ

ティンカーベル「うっ…で、でも私はそんな甘い言葉に乗せられないんだから……!」グヌヌ

ラプンツェル「私はキモオタみたいにたくさん食べないからティンクはいっつもよりたくさん食べれるよ?それに二種類ティンクが選んでもいいからさ!ね?」ニコニコ

ティンカーベル「二種類……!ほらラプンツェル急ぐよ!早く買っちゃおう!キモオタを見失っちゃったら面倒だからね!」ウキウキ

ウィーン

イラッシャイマセー




155: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/13(月)23:13:06 ID:wfY


現実世界 待ち合わせ場所・待ち合わせ時間10分前

キモオタ「……」ソワソワ

キモオタ(ラプンツェル殿には洋服を見立ててもらい、ティンカーベル殿もああ言ってはいたものの心配してくれてるようでござるし…)

キモオタ(必ずや司書殿を見事にエスコートし、サイゼリアで良い結果を二人に報告できるよう頑張らねばなりませんな……!)ゴゴゴ

司書「あの、もしかして……キモオタさんですか?」ヒョコ

キモオタ「ファッ!?ししし、司書殿。そうですぞ、キモオタですぞw時間どおりですなw」

司書「よかった、なんだか今日はいつもとは全然雰囲気が違ったから人違いだったらどうしようかと思いました」フフッ

キモオタ「い、いやぁ、実は司書殿と出かけるという事で友人に服を見立ててもらったのでw」

司書「えっ、いつも通りでよかったんですよ?なんだか手間を掛けさせちゃいましたか?」

キモオタ「いやいや、あれでござるから、我輩は今日をとても楽しみにしていたのでw」

司書「ふふっ、そう言ってくれると嬉しいです。私達も随分と楽しみにしていたんです。ねっ?」ニコッ

キモオタ「私『達』……?」

司書「ほら、二人ともキチンとキモオタさんにご挨拶してね」

グレーテル「……こんにちわ」ボソッ

ヘンゼル「始めまして、キモオタお兄さん」ニコッ

キモオタ「…………へっ?」ポカーン




156: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/13(月)23:15:17 ID:wfY

司書「この子たちは私の家族で、二人は兄妹なんです。お兄ちゃんのヘンゼルと妹ちゃんのグレーテルです」ニコッ

キモオタ「二人ともよろしくでござるw我輩はキモオタでござるよw」

司書「実は今日の童話展、私も楽しみにしてるんですけど一番楽しみにしていたのはグレーテルなんです。もう何日も前からカレンダーに印をつけていたくらいで」ウフフ

グレーテル「そういうの……よその人に言わないで……」クイクイ

司書「みての通り、グレーテルはヘンゼルと違って少し人見知りするので私はそれが心配で…家族以外にも親しく出来る相手が居ないと寂しいだろうなって思ってたんですけど」

司書「キモオタさんなら子供好きそうでしたし、童話も大好きみたいなのでグレーテルも仲良く出来るかなと思って…だから思いきって誘っちゃいました」ウフフ

キモオタ「あ、あー…なるほどwwwつまり司書殿と我輩とヘンゼル殿とグレーテル殿の四人で童話展に行くという事ですなwww」

司書「はい!こういう童話展に二人を連れて来るのは初めてでしたし、実は一人で二人も面倒見れないかもって思って心細かったんです。あっ、サイン会まであまり時間が無いのでそろそろ行きましょうか」ニコッ

キモオタ「そうですなwww下調べしたのですが会場の○○ホールに一番近い道は向こうの通りの……」

キモオタ(ちょwwwデートじゃwwwなかwwwったwww)

キモオタ(これはwwwみんなにwww合わせる顔がないwwwティンカーベル殿は恐らく大爆笑でござろうなこれwww)

キモオタ(しかしwww折角なので楽しみますぞwwwそれにおとぎ話の世界を冒険するヒントがあるかもしれませんからなwww)コポォ

クイクイ

グレーテル「ねぇ……キモオタお兄ちゃん……こっち、来て……おはなし、あるの……」ヒソヒソ




157: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/13(月)23:17:18 ID:wfY

キモオタ「裾引っ張り幼女とはwww可愛いですなwwwどうしましたかな、グレーテル殿www」ヒソヒソ

グレーテル「……なんで、来たの?」ボソボソ

キモオタ「なんでってwww司書殿に誘われたのでwww」

グレーテル「……キモオタお兄ちゃんは私と約束したよ、お姉ちゃんに……近づかないって……やっぱりキモオタお兄ちゃんもウソツキなの?」ジーッ

グレーテル「大人はみんなウソツキだから……キモオタお兄ちゃんも私との約束、破るの……?」

キモオタ「いや、嘘とかではなく…いや、結果的にそうなってしまいましたな、申し訳ない。しかし司書殿がグレーテル殿の姉上とは知らなかったので…大目に見てくれませんかな?」

グレーテル「知らなかったなら……仕方ないね……私も言ってなかったかも……でももう知ってるでしょ……?だからもう一度約束して、キモオタお兄ちゃん……」ボソボソ

キモオタ「大丈夫ですぞwww指切りげんまんしますかな?www」

グレーテル「針千本だと足りないから……やんない。そのかわり……お姉ちゃん傷つけたら……かまど、だよ……?」

キモオタ「グレーテル殿はかまど好きなんですかなwwwこないだもかまどかまど言ってましたがwww」

グレーテル「うん、好きよ……私は力も魔力もない女の子だけど、かまどがあればお兄ちゃん救える…お姉ちゃんもきっと守れる……魔女も殺せる……だから好きよ」ボソボソ

キモオタ「……」

グレーテル「私はキモオタお兄ちゃんの事まだ好きでも嫌いでもないの……だから、できればかまどに押し込まないで済む方がいいなぁ……だから約束……ね?」ボソボソ

キモオタ「我輩もそれを切に願いますぞwww」

テクテク

ヘンゼル「……」




158: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/13(月)23:19:45 ID:wfY

○○ホール 世界の童話展会場 某童話作家のサイン会場

ザワザワ

司書「やっぱりサイン目的で並んでいる人多いです、滅多に無い事だから県外のお客さんも多いのかもしれないですね」

ヘンゼル「多い…かな?あの作家さんの知名度からすればむしろ少ないように思えるけど」

グレーテル「多くても……少なくても関係ないよ……私はこの作家さんの童話、好きよ。だから……会えるの、嬉しいの……」

キモオタ「ほうw有名な作家なのですかなw」

司書「という事はご存じないんですね……おとぎ話や童話というジャンルがそもそも下火ですからあまり有名じゃないんでしょうか……少しショックです」

キモオタ「なんだか申し訳ないw不勉強でしたなw」コポォ

司書「いいえ、でもキモオタさんも名前くらいは聞いたことあると思いますよ?童話作家では相当有名な方です、外国の方なんですけどあの天才童話作家の再来とまで言われていてですね!なんとあの童話作家と同じ……」

キモオタ(司書殿が語りだしましたなwwwなんとなく意外でござるがwww本が好きでこの仕事してるでござろうし当然と言えば当然でござるなwww)

係員「次の方ー、どうぞー」

ヘンゼル「熱く語るチャンス、逃しちゃったね」クスクス

司書「うん、残念……童話展の後でたくさんお話ししましょうねキモオタさん。それでは私達先に行ってきます、ヘンゼルとグレーテルは私と一緒に行こうね」ニコニコ

ヘンゼル「僕はキモオタさんと行くよ、その方がグレーテルが少しでも作家さんとお話し出来るでしょ。そもそも時間あまりないんだし」スッ

グレーテル「ヘンゼルお兄ちゃん……優しい。私、ヘンゼルお兄ちゃん……大好き……」

司書「では終わったら童話展の入口にもう一度集まりましょうか。人が少ないとはいえ、わかり易い所で待ち合わせないとはぐれてしまいますから」ニコッ

キモオタ「わかりましたぞwヘンゼル殿は我輩に任せていただきたいw」コポォ




159: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/13(月)23:22:01 ID:wfY

キモオタ「しかしヘンゼル殿は妹思いですなwww若いのにしっかりしてますぞwww」

キモオタ(先日聞いたグレーテル殿の話では過保護な兄のイメージでしたがwwwこうして見るとただの妹思いの兄ですなwww)

キモオタ(司書殿に近づくなというグレーテル殿といい、妹思いのヘンゼル殿といい、家族を大切にしているのでござるなwww感心ですぞwww)

ヘンゼル「しっかりなんかしてないよ。グレーテルの方が出来た妹で、僕はいつも兄としての立場が無いくらいだから」フフッ

キモオタ「謙遜するなんてヘンゼル殿は大人ですなwww」コポォ

ヘンゼル「……僕は子供だよ、キモオタお兄さん。だからもう二度と、僕が大人だなんて言わないで欲しいな」

キモオタ「……そうでござるか?褒めたつもりだったのでござるがwww」

ヘンゼル「それより…もう単刀直入に聞くけどキモオタお兄さんはあいつの事……お姉ちゃんの事好きなの?」

キモオタ「ファッ!?いや、いやいやwwwヘンゼル殿ませてますなぁwwwしかし公の場でそういう事をあまり聞くものじゃありませんぞwww」

ヘンゼル「僕は家族として知っておきたいだけだよ、だからはぐらかさないで欲しいな」フフッ

キモオタ「うーむwww司書殿はキモオタの我輩にも普通に接してくれますからなwww好きかそうでないかなら前者でござるなぁwwwしかしそれだけでござるよwww他意はござらんwww」

ヘンゼル「へぇ、そうなの……」

係員「はい、では次の方どうぞー」

キモオタ「おおwwwではヘンゼル殿、行きますかなwww」

ヘンゼル「……うん、行こう」




160: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/13(月)23:23:47 ID:wfY

キモオタ「失礼いたしますぞwww」スッ

童話作家の老人「はい、こんにちは……」ピクッ

キモオタ「っと…海外の方でござったwww我輩は英語できないでござるwwwヘンゼル殿お願いしたいwww」

ヘンゼル「日本人じゃないから英語が喋れるっていう発想は間違いだよ…大丈夫だと思うよ、日本語で」

童話作家の老人「ええ、日本語で大丈夫。少し間違っているかもしれないけれど、大目に見てくれると助かるよ」フフッ

キモオタ「こっちこそ助かりましたぞwww自信無げでござるが流暢ではござらんかwww」

童話作家の老人「しかし、驚いた。僕のファンは女性や子供が多いから君の様な若い男性は初めてだ」

童話作家の老人「僕達の業界も随分と需要が無くなってしまったから、君の様な若者が興味を持ってくれているとは嬉しい。さぁ、何にサインをしようか?絵本かい?童話集かな?」

キモオタ「それがあいにく本は持ってきていないのでござるwww今更ながら売店で買っておけばよかったですなwww」コポォ

ヘンゼル「こういうサイン会って、普通は本を買った人にサインするものだって聞いたけど…違うんだね」

童話作家の老人「そうだね、そういうケースも多いらしいね。でも僕は商売に来たわけじゃないんだ。ファンとの交流が出来るのは僕にとっても嬉しい事だからね。色紙しかないけど、これで構わないかな?」サラサラー

童話作家の老人「はい、どうぞ。僕の作品を…とは言わないから、これからもいろんな童話を読んで欲しいね。童話やおとぎ話は大人になってから読んでも面白いものだから」フフッ

キモオタ「そうですなwwwそれに関しては痛感していますぞwwwお主の作品も是非読むでござるwww」

童話作家の老人「そう言ってもらえるとやっぱり嬉しいね。大勢の人に読んでもらうのが僕達の夢だったからね」フフッ

・・・




161: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/13(月)23:25:02 ID:wfY

・・・

キモオタ「いやはやwww童話作家に会うのなんて初めてでござったからwww緊張しましたなwww」コポォ

ヘンゼル「とてもそんな風には見えなかったけれどね」フフッ

キモオタ「ところでグレーテル殿や司書殿は本好きなのはわかったでござるがwwwヘンゼル殿はそうでもないのですかなwww先ほどもそんなにテンション高くなかったでござるしwww」

ヘンゼル「嫌いではないよ、でもグレーテル程じゃないんだ。今日のこれだってグレーテルが心配で付き添いに来ただけだからね」

キモオタ「なるほどwwwヘンゼル殿の兄弟愛はとどまる事を知りませんなwww」コポォ

ヘンゼル「まぁ…唯一の血縁だから……そんなの関係無くても家族は大切だけどね……グレーテルもお姉ちゃんも、他の家族も」

ヘンゼル「だから……許さないよ、僕は」ボソッ

キモオタ「…?申し訳ないwwwちょっと聞こえなかったでござるwww何といいましたかなwww」

ヘンゼル「たいしたことじゃないからいいよ。それに出口にうろうろしていたら邪魔になるから移動しよう」

キモオタ「ではwww司書殿とグレーテル殿が待っているでござるから急ぎますかなwww」コポォ

ヘンゼル「……僕はその前にトイレに行っておきたいんだけどいいかな?」

キモオタ「確かにwww行けるときに行っておいた方がいいですなwww我輩も付き合いますぞwww」

ヘンゼル「確か、あっちにあったと思うんだ。行こうか、キモオタお兄さん」

・・・




162: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/13(月)23:26:28 ID:wfY

○○ホール 男子トイレ

ジャー

キモオタ「連れションなど何年ぶりでござろうかwwwしかもヘンゼル殿の様なイケメンショタと一緒とはwww」コポォ

ヘンゼル「……」キュッ

キモオタ「おおっとwww我輩決してそっち方向の趣味は無いので安心していただきたいwwwって、わからんでござるよねwwwスルーしていただいて良いですぞwww」コポォ

ヘンゼル「…キモオタお兄さん」

キモオタ「どうしましたかなwwwもしやハンカチを忘れてしまったとかwww」

ヘンゼル「うん、そうなんだ。だからハンカチを貸してくれると嬉しいんだけど……」

キモオタ「確かwwwバックに入れていたのでござるよwwwどこにしまいましたかなwww」

ゴソゴソ

ヘンゼル「ねぇ、キモオタお兄さん」

キモオタ「ちょwwwちょっと待っていただきたいwww確かにどこかに入れたのでござるがwwwちょっと見当たらないwww」

ヘンゼル「ひとつ、聞きたいんだけど」

キモオタ「なんですかなwwwっと、ありましたぞwwwヘンゼル殿、はんかt」

ゴゴゴゴゴゴ

キモオタ「ヘンゼル殿……?」

ヘンゼル「教えて欲しいな、どーして……僕の大切な妹に近づくのか」




163: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/13(月)23:28:06 ID:wfY

キモオタ「ちょ、どうしたでござるか…?我輩、グレーテル殿に何かした覚えはないでござるよ!?」

ヘンゼル「グレーテルに既に何かしたってならもうあんたはここには居ないさ。僕が言ってるのは未来の話、これからの事だよ」

キモオタ「ヘンゼル殿……?」

ヘンゼル「あんたが何の目的であいつらに…僕の妹に近づいたのか、その理由を聞いているんだ」

キモオタ「いや、目的も何も……ただ我輩は図書館でグレーテル殿と知りあって少し話をしただけで…」

ヘンゼル「あくまではぐらかすんだな、口を割らないってのならそれでもいいけど」

キモオタ「一体どうしたというのでござるか…?なにをそんなに……」

ヘンゼル「知らないとでも思った?僕は知っているんだ、君がおとぎ話の世界に係わっている事を」

ゴゴゴゴゴ

キモオタ(……っ!あれはサイリウムの特訓で魔法使い殿が生成していたものと似てますぞ……!)

キモオタ「ど、どうしてヘンゼル殿が…魔法使い殿と同じ『圧縮した魔力』を……!?」

ヘンゼル「へぇ、これがどういうものかわかるくらいには修羅場をくぐりぬけてきたのかな。でも……」

スッ

ヘンゼル「隙しかないけど、大丈夫?魔力を持ってるやつ相手に触れられるって、相当な危機だよ?」スッ




164: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/13(月)23:30:32 ID:wfY

ヘンゼル「ちょっとは修羅場越えてきたのかなって思ってたけど、何もわかってないんだね…あんたは油断するって事がどういうことかわかってない」サワッ

キモオタ「どういうことd」ヒュッ

ドゴシャアアァァ

キモオタ「ガッ……!ゲホゲホッ……」ボタボタ

ヘンゼル「いろいろと無事じゃあ居られないよって事だよ。内臓とか、そういうのがさ」

キモオタ「……ゲホッゲホゲホッ」ボタボタ

キモオタ(なんでござるか……これ……!まともに声が出せないでござる……!)

ヘンゼル「でもまだ聞きたい事はたくさんあるからだんまりは困るよ。少しは喋れる程度に加減はしたんだ、出来ているかどうかは別だけど」

キモオタ「……何の、ために……こんな事、を……」

ヘンゼル「質問に答えなきゃ内臓全損するよって言う警告だよ。あんたは大人なんだ、子供の質問に答える義務があるだろう?」

キモオタ「……お主、は一体…何者……」ゲホゲホ

ヘンゼル「今更そんな事聞くんだね?あー、でも僕達のおとぎ話は消えているからあんたは知らないか。だったら改めて自己紹介するよ」



ヘンゼル「【ヘンゼルとグレーテル】の主人公のひとり、ヘンゼル。おとぎ話の内容は……説明しなくていいか」

ヘンゼル「加減したつもりだけど、なんだかもう虫の息だもんね。説明してもきっと、無駄になる」

ヘンゼル「ただ息絶える前に僕の質問には答えてもらうよ、キモオタお兄さん?」




165: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/13(月)23:34:59 ID:wfY

今日はここまで

圧縮した魔力→魔力を持つ人物がそれを圧縮して放出する行為
魔力を放出しているだけなので厳密には魔法ではないが威力は魔力の大きさに比例する

ヘンゼルとグレーテル。とある消滅したおとぎ話編 次回に続きます




173: 名無しさん@おーぷん 2015/07/16(木)00:52:24 ID:1Ua

>>1さんへ。
次回の更新でヘンゼル・グレーテル兄妹と司書殿の年齢設定を教えて下さい。
よろしくお願いします!!




174: 名無しさん@おーぷん 2015/07/16(木)10:35:23 ID:qzG

乙です!
一つ気になったんですけと、おとぎ話のキャラクター達って現実世界にいる間歳ってとるんですか?




176: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/19(日)22:34:38 ID:Age

始めます

>>173
各自のイメージでいいけどヘンゼルがだいたい赤ずきんと一緒
グレーテルが二つ三つ下くらいのイメージなら問題はないです

>>174
基本的には現実世界にいるからといっても歳をを取らない登場人物は歳をとりません
まぁ魔法とかかければ別だけどね





177: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/19(日)22:37:15 ID:Age

キモオタ「しかし、答えようにも我輩どてっ腹に一撃貰ってますからな…声が出せぬかもしれませんぞ」ゲホゲホ

ヘンゼル「大丈夫でしょ、現にあんたは喋っているし多少なら余裕もありそうに見えるけど」

キモオタ「余裕なんてとんでもないですな。我輩、今相当無理をして立っているでござるよ…」

ヘンゼル「そうなんだ、でもどうだっていいさそんな事。それよりも僕の問いに答えてもらうよ」スッ

ゴゴゴゴゴ

ヘンゼル「断るならもう一度あんたの内臓を圧迫する。そうしたらその贅肉まみれの身体も多少は軽くなるかもしれないよ?」

キモオタ(圧縮した魔力……先ほどは右腕に集中させてござったが、次は左腕でござるか…?)

キモオタ「そんな度胸は無いですぞ、故にここは大人しくヘンゼル殿の問いに答えるでござるよ、さぁ質問とやらを続けてくだされ」

キモオタ(いけませんな、完全に油断していたでござる…現実世界で、しかもヘンゼル殿に攻撃されるなど予想してませんでしたからな。思いっきり食らってしまいましたぞ)

キモオタ(自分でもこれだけの痛みを抱えて意識を保っていられるのが不思議ですぞ…しかし、いつまで耐えられますかな……)

キモオタ(あれだけの強力な魔力を撃ちこまれれば当然でござるが……内臓のどこかしらがやられてるかもしれませんな、一刻も早く病院へ……いや、桃太郎殿を呼んだ方がいいですな。しかし、おはなしウォッチはバッグの中にありますからな……)

キモオタ(それにヘンゼル殿が居てはおはなしウォッチを使う事が出来ませんぞ。とにかく今はヘンゼル殿の問いかけとやらに答えるのが先決、口ぶりから察するにアリス殿とは無関係の様でござるし……)

キモオタ(ここは冷静に対応してヘンゼル殿が去るのを待つでござる、そして早いところ桃太郎殿に来てもらうしかないですな……手遅れになる前に)

ヘンゼル「質問を続けるも何も、先の質問にまともに答えてもらっていないんだけど。もう一度あらためて聞こうか」



ヘンゼル「どうして僕の妹に近づいたのか……聞かせてもらうよ、お兄さん」




178: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/19(日)22:38:56 ID:Age

キモオタ「さっきも言ったでござるが、グレーテル殿とは図書館で知り合って少し話をした事があるだけでござる」

ヘンゼル「それを僕に信じろって言うのか。それにしては随分と完成度の低い良い逃れだね」

キモオタ「良い逃れなどと言われても、事実でござるからな……これ以上何も言えませんぞ。嘘いつわりのない真実でござるから」

ヘンゼル「あんたは僕を知らないだろうが僕はあんたを知ってる……あいつが少し前に教えてくれたんだ、自分が働いている図書館に妖精を連れた男が来たと」

ヘンゼル「信じられなかったよ、現実世界の大人が妖精を見る事が出来るなんて極々稀というかほぼ無理だから。だから僕は気になって君の事を観察していたんだ」

キモオタ「観察ですと……?我輩、まったく気が付きませんでしたな…」

ヘンゼル「驚いたよ、妖精の名前はティンカーベル…消滅したおとぎ話【ピーターパン】の妖精だ。そしてあんた達はおとぎ話の消滅を防ぐためにあちこちの物語を旅をしているという事も知った。
どうやら【不思議の国のアリス】のアリスと【オズの魔法使い】のドロシーが騒ぎの元凶だという事もね」

ヘンゼル「あんた達が彼女達と戦う力を欲している事もだ……僕が何を言いたいか、もうわかるだろ?」

キモオタ「我輩がアリス殿を倒すという目的の為にグレーテル殿を利用しようとしていると…言いたいのでござろう?」

ヘンゼル「察しは良いみたいだね。君達が自分の利益の為にグレーテル達を利用しようとしてる、僕はそう疑っている」

キモオタ「しかし、それはあまりにも疑いが過ぎますぞ」

キモオタ「ヘンゼル殿が妹であるグレーテル殿を大切に思うのはわかるでござるが…我々が無関係のグレーテル殿を利用するなんて発想はあまりに突飛ではないですかな?」

ヘンゼル「そうかな?僕はそうは思わないよ。だって、そうじゃないか」



ヘンゼル「大人っていうのはいつだって子供を自分達の都合の良いように利用する。そういう連中だ」

ヘンゼル「特にあんた達みたいな現実世界の大人は、僕達おとぎ話の世界の子供をいいように利用する。僕はとてもじゃあないがあんたを信用できないよ」




179: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/19(日)22:41:00 ID:Age

ヘンゼル「おとぎ話の世界に係わっている男が居て、そいつはどうやら面倒事の渦中に居る。そいつはいずれグレーテルやあいつを巻き込むかもしれない」

ヘンゼル「…そうしたらもうやる事はひとつだ。案の定あんたは僕の家族に近づいた……あいつ等が傷つく前に、涙を流す前に、僕があんたを始末する」

キモオタ「ちょ、ちょっと待つでござるよヘンゼル殿。お主の気持ちはわかりますぞ、大切な家族が面倒事に巻き込まれないようにするというのは当然でござる。しかし……」

ヘンゼル「しかし……なに?まだ自分はグレーテル達に何かした訳じゃない、だから攻撃されるのはおかしい。とでも言いたいの?」

キモオタ「そうですぞ、と言うよりもそもそも我輩はこの戦いにお主らを巻き込むつもりなどさらさらないのでござるよ。だから安心していただきたい」

ヘンゼル「そうか、ってなるわけないだろう。疑わしきは罰せよだよ、お兄さん」

キモオタ「……あくまで聞く耳を持ってくれないでござるか」

ヘンゼル「それはそうでしょ。だって僕はあんたを信用してない、巻き込むつもりがないと言われても安心できないし、僕はあんたを見逃さない」

ヘンゼル「あんたがまだ僕の家族に危害を加えていなかったとしても…面倒事の渦中に居るあんたが側に居れば、いずれそうなる可能性はとても高い」

ヘンゼル「だったら、あんたがまだ何もしていなかったとしてもここで始末しておく必要がある。いや、あんたを始末しておかないと僕の妹が傷つく」

キモオタ「ヘンゼル殿…!お主は少々、考えが過激というか…何故そんなに悪い方に考えるでござるか、いささか乱暴な考え方ではないですかな?」

ヘンゼル「黙ってよ、なんであんたが僕に説教してるんだ。そんな風に思えるって事は、随分とこの世界は平和なんだね。羨ましいよ、平和ボケできるあんたが」

ヘンゼル「あんたにはわからないだろうけどさ…最悪な事態っていうのはね、一度起きてしまうと全て飲み込んでしまうんだよ」

ヘンゼル「わかるかな?大切な思い出も、妹の笑顔も、大切な家族も、何もかも全てだ」




180: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/19(日)22:42:37 ID:Age

ヘンゼル「最悪の事態ってのは取り返しがつかないから最悪なんだ。だからそもそも最悪の事態に巡り合わないように普段から注意深く生きないといけない」

ヘンゼル「僕達の大嫌いな現実世界に住む大人の男、そしておとぎ話にかかわりを持っていて、しかもあいつの働く図書館によく来る……あんたは僕の家族に災いを招く疑いがある、だから罰する。それだけのことだよ」

キモオタ「ヘンゼル殿に何があったのか、お主のおとぎ話の内容を知らない我輩にはわからないでござるが……何故そうまでして不安要素を排除しようとするんですかな?」

ヘンゼル「誰だって不幸になりたくないし、好きな人が苦しむのは見たくない。違う?」

キモオタ「ヘンゼル殿の場合は少々過剰に思えますぞ。不幸にならない為に……まだ悪人か善人か解らぬ相手を攻撃するなど間違ってますぞ」

ヘンゼル「あんたはまぁ、そう言うしかないよね。僕の考えを否定しなけりゃ僕に始末される事に納得した形になってしまうもんね」

キモオタ「我輩の事はこの際どうだっていいでござる。しかしですな、なりふり構わず疑わしい者を排除して……そんな事をして不幸を避け続けてもグレーテル殿は……」

ヘンゼル「喜ばない。って言いたいの?あんたさぁ、グレーテルの何なの?兄の僕よりあいつの事わかってるつもりなの?気持ち悪いな、そういう事言うのやめてよ」

キモオタ「いや、喜ばないでござろう!グレーテル殿はヘンゼル殿の事が大好きなんでござるよ、大好きなお兄ちゃんが自分の為とはいえ他人を傷付ける事をしていて喜ぶわけがないですぞ!」

ヘンゼル「……だからやめろって言ってるだろ」グイッ

ゴゴゴゴゴ

ヘンゼル「お前にグレーテルや僕の何がわかるんだよ」ギリッ

ヘンゼル「現実世界の大人が、僕達の事をわかったふうに口にするなよ……!」ググッ

キモオタ「…お主は言ったでござるよ、誰だって好きな人が苦しむのは見たくないと!それはグレーテル殿だって同じでござろう、ヘンゼル殿が苦しむ姿を見たくないのでござるよ!」




181: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/19(日)22:44:15 ID:Age

ヘンゼル「仮にそうだとして、あんたを始末する上で僕が苦しむ事ってある?あんたが内臓ぶちまけようと死んでしまおうと、僕は苦しまないけど?」

キモオタ「嘘でござるな……苦しむからこそヘンゼル殿は魔力を連発できないのでござろう?」

ヘンゼル「……」

キモオタ「お主が最初に我輩に魔力を撃ちこんだ時は右手…おそらくきき腕でござる。しかし、次に魔力を圧縮した時は左手でござった」

キモオタ「同じように魔力を圧縮していた魔法使い殿は何度もきき腕から放っておりましたからな。ヘンゼル殿の場合だけ何か腕を切り替えねばならぬ理由があるのでござろう、おそらく…一度魔力を放つとしばらくはその腕からは出せないでござるな?」

ヘンゼル「正解だね……でも左腕でも十分に魔力を放出する事は出来る、加減なんかしなけりゃあんたを黙らせることだってできるんだよ」

キモオタ「同じ腕から出せない理由は……魔力の放出はヘンゼル殿にも大きな負荷を掛けるからではないですかな?痛みを伴うほどの負荷……違いますかな?」

ヘンゼル「だから、なんなの?『お前は魔力を使うとダメージを負うから辛いだろ?だから俺を攻撃するな』そういう事?」

ヘンゼル「狡猾だよね大人は、そんな風にあたかも相手を気遣うふりして本当は自分が助かりたいだけなんだもんね。見ていて腹が立つよ」

キモオタ「お主がどう思おうと勝手でござるが、自分の身体を気づ付けてまで魔力を放出して…そんな風にグレーテル殿を幸せにしてもあの子は喜ばないでござるよ!」

ヘンゼル「グレーテルの事知ったふうに口にするの、やめろって言ってるのにあんたは人の話を聞かないよね」

キモオタ「そうかもしれませんな、ですがヘンゼル殿の我の強さも相当ですぞ…!」

ヘンゼル「グレーテルが喜ぶとか喜ばないとか関係ないよ。あいつが幸せになればそれだけでいい」

ヘンゼル「幸せだという結果が残れば、あんたが死のうが僕が死のうがその過程はどうだってかまわない。グレーテル達が笑っていられれば、それだけでいい」




182: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/19(日)22:45:55 ID:Age

キモオタ「……何故そこまでヘンゼル殿はグレーテル殿の幸せにこだわるのでござるか」

ヘンゼル「兄が妹の幸せを願うのは当然さ、違う?」

キモオタ「我輩には、他に事情があるように見えますがな?」

ヘンゼル「……さぁどうだろうね、どちらにしろあんたに教える必要はないよ」

ゴゴゴゴゴ

ヘンゼル「どうせ言ってもわからないだろうしね。あんたを含めてこの世界の連中はどいつもこいつも平和にのうのうと生きてる」

ヘンゼル「そんな奴らにはわからないよ、僕達がどれだけ辛い思いをして生きてきたかなんて」

キモオタ「ヘンゼル殿、お主は……」

ヘンゼル「……話し過ぎたね、グレーテルやあいつが待ってる。あんたはもう僕の家族に近寄れないようにしないとね、あの図書館にも二度と来れないように」ゴゴゴゴゴ

キモオタ「……っ!」

バッ

グレーテル「ヘンゼルお兄ちゃん……ダメ……」ギュッ

ゴゴゴ……シュウゥゥ

ヘンゼル「駄目じゃないか。男子トイレに入って来るなんて、グレーテルはいつからそんなはしたない子になったの?」

グレーテル「……お兄ちゃん、今手加減……してなかった。キモオタお兄ちゃんの事……殺そうとした……」ボソボソ

グレーテル「約束……破っちゃ駄目なの……雪の女王さまとの約束……破っちゃ駄目……」ギュッ




183: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/19(日)22:47:37 ID:Age

ヘンゼル「僕がこいつを殺してもグレーテルが雪の女王に喋らなきゃ、バレやしないさ。それに女王との約束は『よほどの事がない限り魔力を使うな』って事だろ?だからこれは約束を破ったうちに入らないよ」

ヘンゼル「僕にとってはお前達が辛い思いをするかもしれないって事は、よほどの事なんだ」

グレーテル「でも……駄目よ。私は何もされてないよ……それにキモオタお兄ちゃんは……お姉ちゃんを傷付けないって約束してくれたよ……?」

キモオタ「グレーテル殿…お主は我輩の言葉を信じてくれるのでござるな……ありがたいですぞ!」

ヘンゼル「グレーテル、お前はこいつの言う事なんか信じるの?なんで?」

グレーテル「……信じる。約束したから……約束したのに私が信じなきゃ……キモオタお兄ちゃんも私を信じてくれない……だから私は信じるの……」ボソボソ

ヘンゼル「グレーテル、なんでわかんないの?こいつは現実世界の大人だ、僕達をあんな目にあわせた奴らと同じなんだよ?」

ヘンゼル「大人はいつだって僕達を苦しめる、今までだって散々見てきただろ。この人だけは大丈夫…なんて信用なんかしたら、グレーテルが傷つくだけだよ」

グレーテル「私も……大人は……嫌い。でも、お姉ちゃん言ってたよ……キモオタお兄ちゃんは私と友達になれそうだって……」

ヘンゼル「あいつは騙されてるんだよ、大人ってやつは外面だけは良いんだから。世間体とか立場とか、そういう事ばっかり重要だと思ってるからね」

ヘンゼル「こいつだってそうだ、ヘラヘラと取り繕っているから外面は立派なのさ。だからあいつは騙されてるんだよ、大人なんかみんな嘘付きなのに」

グレーテル「……そうなの……かな……?」

キモオタ「ヘンゼル殿……お主やたらと大人を目の敵にしておりますが……何があったのでござるか?」

ヘンゼル「あんたに教える必要はないでしょ……流石にグレーテルに無残な死体を見せたくないから、命は助けてあげるよキモオタお兄さん」

ヘンゼル「でも許すわけじゃないよ?見逃してあげるから、だからもう僕と家族には一切係わらないで」




184: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/19(日)22:50:02 ID:Age

キモオタ「……それはできませんな」

ヘンゼル「見逃してあげるって言ってるのに、そんなに魔力撃ち込まれるのが気にいったの?」ゴゴゴ

キモオタ「いや、そうではなくですな。我輩の友人に父親に虐待を受けていた子がいましてな…ヘンゼル殿が大人を嫌っている理由がもしも同じく両親からの虐待ならば、我輩は見過ごせないでござるよ」

ヘンゼル「それはおせっかいかい?それとも体裁を保つため?」

キモオタ「おせっかいかもしれませんな、しかしあの子は虐待を受けながらも誰にも助けを求められなかったでござる、それと同様にお主らも助けを求める事が出来ないのなら……」

ヘンゼル「余計な御世話だ、僕達は虐待なんか受けてない」

グレーテル「……」

キモオタ「グレーテル殿……本当でござるか?」

グレーテル「……」

ヘンゼル「行こう、グレーテル。こいつにはもう構わないようにしよう、碌なことにならない」

グレーテル「……私とお兄ちゃんは……いらないって、言われたの……」

ヘンゼル「…よせ、グレーテル」

キモオタ「いらない…ですと?」

グレーテル「私とヘンゼルお兄ちゃんは……最初のパパとママに捨てられたのよ……」

グレーテル「みなしご……なのよ。私もお兄ちゃんも……」

キモオタ「孤児……それでヘンゼル殿はそれで大人を毛嫌いしているでござるか…」




185: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/19(日)22:53:08 ID:Age

ヘンゼル「余計な事を聞かないでよ、グレーテルは素直なんだ。それになんで僕達の事を知りたがってるの?付け入る隙でも探してるの?」

キモオタ「違いますぞ、ただお主が憎むほど大人はみんな悪い奴って訳ではないのでござるよ。だからお主の力になれるならば我輩は協力しますぞ」

ヘンゼル「…憐れみなんていらない、僕が欲しいのはそんなもんじゃない」

グレーテル「ヘンゼルお兄ちゃん……私達に協力してくれるって……言ってくれてるよ?」

ヘンゼル「グレーテル、喋りすぎだ。それと他人の言葉を簡単に信じちゃ駄目だよ、こんなの嘘に決まってる」

キモオタ「憐れみではござらんよ、それにお主らが辛い思いをしているのならば…少しくらい大人に頼ってもいいのではないですかな?我輩でよければ力になりますぞ?」

ヘンゼル「大人を頼れ?それをあんたがいうの?現実世界の大人のあんたが?」

ヘンゼル「ねぇ、お兄さん。あんたは毎日お湯みたいなスープだけで過ごした事があるの?着の身着のままケダモノだらけの森に捨てられた事があるの?一か月近くも監禁された事があるの?」

ヘンゼル「殺意を抱くほど追いつめられた事があるのか?妹が日に日にやつれてどんどん暗くなっていくのを、ただ納屋の隙間から見てるだけしか出来ない…そんな経験があるのかよ」

キモオタ「いや…それは、無いでござるけど……」

グレーテル「ねぇ……お兄ちゃん……私ね、もうあの時の事……気にしてないよ……?」

ヘンゼル「なぁ、キモオタお兄さん。あんたは今までいろんな世界を旅して、いろんなおとぎ話の仲間に恵まれたんだろうけどさ……僕達はその連中とは違う」

ヘンゼル「僕は憎んでる。おとぎ話を作った作者を許さない……自分達のおとぎ話を盛り上げる為に僕達に貧しい暮らしをさせて、グレーテルをあんな目にあわせた連中を……」

ヘンゼル「あのおぞましい人柱とかいうしきたりを作った大人を、お千代にあんな残酷な仕打ちをした現実世界の連中を僕は絶対に許さない……行こう、グレーテル。もうこいつと関わるのは本当に終わりだ」

グレーテル「……うん、じゃあね。キモオタお兄ちゃん……」

スタスタ

キモオタ「作者を……許さない。でござるか……」




186: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/19(日)22:54:47 ID:Age

○○ホール 世界の童話展会場 廊下


グレーテル「お兄ちゃん、腕……痛い?私の魔法……使う……?」ボソボソ

ヘンゼル「大丈夫だよ、一度使っただけだからしばらくは痛むけど治癒魔法を使うほどじゃない。それに、こんなことでグレーテルに魔法を使わせられないよ」

グレーテル「そっか……私はお兄ちゃんが居ないと魔法使えないから……お兄ちゃんの為に使うなら……いいかなって……思ったの……」

ヘンゼル「駄目だよ、グレーテルは魔法を使っちゃ駄目だ。女王もカイの奴も言っていたろ?」

グレーテル「……わかった……でも大丈夫よ……お兄ちゃんが魔力を分けてくれないと、私は魔法使えないもんね……」

グレーテル「私には……魔法を使う事は出来るけど……身体に魔力が流れてないもんね……」

ヘンゼル「……ごめん、グレーテル。この話はおしまいだ。とにかく、僕は治療なんか必要ないから心配しないで」ナデナデ

ヘンゼル「それより、グレーテルはどうしてあそこにいたの?」

グレーテル「えっとね……お兄ちゃんの事……迎えに行こうと思ったの……そしたら大きな音が聞こえて……もしかして、キモオタお兄ちゃんに何かしてるかな……って思ったの……」

ヘンゼル「人気の少ないところを選んだつもりだったけど……もう少しわからないところで始末すればよかった」

グレーテル「駄目よ……雪の女王さまとの約束。現実世界ではむやみに魔力や魔法を使わない事……現実世界の人に危害を加えない事……だよ……?」

ヘンゼル「僕だって守りたいさ、女王は僕達によくしてくれたし。でも女王との約束よりも優先したいものだってある」




187: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/19(日)22:56:58 ID:Age


グレーテル「……もしも、女王さまにバレたら……きっとお仕置きだよ……?」

ヘンゼル「それは嫌だね、女王のお仕置きは身体だけじゃなくて精神的に冷えてくるからね……なんなんだろうねあれ……」

グレーテル「……大丈夫、約束守ってたら、女王さまは優しいままよ……だからちゃんと約束守ろう……そしたらお菓子くれるよ……冷たくて甘いお菓子……」

ヘンゼル「またグレーテルはお菓子お菓子……でも、この世界の大人は女王みたいに優しくないんだ。さっきみたいに易々と信用しちゃ駄目だよ」

グレーテル「……でも、本当にキモオタお兄ちゃんは悪い大人なの……?」

ヘンゼル「その考え方がまずおかしいよ、大人は悪い奴しかいない。あいつだってそうさ。女王やパパさんは例外中の例外なんだから」

ヘンゼル「そうじゃなきゃ、現実世界の作者どもはおとぎ話を盛り上げる為だけに僕達を貧しい兄妹にしないだろ?みなしごにだってしない、魔女に捕まるなんて運命にもしない」

ヘンゼル「なのに僕等を貧しいみなしごにして、魔女に捕えられて酷い目に合う運命に決めた。そんなこと、悪いやつじゃなきゃしないだろ?」

グレーテル「……うん、良い人はそんな酷い事しない……私が作者だったら……みんな幸せにするの……そういうおとぎ話の方が私、好きよ……」

ヘンゼル「グレーテルは優しい子だね。グレーテルは絶対に幸せになれるよ、もうあの忌々しい【ヘンゼルとグレーテル】は無くなってるんだから、僕達は運命に縛られない」

ヘンゼル「だから絶対に幸せにする……絶対に……!」

グレーテル「うん、そうだよね……ヘンゼルお兄ちゃん、早く行こう。待ってるよ、お姉ちゃん……」

ヘンゼル「心配させたらあいつに悪いからね。変な輩に声掛けられでもしていたら面倒だ、少し急ごうか」




188: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/19(日)22:59:23 ID:Age


・・・

小柄な男「ったく、人の集まるところなら魔力持ちの人間もいるだろうとわざわざこんなところまで来たがいいがよぉ……」

小柄な男「どうなってんだこの世界の魔力の希薄さは、とんだ期待はずれだな……この様子だと今日の成果は朝殺した娘一人だけか……」

小柄な男「どこかにバカでかい魔力持ってるやつがいねぇかなぁ……そうすりゃあ話は早いんだがよ。そんなうまい話もねぇか……」

ブワァッ

小柄な男「魔力の気配だ!それも……なんだこれ、バカでかい魔力……!おい、一体どこだ!?どこのどいつがこんな魔力を…」


グレーテル「……ヘンゼルお兄ちゃん、待って……歩くの、ちょっと早いよ……私を置いて行かないで……」トテトテ

ヘンゼル「っと…ごめん、少し急ぎ過ぎたね。ゆっくりでいいよ、慌てなくて良いんだグレーテル」ナデナデ

グレーテル「うん……ありがと、ちょっとだけ早く歩けるように頑張る……」


スッ

小柄な男「おいおい……どういうことだこりゃあ?」コソコソ

小柄な男「きき間違いじゃねぇ、ヘンゼルとグレーテルって呼び合ってたぞあのガキ共。単なる偶然か?同じ名前だっていうオチか……?」

小柄な男「いや、あのバカでかい魔力……どっちが持ってんのかまでハッキリしなかったけどよぉ、あれを頂かない手はねぇよなぁ…!よし、奪っちまおう」ニタァ

小柄な男「となると、まずは様子を窺うか……あいつらはおとぎ話の世界の住人、もしかしたら俺様の名前を知ってるかも知れないからな、それに魔法だって使えるだろうしなぁ」

小柄な男「慌てず慎重に、策を練ってから奪おうじゃねぇか。なに、デカイ魔力を持っていてもあいつ等はガキだ……この俺様が負けるわけねぇ!」クックック




189: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/19(日)23:01:37 ID:Age

○○ホール トイレ前のベンチ

シュオオォォォォ

キモオタ「いやはやwww痛みがかなり楽になってきましたぞwww申し訳ないですなwww桃太郎殿wwwわざわざ出向いてもらってwww」

桃太郎「気にする事は無い。しかし、相当深い傷だったが…その童は相当おとぎ話の作者が憎いのだろう、故に現実世界の大人にも牙をむく」シュオォォォ

キモオタ「そこなんでござるよねぇ……作者が憎い、でござるもんなぁ……桃太郎殿も作者が憎いとかあるでござるか?」

桃太郎「作者とはおとぎ話の主人公の運命を定めし者だったな……しかし拙者のおとぎ話【桃太郎】は大団円を迎える物語、あまり深く考えた事は無い」

キモオタ「赤鬼殿やマッチ売り殿の運命は、めでたしとはいえませんからなぁ……そういう物語の主人公から見たら、現実世界の作者は『自分達を苦しめる輩』に見えてしまうのでござろうか……」

桃太郎「ふむ…赤鬼はその様な素振りは見せぬが、そこはやはり齢の問題もあるであろう。赤鬼は立派な大人だが、そのヘンゼルという童は赤ずきん程の年齢なのだろう?」

キモオタ「そうですな。しかし、やはりほうっておけませんなヘンゼル殿とグレーテル殿」

桃太郎「これほど酷い傷を負わされたというのに…やはりお主は現実世界でも変わらぬな」フフッ

キモオタ「なんというか…我輩は元のおとぎ話を知らないでござるけど、両親に蔑ろにされるとか食べる者にも困るとか貧しい生活とか…マッチ売り殿と重なる部分が多いのでござるよ、あの二人」

キモオタ「マッチ売りは自分の運命が誰かの幸せの為に役立つなら、と受け入れたでござるが。ヘンゼル殿は逆で自分達の運命を誰かの幸せの為に利用されるのが許せないという考えで……」

キモオタ「どっちが正しいとかではないでござるけど、我輩にはほうっておく事は出来ませんな…自分を犠牲にして誰かを幸せにするというのが上策と言えないのは【泣いた赤鬼】で学びましたしな」

桃太郎「ならば、その童等と話すしかあるまい。話したくない係わりたくないと言われようとも、話さねばわからぬ事、伝わらぬ事も多い」

桃太郎「童等が拒もうと、お主の想いを伝えるしかあるまい。なぁ、キモオタよ……優しきお主の事、例えまた傷を負わされようと諦めるつもりはないのであろう」

キモオタ「まぁwwwそうですなwww子供たちの幸せはマッチ売り殿だけの願いでは無いのでwwwもしもボッコボコにされたらまた治癒頼むでござるwww」コポォ

桃太郎「うむ、任せよ。拙者は桃より生れし桃太郎、魔を払い邪を清めるなど容易い。遠慮なく頼るがいい」フフッ




190: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/19(日)23:03:51 ID:Age

世界の童話展 入口近く

司書「それじゃあ、キモオタさんは帰っちゃったの?」

ヘンゼル「そうなんだよ、サイン貰った後トイレに行ってたんだけど急に連絡があったみたいで…なんだか急ぎの様だったみたいだよ?」

司書「そっか…でも急な用事なら仕方ないよね。キモオタさんも楽しみにしてたと思うけど、どうにもならなかったのかな」

ヘンゼル「さぁ、でも二人に言わずに帰るくらいだから相当急いでたんだと思うよ」

司書「残念だけど、私達だけで楽しんでまた今度感想を聞かせてあげよう。ね、グレーテル」ニコニコ

グレーテル「……うん、でも、図書館に来てくれたらね……」ボソボソ

司書「……?」

ヘンゼル「さぁ、ここで話してても仕方ないから行こうよ。キモオタお兄さんの分までグレーテル達が楽しめばいいんだから」

ドスドスドスドス

キモオタ「ちょwww待っていただきたいwwww我輩もwww行きますぞwww」ドスドスドス

ヘンゼル「あいつ……っ」ボソッ

グレーテル「……キモオタお兄ちゃん……大丈夫なの……?」

キモオタ「平気ですぞwwwさぁ待たせて申し訳ありませんでしたなwwwでは行くでござるかwww」コポォ

司書「キモオタさん、なんだか急用ができて帰らなくちゃならなくなったってヘンゼルから聞いてたんですけど…平気なんですか?」




191: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/19(日)23:06:33 ID:Age

キモオタ「急用?あ、あーwww急用!そうでしたなwww突然連絡がありましてwww帰らないといけなくなったでござるけどwww」

ヘンゼル「だったら、無理に伝えに来なくても良かったんだよ?僕が代わりに伝えたから、お兄さんはもう帰ったってね。だから僕達に気を使わずに帰っても良いんだけど?」

キモオタ「ご安心をwww確かに急用が入ったでござるがもう解決したでござるwwwたいしたことではなかったのでwww」コポォ

司書「そうなんですね!だったら一緒に見に行きましょう、実は早く見に行きたくてワクワクしていたんですよ」フフッ

キモオタ「それは申し訳ありませんでしたなwwではヘンゼル殿、グレーテル殿行きますかな!はぐれては事ですからな、ヘンゼル殿は我輩と手をつなぐでござるかwww」コポォ

司書「そうですね、迷子センターもないでしょうから。それじゃグレーテルは私と手をつないでいこうか」ニコニコ

グレーテル「うん……一緒に行く……」ギュッ



ヘンゼル「お兄さんさ……学習能力、無いの?」ボソッ

キモオタ「ちょwwwありますぞwww人をバカのように言うのはやめていただきたいwww」ボソッ

ヘンゼル「どんな魔法で治癒したのか知らないけどさ、僕に触れられる事がどういう事か身をもって知ったはずだよ。それなのに手をつなぐなんて言うのはバカでしょ。それ以前にあんたと手をつなぐなんてお断りだけどね」ボソッ

キモオタ「ドゥフフwww我輩もノンケですからなwww」コポォ

ヘンゼル「そこまでしてあいつやグレーテルを不幸にしたいの?そっちがその気なら、僕は構わない……見逃してあげたのに、必要ないというなら頭でも落としておこうか?」ボソッ

キモオタ「またバイオレンスなwww彼女等を不幸にするつもりもなければヘンゼル殿と敵対するつもりもないでござるwww」

ヘンゼル「だったらどういうつもり?返答しだいじゃ、次は怪我じゃ済まないけど?」

キモオタ「我輩たちは童話展に来たのでござるからwwwこのイベントを楽しむ以外のミッションなど存在しませんぞwww」コポォ

ヘンゼル「どういうつもりか知らないけど……随分余裕そうだね。まぁいいさ、隙を見せれば次は治せないくらいにあんたを壊せばいいだけの話だからね」

キモオタ「ちょwww物騒ですぞwww早くしないと二人において行かれますぞwww」コポォ




192: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/19(日)23:08:49 ID:Age

コソコソ

小柄な男「……」コソコソ

小柄な男「おとぎ話【ヘンゼルとグレーテル】……あいつ等が何故この現実世界に居るのか知らねぇけど、俺様は運がいい」

小柄な男「あの眼鏡の女とデブは現実世界の人間か、だがそりゃあ好都合だ。少なくとも俺様の名前を知っている可能性があるのはあの二人だけ」

小柄な男「となると問題は二人まとめて誘拐するのは難しいってことだな、今日は俺様のしもべは一緒じゃねぇしな」

小柄な男「だが…もう一つの問題、あいつ等に名前を当てられる可能性があるってのも同時に解決する良い方法がある」

小柄な男「ここはひとつ、あの娘に餌になってもらおうか。どうやら随分と懐かれているみたいだからなぁ」

小柄な男「もうすぐあのでかい魔力が手に入るのか……クックック」

小柄な男「だが焦りは禁物だよなぁ、狙うのはもっと後だ。あの現実世界の娘が一人になった時を狙おうじゃねぇか」

小柄な男「魔力も何もない娘一人捕まえるのには苦労しないだろうしな」

小柄な男「つくづく人質ってのは効率がいい……」クックック


小柄な男「さて、あの娘を連れ去って……それを餌にあの二人を呼び出そうか、だがやっぱり焦っちまったらよくねぇもんな」

小柄な男「ここは遠くから観察して機会をうかがうとするか……」





208: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/21(火)23:02:20 ID:v9g

世界の童話展 

・・・

キモオタ「いやはやwwwなかなか面白かったでござるなwww童話展www侮れませんなwww」コポォ

司書「キモオタさんもそう思いますよね!やっぱり童話は良いですよね。お誘いしてよかったです」ニコニコ

キモオタ「友人が主人公の…いや、知ってるおとぎ話が多くてついのめり込んでしまいましたぞwwwいろいろ勉強になりましたなwww」コポォ

キモオタ(ただし、消えてしまったおとぎ話も気になってしまいましたな……童話展ではいろんなおとぎ話の内容や成り立ち、作者について展示されていたでござるが…)

キモオタ(当然というか、展示物には【ピーターパン】も【赤ずきん】も一切ありませんでしたからな。ヘンゼル殿とグレーテル殿が主人公の【ヘンゼルとグレーテル】もどこにもなかったでござるし)

キモオタ(おとぎ話の内容がわからんことには、二人の気持ちを察する事も難しいですしな。戻ったらシェヘラザード殿か赤ずきん殿に聞いてみますかな、【ヘンゼルとグレーテル】の内容を)

キモオタ(しかし、事情はわからぬでござるがあの二人の大人に対する憎しみは……ヘンゼル殿の作者への憎しみは……)

――グレーテル「私も……大人は……嫌い」

――ヘンゼル「僕は憎んでる。おとぎ話を作った作者を許さない……」

キモオタ(なんとか出来ぬでござるかねぇ……ヘンゼル殿もグレーテル殿も憎しみなんて持たずに幸せになれる手段が……おとぎ話の作者も悪意を持ってそういう話の筋にしたわけではないでござろうし)

グレーテル「……キモオタお兄ちゃん?……どうしたの?……」

キモオタ「おおっとwwwちょっとボーっとしてましたなwwwあまりに感動し過ぎたからでござろうかwww」コポォ

司書「感動のあまりボーっとしちゃうのわかります、興奮冷めやらぬって感じで……キモオタさんに時間があれば少しどこかのカフェでお話ししませんか?私もこの感動を分かち合いたいです」ワクワク




209: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/21(火)23:04:38 ID:v9g

キモオタ「いいですなwwwこの近くならば歩いて行ける距離にドトールがありましたぞwwwそこでどうですかなwww」

ヘンゼル「……それもいいけどさ、僕は今日はなんだか疲れたよ。だから今日はこれで解散にしない?グレーテルは平気?」

グレーテル「私は平気……でもヘンゼルお兄ちゃんが疲れたなら……今日は寄り道はやめて帰ろう、無理させちゃいけないよね……お姉ちゃん……?」

司書「そっか、気がつかなくてごめんねヘンゼル。あんまりこういう場所慣れてないから疲れちゃったかな…?」

ヘンゼル「そうかも、ごめんね。そういうことだから今日はここで解散にしよう。いいよね、キモオタお兄さん?」ジッ

キモオタ(ヘンゼル殿の視線がwwwもう係わるなという事なのでござろうがwww我輩はおせっかいやきのキモオタですからなwww)

キモオタ「そうですなwww今日はこれでお開きにするでござるかwwwそしてまた図書館で会いましょうなwwwヘンゼル殿wwwグレーテル殿www」コポォ

ヘンゼル「……」

キモオタ「我輩たちはもう友達でござるからなwww困りごとがあれば何でも言ってくだされwww手伝いますぞwww力になりますぞwww」コポォ

グレーテル「……お手伝いしてくれるって、お兄ちゃん」

司書「うふふ、仲良くできそうでよかったね。でも二人ともキモオタさんにあまり迷惑かけないようにね」ニコニコ

ヘンゼル「……帰ろう。キモオタお兄さん、僕も次会う時が楽しみだよ。次は最後までやるよ、今日みたいに中途半端にならないように」

司書「……?ではキモオタさん、私達はここで。また図書館で会いましょう」ニコッ

グレーテル「……ばいばい、キモオタお兄ちゃん……」フリフリ

キモオタ「デゥフフwwwそれではまた図書館でwww」コポォ

・・・




210: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/21(火)23:06:35 ID:v9g

帰り道

・・・

司書「……あっ、しまった。どうしよ……」

ヘンゼル「なに?何か忘れたの?」

司書「さっき童話展で買った絵本、バスの待合所に忘れてきちゃったみたいなの。ごめんね、ちょっと取りに戻らなきゃ」

グレーテル「わかった……うん、一緒に取りに戻ろう……」

司書「大丈夫だよ、一人で取りに戻るから。もうウチまですぐだからここからなら二人だけでも帰れるよね、ヘンゼルが居れば平気かな?」

ヘンゼル「まぁ知ってる道だし、平気だけど……付き合うよ。一人で取りに行かせるのもなんだから」

司書「いいよ、ヘンゼル疲れてるんでしょう?心配してくれなくてもすぐだから平気、忘れ物を取りに行くだけだから」フフッ

グレーテル「寂しく……ない……?」

司書「ふふっ、大丈夫よ、私はもう子供じゃないんだから。それに荷物を取りに行くだけだからすぐだよ」クスクス

ヘンゼル「子供でしょ……まぁ、そんな遠くないし大丈夫かな。僕はグレーテルと先に帰ってるから」

司書「じゃあ鍵渡しておくね。グレーテル、よくまわりを見て車に気をつけてね?ヘンゼルはグレーテルの事、ちゃんと見てあげてね?」

グレーテル「……わかった……でも心配し過ぎって……思うの……車にも、もう慣れたの……」

ヘンゼル「そっちこそ、急いで怪我なんかしないでよ」

司書「うん、平気平気。じゃあね、キチンと鍵閉めるようにね」タッタッタ




ザッ

小柄な男「……」




211: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/21(火)23:08:10 ID:v9g

司書「さっき忘れたばかりだからまだ置いてあると思うけど、大丈夫かな……」タッタッタ

小柄な男「そこのお嬢さん、少し時間貰えるかな?」スッ

司書「あっ、私ですか?何でしょうか?」

小柄な男「実はこのあたりで大切なカギを落としてしまったんだが……私は目が悪くてな、よく見えないんだ。今日は眼鏡も忘れてしまってほとほと困っているのだよ、悪いが探すのを手伝ってはくれんか?」

司書「それは大変ですね、お手伝いしますよ。どんな鍵ですか?」

小柄な男「カギはそうだな、ごく普通の家の鍵だ。私はこのあたりをもう一度見て見るから君はあっちの路地の方を見てくれるか?あっちの路地は薄暗くてよく見えないんだ」

司書「確かに目が悪いとあの辺りは見にくいですね、わかりました!私はそこを探しますね」ニコッ

ガサガサ

小柄な男(生成した黄金をチラつかせて強制的にでも契約を結ぶ。それが俺様の本来のやり口だ)

小柄な男(あいつをしもべにする為の人質の確保にも、人形屋の男を殺すのも今朝の魔力持ちの女を殺すのもそれを使った。金は天下の回り物、黄金がいらない奴なんざいねぇ)

小柄な男(やるこたぁ単純明快、契約自体は黄金を押しつければ容易く結べる。だが唯一にして最大の弱点が『俺様の名前を呼ぶ事』だ、それをされちまうと魔力が奪われて契約が解けちまう)

小柄な男(現実世界。それも俺様のおとぎ話が消滅しちまったこの世界には俺様の名前を知る者はいない、すなわち弱点が存在しないってことだ!つまり俺様は無敵の状態)

小柄な男(しかし、おとぎ話の世界の住人となると話は別だ。あのしもべの場合は俺のおとぎ話を知らないって事を確認してから契約を結んだから問題はねぇけど……)

小柄な男(あの二人、ヘンゼルとグレーテルの場合は少しばかり特殊だ。俺様の名前を知っている可能性がある)

小柄な男(何しろ、俺様のおとぎ話とあいつらのおとぎ話の作者は同じだからな……ヤーコプ・グリム、そしてヴィルヘルム・グリム)

小柄な男(現実世界に来るようなおとぎ話の住人は普通じゃねぇ、グリム兄弟が書いた童話という共通点がある俺のおとぎ話を知っている可能性は低くねぇはずだ。俺様のおとぎ話も知ってるだろうな)




212: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/21(火)23:10:15 ID:v9g

小柄な男(となると……うまくこの女をさらって、それを餌にあいつ等をおびき寄せたとしてもだ、いつも通り黄金を生成して契約する方法を用いれば)

小柄な男(最悪、『黄金を生成する』って特徴だけで俺様の名前を当てられちまう可能性がある)

小柄な男(俺様の事を誰も知らないこの世界で、あいつ等の存在は唯一の弱点だ。となると、どうすればいいか)

小柄な男(なんてことはねぇ、俺様を単なる現実世界の悪人だと思わせればいい。つまり黄金を生成しなけりゃいいんだ。俺様が黄金を生成して契約を持ちかける奴だって知ってるやつは、この世界ではしもべのあいつだけ)

小柄な男(そしてあいつは人質がいるからよほど信用できるやつじゃねぇと他言出来ねぇだろう。だったら、ここは黄金も生成せず契約も使わない)

小柄な男(シンプルにこの女を誘拐し、おとぎ話の住人だと悟られないように……単純に金目のものでも要求してあの二人に持ってこさせる)

小柄な男(現実世界の悪人が計画した単なる誘拐強盗だとあのガキ共は思うだろう、そうすれば俺がおとぎ話の世界の住人だってことはわからねぇ)

小柄な男(もちろん、俺が名前を当てられる事が弱点だってことも知る事はねぇ。例えあいつ等が俺様の名前を知っていても、あの名前を口にする事は無い)

小柄な男(そうしておびき寄せたところを捕まえて、二人まとめて食っちまおう。そうすりゃあ相当な魔力が手に入る……そうすりゃあ俺様がこの世界の支配者だ!)

小柄な男(それにはまずこの女を……)ググッ

小柄な男「どうだい、そっちにはあったかね?」

司書「うーん…見つからないですね、カギって小さいですもんね…落とすと大変だなぁ……」ガサガサ

小柄な男「ああ、大変だろうねぇ……ありもしないものを探すってのはなぁ?」スッ

司書「えっ?ありもしないtt」

ヒュッ



ガコッ ドサッ




213: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/21(火)23:12:09 ID:v9g

キモオタの住む町 サイゼリア

バイト「店長ー、あのおかしなお客様がまた来店したんスけど。どうします?」

店長「こらっ!お客様のことをおかしいとか言うんじゃないよ、失礼だろ」

バイト「店長覚えてないんスか?以前、不審なお客様が来たから警察に通報するかどうか相談したじゃないスか」

店長「あれは例外だよ、確かにあの時のお客様は不審すぎたからな……お、おい、まさかあの時のお客様がまた!?」ビクッ

バイト「そッスよ、オタク風の恰好をした男性とボロボロの洋服で何故か裸足の可愛らしい外国の女の子。しかも時折二人して空中に話しかけていた……あのお客様ッス」

店長「マジかよ……あれ絶対事件だと思ったもんなぁ……一応、確認しとこう。どこのテーブルだ?注文は?」

バイト「オーダーは通したッス。11番テーブルッスね。あっ、でも今日は裸足の女の子居ませんでしたよ」

店長「そっか、よかった。なら普通のお客様だったんだな多分。あれ絶対誘拐だと思ったもんな。女の子がやたら懐いてたから結局通報しなかったけど」

バイト「その代わり、今日はやたらと髪の毛長い女性と一緒ッスけどね」

店長「なんだあれ!めっちゃ髪の毛長いじゃないか!普通じゃないぞあれ!どうなってんだあれ!」バッ

バイト「編んだり結ったりしてるのにあの長さッスからね。そういや、こないだ姪っ子と一緒に映画のDVD見ましたよディズニーなんですけど、あれくらい髪の毛長いっスねー、ラプンツェルじゃないっすか?あれ」ヘラヘラ

店長「何バカな事言ってるんだ映画のキャラクターが現実にいるわけないだろ!たぶんあれだろ、コスプレとかいう……」

バイト「でもあれ地毛じゃないッスか?あっ……」

店長「なんだ?どうした?」

バイト「なんかまた二人して空中に話しかけてるッスね」

店長「……一応、注意して見といて」

バイト「了解ッスー」




214: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/21(火)23:14:44 ID:v9g

ティンカーベル「あはははははは!だ、だめ…笑い過ぎてお腹イタイ…」バンバンバン

キモオタ「ちょっと慰めてくれるかもとか思った拙者が愚かでしたなwww」コポォ

ティンカーベル「だってだって…ぷぷっ!あれだけ大騒ぎしてたのにデートじゃなかったとか…!ぷーっ!」ケラケラケラ

ラプンツェル「キモオター!ドリンクバーって凄いね!オレンジもグレープもシュワシュワする黒いのも白いのも飲み放題!だからいろいろ混ぜてきたー」ゴクゴク

キモオタ「ちょwwwティンカーベル殿www笑い過ぎですぞwwwラプンツェル殿はもうちょっと感心持ってwww」

ティンカーベル「まぁそうだよね!司書さんは悪い人じゃないって私思ってたもん!あいつらの仲間じゃないってわかってよかったね!」

キモオタ「こないだは疑っていたでござるのにwww凄まじい手のひら返しですぞwww」

ラプンツェル「そんなに落ち込む事じゃないよー、でもそんなに女の子とデートしたいんだったら私と一緒にデートするー?」ニコニコ

キモオタ「でもそのあとゴーテル殿に塵にされるんでござろうwwwそんな度胸は無いですぞwww王子殿にも悪いですしなwww」

ラプンツェル「えっ?もちろん王子も一緒だよー」ニコニコ

キモオタ「ちょwwwそれもはやただのショッピングでござろうwww」

ティンカーベル「はーっ、笑った笑った!っていうか一通り笑ったから話戻すけど…グレーテルちゃんとお兄ちゃんの話だっけ?」フワフワ

キモオタ「ヘンゼル殿ですな、さきほどチラッと話した通りですがな…ティンカーベル殿はご存知ですかな?【ヘンゼルとグレーテル】というおとぎ話を」




215: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/21(火)23:16:35 ID:v9g

ティンカーベル「うーん…ごめん、そのおとぎ話は読んだ事無いなー……」

キモオタ「むむっ……仕方ありませんな、おとぎ話の内容さえ分かれば二人の苦悩がわかると思ったのでござるけど…」

ティンカーベル「魔法使いに聞いてみる?でもこないだもお世話になったしあんまり頼り過ぎても悪いかなー?」

キモオタ「そうですなwww他に詳しそうな人物と言えばシェヘラザード殿と赤ずきん殿あたりでござろうかwww」

トントン

ラプンツェル「【ヘンゼルとグレーテル】でしょー?私そのおとぎ話知ってるから教えてあげよっか?」ドヤァ

キモオタ「……ここはシェヘラザード殿に聞きますかなwww」

ティンカーベル「そだね……シェヘラザードはお話しするの凄く得意だもんね!でも忙しいから私達に話してくれる時間あるかなー?」

ラプンツェル「もー、シェヘラザードは王妃様だから忙しいって、だから私が教えたげる!私だってそのおとぎ話知ってるんだからね?ほらほら、頼って良いんだよ?」フンス

キモオタ「えええwww大丈夫なんでござるかwwwラプンツェル殿はそういう知的なポジションじゃないでござろうwww」

ティンカーベル「そうだよ、そういうのはシェヘラザードとか赤ずきんの役割でラプンツェルはもうちょっとなんていうか…おバカな事する役割っていうか…」

ラプンツェル「おバカじゃないよ!ちっちゃい時にママにたくさんおとぎ話は教えてもらったから知ってるよ!それに私、結構本とか読んでるからおバカじゃないからね!」フンス

ティンカーベル「そういう知識的な事じゃなくて言動g」モガモガ

キモオタ「ティンカーベル殿www言い過ぎですぞwwwまぁラプンツェル殿に自信があるのなら協力をお願いしたところでござるwww」グイグイ

ラプンツェル「まっかせてよ!えっとね、むかしむかしのお話なんだけどー……」




216: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/21(火)23:17:53 ID:v9g

ヘンゼルとグレーテル

あるところに貧しい家族が住んでいました、その家には二人の兄妹がいます
かしこくて妹思いなヘンゼルという男の子、優しくてお兄ちゃん思いなグレーテルという女の子でした
二人の本当のお母さんは亡くなっていて、新しい意地悪なお母さんとお父さんの四人で暮らしていました

ある年、国中で作物が育たないという大飢饉が起きました。どこの家も食べ物がなくて困っていました
とても貧しい兄妹の家ももちろん食べる物がなくて、野菜や魚どころかパンを食べる事が出来ない日すら多かったのです
食べ物が無くてどうにも困り果てたお母さんはお父さんにこう言いました。
「このままだと私達まで飢え死にしてしまう。だから子供たち二人を森の奥に置き去りにしよう」
お父さんは最初は反対しました、でも断れずついにはお母さんの提案をのみ込んで翌日ヘンゼルとグレーテルの兄妹を森の奥に置き去りにする事にしました

部屋の外でそれを聞いていたグレーテルはしくしく泣きました。でもヘンゼルは心配しなくて良いよといいました
ヘンゼルは夜中の間、月あかりを浴びてキラキラ光る小石をポケットいっぱいに詰め込みました。
翌日、二人は森の奥に置き去りにされましたがヘンゼルが目印に落とした小石をたどって家に帰る事が出来ました

四人はまた一緒に暮らしましたが、しばらくするとまた食べ物が無くなりお母さんはまた二人を置き去りにしようといいました。お父さんはやはり断りきれません
扉には鍵がかかっていて、今度は小石が拾えません。ヘンゼルは小さなパンくずを小石の代わりに落として目印にしようとしました
しかし、夜になって目印をたどろうにもパンくずは全て小鳥に食べられてしまっていて帰り道がわかりませんでした

ヘンゼルとグレーテルはケダモノがうなり声を上げる恐い怖い森の奥を何日もさまよいました
それでも二人が歩いていると、目の前にはお菓子で出来た家がありました。壁や屋根はおいしそうなパンやビスケット、いろいろなお菓子が飾られた美味しそうな家でした
空腹に耐えられなかった二人がお菓子の家をむしゃむしゃ食べていると、持ち主のおばあさんが家の中に招いてくれました
美味しいお菓子に温かいベット。疲れ果てていた二人を優しくもてなしてくれました。しかし、翌朝になるとそのおばあさんはヘンゼルを小屋の中に閉じ込めてしまいました
おばあさんは悪い魔女で、ヘンゼルを太らせて食べてしまうつもりでした
グレーテルは毎日毎日、魔女にひどくこき使われて泣きながら家事をしました。大好きなお兄ちゃんのヘンゼルと会う事は許されません

魔女はヘンゼルがまるまると太るのを楽しみにしていましたが一カ月たってもヘンゼルは痩せたままです、というのも毎日ヘンゼルの腕を触って太り具合を確認するのですが
ヘンゼルがその時に魔女に差し出しているのは自分の腕ではなく、食べ残しの骨だったからです。目が悪い魔女は気が付かずいつまでたってもヘンゼルを食べる事ができません
魔女はもう痩せてても良いからヘンゼルを食べてやると怒鳴り、グレーテルにヘンゼルを料理する準備をさせました
そしてパン焼きかまどに赤々と火を付けて、グレーテルのかまどを覗いて火の具合を確認するように言いました。グレーテルには魔女が自分も焼いて食べようとしてるのだとわかりました。
グレーテルは言います「わたし、火の見方なんか解らないの。どうしたらいいの?」魔女は答えます「簡単じゃろ、かまどの口はおおきいんじゃ。こうやって身を乗り出して確認するんじゃよ、よく見ておけ」
そうやって魔女がかまどの中を覗きこんでやると、グレーテルは思いっきり魔女をかまどの中に突き飛ばして、ふたをきっちりと閉めてしまいました
かまどの中で魔女のうめき声が聞こえました、グレーテルは小屋へ走って行ってヘンゼルを助けだしました

悪い魔女はもう居ません、ヘンゼルとグレーテルの兄妹は魔女の部屋から山の様な宝石をめいっぱいポケットやエプロンに詰めてお家に帰りました
お家に帰ると、意地悪なお母さんはもう死んでいました。お父さんと兄妹の三人は幸せに暮らしました

おしまい




217: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/21(火)23:19:24 ID:v9g

ラプンツェル「はい、おしまい!ねっ?私だっておとぎ話教えてあげるくらいできるんだからね?もっと頼ってくれていいんだよ?」フンス

キモオタ「先ほどからwww頼って良い頼って良いと言っていますなwww一体どうしたんでござるかwww」コポォ

ラプンツェル「だって二人ともシンデレラとか桃太郎ばっかり頼ってるでしょ?私ももっとキモオタやティンクの力になりたいの、だから頑張るよ!」ニコニコ

ティンカーベル「それはすっごく嬉しいね!でもさー、この内容で本当にあってる?なんかグレーテルちゃんが魔女を焼き殺しちゃったけど……?」

キモオタ「まぁ、グレーテル殿はかまどかまどと口癖のように言ってましたからな。おそらく彼女にとって悪者退治の方法はそれなのでござろう」

ティンカーベル「まぁ、そうしないと食べられちゃうわけだもんねぇ。でも最後は魔女も倒して宝石も手に入れてハッピーエンド!やったね!」

ラプンツェル「意地悪なお母さんもいなくなってお父さんと仲良く暮らせて、二人は幸せになれたんだねーよかったよかった」ニコニコ

キモオタ「まぁ、ハッピーエンドといえばハッピーエンドなのでござるが…」

ラプンツェル「どうしたの?納得してない感じだけど、このおとぎ話はこういう終わり方だよー?」

ティンカーベル「ハッピーエンド、良い事じゃん!親友ともう会えなくなるなんてことも無いし、幻に包まれて死んじゃうことも無いんだよ?」

キモオタ「いや、結末は幸せかもしれませんがな…これ途中が酷すぎでござろう?親に捨てられて魔女に監禁されるって相当ですぞこれ」

ティンカーベル「でもシンデレラだっていじめられてたし、赤ずきんだって狼に食べられちゃうし…どんな辛い事があってもハッピーエンドだからいいんじゃないの?」

ラプンツェル「私はそんなに興味ないけど、宝石とかもいっぱい手に入ったんでしょ?外の世界の人は宝石とか大好きでしょ?幸せな結末だと思うけどなー」

キモオタ「まぁ、『おとぎ話』なら…幸せな結末でござるけど……ヘンゼル殿からすれば現実でござるからなぁ……」ボソッ

ティンカーベル「……?」




218: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/21(火)23:23:32 ID:v9g

キモオタ「いやいや、まぁ……ヘンゼル殿がグレーテル殿を大切にしている理由は合点がいきましたな。こんな事があればまぁ、心配でござるよね」

ラプンツェル「でもヘンゼルはグレーテルを守る為にキモオタに攻撃したんだったよね?それは酷いよー、いくらグレーテルの為だって言ってもー」プクー

ティンカーベル「それにヘンゼルは魔力持ってたんでしょ?さっきのおとぎ話の中にはそんな場面なかったけど、生まれつきなのかなー?」

キモオタ「実はwww我輩、気が付いたのでござるがwwwおそらくwwwラプンツェル殿と同じではないですかなwww」コポォ

ラプンツェル「えーっ?私と一緒ってどーゆうこと?」

キモオタ「ラプンツェル殿の髪の毛に宿る魔力は確か、ゴーテル殿の育てた魔法植物を母上が食べた故…胎児のラプンツェル殿に残留したんでしたなwww」コポォ

ティンカーベル「そっか!ずっと魔女の食べ物を食べさせられたヘンゼルはそのせいで魔力が蓄積されたって事?」

キモオタ「おそらくwwwそれなら納得行きますぞwww」

ラプンツェル「そっかー、私とおそろいかー……なんだか親近感わいちゃうなー」ニコニコ

キモオタ「とにかくwww【ヘンゼルとグレーテル】の内容もわかったでござるしwwwこれで二人の大人に対する憎しみを払ってやれるやもしれませんなwww」

ティンカーベル「そう簡単にいくかなー?二人の気持ちをちゃんとわかってあげて、それからいっぱいおはなしもしなきゃだよ?もちろん、協力はするけどね!」

ラプンツェル「私も私も!私もなんでもするよ!外の世界には悪い大人もいるけど、良い人もたっくさんいたからね!嫌いだって思うのはもったいないよね!」

キモオタ「ありがたいwwwとりあえず、また図書館に行った時にでも……ん?なんだか音がしますなwww窓を叩く様な……」

コツンコツン

ラプンツェル「あれー?あの女の子、窓の外から呼んでるけど、キモオタの知り合い?」

グレーテル「……」コツンコツン

キモオタ「グレーテル殿……?一人でどうしたんでござろうか、我輩ちょっと話してくるでござる」ガタッ




219: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/21(火)23:25:57 ID:v9g

サイゼリア 店舗前

キモオタ「グレーテル殿ぉーwwwどうしましたかなwwwこんなところでwww」コポォ

グレーテル「……キモオタ、お兄ちゃん……」ハァハァ

キモオタ「息切れしてますぞwwwどうしてこのような場所に一人でwww司書殿やwwwヘンゼル殿はwww」

グレーテル「……」

キモオタ「もしやwww二人と喧嘩でもしたとかwww」

グレーテル「……悪い人に、お姉ちゃん……捕まったの……」ブルブル

キモオタ「ファッ!?まさか誘拐ですかな!?」

グレーテル「……返してほしかったら、お金持ってくるようにって……言われたの……ヘンゼルお兄ちゃんすっごく怒って……」

グレーテル「私の事置いて……悪い人に来るように言われた場所に……行っちゃった。私は……一人じゃ恐くて……だから……」

グレーテル「図書館に行って……キモオタお兄ちゃんのお家の場所……図書館カードで……調べて……途中で……キモオタお兄ちゃん見つけて……それで……」

キモオタ「グレーテル殿、まずは落ち着くでござる。そして詳しく状況を教えて欲しいですぞ」

グレーテル「あのね……ヘンゼルお兄ちゃんがね、キモオタお兄ちゃんに酷い事したから……こんな事、私がお願いしちゃダメかもしれないけど……」

グレーテル「お姉ちゃん……助けるの手伝って欲しいの……」

キモオタ「もちろんですぞ!それに魔力を持っているとはいえヘンゼル殿も心配ですからな!」

グレーテル「……私のこと……ヘンゼルお兄ちゃんのこと……お姉ちゃんのこと……助けてくれる……?」

キモオタ「先ほど言いましたぞ?我々はもう友達ですぞ、助けあうのは当然でござろう!」




220: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/21(火)23:30:04 ID:v9g

今日はここまで

ヘンゼル不人気ワロタwwwしばらくヘンゼル視点の場面あるけど大丈夫かなwww
ヘンゼル「腹立つとか糞ガキとか酷い言いようだね?別に現実世界の大人なんかに好かれようとも思わないけど」
絶対こういう事言う。そしてこれは腹立つ

ヘンゼルとグレーテル。とある消滅したおとぎ話編 次回に続きます




234: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/25(土)23:07:28 ID:1yX


グレーテル「よかった……キモオタお兄ちゃんにイジワルしたから……助けてくれないかなって、思ったの……」ホッ

キモオタ「こんな時に何を言ってるでござるか、我輩はお主たちの味方ですぞ。まずは何が起きたのかゆっくりでいいので教えていただきたい」

グレーテル「うん、ありがと……えっと、何を話したらいいのかな……お姉ちゃんが悪い人にさらわれて……それで、えっと……」ワタワタ

キモオタ「焦らなくて良いでござるよ。ミニスニッカーズでも食べて落ち着くでござるwww」スッ

グレーテル「これ知ってる……ものすっごく甘い奴……いただきます……」モグモグ

キモオタ「我輩ご用達のカロリーものすっごいやつですぞwwwそれはさておき、司書殿がさらわれた状況から聞くでござるか。童話展の後はまっすぐ家に帰ったのでござろう?」

グレーテル「うん、あのあと寄り道せずに帰ったよ……でもね、忘れ物しちゃったって言って……お姉ちゃんだけ一人で戻って行っちゃったの……」

キモオタ「そこで一人になったところをさらわれたと、そんなところでしょうな。その後、何があったのでござるか?」

グレーテル「ヘンゼルお兄ちゃんと二人でお家に帰って、お姉ちゃんの帰りを待ってた……でも一時間しても帰ってこなくて……そしたら……」

グレーテル「お部屋のね、ベルが鳴ったの……お客さんかと思って出たけど誰もいなくて……部屋の前にお手紙が置いてあったの……」

キモオタ「手紙…それが脅迫状だったわけですな?その手紙は今ありますかな?」

グレーテル「ううん……無いの……ヘンゼルお兄ちゃんが持って行っちゃったから……」

キモオタ「何か手掛かりになるかと思ったでござるが…無いものは仕方ないでござるな」

グレーテル「でもね、私も一緒に読んだの……だからお手紙に書いてた事は覚えてる……」




235: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/25(土)23:08:56 ID:1yX

キモオタ「それは助かりますぞ、手紙の内容、思い出せますかな?」

グレーテル「うん、えっとね……」

『お前達の大切な姉は預かった。姉を助けたければ金目のものを持ってこい。
場所は町はずれの廃墟。必ず二人で来る事』

グレーテル「こんな感じ……手紙読んでヘンゼルお兄ちゃん凄く怒ってた……「現実世界の大人はやっぱりろくな奴が居ない」って……」

キモオタ「そうでござろうなぁ……町はずれの廃墟というとあそこですな、地元民すら近寄らないようなあんな場所を指定するとは」

グレーテル「私知ってるよ……危ないからいっちゃダメって場所……図書館の子供たちが言われてるの……聞いたよ……」

キモオタ「子供たちにとっては格好の秘密基地でござるからな、しかし危険でござるから立ち入り禁止でござる。おそらく誰も立ち寄らない事を利用したのでござろう」

グレーテル「そんな危ないところに……お姉ちゃんは捕まってるんだね……」

キモオタ「そうなりますな、そしてヘンゼル殿は一人で飛び出して行ったという訳ですな?」

グレーテル「うん……私は危ないから部屋に残って、誰が来ても絶対に鍵をあけないようにって……言われたよ、でも私も心配になっちゃったから……お兄ちゃんの言いつけ、知らないふりしちゃった……」

キモオタ「今回は言いつけを破って正解でしたな、いくらなんでもヘンゼル殿一人で誘拐犯に立ち向かうなど無謀ですぞ」

グレーテル「やっぱり……すごい魔力を持ってても、大人には勝てない……かな……?」

キモオタ「ヘンゼル殿の圧縮魔力は相当脅威でござるけど反動がある事を考えると、一撃で勝負が決められなければ……一転して危険な状態になりますな」

キモオタ「それを助けられる仲間が居ればいいですがな、一人だとどうにも……しかしそれを承知の上で向かったのでござろうな……司書殿を助ける為に」




236: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/25(土)23:10:30 ID:1yX

キモオタ「ヘンゼル殿は我輩に攻撃した時も自分の事は二の次でグレーテル殿の事を気にしておりましたからな。大切な家族を守る為なら、自分の犠牲などどうだっていいのでござろう」

グレーテル「どうだってよくないのにね……ヘンゼルお兄ちゃん、私やお姉ちゃんの為なら無茶な魔力の使い方するもん……あんな風にしてたら……お兄ちゃんいつか大怪我しちゃう……」

キモオタ「いくらグレーテル殿や司書殿の為とはいえ、ヘンゼル殿が無茶して怪我するのは悲しいでござるよね、グレーテル殿は」

グレーテル「うん……ヘンゼルお兄ちゃんはいつも私たちの心配ばっかり……もっと自分の事も大切にして欲しいの……ヘンゼルお兄ちゃんが幸せじゃなきゃ、私は幸せになんかなれないの……」

グレーテル「ヘンゼルお兄ちゃんと一緒に居るだけで……私は安心なの、だから置いて行ったりしないで欲しいの……でも、わかってくれないの……」

キモオタ「ふむ……状況は把握できましたからなすぐにでもヘンゼル殿を追いかけて一緒に司書殿を救出しますぞ」

キモオタ「グレーテル殿の胸に秘めたその気持ちは、後ほどヘンゼル殿に伝えるでござる。黙っていては伝わりませんからなwww」

グレーテル「……うん、全部終わったら私ちゃんと言う……もう無茶な事しないでって……私の側に居てって、置いて行かないでって……言うの……」

タッタッタ

ティンカーベル「キモオター!グレーテルちゃんー!話長いけど何か困った事だよね?ラプンツェルに頼んでお会計してきたけど…」パタパタ

ラプンツェル「二人とも深刻そうだったからー、きっともうご飯なんか食べてる場合じゃないよね?」

キモオタ「おお、申し訳ありませんな二人とも。これからちょっと向かわねばならぬ場所が出来ましてな…丁度良かったでござるよwww」

グレーテル「……すっごく長くて綺麗な髪……お姉ちゃん……本物の、ラプンツェル……?」

ラプンツェル「うん!おとぎ話【ラプンツェル】の主人公だよ!えーっと、キモオタが言ってたグレーテルちゃんだよね?よろしくね!」ニコニコ

グレーテル「うん、グレーテルだよ……よろしく……」

ラプンツェル「うんうん!グレーテルは妹みたいでかわいいね!私の事ラプお姉ちゃんって呼んでいいよ!私の方がずーっとお姉ちゃんだからね、ラプお姉ちゃんになんでも頼ってね」フンス

キモオタ「ちょwwwラプンツェル殿wwwお主どれだけ頼られたいのでござるかwww」コポォ




237: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/25(土)23:11:29 ID:1yX

・・・

・・・

ティンカーベル「ええっ!?司書さんが誘拐された!?ちょ、ちょっとそれってこんなところでゆっくり話してる場合じゃないじゃん!急がないと司書さんが酷い目にあっちゃう!」

グレーテル「……キモオタお兄ちゃん……急がなくても……大丈夫……?」ビクビク

キモオタ「ちょwwwグレーテル殿の不安をあおらないでいただきたいwww慌てて動いても良い結果にはならぬでござるよ、急いでいる時こそ冷静にですぞwww」

ラプンツェル「私も司書って人助けるのお手伝いするよ!あっ、でも確か現実世界にはケーサツっていう悪い人を捕まえるチームがいるんだよね?その人たちにも手伝ってもらえないの?」

ティンカーベル「そっか、ここは現実世界なんだし私たちが行くより、警察にお願いした方がいいんじゃないかなー?」

キモオタ「もちろん、本来ならそうなのでござるが……ちょっと思うところがあるのでござるよ、警察には届けず我らだけで救出しますぞwwwラプンツェル殿にもお手伝いお願いしたいwww」

ラプンツェル「まっかせて!犯人見つけたらこの髪の毛でしゅしゅーって捕まえちゃうからね!」フンス

グレーテル「ただ長いだけじゃないんだ……長くて綺麗なだけでも素敵なのに……悪い人も捕まえられるなんて、ラプお姉ちゃんの髪の毛すごいね……」

ラプンツェル「そうでしょ!もう助けたも同然だからグレーテルは安心しても良いよ!」フンス

コソコソ

ティンカーベル「……ねぇ、キモオタ。確かにおはなしサイリウムで魔法使えるし、私もラプンツェルもいるから魔法なんか使えない人間の誘拐犯なんか簡単に捕まえられちゃうとは思うよ?」ヒソヒソ

ティンカーベル「でも、私はやっぱり警察に届けた方がいいと思うな…司書さんにもしもの事があったら……」ヒソヒソ

キモオタ「……不可解だとは思いませんかな、ティンカーベル殿」ヒソヒソ

ティンカーベル「不可解…?なにかおかしい事あったっけ?」ヒソヒソ

キモオタ「我輩はこの誘拐……単なる身代金誘拐では無いと思うでござる」ヒソヒソ




238: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/25(土)23:12:36 ID:1yX

キモオタ「例えばでござるよ?ティンカーベル殿と我輩が誘拐犯コンビだとして……大人の司書殿、しっかりしてそうなヘンゼル殿、無口そうなグレーテル殿。誰をさらいますかな?」

ティンカーベル「えーっと…グレーテルかな?一番体も小さいし、女の子だから簡単に誘拐できそうだし……」

キモオタ「そうでござろう?ならば何故犯人は司書殿を?」

ティンカーベル「それはあれでしょ?お金が欲しかったから、それに一人でいたんでしょ?誘拐しやすいならだれでもよかったんだよ!きっと!」

キモオタ「強盗ならともかく身代金を要求するのなら司書殿を誘拐するのはおかしいでござろう、ヘンゼル殿とグレーテル殿に要求しておりましたが……二人がお金をどう用意するでござるか?銀行でも下ろせず、せいぜい部屋にあるいくらかのお金が関の山ですぞ」

ティンカーベル「じゃあ……お金が目的じゃないって事?」

キモオタ「我輩の予想ではそうですな。単純にお金が欲しい犯人にしては効率が悪すぎますぞ、『金目の物』なんていう指示もざっくり過ぎでござるし、目的は他の所にあるように見えますな」

ティンカーベル「もしかして……お金も司書さんもどうでもよくて……本当はヘンゼルとグレーテルを廃墟に呼び出す為の作戦かな…?」

キモオタ「我輩はそう考えてますぞ。必ず二人で来るように…なんて手紙を部屋まで届ける辺り二人を呼び出す事が目的でござろうな。そうなると、何故二人を呼び出すのか……」

キモオタ「あの二人に用があるから。しかし、現実世界の人間にとってはあの二人はただの外国人の兄妹。となると……犯人はおとぎ話の世界の住人かも、となりますな」

ティンカーベル「おとぎ話の世界の住人が、何かを求めてヘンゼルとグレーテルを呼び出そうとしてるってこと?」

キモオタ「そこに行きつくのでござるよね、今はまだ推測の域を出ませんがな。もちろんただ単に犯人が現実世界のロリコンショタコンの可能性もあるでござるが……」

キモオタ「ただ犯人がおとぎ話の世界の住人だった場合、魔法具なんか出されては警察では相手をしきれない可能性もありますからな……警察なんか呼んでは我々も魔法具を使いにくくなりますしな」

ティンカーベル「逆に暴力振るった!ってなってキモオタやラプンツェルが逮捕されちゃうかもしれないもんね……」

キモオタ「我輩はともかくwwwラプンツェル殿をそんな目にあわせたとなると、我々塵と消えるどころではすみませんぞwww」




239: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/25(土)23:14:27 ID:1yX

キモオタ「とにかく、ここは我々だけで司書殿の救出を試みますぞ」

ティンカーベル「確かに犯人がおとぎ話の世界の住人だったら、警察より私たちの方が司書さん助けられる可能性上がるもんね」

キモオタ「ただ、相手が誰か解らない以上…どんな手を使ってくるかもわからないでござる。強い腕力や恐ろしい魔法を相手にする可能性もありますぞ」

キモオタ「故に、ティンカーベル殿だけは廃墟の外で様子を見て司書殿を探す方向で動いて欲しいでござる」

ティンカーベル「ヤだよ!それキモオタ達が捕まったり傷付けられても無視して単独行動ってことでしょ?私だって最後まで戦うよ!」

キモオタ「ちょwww我輩たちが全員捕まったら誰が司書殿を助けるでござるかwwwティンカーベル殿は唯一世界移動が出来るでござるし、我輩と通信だって出来ますからな」

ティンカーベル「そりゃあ、そうだけどさ……」

キモオタ「平気でござるよwww捕まるつもりで行くわけではないのでwwwそれの何かあったときにティンカーベル殿なら動きやすいでござるしwww頼りにしてますぞwww」

ティンカーベル「そーいうことならわかった、司書さんを探す役目私がやるよ」

キモオタ「たのみますぞwwwさて、グレーテル殿準備は出来たでござる、出発しますぞ!」

グレーテル「うん……私は、心の準備……出来てる。絶対に、お姉ちゃん助ける……」

キモオタ「そうですな!では我輩がひとっ走り例の廃墟まで走るでござるから、グレーテル殿は我輩の背中にwww」

グレーテル「自分で走って行くよ……?おんぶしてもらったら……悪いよ、キモオタお兄ちゃん疲れちゃう……」

キモオタ「ご安心をwww我輩、魔法を使う事が出来ますからなwww遠慮は無用ですぞwww」

スススッ

おはなしサイリウム「コード認識完了『裸王』 魔法発現状態へ移行……モード『muscle』」




240: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/25(土)23:16:09 ID:1yX

廃墟への道

ドスドスドス

グレーテル「……キモオタお兄ちゃん、大丈夫?……重くない……?疲れない……?」

キモオタ「平気ですぞwww二人は到着してからウォッチで呼びますからなwwwそれに今の我輩はただのデブに非ずwww体重を気にするとはグレーテル殿も乙女ですなwww」コポォ

キモオタ「裸王殿との絆の魔法『muscle』は民の願いを形にする為の強靭な筋肉、そして逆境をも撥ね退けるタフネスを得る事が出来ますからなwww少々走った程度では息切れすらしませんぞwww」コポォ

グレーテル「キモオタお兄ちゃん……現実世界の大人なのに……魔法、使えるのね……すごい……」

キモオタ「とはいってもwww魔法具ですからなwww我輩自身に魔力があるわけではないでござるwww」コポォ

グレーテル「私と一緒だね……私にも魔力があったら……お姉ちゃんの所にもっと早く着けるのにな……」

キモオタ「焦りは禁物ですぞ、とはいえwww本当はシンデレラ殿との絆の魔法『step』で加速したいところでござるがwwwグレーテル殿をおぶっている状態で転んでは大惨事ですからなwww」

グレーテル「【ラプンツェル】に【シンデレラ】……裸王っていうのは……【裸の王様】かな……?友達、いっぱいいるのね……」

キモオタ「おとぎ話の世界ではちょっとしたリア充レベルに友人はいますぞwwwおとぎ話もたくさん読みましたしなwww」

グレーテル「そっか……私も、たくさんのおとぎ話読んだよ……私のおとぎ話は、もう無いけど……」

キモオタ「先ほど、ラプンツェル殿に【ヘンゼルとグレーテル】のおとぎ話を教えてもらいましたぞwww我輩はグレーテル殿のおとぎ話もちゃんと知ってるでござるよwww」コポォ

グレーテル「そっか……私たちの為に聞いてくれたのかな……でも聞かない方が、よかったよ……」

キモオタ「……グレーテル殿?」




241: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/25(土)23:17:46 ID:1yX

グレーテル「もっと楽しいお話はいっぱいあるよ……誰も悪い人なんか居ない……だれも辛い思いなんかしない……幸せだけしかないおとぎ話……」

キモオタ「それは……やっぱりグレーテル殿もあのおとぎ話を憎んでいるのでござるか?」

グレーテル「……どうかな?……でも私たちのおとぎ話聞いたなら……私やヘンゼルお兄ちゃんが……大人が嫌いな理由、わかったよね……?」

キモオタ「……わかったでござる、童話展では事情も知らず無責任に大人を頼れなどと言って申し訳ありませんでしたな」

グレーテル「いいの。キモオタお兄ちゃんがそう言ってくれたから……私は助けてって言えたの……」

グレーテル「それに……大人は嫌いだけど……キモオタお兄ちゃんの事は……ちょっと好き……」

キモオタ「それはありがたいですなwwwしかし、我輩が特別なわけではないのでござるwwwこれを機にもっといろんな大人を頼ればいいですぞwww」

グレーテル「それは……無理だよ……キモオタお兄ちゃんはちょっと特別なの……他の大人は……やっぱり嫌い……」

キモオタ「しかし……これから先、全ての大人を信用できずに生きていくというのは、辛いと思うのでござるよ」

グレーテル「辛い事って……大人を信用できない事じゃないよ……辛いのはね……いらないって言われる事なの……」

グレーテル「私のうちは貧乏だったけど……ごはんがちょっとしか食べられなくても、可愛いお洋服無くても……平気だったの……パパやヘンゼルお兄ちゃんが居て……ちょっとイジワルでもお母さんがいて……それで幸せだったの……」

グレーテル「だってね……お家が無い子も家族が居ない一人ぼっちな子もたくさんいるのよ……でも私にはお家も家族もある……だから幸せだったの……」

キモオタ「……」

グレーテル「でもね……パパとお母さんはそう思ってなかったみたい……私やヘンゼルお兄ちゃんがいたら……ごはんが足りないって……このままじゃ自分たちが死んじゃうって……」

グレーテル「だから……ヘンゼルもグレーテルもいらないって……捨てちゃったの……私がね、ずっと幸せだと思ってたものって……」

グレーテル「パパ達にとっては不幸なものだったの……それを知っちゃったときね……我慢したけど、泣いちゃった……」




242: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/25(土)23:20:16 ID:1yX

グレーテル「その時、ヘンゼルお兄ちゃん言ってた……大人は勝手だって……いつだって辛い目にあうのは子供たちの方だって……」

グレーテル「私もそう思うの……お母さんは私たちの事好きじゃないかもって思ってたけど……それでもパパは私たちの事好きだと思ってた……でも助けてくれなかったの……暗い暗い森の奥に、二回も置き去りにされたよ……」

グレーテル「だから……嫌いになったの……それから会う大人もみんな悪い人ばっかり……」

キモオタ「……それはもう、相当辛い思いをしたのでござろう。両親に捨てられ、魔女に利用され……お主らの境遇はあまりに辛すぎますぞ……
例え、ハッピーエンドになったとしても……それでは埋め合わせできぬほどの辛い生活だったのでござろう……二人が大人を憎むのも当然でござる……」グッ

グレーテル「それにね……私もいろんなおとぎ話を読んだけど……大人って、みんな悪い人だなって……やっぱり思ったよ……それって、どこの世界も一緒なの……」

グレーテル「マッチを売る女の子のお父さんは……ひどい暴力を振るったよ……?」

グレーテル「笛吹きがネズミを退治しても……街の大人は約束を守らなかったよ……?」

グレーテル「優しい灰かぶりのお姉ちゃんを……新しいお母さんはいじめたよ……?」

グレーテル「ラプお姉ちゃんだって……本当のお父さんに魔法の野菜と交換されたんだよ……?優しいお父さんはそんなひどい事しないよ……?」

グレーテル「村の為だって言って……優しい弥平パパを殺したのだって……村の大人だよ……?」

キモオタ「弥平……殿?」

グレーテル「優しい大人……私達に優しくしてくれたお父さん……でも、女王さまと弥平パパ……とキモオタお兄ちゃん以外は……どのおとぎ話の大人もみんな悪い人だよ……」

キモオタ「グレーテル殿も我輩の友人も、なんら現実世界の人間と変わらぬ友人でござる。しかし…それでもおとぎ話は作られた物語でござる、誰かに聞かせる為に作られた以上は…」

キモオタ「やはり、物語を盛り上げる状況が必要なのでござろう。主人公が気持ちよく逆境を撃ち払ったり、幸福を手にする展開……その為には、わかり易い悪役の存在が便利なのでござろう……」

グレーテル「……物語を盛り上げる為……それ、ヘンゼルお兄ちゃんも言ってた……現実世界の作者さんのせいで……私たちはあんな苦しい思いをしたんだって……」




243: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/25(土)23:22:56 ID:1yX

グレーテル「私達を作った作者さんはね……【ヘンゼルとグレーテル】を盛り上げる為に……私達を貧乏な兄妹にしたの……パパ達に嫌われる運命にしたの……魔女に酷いことされる人生にしたの……」

グレーテル「お金持ちの兄妹が……パパに愛されて、魔女にも会わないおとぎ話って……きっとつまらないから……貧しい兄妹が酷い目にあう方が……盛り上がるから……」

キモオタ「そんな風に考えるのは……作者殿が何を考えてお主らを生み出したかなど、知りようがないでござろう?悪い方に物事を考えてはいけませんぞ」

グレーテル「でもね……作者さんが私たちでは考えつかない素敵な理由で……おとぎ話を作ってくれてても……やっぱり私たちの辛い人生を決めたのは、作者さんだよ……?」

キモオタ「物語の大きな筋は決められていますからな、確かにおとぎ話の主人公からしたら……作者は自分の運命を決めた存在になりますな」

グレーテル「……それって、悲しいな。最初っから運命が決まってるって……やだな……」

グレーテル「……どんなに頑張っても……変えられないの……」

グレーテル「【ヘンゼルとグレーテル】が無くなっちゃったから……私は運命から逃げられたけど……それでもこうやってお姉ちゃんがさらわれて、お兄ちゃんに置いて行かれて……」

グレーテル「どんなに頑張っても……良くしようとしても……運命から逃れてても……幸せになろうとしちゃいけないのかな、私がおとぎ話の主人公だから……」

キモオタ「…そんなことは、無いでござろう」

キモオタ「お主もヘンゼル殿も、おとぎ話の主人公でござるが…我輩にとっては現実世界の人間もおとぎ話の世界の人間も変わりありませんぞ、その境界線などものすごく曖昧でござる」

キモオタ「努力とは簡単には報われないものでござるが……それでも、お主の思いや努力は無意味にはならんでござろう」

キモオタ「気を落とさぬよう、グレーテル殿。我輩やヘンゼル殿と一緒に、司書殿を助けたいから一緒に来たのでござろう?ならば、ここはひとつ誘拐犯どもに目に物見せてやりますぞwww」コポォ

グレーテル「うん……ありがとね、キモオタお兄ちゃん……」

・・・




244: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/25(土)23:24:22 ID:1yX

少し前 廃墟

ヘンゼル(……脅迫状に書いてあった場所は恐らく、ここだ)コソコソ

ヘンゼル(廃墟とはいっても結構大きな建物みたいだ…一周したところ、覗ける部屋にあいつは捕えられてなかった。奥の部屋か……一階じゃないのかな?)

ヘンゼル(人の気配はする、あいつを除いて二人……)

ヘンゼル(……)

ヘンゼル(誘拐犯には腹が立つけど、あいつを助けだす方が先決。どこかから忍び込んであいつだけ助けてってのが理想だけど…でも、そう簡単にはいかないか…)

ヘンゼル(それにしても現実世界の奴らは……大人は本当に姑息だ、誘拐なんて卑劣な手段を使う事もだけど)

ヘンゼル(僕やグレーテルを来させるように仕向けた、子供なら抵抗も出来ないと思われたんだろうけど)

ヘンゼル(僕には魔力がある……たとえ誘拐犯とやりあっても有利なのはこっちだ)

ヘンゼル(この世界には存在しない『魔力』の前には大人と子供なんて差は些細な事だ)

ヘンゼル(僕の家族に手を出した事、後悔させてやらないとね)

ヘンゼル「いつまでもこうしてられない、あいつもグレーテルも待ってる。ここは正面突破が一番かな……」ダッ

バタンッ!

ヘンゼル「おい!僕達にふざけた手紙をよこした奴、居るんだろう!隠れるなんて姑息な事はやめてもらうよ、さぁ出て来てもらおうか!」




245: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/25(土)23:26:26 ID:1yX

小柄な男「喚くんじゃねぇよ、こっちはずっと待っていたんだぜ?隠れなんかしねぇよ」

ギィギィ

小柄な男「しかし随分と威勢のいいガキだな、大人しげな外見に騙されるところだったぜ」クックック

強面グラサン「……」

ヘンゼル「あんた達が、あいつを誘拐した犯人だよね?」

小柄な男「ああ、そうだぜ。だが、おかしいぞ、俺様はこう要求したはずだ。二人で来いとな…おい、妹はどうした?」

ヘンゼル「妹は部屋に残してきた。連れてくる理由がなかったからね」

小柄な男「おいおい…お前は大人しげに見えるが随分と利口そうに見える、いわゆるインテリ系だと思っていたんだが…やっぱり脳みそはガキだな」ハァー

小柄な男「状況理解してんのか?お前の姉ちゃんは俺様が監禁してる、あいつを殺そうがどうしようが俺の自由だ。それを助けるチャンスをお前達に与えてやってるんだぜ?」

小柄な男「これは取引なんかじゃねぇ、俺様からお前達への命令だ。勘違いすんじゃねぇぞ」

ヘンゼル「あんたこそ勘違いしないで欲しいね」

小柄な男「あぁ?」

ヘンゼル「僕はここに取引に来たわけじゃないんだ。本当は…あいつだけそっと助け出せればそれでいいと思っていたけど……予定変更だ」

ヘンゼル「元々廃墟なんだ、多少壊れても…中で男が死んでいても誰も困りはしないよ」ググッ

スッ




246: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/25(土)23:27:27 ID:1yX

ヘンゼル「一気に距離を詰めて、捕える…!」ギロッ

小柄な男「おい、近寄るんじゃねぇクソガキ!あいつを殺しちまってもいいのか!?」

ヘンゼル「誰が殺すの?あんたには出来ないよ、死人に人殺しなんてできないから」ダダッ

ゴゴゴゴゴ

小柄な男「なんてやつだ…!人質がいるんだぞ!わかってんのかテメェ、恐ろしくねぇのか!あの女がどうなっても…」

ヘンゼル「五月蠅い。僕は今凄く腹が立ってるんだ。それに僕の大切な家族を……」

ヘンゼル「『あの女』なんて呼び方するな」ヒュッ

小柄な男「チッ…!我がしもべ!俺様を守りやがれ!そのガキを止めろ!」

ヒュバッ ガシッ

強面グラサン「……小僧、悪ぃがここは引け。加減、出来ねぇぞ」シュウゥゥゥ

ヘンゼル「……っ!」ババッ

ヘンゼル(なんだ…?思わずのけぞってしまった。こいつの威圧感…あの小柄な男とは段違いだ)

小柄な男「これだからガキは…!考えが甘いから嫌になんだよ!おい!まだだぞ!そいつを俺様に近づけるなよ!」チッ




247: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/07/25(土)23:31:53 ID:1yX

小柄な男「おいクソガキ!何故テメェがそんなに余裕なのかしらねぇけどな、優位はまだこっちにあんだぞ?」

ヘンゼル「そうかな?クソガキの攻撃にビビっていた奴に優位があるかな?」

小柄な男「あの女は別の部屋に閉じ込めてある。お前は俺達に他の仲間が居ないと踏んで強気で出たみたいだがなぁ…お前の奇襲は失敗だ、もうお前が反抗的だってのはわかった」

小柄な男「先手必勝で俺達を殺せればその策も上策だったろうがなぁ、あまり舐めた真似してっと本当にあの女を殺すぞ!」チッ

ヘンゼル「……」

小柄な男「だが俺の目的はあの女を殺す事じゃねぇ、チャンスをもう一度やる。妹を連れてもう一度来い」

ヘンゼル「何故、金を要求するでもなく僕の妹を連れてこいなんて言うんだ?あんたは身代金目的なんじゃないのか?」

小柄な男「俺様はただな、生意気なガキが俺の命令に従わないのが腹立たしいだけだ」

ヘンゼル「…そんな理由で、わざわざ僕達を呼び出すの?普通じゃないと思うけど」

小柄な男「答えろ、ガキ。戻って妹のグレーテルを連れてくるか、あるいはここで俺様のしもべにやられるか」

ヘンゼル「僕がなんていうか予想できてるだろう?だったら、答えなくてもいいんじゃないかな」

小柄な男「ああ、面倒なうえに腹の立つクソガキだ……」ギリッ

小柄な男「おい、