転載元:キモオタ「ティンカーベル殿!おとぎ話の世界に行きますぞwww」七冊目
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・ゲンドウ「エヴァに乗れ」シンジ「やだ!やだ!ねぇ小生やだ!」
雪の女王の世界 雪の女王の宮殿 ヘンゼルとグレーテルの部屋
グレーテル「……すぅすぅ」スヤスヤ
ヘンゼル「グレーテル、ごめんね…僕が、僕がお前に無理をさせたから…」ギュッ
雪の女王「ヘンゼル、もういい加減に離れたらどうだ?心配する必要は無い、安静にしていれば数日後には起き上がれるようになる」
ヘンゼル「女王、グレーテルは数日経てば今までと同じ生活ができるのかな?何か後遺症とか残ったり、しないよね?」
雪の女王「結論を言えば後遺症の心配は無い。ただし、今は相当身体が弱ってる状態だから無理をすれば今度こそ命の保証は出来ない」
ヘンゼル「そうなんだ、良かった…」
雪の女王「良かった……か。聞かせてくれ、なにが良かったと言うんだヘンゼル?」スッ
ヘンゼル「……」
雪の女王「治療をしている間、キミからあの【キジも鳴かずば】の世界で何が起きたか聞いたが…もう少しでキミは最愛の妹を失っていたんだぞ」
雪の女王「私は確かに伝えた、グレーテルは魔法耐性が低い事、だから魔法は余程の事が無ければ使わないようにと。聡明な君なら村を焼き払うほどの強い魔法を行使すれば妹がどうなるかわかっていたはずだろう」
ヘンゼル「…わかってた、魔法を使えばグレーテルが苦しむ事。でも、グレーテルも復讐には賛成してくれたしもし苦しんだとしてもこんな状態にまでなるなんて、思ってなかった」
雪の女王「今回は完全に症状が悪化する前に私が処置出来たから事なきを得た。だが、もう数分遅れてグレーテルがさらに魔法の行使を続けていれば…」
雪の女王「グレーテルの身体は完全に魔力に蝕まれて命を落としていただろう。例え運よく生きていたとしても重大な障害が残った可能性が高い」
雪の女王「キミはいつだって止める事が出来たはずだ、でも止めなかった。復讐しか見えなくなりグレーテルの身体の事など二の次にしてしまった、そうだな?」
ヘンゼル「僕は考えが甘かったんだ。氷雪花を探している時に灯りを燈す魔法を使ったグレーテルは平然としていた。だからきっと今回も平気だろうって…」
雪の女王「…本当にそうか?少しの灯りを燈す魔法と村を焼き払うような火炎の魔法では負担もはるかに違う。そんな事想像できるはずだろう、普段のキミならば」
雪の女王「あの時のキミは、優しくしてくれた弥平を失った事で頭に血が上っていた。本当は危険だと感づいていながら…グレーテルが少々苦しもうが復讐を遂げる事を優先したんじゃないか?」
ヘンゼル「……そうだったかもしれない。あの時の僕はグレーテルが少しふら付いていたのに気がついていた。だけど、村の大人達を殺す事を優先にした」
ヘンゼル「燃え上がる家々や死んでいく大人を見て、あの時の僕はなんだってできると、思いあがっていたんだ」
雪の女王「思いあがっていた、というのは自分の魔力にか?」
ヘンゼル「僕の魔力と…それを使って魔法を操るグレーテルの力にだよ。僕の魔力とグレーテルの魔法があればなんだってできるってそんな風に思ったんだ」
ヘンゼル「これだけ強力な魔法を使えればどんなにズルイ大人や悪い大人相手でも引けを取る事は無い、きっとこれだけの力があればグレーテルやお千代を幸せに出来るって思ってた」
雪の女王「自分達の持つ力の大きさを目の当たりにして…自惚れてしまったということか」
ヘンゼル「村人への罪悪感や村を焼いた後悔なんか無かった。僕達に優しくしてくれたパパさんを殺した奴らに復讐をする事、それしか頭に無かった」
ヘンゼル「その時はグレーテルの身体の事なんか考えてなかった。自分勝手に復讐の事だけ考えて……これじゃあ僕は村の為にパパさんを利用した大人達と何も変わらない……」
ヘンゼル「僕は復讐の為にグレーテルの魔法を利用したのと同じだ。妹の身体を顧みず目先の復讐しか見てないなんて、兄失格だ」
雪の女王「…そうだな、今回の君の行動はグレーテルの兄として最悪のものだった。だが幸いグレーテルの命に別状は無い、キミは今回の件を糧にする為にしばらく一人で反省すると良い。私はお千代と話してくる」
スッ
ヘンゼル「待ってよ女王、僕も行く。僕もお千代に会って謝らないといけない」
雪の女王「駄目だ。しばらくの間、キミがお千代に会う事は許可しない」
ヘンゼル「お願いだよ女王!僕はグレーテルを危険な目にあわせたばかりか…僕のせいでお千代まで不幸にしてしまったんだ!」
雪の女王「キミのせいじゃない。だから今は魔法の力に溺れて妹と自分自身を危険にさらした事を反省すべきだ」
ヘンゼル「でも僕が小豆と米を盗んだりをしなければパパさんは人柱にされなかったんだ、僕が盗みを働かなければお千代はパパさんとずっと一緒に暮らせたんだ!」
雪の女王「それは不可能だ、弥平が人柱にされなければ【キジも鳴かずば】は消滅する。キミが米と小豆を盗まなければ、もう少し早く世界が消滅していただけだ。キミ達とあの親子を巻き込んで」
ヘンゼル「そうだとしても…僕はお千代を苦しめてしまった…泣かせてしまったんだ!家族なのに!僕の軽率な行動でみんなを苦しめてしまった…」
雪の女王「今の君に出来る事は謝罪なんかじゃない。お千代にもキミにも一度にいろんな事が起き過ぎた、一人で今回の出来事にキチンと向き合う時間が必要だ」スッ
ヘンゼル「それもキチンとやる!女王が許可してくれないなら、無理にでも僕は会いに行く!そして傷つけ苦しめた事を、救ってあげられなかった事を謝るんだ!」ダッ
パキパキパキパキッ……!
ヘンゼル「……っ!」
ドシャアァァ
ヘンゼル「靴底を床に凍りつかせて…っ!なにをするんだ女王!僕は…僕は…不甲斐なかった事をお千代に許して欲しいだけなんだ!あいつは家族なのに、僕は何もしてやれなかった!」
雪の女王「言っただろう、キミがすべきはお千代への謝罪じゃない。それが理解出来ないのなら私は何度でもキミの足を床に縫い付ける」
ヘンゼル「女王!どうして!?どうしてそうまでして僕の邪魔をするんだ!?」
雪の女王「……今のキミは重要な分岐点に立たされている」
ヘンゼル「分岐点……?」
雪の女王「キミが憎んでいる大人達のような人間になるか、それともキミが慕っている弥平の様な人間になれるか。その分岐点だ」
雪の女王「我々はおとぎ話の世界の住人。現実世界の人間の様に年を取るわけじゃない」
雪の女王「おとぎ話の登場人物の年齢は物語の展開の影響を受ける。おとぎ話の途中で年齢が大きく変動する登場人物は年齢も変動するが、おとぎ話の始まりからおしまいまで年齢が代わらないキミの場合はそれ以上成長する事は無い」
雪の女王「しかし、これは年齢云々というよりもどのような人間に成長するかという次元の話だ」
ヘンゼル「仮に僕が成長して大人になるとしたら、僕が憎んでいるズルイ大人や悪い大人に僕自身がなってしまう可能性があるって女王は思ってるの?」
雪の女王「キミは今回大きな悲しみを負った。父親同然の弥平を失い、それを自分の責任だと思いお千代を悲しませた事に責任を感じている。そして感情に任せた行動の末、グレーテルを死なせかけた」
雪の女王「キミはまだ未熟だ。抑えきれない憤りや抱えきれない悲しみを処理する手段を持ち合わせていない、この一件を糧にして困難を乗り越える心の強さを手に入れなければいけないんだ」
雪の女王「困難や悲しみは生きていくうえでは避けられないが、抱えた不の感情をそのままにしていてはいずれ精神が歪んでしまう。それらの感情を振り払う方法を知らなければいずれキミが憎んでいるような所謂『悪い大人』になってしまうだろう」
ヘンゼル「馬鹿な!僕達の父親だったあの男や悪い魔女や村の大人たちみたいな悪人に僕がなるって言うのか!?なんでそんな事いうのかわからない。僕が未熟だからなの?」
雪の女王「ヘンゼル、感情的にならないでくれ。私はキミにそうなって欲しくないから言っているんだ…憤る前に【キジも鳴かずば】でのキミ自身の行動を振り返ってみろ」
ヘンゼル「それこそなんの問題もないでしょ、僕は大切な家族を幸せにするために行動したんだ!確かに盗みを働いた事は結果としてパパさんを人柱にしてしまう事になった、でも僕が地主や薄毛…村の奴等を殺したのは仕返しだ!」
ヘンゼル「無実のパパさんを人柱にする為に罪を着せて、パパさんを殺してお千代を悲しませたあいつ等に対する復讐だ!僕に非は無い!悪いのは村の連中だ!」
雪の女王「駄目なんだヘンゼル、それじゃあ…キミの心はいつまでも悲しみから解き放たれない」
雪の女王「キミは大好きなパパさんである弥平を、人柱が欲しいという村の連中の都合で殺されたと思っているようだが…」
ヘンゼル「だってそうじゃないか!パパさんはあいつ等の自分勝手な都合の為に犠牲になったんだ!」
雪の女王「それなら聞こう、キミが殺した村の連中にだって家族が居ただろう。もしかしたらお千代みたいな幼い子供が居たかもしれない。その子供にとって、キミはどういう存在に映る?」
ヘンゼル「でも、それは…っ!」
雪の女王「大好きな父親が逆恨みで殺された、犯人は罪人として人柱にされた弥平の息子ヘンゼルだ。その殺された男は何か悪さをしたわけじゃない、罪人の弥平を助けなかったという理由でキミに殺された」
雪の女王「その男の子供は納得がいくと思うか?何の罪もないのに殺されてしまった父親の事を…殺されても仕方が無いと諦められるか?」
ヘンゼル「それは違うじゃないか!パパさんは罪を犯していないのに罪人として殺された!村の連中はパパさんを見殺しにした悪人…パパさんを見捨てた罪人じゃないか!殺されて当然じゃないか!」
雪の女王「本当にそうか?弥平を見殺しにしたとは言うが、罪人として扱われている弥平を庇うという事が小さな村に住むただの村人にとってどれだけ大変な事かわかっているだろう?下手をすれば自分に罪が及ぶ」
ヘンゼル「それでも、誰かがパパさんを信じて無実を主張すれば人柱は中止になったかもしれないじゃないか!自分が罪をかぶるのが嫌だからパパさんの味方をしなかった、それは悪じゃないの!?」
雪の女王「誰かの味方を出来ない事は必ずしも悪ではないよ。自分や家族を護る為の行動を自分勝手というのなら、私もキミも相当に自分勝手な人間だ」
ヘンゼル「……」
雪の女王「確かに弥平が人柱にされた理由は理不尽なものだ、大好きな弥平を失ったキミやグレーテルが頭に血を登らせてしまうのも理解できる」
雪の女王「だがな、大好きな人を殺されたからなりふり構わず殺して村やおとぎ話を消滅するというのは…あまりにも身勝手だ」
ヘンゼル「じゃあどうすればよかったの!?僕達は理不尽な理由で家族を失ったんだ!僕がどう行動すればお千代とグレーテルを悲しみから守る事が出来たの?教えてよ女王!」
雪の女王「残念だが人の死には必ず悲しみが付きまとう、弥平の死は事実として受け入れるしかない。残されたものは愛する者の死を受け入れる責任がある。だがそこで復讐の為に他人を殺せば憎しみは連鎖する、それはやってはいけない事だ」
ヘンゼル「それじゃあお千代やグレーテルの悲しみはどうなるんだ!パパさんの無念は誰が晴らすの!?大好きな人が殺されてしまったならその原因になった奴らを殺すしかない!」
ヘンゼル「殺してしまえばそいつらが僕達を苦しめる事はもう無い!恨みの原因を潰すには殺すのが一番確実じゃないか、僕はそれしか復讐の方法を知らない!」
雪の女王「ヘンゼル…憎しみというのは伝染する、復讐では憎しみも悲しみも晴らせない…新たな憎悪を生みだすだけだ。だから殺すような復讐はしちゃいけない」
ヘンゼル「なんだよそれ…僕の家族は幸せになれないけど他人は殺すなって事?じゃあ結局貧しい人間や弱い奴等は無き寝入りしろって事じゃないか!」
雪の女王「泣き寝入りじゃない。復讐なんかしなくても殺された人間の無念を晴らす事は出来る、それに復讐なんかじゃ悲しみは癒せない」
ヘンゼル「理解出来ないよ…全然理解出来ない!大好きなパパさんを殺されても我慢しろって言うのが女王の考えなの!?結局、僕達はどこに逃げたって誰かに利用される運命だってことじゃないか!」
ヘンゼル「あぁ、そうか、前からそうだったね……僕はグレーテルや女王とカイ、パパさんやお千代との生活が楽しくて忘れかけてた。でも、思い出したよ」
ヘンゼル「なんだかんだ言っても僕達は現実世界の作者に作られた存在なんだ、あいつ等の良いように利用される為に作られた存在なんだ。だから不幸になる事を決められている以上、結局幸せになんかなれない…!」
雪の女王「ヘンゼル…それは違う、作者は私達を利用する為に生み出したりしていない」
ヘンゼル「何が違うっていうの!?作家っていうのは話を作って金を稼ぐ仕事でしょ?おとぎ話だってそいつらの金稼ぎの道具にすぎないじゃないか!結局はそれに利用されてるんだ、違う?」
雪の女王「断言する、それは絶対に違う。キミ達は作者に利用なんかされていない。キミ達の作者だってキミ達にハッピーエンドを用意していたじゃないか、忘れてしまったのか?」
ヘンゼル「ハッピーエンド!?【ヘンゼルとグレーテル】がハッピーエンドだって本気で言ってるの?」
ヘンゼル「僕達は貧しくひもじい生活の果てに親に捨てられた!二度もだよ!そのうえ魔女に利用されて僕は一カ月も監禁されて、グレーテルは奴隷扱いだ!」
ヘンゼル「その結末が魔女の宝石を奪ってあの父親ともう一度幸せに暮らしました。だよ?それのどこが幸せなんだ、僕やグレーテルが受けた悲しみや苦しみはそんな宝石なんかで埋められない」
ヘンゼル「しかも、あんな信用の出来ない男ともう一度暮らす事が僕達の幸せだと本当に思ってるの?例えお金があったとしても飢饉には違いないんだ、またすぐに食べ物は尽きて僕達は捨てられる」
雪の女王「家族と一緒に居られる事は幸せな事だ。しかし、大飢饉であるあの時代…キミの世界ではそれは当然なことではなかった」
雪の女王「口減らし、餓死、悪化していく治安の中で命を落としたり離れ離れになったり…家族が離散する事が珍しくない世界で、一緒に暮らせる事は幸せな事だ」
ヘンゼル「それがあんな父親でも?馬鹿げてるよ、だったら作者は僕達を捨てさせなければいい!飢饉なんていう設定にしなければ良かったんだ!作者になら出来たはずだ、それなのにしなかったのは僕達を利用する為じゃないか!」
ヘンゼル「悲惨な兄妹の物語の方が盛り上がるから、有名になれるから、本が売れるから、金儲けができるから…だから僕達を幸せにするつもりなんか無いんだよ、そりゃそうだよね作者に取ったら僕達の存在はただのフィクションだ、ただの創作なんだから!」
雪の女王「キミは作家を…作者を誤解している、富や名声の為だけに物語を綴った作者も確かに存在した。だが少なくともキミ達のおとぎ話の作者の一人、ヴィルヘルムはそんな男ではなかった」
ヘンゼル「ヴィルヘルム・グリムか。確か……僕達を不幸にした二人の作者、グリム兄弟の弟の方だったっけ?」
雪の女王「ああ、私はキミがこの世界に来た時【ヘンゼルとグレーテル】をキミが消滅させたと聞いてヴィルヘルムに申し訳なかった。おとぎ話に込められた人々の想いまで消えたからだ」
ヘンゼル「人々の想い…?」
雪の女王「民間伝承。という言葉を知っているか、ヘンゼル?」
ヘンゼル「民間伝承…って、村や町の人の間で語られてる、言い伝えとか昔話みたいな…そういうものの事でしょ?」
雪の女王「概ね正解だ。おとぎ話は無数に存在するがその成り立ちはいくつかの種類に分けられる、ひとつは作者が展開や設定や結末全てを自作した『創作童話』というおとぎ話」
雪の女王「この【雪の女王】や【マッチ売りの少女】がそれにあたる。別の作者の作品ならば【不思議の国のアリス】や【オズの魔法使い】もこの創作童話だ」
雪の女王「それとは別の形式が民間伝承のおとぎ話だ。これは民話や昔話に多い、『桃太郎』や『舌切り雀』がそうだ」
ヘンゼル「それがなんなの?創作童話だか民間伝承だか知らないけど、現実世界の人間が作った事には変わりないでしょ?」
雪の女王「【ヘンゼルとグレーテル】は創作童話と民間伝承の中間と言えばいいだろうか。キミ達のおとぎ話が収録されているグリム童話集は、ある国に民間伝承として伝えられていた物語をヤーコプとヴィルヘルムが手を加えて書籍にしたもの」
雪の女王「キミ達の作者はグリム兄弟だ、しかしその物語の大本は昔からその国の人々が口伝えで語り継いできたもの…なぁヘンゼル、何故語り継がれてきたかわかるかい?」
雪の女王「何故その国の人々はキミ達兄妹の話を何年も語り継いだと思う?ヤーコプとヴィルヘルムは何故、キミ達の物語をおとぎ話として残そうと考えたと思う?」
ヘンゼル「そんなの…知らないよ。現実世界の奴らの考えることなんかわからない」
雪の女王「忘れてはいけないからだ。自分達が経験した辛い出来事や悲惨な歴史の真実を…時の流れに埋もれさせない為に語り継ぐんだ」
ヘンゼル「悲惨な歴史を忘れない為…?なにそれ…それじゃあまるで、僕達のおとぎ話での出来事が現実世界で実際にあった出来事みたいじゃないか」
雪の女王「そうだ。キミ達の境遇は現実世界で起きた出来事が元にされている」
雪の女王「長く続く飢饉。不足していく食料、それによって強いられる口減らし。子捨て。それは何も【ヘンゼルとグレーテル】の世界だけの出来事じゃない」
雪の女王「遠い遠い昔、現実世界でも実際に起きた出来事だ」
雪の女王「現在の現実世界は当時と比べれば相当豊かになった。地域や国での格差はあるが、肩書も階級も持たない一般人でも食料に困らず生活できる国も多い」
雪の女王「しかし、グリム兄弟が生きていた当時よりずっと以前は…農耕技術も機械も発達していなかった。その上、その国は痩せた土地も多かったと聞く」
雪の女王「その国は長い間飢饉に悩まされていたんだ。当然食べ物は無い、子供に食べさせられず苦渋の選択として子捨てを選ぶ者もいただろう」
雪の女王「飢饉、食糧難、犯罪、口減らし、子捨て…そういう行為が横行した。現実世界でもキミ達の様に多くの子供が捨てられたり、餓死していったんだ。キミ達と同じ境遇の子供たちがたくさんいた」
ヘンゼル「……」
雪の女王「やがて農耕技術が進み、荒れた大地でも育つ芋や野菜が見つかり飢饉は解消されていった。口減らしも子捨ても行われる事は無くなった。だがその記憶を薄れさせてはいけないと人々は考えた」
雪の女王「時が経ち農耕技術や輸送技術が発達すればいずれ食糧難になる事もそうそうなくなるだろう、文明や経済の発達した未来では口減らしも子捨ても無くなるだろう」
雪の女王「いつかは飢饉や口減らしなんて事が現実的じゃない世の中が来る。飢饉で苦しんだ多くの人々や、捨てられたたくさんの子供の苦しみもいつかは忘れられる」
雪の女王「それではいけない、辛い歴史の記録として大飢饉の事実は後世に残さないといけないと人々は考えた。歴史の真実、辛い現実を糧として生きる為に」
ヘンゼル「…現実世界の人間は自分達を襲った大飢饉での悲惨な歴史を後世に伝える為に、僕達のおとぎ話を作ったの?」
雪の女王「私がかつて現実世界に赴いたときヴィルヘルムに聞いた事が真実ならば、そうなるな」
ヘンゼル「おとぎ話を盛り上げる為のただの設定じゃなかったんだね…僕は現実世界の人間が自分の私利私欲のために悲惨な境遇の僕達を作って利用したとばかり考えていたけど」
雪の女王「確かに童話集の作者としてグリム兄弟は富も名声も得ていたけど、それは私利私欲のためという訳ではなかったよ」
雪の女王「兄弟は少し変わり者だったが…特に弟のヴィルヘルムは私達からすれば少し信じられない事を口にしていた」
ヘンゼル「何を言っていたの?その、ヴィルヘルムは」
雪の女王「ある時、ヴィルヘルムはグリム童話の加筆修正作業を行っていた。そのおとぎ話は…大飢饉の末に両親に捨てられる兄と妹のおとぎ話だった」
ヘンゼル「それって…僕達の事だよね?」
雪の女王「ああ、ヘンゼルとグレーテル…キミ達の事だな。だがその兄と妹は実の父親と……実の母親に捨てられたんだ。キミ達の様な継母じゃなく、実の両親に捨てられた」
ヘンゼル「? …僕達とは、別のおとぎ話なの?僕とグレーテルを捨てたのは実の父親と継母だよ?」
雪の女王「いいや、キミ達のおとぎ話【ヘンゼルとグレーテル】だ。ヴィルヘルムが加筆修正する以前、元々のキミ達は父親と継母じゃなく実の両親に捨てられるという内容だった」
ヘンゼル「…なんでそこだけ変えたの?そんな細かい修正、必要なの?現実世界の奴らの考える事なんてやっぱり良くわからない」
雪の女王「私は気になってヴィルヘルムに聞いたよ、何故二人が捨てられるという運命は変わらないのにそんな細かい部分を変えるんだ?とね、すると彼はこう答えた」
ヴィルヘルム『飢饉が生んだ悲劇のせいでヘンゼルとグレーテルはこの後、捨てられて魔女に襲われてしまう。しかし、自分達を捨てたのが実の両親だというのはあまりに悲惨すぎる』
ヴィルヘルム『せめて…継母の口車に乗せられて捨てられたという内容の方が…少しでも、彼らの心の救いになるだろう』
ヘンゼル「……」
雪の女王「作者といえどもキミ達の境遇を変える事は出来ない。いや、作者だからこそ変えてはいけなかったんだ。キミ達の辛い境遇は、かつての現実世界の人々が経験した歴史の真実……それを捻じ曲げては意味が無い」
雪の女王「それでもヴィルヘルムはせめてキミ達の心の救いになればと思って、その部分を修正した」
雪の女王「彼は当然、おとぎ話の世界が存在する事なんか知らない。自分の書いたおとぎ話はあくまで作品の一つ、それなのに彼は主人公のキミ達の為に内容を変更したんだ」
ヘンゼル「…そんな些細な変更、何になるっていうんだ。実母だろうと継母だろうと僕達が捨てられたことに変わりないんだ」
雪の女王「確かに些細な変更だ、キミ達が実の母親に捨てられようと継母に捨てられようとおとぎ話の内容や現実世界の人間にたいした影響は無い」
雪の女王「だがキミ達にとっては大きな違いじゃないか?優しい母親に捨てられるのと意地悪な継母に父親をそそのかされて捨てられるのとでは随分と意味が違うと思うが」
ヘンゼル「…まぁ、そうかもしれないけど」
雪の女王「キミは書庫にあるグリム童話をいくつも読んだだろう?ならばわかるはずだ、ヤーコプとヴィルヘルムはキミ達の様な罪のない子供が悲しい経験や辛い結末を与えるおとぎ話ばかり書いていたか?」
ヘンゼル「…いいや、そんな事は無かったよ。【星の銀貨】みたいに優しい女の子が幸せになるおとぎ話もあったよ」
雪の女王「そうだろうな、グリム童話集には百以上もおとぎ話がある。【星の銀貨】の様な救いのあるおとぎ話もあれば【トゥルーデおばさん】のような悲惨なおとぎ話もある」
雪の女王「ヘンゼル、グリム童話に限らずおとぎ話には存在する意味がある。作者がおとぎ話を生み出すのは私達を不幸にする為でも幸せにする為でもない」
雪の女王「誰かに何かを伝える為。その為に作者はペンを取り、私達はその為に生み出された」
ヘンゼル「何かを伝える為に、僕達おとぎ話の主人公は生み出された…パパさんやお千代も、そうなの…?」
雪の女王「ああ、そうだ。そして私達に込められた作者の想いは何十年何百年も先の未来であろうと何千何万キロ離れた別の国だろうと届けられる、言葉や人種の壁など容易く乗り越えてな」
雪の女王「だから辛い境遇を我慢しろ、なんて言わない。だがなヘンゼル、少しは世界の見え方が代わってくるんじゃないか?」
ヘンゼル「……」
雪の女王「キミ達は必要とされて生まれてきた。確かに辛い運命を強いられていると感じるかもしれない、しかしそれは作者が誰かに伝えたい大切な事だ」
雪の女王「今のキミにそれを理解して受け入れろと言うのは少々酷かもしれない。だから、焦る必要は無い私の元のゆっくりと成長していけばいい、キミが慕う弥平の様な心優しい人間に」
ヘンゼル「…わかった。しばらくはお千代の所にはいかない。グレーテルの側に居るよ」
雪の女王「そうか、ならば足元の氷は溶かしておこう。ヘンゼル、キミには時間がたくさんある、悩んで悩んでキミが鳴りたいと思う人間になると良い。それじゃあ、おやすみ」パタンッ
雪の女王の宮殿 廊下
カイ「珍しいな、あんたがあんな事まで喋るなんて」
雪の女王「…なんだカイ、盗み聞きなんて趣味を始めたのか?それじゃあグレーテルやお千代に近づけさせられないな」フフッ
カイ「人を変態のように言うな。お千代に着替えを渡して、あんたに言われた事は住ませたから報告に来たんだ。まぁ確かにお前達の話は聞こえちまったけどな。ヴィルヘルムの事、初耳だぜ」
雪の女王「誰にも言うつもり無かったからな。本当はヴィルヘルムが加筆修正をしたことも、【ヘンゼルとグレーテル】の成り立ちも…言わないつもりだったんだが、話す事になってしまった」
雪の女王「下手におとぎ話の成り立ちや作者が込めた気持ちに関して詳しく話してしまうと、ヘンゼルとグレーテルがいつかおとぎ話を大切に思えるようになった時、自分達のおとぎ話を消してしまった事に責任を感じるかもしれないからな」
カイ「まぁ、確かにそういう事もあるかもしれねぇけどな。で、それじゃあなんで言ったんだ?」
雪の女王「このままだとヘンゼルは憎悪を手放せなくなると思ったからな」
雪の女王「彼にとって作者は自分やお千代を悲惨な運命に縛り付ける輩だった。弥平にお千代、そして多くのおとぎ話で辛い思いをする登場人物のためにヘンゼルは悲しみ、そして憤るだろう」
雪の女王「ヘンゼルはまだ悲しみを正しく受け止める事も憎悪を飼いならす事も出来ない。他人の為に悲しんだり怒れる事は良い事だ、しかしその感情を制御しきれないとなるとそれはとても恐ろしい」
カイ「まぁ、実際問題…ヘンゼルが暴れたのは弥平やお千代の為だもんな。つっても、それで村を焼き払うってのは過激すぎる。確かに何度もこんな事してたら洒落にならねぇな」
雪の女王「方法を知らないんだ、彼は。正しい怒り方を知らない、正しい悲しみ方を知らない、そして正しく他人を信用する方法を知らない」
カイ「だから作者が悪い奴じゃないぞって事、とりあえず教えてやったのか。少しでもあいつの憎悪を和らげるために」
雪の女王「ああ言えば彼も少しは作者の事を見直すだろう。本当は彼自身が気づく方が良い、しかし期を逃せばヘンゼルは戻れないところまで行ってしまうと思ったんだ」
カイ「まぁこう言うのもなんだが……このままだとあいつは大人や現実世界の奴を憎しみ過ぎてとんでもない事しでかすような気はするけどな」
雪の女王「それは防ぎたい、彼の為にもな。だが私に出来るのはこのくらい、あまり私の考えを押し付けすぎるのは間違っていると思うんだ。だからあとはヘンゼルが成長するのを見守るだけ……」
雪の女王(どれだけ時間がかかっても良い、私に手伝える事ならば手助けする。だからキミが望む正しい大人に成長してくれ、ヘンゼル)
雪の女王の宮殿 ヘンゼルとグレーテルの部屋
グレーテル「……スゥスゥ」スヤスヤ
ヘンゼル「……僕は、どうすればいいんだろうね。グレーテル」ナデナデ
ヘンゼル「女王は心配を掛けた上に無茶苦茶した僕をまだ家族だと言ってくれた。そんな女性が言うんだ、作者にだって良い大人はいるんだと思う」
ヘンゼル「でも、たとえそうだとしても…ヴィルヘルムが僕達の為に救いを与えてくれたのだとしても……やっぱり、僕は……」
――グレーテル「ねぇ、お兄ちゃん…私達、本当に捨てられちゃうの…?」ポロポロ
――グレーテル「……お兄ちゃん、私……頑張ったよ……頑張って……あの魔女、殺したの……」
――弥平「いいか、お前等と父ちゃんはここでお別れだ!オラはちょっくら犀川の神様のご機嫌取りに行ってくるからよぉ…しっかり協力して立派な大人になれ、いいな?」
――お千代「……っ!そんなことされたら父ちゃん死んじゃうんよ……!ばあちゃん、離して欲しいんよ!父ちゃんを助けるんよ!」ジタバタ
――お千代「だからうちはもう…何も喋らない方がいいんよ…」ポロポロ
ヘンゼル「許せない……例え善人だとしてもグレーテルやお千代に辛い運命を押し付けた作者を……僕は許す事は出来ない」
ヘンゼル「今回は僕が未熟なせいでグレーテルにも辛い思いをさせて女王やカイにも心配を掛けた。だから、もっと強くなろう……強くなって何もかも守れるようになるんだ」
ヘンゼル「そしていつか僕の家族を脅かす大きな悪が現れたら、今度こそ僕はこの身体を犠牲にしても感情を代償にしてでも…絶対に護り抜く、絶対に……!」
・・・
今日はここまでです
女王の言葉を理解できても目の当たりにした惨状を振り払えないヘンゼル
ヘンゼルとグレーテル。キジも泣かずば編 次回に続きます
乙です!
うぅ…。ヘンゼルの気持ちもわかるけど………。
続き待ってます!!
>>1さん乙です!
女王の言葉が胸に染みました…
こんな時に青い鳥だとかが現れたらと思うと怖ろしい…
ヘンゼル達に幸あれ
とにかく報われて欲しいです
次回も楽しみにしています!!
乙です
何だかキモオタが恋しいw
それから月日は流れ……
雪の女王の世界 雪の女王の宮殿 キッチン
・・・
カイ「お前が書庫に居ないなんて珍しいと思えばこんなところに居たのかグレーテル」ガチャッ
グレーテル「あっ……カイお兄ちゃん……どうしたの……?」カチャカチャ
カイ「お前、治癒系の魔法について調べたいって言ってただろ?いくつか参考になりそうな魔法書が見つかったから渡してやろうと思ってな」
グレーテル「ありがとう……お千代ちゃんや女王さまには内緒で調べたかったから……持ってきてくれて嬉しいの……」
カイ「内緒だって言ってもよ、あの二人お前が魔法の勉強してる事知ってると思うぜ?何も言わねぇだけで」
グレーテル「そうかな……?でもお千代ちゃんも女王さまも私が魔法の勉強してるって知ったら、心配して止めるんじゃないかな……?」
カイ「お前が夢中になって勉強してるの知ってるから止められねぇんだろ。それにお前はもうあんな無茶しないって信じてるんだろうぜ」
グレーテル「うん、もう無茶な魔法の使い方はしないよ……でも少ない魔力で傷を治す魔法が使えたら……みんなが怪我しても私が治してあげられるでしょ……もしそんなふうにできたらすごく嬉しい……私もみんなの役に立ちたいもん……」
カイ「それで治癒魔法か…まぁ周りに迷惑かけない程度に頼むぜ。それよりもお前は今日のメシ当番じゃないだろ?何を作ってるんだ?」
グレーテル「卵料理作ってるの……これは、えっと……潰したゆで卵……?」
カイ「潰したゆで卵は料理じゃねぇ。しかしなんだこれ……なんでこんな大量のゆで卵潰してんだお前。何の儀式かと思ったぞ……」
グレーテル「儀式じゃないよ……お料理だよ……カイお兄ちゃん……あれ、見て……」スッ
ヘンゼル「…殻だけ割るイメージ…ゆで卵の殻だけ割るイメージ。殻だけ…中身は傷付けない、エッグスタンドも壊さないように……」ブツブツ
カイ「……なんでゆで卵とにらめっこしてんだあいつ」
ヘンゼル「……っ」スッ
パキッパキパキッ
ヘンゼル「よし…!綺麗に割れたっ、少しずつコントロールできるようになってきたぞ。あっ、グレーテル!このゆで卵も潰してくれるかな?」スッ
グレーテル「わかった……今日はたまごサラダたくさん食べられるね……」カチャカチャ
ヘンゼル「十分すぎるくらいにね。さて、今日は女王が居ないから直接教えて貰えない分キチンと練習しないと。えっと、次の卵は…」スッ
カイ「おい待て、宮殿の卵使い果たすつもりか。何してるんだお前」
ヘンゼル「あれ、カイ来ていたの?なにって、魔力コントロールの練習だよ。卵使うのも魔力使うのも女王には許可貰ってる」
グレーテル「女王さまからの宿題……中身のゆで卵やエッグスタンドを傷付けずにゆで卵の殻だけ魔力で割るんだって……」
ヘンゼル「最初はちょっと苦戦したけどもう慣れてきたよ。食べ物で特訓するなんて嫌だったけど…でも魔力のコントロールにはこの方法が一番らしいから仕方ないよ」
カイ「どうでもいいけどなぁ…お前この間制御しくじって書庫の壁壊しただろ?あんなのはもう勘弁しろよ、広いところでやれ広いところで」
ヘンゼル「平気だよ、魔力のコントロールには慣れてきてる。例え一日中グレーテルと手をつないでいても魔力を流し込むかどうかは僕自身で調整ができる、もうあの日のような失敗はしないよ」
カイ「そうかよ、まぁ俺の読書の邪魔しねぇならいいさ。どうでもいいけどよ、このゆで卵五人で食いきれるのか?俺はあんまりゆで卵って好きじゃねぇんだ」
ヘンゼル「そんな事言わないでさ、悪いけど付き合って貰うよ?頼むよカイお兄ちゃん」フフッ
カイ「テメェはまた都合のいい時ばっかりそんな呼び方しやがって……まぁいい、その程度の協力ならしてやるか」
・・・
ヘンゼル(パパさんが人柱にされたあの日からどれくらいの月日が流れただろうか)
ヘンゼル(安静にしていたおかげでグレーテルは何日か後にはもう普段通りの生活ができるまで回復していた、後遺症も特に残らなかったのは女王の処置が適切だったからだと思う)
ヘンゼル(グレーテルが元気になってから僕達二人は改めて女王の部屋を訪れた。心配を掛けた事と勝手に宮殿を出ていった事、そして言いつけを破った事を謝った。そしてこれからも一緒に居たいことも伝えた)
ヘンゼル(勝手な事をして迷惑を掛けた事は叱られたけれど、女王は優しく微笑んで僕達を抱きしめてくれた)
ヘンゼル(宮殿には新たな家族としてお千代を迎え、五人になった家族は幸せに暮らしていた。宮殿は極寒の大地にそびえていたけれど、僕は寂しさや辛さを感じた事は無かった)
ヘンゼル(助けあったり、ふざけ合ったり、笑いあったりして…僕達は長い長い時間を共に過ごしていた。平和で、すごく幸せな毎日だ)
グレーテル「……私にもっとすごい魔法が使えたら……卵元通りに出来たりするのかな……?」
ヘンゼル「駄目だよ、例え出来ても僕は魔力を貸さないからね?」
グレーテル「わかってる……でもちょっぴりの魔力なら平気なのに……お兄ちゃん心配性なの……」
ヘンゼル(グレーテルはあの日から少しずつ魔法について勉強している。正直、僕は今すぐに辞めさせたいけど…)
ヘンゼル(確かに少しの魔力で使える魔法なら身体への負担も少ないようだし、魔法の素質があるグレーテルなら一般的には弱い魔法でも強力な効果を得られるらしい)
ヘンゼル(とはいえ僕はグレーテルには魔法を使うのはやっぱり控えて欲しい、なにせそのせいで死に掛けたんだから。だけど頑張って魔法の勉強をしているグレーテルの姿をみると、どうにも強く言いだせない)
ヘンゼル(本人は家族の役に立ちたいという一心で勉強をしているから頭ごなしに止めるのも気が引ける。どっちにしろ僕が魔力を貸さなければ滅多な事は出来ないから、僕はもうなにも言わないようにしている)
ヘンゼル(きっと、魔法を使う事が危険だと言う事はグレーテルも理解してるんだと思うし…そのうえで家族の為に勉強しているというのはきっとそれほど僕達の事を大切にしてくれてるからだ)
ヘンゼル(だから、僕も同じ時期から魔力のコントロールの訓練を始めた。もうグレーテルを傷付けない為に)
ヘンゼル(僕には魔力を扱うセンスも魔法を行使する素質もまるでない。でも鍛錬を続けていれば魔力を打ち出す度に腕を潰さなくても済むくらいにはコントロールできると女王に聞いた)
ヘンゼル(何度も言うようだけど僕にはセンスも素質もない。それでも努力は無駄じゃなかったようで女王の厳しい特訓は魔力のコントロールを可能にした、まだ全然完全ではないけれど)
ヘンゼル(特訓は容易いものじゃなかったけどグレーテルが努力してるんだ、僕だけ何もしないわけにはいかない。それに僕だって全て守れるくらい強くなりたいって気持ちはあるんだ)
カイ「しかし、女王とお千代は今日も二人で外出か。最近多いと思わないか?どこで何してるんだかしらねぇけど、外出が多いのは気になるよな」
グレーテル「カイお兄ちゃん……やきもち、良くないよ……?」
カイ「違ぇよ。俺は心配してるんだ、どっかの兄妹みてぇに急に居なくなって迷惑かける奴もいるからな。なぁ?ヘンゼル、グレーテル」
グレーテル「カイお兄ちゃんイジワルなの……その話出すの……ズルイ……」プクーッ
ヘンゼル「随分経つのにいつまでたっても言われてるよね……もうずっと言われるパターンだよ、これ」
ガチャ
遠くに聞こえるお千代の声「ただいま戻ったんよー、みんなどこにおるんー?」スタスタ
ヘンゼル「噂をすればだね。帰ってきたみたいだ。お千代ー!僕達はキッチンに居るんだ。キミもおいでよ!」
ヘンゼル(魔法の勉強をしたり、魔力のコントロールを学んだり…僕とグレーテルはあの日を境に以前とは大きく生活が変わった。だけど、年齢も外見も変わっていない)
ヘンゼル(女王が言っていたように【ヘンゼルとグレーテル】で年齢の変化が無い僕達はこれ以上年齢を重ねる事は無い、それはカイも同じで年月は経っても三人とも子供のままだ。だけどお千代だけは違った)
成長したお千代「ヘンゼル、グレーテル!それにカイ、ただいま!お土産買って来たから、みんなで一緒に食べるんよ」ニコニコ
ヘンゼル(前は僕達と変わらないくらいの年齢だったのに、お千代はすくすく成長して今ではすっかりお姉さんだ)
成長したお千代(以下、お千代)「それにしてもヘンゼルは一人でも魔力のコントロールの訓練頑張ってて偉いね、ご褒美にナデナデしてあげるんよ」ウフフ
ヘンゼル「遠慮しとくよ。それよりお千代って最近女王様に似てきたよね。唐突に撫でようとするところとか」
お千代「そうなんかな?もしかしてヘンゼルはうちに撫でられるんいやなん?」
ヘンゼル「嫌じゃないけど、なんだか変な感じなんだよ。なんというかこう、もやっ…とするんだ」
ヘンゼル(慣れはしたけど僕にとってお千代は妹のような存在だ。だから目の前にいる綺麗な黒髪のお姉さんがお千代だというのはいつまでたっても少し不思議な感じがする)
グレーテル「お姉ちゃんになったお千代ちゃん……私はもう慣れちゃった……それに私、どんな姿になってもお千代ちゃんの事大好き……だからナデナデしていいよ……?」
お千代「うふふ、うちもグレーテル大好きなんよ。もちろんヘンゼルの事もカイの事も好きなんよ、だからカイもナデナデしてあげるんよ」ウフフ
カイ「おいやめろ。外見はお前の方が年上に見えるとしても本当は俺の方が年上なんだ、妹分が兄貴の頭撫でるとかありえねぇだろ」
お千代「うふふ、カイは相変わらず厳しいんよ。それじゃあ妹らしくお兄ちゃんの為にお茶を入れてあげるんよ。グレーテル、手伝ってほしいんよ」スッ
グレーテル「うん……わかった……」スッ
ヘンゼル(女王が言うには……)
雪の女王『お千代は【キジも鳴かずば】のおとぎ話の中では幼い子供だ。しかし、そのおとぎ話の結末でお千代は大人へと成長した姿でキジを撃ち落とした猟師の目の前に現れる』
雪の女王『おとぎ話の住人は基本的に歳を取らない。けれどお千代のように物語の結末までに年齢を重ねる人物の場合は別の世界に居ても一定の年齢までは成長する』
ヘンゼル(ということだった。とはいっても、年齢が変わったから姿が変わったからといっても特に僕達の関係に変化があるわけでもなかった)
ヘンゼル(子供だろうが大人だろうがお千代はお千代。僕の大切な家族の一人、その事には変わりが無いんだ)
雪の女王「お千代は本当に働き者だな、今日は疲れただろうに」フフッ
ヘンゼル「おかえり。お千代がお茶入れてくれてるから女王も入ってきたら?」
雪の女王「フフッ、キミ達はあれか?もしかして私を避ける為にわざわざキッチンに集まっているのか?隣の部屋に立派な食卓があるだろうに」フフッ
カイ「パーティや茶会ならまだしもちょっと茶を飲むくらいならキッチンで済ませるだろ。冬を司る魔女が湯を沸かす程度の火にビビるなよ」
雪の女王「フフッ、キミは相変わらず失礼だな、私はただ熱が籠り易い場所にはあまり居たくないだけだよ。お千代、すまないが私にはアイスコーヒーを頼む」スッ
お千代「はーい、女王は本当に冷たい飲み物好きなんね。宮殿は寒いから身体を冷やさないようにしないといけないんよ?」カチャカチャ
雪の女王「気づかいはありがたいが私は雪の女王だ。身体が冷えていれば冷えているほど…大気が冷たければ冷たいほど力が増すんだ。だから身体が冷えるのは好都合だ」
お千代「そう言われればそうかも知れんね、じゃあ女王様には冷たいコーヒーと…ヘンゼルとカイには温かい紅茶なんよ」スッ
カイ「おう、悪いな。俺はこいつと違ってこんな場所で冷たいもんなんか馬鹿馬鹿しくて飲む気しねぇからな、こっちの方がありがたいぜ」ズズー
ヘンゼル「またカイはそんな憎まれ口を叩いて…素直に美味しいって事だけ言えば良いのに」
雪の女王「フフッ…この方がカイらしいじゃないか、私は嫌いじゃないぞ?ただあまり口が過ぎるのは感心しないな、愛しい家族が一人氷漬けになるのは私も辛い」フフッ
グレーテル「ねぇ女王さま……私ね……宮殿のエントランスががらんとしててなんだか寂しいと思う……氷像つくるなら……そこに飾ったらいいと思うの……」チラッ
雪の女王「そうだな、私も同じ考えだ。口の悪い少年の氷像なんてどうだろう、寂しいエントランスがグッと賑やかになる」クスクス
カイ「グレーテルお前…さっきの仕返しかそれは、女王に余計な事吹き込むんじゃねぇよ」
グレーテル「気のせい……何度もあの日の事言われるの嫌だからカイお兄ちゃんにシカエシしたとか……そういうんじゃないよ……全然違うよ……」
お千代「うふふ、みんな仲良くしなきゃいけないんよ?ほらほら、みんなでおみやげのお菓子食べるんよ、今日のおみやげは街で噂のチョコレートなんよ」ガサガサ
グレーテル「チョコレートおいしい……チョコレートは甘いから大好き……ビスケットの次に好き……」モグモグ
お千代「グレーテルは美味しそうに食べてくれるからうちも嬉しいんよ。カイはビターチョコレートが好きだったと思うんよ、はい」スッ
カイ「おっ、悪ぃな」パクッ
雪の女王「家族相手でも気づかいを忘れない精神、立派だな。これも私の教育の賜物というわけだ」フフッ
お千代「うふふ、それならうちは女王様にもっと感謝しないといけないんよ」ウフフ
ヘンゼル「…ねぇ、女王にお千代。さっきカイも気にしてたんだけどさ…近頃よく女王と二人で出掛けるけど、どこに行ってるの?」
雪の女王「どうしたヘンゼル、藪から棒に」
ヘンゼル「いや、本当は前から気になってはいたんだよ。最近は結構頻繁に二人で出掛けるし、何かあるのかなって思ってね」
グレーテル「私も……気になってた……おみやげのお菓子も楽しみだけど……どこに出かけてるのかも気になってたの……」モグモグ
お千代「うーん…えーっと、えっとね……」
カイ「なんだ?俺達には言えないような場所なのかよ?」
お千代「そういうわけじゃないんよ?でも……女王様……うち、どうしたらいいかわからないんよ……言っていいのかな?」チラッ
雪の女王「隠すような事じゃないだろう。それにいずれは話さないといけない事だ、キミが良いのならこの場で全て話せばいいさ。むしろ良い機会だ」
お千代「うん、えっとね……三人には言ってなかったんけど……うち、どうしてもやりたいことがあってね。近頃よく出掛けてたのはその為の準備を女王様に協力してもらってたからなんよ」
お千代「それでね、うちがやりたい事はここにいたら出来ない事なんよ。だから…うちはこの宮殿を出ていく事に決めたんよ」
ヘンゼル「ちょっと待ってよ、お千代が宮殿を出ていく?そんなの聞いてない。僕は嫌だよ、お千代が居なくなるなんて」ガタッ
グレーテル「そうだよ……私、お千代ちゃんと一緒に住めないの……寂しい……だから出て行っちゃうなんて言わないで……」
お千代「うちだってみんなと離れ離れは寂しいんよ。だから二人とも寂しそうにしないでほしいんよ…」
雪の女王「ほらヘンゼルにグレーテル、お千代が困っているだろう?お千代は自分の夢をかなえる為に宮殿を出て行く、家族なら引きとめたりせず応援してあげるべきだろう?」
ヘンゼル「そうかもしれないけどでもこんな急に…今日だって僕が聞かなかったら言わずにいたつもりなんでしょ?お千代も女王もなんでそんな大切な事教えてくれないんだ…!」
カイ「落ち着けよヘンゼル。俺達に言えば心配かけちまうから黙ってたんだろ、察してやれ」
ヘンゼル「察しろって……僕達は家族なんだぞ、心配するのはあたりまえじゃないか」
カイ「心配だからどこにも行くなって言うのが家族か?こいつになにかやりたい事があってそれを叶えるために出て行くってなら別にいいじゃねぇか」
お千代「黙っててごめんねヘンゼル、時期を見てみんなにはちゃんと報告するつもりだったんよ」
ヘンゼル「…いや、僕こそごめん。突然の事過ぎて取り乱してしまった。お千代が良く考えて決めた事だろうし、僕が反対する事じゃないよね」
グレーテル「夢をかなえる為って言ってたよね……お千代ちゃんが夢をかなえられるなら……私も嬉しい。でも、寂しいのは……やっぱり寂しい……また、すぐに会えるよね……?」
お千代「もちろんなんよっ。うちは別の世界でお仕事をする事になってるんだけど、お休みの日なら会えるんよ!だからその時はいっぱい遊ぶんよ、たまには帰ってくるんよ」ニコニコ
グレーテル「うん……約束……」
カイ「それにしても…夢、ねぇ…俺お前からそういう話聞いた事ねぇけど…お前の夢ってのはなんなんだ?」
お千代「うん、うちの夢はね……」
お千代「大勢の子供達を幸せに出来るような、優しい大人になる事。なんよ」
ヘンゼル「それがお千代の夢なの?」
お千代「そうなんよヘンゼル。うちは優しい大人になって…たくさんの子供達を笑顔にしたいんよ」ニコニコ
カイ「なんて言うか、もう少し具体的なもんを想像してたんだがな。そもそもお前はもう優しいじゃねぇか、年齢的にも大人だろ」
グレーテル「うん……お千代ちゃん……もう優しいと思うよ……?十分、優しい大人だよ……?」
雪の女王「キミ達の気持ちはわかるがここはお千代の話を聞こう。お千代、続けて。子供たちの笑顔を望むキミは何を決意したのか…三人に聞かせてやるといい」
お千代「そうやね、どこから話したらいいんかな……」
お千代「実はね、うちが優しい大人になりたいと思ったのはヘンゼルが聞かせてくれたおとぎ話がきっかけなんよ」
ヘンゼル「あぁ、そう言えばお千代が病で寝込んでいる時に僕がおとぎ話を聞かせた事があったね、でもきっかけになるようなおとぎ話…聞かせたかな?」
お千代「あの時ヘンゼルと一緒に読んだ【マッチ売りの少女】の絵本…あのおとぎ話を初めて聞いたとき泣いて泣いて、二人に心配かけちゃったの今でも覚えてるんよ」ウフフ
グレーテル「私も覚えてる……お千代ちゃん、マッチ売りちゃんが可哀そう可哀そうって何度も言ってわんわん泣いてた……どうしていいかわかんなかった……」
ヘンゼル「そう言えばそんなこともあったね」
お千代「その時思ったんよ…うちは優しい大人になろうって」
お千代「辛い思いをしてるマッチ売りちゃんに手を差し伸べられるような素敵な大人になりたいって…うちは【マッチ売りの少女】のおとぎ話を聞いてそう思ったんよ」
カイ「その気持ちは立派だと思うが具体的にはどうするつもりなんだ?」
グレーテル「具体的……?カイお兄ちゃん……それどういう事……?」
カイ「助けを求めてる子供たちにどんなふうに手を差し伸べてやるかって聞いてるんだ。マッチ売りはその最たる例なだけで、助けを必要としてる子供なんてのはどんな世界にも山ほどいるぜ?」
カイ「一つ一つの世界へ渡って腹を空かせてる子供に飯を与えてやるのか?貧しい子供に金を恵んでやるのか?言っちゃ悪いがそんなことチマチマしたところで根本的な解決にはならねぇぜ」
お千代「そうやね、うちも出来る事ならしてあげたいけど…とてもじゃないけど、実際には難しいんよ。でも考えはあるんよ?」
カイ「言ってみろ、お前はどんな方法で子供達を救うつもりなんだ?」
お千代「あくまでうちの考えなんやけどね、大勢の子供たちが幸せになる為の一番の方法って…子供たち一人一人が優しい心を持つ事だと思うんよ」
お千代「子供たちが優しい心を持てば、いつかその子供たちが大人になった時…世界には優しい心の大人たちであふれているんよ、そうすれば辛い思いをする子供は居なくなるんよ」
グレーテル「本当だ……お千代ちゃんのアイディア凄い……」
カイ「そうか?そりゃあ理屈ではそうかもしれねぇけど、俺には夢物語に思えるぜ?第一、どうやって子供たちに優しい心を持たせるんだ?難しいと思うぜ」
ヘンゼル「もしかして、お千代。キミが考えている事って……」ガタッ
お千代「ヘンゼルは察しがついた見たいやね」ウフフ
お千代「カイは難しいっていうけど…うちは子供が『優しい大人になりたい』って思う時がどんな時か知ってるんよ」
お千代「子供達は辛い境遇の子供が主人公のおとぎ話を聞いたとき、きっと優しい大人になりたいと思ってくれるんよ。かつてのうちがそうだったように」
お千代「だから、大勢の子供たちにうちがしてあげられる事は……おとぎ話を読み聞かせしてあげる事なんよ」
お千代「【キジも鳴かずば】の主人公のうちが言うのもおかしい話やけど、おとぎ話って凄い力があると思うんよ」
お千代「ヘンゼルがうちに話してくれたおとぎ話、書庫で読んだ絵本や女王様が聞かせてくれたたくさんのおとぎ話…本当にいろんなおとぎ話を読んだんよ」
お千代「楽しいおとぎ話、悲しいおとぎ話、恐いおとぎ話、いろんなおとぎ話に出会ったけど……その度にうちはワクワクしたり涙を流したりドキドキしたり……いろんな感情を持てたんよ」
お千代「実はうちな…あの日、父ちゃんがうちの手毬唄のせいで人柱にされた時…もう二度と喋らない方がいいんじゃないかって思ったんよ」
お千代「でも、しばらく考えて…それは違うって思ったんよ。父ちゃんを亡くしたから喋る事を封じるなんて間違ってる。だって、うちは知っていたんよ」
お千代「言葉は口にすることで誰かを不幸にする可能性だってあるけど、誰かを幸せにすることだってできるんよ」
お千代「だってヘンゼルがうちにそうしてくれたんやから。ヘンゼルが聞かせてくれたおとぎ話はうちを楽しい気持ちにさせてくれたんよ」
ヘンゼル「お千代……」
お千代「だから今度はうちが子供たちにおとぎ話を聞かせてあげる番なんよ」ニコッ
カイ「お前はさっき言ってたな、別の世界で仕事をするって。そこで子供たちにおとぎ話を聞かせてやるつもりなのか?」
お千代「うん。うちがお仕事する場所、図書館なんよ」
お千代「図書館の司書さん…書物を管理するお姉さんになって、図書館に来た子供たちにおとぎ話を聞かせたあげるんよ」
お千代「いろんなおとぎ話を知っているうちが現実世界の司書さんになって子供たちが優しい心を持てるようにおとぎ話を読み聞かせする」
お千代「それが…うちのやりたい事なんよ」
カイ「なるほどな、難しい事に変わりは無いと思うがやってみりゃいい。面倒じゃない程度の協力はしてやるぜ」
グレーテル「なんだか……お千代ちゃんのやりたい事……壮大なの……私じゃ思いつかないの……現実世界に行っちゃうとか……考えつかないの……」
ヘンゼル「……よりによって現実世界なんだね」ギリッ
雪の女王「……ヘンゼル」
ヘンゼル「……」ギュッ
お千代「ヘンゼルは現実世界の人の事、あんまり良く思ってないから心配してくれると思うけど……うちは大丈夫なんよ?」
お千代「現実世界ではどんどんおとぎ話が忘れられていってるようなんよ。折角素敵なおとぎ話はたくさんあるのに…そんなの寂しいんよ」
お千代「だから現実世界に決めたんよ。でも心配することないんよ、うちが現実世界に行っても大丈夫なように女王様に頼んで色々として貰ってるんよ」ニコッ
雪の女王「お千代が司書として働くのは日本という国だ。お千代の故郷の遠い未来だ。トラブルが起こらないように根回しはキチンとしてある」
雪の女王「滞りなく生活ができるように陰でお千代も色々と勉強をしていたんだ、何も心配する事は無い」
ヘンゼル「……お千代が決めた事だ、僕だって応援する。でも……僕に現実世界の奴等を信用しろって言うのは……やめてほしい。どうしても、出来ないよ」
お千代「ヘンゼル…」
雪の女王「ひとつ、話しておこうか。ヘンゼル」
雪の女王「…お千代のおとぎ話【キジも鳴かずば】は消滅してしまったが……あの後、弥平が人柱にされた後本当はどういう結末を迎えるか、詳しくは教えていなかったな?」
雪の女王「いいかいヘンゼル、これが本来お千代が歩むはずだった人生だ」
・・・
キジも鳴かずば(結末部分)
弥平は僅かな米と小豆を盗んだ罪で人柱にされてしまいました
お千代は自分が歌った手毬唄が原因で父親が人柱にされてしまった事を村人から聞き、犀川の土手で泣き続けました
何日も何日も泣き続けましたが、やがてその泣き声も聞こえなくなりました
それからというものお千代は一言も口を利かなくなってしまったのです
それから何年も何年もの月日が流れ、お千代も美しい娘へと成長していきました。しかし、お千代はやはり一言も口を聞きませんでした
やがてお千代は村から姿を消し、その村に弥平とお千代という親子が居た事もしだいに忘れられていきました
そんなある年の事、とある猟師がキジを撃つ為に山に入りました
ケーンと大きな鳴き声を上げて飛び立つキジを猟銃ですかさず撃ち、猟師はキジを撃ち落とした場所へと向かいました
するとそこには死んでしまったキジを抱きかかえる一人の女性が居たのです、その女性はあの日父親を人柱にされてしまったお千代でした
猟師が唖然としているとお千代はゆっくりと口を開きました
「キジよ。お前も鳴かなければ撃たれなかったのにね」
お千代は自分が手毬唄を歌ってしまったばかりに弥平を失ってしまった事を
鳴き声を上げたがために殺されてしまったキジに重ねて、そう一言つぶやきました
お千代は再び口をつぐみ、キジを抱きかかえたままどこかへ姿を消しました
それからというものお千代の姿を見たものは、もう誰もいませんでした
おしまい
・・・
ヘンゼル「……」
雪の女王「わかるかヘンゼル」
ヘンゼル「……女王が言いたい事はね」
雪の女王「…キミは【キジも鳴かずば】で自分の行動を悔いていたな。自分がいなければ弥平やお千代が幸せになったのではないかと悩んでいた」
雪の女王「だが、お千代が言葉を封じ込めて辛い人生を歩まず……自分の言葉で子供達を幸せにしようと考える事が出来たのは」
雪の女王「まちがいなく、キミやグレーテルが側に居たからだ。兄妹が側に居たからその考えにたどり着けた」
お千代「そうなんよ、うちが今幸せでいられるのは…ヘンゼルのおかげでもあるんよ?」
ヘンゼル「……僕は、何も出来てないよ。ただ、側にいることしかできてない」
雪の女王「キミが思っている以上にそれは重要な事だ、ヘンゼル」
グレーテル「……」コクコク
ヘンゼル「……お千代が現実世界へ行くのは、今でも僕は賛成できない。でも、反対もしない」
ヘンゼル「お千代が決めた事だから僕はもう引きとめたりしない。ただ、その代わり…僕も現実世界へ行く。だから……」
ヘンゼル「雪の女王。僕にも現実世界に行く為に必要な事、教えてほしい」
現在
現実世界 廃墟
ヘンゼル「それからしばらくしてお千代は現実世界へと旅立った、図書館の司書になる為にね」
グレーテル「それから少し遅れて……私とお兄ちゃんも現実世界へ来たんだよ……そのためにたくさん勉強したの……」
キモオタ「ちょ、ちょっと待っていただきたいですぞ」
ヘンゼル「なに?まぁ、これで僕の話はおしまいだけど…何か質問でもあるの?」
キモオタ「大ありですぞwwwヘンゼル殿の話だと、なんというかあれではござらんか!司書殿は実は現実世界の人間ではなく…」
キモオタ「消滅してしまった【キジも鳴かずば】の主人公、お千代殿であると言う事でござろう!?」
ヘンゼル「だからそう言ってるじゃないか、折角話してやってるのに何でまともに聞いてないの?」
グレーテル「キモオタお兄ちゃん……ヘンゼルお兄ちゃんのおはなし、ちゃんと聞いてなかったの……?もしそうなら酷いの……」
ラプンツェル「ぷぷーっ、怒られてるーっ!ちゃんとお話聞いてなきゃ駄目だよキモオター!」ケラケラ
孫悟空「あんまり理解出来てねぇ顔してるお前がそれを言うのか」
ラプンツェル「私はちゃんと聞いてたからね!あれだよね、噂のチョコレートがおいしい話でしょ?」ニコニコ
孫悟空「やっぱりお前理解出来てねぇじゃねぇか!そこは重要じゃねぇ!」バンッ
キモオタ「いやいや、お主たち騒いでいる場合では無いですぞwwwこれ結構な大事でござろうwww」ドゥフ
ヘンゼル「…まぁ、聞いていようがなかろうがどうでもいいよ。あんた達に何か期待してなんかいないから」フイッ
グレーテル「お兄ちゃん……」
キモオタ「しかし、これでハッキリしましたぞ!」
キモオタ「あの小柄な男の名を知っている理由が。あとはティンカーベル殿にこの事を伝えて司書殿……いや、お千代殿の捜索を急いでもらわねばなりませんな!」ピッポッパ
今日はここまでです
魔法で偽装した住民票を市役所に持って行く雪の女王
魔法で偽装した書類を持ってアパート契約する雪の女王
ヘンゼルとグレーテル。キジも鳴かずば編 次回に続きます
乙です!
キモオタたちに物凄い安心感を感じたw
乙!
何というか…すげぇな
>>1さん、乙です!
予想外すぎる展開でこれからワクワクしてきます…
久々のキモオタやラプちゃん登場もよかったです
次回からの司書どn…お千代殿救出作戦に期待です!!
雪の女王とラプ可愛いw
乙でした!
現実世界 廃墟
キモオタ「……というわけなのでござるよ、ティンカーベル殿」
ティンカーベルの声「…わかった!犯人をやっつけるには名前当てる必要があって司書さん探せば全部解決だってことだね!でもまさか司書さんが私達と同じおとぎ話の住人だったなんてびっくりだよ!」
キモオタ「ですなwww我輩も驚きを隠せないwwwしかしヘンゼル殿グレーテル殿が犯人の名前を口に出来ない以上、司書殿に頼る他ありませんからな」
キモオタ「時間の猶予はまだあるでござる。しかし何らかの拍子に犯人が司書殿の正体に気がつく可能性もあるでござる、急かすようで悪いでござるけど…」
ティンカーベルの声「大丈夫!任せて!大急ぎでぴゅーっと探すから!だからもうちょっと待ってて!」
キモオタ「申し訳ないですな。我らが総出で司書殿を探せば解決の鍵を持っている事に感づかれるかもしれないので…ここはティンカーベル殿が頼りなのでござる」
ティンカーベルの声「うん、平気だよ!人質隠すなら建物の奥かなーって思って奥の方から探したのが悪かったかな…別の場所探してくる、じゃあ後でねキモオタ!」
キモオタ「くれぐれも気をつけていただきたいwwwでは後ほどwww」コポォ
孫悟空「離れた仲間と会話ができる魔法具か…一見地味だがありゃあ相当な魔力と知識が無いと作れねぇだろうな」
ラプンツェル「【シンデレラ】の魔法使いに作ってもらったんだって!羨ましいよねー魔法具っ!私も何か作ってもらおうかなー?」
孫悟空「羨ましいってお前…魔法具なんか無くても十分だろ。その魔力を纏った髪の毛は唯一無二のもんだ、それをまず大事にしやがれ」
グレーテル「うん……私は魔法具もないし、魔法も一人だけじゃ使えないから……ラプお姉ちゃん羨ましいな……髪の毛も綺麗で長い……」
孫悟空「だとよラプ公。髪の毛とは言ってもこの孫悟空の腕力を持ってしても引きちぎれない強靭さがある、それを自在に操れるってんだからなかなかに強力だぜ」
孫悟空「重い物掴んで振り回せば強力な武器できるし、敵の拘束なんざお手のものだろうしな。お前の母親や王子が【ラプンツェル】でそうしたように移動なんかにも使えそうだ…汎用性の高い能力ってのは使いようによっては化けるぜ」
ラプンツェル「えっへへぇーっ、そんなにすっごく褒められると照れちゃうよーっ!でもさっきも言ったけど刃物には弱いし、操作って言っても私が操ってるから同時に何でもたくさん出来ないし、そんなに強い能力じゃないよぉー」テレテレ
グレーテル「やっぱり弱点を堂々と言っちゃうんだ……それに悟空さんも他の人褒めたりするんだね……【西遊記】読んだけど……悟空さんって自分勝手で乱暴で気づかいなんかできない暴れ者のお猿さんのイメージがあるの……」
孫悟空「俺の印象散々じゃねぇか!だがお前も大概だぞ、本人を前にして自分勝手で乱暴とかよく言えるぜ…まぁ思い切りがよくて衝動的に行動するって性格は【ヘンゼルとグレーテル】のまんまだな」
ラプンツェル「でも私がすごいなら悟空なんてもっともっと凄いよね!悟空は変身したりいっぱいになったりする魔法も使えるし、さっき棒伸ばして戦ってるの凄かった!」
孫悟空「おう、こいつは俺の武器『如意棒』だ。伸縮自在で伸ばせば天さえも穿てるってぇ代物だ。無茶苦茶重てぇから俺以外の奴じゃあまともに扱えねぇ…俺の自慢の武器だ」クルクルー
ラプンツェル「長くも短くも出来るって便利だよねー、それに長くしたらどんなにおっきなピザ生地も伸ばせるよねっ!」
孫悟空「如意棒を麺棒扱い扱いするんじゃねぇ!なんで竜宮に伝わる伝説の武器でピザ生地伸ばさなきゃならねぇんだ、何考えてんだお前」
ラプンツェル「何考えてるかって言われても…えっとね短い麺棒だとうまくピザ生地が伸ばせないでしょ?このまえピザ作ろうとしたらそれで失敗しちゃったんだ。だから如意棒をめいっぱい伸ばしてそれd」
孫悟空「そういう意味じゃねぇ!買えっ、長い麺棒を!」バンッ
ラプンツェル「でもピザなんてそんなにいつも作るものじゃないからその為だけに麺棒買っても結局そんなに使わずにキッチンの隅で埃かぶっちゃうしなぁ……そう言う事って良くあるよね?」
孫悟空「んなこたぁ俺ぁ知らねぇよ!じゃあ毎日作りゃあいいだろうが!」バンッ
ラプンツェル「でも毎日ピザだと飽きちゃわない?ねぇねぇグレーテルはなんのピザが好き?私はねぇブロッコリーとサラミとねー……」
グレーテル「ラプお姉ちゃん……なんでピザの話になってるの……?孫悟空さんも律儀に付き合わなくてもいいのに……」
孫悟空「クソッ!ラプ公と話してるとどうもこいつのペースになっちまう…おいキモオタァ!話が終わったならお前こっち戻ってこい、そしてこいつ何とかしやがれ!話がそれ過ぎなんだよこいつ!」
キモオタ「ドゥフフwwwお待たせしましたなwwwティンカーベル殿に事情は話しておきましたぞwww急いでくれるようでござるwww」コポォ
孫悟空「おう、そりゃあ何よりだがよぉ…それよりもラプ公だ!こいつどうなってんだ!緊張感がねぇどころの騒ぎじゃねぇぞ!?」グイッ
キモオタ「ラプンツェル殿に緊張感を求める方が愚かですぞwww諦めた方が賢明ですなwww」コポォ
ラプンツェル「二人とも私に緊張感ないみたいな言い方して酷いよっ!だってお千代ちゃんが見つかればあの悪い奴の名前もわかるんでしょー?待つしかないんだから焦ったり気を張っても仕方ないよ、楽しく待とうよー」ニコニコ
ラプンツェル「ピリピリしながら待つ一時間も、ニコニコ楽しく待つ一時間も同じ一時間なんだから。それならみんな楽しい方がいいなぁ私はー」ニコニコ
キモオタ「まぁ、そりゃあそうですなwww我々に出来る事は待つ事だけでござるからなwww」
孫悟空「理屈はわかるが納得いかねぇ…こんなヘラヘラした小娘に一瞬でも拘束されちまったと思うと頭痛がしてきやがる……この世界に来て腕が鈍っちまったかクソッ!」
グレーテル「……しょうがないよ……気にしちゃダメだよ悟空さん……」ポンポン
孫悟空「なんで慰められてるんだ俺ァ……おいキモオタァ!こいつらお前の連れなんだからなんとかしろテメェ!」ボカッ
キモオタ「ちょwww痛い痛いwwwカリカリしてはいけませんぞ悟空殿wwwカリカリなのはカリカリベーコンだけで十分ですぞwww」コポォ
ラプンツェル「そうだよー!イライラしたら駄目だよ悟空ー、スマイルスマイル」ニコニコ
孫悟空「テメェが原因だろうが!お師匠の念仏から解放されたってのになんで頭痛に悩まされなくちゃなんねぇんだ俺は!」バンッ
ギャーギャー ワーワー
ヘンゼル「…あんた達さ、大人の癖に何で大人しく出来ないの?」
グレーテル「お兄ちゃん……」
ヘンゼル「お千代が見つかれば確かにあいつを倒せる。だけどまだ何も解決してないんだよ?」
ヘンゼル「僕達はあいつを倒したわけじゃない、倒せる見込みがあるだけだ。それなのに油断し過ぎだと思うけど、もう少し静かにティンカーベルを待てないの?」
ラプンツェル「心配なのはわかるけど大丈夫だよー、人質って言うのは傷つけたら意味が無いらしいからお千代ちゃんも大切にされてるはずだよー?きっと怪我なんかしてないy」ムギュ
孫悟空「おいラプ公やめとけ。テメェのペースに乗せられた俺が言うのもなんだが、騒いだ俺達がどう考えても悪ぃんだ」
孫悟空「勝機が見えて俺も少し油断しちまったな…まだ人質が解放されたわけじゃねぇ、気を緩めるには早ぇって事だ。ヘンゼルは間違った事言ってねぇ」
ラプンツェル「そっかぁ……私ちょっとデリカシー無かったかなー?じゃあおとなしくしてよっかグレーテルー」ナデナデ
グレーテル「うん……そうだね……」
キモオタ「ヘンゼル殿……」
ヘンゼル「……」フイッ
キモオタ(我輩はヘンゼル殿が憎む作者と同じ現実世界側の人間、故にヘンゼル殿が心を開いてくれるまでに時間がかかってしまうのはともかく……悟空殿やラプンツェル殿にも心を許せぬでござるか)
キモオタ(犯人側に居た孫悟空殿はともかくラプンツェル殿は親しみやすい人柄でござるのに…グレーテル殿は多少懐いているようでござるけどヘンゼル殿も同じように…とはいかないでござるか)
キモオタ(我輩が思っていたよりヘンゼル殿の過去は壮絶でござった。それでもヘンゼル殿の憎しみを何とかしたいと言う気持ちはあるでござるが、恐らく今の我輩には何もできないでござる)
キモオタ(司書殿を完全に救いだせるまでは…今は無理に歩み寄るよりも見守るべきでござろう。しかし、一人で思いつめ過ぎて滅多な事にならなければいいのでござるが……)
現実世界 廃墟 ある一室
ティンカーベル(……さっきの部屋もハズレ。司書さんどこに閉じ込められてるのかな?)ススッ
ティンカーベル(……キモオタは言ってたっけ、犯人は名前を当てられたら力を失うらしいって)
ティンカーベル(人間じゃないのは確かだけどなんていう種族なんだろう、ホビットとかドワーフかな?私達と同じ妖精じゃないと思うけど……)
ティンカーベル(でも、妖精じゃないとしてもちょっぴり私達と似てるかも)
ティンカーベル(たったひとつの言葉が弱点だってところは私達妖精と同じだし……っと、ダメダメ!今は司書さん探すのに集中しないと!)
ヒラヒラヒラ
ティンカーベル(あっ、あの部屋…扉がちょっとだけ開いてる…)ギィッ
ヒラヒラ
ティンカーベル「誰も居ないかな……?」スッ
司書「……っ!」ンーンー
ティンカーベル「居たっ!こんなところに縛られてたんだね…待ってて!今ロープ解くから!」グイグイ
パサッ
司書「ケホケホッ……助けてくれてありがとう妖精さん、でもどうして妖精さんがこんなところに…?」
ティンカーベル「もちろん司書さんを助けに来たんだよ!もう安心だからね、私が助けに来たんだからっ!」フンス
司書「でもどうしてこの場所がわかったの?とっさのことで助けを呼ぶことも手掛かりを残す事も出来なかったのに…」
ティンカーベル「司書さんが誘拐された後ね、ヘンゼルとグレーテルのとこに誘拐犯から手紙が届いたんだって、それでグレーテルがキモオタに助けを求めに来てくれたんだよ。あっ、司書さんの事情も簡単にだけど聞いたよ、【キジも鳴かずば】の事もね」
司書「そうだったんですね。グレーテルにキモオタさんを紹介しておいて本当に良かった…もしも二人だけなら誰にも助けを求めずにここに来たと思うから」
ティンカーベル「いくら魔法が使えるって言っても、子供二人じゃ危ないし心配だもんね。だから私達が来たんだしねっ」
司書「キモオタさんに助けを求めたのがグレーテルだけということは、ヘンゼルは私を誘拐した犯人に逆上して飛び出して言ったってところかな?」
ティンカーベル「うん、凄く怒って部屋を飛び出して行ったって聞いたよ」
司書「もう、ヘンゼルは相変わらずなんよ……」ハァ…
ティンカーベル「なんよ?」
司書「えっ、あっ、なんでもないよ!ここにいたらまた犯人が来るかもしれないから早く逃げましょ、妖精さん外まで案内してくれる?」
ティンカーベル「もちろんそれは良いけど…その前に一個だけ謝っとくね」フワフワ
司書「私、何か謝られるような事を妖精さんにされたかな?」
ティンカーベル「司書さん、私の事見えるでしょ?でもその事最初隠そうとしてたから…司書さんの事悪い人かもって疑っちゃってたんだ、ごめんね」
司書「あっ【こびとの靴屋】の読み聞かせの時の……あれは隠そうとしたわけじゃなくて、初対面のキモオタさんに妖精が見えるなんて言ったら不審に思われると思って…」
ティンカーベル「そっか、そうだよね!深い意味なんか無かったんだよね!よかったー、それならいいんだよー」ニコニコ
司書「もしかして妖精さんに嫌な思いさせちゃったかな?そんなつもりは無かったんだけど」
ティンカーベル「うーん、嫌な思いっていうかね…見えるのに見えないって言われるのとか、居るのに居ないって思われるのは私達妖精にとってすごく悲しい事なんだー」
ティンカーベル「だから私達の事が見えるならその存在を信じて欲しいな。誰かに変な風に思われるから見えないって言うとか、妖精が見える事がみんなと違うから居ないって言うのは…絶対にやめてほしいな、私」
司書「…妖精さんって消滅したおとぎ話【ピーターパン】のティンカーベルちゃんだよね?」
ティンカーベル「あれっ?私の名前知ってるの?そうだよっ、だから司書さんもティンクって呼んでもいいよ!でも良く考えたらキモオタが私の名前呼んでるの見てたなら、私の名前知ってるのも当然かー」ニコニコ
司書「うん、それもあるんだけど。ティンクちゃんが存在を信じて欲しいって言う理由…私、知ってるから」
ティンカーベル「そっかー、この事知ってるって事は司書さんは【ピーターパン】のおとぎ話の内容知ってるって事だよね?」
司書「うん、ワクワクする素敵なおとぎ話だったの覚えてるよ。あっ、でもピーターパン君のお友達のウェンディちゃんにヤキモチやいてあんな事するのは流石にやりすぎだよ?」
ティンカーベル「? 私ウェンディとは知りあったばっかりだけど別に仲悪くないよ?でもこれからネバーランドに行こうってところで大変な目にあってそれどころじゃなくなっちゃったからなぁ…あっ、でも初対面なのにピーターパンと仲良すぎるのはちょっと…かなりイラッとしたかも」
司書「じゃあまだネバーランドに行ってないんだね。どうなるのか知らないなら物語の展開話すような事はやめた方がいいかな」フフッ
ティンカーベル「ちょっとー!なにそれ気になるじゃん!私ウェンディの事嫌いになるの?えっ、私ウェンディに何するの?やりすぎって何?」
司書「それはちょっと私の口からは言えないかな…」
ティンカーベル「もぉーっ!いいよっ!絶対に【ピーターパン】の世界を元に戻すから!そして【ピーターパン】がどんなに素敵なおとぎ話なのか自分で確かめるから!」プンスカ
司書「!? ティンクちゃん…!危ないっ!」
ヒュッ ガシッ
ティンカーベル「……っ!?」ウグッ
小柄な男「おいおいおい、どういう事だこりゃあ……この世界には魔法だの妖精だのは存在しねぇんじゃねぇのか…?」
ティンカーベル「んぐぐっ…!離してよね!離してってば!離せバカーっ!チービ!」ジタバタ
小柄な男「クソやかましい妖精だ、ちょこまかしてた小さな魔力はテメェだったってか……おい、テメェはティンクとか言ったな?」
ティンカーベル「慣れ慣れしく愛称で呼ぶなチービ!ちゃんと『さん』を付けろバーカ!」ジタバタ
小柄な男「聞き覚えの無い名前だな、どうせマイナーなおとぎ話の妖精なんだろうが……おとぎ話の住人だってことには違いねぇ」
ティンカーベル「【ピーターパン】の事マイナーとか言うな!どーせあんたのおとぎ話の方がマイナーなんでしょ!だって私も知らないもん!やーい、ドマイナー!」
小柄な男「結構じゃねぇか、俺はその方が好都合だからな。俺の名前を知ってる奴なんてのは少ない方がいい…まぁ、この世界では誰も知らないから同じだがな」
司書「名前を知ってる人が少ない方が……好都合……?」
ティンカーベル「おとぎ話は忘れられちゃったら消えちゃうんだからマイナーじゃ困ることばっかりなのに、マイナーで結構とかどーせ負け惜しみでしょ!」
小柄な男「口が過ぎるぞ小賢しい妖精め」ギュッ
ティンカーベル「うぐっ…!離せ…!離せーっ!」バタバタ
司書「その子は私を助けに来てくれただけなの、苦しんでるから離してあげて!」
小柄な男「そうだ、それだ。なんでこの妖精はテメェを助けに来てるんだ?今テメェ等が探すべきなのは人質じゃねぇ、俺の名前のはずだ。人質を助けても名前がわからなけりゃあ一緒だからな」
小柄な男「キモオタとかいう男が言うには廃墟内をうろついてる気配……つまりティンクとかいう妖精は俺の名前の手掛かりを探す為に廃墟を嗅ぎまわってる。って事だったが?どうなってる?」
ティンカーベル「言うわけないでしょバーカ!」ベーッ
小柄な男「……ああ、そうか。解ったぞテメェ等のたくらみが……!まんまと騙されちまうところだったぜ、俺の名前を探す時間をくれっていうのはただの口実で本当は人質の救出が目的だったって事か!」
小柄な男「あいつ等の気配は初めの部屋から動いてねぇ、名前探しせずに人質探しをするって事は答えはひとつだ。つまり……テメェ等はもう俺の名前に既にたどり着いているって事だな!?」
現実世界 廃墟
・・・
ラプンツェル「こっちの髪束をこーするでしょ?そしたら今度はそっちのをそーして、あっちのをあーして編み編みしていってー」アミアミ
グレーテル「可愛い髪形……ラプお姉ちゃんいろんな編み方知ってて凄いの……まるで私じゃないみたい……」
ラプンツェル「私もいっつも自分の髪の毛しか触らないからグレーテルの髪の毛いじるの楽しいよぉ〜」ニコニコ
キモオタ(あれから大人しくしているもののラプンツェル殿にはやはり緊張感が無いですなwww)
キモオタ(しかし、別の事をすることでグレーテル殿の不安が和らいでいるのであれば良い事でござる。しかし…あれはどうなんでござろうか)
孫悟空「4998回…!4999回…!5000回…!」フンフンッ
キモオタ「いやはやwwwこんな時に鍛錬とは恐れ入りますな悟空殿www何が起きるかわからない故に体力は温存した方がいいのではwww」
孫悟空「素振り程度じゃ疲れを感じすらしねぇよ。ただ、なんだ…身体を動かしてる方があれこれ深く考えずに済むからよぉ」フンフンッ
キモオタ(悟空殿も人質を取られていたのでしたな。どれだけ粗暴で豪快で強くて何が起きても平気そうな顔をしていても人質にされている者の事が不安な事に変わりなどないのでござろうな…)
キモオタ(そしてヘンゼル殿は…)チラッ
ヘンゼル「……」
キモオタ(やはり自分から我々に関わろうとはしないでござるな…元々ヘンゼル殿は一人きりで司書殿を助けに来たのでござった、それだけの覚悟は持ち合わせているのでござろう…)
ザッ
小柄な男「おうおう、テメェ等……俺様の名前を当てねぇとヤベェってのに……髪弄りに思索に素ぶりか、随分と暇そうにしてやがるなぁ大丈夫か?」クックック
キモオタ「お、お主…何故こんな早く…!まだ時間に猶予はあるはずですぞ!?」
孫悟空「そうだぜ、約束の時間はまだ先だ。テメェ…俺達の邪魔をする為に来たってぇんじゃねぇだろうな!」
小柄な男「そう喚くな。どうも騒がしいから人質の様子を見に行ったらとんでもねぇ事に気がついてな……テメェ等の連れの妖精がこいつの事を探してた」
小柄な男「折角だ…もう最後になっちまうしな、俺様は寛大だから別れの言葉くらい交わさせてやろうと思って二人まとめて連れて来たってわけだ」ドサッ
司書「ヘンゼル!グレーテル!二人とも私を助ける為にそんなに傷だらけで…!」ケホケホ
ヘンゼル「お千代…!無事!?見たところ怪我はしてない様だけど…」
グレーテル「お千代ちゃん……無事でよかった……」
孫悟空「再会を喜んでるところ悪ぃけどよぉ…その妖精、ティンカーベルがいねぇぞ…?」
キモオタ「本当でござる…!お主、ティンカーベル殿はどこでござるか!?」
小柄な男「焦るんじゃねぇよ、妖精はここだ」スッ
ぐるぐる巻きにされたティンカーベル「うぅ……ごめんねキモオタ。司書さん見つけたのは良かったんだけど…捕まっちゃって、みんなの作戦台無しにしちゃった…」
キモオタ「…心配いりませんぞ。危険な目にあわせてしまって申し訳ない…もうしばしの辛抱でござるよティンカーベル殿」
小柄な男「しばしの辛抱?驚いたなぁ、テメェこの期に及んでまだ全員で生きて帰れると思ってるのかよ?」
ラプンツェル「キモオタ!あいつ、絶対何か企んでるよ!私達の考えも全部知られちゃってるのかも…!」
小柄な男「アホ女にしては察しがいいな。その通り、テメェ等の魂胆は全てお見通しって訳だ、この俺様の手にかかればなぁ!」
小柄な男「テメェ等が俺様の名前に既にたどり着いてるって事はお見通しなんだよぉ!!」ハーッハッハッハ
キモオタ「お主…!ひとまずティンカーベル殿を離していただきたい…!」グッ
小柄な男「おっと、駄目だ。こいつは俺の最後の切り札…妙な真似はするなよ?名前を呼ばれる寸前にこいつを握りつぶすくらい容易いぜ?」
孫悟空「この野郎…!」ギロッ
小柄な男「おっと、テメェの人質だって解放してねぇんだぜ?あの娘を殺されたくなけりゃあ指くわえて見てろ。おとぎ話界最強の猿人、孫悟空よぉ?」
孫悟空「クソッ…あの野郎、調子に乗りやがって……!」
キモオタ「……お主、我々の魂胆を全て見抜いたと言っておりましたな?」
小柄な男「おう、まったくよぉ、俺様もまんまと騙されちまったぜ。だが結局無駄になっちまったなぁ!」
キモオタ「ほうwwwはたして、本当に我々の策を見抜いているのでござるかなwww」コポォ
小柄な男「…あぁ?ヘラヘラしやがって、随分と余裕じゃねぇかテメェ」
キモオタ「余裕も何もwwwお主が我々の策を見抜いたというのがどうもウソ臭いというかどうせハッタリでござろうそんなのwwwさしずめ勝ち目が薄くなったとみて難癖をつけにきたと見ましたぞwww」ドゥフフ
小柄な男「テメェの連れの妖精が人質になってるのを忘れたか?こいつの命は俺様の手のひらの上なんだよ!」
キモオタ「こいつの命は俺様の手のひらの上なんだよ(キリッ)wwwwwwwww」
小柄な男「……っ」ギリッ
キモオタ「ドゥフフwwwハッタリでないと言うなら聞かせていただきたいものですなwwwお主が見抜いたという、我々の策をwwwどうせ無理でござろうけどwww」
小柄な男「上等だ…!ここだとキモオタとか呼ばれてたな……テメェが必死で考えた出来損ないの策がどんなもんか、聞かせてやろうじゃねぇか…!」イライライラ
ティンカーベル(キモオタがあからさまに煽ってる……時間を稼いでチャンスをうかがってるんだ……)
小柄な男「テメェはあの時…俺様にこういう取引を持ちかけたな?」
小柄な男「『名前を考えるから時間に猶予をくれ。時間までに名前が当てられなければ魔法具をやる』ってな。俺は魔法具につられてまんまと了承しちまった」
キモオタ「確かにそんな感じの事を言いましたなwww」
小柄な男「だがテメェはもうその時点で俺様の名前を探す必要なんか無かったんだ。俺様の名前を知っている奴が既にいたんだからな!」
キモオタ「なるほどwwwそうきたでござるかwww」
小柄な男「だがそこで俺の名前を良い当てる事は出来なかった。何故なら、人質の司書とかいう女の安全が確保できてなかったからだ」
小柄な男「テメェは前もってこの妖精に司書を探させていた。司書の安全が確認できていないのに俺の名前を当てるのは危険だ、テメェ等側の考えなら司書を取り戻したうえで俺の名前を当てたい」
小柄な男「しかし俺に直接『人質を探す』とはいえねぇ、だから『名前の手掛かりを探す』という口実で妖精に人質探しを続行させた…!」
キモオタ「ほうwwwそれでそれでwww」
小柄な男「テメェ等は……いや……」
小柄な男「キモオタ。テメェは既に俺様の名前を知っていた。」
キモオタ「ほう、我輩が実は既にお主の名前を知っていると?だから司書殿ではなくティンカーベル殿を人質にしたというわけでござるかwww」
小柄な男「へへっ、その通りだ!テメェの魂胆なんざ見え見えだったってわけだなぁ!」
ラプンツェル「ねぇねぇ孫悟空、あいつの予想全然まちがtt」モガモガ
孫悟空(解ってんだよんな事ぁ!お前ちょっと黙ってろ!)ヒソヒソ
小柄な男「先入観ってのは恐ろしいよなぁ…現実世界に居る奴だから現実世界の人間だなんて考えは危険だって学んだぜ」
小柄な男「そりゃあそうだよなぁ?ティンクとかいう妖精、ヘンゼルとグレーテル、ラプンツェル……そして俺様に孫悟空。これだけおとぎ話の住人が居るんだ、もう一人いたって不思議な事はねぇ」
小柄な男「キモオタ……テメェもおとぎ話の住人だったってわけだ、だから俺様の名前を知っていた!」
キモオタ「なるほどwww我輩がおとぎ話の世界の住人という予想ですなwww残念でござるが我輩は現実世界の人間でござるwww」コポォ
小柄な男「クックック、今更取り繕おうったって無駄無駄!もうテメェの正体も察しがついてるんだからよぉ!」アッハッハ
小柄な男「どうやったか知らねぇけどなぁ…どうやって俺様の監視をかいくぐったか知らねぇけどなぁ……孫悟空はうまくやったみてぇだなぁ!うまいこと旅の仲間に危機を知らせたんだからよぉ!」
キモオタ「お、お主の予想というのはもしや……」
小柄な男「キモオタ…いいや、テメェは現実世界の人間なんかじゃねぇ!俺様を騙す為に現実世界の人間のフリをしていただけだ、キモオタなんかじゃねぇ!」
小柄な男「テメェの正体は【西遊記】の登場人物、そして孫悟空から何らかの方法で助けを求められてやってきた孫悟空の仲間……!」
小柄な男「テメェの正体はブタの妖怪ッ!猪八戒だ!!」バーン
キモオタ「……」
小柄な男「観念するんだなキモオタ…いいや、猪八戒!テメェの浅知恵なんざ俺様には通用しねぇ!!」
ティンカーベル「……」ポカーン
ヘンゼル「……」ハァ…
グレーテル「……」
ラプンツェル「ねぇねぇ孫悟空!キモオタってそんなに猪八戒に似てr」モガモガ
孫悟空「おう、黙ってろお前」ムギュッ
小柄な男「な、なんだテメェ等の反応は…ははぁん、俺様の予想が完璧だったってぇんで万策尽きて放心状態ってわけか?」
キモオタ「その通りでござるよー、我々の完敗でござるー」
ティンカーベル(キモオタものっすごく棒読みだ……)
小柄な男「お、ようやく認めたか!!そうだよなぁ!俺様の推理は完ぺきだった、テメェ等は負けちまったのさ!アーハッハッハ……!」
司書「……元々のおとぎ話と同じですね」
小柄な男「…ん?なんだぁ?」
司書「勝利を確信して、油断して……言わなくてもいい事を口にして自分自身の首を絞めてしまう……」
司書「無駄口に関しては私も人の事言えませんけど……でも、口は災いの元っていう教訓はお互いしっかり胸に刻んだ方がいいかもしれませんよ?失敗を糧にしないと成長できませんから」
小柄な男「はぁ?テメェ何を言って……」
司書「そうですよね、ルンペンシュティルツヒェンさん…?」
小柄な男「……なん……だと……っ!?」ガタッ
ルンペンシュティルツヒェン「何故現実世界の小娘が俺様の名前を知ってやがる!?何故、猪八戒じゃなくテメェが…!?」シュオオォォォォ
【ルンペンシュティルツヒェン】
とあるところに貧しい粉引きと娘が住んでいました。
ある時、粉引きは王様に謁見する機会があり、その時ついこんなウソを口にしてしまいました
「私の娘は藁を紡いで黄金にする事が出来る」
その事を聞いた王様は大変驚きましたが黄金を紡げるというその娘を城に招きました
王様は大量の藁と小さな糸車と一緒にその娘をお城の一室に閉じ込めて黄金を紡ぐように命じました。
もしも黄金を紡ぐ事が出来なかったら処刑すると言い残てし王様は外から部屋に鍵を掛けて去って行きました
もちろん娘は黄金を紡ぐ方法など知りません。困り果てて泣いていると部屋の隅から小柄な男が顔を出しました
事情を話すと小柄な男は言いました「俺様が黄金を紡いでやろう。その代わりお前のしているネックレスを貰うぞ」
娘がネックレスを手渡すと、男は藁を糸車に巻きつけぐるぐると回し始めました。するとどうでしょう、辺りの藁が瞬く間に黄金へと変わっていたのです
翌日、王様が部屋に訪れると山のような黄金が紡がれていました。王様は大喜びで追加の藁を娘に渡してまた鍵を閉めてしまいました
夜になると同じように小柄な男がやってきました。今度は娘の指輪と引き換えにまた山のような黄金を紡ぎました。
さらに翌日、王様はさらに黄金が紡がれている事に感心して娘に追加の藁を渡して言いました。この藁を全て紡げば私の妃にしてやろう。と
夜になるとまた同じように小柄な男がやってきましたが、娘にはもう何も渡せるものがありませんでした。すると小柄な男はこう言いました
「それならお前が王の妃になって、王との間に生まれた子供を俺様に寄越せ。その約束ができるなら黄金を紡いでやる」
娘は悩みましたが、黄金を紡げなければ殺されてしまいます。しぶしぶでしたが小柄な男の提案を飲んでしまいました
翌日、部屋の中に山と積まれた黄金を見た王様は約束通り娘と結婚をしました。貧しい粉引きの娘は王の妃になる事が出来たのです
それから一年ほどの時が経ち、王と女王の間には可愛らしい赤ちゃんが生まれました。すると女王の部屋の隅からあの日の小柄な男が現れました
「あの日の約束を果たして貰うぞ、その赤子を受け取りに来た」と男は言いますが、可愛い子供を渡すわけにはいきません。女王が泣いて頼みこむと小柄な男は言いました
「それなら三日後までに俺の名前を当てて見ろ。当てる事が出来たら子供は諦めてやる」
それから女王は必死に国中…いや世界中のあらゆる名前という名前を調べさせました。しかし、男の名前が当てられないまま一日、二日と過ぎて行きました
約束の日が迫り、女王が困り果てていると一人の兵士が数日前に森の中で不思議なものを見たと報告してきました
兵士が言うには森の中で背丈の小さな男が楽しげに歌っていたというのです
『フンフーン。今日はパンを焼いて過ごす、明日はビールをこしらえる、そして明後日は女王の赤子が手に入る日っ!俺様の名前がルンペンシュティルツヒェンだと言う事は世界中の誰も知りはしない!』
翌日、嬉しげに姿を現した小柄な男に女王はその名前を付きつけました
見事に名前を当てられてしまった小柄な男は逆上し、怒りのあまり自分自身の身体を引き裂いてしまいました
女王は大切な赤子を男に渡すことなく幸せに暮らしました
おしまい
・・・・・・・
現実世界 廃墟
ルンペンシュティルツヒェン(以下ルンペン)「ぐああぁぁぁ……ッ!お、俺様が蓄えた魔力が…この世界を牛耳る為の力が……!」シュオオォォォ
グレーテル「ルンペンシュティルツヒェンのおじさんから……煙が上がってる……魔力、流れていってる……」
ラプンツェル「あっ!グレーテルあいつの名前言えるようになってるっ!名前ちゃんと当てられたからけーやくとかいうの効かなくなっちゃったのかな?」
ピキキッ パリーン
ヘンゼル「あいつに巻かれていた黄金の首輪が砕けた、完全にあいつの能力は打ち消されたみたいだね。もうあいつは思い通りになんかできない」
孫悟空「ヘンゼルとグレーテルの首輪が砕け散ったってこたぁ、人質にされてるあいつも解放されたってぇわけだな?よしっ、こっからは加減なしでいくかぁ!」
ルンペン「……そう簡単にいくかよ孫悟空!テメェの人質まで解放されてるなんてのは楽観的すぎるぜぇ……テメェはまだ俺の下僕だ、あの娘を殺されたくなかったらこいつ等を蹴散らせッ!」シュオオォォォォ
司書「嘘、ですね。あなたはグリム童話集の一遍【ルンペンシュティルツヒェン】の敵役、名前を当てられた以上…その契約というのは維持できないんですよね。そういう内容の約束…いいえ、契約なんですから」
ルンペン「……っ!」シュオォォォ
司書「契約を交わしていない私が名前を当てただけでヘンゼル達の首輪が砕けたんです、名前を当てられた時点であなたが行使している全ての契約は無効になる…そうですよね?」
ルンペン「俺様の作者や話の筋まで知ってやがるのか…!クソッ!クソッ!テメェ現実世界の人間じゃねぇな!?何者だテメェはよぉ!」シュオオォォォ
司書「この国のおとぎ話【キジも鳴かずば】の主人公、千代です。あなたと同じで、おとぎ話の世界の住人です」
ルンペン「【キジも鳴かずば】…聞いた事ねぇぞそんなおとぎ話!そんなマイナーなおとぎ話の主人公に俺様が…!猪八戒に気を取られちまったばっかりに!」シュオオォォォ
キモオタ「ちょwwwだからwww我輩は猪八戒殿ではないというのにwww」コポォ
ティンカーベル「キモオター、そんなことより速く助けt」
ルンペン「……っ!そうだ…!そうだったぜ!テメェ等よく聞きやがれ!俺様にはまだ人質が残ってやがんだぜぇ!」ググッ
ティンカーベル「うぐぐっ…!こいつ、私の事なんか忘れてたくせに…!」ウググ
ルンペン「オラァ!テメェ等この妖精を殺されたくなかっったら俺様に従えぇ!!」
シュッ
ヘンゼル「その妖精って、どの妖精?僕にはあんたが人質取ってるように見えないけど」ハァ…
ルンペン「あぁ?どの妖精ってテメェの目は節穴かぁ?決まってるだろ、俺が掴んでる……ん?居ねぇぞ!?なんでだ!確かに今まで掴んでたんだぞ!?」
孫悟空「勝利を確信すると油断する、だったか。その癖直さねぇと何やってもうまくいかねぇんじゃねぇか?おらキモオタ、テメェの仲間だろ?縄を解いてやれ」ポイッ
キモオタ「おおwwwかたじけないですなwwwささ、ティンカーベル殿、すぐに自由にしますからなwww」ホドキホドキ
ティンカーベル「えっ、あっ、うん。なんか私も何が起きたのかわかんなくてびっくりした…」ポカーン
ルンペン「一瞬であの妖精を奪い返したってのか!?そんな芸当、それこそ凄まじい洞察力と機敏さがなけりゃあできねぇぞ!?それを容易くやってのけたのか!?」
孫悟空「そんな大層なもんじゃねぇよ。こんくらいの芸当、沙悟浄も猪八戒も当然のようにこなせるぜ?あぁ、猪八戒の奴はどっちかってぇとブッ倒してから取り返すかもな、あいつはその方が早ぇからよぉ」
ルンペン「俺の下僕だった時は手ぇぬいてやがったか…坊主の下僕の化け物がぁ…!」
孫悟空「おいおい、化け物じみてるから俺を脅して従わせたんだろうがテメェは。それに俺も沙悟浄も猪八戒もお師匠の下僕なんかじゃねぇ」
孫悟空「俺は三蔵法師の守護者、孫悟空だ。闇に魅入られた魑魅魍魎共の相手をしてきた俺にとっちゃあテメェなんかじゃ相手にならねぇよ」
孫悟空「おいラプ公!こいつ拘束すんのは俺よりテメェの方が良いだろ、身動きとれねぇようにしてやれ!」
ラプンツェル「りょーかーい!よーしっ、良いとこ見せちゃうからねー!私の長い魔法の髪っ、ルンペンシューなんとかを捕まえちゃえっ!」ファサッ
ルンペン「なんだと…早ぇ!こんなもん避けられn」シュルル
ギューッ
ルンペン「クソッ!ただの髪の毛だってのに解けねぇ!いや、魔力を纏った髪の毛か……揃いも揃って化け物みてぇな連中め!」グヌヌ
グレーテル「……そんなことないよ……ラプお姉ちゃんは可愛いの……化け物なんかじゃないよ……」
ラプンツェル「えへへ〜、可愛いって言われると照れちゃうなぁ〜♪グレーテルも可愛いよぉ〜」テレテレ
ユルッ
キモオタ「ちょwwwラプンツェル殿www髪の毛緩んでる緩んでるwww」コポォ
ラプンツェル「あっ、ちょっと気抜いちゃった!大丈夫っ、もう逃げられないようにギューッってするから!」ギリギリギリ
ルンペン「ぬぐぐっ…加減しやがれアホ女が!俺の計画がうまくいってりゃあこんなネジの抜けたような奴に捕まるなんて屈辱を受けずに済んだってのに…!」ギリッ
キモオタ「これで一安心ですなwww人質は全員解放wwwラプンツェル殿の髪の毛で拘束したとなれば縄抜けも出来ないでござるしなwww」
孫悟空「いや、まだだ。おい、玉龍はどこに閉じ込めたんだ?答えて貰うぜ」グイッ
ルンペン「あぁ?教えて下さい。だろうが!この髪の毛を解いて俺様を逃がすってんなら教えてやってもいいけどなぁ!あの龍の娘の事が大切なら俺を逃がs」
孫悟空「そうかよ、じゃあ別に言わなくていいぜ。おい、ヘンゼルこいつ殺しても構わないよな?」
ヘンゼル「そんなの聞かなきゃわかんない?殺す以外の選択肢があるの?」
ルンペン「!?」ガタッ
ルンペン「待て待て!俺を殺せばあの娘の居場所がわからねぇぞ!いいのか!?テメェの事慕ってたぞあの娘!」
孫悟空「いや、居場所が解るなら迎えに行くけどよ。テメェの契約が解けてあいつも自由に動けるならほっといても俺の所に戻ってくるだろ、ああ見えて龍だしなあいつは」
ルンペン「いや、お前待て!俺様を逃がすってなら望むだけの黄金紡いでやるっ!だから俺様を解放しろ!テメェは【西遊記】の主人公で、僧侶なんだろ!だったら殺生なんざしねぇよなぁ?」
孫悟空「テメェは何人も殺しておいて万策尽きたら命乞いか?おいヘンゼルと女どもは目ぇ塞いどけ、こいつ始末しちまうからな」
ヘンゼル「待ってよ、何言ってるの?僕がやる、そいつはお千代やグレーテル…僕の家族に手を出した。それにあんたが殺したらそいつ苦しむ間もないでしょ?」
グレーテル「そのおじさんは……お兄ちゃんにも酷いことしたの、だから私がやる……かまど、だよ」
ルンペン(おとぎ話の主人公なんざ善人ぞろいだと思って隙を見て付け込もうと思ったが…なんだこいつら、殺す気満々じゃねぇか…っ!)
ルンペン「ちょ、ちょっと待て!それでもおとぎ話の主人公かよテメェ等!」ジタバタ
キモオタ「ちょwww擁護するつもりは無いでござるがwwwなにも殺さなくても良いでござろうwww」
司書「キモオタさんの言うとおりです。ヘンゼルもグレーテルも駄目だよ、みんな無事だったんだから。殺して罪を償わせようなんて間違ってるよ?」
ティンカーベル「そりゃそーかもしれないけどさー、でもちゃんと罰を与えないといけないと思うなー」
ラプンツェル「じゃーさじゃーさ!とりあえず天上からぶら下げてグルグル回しちゃう?」
孫悟空「キモオタや司書の言いたい事もわかるけどよぉ?命乞いするしかねぇほど追いつめられてるってのに謝罪の言葉すらねぇんだ。こういう奴は反省なんざしねぇぞ?」
ヘンゼル「そうだよ、生かしておいたらまた僕達の目の前に現れるかもしれない。殺さない理由が無いでしょ」
キモオタ「二人ともは手厳しいですなwwwならばこうするでござるよ、雪の女王殿に相談すると言うのではどうですかなwww」コポォ
ヘンゼル「なんでそこで女王が出てくるの?あんたは無関係な僕の家族を巻き込もうって言うの?」
キモオタ「違うでござるよwww実は雪の女王殿はアリス殿達の一件について我輩たちに協力してくれてるのでござるwww故に女王殿の協力者の中に強固な牢を持っている者でも居ないかと思いましてなwww」
ルンペン「アリス……だと?」
ヘンゼル「女王が…あんた達に協力してるって言うの?おとぎ話を消滅して回ってるアリスを止めるっていうあんた達の旅を…女王が助けてるって?」
キモオタ「実際にお会いした事は無いのでござるがなwww白鳥殿と親指姫殿に聞いたでござるwww一度挨拶に伺おうと思ってるのでござるし、そのついでに相談するでござるwww」
ティンカーベル「あーっ!親指姫の事思いだしたらムカムカしてきた!でも雪の女王が協力してくれてるってのは嘘じゃないよ!」
グレーテル「【みにくいあひるの子】と【親指姫】作った人……女王さまの【雪の女王】と同じ作者の人だよね……だったら女王様がその二人の事頼るのも納得なの……きっと本当の話だよ、お兄ちゃん……」
司書「キモオタさん達がしているのはおとぎ話の消滅を防ぐ旅…その手助けをするなんて女王様らしいね」ウフフ
ヘンゼル「僕はそんな事一言も、女王に聞いてない……家族の僕達には内緒で、なんでそんな危険な事を……」ブツブツ
キモオタ「何かいいましたかなwwwヘンゼル殿www」
ヘンゼル「別に…なんでもない」
ルンペン「おいっ!猪八戒!話聞いてるとよぉ、テメェはアリスと敵対してるってんだな?」
キモオタ「敵対というかwwwまぁアリス殿の企みを防ぐために旅をしているのでござるよwwwそれといい加減に猪八戒殿扱いはやめていただきたいwww」コポォ
ルンペン「だったら俺の話を聞いて損はねぇぞ!俺が居たおとぎ話の世界もアリスに消されちまってよぉ!そのうえ俺はアリスに捕まっちまった、俺の黄金を紡ぐ能力に目を付けたんだろうなぁ」
ティンカーベル「アリスに捕まったって…それって本当の話なの?」
ルンペン「ああ、保障してやる!それから【不思議の国のアリス】の世界の…ハートの女王の城の牢屋とか言ってたな、そこにぶち込まれてよぉ。俺様は何とか逃げおおせたが…そこには他にもおとぎ話の住人が捕えられていたぜ!どうだ、詳しく知りたいだろ!」
キモオタ「な、なんですと!別のおとぎ話の住人が!?詳しく聞かせていただきたい!」バッ
孫悟空「おい、信用しちまっていいのか?デマカセ並べるつもりかもしれねぇぜ?」
キモオタ「しかし、事実ならば我々のまだ知らない情報でござる…それにアリス殿は魔力や魔法具を集めてるでござるからルンペン殿の能力に目を付けても不思議ではないですぞ」
ルンペン「おう、そうだろうが!逃げられるならそれが一番だがなにも逃がせとはいわねぇ、ただ俺を殺さない事を約束しろ!こいつらおとぎ話の主人公の癖に容赦が無ぇ…豚のテメェが一番話がわかりそうだからよ」
キモオタ「判断を下すのはあくまで女王殿でござるがwwwお主の情報が有益であれば命だけは助かる様に我輩が出来る限りの進言はしますぞwwwあと豚ではないwww」コポォ
ルンペン「仕方ねぇ、そいつで妥協してやる。生きてりゃあ逃げる隙なんざ見つかるだろうからな…まず、どこから話してやろうか」
ルンペン「テメェが言ってたようにアリスは魔法の力を集めてんだ。あちこちの世界からかき集めた魔法具を城のどこかに蓄えてる…って捕えられていた和尚が言っていたからな、間違いねぇだろ」
キモオタ「和尚殿…?司書殿、和尚が登場するおとぎ話とは何がありますかな?」バッ
司書「和尚様が登場するおとぎ話はいくつかありますけど…魔法や魔法具など不思議な力をアリスさんが求めてると言うのなら、【三枚のお札】の和尚様かもしれませんね」
ルンペン「忌々しいほどにおとぎ話に詳しい娘だぜクソッ…その上察しが良い、テメェの言うとおりそいつは【三枚のお札】の和尚だ」
司書「うふふ、私は司書ですからおとぎ話に詳しいのは当然ですよ。【三枚のお札】のお札は願いを現実にする不思議なお札です、それに筆を入れているのは和尚様でしょうから」
ルンペン「そうみてぇだな、アリスに札を書くよう強要されたが断り続けたと本人も言ってたからよぉ…で、折れたアリスは結局和尚を牢にぶち込んで別の魔法具探しを優先したってわけだ」
ラプンツェル「へーっ、じゃあその牢屋には魔法とか不思議な力を使う事が出来る人が捕まってるって事かな?」
ルンペン「間違っちゃあいねぇけど、それだけじゃねぇ。牢屋には人質にされた奴らも多く居たぜ。まぁ魔法やら使える特殊な奴がほとんどだったけどよぉ」
ルンペン「茶釜に頭としっぽが生えたみてぇな姿の狸と、薄汚い布を頭に巻いた石像も居たのを覚えてるぜ。あとはずっと眠りこけてる娘が居たな…確かオーロラとかいう名前だったか」
司書「きっと【ぶんぶく茶釜】の狸さんですね、布を頭に巻いた石像……【笠地蔵】のお地蔵様でしょうか?オーロラ姫は【眠り姫】ですね。本当にいろんなおとぎ話を襲ってるんですね…酷い」
グレーテル「茶釜の狸さんは変化の術が得意……お地蔵様は動く事が出来る不思議なお地蔵様……オーロラ姫は……魔法とか使えたっけ……?」
ヘンゼル「使えないけど、たくさんの魔法を掛けられているからだと思うよ。オーロラ姫は生まれた時十二人の魔法使いから祝福を受けてる。それに姫が掛けられている百年眠り続ける呪いだって言ってしまえば魔法の力には違いないんだ」
ティンカーベル「やっぱ集めてるのは魔法具だけじゃないって事なんだね」
ルンペン「和尚の話だとそいつらは一部らしいけどよぉ、牢は広い。他にも捕まってる奴は居たぜ」
キモオタ「なるほど、先ほど人質として捕まっている者もいたと言っておりましたな、誰が捕まっているか解りますかな?」
ルンペン「名前は知らねぇが白いネズミの娘がしきりに泣いてたな、父親がアリスに捕まって利用されてるってな。婿探しの為に世界中を駆け回るような娘煩悩の父親らしいぜ。あとは…ああ、チルチルって小僧だ」
キモオタ「ほう、チルチル殿でござるか。詳しく聞かせていただきたいwww」
ルンペン「なんでも妹のミチルって娘がアリスの代わりをさせられてるとか言ってたな。小僧はミチルを従わせる為の人質ってわけらしい」
ティンカーベル「キモオタ、聞いた?チルチルだって…ミチルの事も知ってるなら、あいつのいってる事本当かも…」ヒソヒソ
キモオタ「デマカセにしては既に我々が得た情報と合致する部分が多いでござるし、とりあえず信用してもよさそうですな」ヒソヒソ
ルンペン「あとは…事情を知ってる奴だな。アリスが悪さして回ってるって知って解決する為に【不思議の国のアリス】の世界に乗り込んで捕まってる奴、そう言う奴もいたぜ」
キモオタ「やはり、そう言う者もいるのでござるな…我々はアリス殿が様々な魔法具を持っているのを知っている故、軽々しく乗り込む事を控えていたでござるが……」
孫悟空「まぁ悪事を働いてる奴が居ると知っちまったら、じっと機会を待つなんてできねぇ奴もいるだろうぜ。俺もどっちかってぇとそういう性分かもしれねぇ」
ルンペン「警備も万全で兵力も馬鹿みてぇにあるってのに正義感でそんな事するなんざ無意味だと思うがなぁ?」
ルンペン「他人の為に身を危険にさらすなんざ馬鹿げた事だよなぁ。あのブーツを履いた猫の剣士もしっぺい太郎とか呼ばれていた犬だか狼だかもよぉ、その犬の話は俺様も聞いた事あったぜ。確かなぁ…」
ヘンゼル「……その話はしなくていい」
ルンペン「あぁ?なんだテメェ、俺様がそこのデブに親切に教えてやってるってのによぉ!」
司書「【しっぺい太郎】は人身御供の被害を受けた人々の話、私の父さんも同じだから…ヘンゼルは私の事気にしていってくれたんだよね?でも、大丈夫。私は気にしないから」ニコッ
ヘンゼル「……」
ティンカーベル「ねぇ、でもさ…これだけたくさんの人が捕まってるって事はだよ?その人たちが居たおとぎ話の世界ってやっぱり……」
孫悟空「まぁ、消えちまってると考えるのが自然だろうな」
ルンペン「だがよぉ、どうやらアリスの目的ってのはおとぎ話の消滅だけじゃねぇんだなぁ。こいつも和尚に聞いた話だから確実だぜぇ?」
キモオタ「…なんですと!?そんなことまで知っているとは…!」
ルンペン「やっぱりテメェはあいつの真の目的は知らないって事か。そんならこいつはとっておきの情報になっちまうからな、別料金ってやつだぜ。俺が仕入れたあいつの目的を知りたけりゃあ…今すぐ俺を解放しろっ!」
キモオタ「ぐぬぬ…参りましたな。ルンペン殿の話は信憑性ありそうでござるし、ぜひ聞いておきたいでござるが……」
ティンカーベル「足元見てきたよこいつ!教えてくれたっていいのに!」
孫悟空「おい、キモオタ。そればっかりは流石に見過ごせねぇぞ、諦めろ」
ルンペン「いいのかぁ?ここで俺様を逃がしてでも聞いておかないと次のチャンスはいつになるかわからねぇぜ?」クックック
???「現実世界の消滅。それがボクの目的だよ」
キモオタ「…っ!?この声は…っ!?」バッ
アリス「随分と大げさに驚くねキミは。久しぶりだねキモオタ、この世界でキミに会う事になるとは思ってなかったよ」クスクス
キモオタ「どうしてアリス殿が現実世界に…!魔法具を集めアラビアンナイトの結界を破る事がお主の目的だったはずでござる!現実世界に来る意味など……まさかもう結界を破ったでござるか!?」
アリス「物知りだね。残念だけどまだだ、思ったよりシェヘラザード達が作り出した結界は強固だ。一筋縄じゃいかない」
ティンカーベル「じゃあなんで現実世界に来たのさ!」
アリス「ボクだってこんな世界に来たくなかったけどね、ハートの女王の牢屋から逃げだした奴が居たから調査させてたら…驚く事にこの現実世界にまで逃げて来てるって言うじゃないか」
アリス「そこで偵察を送ったら現実世界に意外な人物までいる事がわかってね、それに……」チラッ
ヘンゼル「……?」
アリス「僕に似た思想の人間もいるという情報まで入った。だからボクが直接赴いたってわけさ。うちの偵察役は優秀でね、単なる平和の象徴なんかじゃないってわけさ」クスクス
ティンカーベル「ファミチキ…!あいつがこっそり私達の事スパイしてたってこと!?ホントにあの鳥趣味悪いよね!大嫌いだよ私!」
青い鳥「聞こえてるよ。僕もお前は大嫌いだ、この世界に来て『ファミチキ』の意味がわかったしね…本当に失礼な奴だよ君は、僕は平和の象徴でも食料でも無いんだ」パタパタ
ティンカーベル「黙れバーカ!揚げられろ!バーカ!」
キモオタ「それよりもお主、先ほど言いましたな…現実世界の消滅が目的だと。それは本当なのでござるか?何のためにそんな事を!」
アリス「事実だよ、理由は言えないけどね。こんなことでまたルンペンシュティルツヒェンを逃がされても困るし…それにキミ達なら言わなくてももうそろそろたどり着けると思っていたから、ボクが教えてやった方が手っ取り早いと思ってね」
ティンカーベル「それって、私達があんたの本当の目的を知ってもどうにもできないって思ってるって事でしょ!」
アリス「フフッ、言わないであげたのに自分でいってしまうんだね?その通りだ、今になってはもう知られてもさほど困らないからね」
アリス「でも残念だけど現実世界に来たのはキミ達とお話しする為じゃないんだ」
アリス「どうやらこの場には、ボクが会いたかったおとぎ話の住人が何人かいるみたいだから。ぜひ挨拶をしておきたい、今後の為にもね」
アリス「それにしても不思議な光景だよ。現実世界だと言うのに一か所に七つものおとぎ話の登場人物が揃っているんだから」クスクス
キモオタ「気を付けるでござるよ!アリス殿は数々のおとぎ話を消滅させ、数え切れないほどの魔法具を奪っている張本人でござる!」バッ
アリス「随分な紹介だね?ボクは【不思議の国のアリス】の主人公、アリスだ。キモオタが紹介したように、様々なおとぎ話を消して周っている。今後ともよろしくお願いするよ」
スッ
孫悟空「なにがよろしくだテメェ…よくもぬけぬけと俺の目の前に現れたもんだな…!」
アリス「驚いた。結構離れた場所に居たのに、一瞬で距離を詰めてくるなんて…流石はおとぎ話界最強の孫悟空だ。あぁそうそう、お師匠様はお元気かい?お会いした事は無いけど、あれだけトランプ兵を送り込んだんだからただじゃあ済まなかっただろうね」クスクス
孫悟空「やっぱりテメェの仕業だったってか…!覚悟しやがれテメェ…!」ググッ
アリス「しないよ。戦う気は無いんだ、今日はね。キミがどれだけ素早くても、どんなに強くても……ボクには触れられない」
孫悟空「俺も随分と舐められたもんだなぁ!そっちがそのつもりだってならガキだろうが容赦しねぇぞ!あの小娘を叩きのめせっ!伸びろ…如意棒ッッ!!」ビュバッ
スカッ
キモオタ「アリス殿の姿が……!」
孫悟空「っ!?消えやがっただと…!俺の目にも止まらぬ速さで移動できるやつなんかいるってのか…!?」
スッ
アリス「フフッ、始めましてラプンツェル。キミには一度会いに行ったんだけど会えなくてね……それにしても見惚れてしまうほど長くて美しい髪だね」サワッ
孫悟空「あいつ…っ!俺なんざ相手にしてねぇってのか……!」
アリス「クスクス、そうだよ孫悟空。例えキミが最強だとしても戦いさえしなければボクはキミには負けない、まぁ戦ったとしても簡単には負けないと思うけどね?」クスクス
アリス「どちらにしろボクは今、彼女と話をしてるんだ。キミの相手はまた後でしてあげるよ孫悟空」
孫悟空「テメェ…!それで俺がはいそうですかって諦めるとでも思ってんのか!構わねぇ、何度でもやってやるぜ!行くぜ如意棒ッ!」ビュババッ
アリス「まったく…ボクは今女の子同士の会話を楽しもうとしてるのに…何百年も生きてると言うのに無粋な男だ」
スッ
孫悟空「あいつまた別の間所に移動しやがった…っ!どういう事だ、移動してる姿をみる事すらできねぇ…」ギリッ
アリス「だから言ったじゃないか、ボクはキミとは戦わない。しつこい男にはなにも捕まえられないよ?敵の姿も、女性の心もね」クスクス
ラプンツェル「……私聞いたよ?アリスって女の子は、ママに酷いことしたって」
アリス「ああ、そう言えばそんなこともあったね。ゴーテルは随分と老体だろうにキミを護るために懸命に応戦していたよ、結局ボクのコショウで憎しみを植え付けられてしまったけどねフフフッ」
ラプンツェル「笑わないでっ!私はもう気にしてないけどママはずっと気にしてるんだよ!?あれは魔法具のせいだけど…私の事を娘じゃないって怒鳴った事、今でも謝ってくるもん!」
アリス「へぇ、でもそれはキミ達親子の問題だ。ボクは関係ないだろう?」
ラプンツェル「関係あるよ!アリスがママに魔法具使わなきゃあんなことにならなかったんだよ!」
ラプンツェル「私はママも王子もパパも王子ママも大好きだし、友達の事もみんな大好きだよ!だからみんながニコニコして居られない様な事するアリスは…嫌い!」キッ
アリス「随分と嫌われてるね。できればキミの事も捕えようと思ってたけどやめておこう、聞いた話だとキミは少しおバカなようだ。そういう奴は突拍子もない事をするから手に負えない」
ラプンツェル「悟空!私がアリスの事縛るよ!だからその間ににょいぼーでバーンってやっちゃえ!」
孫悟空「おう、任せやがれ!だがそいつの動き、読めねぇから気をつけやがれ!」ググッ
アリス「フフッ、その髪で僕を縛れれば孫悟空は何も言わなくても追撃してくれるだろうにね。それに気付かずに考えを大声で言うからキミはおバカなんだよ、ラプンツェル」フフッ
ラプンツェル「私の魔法の髪の毛っ!アリスは悪い子だよっ!だからグルグルに縛って動けないようにしちゃえ!」ファサッ
アリス「思ったより速いんだねその髪の毛。少し予想外だったよ、直接見られて良かった」
スッ
ラプンツェル「んもぉ!避けられちゃったっ!悟空ー!もう一回だよっ、今度こそアリスの事捕まえるからっ!」プンス
孫悟空「いや、待てラプ公……またあいつが移動する姿が見えなかった。あれじゃあまるで瞬間移動だ、魔法具の仕業かなにかしらねぇがその仕掛けが見敗れるまでは闇雲に動くのはやめだ、こっちが消耗しちまう」
ラプンツェル「ええっー?でも逃げちゃったりしたら困るよ!」
キモオタ「いや、大丈夫でござろう……無理に攻勢に出るよりも防御に備えるべきですぞ、ラプンツェル殿。あの者は何をするかわからんでござる」
アリス「見かけによらず知恵を使った戦いもできるんだね、キモオタも孫悟空も。さて、次は…キミ達だなお千代にヘンゼルとグレーテル」フフッ
司書「あなたが【不思議の国のアリス】のアリスさん…私の事、知ってるんですね?」
アリス「言っただろう、うちの優秀な偵察役が頑張ってくれたんだ。お父さんの事は大変だったね、それにしてもあんな事があったのに喋る事を封じず読み聞かせしてるんだって?」クスクス
グレーテル「やめて……お千代ちゃんに嫌な事言うの……私、許さないから……それ以上嫌なことしたらかまど、だからね……」
アリス「キミの言うかまどって言葉は確か焼き殺すって意味だったかな?聞いた通り大人しげなのに言動に躊躇が無いね、グレーテルは」
ヘンゼル「妹に近寄るな、それに僕達を巻き込まないでよ。あんたが何を企んでようと、それはあんたとキモオタお兄さん達の問題でしょ」
アリス「違う、これはおとぎ話の世界すべての問題。いや、この現実世界を含めたこの世に存在するすべての世界の問題だ。キミはもう巻き込まれてる」
ヘンゼル「勝手な事言わないでほしいな、僕は家族と幸せに暮らしたいだけだ。おかしな事に巻き込まれるなんてごめんだ」
アリス「キミも聞いた通りだね。でも青い鳥の得た情報によると冷静な君もこうすると、情熱的になるんじゃなかったかな?」クスクス
スッ
グレーテル「……っ!」ギュッ
ヘンゼル「グレーテルに触るな!それ以上僕の妹に何かしたら…僕はお前を絶対に許さない」ゴゴゴゴゴ
アリス「それがキミの魔力ってやつか、確かに凄まじいね。でも安心しなよ、ボクはグレーテルにキャンディをプレゼントしようとしただけさ」グイッ
グレーテル「放して……っ!」ジタバタ
司書「グレーテルから離れて!アリスさんの持つそのキャンディ…【不思議の国のアリス】の世界のものだと言うなら…ただのキャンディじゃない!」
アリス「へぇ流石詳しいね、ボクの世界のキャンディは特別製だ。一粒食べれば必ず笑顔になれる、二粒食べれば陽気になれる魔法のキャンディだ。…さぁ、十粒まとめて食べさせたらグレーテルはどうなるかな?」クスクス
ヘンゼル「そんなこと試させないし試せない!人の姿のままでいたいならグレーテルから……離れろ!」ゴゴゴゴ
ドゴシャアッ
ヘンゼル「…っ!あいつ、この至近距離でなんで避けられるんだ…!」バキベキッ
スッ
アリス「キミは酷いお兄ちゃんだね。陽気になりすぎて完全に自我を失ってヘラヘラと笑うだけのグレーテルの姿…きっとかわいらしいだろうけど、そんなに見たいのかい?」クスクス
ヘンゼル「やめろ!やめてくれっ!なんでどいつもこいつも罪の無いグレーテル達ばかり狙うんだ!こいつがお前に何をしたって言うんだ!」
アリス「そうだな、彼女は悪くないしボクもキミにはあまり嫌われたく無い。だけど力の誇示っていうのは必要だと思うんだ、だから諦めてそこで見てると良いよ」
グレーテル「……助けて……!お兄ちゃん……!」
ヒュッ
ドンッ バラバラバラッ
アリス「……っ」
キモオタ「ゼェゼェ……特訓したとはいえ短距離の移動は慣れませんな。速度の調整、シンデレラ殿にコツを聞いてみますかな……」ゼェゼェ
ティンカーベル「……っ!キモオタ!」
アリス「……何をするんだキモオタ、キャンディがこぼれてしまったじゃないか」フゥ
キモオタ「ゼェゼェ……ドゥフwww不意打ち成功ですなwww」コポォ
孫悟空「どういうことだ!?俺にも今のキモオタの動きは見えた、俺の如意棒が避けられてあいつの突進が避けられない理由なんざねぇだろ…!」
アリス「やられたな、いくらキミがシンデレラのように素早く動けたとしても気がついてさえいれば避けられたのに。不意を付いて突き飛ばされちゃあ避けようが無い」
キモオタ「お主のその瞬間移動じみた動きのカラクリは解らんでござるが…少なくとも気が付いていない動きに対しては対応できないということですなwww」コポォ
アリス「そりゃあね、見えていればどんなものでも避けられるけど。どんくさいキミの事なんかマークしてなかった、これはボクのミスだね。キミはブラフしか能が無いと思っていたけど」
キモオタ「そのどんくさいキモオタにお主はしてやられたわけでござるよwww」コポォ
アリス「そうだね、ちょっと馬鹿にし過ぎていたよ。今のキミにはそんな事が出来る魔法具があるんだね、そうかそうか……シンデレラが履くガラスの靴の俊敏さ、ねぇ…。もしかしてその魔法具ってさ」
アリス「桃太郎の剣技とか……赤ずきんの射撃能力とか……そういうのがキミに身に付いたりするのかな?」
キモオタ「どうですかなwwwそれは見てのお楽しみという事でwww」コポォ
キモオタ(我輩の挑発など意に介さず冷静な分析、それも的を得ているとは…我輩の突進作戦が成功したのは完全に不意打ちだったからでござるな、ラッキーパンチもいいとこでござる。おそらく二度目はないでござろう)
孫悟空「って事はよぉ、予想できない攻撃には対応が遅れるってことだ。数の優位はこっちにあるんだ、キモオタ、ラプンツェル、三方向から攻めりゃあなんとかなるかもしれねぇ!
ラプンツェル「わかったよーっ!じゃあたしあっちからアリスの事捕まえるからねっ!」タッタッタ フンス
アリス「クスクス、困ったな…今のでボクを倒せると思っちゃったかな?流石に二度目はないよ、今度はキモオタも戦えるって解ったからね」クスクス
キモオタ「アリス殿からお褒めの言葉がwwwメルシーボークーwww恐縮のいたりwww」コポォ
アリス「でも言ったよ僕は、戦う気は無いってね。でも一方的な攻撃は、戦いにはカウントされないかな?」フフッ
孫悟空「ゴチャゴチャとうるせぇ奴だ!どうせ避けられちまうだろうが、だからって加減する理由にはならねぇからなぁ!」シュバッ
スッ
アリス「流石だね、早い早い。数多の妖怪共をねじ伏せたその技を間近で見られると思うと少し心躍るよ」クスクス
孫悟空「いつまでも余裕持ってられると思うんじゃねぇぞ!今の俺には動きを制限するもんなんかなにもねぇ!人質も無ぇしお師匠の経も無ぇ!全力でテメェをぶっ飛ばしてやらぁ!」ヒュッ
アリス「そんなにボクと戦いたいっていうならさ、相手になってあげるよ。さぁ、かかっておいでよ……孫悟空!」カチャッ
孫悟空「おう、望むところだ!こっちは端っからそのつもりなんだよぉ!」シュバッ
アリス「ああ、ありがとう。でも残念だけどもう終るよ、孫悟空」スッ
ヒュオオオォォォォォ
孫悟空「……な、なんだこりゃあっ!?俺の身体が、何かに引きずられやがる……っ!」
キモオタ「ご、悟空殿!?悟空殿が何かに吸い寄せられているでござる!」
孫悟空「クソッ…!踏ん張りが効かねぇ…!伸びやがれ如意棒ッ!伸びて伸びて…俺を支える柱になれッ!」ビューン
ギシギシッ…ベキベキベキ
孫悟空「駄目か…!どういうことだ…!如意棒がどれだけ重いと思ってやがる!その上天井と床にがっちり固定したってのに…競り負けてるだと!?」グヌヌ
アリス「キミがおとぎ話界最強だろうと如意棒がどれだけ重く強固だろうと、孫悟空はもう逃れられない。さっきキミはボクの『呼びかけに応じた』じゃないか」
孫悟空「呼びかけに応じた……だとっ!?テメェ、まさかあの魔法具を奪いやがったってのか!」ギリッ
アリス「その通り、でも今更気がついても遅いよ」
カランッ
アリス「この魔法具……発動条件を満たした『紅瓢(べにひさご)』からは何者も逃れられない、それがどんなに機敏な相手でも重く巨大な相手だとしてもね」
今日はここまでです もう今回の話も佳境です!
紅瓢(べにひさご)
【西遊記】に登場する魔法具
名前を呼びかけたり問いかけたりして、それに返事をした相手を吸引して溶かすという瓢箪の形をした魔法具。
発動条件さえ満たせば機敏さ重さ大きさなど無視して吸引できる為、初見殺し性能が非常に高い。
このssではこの漢字でいきます。
ヘンゼルとグレーテル。キジも鳴かずば編 次回に続きます
おとぎ話【西遊記】が消滅するずっと前……
西遊記の世界 五行山(悟空が封印されていた山)
孫悟空「ぐあああぁぁぁっ!なんだこりゃあ…!頭が割れそうに痛ぇ!ぐあああ、痛ぇぇぇ!!」ガシャーン
三蔵法師「まったく…呆れた者ですね。数々の悪行と狼藉を繰り返し、その結果としてお釈迦様に五百年もの間封じられ…そして私がその封を解くとこれ幸いと逃げ出そうとするなど……」
孫悟空「おいハゲェ!この忌々しい輪っかを外しやがれっ!この輪っか、テメェが珍妙な経を唱えると頭を締め付けやがる!」
三蔵法師「忌々しい輪っかではなく緊箍児(きんこじ)というあなたの成長を助ける道具です」
孫悟空「あぁ?成長だぁ?俺様にはもう敵なんざいねぇんだ!天界にも地上にも俺様に敵う奴なんざいやしねぇからよぉ!だからもう成長なんざ必要ねぇんだよ、いいから外せハゲ!」
三蔵法師「いいえ、あなたには内面の成長が必要です。先ほど伝えた通り、天竺への旅の共をしてもらいますよ。我が守護者として」
孫悟空「ゴチャゴチャ抜かしてねぇで外せって言ってんだよ!」グイッ
三蔵法師「…ナムナムナム…緊箍児よ、その未熟な暴れ猿の性根を正したまえ…ナムナム…」
孫悟空「ぬあああぁぁぁーっ!テ、テメェ…汚ねぇぞ!こんな輪っか無けりゃあテメェなんざ今頃塵ほどの跡形もなく消しちまってるのよぉ!」ガシャーン
三蔵法師「あなたが真面目に私の守護者として旅をするならば、私はむやみに緊箍児を締め付けたりしません」
孫悟空「……クソッ、この俺様を脅して従わせるなんざいい度胸じゃねぇか!それが僧のやる事か!」
三蔵法師「脅して従わせるなどそんなつもりはありません。しかし力を貸してほしいというのは嘘偽りない本音です…私は悪しき妖怪共に命を狙われている身、あなたの力が必要なのです」
孫悟空「……仕方ねぇ、五百年の封印から解き放ってくれた礼の代わりだ。テメェが妖怪に狙われるってならそいつら相手に人暴れできそうだ、しばらくその旅につきあってやらぁ!」
三蔵法師「助かります。あなたの力があれば、必ずや私達は天竺への旅を成功させる事が出来るでしょう。しかしですね、悟空よ…旅の前に言っておく事があります。ナムナムナム……」
孫悟空「アアァーッ!痛ぇ!なんでだ!?なんで協力するって誓ったのに輪っか締め付けるんだテメェー!」ドガシャーン
三蔵法師「二度と私をハゲなどと呼ばぬよう。私の事はお師匠と呼びなさい、わかりましたね?悟空」
・・・
三蔵法師「……というわけです。理解出来ましたか悟空?」
孫悟空「いやいや、待ちやがれ!確かにあんたの守護者になってやるってのは認めたがよぉ、この世界がおとぎ話のひとつだと?そんな突拍子もない話信じられるわけねぇだろハゲ!」
三蔵法師「…ハゲ?」スッ
孫悟空「わ、悪ぃ…お師匠。でもよぉ、さすがに信じられねぇよ。俺達が過ごしてる世界が現実世界の人間に作られた話だってのか?」
三蔵法師「信じられないでしょうが事実です。ですから酷い無茶をして物語を消してしまわないよう、あなたには物語の大まかな流れを説明したのです」
孫悟空「未だに飲み込み切れてねぇけどな。まぁむやみに殺しちまったり、魔法具とかいう不思議な道具を壊したりするなって事でいいんだろ?」
三蔵法師「そうです。特に注意すべきは魔法具の類ですね…不思議な力を持つ物は代用が利かないものが多いです、中でも金角銀角という妖怪が持つ紅瓢という魔法具は貴重な逸品でありながら危険な道具です。
呼びかけに応じただけで瓢箪に吸い込んでしまい、溶かして酒にしてしまうのです。その紅瓢の対処法ですが…」
孫悟空「おい、ちょっと待ってくれお師匠!対処方法なんざ言わねぇでくれ」
三蔵法師「? しかし、物語の細かい内容を知っていればそれだけこのおとぎ話が消えてしまう事を防ぐことが可能なのです、だから知っておくべきです。現にあなたは紅瓢に吸い込まれてしまうわけですし」
孫悟空「だから展開言うなって言ってんだろ!だいたいなぁ、どんな敵が待ち構えていてそいつがどれくれぇ強いとか、どんな不思議な武器を持ってるかなんて前もって聞いちまったらつまらねぇだろ?」
三蔵法師「悟空、これはつまるつまらないの問題ではありません。私達にはこの【西遊記】を滞りなく進め、天竺へとたどり着くという使命があるのです」
孫悟空「その辺はお師匠がうまい事やってくれんだろ?俺様は守護者だ、テメェに襲い来るもんは災厄だろうが妖怪だろうがまとめて叩きつぶしてやらぁ!どんな妖怪相手に大暴れできるのか今からワクワクしちまうぜぇ!」
三蔵法師「悟空……あなた、まさか戦いを望んでいるのではありませんね?暴れる事が出来て幸いだと考えているのでは……?」スッ
孫悟空「な、なわきゃねぇだろうが!俺様は純粋に守護者としてだなぁ……おい!経を唱える準備するのはやめろ!」
孫悟空「……まぁ良いでしょう。異変が起きさえしなければ、我々は天竺へ向かう事が出来ます。戦いに関してはあなたに任せますが、くれぐれもやりすぎる事の無いように」
・・・
現代
現実世界 廃墟
ヒュオオォォォォォ
孫悟空「ぐっ…話には聞いちゃいたが、流石は仙人が作った魔法具だぜ。これ以上持ちこたえるのは難しいみてぇだ」ヒュオォォ
孫悟空(あの時、お師匠に紅瓢の対策聞いてりゃあ良かったか…なんて言っても始まらねぇか。さて考えろ孫悟空、どうやってこの窮地を切り抜ける…!)
孫悟空(お師匠が言うには俺たち一行は【西遊記】の結末で天竺にたどり着く事が出来る。って事はその道中で紅瓢を持った妖怪に一行は襲われてるはずだ!)
孫悟空(なら俺はその時、紅瓢の対抗策を考えついてるって事になる。それなら今思いつかない道理がねぇ、考えろ…どうやってあの強力な魔法具を攻略すりゃあいいか…)ヒュオオォォ
ラプンツェル「悟空っ!私の髪の毛に捕まって!頑張って引っ張るからっ!」バッ
孫悟空「よせっ!ラプ公!俺の如意棒ですら紅瓢には対抗できねぇんだ、下手に手を出せばテメェも巻き込まれて吸い込まれちまうかもしれねぇ!」ヒュオオォォ
ティンカーベル「でもっ!このままじゃ悟空吸い込まれちゃうよ!?アリスに捕まっちゃうよ!」
孫悟空「心配いらねぇよ。それに吸い込まれちまうってのも一つの手だな、一度吸い込まれれば吸引は収まる。それから脱出すりゃあ丸く収まるってわけだ」ヒュオオォォ
アリス「へぇ、敢えて吸い込まれるって事は紅瓢の中から逃げられる算段があるって事かな?」クスクス
孫悟空「こちとら伊達に妖怪共との戦いに明け暮れてるわけじゃねぇんだよアリス!だがこの方法は俺一人じゃあ無理なんでな、つぅわけでよぉテメェに頼るぜ司書」ググッ
司書「私…ですか?あの、私戦いの経験もないし魔法も使えないから悟空さんの力には…」
孫悟空「テメェの腕力になんざ期待してねぇよ、だがよぉ【西遊記】の内容を知るテメェなら紅瓢に吸い込まれた俺がどんな思考するか、わかるんじゃねぇのか?」
司書「それなら…わかりますっ!私は司書ですから、知らないおとぎ話はありません。もちろん【西遊記】の内容も全て覚えています、だからわかります。悟空さんの考えっ!」
孫悟空「そりゃあ頼もしいこったな、悪ぃが頼むぜ?脱出さえ出来りゃあ後は俺の独壇場だ、如意棒片手に大暴れしてやるぜ!楽しみにしてな、アリス!」ニッ
アリス「…フフッ、随分な自信だね。孫悟空」
孫悟空「つーわけだ!後は任せるぜ、司書!キモオタ!」バッ
ヒュウウウウウ スポン
アリス「随分手間取ってしまったな…しかし流石は孫悟空だ、如意棒を持っているとはいえあそこまで持ちこたえるとは驚いたよ。紅瓢は魔法具の中でも能力の高い部類なのにね」クスクス
ティンカーベル「あんな不意打ちみたいな魔法具使うなんて性格の悪さが良く出てるよねっ!ホントにズルイ奴!」プンスカ
アリス「ズルイなんて酷い言い草だね。紅瓢は確かに強力だけど返事さえしなければただの瓢箪だ、敵の呼びかけに不用意に返事を返す方が間抜けなのさ」
キモオタ「強力な魔法具ではあるものの、発動条件がある以上ネタが割れてしまえば吸い込まれる前の対策自体は簡単でござるしな…」
アリス「だけどこうして悟空は紅瓢に吸引された。あとは酒になるのを待つだけ…一度敢えて吸い込まれるって言うのは対策としては理にかなっているけど、脱出できなければ意味が無い」
司書「出来ますよ、悟空さんは紅瓢から脱出できます…いいえ、私達が必ず悟空さんを救いだします」
アリス「クスクス…いいや、出来ないよ。キミ達が紅瓢から悟空を救いだそうとしてると知って、ボクがわざわざキミ達の相手をすると思ってるの?」クスクス
アリス「悟空と直接対決していればいろいろと面倒な事になっていただろうしね、労せず邪魔者が捕えられたなら結果としては上々だ。あとはルンペンシュティルツヒェンを連れて帰るだけだ」
ルンペン「チッ…こいつらうまい事丸め込んでやろうと思ったってのにとんだ邪魔が入りやがった……」
ティンカーベル「あっ!アリス逃げるつもりなの!?」ブーブー
アリス「逃げるも何も、用事を済ませたから帰るだけさ。それに意味の無い勝負はしたくないんだ。さぁボクについて来てもらうよ、ルンペンシュティルツヒェン」スッ
キモオタ「おおっとwwwさせませんぞwww悟空殿を連れ帰られるわけにはいかないのでwwwこの者を連れて帰りたければ我々を倒す事ですぞwww」ガシッ
ルンペン「テメェ…この俺様をアリスを引きとめる為のダシに使いやがったな!?」
アリス「へぇ、そうくるんだ。別にボク個人としてはルンペンシュティルツヒェンはどうでもいいんだけど…近頃がめつい魔女を引き入れたから、黄金を生成できるそいつは取り返しておかないと後が面倒だ」フゥ
キモオタ「ほうwww悪事を繰り返すお主にも味方をしてくれる魔女が居たとは驚きですなwww」コポォ
アリス「金で雇ってるだけの魔女さ。【シンデレラ】の魔法使いやゴーテルのように善意で味方をしてくれてるわけじゃない、ビジネスの関係だよ。まぁ、そんな事はどうだっていい」
アリス「ボクに立ち向かうつもりなら早くおいで、相手をしてあげるよ。あまりこの世界には長居したくないから手短に済ませよう」スッ
キモオタ「ふぅ…なんとかアリス殿を引きとめることには成功しましたな…」
ティンカーベル「でもどうする?司書さんには悟空を助ける考えがあるんだよね?」
司書「助けると言うより悟空さんの脱出を手助けするだけですけどね。やること自体は簡単な事だけど、アリスさん警戒してるだろうから成功させるのは難しいかも…」
ラプンツェル「むむむ…それにあの紅瓢とかいうまほーぐ恐いよね!だって、名前呼ばれて返事しちゃったら吸い込まれちゃうんだよ?みんな気をつけようねっ!」
ヘンゼル「…アリスはもう紅瓢を使うつもり無いと思うけどね」
ラプンツェル「えーっ?なんで?あんなに強いまほーぐだったらアリスはいっぱい使った方がいいんじゃないのかな?」
ヘンゼル「使えない理由があるんだよ。使えるならもう僕達に使ってるはずだよ?気をつけようとか言いながらうっかり返事しちゃいそうな奴も一人いる事だしね、ラプンツェル」
ラプンツェル「あははっ、そんなうっかりさん居ないよー」ニコニコ
キモオタ「ラプンツェル殿wwwそれ怒るところですぞwwwしかし、アリス殿が魔法具を使えない理由とは?」
司書「えっとですね、紅瓢は瓢箪型の魔法具で…栓がありますよね?例え呼びかけに返事をしても栓が開いてなければ吸引されないんです。だけど今のアリスさんは栓を開ける事が出来ないんです」
キモオタ「栓を開ける事ができない?なにか不都合な事があるのですかな?」
グレーテル「【西遊記】のおとぎ話でも……悟空さんは紅瓢の中に吸い込まれちゃうの……でも、ちゃんと出られたよ……」
司書「紅瓢は吸引した相手を溶かしてお酒にする魔法具です。だから吸引された悟空さんは自分の髪の毛で作った身代りを溶かさせて、自分自身は小さな虫に化けたんです」
司書「そして紅瓢を持つ金角銀角が瓢箪の中の様子を覗こうとして栓を開けた隙に、紅瓢の中から抜け出したんです」
司書「きっと悟空さんはその時と同じ方法で紅瓢から抜け出すつもりです。だから私達がすべき事は、紅瓢の栓を抜くこと…!」
キモオタ「なるほど、アリス殿もその事を知っているからこそ紅瓢を使わないのですな。いや、使えないと言う方が正しいでござるか」
司書「でもアリスさんだって紅瓢を狙われる事はわかってるから、きっと紅瓢を護ります。それを掻い潜って栓を抜くのは…」
グレーテル「きっと難しいね……でも悟空さんあいつに利用されてただけで……ホントは良い人、だから助けるよ……私、頑張る……」
ラプンツェル「私もやるよっ!難しくってもやることが決まってるんだったら、あとは頑張ってそれをすればいいだけだもんねっ!きっとできるよ!」フンス
ティンカーベル「ふふんっ!こういうのは隙を付いたり素早い動きするのがが重要だからね!そーいうのは私一番得意だから!よーし、活躍するよ!」
ヘンゼル「僕も手伝おう。アリスはグレーテルに手を出したんだ、悟空を捕えてあいつを連れ帰って…なんでもあいつの思い通りに事が進むのは良い気がしないからね」スッ
アリス「フフッ、ボクが直接戦うなんて久しぶりだ。さぁボクの可愛いフラミンゴにハリネズミ達、大きくなって一緒にあいつ等を始末しよう」スッ
フラミンゴ「クエクエッ」モシャモシャ
ハリネズミ「フシュフシュ」モグモグ
ムクムクムク
ラプンツェル「すごい…!キノコ食べたら大きくなったよっ!でもアリスはあれどーするつもりなのかな?あれで戦うのかな?」
キモオタ「ラプンツェル殿、油断してはいけませんぞ。あのフラミンゴを槌代わりにしてハリネズミを打ち出してきますぞ!」
司書「槌代わりのフラミンゴ、ハリネズミの球に食べると大きくなるキノコ…アリスさんは【不思議の国のアリス】での不思議な出来事の数々を武器にしてるってことですね?キモオタさん」
キモオタ「そうですな、他にトランプの兵士を使役してきますぞ!所有している魔法具については数が多すぎる故、割愛しますぞ!」スッ
司書「アリスさんは【不思議の国のアリス】での不思議を武器にしてる。そうだとしたら……悟空さんでも軌道が読めないアリスさんの素早い動きの正体って……」
アリス「そうか、キミはおとぎ話に詳しいんだったね。現実世界での生活が長いなら、おとぎ話の世界では知る事が出来ない事も知っているだろうね」
アリス「余計な事を吹き込まれても面倒だ。まずはキミに味わってもらおうかな、女王陛下式のクロッケーを」スッ
バッ
ヘンゼル「まずお千代を狙うと思ったよ、この中で争いに向いていないのは間違いなくお千代だ」バッ
アリス「へぇ、素早い対応だね。キミが相手になるならそれでもボクは構わないよ、キミの魔力を間近で見ておきたい」
ヘンゼル「キミがグレーテルを酷い目に会わせようとした事、忘れてるとでも思ってる?」ゴゴゴ
司書「ヘンゼル!また無茶して自分を傷付けるような魔法の使い方するの駄目だよ、私もグレーテルもそんな事になるのはもう嫌なんだから!」
ヘンゼル「無理な相談だね、あいつの相手をするには多少の無茶が必要そうだよ。それでも…僕が無傷だとしてもグレーテルやお千代が傷ついたら何にもならない」
スッ
キモオタ「ヘンゼル殿wwwその意気は素晴らしいでござるがwwwお主の強力な魔力を小出しにするのは勿体無いですぞwwwここは我輩にお任せあれwww」フリフリフリ
おはなしサイリウム「コード認識完了『赤鬼』 武器モード『金棒』への形状変化を実行」
アリス「その珍妙なダンスにも意味があるなら…魔法具の残光を利用して魔法を使い分けているのかな?」
キモオタ「ドゥフフwww御名答wwwお主が女王陛下式というのならばこちらは鬼の流儀でクロッケーの相手をするとしますぞwww」ズンッ
ルンペン「なんだあのブタの魔法具…!光る棒切れが金棒に変化しやがっただと!?」
アリス「それはさっきキミにシンデレラの素早さを与えた魔法具だね?キミの仲間の特徴を手に入れる魔法具、時にはその形状の変化も駆使するのか…それは赤鬼の力だね?」
キモオタ「質問攻めですなwww情報集めに余念がないのは結構でござるがwww我輩たちを始末するつもりならばその情報収集は無駄になるのではないですかなwww」
バッ
アリス「情報は魔法具以上の力を持つことだってある。それにキミ達をここで始末できても出来なくても収集した情報が無駄になるなんて事は無いよ」ビュオッ
ハリネズミ「フルシュシュー!」バシュッ
キモオタ「そうでござるかwwwならば赤鬼殿の金棒捌きを得たこのキモオタの実力wwwその目に焼き付けると良いですぞwww」ブオン
キモオタ「罪の無い動物を痛めつけるのは避けたいでござるが、避けては司書殿やヘンゼル殿が大怪我をしてしまう故…勘弁願いたいッ!」ゴンッ
ハリネズミ「シュシュルー」コロコロ
アリス「へぇ、撃ち返したハリネズミは無傷か。金棒のトゲの無い部分にうまく当てるなんて…ただの形状変化じゃないってことだね」
キモオタ「当然でござろうwwwでなければシティ派の我輩がこのような重厚な武器を振り回すなどできませんからなwww」コポォ
アリス「それもそうだね。でもボクのハリネズミは一匹じゃないからね。ボクの攻撃がこれで終わりだなんて思ってないよね?…っと、危ない危ない」バッ
ヒョイ
ティンカーベル「ぐぬぬっ!こっそり近づいたのに見つかった…!」フワフワ
アリス「キモオタがボクの注意を引きつけている間にティンカーベルが紅瓢を狙う。そういう連携はキミ達得意じゃないか、お見通しだよ」クスクス
ティンカーベル「ふんだっ!失敗しちゃったけど次があるもん、キモオタの方も私の方も両方ともずーっと注意して警戒するなんてできないでしょ!」
アリス「それはキミも同じだろう?ほらほら、餌にされてしまうよ?」クスクス
ビュバッ ガシッ
青い鳥「前にも同じような事があったっけ、でも今度は羽をむしらせたりしないからな。クソ妖精」バサバサ
ティンカーベル「…ファミチキ!ずっと黙ってたくせに…!急に出てきたな!離せ離せー!」ジタバタ
青い鳥「もう同じ失敗はしないからね、今度は掴まえたまま叩き殺す!」ビュオッ
ティンカーベル「だから…離せって言ってるでしょバーカ!」バチーン
青い鳥「うぐっ…顔面に小さな鉛玉が…!なんだこいつ、ピストルでも持ってたのか?」ヨロヨロ
ティンカーベル「私はキモオタみたいに優しくないから教えないよバーカ!私はもうジャムを投げるだけの妖精じゃないんだからねっ!」プンス
キモオタ「ティンカーベル殿!そっち任せて大丈夫でござるか!」
ティンカーベル「平気平気!この戦い終わったらファミチキ食べられると思ってても良いくらいだよっ!でもそっちはお願いー!」ピューッ
アリス「やれやれ、彼は偵察は得意だけど戦いはそうでも無いからな…さっさとフォローしてやらないといけないな」スッ
ヒュオ
アリス「それに引き換えティンカーベルは随分と頼もしい仲間だね、キモオタ」スッ
ビュオッ バチーン
キモオタ「おぶっ」ドシャー
司書「キモオタさん!」
キモオタ「フラミンゴで殴られるなど後にも先にも我輩くらいのもんでござろうこれ…しかし、またあの瞬間移動ですかな!?いつの間に我輩の目の前に…などといってる間にまた消えt」
ヘンゼル「どこを見てるんだ…!アリスはあんたの後ろだ!」
ビュオッ バチーン
キモオタ「うぐっ…我輩がいかにどんくさかろうと流石に目の前のアリス殿が動けば気がつけるはずでござるのに…新手の魔法具でござるかな!?」
司書「キモオタさん、気を付けてください!予想ですけど…アリスさんのその瞬間移動は……!」
アリス「…やっぱり気がついたね」スッ
ヒュオ
司書「……っ!」
ヘンゼル「性懲りもなくお千代を狙いに来たってわけか…!」バッ
アリス「知られても問題は無いけどね、ただ知られずに済むのならその方が良い」スッ
ラプンツェル「さっせないよーっ!ヘンゼルも司書も逃げて逃げてーっ!」バッ
アリス「ああ、そう言えばキミも居たね」
ラプンツェル「重たい物髪の毛に結んで振り回したら強いよって悟空が教えてくれたからね!それっ!」ビュオッ
シュルルッ
ヘンゼル「なにやってるんだ、柱に髪の毛なんか撒きつけて…あいつ、まさか……!逃げようお千代!ここにいたらあいつの馬鹿な戦略に巻き込まれる!」
ラプンツェル「いっくよーっ!せーのっ!」グイッ
ベキベキッ ミシミシミシッ
アリス「クスクス、やっぱりそうだ。おバカなキミはそういう事を躊躇なく実行に移す。柱をひっこ抜いて投げ飛ばすなんて考えついても普通はやらないよ」クスクス
ラプンツェル「えへへー、私を褒めても柱しかあげないよー?」ブンッ
ドゴシャアアァァァ
キモオタ「ちょ…ラプンツェル殿!そんな事して二階が抜け落ちてきたらどうするつもりですかな!?」
ラプンツェル「あっ、そっか!考えてなかったよー、みんなー?怪我してない?」キョロキョロ
司書「はい、なんとか…でも驚きすぎてちょっと動けそうにないです…」
ティンカーベル「も、もーっ!そういうことするなら先に言ってよね!」プンス
ヘンゼル「…もう少し考えて動いてよ。あんたのせいでこっちが全滅するじゃないか」ハァ
ザザッ
アリス「フフッ、まったくだね。広範囲に攻撃するっていうのは良かったけどあんな掛け声あげたらバレバレだよ、それにどんな攻撃をしたところでボクはキミの目の前に一瞬で移動する事が出来るって忘れたの?」
キモオタ「ラプンツェル殿!アリス殿は距離を詰めるつもりでござる!気を付けるのですぞ!」
スッ
アリス「遅いよ。キミの髪の毛は長過ぎて、近くにいる相手には逆に効果が薄いだろう?フラミンゴでの一撃、キミに耐えられるかな?」グッ
ラプンツェル「よーしっ!思った通りだねっグレーテル!」ニコッ
クルリッ
アリス「……っ!」
キモオタ「なんですと!?ラプンツェル殿の背中にグレーテル殿が結び付けられてるでござる!いつの間に…!」
ラプンツェル「へへーんっ!避けられちゃって私の近くに来る事なんてグレーテルが予想済みだよ!ヘンゼルっ!ちょーっとお願いっ!」
ヘンゼル「はっ…?ちょっと、なんで僕を髪の毛で縛り上げて…うわっ!」ビュオッ
グレーテル「だからなんで言っちゃうの……でもアリス……捕まえた、もう放さないよ……」ギュッ
アリス「髪の毛でグレーテルを背中に結びつけていたってわけか…でも所詮は魔力も腕力もない子供だ、これくらい振り払えばいい」グッ
ラプンツェル「させないよっ!ヘンゼル!二人が一緒なら魔法、つかえるんだよねっ!」ヒュッ
ヘンゼル「距離を詰めさせて魔法で仕留めるって……グレーテルが一番危険じゃないかこの作戦…!話は後だ、今はそいつに魔法を思い切りぶつけてやろうグレーテル!」
パシッ
グレーテル「お兄ちゃんありがと……熱い熱いかまど、アリスを……燃やしちゃえ……!」ブンッ
ボボッ
アリス「……っ!」ザザッ
メラメラメラメラーッ!!ボボボウッ
メラメラメラーッ
ヘンゼル「またこんな無茶して、気分は悪くない?平気だよねグレーテル?」
グレーテル「うん……大丈夫、でもうまくいって良かったね……ラプお姉ちゃん……」ニコッ
ラプンツェル「うんっ!アリス見当たらないから、別の場所に瞬間移動したわけでもなさそうだしねっ!」キョロキョロ
キモオタ「ちょ、お主等ー!流石にやり過ぎですぞ!それに我々の目的は紅瓢の栓を抜く事でござるよ、早くアリス殿を炎の中から助けださねば…!」
ラプンツェル「確かにちょっとやりすぎちゃったかも……ママに酷いことしたからってやり過ぎは駄目だよね。助けてから怪我ややけど治してあげないと!じゃあ私の髪の毛でちょちょっと助けちゃおう」スッ
ザッ
司書「……ラプンツェルさん!」
ブスリッ
ラプンツェル「あっ…あれ…?おかしいな…気がつかない間に…お腹に、剣……刺さっ」ドサッ
アリス「助けなんかいらないよラプンツェル。確かにやり過ぎに思えるけどこれで貸し借りは無しにしてあげよう」ジャキッ
司書「アリスさんが持っている剣…北斗七星の意匠…七星剣!早くラプンツェルさんの所へ急ぎましょう!キモオタさん!」
キモオタ「もちろんですぞ!ラプンツェル殿…!恐れていた事が起きてしまったでござる…!」
ティンカーベル「ラプンツェル…!ちょ、私に構わないでよファミチキ!ラプンツェルの所行くんだから!!」バッ
グレーテル「……ラプお姉ちゃん……!」
ヘンゼル「なんで平気なんだ…これほどの炎に焼かれたっていうのに!」バッ
アリス「簡単な事だよヘンゼル。ボクは炎熱を無効化する魔法具を持っている、それだけの話さ」
ヘンゼル「炎熱を無効化する魔法具…!」
アリス「それくらい予想しないとどんな奇策を練っても奇襲を仕掛けてもかわされてしまうよ?さて、そこをどいてもらおうかグレーテル。ラプンツェルにとどめを刺したい」
グレーテル「……駄目、ラプお姉ちゃんは優しい大人……」ギュッ
アリス「大人に優しいも何もないよグレーテル、どかないのならキミもそのラプお姉ちゃんと一緒に逝くと良い」
バッ
ヘンゼル「僕は言ったよ、妹に手を出すとただじゃすまないって」ゴゴゴゴゴ
アリス「今更そんなただの魔力を打ち出して、ボクに当てる事が出来ると思う?…と、さらに邪魔が入りそうだね、そのシンデレラの機敏さが身に付く魔法具は厄介だな」
シュバッ
キモオタ「ヘンゼル殿、グレーテル殿!我輩の後ろに、アリスは我輩に任せるですぞ!司書殿はラプンツェル殿を頼むでござる」ググッ
アリス「またその『赤鬼』か、金棒相手にボクがまともに戦うと思ってるの?キミが金棒を持つのなら、ボクは遠距離の攻撃を仕掛ける。逆も然りだ」
キモオタ「……ドゥフwww」
アリス「何がおかしい?仲間が刺されておかしくなったかな?」
キモオタ「いやはや、ラプンツェル殿に傷を負わせたのは我輩が至らぬせいでござるが…ラプンツェル殿もなかなかに強い精神力を持っていると思いましてな、流石はおとぎ話の主人公でござるよ」
アリス「まさか…っ!」バッ
カランッ
アリス「紅瓢の栓が抜かれている…!こいつ…動けないと思っていたのに、髪の毛を紅瓢に伸ばしていたなんて……っ」
ラプンツェル「えへへ……これで悟空……紅瓢から逃げられるんだよね……」ニコッ
ラプンツェル「ごめんね、キモオタ……桃太郎の所……連れて行って欲しいな、あとママには心配かけちゃうから内緒にして……ね……?」
キモオタ「もちろんですぞ!さぁ、急いで桃太郎殿の所へ…いや、これは桃太郎殿を及びたてした方がいいですな。司書殿、ラプンツェル殿を安全な場所へ…!」ダダッ
司書「キモオタさん、ラプンツェルさんは酷い怪我です…これはむやみに動かさない方がいいですよ!」
アリス「まったく、参ったな…【ラプンツェル】の世界で無理にでも捕えておくべきだったかな。いいや、ラプンツェルはおバカだから戦力にならないなんて身誤ったボクのミスだね」ハァ
ブーン
蜂「…アリス、俺はテメェを褒めてやるべきなのかもしれねぇな」
ボウンッ
孫悟空「テメェ程の奴が俺が紅瓢から脱出したのに気がつかねぇ訳ねぇ、だってのに逃げずに堂々としてるってのは中々胆が据わってるじゃねぇか」スタッ
ガシッ
アリス「あまり強く掴まないでほしいな…紅瓢の栓を抜かれた時点で、ボクの負けだ。今回はしてやられたから、労いくらいはしてやろうと思ってね」
孫悟空「そうかい、だがテメェには聞きたい事が出来ちまった…炎熱を防ぐ魔法具をどの世界から持ち出したか、とかなぁ!」シュッ
アリス「そんな事が気になるのかい?」クスクス
孫悟空「ふん縛ってからよくよく聞かせて貰うとするぜ。さぁ、観念しやがれ!捕まえちまったら瞬間移動なんざ関係ねぇからなぁ!」
アリス「フフッ、どうかな?今回は酷い醜態をさらしてしまったけど…得たものもあった、それを次に生かさないといけない」スッ
孫悟空「ああ?俺がしっかりと捕まえてんだぞ?まだ逃げられるとでも思ってんのかテメェ」
アリス「もちろん。言っただろ、ボクが逃げてないのはキミ達を労うためだって」
アリス「キミ達はボク相手に良く戦ったよ。まさか悟空を本当に助けだすとは思わなかった」
孫悟空「なん……だとっ!?」バッ
ヘンゼル「悟空がしっかり掴んでいたはずなのに…!また何か魔法具を使ったのか…!」
グレーテル「……わかんない……でも、無理矢理逃げたのは間違いないよ……洋服破けちゃってる……」
孫悟空「何をしたんだテメェ!流石に掴んでるテメェが逃げた事に俺が気がつかないわけねぇ!」
孫悟空「だってぇのにお前が俺の手の中から逃げだした事にまったく気がつかなかった!そんなことがあってたまるか!」
アリス「フフッ、まぁこれは今回善戦した君たちへのご褒美として教えてあげよう」
スッ
ガシッ
ルンペン「ぐお…っ!は、離しやがれテメェ!」
アリス「とは言ってもそこの司書はもう気が付いているみたいだから、彼女に聞いてもらおうかな」クスクス
孫悟空「待ちやがれ!テメェ、ちょこまかとしやがって…いい加減に観念しやがれ!」
スッ
アリス「いやいや、もう帰るよ。少し手の内をさらし過ぎてしまった。だけどその前に……」
スッ
アリス「ヘンゼル、キミに一言だけ」フフッ
ヘンゼル「何…?僕はあんたと話す事なんて…」
アリス「そう言わずに、聞いてもらうよ」
ソッ
アリス「……だ。……だから、ボクは……」ヒソヒソ
ヘンゼル「……っ!」
アリス「フフッ、それじゃあ。また会おうね、ヘンゼル」クスクス
ヘンゼル「……」ギュッ
グレーテル「……お兄ちゃん……?」
ダッ
孫悟空「うおおぉっ!喰らいやがれぇ!」ビュオッ
アリス「数を重ねれば当たるなんて物でもないだろう、キミも懲りないよね」
スッ
アリス「さて、キモオタもティンカーベル……キミ達がここまでするとは思わなかったから正直驚いているけど、聞いてもらうよ?青い鳥、彼女を解放してやれ。もうそろそろ帰ろう」
青い鳥「……」ペイッ
ティンカーベル「ぐぬぬ、なんのつもりなのさ!」
キモオタ「……アリス殿」
スッ
アリス「キミ達の成長はしっかりと見させてもらった。僕達の目的の脅威になるかもしれないと言う事も認める、けれどそれはキミ達を戦争の相手だと認めたという事だ」
アリス「ひとたび戦争が起きれば、傷付くのは戦っている者だけじゃない。キミ達はボクに脅威になると認められた事によって…」
アリス「手放すの無い物まで失う事になってしまう。形があるものも、無いものもね」
キモオタ「それは一体どういう事でござるか!?」
アリス「フフッ、手段を選ばないと言う事さ。戦争は綺麗事じゃあ覆えないから」
ティンカーベル「なにわけわかんないこといってるのさ!」
孫悟空「勝手なことばっかりいいやがって!待ちやがれテメェ!」バッ
スッ
アリス「フフッ、待たないよ。次に会えるのが少し楽しみだよ、また会おう。キモオタ、ティンカーベル」クスクス
アリス「さて、キモオタもティンカーベル……キミ達がここまでするとは思わなかったから正直驚いているけど、聞いてもらうよ?青い鳥、彼女を解放してやれ。もうそろそろ帰ろう」
青い鳥「……」ペイッ
ティンカーベル「ぐぬぬ、なんのつもりなのさ!」
キモオタ「……アリス殿」
スッ
アリス「キミ達の成長はしっかりと見させてもらった。僕達の目的の脅威になるかもしれないと言う事も認める、けれどそれはキミ達を戦争の相手だと認めたという事だ」
アリス「ひとたび戦争が起きれば、傷付くのは戦っている者だけじゃない。キミ達はボクに脅威になると認められた事によって…」
アリス「手放すの無い物まで失う事になってしまう。形があるものも、無いものもね」
キモオタ「それは一体どういう事でござるか!?」
アリス「フフッ、手段を選ばないと言う事さ。戦争は綺麗事じゃあ覆えないから」
ティンカーベル「なにわけわかんないこといってるのさ!」
孫悟空「勝手なことばっかりいいやがって!待ちやがれテメェ!」バッ
スッ
アリス「フフッ、待たないよ。次に会えるのが少し楽しみだよ、また会おう。キモオタ、ティンカーベル」クスクス
フッ
キモオタ「アリス殿…何やら意味深な言葉を残して消えてしまいましたな…」
ティンカーベル「どうする!?ルンペンなんとかを連れて帰るって事は【不思議の国のアリス】に移動したはずだよ!今だったら追いつけると思う!追いかけてやっつけようよ!」
キモオタ「いやいや、やめておくでござるよ。確かにアリス殿はその世界に居るでござろうけど、完全に向こうのホームでござるよ。まともな準備も無しに乗り込むのは危険ですぞ」
ティンカーベル「でも言ってたじゃん!私達の事を脅威として認めるって!それって今逃げたのは達に負けちゃいそうだったからってことでしょ?」
キモオタ「例えそうだとしても、万全な状態で挑んでも勝てるかどうかわからない相手でござる。下手に追撃しようとして返り討ちなんて笑えんでござるよ?」
ティンカーベル「むぅ…そっか、そうだよね、ラプンツェルの事も心配だし…」
キモオタ「焦りは禁物でござる。おはなしウォッチで桃太郎殿に来てもらってるでござるからラプンツェル殿は心配いらないでござるよ。どうやら司書殿やヘンゼルグレーテル兄妹も見てくれているようでござるし」チラッ
ティンカーベル「みんなが見てくれてるなら安心だね!でもアリスの事はなんとかやっつけたかったね。会うたびに新しい魔法具使ってくるから嫌になるよ…なんかさ、あっちばっかり強くなってる感じー」
キモオタ「向こうも力を付けているのは仕方ないでござる、それ以上に我々が強くなればいいだけでござるよ。まぁ気持ちを切り替えて次の機会に掛けるでござるwww」コポォ
孫悟空「畜生…ッ!すまねぇ、折角紅瓢から出られたってぇのにアリスを取り逃がすなんざ不甲斐ねぇ…!」バンッ
ティンカーベル「まー仕方ないよ、悟空は悪くないって。あのズルイ瞬間移動をどーやってるかわかんないとどうにもなんないかも」
キモオタ「悟空殿ですら目で追えない瞬間移動でござるからな…そう言えばアリス殿は言っておりましたな、司書殿がその秘密の答えを掴んだようだと」
孫悟空「そういやそんな事言ってたな、後で司書に聞いてみるとするか。あの瞬間移動は相当に厄介だが、カラクリさえ暴けりゃあなんとでもなるからよぉ」
ティンカーベル「そうそう!強気で行こうよ!どうやってるか解ればあんな奴……あれ?誰かいるよ…!」
ザッ
中華娘?「あーっ!悟空センパイ…!やーっと見つけたッスよ!」ニッコォ
キモオタ「ちょwwwこんなところにチャイナガールがwww悟空殿の事を知っているという事はあの者もしやwww」コポォ
孫悟空「おっ、玉龍!もしかしてテメェもこの廃墟に捕えられていたってのか?」
タッタッタッ
玉龍「そうなんスよ!あのチビのおっさんにおかしな魔法掛けられて…ずーっとこの地下の部屋に閉じ込められていたッス!でも突然魔法が解けて部屋から出られたって訳ッス!」ギューッ
孫悟空「どさくさに紛れて抱きつくな!まっ、なんにせよ無事でよかったけどよ。おう、オメェ等に紹介しねぇとな!こいつは俺と一緒にお師匠の旅の供をしていた奴でな、玉龍って名の…」
玉龍「自己紹介なんてどーだっていいッス!それよりウチずーっと狭い部屋に一人で寂しかったッス…」
玉龍「だから今夜は一晩中慰めて欲しいッスよ、セ・ン・パ・イ♪」チュッ
孫悟空「なに服はだけさせてんだ!お師匠が居ねぇからって好き放題しやがって…たまには大人しくしてやがれっ!」
ゴンッ
玉龍「痛っ…!なにするッスか!愛情表現なら拳よりも抱擁や口づけにして欲しいッス!まぁ玉龍ちゃん的には痛みを伴う愛情表現も…全然アリなんスけどね?」スリスリ
孫悟空「ナシに決まってんだろ黙ってろお前!…あぁ、すまねぇこいつは玉龍、こんなナリだがこれでも竜王の血を継ぐ龍の子だ。どんな奴かってのは今のやり取りで察しただろうが、要は変態で馬鹿だ」
玉龍「ちょ、センパーイ!直球すぎるッスよー!」タハー
ティンカーベル「へえーっ、龍だって!かっこいいね!あっ、私はティンカーベルっていうんだ、ティンクって呼んでね玉龍ちゃん!」ニコニコ
玉龍「了解ッス!いやー、妖精って初めて見たッスよー!妖怪は見慣れてるんスけどね、やっぱり妖精は可愛いッス。センパイ、玉龍ちゃんとティンクちゃんどっちが可愛いッスか?」チラッ
孫悟空「ああ、はいはい、わかったわかった。テメェの方が可愛らしいって事にしてやるよ玉龍」ハイハイ
玉龍「んもーっ!玉龍、愛してる。だなんて…!人前で恥ずかしいセンパイっすねー」テレテレ
孫悟空「うるせぇよ、そこまで言ってねぇ。……おい、ティンカーベル。気を悪くしねぇでくれ、こう言っておかねぇと怒りに身を任せた龍が大暴れするんでな」ヒソヒソ
ティンカーベル「あはは、それは大事件だねー。私は別に気にしないけどー」ヘラヘラ
キモオタ「ドゥフフwwwなかなかユニークな娘さんに懐かれているようですな、悟空殿はwww」コポォ
バッ
玉龍「!? 気がつかなかったッス…!猪八戒が何故この世界に居るッスか!?」バッ
キモオタ「ちょwwwまた猪八戒殿ネタwwwそのくだりもう二回やったでござるからwwwもう十分でござr」
シュバッ ジャキッ
キモオタ「ブヒィッ!?ぎょ、玉龍殿の爪が突然鋭くなっt」
玉龍「しらじらしいッスね、龍なんだから爪が鋭いのは当たり前ッス」スルッ
ティンカーベル「キモオタ!下手に動いちゃダメだよ、玉龍ちゃんの爪でスッパリいったら首が取れちゃう!」
キモオタ「ちょ、ちょ…っ!我輩、今日は命を狙われ過ぎですぞぉ!」
玉龍「ハハーン、読めたッスよ。お師匠様と沙悟浄をほったらかして自分だけ逃げてきたッスね?相変わらずとんだ豚野郎ッス」ギリッ
キモオタ「だ、だから我輩は猪八戒殿とは別人でござると言うのに…」
玉龍「言い逃れは見苦しいッスよ。さぁ白状するッス、ただし返答の内容次第じゃ玉龍ちゃんの爪がお前を煮て良し焼いて良しのぶつ切り豚肉に変えてしまうッスよ?」ジャキッ
キモオタ「ご、悟空殿ォ!なんとか言ってやっていただきたい!というかなんで黙ってるのでござるかwww」
孫悟空「あぁ、テメェならあの魔法具で何とかなるんじゃねぇかと思ってな。すげぇ魔法具だからなありゃあ、どんな事が出来るのか見てみてぇ気持ちもある」
キモオタ「魔法具見たさに我輩をいけにえに捧げるのはやめていただきたいwww普通に助けてwww」コポォ
孫悟空「仕方ねぇな…おう、玉龍。そいつは猪八戒じゃねぇんだとさ、現実世界のキモオタっていう男だ。見た目もだが中身も猪八戒ぐらい無害な奴だから放してやれ」
玉龍「本当ッスか…?センパイが言うなら放してやるッスけど……こんな豚が世界に二体も居るなんて信じられないッス」バッ
キモオタ「二体www単位に悪意を感じますぞwww」コポォ
ティンカーベル「私はそれよりも猪八戒がどんな人なのか気になる!何回も間違えられるとか逆に興味が出てきたよー」ヘラヘラ
キモオタ「笑いごとじゃないでござるよwwwさて、やるべき事もつもる話も山ほどあるでござるが…まずはラプンツェル殿の様態が気になりますな、そろそろ治癒も完了したころでござろう」
グレーテル「……キモオタお兄ちゃん」スッ
キモオタ「グレーテル殿。確かラプンツェル殿についていてくださったのでは…どうかしましたかな?www」
グレーテル「桃太郎さんが……呼んでる……ラプお姉ちゃんの治療、とりあえず出来る事はした……でも、おかしなことがあるって……すぐ来て」
ティンカーベル「おかしなことがある…?なんだか歯切れが悪い言い方だね、失敗しちゃったのかな?」
キモオタ「そんなことはないでござろう。しかし気になりますな、とにかくラプンツェル殿の元へ行きますぞ」
タッタッタ ドスドスドス
キモオタ「桃太郎殿ー!急に呼び出したうえ治癒まで頼んで申し訳なかったでござるー!」ドスドス
桃太郎「来たかキモオタよ。いかなる時であろうと、友の危機とあらば馳せ参じるが日ノ本の侍…故に気にする事など無い」スッ
ティンカーベル「それよりさ、グレーテルに聞いたよ?なんだかおかしなことがあるってどういう事?もしかして治癒に失敗しちゃったの?うっかり?」
桃太郎「うっかりってお前……否、拙者は日ノ本一の侍、その様な失態は犯さぬ。はずだったのだがな……どういうわけか拙者の能力ではラプンツェルの傷を完全に治す事ができぬのだ。このような事は初めて故、拙者自身困惑している」
ラプンツェル「もーっ、桃太郎はあれだなー。かんぺきしゅぎしゃ?だよー、これだけ治ったらバッチリだってばー」ニコニコ
ティンカーベル「あれー?ラプンツェル元気そうじゃん!洋服血まみれだけど、傷は塞がってる感じだし…全然失敗じゃ無いじゃん!」
ラプンツェル「桃太郎の治癒能力って凄いんだねっ!手をかざしただけなのにしゅわわーって傷が塞がっていって、痛いのが無くなっていったよ!」ニコニコ
キモオタ「それは何よりwwwって桃太郎殿話が違いますぞwwwラプンツェル殿普段通りではござらんかwww」コポォ
桃太郎「しかしだな…ラプンツェルよ、刺された場所に痛みは無いと言ったな?」
ラプンツェル「うん、バッチリだよ!あっ、でも洋服が血でぺとぺとするから着替えたいなー」
桃太郎「…暫く辛抱せよ。刺された場所以外に身体に違和感があると言っていたが…その違和感とやらはまだ感じるか?」
ラプンツェル「あー、うん、なんかねー…こう身体がだるーい感じっていうかちょーっともやっとするかなぁ?痛いって言うのとは違うけどちょっと気持ち悪い感じ…我慢できなくは無いんだけどー」
キモオタ「なんだかふわふわしておりますなwwwしかし、その違和感とやらも身体の不調には変わりないのでござるから桃太郎殿に治してもらえばいいのではwww」
ラプンツェル「それ、さっき桃太郎にお願いしたよ?傷は治ったけど、なんだかもやっとするから治してーってね」
桃太郎「うむ、しかし…何度治癒を行おうとも症状が改善しないのだ」
ティンカーベル「身体に感じる違和感なのに、何故か桃太郎でも治せないってこと?」
桃太郎「いかにも。拙者の治癒の力は身体を蝕む病や毒を討ち払い、傷や怪我を癒す。故に身体に感じる違和感も、その大本から取り払えるはずなのだが…」
キモオタ「たまたま調子が悪くてうまく治癒ができなかったとかwwwそういうのではないのですかなwww」
桃太郎「拙者の治癒能力は天より授かりし能力。桃から生まれし数奇な運命によって拙者に与えられた、人智を超えし能力……故に日によって冴えたり錆びついたりするような不安定なものではないのだ」
ティンカーベル「そっかー、なんでかなー?司書さんはおとぎ話に詳しいからなにかわかんない?」
司書「そうですね、【ラプンツェル】にもその様な場面はなかったと思うから…考えられるとしたら、ラプンツェルさんを傷付けたその剣かな…?」
ラプンツェル「あの剣がどーかしたー?っていうかもう、すっごく痛かったよ!もうね、うっかりフライパンを足に落としちゃった時の百万倍は痛かったよー!」
ティンカーベル「ひゃ、百万倍……っ!」ゴクリ
キモオタ「ティンカーベル殿wwwそこ食い付かなくていいでござるwwwで、その剣がどうかしたんでござるか?www」コポォ
ヘンゼル「……ラプンツェルを刺した剣、あれに原因があるんじゃないかって、お千代は言いたいんでしょ?」
司書「うん、あの剣はたんなる剣じゃないみたいだから」
桃太郎「単なる剣では無いと?うむ…ラプンツェルの腹部に突き刺さっていたのはこの剣だ。刃として見ても相当な業物だと言う事がわかるが…司書といったな?お主はこれに原因があると言うのか?」
司書「はい。私も実物を見た事があるわけでは無いんですけど…その意匠を見る限り、その刀は……」
ズイッ
玉龍「センパイセンパイ、あの剣ってもしかしてお師匠様が言っていた七星剣じゃないッスか?」
孫悟空「玉龍もそう思うか、俺もそうじゃねぇかと睨んでたところだ。北斗七星の意匠があるってこたぁ間違いねぇだろうがな」
キモオタ「七星剣…?そういえば先ほど司書殿も口走っておりましたな、一体どのような武器なのでござるか?」
司書「【西遊記】に登場する金角銀角が所有する武器です。作中ではこれといって特別な能力を持っている武器とは明言されていませんけど」
ティンカーベル「じゃあただの剣って事?それだったらこれに原因があるって考えるのはちょっと考え過ぎじゃない?」
司書「紅瓢もそうですが七星剣も元々は天界にあった道具なんです。仙人様が作り出した天界の魔法具…それを金角銀角が持ちだしたんです」
桃太郎「仙人が作りし魔法具故、斬りつけられたラプンツェルの身体に異変を及ぼしたというのか?しかし仙人だの天界だの……にわかには信じられぬな」
孫悟空「信じられねぇっつってもそいつぁ事実だぜ?天界は不老不死だのなんでもありだからよぉ、剣に魔法妖術で細工がしてあるくらい不思議な事じゃねぇよ」
桃太郎「……」スッ
孫悟空「あぁ?オイ、んだテメェ…桃太郎とかいったよな?どうかしたのかよ、突然黙っちまってよぉ?」ズイッ
桃太郎「何でもない、気にするな。……いや、何でもないので気にしなくても大丈夫だ」
ティンカーベル「あはは、言い変えてるー!もしかして桃太郎、悟空が乱暴そうな外見だからってビビってるんj」モガモガ
グイッ
桃太郎「ちょ…そう言う事言うのやめろよティンク!司書殿もヘンゼルとグレーテルも別の世界のおとぎ話の住人なんだろ!?なんつぅか桃太郎のイメージってもんがあるだろおぉぉ!」ヒソヒソヒソヒソ
キモオタ「まぁ悟空殿はあきらかに外見がヤカラですからなwwwあの顔を見てチビってもしかたないですなwww」ヒソヒソコポォ
桃太郎「チビってねぇよ!拙者がああいうなんかいかにも『戦いを好んでます』的な奴苦手なの察しがつくだろ!ちょっと配慮するとかしてくれてもいいだろぉぉ!気を使わせて悪いけど頼むってぇぇ!」ヒソヒソ
ティンカーベル「うわー、鬼退治成功させた英雄のくせにださいよねー?」ケラケラ
桃太郎「ティンクお前…!ダサいとかあれだぞ、いくらなんでもあれだぞお前…!言い過ぎだぞお前…!」ヒソヒソヒソヒソ
孫悟空「テメェ等なにヒソヒソと話してんだ?おい、桃太郎…俺の話気いてやがったのか?」
桃太郎「も、もちろん。その、なんだ、悟空さん……いや、悟空はラプンツェルに突き刺さった七星剣は天界の魔法具…故に、魔法や妖術で何らかの細工がされている可能性があると言いたいわけだな?」
孫悟空「おう、その通りだぜ。なんだ、ちゃんと聞いてやがるじゃねぇかよ。ヒソヒソ話なんかしてやがるからどうしたのかと思っちまったぜ」
玉龍「まぁ【西遊記】が消滅した今、細工をしてるだろうってのも想像になっちゃうッスけどね。でもその可能性は十分にあるッスよ。なにせ仙人がわざわざ作った武器ッス、ただの剣とは考えられないッスよ」
キモオタ「平たく言えば、RPGなどでいう所の追加効果という奴ですなwww物理攻撃しつつ相手を毒にするとかマヒにするとかwwwそんな感じでござろうかwww」
桃太郎「なるほど、拙者の治癒はあくまで肉体の傷や病気を癒すもの。魔法、妖術の類を打ち消したり…呪いを解くような力は無い」
桃太郎「魔法妖術の力で武器に負荷させた効果がラプンツェルの身体に違和感を与えているのであれば、それを取り払う事が出来ないと言うのも納得がいく」
グレーテル「それじゃあ……ラプお姉ちゃんのキズは治ったけど……なにかの魔法が掛けられちゃってる可能性があるって事だね……可哀そう……」
司書「私は魔法には詳しくないですけど、魔法使いさんや魔女さんや…魔法を扱える人物なら、ラプンツェルさんの違和感を取り除くことができるんじゃないかな」
キモオタ「それもそうですなwwwこういう時、つくづく自らの人脈に惚れ惚れしますぞwwwなにしろ知人に二人も魔法の専門家が居るんですからなwww」コポォ
ティンカーベル「そうだねっ!それじゃさっそく、ゴーテルにお願いしにいk」
ラプンツェル「…っ!ママは駄目だよっ!えっとえっと、それじゃあさ、【シンデレラ】の魔法使いの所に行こっ!そうしよっ!」グイグイ
桃太郎「いや、むしろゴーテル殿の方が適任ではないのか…?お主の母親は魔法植物の権威と聞いたぞ。以前ゴーテル殿と話した折、薬学は専門外などと言っていたが…薬草にも造詣が深いように感じたが」
ラプンツェル「ママには心配かけたくないんだってば!だからママには私が怪我した事内緒だよっ!あ、でもでも私が頑張ったおかげで悟空を助けた事は報告してもいいよっ!」フンス
桃太郎「しかし、拙者は日ノ本の侍。たとえ友の頼みであろうとも隠し事をするというのは…」
キモオタ「そこは柔軟に行くでござるよ桃太郎殿wwwぶっちゃけ、この事バレたら我輩とティンカーベル殿がどうなるか想像に容易いでござるしwww」コポォ
ティンカーベル「そ、そうだよ桃太郎!ゴーテルには内緒にしようよ!」
桃太郎「しかし、ゴーテル殿には世話になっている身。悪意なくとも欺くなど不義理ではないだろうか…」
ティンカーベル「もーっ!桃太郎は私が死んじゃってもいいの!?」クワッ
キモオタ「ティンカーベル殿必死すぎワロタwww」コポォ
ティンカーベル「こぽぉじゃないよ!キモオタだって他人事じゃないんだからね!きっと滅茶苦茶怒って、野菜の肥料とかに変えられちゃうんだよ…!」ガクブル
桃太郎「おびえ過ぎではないか?素直に事情を話せばゴーテル殿は怒ったりしないと思うが。それに大概、親というものは子供の隠し事などお見通しというもの。拙者にも覚えがある故」
キモオタ「まぁ、実際のところいつまでも隠し通せるとは思いませんがなwww相手は魔女でござるしwww」
ラプンツェル「ママはあんな風に言ってたけどお仕置きなんかしないと思うよ?」
ティンカーベル「そりゃあラプンツェルにはね…私達は塵にされるけどね」ビクビク
ラプンツェル「されないよー!でもきっとママは私の事もだけどキモオタやティンクの事も心配してくれてるよ?だからこれ以上は不安にさせたくないんだ、私ママの事大好きだもん」
桃太郎「…いいだろう。ゴーテル殿を欺くなど気が進まぬが、お主の母親を想っての気持ちを無下にするというのも日ノ本の侍らしからぬ無粋な行為。ラプンツェルの意思を尊重するとしよう」
ラプンツェル「本当っ!?やっぱり桃太郎は優しいさむらいだよーっ!」ピョンピョン
桃太郎「という訳だキモオタよ、拙者はラプンツェルを連れて魔法使い殿の元へ向かう。そうすればラプンツェルの身体の違和感も解消するだろう」
キモオタ「魔法使い殿にお任せすれば万事解決でござるなwww頼みましたぞwww」コポォ
ティンカーベル「じゃあさじゃあさ!私が一緒に行くよ!私の世界移動の力を使えばびゅーんとひとっ飛びだよ!」
キモオタ「ナイスアイディアですなwww二人は世界移動の術を持ってませんからなwwwそう言う事ならば我輩も一緒に行きますぞwww」
ティンカーベル「ううん、キモオタはやらなきゃいけない事あるでしょ!司書さんやヘンゼルとグレーテルをそのまま帰らせるつもり?もうお外は真っ暗なんだよ!」プンス
キモオタ「おおっとwww確かにそうですな、我輩とした事が…ジェントルマンが聞いて呆れますなwww」コポォ
司書「あっ、私達は本当に大丈夫ですよ、三人も居ますから。だからキモオタさん、桃太郎さんとティンクちゃん達と一緒に行ってあげてください」
キモオタ「いやいや、ラプンツェル殿には日ノ本一の侍と空を駆ける妖精がついて居るので大丈夫でござるよwww故に我輩が責任を持って司書殿達を自宅までお送りしますぞwww大船に乗ったつもりで帰ると良いですぞwww」
グレーテル「キモオタお兄ちゃん……優しいね、とても紳士的なの……」
ヘンゼル「どうかな…キモオタお兄さんの方が警察に捕まるんじゃない?職務質問とかで」
キモオタ「ちょwwwリアルにありそうなのでやめていただきたいwww」
司書「うふふ、それならお言葉に甘えて送ってもらう事にします。よろしくお願いしますね」ウフフ
玉龍「おおっと!キモオタもなかなか策士ッス!親切を装って司書を送ると見せかけて……これが噂の送り狼ッスねー!?」ウヒョーッ
ヘンゼル「送り狼って確か……ああ、ねぇ、お千代。やっぱりやめておこうよ」
孫悟空「玉龍!ガキの目の前で何言ってんだテメェは!ヘンゼルが警戒しちまっただろうが……おい、それじゃあ俺と玉龍もついて行く、それなら問題ねぇだろヘンゼル。聞きてぇ事もあるしな」
ヘンゼル「まぁ、キモオタお兄さん一人だけよりは安心だね。僕はそれで構わないよ」
キモオタ「ちょwww我輩の信用度の低さwwwとにかくそうときまれば早速帰りますかな、いつまでも廃墟にたむろしていてはそれこそ補導されますぞwww」コポォ
現実世界 司書の部屋への帰り道
グレーテル「真っ暗だね……それに私……すっごく眠い……」グシグシ
司書「お家まで我慢できそう?私がおぶってあげてもいいけど、どうする?」
グレーテル「ううん……お千代ちゃんも疲れてるから、私も頑張って歩く……でも帰ったらすぐにお布団に入るね……」ネムネム
ヘンゼル「歩きながら寝ないようにね、グレーテル」
グレーテル「うん……大丈夫……」グシグシ
玉龍「しっかし驚きッスよねー、いきなり捕まえられてなんとか逃げだしたら今度はいろんなおとぎ話の登場人物が一か所に居るんスから!」
孫悟空「まぁ、な。偶然なのか運命の導きなのか知らねぇけどな…【西遊記】【ラプンツェル】【ヘンゼルとグレーテル】【キジも鳴かずば】【ピーターパン】【ルンペンシュティルツヒェン】あと【桃太郎】か」
キモオタ「そうやってタイトルを並べると凄まじいですなwwwしかし我輩としては司書殿がおとぎ話の主人公だと言う事の方が驚きでしたぞwww」
司書「すいません、あまり人にいうものでもないかなと思ったので…それに言ったところで変な顔をされるから現実世界では隠していたんです」ペコッ
キモオタ「いやいや、謝らないでいただきたい。責めているわけではないのでwwwまぁ隠して当然みたいなところありますぞwww」
玉龍「まぁ普通はそうッスよね。自分がおとぎ話の世界の住人だなんて公言するもんじゃないッスよ、キモオタの言うとおり隠して当然ッスね。玉龍ちゃんのセンパイへの想いは包み隠してなんかないそのままの気持ちッスけどね!」ドヤァ
孫悟空「ところで司書、俺ぁお前に聞きてぇことがあんだ。聞いても構わねぇか?」
玉龍「華麗に受け流すとは先輩も手厳しいッスー!そういうクールなところにもしびれるッスー!」タハーッ
司書「えっと、それは構わないんですが、玉龍さんの事ほったらかしでいいんですか…?なんだか身悶えしてますけど…」
孫悟空「おう、アレは居ないものとして考えてくれ。気色悪ぃからな。それでだな、俺がお前に聞きたい事ってのは……」
孫悟空「アリスの瞬間移動の事だ。テメェなら知ってるんだろ、あの瞬間移動の正体をよぉ」
司書「あれは瞬間移動なんかじゃありません。でもどう説明すればわかり易いかな……」
キモオタ「ほうwww瞬間移動ではないとwww我輩は何かの魔法具だと思っていたのでござるがなwww」
ヘンゼル「アリスのあの動きは魔法具なんかじゃないよ、そんなのよりももっと手に負えない力だ」
玉龍「手に負えないとは大きく出たッスねー!瞬間移動とまでいかなくても身軽な私やセンパイなら似たような事なら出来るッスよ?」
孫悟空「似たような事ならな、だが移動している最中の姿を一切見る事が出来ないってのはおかしな話だ。俺にも玉龍にもそんな芸当は無理だからなぁ」
孫悟空「どんなに素早い奴でも目的の場所に移動するには動く必要がある、そうなると移動途中の姿を全く見られないなんてのは本来は不可能だ」
司書「これならわかり易いかな……孫悟空さん、キモオタさん、ひとつだけなぞなぞに付き合って下さい。アリスさんが瞬間移動にどんな方法を使ったか解るはずです」
司書「例えば、ですよ。私の部屋から図書館までは歩いて15分ほどかかるんですけど…正午ちょうどに私の部屋を出発して、正午ちょうどに図書館にたどり着く方法……わかります?」
キモオタ「ちょwwwなぞなぞでござるかwwwしかしそれ確実に無理でござろうwwwそれこそ瞬間移動をするしか方法が無いですぞwww」コポォ
司書「それじゃだめです、瞬間移動以外の方法を考えて見てください」
孫悟空「しかしよぉ、俺も同意見だぜ、正午に出発して正午にたどり着くってのはどんな神仏にだって無理だ」
玉龍「フフーン!二人とも頭が硬いッスね!玉龍ちゃんは簡単にわかっちゃったっすよ!ズバリ……時間を止めればいいんスよ!」ドヤァ
玉龍「司書の家で時間を止める、それからゆっくり歩いて図書館に着いたらお茶でも飲んで一息ついてそれから時間停止を解除するッス!これでなんちゃって瞬間移動の出来上がり……ん?どうしたッス、センパイ。そんな恐い顔して……」
孫悟空「……おい、司書ォ!この謎掛けはアリスの瞬間移動のカラクリを説明する為のもんだって言ったよなぁ!?」
司書「はい、そうですね。それに玉龍さんの回答は、大正解です」
孫悟空「おいおい、本気かよ…」
キモオタ「ちょ、ちょっと待っていただきたい。それはつまり、アリス殿は……!」
司書「時間を止めて、制止した時の中を移動している。それがアリスさんの瞬間移動の正体です」
キモオタ「アリス殿は時を止める事が出来る……ですとぉ!?」
孫悟空「んな無茶苦茶な事までできるってのかあの小娘…!そんなもんお師匠どころかお釈迦さまだってできやしねぇぞ!?」
司書「【不思議の国のアリス】には数え切れないほどの不思議な出来事が詰まっています。時間を操る力もその一つ、アリスさんの物語の中にちゃんと登場しますよ」
グレーテル「うん、確かお茶会のおはなし……帽子屋さんと三月ウサギさんとヤマネさん……ずーっとお茶の時間のまま止まったその場所で、終わらないお茶会するの……」グシグシ
ヘンゼル「七章目の『狂ったお茶会』に時を操る云々の話は登場するんだったかな」
キモオタ「そう言えばそんなお話もありましたな…恥ずかしながらあんまり覚えてなかったでござるwww」ドゥフ
司書「えっとですね。アリスさんは迷い込んだ不思議の国で、お茶会をしている帽子屋さん達に会うんです。
ですけど帽子屋さんはおかしなことを口にしたり、答えの無いなぞなぞをしてみたりしていて、アリスさんは次第に呆れてしまってこう言うんです「もっと有効な時間の使い方をしたらどう?もったいないわよ」と」
司書「すると帽子屋さんはこう言うんです。「私ほど時間と仲が良ければ、もったいないだなんて彼の事をもののように扱ったりしないよ」と」
キモオタ「時間の事を彼とは…いわゆる擬人化というやつですかな?」
司書「少し違いますね。帽子屋さんが言うには時間と仲良くしていれば、彼は自分の好きなように時計を動かしてくれるそうです。
授業が始まる午前九時、そっと時間に耳打ちをすればたちまち時計はお昼ご飯の時間を指すんです。お腹が空いていなければまた時間に耳打ち、そうすればお腹がすくまで…」
司書「時間は、そのまま時を止めておいてくれる。なにしろ時間とは仲良しなんですから、時間は自分の言う事を聞いてくれる…そういう理屈なんですね」
孫悟空「無茶苦茶に聞こえるが、それがあいつのおとぎ話【不思議の国のアリス】の内容である以上、あいつがその能力を使える事に何ら不思議はねぇな」
キモオタ「しかし、魔法具なら奪うとか壊すとかできそうでござるが。時間殿とアリス殿の絆が原因とあらば、それこそ対抗策を練る事が出来ないのでは…」
司書「いいえ、アリスさんから時間を止める能力を奪う事はきっと簡単です。でも、それはアリスさんと対峙している場面で無いと出来ませんし、それに……」
司書「アリスさんの事で、もう一つ気になる事があるんです」
キモオタ「気になる事…でござるか?」
司書「はい。話すと長くなっちゃうんですけど……あるおとぎ話に、本来は登場しない少女が登場するんです」
司書「それは日本の昔話なんです。それなのに金髪で洋服を着た、瞳の色の違う少女……そのおとぎ話には『有巣』という名前で登場していました」
キモオタ「それはまさしくアリス殿ではござらんか…!おとぎ話を消して周っているというのに、なぜそのおとぎ話だけは消さずにいるのでござろうか…司書殿、そのおとぎ話はなんというタイトルでござるか?」
司書「【浦島太郎】という日本の昔話です。その中にアリスさん、いえ有巣という少女として登場していてですね…」
ヘンゼル「盛り上がっているところ悪いけどさ、もう部屋に着いたよ?グレーテルもギリギリみたいだし、今日はもう話を切り上げてしまってよ」
司書「あっ…本当だ。えっと、キモオタさん…申し訳ないんですけどこの続きは…」
キモオタ「いいですぞいいですぞwww明日にでもまた図書館に行くのでその時に教えていただきたいwww」
司書「はい、わかりました。キモオタさん、悟空さん、玉龍さん。ありがとうございました」
孫悟空「おう、アリスが時間を止められるって事教えてくれてありがとよ」
玉龍「玉龍ちゃん、お千代ちゃんにちょーっと興味湧いちゃったッス!だからまた今度女子会するッス!」
司書「うふふ、玉龍さん、女子会…ですか?」ウフフ
グレーテル「……お千代ちゃん……眠い……早く入ろ……」グシグシ
司書「うんうん、ごめんね。ではみなさん、また」フリフリ
キモオタ「アリス殿の瞬間移動がまさか時間停止を利用したものだったとは…」
孫悟空「時間停止ってぇと相当だぞ、なにしろこっちが気がつかないうちにアリスはあれこれし放題だってんだからな」
玉龍「けどそれって変じゃないッスか?」
孫悟空「あぁ?なにがおかしいってんだ?」
玉龍「もし時間が止められるなら止めている間にキモオタやセンパイに攻撃を仕掛ける事も、なんなら殺す事だってできるッスよね?玉龍ちゃんももし時間が止められたならセンパイの側に行くだけじゃなくあんなことやこんな事するッスからねー」
孫悟空「テメェはこんな時まで軽口叩きやがって…しかしまぁ、そりゃあ道理だな。時間停止中に攻撃出来ない理由でもあんのかもな」
キモオタ「司書殿も時間停止能力を奪う事は容易いと言っていましたからなwww」
孫悟空「まぁ、考えたって仕方ねぇや。俺達は元居たおとぎ話に帰るぜ、そのおはなしウォッチとかいうの使えば離れていても会話できるんだろ?司書から何か情報を手に入れたら俺にも教えてくれや」
キモオタ「もちろん、構いませんぞwww」
孫悟空「悪いな、なんつーかテメェには助けられちまったしな。これからは何か困った事がありゃあ声掛けてくれや、そうすりゃあ飛んでいってやるからよぉ!」
玉龍「玉龍ちゃんもまぁ協力してやらない事もないッスよ?その代わり、センパイとの仲を取り持つことが条件ッス」
キモオタ「それは心強いですなwwwぜひともお願いしますぞwww時に、悟空殿達が居たおとぎ話とは?もう【西遊記】は消滅しているでござるよね」
孫悟空「ああ、そうだな…教えてやっても言いが、ただ教えるのも面白くねぇな」
孫悟空「今回の礼に、そのうちお前とティンクをそのおとぎ話に招待してやるよ。たいした事はできねぇがうまい飯くらいはごちそうしてやるぜ、なんておとぎ話かはそのときのお楽しみって奴だ」
キモオタ「それは何よりの褒美ですなwww楽しみにしているでござるよwww」
孫悟空「おう、それじゃあまたな、いろいろとありがとうなキモオタ!よし、玉龍…あいつの無事も確認したいし急ぐぜ」
玉龍「わかったッス!じゃあ可愛い女の子の姿とはしばしお別れッスね」シュルルルル
孫悟空「あいつもおとぎ話も無事だと思うが…アリスがグレーテルの火炎を防いだ魔法具はどう考えても、あの魔法具だ…間違いなくあの世界にアリスは来たって事になるからな、油断はできねぇぞ」
玉龍「火炎を防ぐ魔法具…あっ、『火鼠の皮衣』ッスか…そりゃあちょっと気になるっすね。よーし、じゃあ急ぐッスよーっ!」
ヒュンッ
キモオタ「行ってしまいましたな…さて、我輩も帰るとしますかなwww」
シンデレラの世界 魔法使いの屋敷
魔法使い「……事情はわかった。しかし、母親に内緒と言うのは感心せんなラプンツェル」
ラプンツェル「お願いだよー、魔法使いだってシンデレラに余計な心配かけたくないって思う事あるでしょ?それと同じだからー」
ティンカーベル「そうだよ!お願い魔法使い!私達の命もかかってるからね、これっ!」
魔法使い「……いいだろう、気持ちはわからんでも無い。しかしゴーテルに知られたとしてもワシは一切庇わんからそのつもりでな。しかし、桃太郎はこんな事をしていていいのか?剣術指南の約束をしているのではなかったか?」
桃太郎「あぁ…友の危機故、事情を説明して待ってもらっている。この後向かう予定にしている故、心配なされぬよう」
ラプンツェル「鍛錬?桃太郎も修行するのー?剣術の修行ー?」
桃太郎「うむ、拙者も特別な鍛錬に取り組みたいと思い立ってな…先日、赤ずきんと赤鬼に相談したのだ。なんと赤ずきんには異国の王子と親交があるらしくてな」
桃太郎「その王子には『鉄』の二つ名を持つ剣術に長けた忠臣が居るらしい、その者に異国の剣術を指南してもらえるように頼みこんだのだ。拙者にとって良い刺激となるだろう」
ラプンツェル「へぇーっ!桃太郎も頑張ってるんだね!じゃあ私も頑張ってアリスの事やっつけられるくらいに強くなるよっ!」フンス
ティンカーベル「私だって強くなるんだからねっ!あいつらには絶対に負けないよっ!」
魔法使い「これこれ、意気込みが十分なのは構わんが無茶はいかん。特にラプンツェルは今日一日は部屋から出ないように、ワシの約束が守れないなら魔法も解かぬしゴーテルに報告するからそのつもりでいるんだぞ」
ラプンツェル「えーっ!?一日も!?それより言う事聞かないとママに告げ口するとかそういうのずるいよ!」プンス
魔法使い「ズルイとはなんじゃ。それにワシとて万能ではないのじゃ、慣れない異国の妖術を解くなんぞ容易くは無い。それくらいの時間は貰うぞ」
ラプンツェル「長いよー、それにやっぱりママに言うって脅すのズルいー」プクー
桃太郎「膨れるな、ラプンツェルよ。一日の遅れなど、お主に強い意志があればすぐにでも取り返せるだろう。共にアリスを倒す為、協力して鍛錬に励むとしよう」
ラプンツェル「むーっ、わかった!ちゃちゃっと治してバーッと練習して、たくさん強くなるよっ!」フンス
ティンカーベル「うんうん!みんなで一緒に頑張ろーっ!」ニコニコ
青い鳥「……」バッサバッサ
青い鳥「ふぅ、さっきは驚いたなぁ…」
青い鳥「この【シンデレラ】の世界に偵察に来たらあのクソ妖精が居たから驚いたよ。あいつらに僕達の考えがバレたのかと思ったけど、単なる偶然だったみたいだ」
青い鳥「まぁ、あのクソ妖精なんか簡単に始末できるけどさ。だけど油断はいけない、僕にはシンデレラが住んでいる城の侵入経路を探るっていう立派な任務があるんだから」
青い鳥「うーん、でもこのまま城の周りを飛ぶのは危険かもしれないな。桃太郎やラプンツェル、クソ妖精が城に来るかもしれないし…シンデレラも青い鳥である僕の事を聞いているかもしれない…なにかいい方法は無いかな?」
「おーい、新入りー!角のパン屋に運ぶ小麦粉もしっかり荷車に積んでおけよー」
「へーい、親方ー!」
「急げよー、あんまり時間ねぇぞー!」
青い鳥「小麦粉か…よしっ、あれを変装に使おう。ちょっと水浴びしてから小麦粉の袋に飛び込んで…と」バサバサー
バフッバフバフバフッ
白い小鳩?「ケホケホッ…ちょっと小麦粉を浴び過ぎたかも…ケホケホッ」
白い小鳩?「…でもこれでよし、小麦粉のおかげで前進真っ白。僕は幸運を運ぶ青い鳥なんかには見えない、どこからどう見ても白い小鳩だね。これなら城の周りを飛んでも怪しくないな」バサッ
白い小鳩?「さて、さっさと城に忍び込もうかな。それにしてもあの方はとんでもない事を思いつくよ、しかもそれを行動に移すのがとにかく早い。あいつらはこんなこと夢にも思っていないだろうなぁ、クソ妖精が驚く顔が目に浮かぶよ」
白い小鳩?「さぁ頑張って侵入経路を探ろう。城の警備を掻い潜ってうまくシンデレラをさらってしまわないといけないからね」クスクス
バッサバッサ
現実世界 事件の翌朝 司書の部屋
チュンチュン チュンチュン
ヘンゼル「お千代、朝食は食べないの?簡単なもの用意したけど…って無理だね、その様子じゃ」クスクス
バタバタ
司書「折角作ってくれたのにごめんねヘンゼル、今日は朝ご飯食べてる時間が無いんよ…!うぅ、もうこんな時間…急がないと遅刻しちゃうんよ!」バタバタ
ヘンゼル「昨日遅かったから仕方ないね、グレーテルはまだ夢の中だし。それよりお千代…この世界じゃその喋り方はしないんじゃなかったの?」
司書「そうだったんよ…!あ、じゃなくて、そうだったね。現実世界に居る時はきちんと標準語、喋らないとだね」ウンウン
ヘンゼル「僕は前の喋り方の方が好きだけどね」
司書「私もそうだけど、あの喋り方は寂しさを紛らわせるためにお母さんの喋り方を真似してて、それが癖になっちゃったものだから…現実世界では使わないようにしてるの」
司書「見知らぬ世界で一人でも頑張るって決めたからねっ、だからもう亡くなったお母さんやお父さんの事で悲しむのも、面影にすがったりもしないんだ。そう決めたから」ニコッ
ヘンゼル「そっか。お千代も強くなってるんだね、僕が気がついていなかっただけで」フフッ
ヘンゼル「…弱い子供のままなのは。僕だけだ」ボソッ
司書「ヘンゼル?何か言った?ちょっと聞こえなかったんだけど」
ヘンゼル「なにも言ってないよ。それより時間は大丈夫なの?」
司書「大丈夫じゃない…っ!ご、ごめんねヘンゼル!お仕事行ってきます!あ、お昼ご飯は冷蔵庫に…」
ヘンゼル「いいから、適当に済ませるよ。気を付けてね、慌てて事故にあったりしたら馬鹿馬鹿しいよ」
司書「うん、それじゃああとお願いね、ヘンゼル。いつもの時間には帰るからね」ガチャッ
ヘンゼル「うん、いってらっしゃい」
パタン
ヘンゼル「……」
ヘンゼル「……グレーテル、お兄ちゃんはなにもできなかったよ」
グレーテル「…zzz」スヤスヤ
ヘンゼル「お千代が誘拐されて、廃墟に行ったは良いけど何もできずに捕まって…結局、お千代を救う事も出来ず」
ヘンゼル「それどころかお前を危険な目にあわせてしまった」
ヘンゼル「……」
ヘンゼル「悟空はみんなを信じて紅瓢に吸い込まれる覚悟をしたし、ラプンツェルだって刺されているっていうのに悟空を助ける事を優先した」
ヘンゼル「あのキモオタお兄さんですら、グレーテルを助けてくれた……それなのに僕は、結局何も出来てない。護る護ると口だけだ、あの日から何も変わっていない」
ヘンゼル「……」スッ
ヘンゼル「あの時アリスが言っていた言葉…」
――アリス「ボクはキミの味方だ。キミと同じで現実世界や作者の存在を憎んでいるんだ。だから、またすぐにキミに会いに行くよ。それまでに考えておいてよ、なんだって協力はしてあげるから。ボクはキミに仲間になって欲しいんだ」ヒソヒソ
ヘンゼル「アリス……あいつはグレーテルに酷い事をしようとした奴だ。でも……」
ヘンゼル「僕と同じ憎しみを持っているあいつなら、悟空やラプンツェルを蹴散らせるほどのあいつと一緒に居れば……僕は変われるだろうか」
ヘンゼル「アリスといっしょに居れば僕は強くなれるかもしれない……魔法具を借りて、大人になることだって……強い武器を手にすることだって……今度こそ妹達を護ることだって……できるかもしれない」
ヘンゼル「アリスと一緒に居れば僕は、グレーテルやお千代に胸を張れるお兄ちゃんに……まだなれるかもしれないんだ」
おつきあいありがとうございました
本日で七冊目は終了です、レス支援ありがとう!
八冊目は七冊目その2みたいな感じなので孫悟空とかまた出てきますー
もう少しで完結なので頑張る
青い鳥の動向はどうなる?
浦島太郎とアリスの関係とは?
思いつめるヘンゼルの選択は?
八冊目
かぐや姫とオズの魔法使い編 へ続きます
乙!
思い詰めたヘンゼルにアリスが言った言葉、まさに悪魔の囁きだな…
乙です!
ヘンゼルには雪の女王のおしおきが必要ですな!1人で思い詰めるとろくな事考えないからなー
・ ニュー速VIP@おーぷん2ちゃんねるに投稿されたスレッドの紹介でした
キモオタ「ティンカーベル殿!おとぎ話の世界に行きますぞwww」七冊目
・管理人 のオススメSS(2015/07/04追加)
・【画像あり】椿姫えり 美形ニューハーフがAVデビュー
・【画像】こんな可愛い子なのにAKBオーディションに4回も落とされるのかよw
・TPP締結でアメリカ式著作権法に→新曲を出したら、「曲のフィーリングが似ている」で9億円の倍賞
・木村つな ロリマンも無修正のカリビアン画像集 210枚
・36歳でこの体つきなら余裕でヤれるわwwwwwwwwwwwww(動画あり)
・【妹 ロリ動画】大好きなお兄ちゃんのことを考えながらオナ●ーするJCの個人撮影動画がネットに流出!!
・【閲覧注意】「av女優って大変だなあ」と思う場面集めてみたらwwwマジキチすぎwwww(※画像)
・【ボッキ注意】 今月のToLOVEるでマングリ返しwwwwwww (画像あり)
・【H注意】このJSの表情がくっそヌけるwwwwwwwwww(画像あり)
・【閲覧注意】とんでもねえavが発売されてたwwwww
・【画像】 オッサン共に食われまくってるニコ生サークルの姫(JK)をご覧くださいwwwwwwwwwwww
・【ボッキ注意】中1の体つきじゃねぇだろwwwwwwwwwwwwwww
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590: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/06(日)23:32:32 ID:vqR
雪の女王の世界 雪の女王の宮殿 ヘンゼルとグレーテルの部屋
グレーテル「……すぅすぅ」スヤスヤ
ヘンゼル「グレーテル、ごめんね…僕が、僕がお前に無理をさせたから…」ギュッ
雪の女王「ヘンゼル、もういい加減に離れたらどうだ?心配する必要は無い、安静にしていれば数日後には起き上がれるようになる」
ヘンゼル「女王、グレーテルは数日経てば今までと同じ生活ができるのかな?何か後遺症とか残ったり、しないよね?」
雪の女王「結論を言えば後遺症の心配は無い。ただし、今は相当身体が弱ってる状態だから無理をすれば今度こそ命の保証は出来ない」
ヘンゼル「そうなんだ、良かった…」
雪の女王「良かった……か。聞かせてくれ、なにが良かったと言うんだヘンゼル?」スッ
ヘンゼル「……」
雪の女王「治療をしている間、キミからあの【キジも鳴かずば】の世界で何が起きたか聞いたが…もう少しでキミは最愛の妹を失っていたんだぞ」
雪の女王「私は確かに伝えた、グレーテルは魔法耐性が低い事、だから魔法は余程の事が無ければ使わないようにと。聡明な君なら村を焼き払うほどの強い魔法を行使すれば妹がどうなるかわかっていたはずだろう」
ヘンゼル「…わかってた、魔法を使えばグレーテルが苦しむ事。でも、グレーテルも復讐には賛成してくれたしもし苦しんだとしてもこんな状態にまでなるなんて、思ってなかった」
雪の女王「今回は完全に症状が悪化する前に私が処置出来たから事なきを得た。だが、もう数分遅れてグレーテルがさらに魔法の行使を続けていれば…」
雪の女王「グレーテルの身体は完全に魔力に蝕まれて命を落としていただろう。例え運よく生きていたとしても重大な障害が残った可能性が高い」
雪の女王「キミはいつだって止める事が出来たはずだ、でも止めなかった。復讐しか見えなくなりグレーテルの身体の事など二の次にしてしまった、そうだな?」
591: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/06(日)23:34:10 ID:vqR
ヘンゼル「僕は考えが甘かったんだ。氷雪花を探している時に灯りを燈す魔法を使ったグレーテルは平然としていた。だからきっと今回も平気だろうって…」
雪の女王「…本当にそうか?少しの灯りを燈す魔法と村を焼き払うような火炎の魔法では負担もはるかに違う。そんな事想像できるはずだろう、普段のキミならば」
雪の女王「あの時のキミは、優しくしてくれた弥平を失った事で頭に血が上っていた。本当は危険だと感づいていながら…グレーテルが少々苦しもうが復讐を遂げる事を優先したんじゃないか?」
ヘンゼル「……そうだったかもしれない。あの時の僕はグレーテルが少しふら付いていたのに気がついていた。だけど、村の大人達を殺す事を優先にした」
ヘンゼル「燃え上がる家々や死んでいく大人を見て、あの時の僕はなんだってできると、思いあがっていたんだ」
雪の女王「思いあがっていた、というのは自分の魔力にか?」
ヘンゼル「僕の魔力と…それを使って魔法を操るグレーテルの力にだよ。僕の魔力とグレーテルの魔法があればなんだってできるってそんな風に思ったんだ」
ヘンゼル「これだけ強力な魔法を使えればどんなにズルイ大人や悪い大人相手でも引けを取る事は無い、きっとこれだけの力があればグレーテルやお千代を幸せに出来るって思ってた」
雪の女王「自分達の持つ力の大きさを目の当たりにして…自惚れてしまったということか」
ヘンゼル「村人への罪悪感や村を焼いた後悔なんか無かった。僕達に優しくしてくれたパパさんを殺した奴らに復讐をする事、それしか頭に無かった」
ヘンゼル「その時はグレーテルの身体の事なんか考えてなかった。自分勝手に復讐の事だけ考えて……これじゃあ僕は村の為にパパさんを利用した大人達と何も変わらない……」
ヘンゼル「僕は復讐の為にグレーテルの魔法を利用したのと同じだ。妹の身体を顧みず目先の復讐しか見てないなんて、兄失格だ」
雪の女王「…そうだな、今回の君の行動はグレーテルの兄として最悪のものだった。だが幸いグレーテルの命に別状は無い、キミは今回の件を糧にする為にしばらく一人で反省すると良い。私はお千代と話してくる」
スッ
592: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/06(日)23:37:08 ID:vqR
ヘンゼル「待ってよ女王、僕も行く。僕もお千代に会って謝らないといけない」
雪の女王「駄目だ。しばらくの間、キミがお千代に会う事は許可しない」
ヘンゼル「お願いだよ女王!僕はグレーテルを危険な目にあわせたばかりか…僕のせいでお千代まで不幸にしてしまったんだ!」
雪の女王「キミのせいじゃない。だから今は魔法の力に溺れて妹と自分自身を危険にさらした事を反省すべきだ」
ヘンゼル「でも僕が小豆と米を盗んだりをしなければパパさんは人柱にされなかったんだ、僕が盗みを働かなければお千代はパパさんとずっと一緒に暮らせたんだ!」
雪の女王「それは不可能だ、弥平が人柱にされなければ【キジも鳴かずば】は消滅する。キミが米と小豆を盗まなければ、もう少し早く世界が消滅していただけだ。キミ達とあの親子を巻き込んで」
ヘンゼル「そうだとしても…僕はお千代を苦しめてしまった…泣かせてしまったんだ!家族なのに!僕の軽率な行動でみんなを苦しめてしまった…」
雪の女王「今の君に出来る事は謝罪なんかじゃない。お千代にもキミにも一度にいろんな事が起き過ぎた、一人で今回の出来事にキチンと向き合う時間が必要だ」スッ
ヘンゼル「それもキチンとやる!女王が許可してくれないなら、無理にでも僕は会いに行く!そして傷つけ苦しめた事を、救ってあげられなかった事を謝るんだ!」ダッ
パキパキパキパキッ……!
ヘンゼル「……っ!」
ドシャアァァ
ヘンゼル「靴底を床に凍りつかせて…っ!なにをするんだ女王!僕は…僕は…不甲斐なかった事をお千代に許して欲しいだけなんだ!あいつは家族なのに、僕は何もしてやれなかった!」
雪の女王「言っただろう、キミがすべきはお千代への謝罪じゃない。それが理解出来ないのなら私は何度でもキミの足を床に縫い付ける」
ヘンゼル「女王!どうして!?どうしてそうまでして僕の邪魔をするんだ!?」
雪の女王「……今のキミは重要な分岐点に立たされている」
ヘンゼル「分岐点……?」
雪の女王「キミが憎んでいる大人達のような人間になるか、それともキミが慕っている弥平の様な人間になれるか。その分岐点だ」
593: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/06(日)23:38:52 ID:vqR
雪の女王「我々はおとぎ話の世界の住人。現実世界の人間の様に年を取るわけじゃない」
雪の女王「おとぎ話の登場人物の年齢は物語の展開の影響を受ける。おとぎ話の途中で年齢が大きく変動する登場人物は年齢も変動するが、おとぎ話の始まりからおしまいまで年齢が代わらないキミの場合はそれ以上成長する事は無い」
雪の女王「しかし、これは年齢云々というよりもどのような人間に成長するかという次元の話だ」
ヘンゼル「仮に僕が成長して大人になるとしたら、僕が憎んでいるズルイ大人や悪い大人に僕自身がなってしまう可能性があるって女王は思ってるの?」
雪の女王「キミは今回大きな悲しみを負った。父親同然の弥平を失い、それを自分の責任だと思いお千代を悲しませた事に責任を感じている。そして感情に任せた行動の末、グレーテルを死なせかけた」
雪の女王「キミはまだ未熟だ。抑えきれない憤りや抱えきれない悲しみを処理する手段を持ち合わせていない、この一件を糧にして困難を乗り越える心の強さを手に入れなければいけないんだ」
雪の女王「困難や悲しみは生きていくうえでは避けられないが、抱えた不の感情をそのままにしていてはいずれ精神が歪んでしまう。それらの感情を振り払う方法を知らなければいずれキミが憎んでいるような所謂『悪い大人』になってしまうだろう」
ヘンゼル「馬鹿な!僕達の父親だったあの男や悪い魔女や村の大人たちみたいな悪人に僕がなるって言うのか!?なんでそんな事いうのかわからない。僕が未熟だからなの?」
雪の女王「ヘンゼル、感情的にならないでくれ。私はキミにそうなって欲しくないから言っているんだ…憤る前に【キジも鳴かずば】でのキミ自身の行動を振り返ってみろ」
ヘンゼル「それこそなんの問題もないでしょ、僕は大切な家族を幸せにするために行動したんだ!確かに盗みを働いた事は結果としてパパさんを人柱にしてしまう事になった、でも僕が地主や薄毛…村の奴等を殺したのは仕返しだ!」
ヘンゼル「無実のパパさんを人柱にする為に罪を着せて、パパさんを殺してお千代を悲しませたあいつ等に対する復讐だ!僕に非は無い!悪いのは村の連中だ!」
雪の女王「駄目なんだヘンゼル、それじゃあ…キミの心はいつまでも悲しみから解き放たれない」
雪の女王「キミは大好きなパパさんである弥平を、人柱が欲しいという村の連中の都合で殺されたと思っているようだが…」
ヘンゼル「だってそうじゃないか!パパさんはあいつ等の自分勝手な都合の為に犠牲になったんだ!」
雪の女王「それなら聞こう、キミが殺した村の連中にだって家族が居ただろう。もしかしたらお千代みたいな幼い子供が居たかもしれない。その子供にとって、キミはどういう存在に映る?」
ヘンゼル「でも、それは…っ!」
雪の女王「大好きな父親が逆恨みで殺された、犯人は罪人として人柱にされた弥平の息子ヘンゼルだ。その殺された男は何か悪さをしたわけじゃない、罪人の弥平を助けなかったという理由でキミに殺された」
雪の女王「その男の子供は納得がいくと思うか?何の罪もないのに殺されてしまった父親の事を…殺されても仕方が無いと諦められるか?」
594: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/06(日)23:42:03 ID:vqR
ヘンゼル「それは違うじゃないか!パパさんは罪を犯していないのに罪人として殺された!村の連中はパパさんを見殺しにした悪人…パパさんを見捨てた罪人じゃないか!殺されて当然じゃないか!」
雪の女王「本当にそうか?弥平を見殺しにしたとは言うが、罪人として扱われている弥平を庇うという事が小さな村に住むただの村人にとってどれだけ大変な事かわかっているだろう?下手をすれば自分に罪が及ぶ」
ヘンゼル「それでも、誰かがパパさんを信じて無実を主張すれば人柱は中止になったかもしれないじゃないか!自分が罪をかぶるのが嫌だからパパさんの味方をしなかった、それは悪じゃないの!?」
雪の女王「誰かの味方を出来ない事は必ずしも悪ではないよ。自分や家族を護る為の行動を自分勝手というのなら、私もキミも相当に自分勝手な人間だ」
ヘンゼル「……」
雪の女王「確かに弥平が人柱にされた理由は理不尽なものだ、大好きな弥平を失ったキミやグレーテルが頭に血を登らせてしまうのも理解できる」
雪の女王「だがな、大好きな人を殺されたからなりふり構わず殺して村やおとぎ話を消滅するというのは…あまりにも身勝手だ」
ヘンゼル「じゃあどうすればよかったの!?僕達は理不尽な理由で家族を失ったんだ!僕がどう行動すればお千代とグレーテルを悲しみから守る事が出来たの?教えてよ女王!」
雪の女王「残念だが人の死には必ず悲しみが付きまとう、弥平の死は事実として受け入れるしかない。残されたものは愛する者の死を受け入れる責任がある。だがそこで復讐の為に他人を殺せば憎しみは連鎖する、それはやってはいけない事だ」
ヘンゼル「それじゃあお千代やグレーテルの悲しみはどうなるんだ!パパさんの無念は誰が晴らすの!?大好きな人が殺されてしまったならその原因になった奴らを殺すしかない!」
ヘンゼル「殺してしまえばそいつらが僕達を苦しめる事はもう無い!恨みの原因を潰すには殺すのが一番確実じゃないか、僕はそれしか復讐の方法を知らない!」
雪の女王「ヘンゼル…憎しみというのは伝染する、復讐では憎しみも悲しみも晴らせない…新たな憎悪を生みだすだけだ。だから殺すような復讐はしちゃいけない」
ヘンゼル「なんだよそれ…僕の家族は幸せになれないけど他人は殺すなって事?じゃあ結局貧しい人間や弱い奴等は無き寝入りしろって事じゃないか!」
雪の女王「泣き寝入りじゃない。復讐なんかしなくても殺された人間の無念を晴らす事は出来る、それに復讐なんかじゃ悲しみは癒せない」
ヘンゼル「理解出来ないよ…全然理解出来ない!大好きなパパさんを殺されても我慢しろって言うのが女王の考えなの!?結局、僕達はどこに逃げたって誰かに利用される運命だってことじゃないか!」
ヘンゼル「あぁ、そうか、前からそうだったね……僕はグレーテルや女王とカイ、パパさんやお千代との生活が楽しくて忘れかけてた。でも、思い出したよ」
ヘンゼル「なんだかんだ言っても僕達は現実世界の作者に作られた存在なんだ、あいつ等の良いように利用される為に作られた存在なんだ。だから不幸になる事を決められている以上、結局幸せになんかなれない…!」
595: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/06(日)23:44:29 ID:B3l
雪の女王「ヘンゼル…それは違う、作者は私達を利用する為に生み出したりしていない」
ヘンゼル「何が違うっていうの!?作家っていうのは話を作って金を稼ぐ仕事でしょ?おとぎ話だってそいつらの金稼ぎの道具にすぎないじゃないか!結局はそれに利用されてるんだ、違う?」
雪の女王「断言する、それは絶対に違う。キミ達は作者に利用なんかされていない。キミ達の作者だってキミ達にハッピーエンドを用意していたじゃないか、忘れてしまったのか?」
ヘンゼル「ハッピーエンド!?【ヘンゼルとグレーテル】がハッピーエンドだって本気で言ってるの?」
ヘンゼル「僕達は貧しくひもじい生活の果てに親に捨てられた!二度もだよ!そのうえ魔女に利用されて僕は一カ月も監禁されて、グレーテルは奴隷扱いだ!」
ヘンゼル「その結末が魔女の宝石を奪ってあの父親ともう一度幸せに暮らしました。だよ?それのどこが幸せなんだ、僕やグレーテルが受けた悲しみや苦しみはそんな宝石なんかで埋められない」
ヘンゼル「しかも、あんな信用の出来ない男ともう一度暮らす事が僕達の幸せだと本当に思ってるの?例えお金があったとしても飢饉には違いないんだ、またすぐに食べ物は尽きて僕達は捨てられる」
雪の女王「家族と一緒に居られる事は幸せな事だ。しかし、大飢饉であるあの時代…キミの世界ではそれは当然なことではなかった」
雪の女王「口減らし、餓死、悪化していく治安の中で命を落としたり離れ離れになったり…家族が離散する事が珍しくない世界で、一緒に暮らせる事は幸せな事だ」
ヘンゼル「それがあんな父親でも?馬鹿げてるよ、だったら作者は僕達を捨てさせなければいい!飢饉なんていう設定にしなければ良かったんだ!作者になら出来たはずだ、それなのにしなかったのは僕達を利用する為じゃないか!」
ヘンゼル「悲惨な兄妹の物語の方が盛り上がるから、有名になれるから、本が売れるから、金儲けができるから…だから僕達を幸せにするつもりなんか無いんだよ、そりゃそうだよね作者に取ったら僕達の存在はただのフィクションだ、ただの創作なんだから!」
雪の女王「キミは作家を…作者を誤解している、富や名声の為だけに物語を綴った作者も確かに存在した。だが少なくともキミ達のおとぎ話の作者の一人、ヴィルヘルムはそんな男ではなかった」
ヘンゼル「ヴィルヘルム・グリムか。確か……僕達を不幸にした二人の作者、グリム兄弟の弟の方だったっけ?」
雪の女王「ああ、私はキミがこの世界に来た時【ヘンゼルとグレーテル】をキミが消滅させたと聞いてヴィルヘルムに申し訳なかった。おとぎ話に込められた人々の想いまで消えたからだ」
ヘンゼル「人々の想い…?」
雪の女王「民間伝承。という言葉を知っているか、ヘンゼル?」
596: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/06(日)23:46:26 ID:B3l
ヘンゼル「民間伝承…って、村や町の人の間で語られてる、言い伝えとか昔話みたいな…そういうものの事でしょ?」
雪の女王「概ね正解だ。おとぎ話は無数に存在するがその成り立ちはいくつかの種類に分けられる、ひとつは作者が展開や設定や結末全てを自作した『創作童話』というおとぎ話」
雪の女王「この【雪の女王】や【マッチ売りの少女】がそれにあたる。別の作者の作品ならば【不思議の国のアリス】や【オズの魔法使い】もこの創作童話だ」
雪の女王「それとは別の形式が民間伝承のおとぎ話だ。これは民話や昔話に多い、『桃太郎』や『舌切り雀』がそうだ」
ヘンゼル「それがなんなの?創作童話だか民間伝承だか知らないけど、現実世界の人間が作った事には変わりないでしょ?」
雪の女王「【ヘンゼルとグレーテル】は創作童話と民間伝承の中間と言えばいいだろうか。キミ達のおとぎ話が収録されているグリム童話集は、ある国に民間伝承として伝えられていた物語をヤーコプとヴィルヘルムが手を加えて書籍にしたもの」
雪の女王「キミ達の作者はグリム兄弟だ、しかしその物語の大本は昔からその国の人々が口伝えで語り継いできたもの…なぁヘンゼル、何故語り継がれてきたかわかるかい?」
雪の女王「何故その国の人々はキミ達兄妹の話を何年も語り継いだと思う?ヤーコプとヴィルヘルムは何故、キミ達の物語をおとぎ話として残そうと考えたと思う?」
ヘンゼル「そんなの…知らないよ。現実世界の奴らの考えることなんかわからない」
雪の女王「忘れてはいけないからだ。自分達が経験した辛い出来事や悲惨な歴史の真実を…時の流れに埋もれさせない為に語り継ぐんだ」
ヘンゼル「悲惨な歴史を忘れない為…?なにそれ…それじゃあまるで、僕達のおとぎ話での出来事が現実世界で実際にあった出来事みたいじゃないか」
雪の女王「そうだ。キミ達の境遇は現実世界で起きた出来事が元にされている」
雪の女王「長く続く飢饉。不足していく食料、それによって強いられる口減らし。子捨て。それは何も【ヘンゼルとグレーテル】の世界だけの出来事じゃない」
雪の女王「遠い遠い昔、現実世界でも実際に起きた出来事だ」
597: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/06(日)23:47:50 ID:B3l
雪の女王「現在の現実世界は当時と比べれば相当豊かになった。地域や国での格差はあるが、肩書も階級も持たない一般人でも食料に困らず生活できる国も多い」
雪の女王「しかし、グリム兄弟が生きていた当時よりずっと以前は…農耕技術も機械も発達していなかった。その上、その国は痩せた土地も多かったと聞く」
雪の女王「その国は長い間飢饉に悩まされていたんだ。当然食べ物は無い、子供に食べさせられず苦渋の選択として子捨てを選ぶ者もいただろう」
雪の女王「飢饉、食糧難、犯罪、口減らし、子捨て…そういう行為が横行した。現実世界でもキミ達の様に多くの子供が捨てられたり、餓死していったんだ。キミ達と同じ境遇の子供たちがたくさんいた」
ヘンゼル「……」
雪の女王「やがて農耕技術が進み、荒れた大地でも育つ芋や野菜が見つかり飢饉は解消されていった。口減らしも子捨ても行われる事は無くなった。だがその記憶を薄れさせてはいけないと人々は考えた」
雪の女王「時が経ち農耕技術や輸送技術が発達すればいずれ食糧難になる事もそうそうなくなるだろう、文明や経済の発達した未来では口減らしも子捨ても無くなるだろう」
雪の女王「いつかは飢饉や口減らしなんて事が現実的じゃない世の中が来る。飢饉で苦しんだ多くの人々や、捨てられたたくさんの子供の苦しみもいつかは忘れられる」
雪の女王「それではいけない、辛い歴史の記録として大飢饉の事実は後世に残さないといけないと人々は考えた。歴史の真実、辛い現実を糧として生きる為に」
ヘンゼル「…現実世界の人間は自分達を襲った大飢饉での悲惨な歴史を後世に伝える為に、僕達のおとぎ話を作ったの?」
雪の女王「私がかつて現実世界に赴いたときヴィルヘルムに聞いた事が真実ならば、そうなるな」
ヘンゼル「おとぎ話を盛り上げる為のただの設定じゃなかったんだね…僕は現実世界の人間が自分の私利私欲のために悲惨な境遇の僕達を作って利用したとばかり考えていたけど」
雪の女王「確かに童話集の作者としてグリム兄弟は富も名声も得ていたけど、それは私利私欲のためという訳ではなかったよ」
雪の女王「兄弟は少し変わり者だったが…特に弟のヴィルヘルムは私達からすれば少し信じられない事を口にしていた」
598: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/06(日)23:49:41 ID:B3l
ヘンゼル「何を言っていたの?その、ヴィルヘルムは」
雪の女王「ある時、ヴィルヘルムはグリム童話の加筆修正作業を行っていた。そのおとぎ話は…大飢饉の末に両親に捨てられる兄と妹のおとぎ話だった」
ヘンゼル「それって…僕達の事だよね?」
雪の女王「ああ、ヘンゼルとグレーテル…キミ達の事だな。だがその兄と妹は実の父親と……実の母親に捨てられたんだ。キミ達の様な継母じゃなく、実の両親に捨てられた」
ヘンゼル「? …僕達とは、別のおとぎ話なの?僕とグレーテルを捨てたのは実の父親と継母だよ?」
雪の女王「いいや、キミ達のおとぎ話【ヘンゼルとグレーテル】だ。ヴィルヘルムが加筆修正する以前、元々のキミ達は父親と継母じゃなく実の両親に捨てられるという内容だった」
ヘンゼル「…なんでそこだけ変えたの?そんな細かい修正、必要なの?現実世界の奴らの考える事なんてやっぱり良くわからない」
雪の女王「私は気になってヴィルヘルムに聞いたよ、何故二人が捨てられるという運命は変わらないのにそんな細かい部分を変えるんだ?とね、すると彼はこう答えた」
ヴィルヘルム『飢饉が生んだ悲劇のせいでヘンゼルとグレーテルはこの後、捨てられて魔女に襲われてしまう。しかし、自分達を捨てたのが実の両親だというのはあまりに悲惨すぎる』
ヴィルヘルム『せめて…継母の口車に乗せられて捨てられたという内容の方が…少しでも、彼らの心の救いになるだろう』
ヘンゼル「……」
雪の女王「作者といえどもキミ達の境遇を変える事は出来ない。いや、作者だからこそ変えてはいけなかったんだ。キミ達の辛い境遇は、かつての現実世界の人々が経験した歴史の真実……それを捻じ曲げては意味が無い」
雪の女王「それでもヴィルヘルムはせめてキミ達の心の救いになればと思って、その部分を修正した」
雪の女王「彼は当然、おとぎ話の世界が存在する事なんか知らない。自分の書いたおとぎ話はあくまで作品の一つ、それなのに彼は主人公のキミ達の為に内容を変更したんだ」
599: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/06(日)23:50:53 ID:B3l
ヘンゼル「…そんな些細な変更、何になるっていうんだ。実母だろうと継母だろうと僕達が捨てられたことに変わりないんだ」
雪の女王「確かに些細な変更だ、キミ達が実の母親に捨てられようと継母に捨てられようとおとぎ話の内容や現実世界の人間にたいした影響は無い」
雪の女王「だがキミ達にとっては大きな違いじゃないか?優しい母親に捨てられるのと意地悪な継母に父親をそそのかされて捨てられるのとでは随分と意味が違うと思うが」
ヘンゼル「…まぁ、そうかもしれないけど」
雪の女王「キミは書庫にあるグリム童話をいくつも読んだだろう?ならばわかるはずだ、ヤーコプとヴィルヘルムはキミ達の様な罪のない子供が悲しい経験や辛い結末を与えるおとぎ話ばかり書いていたか?」
ヘンゼル「…いいや、そんな事は無かったよ。【星の銀貨】みたいに優しい女の子が幸せになるおとぎ話もあったよ」
雪の女王「そうだろうな、グリム童話集には百以上もおとぎ話がある。【星の銀貨】の様な救いのあるおとぎ話もあれば【トゥルーデおばさん】のような悲惨なおとぎ話もある」
雪の女王「ヘンゼル、グリム童話に限らずおとぎ話には存在する意味がある。作者がおとぎ話を生み出すのは私達を不幸にする為でも幸せにする為でもない」
雪の女王「誰かに何かを伝える為。その為に作者はペンを取り、私達はその為に生み出された」
ヘンゼル「何かを伝える為に、僕達おとぎ話の主人公は生み出された…パパさんやお千代も、そうなの…?」
雪の女王「ああ、そうだ。そして私達に込められた作者の想いは何十年何百年も先の未来であろうと何千何万キロ離れた別の国だろうと届けられる、言葉や人種の壁など容易く乗り越えてな」
雪の女王「だから辛い境遇を我慢しろ、なんて言わない。だがなヘンゼル、少しは世界の見え方が代わってくるんじゃないか?」
ヘンゼル「……」
雪の女王「キミ達は必要とされて生まれてきた。確かに辛い運命を強いられていると感じるかもしれない、しかしそれは作者が誰かに伝えたい大切な事だ」
雪の女王「今のキミにそれを理解して受け入れろと言うのは少々酷かもしれない。だから、焦る必要は無い私の元のゆっくりと成長していけばいい、キミが慕う弥平の様な心優しい人間に」
ヘンゼル「…わかった。しばらくはお千代の所にはいかない。グレーテルの側に居るよ」
雪の女王「そうか、ならば足元の氷は溶かしておこう。ヘンゼル、キミには時間がたくさんある、悩んで悩んでキミが鳴りたいと思う人間になると良い。それじゃあ、おやすみ」パタンッ
600: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/06(日)23:52:09 ID:B3l
雪の女王の宮殿 廊下
カイ「珍しいな、あんたがあんな事まで喋るなんて」
雪の女王「…なんだカイ、盗み聞きなんて趣味を始めたのか?それじゃあグレーテルやお千代に近づけさせられないな」フフッ
カイ「人を変態のように言うな。お千代に着替えを渡して、あんたに言われた事は住ませたから報告に来たんだ。まぁ確かにお前達の話は聞こえちまったけどな。ヴィルヘルムの事、初耳だぜ」
雪の女王「誰にも言うつもり無かったからな。本当はヴィルヘルムが加筆修正をしたことも、【ヘンゼルとグレーテル】の成り立ちも…言わないつもりだったんだが、話す事になってしまった」
雪の女王「下手におとぎ話の成り立ちや作者が込めた気持ちに関して詳しく話してしまうと、ヘンゼルとグレーテルがいつかおとぎ話を大切に思えるようになった時、自分達のおとぎ話を消してしまった事に責任を感じるかもしれないからな」
カイ「まぁ、確かにそういう事もあるかもしれねぇけどな。で、それじゃあなんで言ったんだ?」
雪の女王「このままだとヘンゼルは憎悪を手放せなくなると思ったからな」
雪の女王「彼にとって作者は自分やお千代を悲惨な運命に縛り付ける輩だった。弥平にお千代、そして多くのおとぎ話で辛い思いをする登場人物のためにヘンゼルは悲しみ、そして憤るだろう」
雪の女王「ヘンゼルはまだ悲しみを正しく受け止める事も憎悪を飼いならす事も出来ない。他人の為に悲しんだり怒れる事は良い事だ、しかしその感情を制御しきれないとなるとそれはとても恐ろしい」
カイ「まぁ、実際問題…ヘンゼルが暴れたのは弥平やお千代の為だもんな。つっても、それで村を焼き払うってのは過激すぎる。確かに何度もこんな事してたら洒落にならねぇな」
雪の女王「方法を知らないんだ、彼は。正しい怒り方を知らない、正しい悲しみ方を知らない、そして正しく他人を信用する方法を知らない」
カイ「だから作者が悪い奴じゃないぞって事、とりあえず教えてやったのか。少しでもあいつの憎悪を和らげるために」
雪の女王「ああ言えば彼も少しは作者の事を見直すだろう。本当は彼自身が気づく方が良い、しかし期を逃せばヘンゼルは戻れないところまで行ってしまうと思ったんだ」
カイ「まぁこう言うのもなんだが……このままだとあいつは大人や現実世界の奴を憎しみ過ぎてとんでもない事しでかすような気はするけどな」
雪の女王「それは防ぎたい、彼の為にもな。だが私に出来るのはこのくらい、あまり私の考えを押し付けすぎるのは間違っていると思うんだ。だからあとはヘンゼルが成長するのを見守るだけ……」
雪の女王(どれだけ時間がかかっても良い、私に手伝える事ならば手助けする。だからキミが望む正しい大人に成長してくれ、ヘンゼル)
601: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/06(日)23:56:20 ID:B3l
雪の女王の宮殿 ヘンゼルとグレーテルの部屋
グレーテル「……スゥスゥ」スヤスヤ
ヘンゼル「……僕は、どうすればいいんだろうね。グレーテル」ナデナデ
ヘンゼル「女王は心配を掛けた上に無茶苦茶した僕をまだ家族だと言ってくれた。そんな女性が言うんだ、作者にだって良い大人はいるんだと思う」
ヘンゼル「でも、たとえそうだとしても…ヴィルヘルムが僕達の為に救いを与えてくれたのだとしても……やっぱり、僕は……」
――グレーテル「ねぇ、お兄ちゃん…私達、本当に捨てられちゃうの…?」ポロポロ
――グレーテル「……お兄ちゃん、私……頑張ったよ……頑張って……あの魔女、殺したの……」
――弥平「いいか、お前等と父ちゃんはここでお別れだ!オラはちょっくら犀川の神様のご機嫌取りに行ってくるからよぉ…しっかり協力して立派な大人になれ、いいな?」
――お千代「……っ!そんなことされたら父ちゃん死んじゃうんよ……!ばあちゃん、離して欲しいんよ!父ちゃんを助けるんよ!」ジタバタ
――お千代「だからうちはもう…何も喋らない方がいいんよ…」ポロポロ
ヘンゼル「許せない……例え善人だとしてもグレーテルやお千代に辛い運命を押し付けた作者を……僕は許す事は出来ない」
ヘンゼル「今回は僕が未熟なせいでグレーテルにも辛い思いをさせて女王やカイにも心配を掛けた。だから、もっと強くなろう……強くなって何もかも守れるようになるんだ」
ヘンゼル「そしていつか僕の家族を脅かす大きな悪が現れたら、今度こそ僕はこの身体を犠牲にしても感情を代償にしてでも…絶対に護り抜く、絶対に……!」
・・・
602: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/06(日)23:59:44 ID:B3l
今日はここまでです
女王の言葉を理解できても目の当たりにした惨状を振り払えないヘンゼル
ヘンゼルとグレーテル。キジも泣かずば編 次回に続きます
603: 名無しさん@おーぷん 2015/09/07(月)00:06:24 ID:0YO
乙です!
うぅ…。ヘンゼルの気持ちもわかるけど………。
続き待ってます!!
605: 名無しさん@おーぷん 2015/09/07(月)02:13:58 ID:sbn
>>1さん乙です!
女王の言葉が胸に染みました…
こんな時に青い鳥だとかが現れたらと思うと怖ろしい…
ヘンゼル達に幸あれ
とにかく報われて欲しいです
次回も楽しみにしています!!
606: 名無しさん@おーぷん 2015/09/07(月)06:43:05 ID:mMj
乙です
何だかキモオタが恋しいw
616: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/11(金)23:26:40 ID:apV
それから月日は流れ……
雪の女王の世界 雪の女王の宮殿 キッチン
・・・
カイ「お前が書庫に居ないなんて珍しいと思えばこんなところに居たのかグレーテル」ガチャッ
グレーテル「あっ……カイお兄ちゃん……どうしたの……?」カチャカチャ
カイ「お前、治癒系の魔法について調べたいって言ってただろ?いくつか参考になりそうな魔法書が見つかったから渡してやろうと思ってな」
グレーテル「ありがとう……お千代ちゃんや女王さまには内緒で調べたかったから……持ってきてくれて嬉しいの……」
カイ「内緒だって言ってもよ、あの二人お前が魔法の勉強してる事知ってると思うぜ?何も言わねぇだけで」
グレーテル「そうかな……?でもお千代ちゃんも女王さまも私が魔法の勉強してるって知ったら、心配して止めるんじゃないかな……?」
カイ「お前が夢中になって勉強してるの知ってるから止められねぇんだろ。それにお前はもうあんな無茶しないって信じてるんだろうぜ」
グレーテル「うん、もう無茶な魔法の使い方はしないよ……でも少ない魔力で傷を治す魔法が使えたら……みんなが怪我しても私が治してあげられるでしょ……もしそんなふうにできたらすごく嬉しい……私もみんなの役に立ちたいもん……」
カイ「それで治癒魔法か…まぁ周りに迷惑かけない程度に頼むぜ。それよりもお前は今日のメシ当番じゃないだろ?何を作ってるんだ?」
グレーテル「卵料理作ってるの……これは、えっと……潰したゆで卵……?」
カイ「潰したゆで卵は料理じゃねぇ。しかしなんだこれ……なんでこんな大量のゆで卵潰してんだお前。何の儀式かと思ったぞ……」
グレーテル「儀式じゃないよ……お料理だよ……カイお兄ちゃん……あれ、見て……」スッ
617: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/11(金)23:28:20 ID:apV
ヘンゼル「…殻だけ割るイメージ…ゆで卵の殻だけ割るイメージ。殻だけ…中身は傷付けない、エッグスタンドも壊さないように……」ブツブツ
カイ「……なんでゆで卵とにらめっこしてんだあいつ」
ヘンゼル「……っ」スッ
パキッパキパキッ
ヘンゼル「よし…!綺麗に割れたっ、少しずつコントロールできるようになってきたぞ。あっ、グレーテル!このゆで卵も潰してくれるかな?」スッ
グレーテル「わかった……今日はたまごサラダたくさん食べられるね……」カチャカチャ
ヘンゼル「十分すぎるくらいにね。さて、今日は女王が居ないから直接教えて貰えない分キチンと練習しないと。えっと、次の卵は…」スッ
カイ「おい待て、宮殿の卵使い果たすつもりか。何してるんだお前」
ヘンゼル「あれ、カイ来ていたの?なにって、魔力コントロールの練習だよ。卵使うのも魔力使うのも女王には許可貰ってる」
グレーテル「女王さまからの宿題……中身のゆで卵やエッグスタンドを傷付けずにゆで卵の殻だけ魔力で割るんだって……」
ヘンゼル「最初はちょっと苦戦したけどもう慣れてきたよ。食べ物で特訓するなんて嫌だったけど…でも魔力のコントロールにはこの方法が一番らしいから仕方ないよ」
カイ「どうでもいいけどなぁ…お前この間制御しくじって書庫の壁壊しただろ?あんなのはもう勘弁しろよ、広いところでやれ広いところで」
ヘンゼル「平気だよ、魔力のコントロールには慣れてきてる。例え一日中グレーテルと手をつないでいても魔力を流し込むかどうかは僕自身で調整ができる、もうあの日のような失敗はしないよ」
カイ「そうかよ、まぁ俺の読書の邪魔しねぇならいいさ。どうでもいいけどよ、このゆで卵五人で食いきれるのか?俺はあんまりゆで卵って好きじゃねぇんだ」
ヘンゼル「そんな事言わないでさ、悪いけど付き合って貰うよ?頼むよカイお兄ちゃん」フフッ
カイ「テメェはまた都合のいい時ばっかりそんな呼び方しやがって……まぁいい、その程度の協力ならしてやるか」
・・・
618: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/11(金)23:30:02 ID:apV
ヘンゼル(パパさんが人柱にされたあの日からどれくらいの月日が流れただろうか)
ヘンゼル(安静にしていたおかげでグレーテルは何日か後にはもう普段通りの生活ができるまで回復していた、後遺症も特に残らなかったのは女王の処置が適切だったからだと思う)
ヘンゼル(グレーテルが元気になってから僕達二人は改めて女王の部屋を訪れた。心配を掛けた事と勝手に宮殿を出ていった事、そして言いつけを破った事を謝った。そしてこれからも一緒に居たいことも伝えた)
ヘンゼル(勝手な事をして迷惑を掛けた事は叱られたけれど、女王は優しく微笑んで僕達を抱きしめてくれた)
ヘンゼル(宮殿には新たな家族としてお千代を迎え、五人になった家族は幸せに暮らしていた。宮殿は極寒の大地にそびえていたけれど、僕は寂しさや辛さを感じた事は無かった)
ヘンゼル(助けあったり、ふざけ合ったり、笑いあったりして…僕達は長い長い時間を共に過ごしていた。平和で、すごく幸せな毎日だ)
グレーテル「……私にもっとすごい魔法が使えたら……卵元通りに出来たりするのかな……?」
ヘンゼル「駄目だよ、例え出来ても僕は魔力を貸さないからね?」
グレーテル「わかってる……でもちょっぴりの魔力なら平気なのに……お兄ちゃん心配性なの……」
ヘンゼル(グレーテルはあの日から少しずつ魔法について勉強している。正直、僕は今すぐに辞めさせたいけど…)
ヘンゼル(確かに少しの魔力で使える魔法なら身体への負担も少ないようだし、魔法の素質があるグレーテルなら一般的には弱い魔法でも強力な効果を得られるらしい)
ヘンゼル(とはいえ僕はグレーテルには魔法を使うのはやっぱり控えて欲しい、なにせそのせいで死に掛けたんだから。だけど頑張って魔法の勉強をしているグレーテルの姿をみると、どうにも強く言いだせない)
ヘンゼル(本人は家族の役に立ちたいという一心で勉強をしているから頭ごなしに止めるのも気が引ける。どっちにしろ僕が魔力を貸さなければ滅多な事は出来ないから、僕はもうなにも言わないようにしている)
ヘンゼル(きっと、魔法を使う事が危険だと言う事はグレーテルも理解してるんだと思うし…そのうえで家族の為に勉強しているというのはきっとそれほど僕達の事を大切にしてくれてるからだ)
ヘンゼル(だから、僕も同じ時期から魔力のコントロールの訓練を始めた。もうグレーテルを傷付けない為に)
619: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/11(金)23:33:14 ID:apV
ヘンゼル(僕には魔力を扱うセンスも魔法を行使する素質もまるでない。でも鍛錬を続けていれば魔力を打ち出す度に腕を潰さなくても済むくらいにはコントロールできると女王に聞いた)
ヘンゼル(何度も言うようだけど僕にはセンスも素質もない。それでも努力は無駄じゃなかったようで女王の厳しい特訓は魔力のコントロールを可能にした、まだ全然完全ではないけれど)
ヘンゼル(特訓は容易いものじゃなかったけどグレーテルが努力してるんだ、僕だけ何もしないわけにはいかない。それに僕だって全て守れるくらい強くなりたいって気持ちはあるんだ)
カイ「しかし、女王とお千代は今日も二人で外出か。最近多いと思わないか?どこで何してるんだかしらねぇけど、外出が多いのは気になるよな」
グレーテル「カイお兄ちゃん……やきもち、良くないよ……?」
カイ「違ぇよ。俺は心配してるんだ、どっかの兄妹みてぇに急に居なくなって迷惑かける奴もいるからな。なぁ?ヘンゼル、グレーテル」
グレーテル「カイお兄ちゃんイジワルなの……その話出すの……ズルイ……」プクーッ
ヘンゼル「随分経つのにいつまでたっても言われてるよね……もうずっと言われるパターンだよ、これ」
ガチャ
遠くに聞こえるお千代の声「ただいま戻ったんよー、みんなどこにおるんー?」スタスタ
ヘンゼル「噂をすればだね。帰ってきたみたいだ。お千代ー!僕達はキッチンに居るんだ。キミもおいでよ!」
ヘンゼル(魔法の勉強をしたり、魔力のコントロールを学んだり…僕とグレーテルはあの日を境に以前とは大きく生活が変わった。だけど、年齢も外見も変わっていない)
ヘンゼル(女王が言っていたように【ヘンゼルとグレーテル】で年齢の変化が無い僕達はこれ以上年齢を重ねる事は無い、それはカイも同じで年月は経っても三人とも子供のままだ。だけどお千代だけは違った)
成長したお千代「ヘンゼル、グレーテル!それにカイ、ただいま!お土産買って来たから、みんなで一緒に食べるんよ」ニコニコ
ヘンゼル(前は僕達と変わらないくらいの年齢だったのに、お千代はすくすく成長して今ではすっかりお姉さんだ)
620: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/11(金)23:35:22 ID:apV
成長したお千代(以下、お千代)「それにしてもヘンゼルは一人でも魔力のコントロールの訓練頑張ってて偉いね、ご褒美にナデナデしてあげるんよ」ウフフ
ヘンゼル「遠慮しとくよ。それよりお千代って最近女王様に似てきたよね。唐突に撫でようとするところとか」
お千代「そうなんかな?もしかしてヘンゼルはうちに撫でられるんいやなん?」
ヘンゼル「嫌じゃないけど、なんだか変な感じなんだよ。なんというかこう、もやっ…とするんだ」
ヘンゼル(慣れはしたけど僕にとってお千代は妹のような存在だ。だから目の前にいる綺麗な黒髪のお姉さんがお千代だというのはいつまでたっても少し不思議な感じがする)
グレーテル「お姉ちゃんになったお千代ちゃん……私はもう慣れちゃった……それに私、どんな姿になってもお千代ちゃんの事大好き……だからナデナデしていいよ……?」
お千代「うふふ、うちもグレーテル大好きなんよ。もちろんヘンゼルの事もカイの事も好きなんよ、だからカイもナデナデしてあげるんよ」ウフフ
カイ「おいやめろ。外見はお前の方が年上に見えるとしても本当は俺の方が年上なんだ、妹分が兄貴の頭撫でるとかありえねぇだろ」
お千代「うふふ、カイは相変わらず厳しいんよ。それじゃあ妹らしくお兄ちゃんの為にお茶を入れてあげるんよ。グレーテル、手伝ってほしいんよ」スッ
グレーテル「うん……わかった……」スッ
ヘンゼル(女王が言うには……)
雪の女王『お千代は【キジも鳴かずば】のおとぎ話の中では幼い子供だ。しかし、そのおとぎ話の結末でお千代は大人へと成長した姿でキジを撃ち落とした猟師の目の前に現れる』
雪の女王『おとぎ話の住人は基本的に歳を取らない。けれどお千代のように物語の結末までに年齢を重ねる人物の場合は別の世界に居ても一定の年齢までは成長する』
ヘンゼル(ということだった。とはいっても、年齢が変わったから姿が変わったからといっても特に僕達の関係に変化があるわけでもなかった)
ヘンゼル(子供だろうが大人だろうがお千代はお千代。僕の大切な家族の一人、その事には変わりが無いんだ)
621: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/11(金)23:37:08 ID:apV
雪の女王「お千代は本当に働き者だな、今日は疲れただろうに」フフッ
ヘンゼル「おかえり。お千代がお茶入れてくれてるから女王も入ってきたら?」
雪の女王「フフッ、キミ達はあれか?もしかして私を避ける為にわざわざキッチンに集まっているのか?隣の部屋に立派な食卓があるだろうに」フフッ
カイ「パーティや茶会ならまだしもちょっと茶を飲むくらいならキッチンで済ませるだろ。冬を司る魔女が湯を沸かす程度の火にビビるなよ」
雪の女王「フフッ、キミは相変わらず失礼だな、私はただ熱が籠り易い場所にはあまり居たくないだけだよ。お千代、すまないが私にはアイスコーヒーを頼む」スッ
お千代「はーい、女王は本当に冷たい飲み物好きなんね。宮殿は寒いから身体を冷やさないようにしないといけないんよ?」カチャカチャ
雪の女王「気づかいはありがたいが私は雪の女王だ。身体が冷えていれば冷えているほど…大気が冷たければ冷たいほど力が増すんだ。だから身体が冷えるのは好都合だ」
お千代「そう言われればそうかも知れんね、じゃあ女王様には冷たいコーヒーと…ヘンゼルとカイには温かい紅茶なんよ」スッ
カイ「おう、悪いな。俺はこいつと違ってこんな場所で冷たいもんなんか馬鹿馬鹿しくて飲む気しねぇからな、こっちの方がありがたいぜ」ズズー
ヘンゼル「またカイはそんな憎まれ口を叩いて…素直に美味しいって事だけ言えば良いのに」
雪の女王「フフッ…この方がカイらしいじゃないか、私は嫌いじゃないぞ?ただあまり口が過ぎるのは感心しないな、愛しい家族が一人氷漬けになるのは私も辛い」フフッ
グレーテル「ねぇ女王さま……私ね……宮殿のエントランスががらんとしててなんだか寂しいと思う……氷像つくるなら……そこに飾ったらいいと思うの……」チラッ
雪の女王「そうだな、私も同じ考えだ。口の悪い少年の氷像なんてどうだろう、寂しいエントランスがグッと賑やかになる」クスクス
カイ「グレーテルお前…さっきの仕返しかそれは、女王に余計な事吹き込むんじゃねぇよ」
グレーテル「気のせい……何度もあの日の事言われるの嫌だからカイお兄ちゃんにシカエシしたとか……そういうんじゃないよ……全然違うよ……」
お千代「うふふ、みんな仲良くしなきゃいけないんよ?ほらほら、みんなでおみやげのお菓子食べるんよ、今日のおみやげは街で噂のチョコレートなんよ」ガサガサ
622: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/11(金)23:39:30 ID:apV
グレーテル「チョコレートおいしい……チョコレートは甘いから大好き……ビスケットの次に好き……」モグモグ
お千代「グレーテルは美味しそうに食べてくれるからうちも嬉しいんよ。カイはビターチョコレートが好きだったと思うんよ、はい」スッ
カイ「おっ、悪ぃな」パクッ
雪の女王「家族相手でも気づかいを忘れない精神、立派だな。これも私の教育の賜物というわけだ」フフッ
お千代「うふふ、それならうちは女王様にもっと感謝しないといけないんよ」ウフフ
ヘンゼル「…ねぇ、女王にお千代。さっきカイも気にしてたんだけどさ…近頃よく女王と二人で出掛けるけど、どこに行ってるの?」
雪の女王「どうしたヘンゼル、藪から棒に」
ヘンゼル「いや、本当は前から気になってはいたんだよ。最近は結構頻繁に二人で出掛けるし、何かあるのかなって思ってね」
グレーテル「私も……気になってた……おみやげのお菓子も楽しみだけど……どこに出かけてるのかも気になってたの……」モグモグ
お千代「うーん…えーっと、えっとね……」
カイ「なんだ?俺達には言えないような場所なのかよ?」
お千代「そういうわけじゃないんよ?でも……女王様……うち、どうしたらいいかわからないんよ……言っていいのかな?」チラッ
雪の女王「隠すような事じゃないだろう。それにいずれは話さないといけない事だ、キミが良いのならこの場で全て話せばいいさ。むしろ良い機会だ」
お千代「うん、えっとね……三人には言ってなかったんけど……うち、どうしてもやりたいことがあってね。近頃よく出掛けてたのはその為の準備を女王様に協力してもらってたからなんよ」
お千代「それでね、うちがやりたい事はここにいたら出来ない事なんよ。だから…うちはこの宮殿を出ていく事に決めたんよ」
623: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/11(金)23:41:28 ID:apV
ヘンゼル「ちょっと待ってよ、お千代が宮殿を出ていく?そんなの聞いてない。僕は嫌だよ、お千代が居なくなるなんて」ガタッ
グレーテル「そうだよ……私、お千代ちゃんと一緒に住めないの……寂しい……だから出て行っちゃうなんて言わないで……」
お千代「うちだってみんなと離れ離れは寂しいんよ。だから二人とも寂しそうにしないでほしいんよ…」
雪の女王「ほらヘンゼルにグレーテル、お千代が困っているだろう?お千代は自分の夢をかなえる為に宮殿を出て行く、家族なら引きとめたりせず応援してあげるべきだろう?」
ヘンゼル「そうかもしれないけどでもこんな急に…今日だって僕が聞かなかったら言わずにいたつもりなんでしょ?お千代も女王もなんでそんな大切な事教えてくれないんだ…!」
カイ「落ち着けよヘンゼル。俺達に言えば心配かけちまうから黙ってたんだろ、察してやれ」
ヘンゼル「察しろって……僕達は家族なんだぞ、心配するのはあたりまえじゃないか」
カイ「心配だからどこにも行くなって言うのが家族か?こいつになにかやりたい事があってそれを叶えるために出て行くってなら別にいいじゃねぇか」
お千代「黙っててごめんねヘンゼル、時期を見てみんなにはちゃんと報告するつもりだったんよ」
ヘンゼル「…いや、僕こそごめん。突然の事過ぎて取り乱してしまった。お千代が良く考えて決めた事だろうし、僕が反対する事じゃないよね」
グレーテル「夢をかなえる為って言ってたよね……お千代ちゃんが夢をかなえられるなら……私も嬉しい。でも、寂しいのは……やっぱり寂しい……また、すぐに会えるよね……?」
お千代「もちろんなんよっ。うちは別の世界でお仕事をする事になってるんだけど、お休みの日なら会えるんよ!だからその時はいっぱい遊ぶんよ、たまには帰ってくるんよ」ニコニコ
グレーテル「うん……約束……」
カイ「それにしても…夢、ねぇ…俺お前からそういう話聞いた事ねぇけど…お前の夢ってのはなんなんだ?」
お千代「うん、うちの夢はね……」
お千代「大勢の子供達を幸せに出来るような、優しい大人になる事。なんよ」
624: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/11(金)23:43:46 ID:apV
ヘンゼル「それがお千代の夢なの?」
お千代「そうなんよヘンゼル。うちは優しい大人になって…たくさんの子供達を笑顔にしたいんよ」ニコニコ
カイ「なんて言うか、もう少し具体的なもんを想像してたんだがな。そもそもお前はもう優しいじゃねぇか、年齢的にも大人だろ」
グレーテル「うん……お千代ちゃん……もう優しいと思うよ……?十分、優しい大人だよ……?」
雪の女王「キミ達の気持ちはわかるがここはお千代の話を聞こう。お千代、続けて。子供たちの笑顔を望むキミは何を決意したのか…三人に聞かせてやるといい」
お千代「そうやね、どこから話したらいいんかな……」
お千代「実はね、うちが優しい大人になりたいと思ったのはヘンゼルが聞かせてくれたおとぎ話がきっかけなんよ」
ヘンゼル「あぁ、そう言えばお千代が病で寝込んでいる時に僕がおとぎ話を聞かせた事があったね、でもきっかけになるようなおとぎ話…聞かせたかな?」
お千代「あの時ヘンゼルと一緒に読んだ【マッチ売りの少女】の絵本…あのおとぎ話を初めて聞いたとき泣いて泣いて、二人に心配かけちゃったの今でも覚えてるんよ」ウフフ
グレーテル「私も覚えてる……お千代ちゃん、マッチ売りちゃんが可哀そう可哀そうって何度も言ってわんわん泣いてた……どうしていいかわかんなかった……」
ヘンゼル「そう言えばそんなこともあったね」
お千代「その時思ったんよ…うちは優しい大人になろうって」
お千代「辛い思いをしてるマッチ売りちゃんに手を差し伸べられるような素敵な大人になりたいって…うちは【マッチ売りの少女】のおとぎ話を聞いてそう思ったんよ」
625: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/11(金)23:46:34 ID:apV
カイ「その気持ちは立派だと思うが具体的にはどうするつもりなんだ?」
グレーテル「具体的……?カイお兄ちゃん……それどういう事……?」
カイ「助けを求めてる子供たちにどんなふうに手を差し伸べてやるかって聞いてるんだ。マッチ売りはその最たる例なだけで、助けを必要としてる子供なんてのはどんな世界にも山ほどいるぜ?」
カイ「一つ一つの世界へ渡って腹を空かせてる子供に飯を与えてやるのか?貧しい子供に金を恵んでやるのか?言っちゃ悪いがそんなことチマチマしたところで根本的な解決にはならねぇぜ」
お千代「そうやね、うちも出来る事ならしてあげたいけど…とてもじゃないけど、実際には難しいんよ。でも考えはあるんよ?」
カイ「言ってみろ、お前はどんな方法で子供達を救うつもりなんだ?」
お千代「あくまでうちの考えなんやけどね、大勢の子供たちが幸せになる為の一番の方法って…子供たち一人一人が優しい心を持つ事だと思うんよ」
お千代「子供たちが優しい心を持てば、いつかその子供たちが大人になった時…世界には優しい心の大人たちであふれているんよ、そうすれば辛い思いをする子供は居なくなるんよ」
グレーテル「本当だ……お千代ちゃんのアイディア凄い……」
カイ「そうか?そりゃあ理屈ではそうかもしれねぇけど、俺には夢物語に思えるぜ?第一、どうやって子供たちに優しい心を持たせるんだ?難しいと思うぜ」
ヘンゼル「もしかして、お千代。キミが考えている事って……」ガタッ
お千代「ヘンゼルは察しがついた見たいやね」ウフフ
お千代「カイは難しいっていうけど…うちは子供が『優しい大人になりたい』って思う時がどんな時か知ってるんよ」
お千代「子供達は辛い境遇の子供が主人公のおとぎ話を聞いたとき、きっと優しい大人になりたいと思ってくれるんよ。かつてのうちがそうだったように」
お千代「だから、大勢の子供たちにうちがしてあげられる事は……おとぎ話を読み聞かせしてあげる事なんよ」
626: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/11(金)23:48:53 ID:apV
お千代「【キジも鳴かずば】の主人公のうちが言うのもおかしい話やけど、おとぎ話って凄い力があると思うんよ」
お千代「ヘンゼルがうちに話してくれたおとぎ話、書庫で読んだ絵本や女王様が聞かせてくれたたくさんのおとぎ話…本当にいろんなおとぎ話を読んだんよ」
お千代「楽しいおとぎ話、悲しいおとぎ話、恐いおとぎ話、いろんなおとぎ話に出会ったけど……その度にうちはワクワクしたり涙を流したりドキドキしたり……いろんな感情を持てたんよ」
お千代「実はうちな…あの日、父ちゃんがうちの手毬唄のせいで人柱にされた時…もう二度と喋らない方がいいんじゃないかって思ったんよ」
お千代「でも、しばらく考えて…それは違うって思ったんよ。父ちゃんを亡くしたから喋る事を封じるなんて間違ってる。だって、うちは知っていたんよ」
お千代「言葉は口にすることで誰かを不幸にする可能性だってあるけど、誰かを幸せにすることだってできるんよ」
お千代「だってヘンゼルがうちにそうしてくれたんやから。ヘンゼルが聞かせてくれたおとぎ話はうちを楽しい気持ちにさせてくれたんよ」
ヘンゼル「お千代……」
お千代「だから今度はうちが子供たちにおとぎ話を聞かせてあげる番なんよ」ニコッ
カイ「お前はさっき言ってたな、別の世界で仕事をするって。そこで子供たちにおとぎ話を聞かせてやるつもりなのか?」
お千代「うん。うちがお仕事する場所、図書館なんよ」
お千代「図書館の司書さん…書物を管理するお姉さんになって、図書館に来た子供たちにおとぎ話を聞かせたあげるんよ」
お千代「いろんなおとぎ話を知っているうちが現実世界の司書さんになって子供たちが優しい心を持てるようにおとぎ話を読み聞かせする」
お千代「それが…うちのやりたい事なんよ」
627: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/11(金)23:51:29 ID:apV
カイ「なるほどな、難しい事に変わりは無いと思うがやってみりゃいい。面倒じゃない程度の協力はしてやるぜ」
グレーテル「なんだか……お千代ちゃんのやりたい事……壮大なの……私じゃ思いつかないの……現実世界に行っちゃうとか……考えつかないの……」
ヘンゼル「……よりによって現実世界なんだね」ギリッ
雪の女王「……ヘンゼル」
ヘンゼル「……」ギュッ
お千代「ヘンゼルは現実世界の人の事、あんまり良く思ってないから心配してくれると思うけど……うちは大丈夫なんよ?」
お千代「現実世界ではどんどんおとぎ話が忘れられていってるようなんよ。折角素敵なおとぎ話はたくさんあるのに…そんなの寂しいんよ」
お千代「だから現実世界に決めたんよ。でも心配することないんよ、うちが現実世界に行っても大丈夫なように女王様に頼んで色々として貰ってるんよ」ニコッ
雪の女王「お千代が司書として働くのは日本という国だ。お千代の故郷の遠い未来だ。トラブルが起こらないように根回しはキチンとしてある」
雪の女王「滞りなく生活ができるように陰でお千代も色々と勉強をしていたんだ、何も心配する事は無い」
ヘンゼル「……お千代が決めた事だ、僕だって応援する。でも……僕に現実世界の奴等を信用しろって言うのは……やめてほしい。どうしても、出来ないよ」
お千代「ヘンゼル…」
雪の女王「ひとつ、話しておこうか。ヘンゼル」
雪の女王「…お千代のおとぎ話【キジも鳴かずば】は消滅してしまったが……あの後、弥平が人柱にされた後本当はどういう結末を迎えるか、詳しくは教えていなかったな?」
雪の女王「いいかいヘンゼル、これが本来お千代が歩むはずだった人生だ」
628: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/11(金)23:52:18 ID:apV
・・・
キジも鳴かずば(結末部分)
弥平は僅かな米と小豆を盗んだ罪で人柱にされてしまいました
お千代は自分が歌った手毬唄が原因で父親が人柱にされてしまった事を村人から聞き、犀川の土手で泣き続けました
何日も何日も泣き続けましたが、やがてその泣き声も聞こえなくなりました
それからというものお千代は一言も口を利かなくなってしまったのです
それから何年も何年もの月日が流れ、お千代も美しい娘へと成長していきました。しかし、お千代はやはり一言も口を聞きませんでした
やがてお千代は村から姿を消し、その村に弥平とお千代という親子が居た事もしだいに忘れられていきました
そんなある年の事、とある猟師がキジを撃つ為に山に入りました
ケーンと大きな鳴き声を上げて飛び立つキジを猟銃ですかさず撃ち、猟師はキジを撃ち落とした場所へと向かいました
するとそこには死んでしまったキジを抱きかかえる一人の女性が居たのです、その女性はあの日父親を人柱にされてしまったお千代でした
猟師が唖然としているとお千代はゆっくりと口を開きました
「キジよ。お前も鳴かなければ撃たれなかったのにね」
お千代は自分が手毬唄を歌ってしまったばかりに弥平を失ってしまった事を
鳴き声を上げたがために殺されてしまったキジに重ねて、そう一言つぶやきました
お千代は再び口をつぐみ、キジを抱きかかえたままどこかへ姿を消しました
それからというものお千代の姿を見たものは、もう誰もいませんでした
おしまい
・・・
629: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/11(金)23:55:19 ID:apV
ヘンゼル「……」
雪の女王「わかるかヘンゼル」
ヘンゼル「……女王が言いたい事はね」
雪の女王「…キミは【キジも鳴かずば】で自分の行動を悔いていたな。自分がいなければ弥平やお千代が幸せになったのではないかと悩んでいた」
雪の女王「だが、お千代が言葉を封じ込めて辛い人生を歩まず……自分の言葉で子供達を幸せにしようと考える事が出来たのは」
雪の女王「まちがいなく、キミやグレーテルが側に居たからだ。兄妹が側に居たからその考えにたどり着けた」
お千代「そうなんよ、うちが今幸せでいられるのは…ヘンゼルのおかげでもあるんよ?」
ヘンゼル「……僕は、何も出来てないよ。ただ、側にいることしかできてない」
雪の女王「キミが思っている以上にそれは重要な事だ、ヘンゼル」
グレーテル「……」コクコク
ヘンゼル「……お千代が現実世界へ行くのは、今でも僕は賛成できない。でも、反対もしない」
ヘンゼル「お千代が決めた事だから僕はもう引きとめたりしない。ただ、その代わり…僕も現実世界へ行く。だから……」
ヘンゼル「雪の女王。僕にも現実世界に行く為に必要な事、教えてほしい」
630: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/11(金)23:57:18 ID:apV
現在
現実世界 廃墟
ヘンゼル「それからしばらくしてお千代は現実世界へと旅立った、図書館の司書になる為にね」
グレーテル「それから少し遅れて……私とお兄ちゃんも現実世界へ来たんだよ……そのためにたくさん勉強したの……」
キモオタ「ちょ、ちょっと待っていただきたいですぞ」
ヘンゼル「なに?まぁ、これで僕の話はおしまいだけど…何か質問でもあるの?」
キモオタ「大ありですぞwwwヘンゼル殿の話だと、なんというかあれではござらんか!司書殿は実は現実世界の人間ではなく…」
キモオタ「消滅してしまった【キジも鳴かずば】の主人公、お千代殿であると言う事でござろう!?」
ヘンゼル「だからそう言ってるじゃないか、折角話してやってるのに何でまともに聞いてないの?」
グレーテル「キモオタお兄ちゃん……ヘンゼルお兄ちゃんのおはなし、ちゃんと聞いてなかったの……?もしそうなら酷いの……」
ラプンツェル「ぷぷーっ、怒られてるーっ!ちゃんとお話聞いてなきゃ駄目だよキモオター!」ケラケラ
孫悟空「あんまり理解出来てねぇ顔してるお前がそれを言うのか」
ラプンツェル「私はちゃんと聞いてたからね!あれだよね、噂のチョコレートがおいしい話でしょ?」ニコニコ
孫悟空「やっぱりお前理解出来てねぇじゃねぇか!そこは重要じゃねぇ!」バンッ
キモオタ「いやいや、お主たち騒いでいる場合では無いですぞwwwこれ結構な大事でござろうwww」ドゥフ
ヘンゼル「…まぁ、聞いていようがなかろうがどうでもいいよ。あんた達に何か期待してなんかいないから」フイッ
グレーテル「お兄ちゃん……」
キモオタ「しかし、これでハッキリしましたぞ!」
キモオタ「あの小柄な男の名を知っている理由が。あとはティンカーベル殿にこの事を伝えて司書殿……いや、お千代殿の捜索を急いでもらわねばなりませんな!」ピッポッパ
631: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/11(金)23:59:38 ID:apV
今日はここまでです
魔法で偽装した住民票を市役所に持って行く雪の女王
魔法で偽装した書類を持ってアパート契約する雪の女王
ヘンゼルとグレーテル。キジも鳴かずば編 次回に続きます
632: 名無しさん@おーぷん 2015/09/12(土)00:05:55 ID:xGd
乙です!
キモオタたちに物凄い安心感を感じたw
633: 名無しさん@おーぷん 2015/09/12(土)00:06:28 ID:ug7
乙!
何というか…すげぇな
634: 名無しさん@おーぷん 2015/09/12(土)00:06:41 ID:RUu
>>1さん、乙です!
予想外すぎる展開でこれからワクワクしてきます…
久々のキモオタやラプちゃん登場もよかったです
次回からの司書どn…お千代殿救出作戦に期待です!!
637: 名無しさん@おーぷん 2015/09/12(土)01:20:15 ID:iSB
雪の女王とラプ可愛いw
乙でした!
655: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/16(水)23:54:38 ID:CNh
現実世界 廃墟
キモオタ「……というわけなのでござるよ、ティンカーベル殿」
ティンカーベルの声「…わかった!犯人をやっつけるには名前当てる必要があって司書さん探せば全部解決だってことだね!でもまさか司書さんが私達と同じおとぎ話の住人だったなんてびっくりだよ!」
キモオタ「ですなwww我輩も驚きを隠せないwwwしかしヘンゼル殿グレーテル殿が犯人の名前を口に出来ない以上、司書殿に頼る他ありませんからな」
キモオタ「時間の猶予はまだあるでござる。しかし何らかの拍子に犯人が司書殿の正体に気がつく可能性もあるでござる、急かすようで悪いでござるけど…」
ティンカーベルの声「大丈夫!任せて!大急ぎでぴゅーっと探すから!だからもうちょっと待ってて!」
キモオタ「申し訳ないですな。我らが総出で司書殿を探せば解決の鍵を持っている事に感づかれるかもしれないので…ここはティンカーベル殿が頼りなのでござる」
ティンカーベルの声「うん、平気だよ!人質隠すなら建物の奥かなーって思って奥の方から探したのが悪かったかな…別の場所探してくる、じゃあ後でねキモオタ!」
キモオタ「くれぐれも気をつけていただきたいwwwでは後ほどwww」コポォ
孫悟空「離れた仲間と会話ができる魔法具か…一見地味だがありゃあ相当な魔力と知識が無いと作れねぇだろうな」
ラプンツェル「【シンデレラ】の魔法使いに作ってもらったんだって!羨ましいよねー魔法具っ!私も何か作ってもらおうかなー?」
孫悟空「羨ましいってお前…魔法具なんか無くても十分だろ。その魔力を纏った髪の毛は唯一無二のもんだ、それをまず大事にしやがれ」
グレーテル「うん……私は魔法具もないし、魔法も一人だけじゃ使えないから……ラプお姉ちゃん羨ましいな……髪の毛も綺麗で長い……」
孫悟空「だとよラプ公。髪の毛とは言ってもこの孫悟空の腕力を持ってしても引きちぎれない強靭さがある、それを自在に操れるってんだからなかなかに強力だぜ」
656: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/16(水)23:57:20 ID:CNh
孫悟空「重い物掴んで振り回せば強力な武器できるし、敵の拘束なんざお手のものだろうしな。お前の母親や王子が【ラプンツェル】でそうしたように移動なんかにも使えそうだ…汎用性の高い能力ってのは使いようによっては化けるぜ」
ラプンツェル「えっへへぇーっ、そんなにすっごく褒められると照れちゃうよーっ!でもさっきも言ったけど刃物には弱いし、操作って言っても私が操ってるから同時に何でもたくさん出来ないし、そんなに強い能力じゃないよぉー」テレテレ
グレーテル「やっぱり弱点を堂々と言っちゃうんだ……それに悟空さんも他の人褒めたりするんだね……【西遊記】読んだけど……悟空さんって自分勝手で乱暴で気づかいなんかできない暴れ者のお猿さんのイメージがあるの……」
孫悟空「俺の印象散々じゃねぇか!だがお前も大概だぞ、本人を前にして自分勝手で乱暴とかよく言えるぜ…まぁ思い切りがよくて衝動的に行動するって性格は【ヘンゼルとグレーテル】のまんまだな」
ラプンツェル「でも私がすごいなら悟空なんてもっともっと凄いよね!悟空は変身したりいっぱいになったりする魔法も使えるし、さっき棒伸ばして戦ってるの凄かった!」
孫悟空「おう、こいつは俺の武器『如意棒』だ。伸縮自在で伸ばせば天さえも穿てるってぇ代物だ。無茶苦茶重てぇから俺以外の奴じゃあまともに扱えねぇ…俺の自慢の武器だ」クルクルー
ラプンツェル「長くも短くも出来るって便利だよねー、それに長くしたらどんなにおっきなピザ生地も伸ばせるよねっ!」
孫悟空「如意棒を麺棒扱い扱いするんじゃねぇ!なんで竜宮に伝わる伝説の武器でピザ生地伸ばさなきゃならねぇんだ、何考えてんだお前」
ラプンツェル「何考えてるかって言われても…えっとね短い麺棒だとうまくピザ生地が伸ばせないでしょ?このまえピザ作ろうとしたらそれで失敗しちゃったんだ。だから如意棒をめいっぱい伸ばしてそれd」
孫悟空「そういう意味じゃねぇ!買えっ、長い麺棒を!」バンッ
ラプンツェル「でもピザなんてそんなにいつも作るものじゃないからその為だけに麺棒買っても結局そんなに使わずにキッチンの隅で埃かぶっちゃうしなぁ……そう言う事って良くあるよね?」
孫悟空「んなこたぁ俺ぁ知らねぇよ!じゃあ毎日作りゃあいいだろうが!」バンッ
ラプンツェル「でも毎日ピザだと飽きちゃわない?ねぇねぇグレーテルはなんのピザが好き?私はねぇブロッコリーとサラミとねー……」
グレーテル「ラプお姉ちゃん……なんでピザの話になってるの……?孫悟空さんも律儀に付き合わなくてもいいのに……」
孫悟空「クソッ!ラプ公と話してるとどうもこいつのペースになっちまう…おいキモオタァ!話が終わったならお前こっち戻ってこい、そしてこいつ何とかしやがれ!話がそれ過ぎなんだよこいつ!」
657: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/16(水)23:59:33 ID:CNh
キモオタ「ドゥフフwwwお待たせしましたなwwwティンカーベル殿に事情は話しておきましたぞwww急いでくれるようでござるwww」コポォ
孫悟空「おう、そりゃあ何よりだがよぉ…それよりもラプ公だ!こいつどうなってんだ!緊張感がねぇどころの騒ぎじゃねぇぞ!?」グイッ
キモオタ「ラプンツェル殿に緊張感を求める方が愚かですぞwww諦めた方が賢明ですなwww」コポォ
ラプンツェル「二人とも私に緊張感ないみたいな言い方して酷いよっ!だってお千代ちゃんが見つかればあの悪い奴の名前もわかるんでしょー?待つしかないんだから焦ったり気を張っても仕方ないよ、楽しく待とうよー」ニコニコ
ラプンツェル「ピリピリしながら待つ一時間も、ニコニコ楽しく待つ一時間も同じ一時間なんだから。それならみんな楽しい方がいいなぁ私はー」ニコニコ
キモオタ「まぁ、そりゃあそうですなwww我々に出来る事は待つ事だけでござるからなwww」
孫悟空「理屈はわかるが納得いかねぇ…こんなヘラヘラした小娘に一瞬でも拘束されちまったと思うと頭痛がしてきやがる……この世界に来て腕が鈍っちまったかクソッ!」
グレーテル「……しょうがないよ……気にしちゃダメだよ悟空さん……」ポンポン
孫悟空「なんで慰められてるんだ俺ァ……おいキモオタァ!こいつらお前の連れなんだからなんとかしろテメェ!」ボカッ
キモオタ「ちょwww痛い痛いwwwカリカリしてはいけませんぞ悟空殿wwwカリカリなのはカリカリベーコンだけで十分ですぞwww」コポォ
ラプンツェル「そうだよー!イライラしたら駄目だよ悟空ー、スマイルスマイル」ニコニコ
孫悟空「テメェが原因だろうが!お師匠の念仏から解放されたってのになんで頭痛に悩まされなくちゃなんねぇんだ俺は!」バンッ
658: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/17(木)00:00:54 ID:PiQ
ギャーギャー ワーワー
ヘンゼル「…あんた達さ、大人の癖に何で大人しく出来ないの?」
グレーテル「お兄ちゃん……」
ヘンゼル「お千代が見つかれば確かにあいつを倒せる。だけどまだ何も解決してないんだよ?」
ヘンゼル「僕達はあいつを倒したわけじゃない、倒せる見込みがあるだけだ。それなのに油断し過ぎだと思うけど、もう少し静かにティンカーベルを待てないの?」
ラプンツェル「心配なのはわかるけど大丈夫だよー、人質って言うのは傷つけたら意味が無いらしいからお千代ちゃんも大切にされてるはずだよー?きっと怪我なんかしてないy」ムギュ
孫悟空「おいラプ公やめとけ。テメェのペースに乗せられた俺が言うのもなんだが、騒いだ俺達がどう考えても悪ぃんだ」
孫悟空「勝機が見えて俺も少し油断しちまったな…まだ人質が解放されたわけじゃねぇ、気を緩めるには早ぇって事だ。ヘンゼルは間違った事言ってねぇ」
ラプンツェル「そっかぁ……私ちょっとデリカシー無かったかなー?じゃあおとなしくしてよっかグレーテルー」ナデナデ
グレーテル「うん……そうだね……」
キモオタ「ヘンゼル殿……」
ヘンゼル「……」フイッ
キモオタ(我輩はヘンゼル殿が憎む作者と同じ現実世界側の人間、故にヘンゼル殿が心を開いてくれるまでに時間がかかってしまうのはともかく……悟空殿やラプンツェル殿にも心を許せぬでござるか)
キモオタ(犯人側に居た孫悟空殿はともかくラプンツェル殿は親しみやすい人柄でござるのに…グレーテル殿は多少懐いているようでござるけどヘンゼル殿も同じように…とはいかないでござるか)
キモオタ(我輩が思っていたよりヘンゼル殿の過去は壮絶でござった。それでもヘンゼル殿の憎しみを何とかしたいと言う気持ちはあるでござるが、恐らく今の我輩には何もできないでござる)
キモオタ(司書殿を完全に救いだせるまでは…今は無理に歩み寄るよりも見守るべきでござろう。しかし、一人で思いつめ過ぎて滅多な事にならなければいいのでござるが……)
659: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/17(木)00:01:56 ID:PiQ
現実世界 廃墟 ある一室
ティンカーベル(……さっきの部屋もハズレ。司書さんどこに閉じ込められてるのかな?)ススッ
ティンカーベル(……キモオタは言ってたっけ、犯人は名前を当てられたら力を失うらしいって)
ティンカーベル(人間じゃないのは確かだけどなんていう種族なんだろう、ホビットとかドワーフかな?私達と同じ妖精じゃないと思うけど……)
ティンカーベル(でも、妖精じゃないとしてもちょっぴり私達と似てるかも)
ティンカーベル(たったひとつの言葉が弱点だってところは私達妖精と同じだし……っと、ダメダメ!今は司書さん探すのに集中しないと!)
ヒラヒラヒラ
ティンカーベル(あっ、あの部屋…扉がちょっとだけ開いてる…)ギィッ
ヒラヒラ
ティンカーベル「誰も居ないかな……?」スッ
司書「……っ!」ンーンー
ティンカーベル「居たっ!こんなところに縛られてたんだね…待ってて!今ロープ解くから!」グイグイ
パサッ
司書「ケホケホッ……助けてくれてありがとう妖精さん、でもどうして妖精さんがこんなところに…?」
ティンカーベル「もちろん司書さんを助けに来たんだよ!もう安心だからね、私が助けに来たんだからっ!」フンス
660: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/17(木)00:03:54 ID:PiQ
司書「でもどうしてこの場所がわかったの?とっさのことで助けを呼ぶことも手掛かりを残す事も出来なかったのに…」
ティンカーベル「司書さんが誘拐された後ね、ヘンゼルとグレーテルのとこに誘拐犯から手紙が届いたんだって、それでグレーテルがキモオタに助けを求めに来てくれたんだよ。あっ、司書さんの事情も簡単にだけど聞いたよ、【キジも鳴かずば】の事もね」
司書「そうだったんですね。グレーテルにキモオタさんを紹介しておいて本当に良かった…もしも二人だけなら誰にも助けを求めずにここに来たと思うから」
ティンカーベル「いくら魔法が使えるって言っても、子供二人じゃ危ないし心配だもんね。だから私達が来たんだしねっ」
司書「キモオタさんに助けを求めたのがグレーテルだけということは、ヘンゼルは私を誘拐した犯人に逆上して飛び出して言ったってところかな?」
ティンカーベル「うん、凄く怒って部屋を飛び出して行ったって聞いたよ」
司書「もう、ヘンゼルは相変わらずなんよ……」ハァ…
ティンカーベル「なんよ?」
司書「えっ、あっ、なんでもないよ!ここにいたらまた犯人が来るかもしれないから早く逃げましょ、妖精さん外まで案内してくれる?」
ティンカーベル「もちろんそれは良いけど…その前に一個だけ謝っとくね」フワフワ
司書「私、何か謝られるような事を妖精さんにされたかな?」
ティンカーベル「司書さん、私の事見えるでしょ?でもその事最初隠そうとしてたから…司書さんの事悪い人かもって疑っちゃってたんだ、ごめんね」
司書「あっ【こびとの靴屋】の読み聞かせの時の……あれは隠そうとしたわけじゃなくて、初対面のキモオタさんに妖精が見えるなんて言ったら不審に思われると思って…」
ティンカーベル「そっか、そうだよね!深い意味なんか無かったんだよね!よかったー、それならいいんだよー」ニコニコ
661: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/17(木)00:06:14 ID:PiQ
司書「もしかして妖精さんに嫌な思いさせちゃったかな?そんなつもりは無かったんだけど」
ティンカーベル「うーん、嫌な思いっていうかね…見えるのに見えないって言われるのとか、居るのに居ないって思われるのは私達妖精にとってすごく悲しい事なんだー」
ティンカーベル「だから私達の事が見えるならその存在を信じて欲しいな。誰かに変な風に思われるから見えないって言うとか、妖精が見える事がみんなと違うから居ないって言うのは…絶対にやめてほしいな、私」
司書「…妖精さんって消滅したおとぎ話【ピーターパン】のティンカーベルちゃんだよね?」
ティンカーベル「あれっ?私の名前知ってるの?そうだよっ、だから司書さんもティンクって呼んでもいいよ!でも良く考えたらキモオタが私の名前呼んでるの見てたなら、私の名前知ってるのも当然かー」ニコニコ
司書「うん、それもあるんだけど。ティンクちゃんが存在を信じて欲しいって言う理由…私、知ってるから」
ティンカーベル「そっかー、この事知ってるって事は司書さんは【ピーターパン】のおとぎ話の内容知ってるって事だよね?」
司書「うん、ワクワクする素敵なおとぎ話だったの覚えてるよ。あっ、でもピーターパン君のお友達のウェンディちゃんにヤキモチやいてあんな事するのは流石にやりすぎだよ?」
ティンカーベル「? 私ウェンディとは知りあったばっかりだけど別に仲悪くないよ?でもこれからネバーランドに行こうってところで大変な目にあってそれどころじゃなくなっちゃったからなぁ…あっ、でも初対面なのにピーターパンと仲良すぎるのはちょっと…かなりイラッとしたかも」
司書「じゃあまだネバーランドに行ってないんだね。どうなるのか知らないなら物語の展開話すような事はやめた方がいいかな」フフッ
ティンカーベル「ちょっとー!なにそれ気になるじゃん!私ウェンディの事嫌いになるの?えっ、私ウェンディに何するの?やりすぎって何?」
司書「それはちょっと私の口からは言えないかな…」
ティンカーベル「もぉーっ!いいよっ!絶対に【ピーターパン】の世界を元に戻すから!そして【ピーターパン】がどんなに素敵なおとぎ話なのか自分で確かめるから!」プンスカ
司書「!? ティンクちゃん…!危ないっ!」
ヒュッ ガシッ
ティンカーベル「……っ!?」ウグッ
小柄な男「おいおいおい、どういう事だこりゃあ……この世界には魔法だの妖精だのは存在しねぇんじゃねぇのか…?」
662: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/17(木)00:08:32 ID:PiQ
ティンカーベル「んぐぐっ…!離してよね!離してってば!離せバカーっ!チービ!」ジタバタ
小柄な男「クソやかましい妖精だ、ちょこまかしてた小さな魔力はテメェだったってか……おい、テメェはティンクとか言ったな?」
ティンカーベル「慣れ慣れしく愛称で呼ぶなチービ!ちゃんと『さん』を付けろバーカ!」ジタバタ
小柄な男「聞き覚えの無い名前だな、どうせマイナーなおとぎ話の妖精なんだろうが……おとぎ話の住人だってことには違いねぇ」
ティンカーベル「【ピーターパン】の事マイナーとか言うな!どーせあんたのおとぎ話の方がマイナーなんでしょ!だって私も知らないもん!やーい、ドマイナー!」
小柄な男「結構じゃねぇか、俺はその方が好都合だからな。俺の名前を知ってる奴なんてのは少ない方がいい…まぁ、この世界では誰も知らないから同じだがな」
司書「名前を知ってる人が少ない方が……好都合……?」
ティンカーベル「おとぎ話は忘れられちゃったら消えちゃうんだからマイナーじゃ困ることばっかりなのに、マイナーで結構とかどーせ負け惜しみでしょ!」
小柄な男「口が過ぎるぞ小賢しい妖精め」ギュッ
ティンカーベル「うぐっ…!離せ…!離せーっ!」バタバタ
司書「その子は私を助けに来てくれただけなの、苦しんでるから離してあげて!」
小柄な男「そうだ、それだ。なんでこの妖精はテメェを助けに来てるんだ?今テメェ等が探すべきなのは人質じゃねぇ、俺の名前のはずだ。人質を助けても名前がわからなけりゃあ一緒だからな」
小柄な男「キモオタとかいう男が言うには廃墟内をうろついてる気配……つまりティンクとかいう妖精は俺の名前の手掛かりを探す為に廃墟を嗅ぎまわってる。って事だったが?どうなってる?」
ティンカーベル「言うわけないでしょバーカ!」ベーッ
小柄な男「……ああ、そうか。解ったぞテメェ等のたくらみが……!まんまと騙されちまうところだったぜ、俺の名前を探す時間をくれっていうのはただの口実で本当は人質の救出が目的だったって事か!」
小柄な男「あいつ等の気配は初めの部屋から動いてねぇ、名前探しせずに人質探しをするって事は答えはひとつだ。つまり……テメェ等はもう俺の名前に既にたどり着いているって事だな!?」
663: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/17(木)00:11:39 ID:PiQ
現実世界 廃墟
・・・
ラプンツェル「こっちの髪束をこーするでしょ?そしたら今度はそっちのをそーして、あっちのをあーして編み編みしていってー」アミアミ
グレーテル「可愛い髪形……ラプお姉ちゃんいろんな編み方知ってて凄いの……まるで私じゃないみたい……」
ラプンツェル「私もいっつも自分の髪の毛しか触らないからグレーテルの髪の毛いじるの楽しいよぉ〜」ニコニコ
キモオタ(あれから大人しくしているもののラプンツェル殿にはやはり緊張感が無いですなwww)
キモオタ(しかし、別の事をすることでグレーテル殿の不安が和らいでいるのであれば良い事でござる。しかし…あれはどうなんでござろうか)
孫悟空「4998回…!4999回…!5000回…!」フンフンッ
キモオタ「いやはやwwwこんな時に鍛錬とは恐れ入りますな悟空殿www何が起きるかわからない故に体力は温存した方がいいのではwww」
孫悟空「素振り程度じゃ疲れを感じすらしねぇよ。ただ、なんだ…身体を動かしてる方があれこれ深く考えずに済むからよぉ」フンフンッ
キモオタ(悟空殿も人質を取られていたのでしたな。どれだけ粗暴で豪快で強くて何が起きても平気そうな顔をしていても人質にされている者の事が不安な事に変わりなどないのでござろうな…)
キモオタ(そしてヘンゼル殿は…)チラッ
ヘンゼル「……」
キモオタ(やはり自分から我々に関わろうとはしないでござるな…元々ヘンゼル殿は一人きりで司書殿を助けに来たのでござった、それだけの覚悟は持ち合わせているのでござろう…)
ザッ
小柄な男「おうおう、テメェ等……俺様の名前を当てねぇとヤベェってのに……髪弄りに思索に素ぶりか、随分と暇そうにしてやがるなぁ大丈夫か?」クックック
キモオタ「お、お主…何故こんな早く…!まだ時間に猶予はあるはずですぞ!?」
664: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/17(木)00:14:41 ID:PiQ
孫悟空「そうだぜ、約束の時間はまだ先だ。テメェ…俺達の邪魔をする為に来たってぇんじゃねぇだろうな!」
小柄な男「そう喚くな。どうも騒がしいから人質の様子を見に行ったらとんでもねぇ事に気がついてな……テメェ等の連れの妖精がこいつの事を探してた」
小柄な男「折角だ…もう最後になっちまうしな、俺様は寛大だから別れの言葉くらい交わさせてやろうと思って二人まとめて連れて来たってわけだ」ドサッ
司書「ヘンゼル!グレーテル!二人とも私を助ける為にそんなに傷だらけで…!」ケホケホ
ヘンゼル「お千代…!無事!?見たところ怪我はしてない様だけど…」
グレーテル「お千代ちゃん……無事でよかった……」
孫悟空「再会を喜んでるところ悪ぃけどよぉ…その妖精、ティンカーベルがいねぇぞ…?」
キモオタ「本当でござる…!お主、ティンカーベル殿はどこでござるか!?」
小柄な男「焦るんじゃねぇよ、妖精はここだ」スッ
ぐるぐる巻きにされたティンカーベル「うぅ……ごめんねキモオタ。司書さん見つけたのは良かったんだけど…捕まっちゃって、みんなの作戦台無しにしちゃった…」
キモオタ「…心配いりませんぞ。危険な目にあわせてしまって申し訳ない…もうしばしの辛抱でござるよティンカーベル殿」
小柄な男「しばしの辛抱?驚いたなぁ、テメェこの期に及んでまだ全員で生きて帰れると思ってるのかよ?」
ラプンツェル「キモオタ!あいつ、絶対何か企んでるよ!私達の考えも全部知られちゃってるのかも…!」
小柄な男「アホ女にしては察しがいいな。その通り、テメェ等の魂胆は全てお見通しって訳だ、この俺様の手にかかればなぁ!」
小柄な男「テメェ等が俺様の名前に既にたどり着いてるって事はお見通しなんだよぉ!!」ハーッハッハッハ
665: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/17(木)00:17:27 ID:PiQ
キモオタ「お主…!ひとまずティンカーベル殿を離していただきたい…!」グッ
小柄な男「おっと、駄目だ。こいつは俺の最後の切り札…妙な真似はするなよ?名前を呼ばれる寸前にこいつを握りつぶすくらい容易いぜ?」
孫悟空「この野郎…!」ギロッ
小柄な男「おっと、テメェの人質だって解放してねぇんだぜ?あの娘を殺されたくなけりゃあ指くわえて見てろ。おとぎ話界最強の猿人、孫悟空よぉ?」
孫悟空「クソッ…あの野郎、調子に乗りやがって……!」
キモオタ「……お主、我々の魂胆を全て見抜いたと言っておりましたな?」
小柄な男「おう、まったくよぉ、俺様もまんまと騙されちまったぜ。だが結局無駄になっちまったなぁ!」
キモオタ「ほうwwwはたして、本当に我々の策を見抜いているのでござるかなwww」コポォ
小柄な男「…あぁ?ヘラヘラしやがって、随分と余裕じゃねぇかテメェ」
キモオタ「余裕も何もwwwお主が我々の策を見抜いたというのがどうもウソ臭いというかどうせハッタリでござろうそんなのwwwさしずめ勝ち目が薄くなったとみて難癖をつけにきたと見ましたぞwww」ドゥフフ
小柄な男「テメェの連れの妖精が人質になってるのを忘れたか?こいつの命は俺様の手のひらの上なんだよ!」
キモオタ「こいつの命は俺様の手のひらの上なんだよ(キリッ)wwwwwwwww」
小柄な男「……っ」ギリッ
キモオタ「ドゥフフwwwハッタリでないと言うなら聞かせていただきたいものですなwwwお主が見抜いたという、我々の策をwwwどうせ無理でござろうけどwww」
小柄な男「上等だ…!ここだとキモオタとか呼ばれてたな……テメェが必死で考えた出来損ないの策がどんなもんか、聞かせてやろうじゃねぇか…!」イライライラ
666: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/17(木)00:20:02 ID:PiQ
ティンカーベル(キモオタがあからさまに煽ってる……時間を稼いでチャンスをうかがってるんだ……)
小柄な男「テメェはあの時…俺様にこういう取引を持ちかけたな?」
小柄な男「『名前を考えるから時間に猶予をくれ。時間までに名前が当てられなければ魔法具をやる』ってな。俺は魔法具につられてまんまと了承しちまった」
キモオタ「確かにそんな感じの事を言いましたなwww」
小柄な男「だがテメェはもうその時点で俺様の名前を探す必要なんか無かったんだ。俺様の名前を知っている奴が既にいたんだからな!」
キモオタ「なるほどwwwそうきたでござるかwww」
小柄な男「だがそこで俺の名前を良い当てる事は出来なかった。何故なら、人質の司書とかいう女の安全が確保できてなかったからだ」
小柄な男「テメェは前もってこの妖精に司書を探させていた。司書の安全が確認できていないのに俺の名前を当てるのは危険だ、テメェ等側の考えなら司書を取り戻したうえで俺の名前を当てたい」
小柄な男「しかし俺に直接『人質を探す』とはいえねぇ、だから『名前の手掛かりを探す』という口実で妖精に人質探しを続行させた…!」
キモオタ「ほうwwwそれでそれでwww」
小柄な男「テメェ等は……いや……」
小柄な男「キモオタ。テメェは既に俺様の名前を知っていた。」
キモオタ「ほう、我輩が実は既にお主の名前を知っていると?だから司書殿ではなくティンカーベル殿を人質にしたというわけでござるかwww」
小柄な男「へへっ、その通りだ!テメェの魂胆なんざ見え見えだったってわけだなぁ!」
ラプンツェル「ねぇねぇ孫悟空、あいつの予想全然まちがtt」モガモガ
孫悟空(解ってんだよんな事ぁ!お前ちょっと黙ってろ!)ヒソヒソ
667: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/17(木)00:23:48 ID:PiQ
小柄な男「先入観ってのは恐ろしいよなぁ…現実世界に居る奴だから現実世界の人間だなんて考えは危険だって学んだぜ」
小柄な男「そりゃあそうだよなぁ?ティンクとかいう妖精、ヘンゼルとグレーテル、ラプンツェル……そして俺様に孫悟空。これだけおとぎ話の住人が居るんだ、もう一人いたって不思議な事はねぇ」
小柄な男「キモオタ……テメェもおとぎ話の住人だったってわけだ、だから俺様の名前を知っていた!」
キモオタ「なるほどwww我輩がおとぎ話の世界の住人という予想ですなwww残念でござるが我輩は現実世界の人間でござるwww」コポォ
小柄な男「クックック、今更取り繕おうったって無駄無駄!もうテメェの正体も察しがついてるんだからよぉ!」アッハッハ
小柄な男「どうやったか知らねぇけどなぁ…どうやって俺様の監視をかいくぐったか知らねぇけどなぁ……孫悟空はうまくやったみてぇだなぁ!うまいこと旅の仲間に危機を知らせたんだからよぉ!」
キモオタ「お、お主の予想というのはもしや……」
小柄な男「キモオタ…いいや、テメェは現実世界の人間なんかじゃねぇ!俺様を騙す為に現実世界の人間のフリをしていただけだ、キモオタなんかじゃねぇ!」
小柄な男「テメェの正体は【西遊記】の登場人物、そして孫悟空から何らかの方法で助けを求められてやってきた孫悟空の仲間……!」
小柄な男「テメェの正体はブタの妖怪ッ!猪八戒だ!!」バーン
キモオタ「……」
668: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/17(木)00:27:32 ID:PiQ
小柄な男「観念するんだなキモオタ…いいや、猪八戒!テメェの浅知恵なんざ俺様には通用しねぇ!!」
ティンカーベル「……」ポカーン
ヘンゼル「……」ハァ…
グレーテル「……」
ラプンツェル「ねぇねぇ孫悟空!キモオタってそんなに猪八戒に似てr」モガモガ
孫悟空「おう、黙ってろお前」ムギュッ
小柄な男「な、なんだテメェ等の反応は…ははぁん、俺様の予想が完璧だったってぇんで万策尽きて放心状態ってわけか?」
キモオタ「その通りでござるよー、我々の完敗でござるー」
ティンカーベル(キモオタものっすごく棒読みだ……)
小柄な男「お、ようやく認めたか!!そうだよなぁ!俺様の推理は完ぺきだった、テメェ等は負けちまったのさ!アーハッハッハ……!」
司書「……元々のおとぎ話と同じですね」
小柄な男「…ん?なんだぁ?」
司書「勝利を確信して、油断して……言わなくてもいい事を口にして自分自身の首を絞めてしまう……」
司書「無駄口に関しては私も人の事言えませんけど……でも、口は災いの元っていう教訓はお互いしっかり胸に刻んだ方がいいかもしれませんよ?失敗を糧にしないと成長できませんから」
小柄な男「はぁ?テメェ何を言って……」
司書「そうですよね、ルンペンシュティルツヒェンさん…?」
小柄な男「……なん……だと……っ!?」ガタッ
ルンペンシュティルツヒェン「何故現実世界の小娘が俺様の名前を知ってやがる!?何故、猪八戒じゃなくテメェが…!?」シュオオォォォォ
684: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/21(月)23:39:11 ID:1F9
【ルンペンシュティルツヒェン】
とあるところに貧しい粉引きと娘が住んでいました。
ある時、粉引きは王様に謁見する機会があり、その時ついこんなウソを口にしてしまいました
「私の娘は藁を紡いで黄金にする事が出来る」
その事を聞いた王様は大変驚きましたが黄金を紡げるというその娘を城に招きました
王様は大量の藁と小さな糸車と一緒にその娘をお城の一室に閉じ込めて黄金を紡ぐように命じました。
もしも黄金を紡ぐ事が出来なかったら処刑すると言い残てし王様は外から部屋に鍵を掛けて去って行きました
もちろん娘は黄金を紡ぐ方法など知りません。困り果てて泣いていると部屋の隅から小柄な男が顔を出しました
事情を話すと小柄な男は言いました「俺様が黄金を紡いでやろう。その代わりお前のしているネックレスを貰うぞ」
娘がネックレスを手渡すと、男は藁を糸車に巻きつけぐるぐると回し始めました。するとどうでしょう、辺りの藁が瞬く間に黄金へと変わっていたのです
翌日、王様が部屋に訪れると山のような黄金が紡がれていました。王様は大喜びで追加の藁を娘に渡してまた鍵を閉めてしまいました
夜になると同じように小柄な男がやってきました。今度は娘の指輪と引き換えにまた山のような黄金を紡ぎました。
さらに翌日、王様はさらに黄金が紡がれている事に感心して娘に追加の藁を渡して言いました。この藁を全て紡げば私の妃にしてやろう。と
夜になるとまた同じように小柄な男がやってきましたが、娘にはもう何も渡せるものがありませんでした。すると小柄な男はこう言いました
「それならお前が王の妃になって、王との間に生まれた子供を俺様に寄越せ。その約束ができるなら黄金を紡いでやる」
娘は悩みましたが、黄金を紡げなければ殺されてしまいます。しぶしぶでしたが小柄な男の提案を飲んでしまいました
翌日、部屋の中に山と積まれた黄金を見た王様は約束通り娘と結婚をしました。貧しい粉引きの娘は王の妃になる事が出来たのです
それから一年ほどの時が経ち、王と女王の間には可愛らしい赤ちゃんが生まれました。すると女王の部屋の隅からあの日の小柄な男が現れました
「あの日の約束を果たして貰うぞ、その赤子を受け取りに来た」と男は言いますが、可愛い子供を渡すわけにはいきません。女王が泣いて頼みこむと小柄な男は言いました
「それなら三日後までに俺の名前を当てて見ろ。当てる事が出来たら子供は諦めてやる」
それから女王は必死に国中…いや世界中のあらゆる名前という名前を調べさせました。しかし、男の名前が当てられないまま一日、二日と過ぎて行きました
約束の日が迫り、女王が困り果てていると一人の兵士が数日前に森の中で不思議なものを見たと報告してきました
兵士が言うには森の中で背丈の小さな男が楽しげに歌っていたというのです
『フンフーン。今日はパンを焼いて過ごす、明日はビールをこしらえる、そして明後日は女王の赤子が手に入る日っ!俺様の名前がルンペンシュティルツヒェンだと言う事は世界中の誰も知りはしない!』
翌日、嬉しげに姿を現した小柄な男に女王はその名前を付きつけました
見事に名前を当てられてしまった小柄な男は逆上し、怒りのあまり自分自身の身体を引き裂いてしまいました
女王は大切な赤子を男に渡すことなく幸せに暮らしました
おしまい
・・・・・・・
685: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/21(月)23:40:35 ID:1F9
現実世界 廃墟
ルンペンシュティルツヒェン(以下ルンペン)「ぐああぁぁぁ……ッ!お、俺様が蓄えた魔力が…この世界を牛耳る為の力が……!」シュオオォォォ
グレーテル「ルンペンシュティルツヒェンのおじさんから……煙が上がってる……魔力、流れていってる……」
ラプンツェル「あっ!グレーテルあいつの名前言えるようになってるっ!名前ちゃんと当てられたからけーやくとかいうの効かなくなっちゃったのかな?」
ピキキッ パリーン
ヘンゼル「あいつに巻かれていた黄金の首輪が砕けた、完全にあいつの能力は打ち消されたみたいだね。もうあいつは思い通りになんかできない」
孫悟空「ヘンゼルとグレーテルの首輪が砕け散ったってこたぁ、人質にされてるあいつも解放されたってぇわけだな?よしっ、こっからは加減なしでいくかぁ!」
ルンペン「……そう簡単にいくかよ孫悟空!テメェの人質まで解放されてるなんてのは楽観的すぎるぜぇ……テメェはまだ俺の下僕だ、あの娘を殺されたくなかったらこいつ等を蹴散らせッ!」シュオオォォォォ
司書「嘘、ですね。あなたはグリム童話集の一遍【ルンペンシュティルツヒェン】の敵役、名前を当てられた以上…その契約というのは維持できないんですよね。そういう内容の約束…いいえ、契約なんですから」
ルンペン「……っ!」シュオォォォ
司書「契約を交わしていない私が名前を当てただけでヘンゼル達の首輪が砕けたんです、名前を当てられた時点であなたが行使している全ての契約は無効になる…そうですよね?」
ルンペン「俺様の作者や話の筋まで知ってやがるのか…!クソッ!クソッ!テメェ現実世界の人間じゃねぇな!?何者だテメェはよぉ!」シュオオォォォ
司書「この国のおとぎ話【キジも鳴かずば】の主人公、千代です。あなたと同じで、おとぎ話の世界の住人です」
686: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/21(月)23:42:30 ID:1F9
ルンペン「【キジも鳴かずば】…聞いた事ねぇぞそんなおとぎ話!そんなマイナーなおとぎ話の主人公に俺様が…!猪八戒に気を取られちまったばっかりに!」シュオオォォォ
キモオタ「ちょwwwだからwww我輩は猪八戒殿ではないというのにwww」コポォ
ティンカーベル「キモオター、そんなことより速く助けt」
ルンペン「……っ!そうだ…!そうだったぜ!テメェ等よく聞きやがれ!俺様にはまだ人質が残ってやがんだぜぇ!」ググッ
ティンカーベル「うぐぐっ…!こいつ、私の事なんか忘れてたくせに…!」ウググ
ルンペン「オラァ!テメェ等この妖精を殺されたくなかっったら俺様に従えぇ!!」
シュッ
ヘンゼル「その妖精って、どの妖精?僕にはあんたが人質取ってるように見えないけど」ハァ…
ルンペン「あぁ?どの妖精ってテメェの目は節穴かぁ?決まってるだろ、俺が掴んでる……ん?居ねぇぞ!?なんでだ!確かに今まで掴んでたんだぞ!?」
孫悟空「勝利を確信すると油断する、だったか。その癖直さねぇと何やってもうまくいかねぇんじゃねぇか?おらキモオタ、テメェの仲間だろ?縄を解いてやれ」ポイッ
キモオタ「おおwwwかたじけないですなwwwささ、ティンカーベル殿、すぐに自由にしますからなwww」ホドキホドキ
ティンカーベル「えっ、あっ、うん。なんか私も何が起きたのかわかんなくてびっくりした…」ポカーン
ルンペン「一瞬であの妖精を奪い返したってのか!?そんな芸当、それこそ凄まじい洞察力と機敏さがなけりゃあできねぇぞ!?それを容易くやってのけたのか!?」
孫悟空「そんな大層なもんじゃねぇよ。こんくらいの芸当、沙悟浄も猪八戒も当然のようにこなせるぜ?あぁ、猪八戒の奴はどっちかってぇとブッ倒してから取り返すかもな、あいつはその方が早ぇからよぉ」
ルンペン「俺の下僕だった時は手ぇぬいてやがったか…坊主の下僕の化け物がぁ…!」
孫悟空「おいおい、化け物じみてるから俺を脅して従わせたんだろうがテメェは。それに俺も沙悟浄も猪八戒もお師匠の下僕なんかじゃねぇ」
孫悟空「俺は三蔵法師の守護者、孫悟空だ。闇に魅入られた魑魅魍魎共の相手をしてきた俺にとっちゃあテメェなんかじゃ相手にならねぇよ」
687: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/21(月)23:44:06 ID:1F9
孫悟空「おいラプ公!こいつ拘束すんのは俺よりテメェの方が良いだろ、身動きとれねぇようにしてやれ!」
ラプンツェル「りょーかーい!よーしっ、良いとこ見せちゃうからねー!私の長い魔法の髪っ、ルンペンシューなんとかを捕まえちゃえっ!」ファサッ
ルンペン「なんだと…早ぇ!こんなもん避けられn」シュルル
ギューッ
ルンペン「クソッ!ただの髪の毛だってのに解けねぇ!いや、魔力を纏った髪の毛か……揃いも揃って化け物みてぇな連中め!」グヌヌ
グレーテル「……そんなことないよ……ラプお姉ちゃんは可愛いの……化け物なんかじゃないよ……」
ラプンツェル「えへへ〜、可愛いって言われると照れちゃうなぁ〜♪グレーテルも可愛いよぉ〜」テレテレ
ユルッ
キモオタ「ちょwwwラプンツェル殿www髪の毛緩んでる緩んでるwww」コポォ
ラプンツェル「あっ、ちょっと気抜いちゃった!大丈夫っ、もう逃げられないようにギューッってするから!」ギリギリギリ
ルンペン「ぬぐぐっ…加減しやがれアホ女が!俺の計画がうまくいってりゃあこんなネジの抜けたような奴に捕まるなんて屈辱を受けずに済んだってのに…!」ギリッ
キモオタ「これで一安心ですなwww人質は全員解放wwwラプンツェル殿の髪の毛で拘束したとなれば縄抜けも出来ないでござるしなwww」
孫悟空「いや、まだだ。おい、玉龍はどこに閉じ込めたんだ?答えて貰うぜ」グイッ
ルンペン「あぁ?教えて下さい。だろうが!この髪の毛を解いて俺様を逃がすってんなら教えてやってもいいけどなぁ!あの龍の娘の事が大切なら俺を逃がs」
孫悟空「そうかよ、じゃあ別に言わなくていいぜ。おい、ヘンゼルこいつ殺しても構わないよな?」
ヘンゼル「そんなの聞かなきゃわかんない?殺す以外の選択肢があるの?」
ルンペン「!?」ガタッ
688: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/21(月)23:46:13 ID:1F9
ルンペン「待て待て!俺を殺せばあの娘の居場所がわからねぇぞ!いいのか!?テメェの事慕ってたぞあの娘!」
孫悟空「いや、居場所が解るなら迎えに行くけどよ。テメェの契約が解けてあいつも自由に動けるならほっといても俺の所に戻ってくるだろ、ああ見えて龍だしなあいつは」
ルンペン「いや、お前待て!俺様を逃がすってなら望むだけの黄金紡いでやるっ!だから俺様を解放しろ!テメェは【西遊記】の主人公で、僧侶なんだろ!だったら殺生なんざしねぇよなぁ?」
孫悟空「テメェは何人も殺しておいて万策尽きたら命乞いか?おいヘンゼルと女どもは目ぇ塞いどけ、こいつ始末しちまうからな」
ヘンゼル「待ってよ、何言ってるの?僕がやる、そいつはお千代やグレーテル…僕の家族に手を出した。それにあんたが殺したらそいつ苦しむ間もないでしょ?」
グレーテル「そのおじさんは……お兄ちゃんにも酷いことしたの、だから私がやる……かまど、だよ」
ルンペン(おとぎ話の主人公なんざ善人ぞろいだと思って隙を見て付け込もうと思ったが…なんだこいつら、殺す気満々じゃねぇか…っ!)
ルンペン「ちょ、ちょっと待て!それでもおとぎ話の主人公かよテメェ等!」ジタバタ
キモオタ「ちょwww擁護するつもりは無いでござるがwwwなにも殺さなくても良いでござろうwww」
司書「キモオタさんの言うとおりです。ヘンゼルもグレーテルも駄目だよ、みんな無事だったんだから。殺して罪を償わせようなんて間違ってるよ?」
ティンカーベル「そりゃそーかもしれないけどさー、でもちゃんと罰を与えないといけないと思うなー」
ラプンツェル「じゃーさじゃーさ!とりあえず天上からぶら下げてグルグル回しちゃう?」
孫悟空「キモオタや司書の言いたい事もわかるけどよぉ?命乞いするしかねぇほど追いつめられてるってのに謝罪の言葉すらねぇんだ。こういう奴は反省なんざしねぇぞ?」
ヘンゼル「そうだよ、生かしておいたらまた僕達の目の前に現れるかもしれない。殺さない理由が無いでしょ」
キモオタ「二人ともは手厳しいですなwwwならばこうするでござるよ、雪の女王殿に相談すると言うのではどうですかなwww」コポォ
ヘンゼル「なんでそこで女王が出てくるの?あんたは無関係な僕の家族を巻き込もうって言うの?」
キモオタ「違うでござるよwww実は雪の女王殿はアリス殿達の一件について我輩たちに協力してくれてるのでござるwww故に女王殿の協力者の中に強固な牢を持っている者でも居ないかと思いましてなwww」
ルンペン「アリス……だと?」
689: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/21(月)23:48:03 ID:1F9
ヘンゼル「女王が…あんた達に協力してるって言うの?おとぎ話を消滅して回ってるアリスを止めるっていうあんた達の旅を…女王が助けてるって?」
キモオタ「実際にお会いした事は無いのでござるがなwww白鳥殿と親指姫殿に聞いたでござるwww一度挨拶に伺おうと思ってるのでござるし、そのついでに相談するでござるwww」
ティンカーベル「あーっ!親指姫の事思いだしたらムカムカしてきた!でも雪の女王が協力してくれてるってのは嘘じゃないよ!」
グレーテル「【みにくいあひるの子】と【親指姫】作った人……女王さまの【雪の女王】と同じ作者の人だよね……だったら女王様がその二人の事頼るのも納得なの……きっと本当の話だよ、お兄ちゃん……」
司書「キモオタさん達がしているのはおとぎ話の消滅を防ぐ旅…その手助けをするなんて女王様らしいね」ウフフ
ヘンゼル「僕はそんな事一言も、女王に聞いてない……家族の僕達には内緒で、なんでそんな危険な事を……」ブツブツ
キモオタ「何かいいましたかなwwwヘンゼル殿www」
ヘンゼル「別に…なんでもない」
ルンペン「おいっ!猪八戒!話聞いてるとよぉ、テメェはアリスと敵対してるってんだな?」
キモオタ「敵対というかwwwまぁアリス殿の企みを防ぐために旅をしているのでござるよwwwそれといい加減に猪八戒殿扱いはやめていただきたいwww」コポォ
ルンペン「だったら俺の話を聞いて損はねぇぞ!俺が居たおとぎ話の世界もアリスに消されちまってよぉ!そのうえ俺はアリスに捕まっちまった、俺の黄金を紡ぐ能力に目を付けたんだろうなぁ」
ティンカーベル「アリスに捕まったって…それって本当の話なの?」
ルンペン「ああ、保障してやる!それから【不思議の国のアリス】の世界の…ハートの女王の城の牢屋とか言ってたな、そこにぶち込まれてよぉ。俺様は何とか逃げおおせたが…そこには他にもおとぎ話の住人が捕えられていたぜ!どうだ、詳しく知りたいだろ!」
キモオタ「な、なんですと!別のおとぎ話の住人が!?詳しく聞かせていただきたい!」バッ
690: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/21(月)23:52:45 ID:1F9
孫悟空「おい、信用しちまっていいのか?デマカセ並べるつもりかもしれねぇぜ?」
キモオタ「しかし、事実ならば我々のまだ知らない情報でござる…それにアリス殿は魔力や魔法具を集めてるでござるからルンペン殿の能力に目を付けても不思議ではないですぞ」
ルンペン「おう、そうだろうが!逃げられるならそれが一番だがなにも逃がせとはいわねぇ、ただ俺を殺さない事を約束しろ!こいつらおとぎ話の主人公の癖に容赦が無ぇ…豚のテメェが一番話がわかりそうだからよ」
キモオタ「判断を下すのはあくまで女王殿でござるがwwwお主の情報が有益であれば命だけは助かる様に我輩が出来る限りの進言はしますぞwwwあと豚ではないwww」コポォ
ルンペン「仕方ねぇ、そいつで妥協してやる。生きてりゃあ逃げる隙なんざ見つかるだろうからな…まず、どこから話してやろうか」
ルンペン「テメェが言ってたようにアリスは魔法の力を集めてんだ。あちこちの世界からかき集めた魔法具を城のどこかに蓄えてる…って捕えられていた和尚が言っていたからな、間違いねぇだろ」
キモオタ「和尚殿…?司書殿、和尚が登場するおとぎ話とは何がありますかな?」バッ
司書「和尚様が登場するおとぎ話はいくつかありますけど…魔法や魔法具など不思議な力をアリスさんが求めてると言うのなら、【三枚のお札】の和尚様かもしれませんね」
ルンペン「忌々しいほどにおとぎ話に詳しい娘だぜクソッ…その上察しが良い、テメェの言うとおりそいつは【三枚のお札】の和尚だ」
司書「うふふ、私は司書ですからおとぎ話に詳しいのは当然ですよ。【三枚のお札】のお札は願いを現実にする不思議なお札です、それに筆を入れているのは和尚様でしょうから」
ルンペン「そうみてぇだな、アリスに札を書くよう強要されたが断り続けたと本人も言ってたからよぉ…で、折れたアリスは結局和尚を牢にぶち込んで別の魔法具探しを優先したってわけだ」
ラプンツェル「へーっ、じゃあその牢屋には魔法とか不思議な力を使う事が出来る人が捕まってるって事かな?」
ルンペン「間違っちゃあいねぇけど、それだけじゃねぇ。牢屋には人質にされた奴らも多く居たぜ。まぁ魔法やら使える特殊な奴がほとんどだったけどよぉ」
ルンペン「茶釜に頭としっぽが生えたみてぇな姿の狸と、薄汚い布を頭に巻いた石像も居たのを覚えてるぜ。あとはずっと眠りこけてる娘が居たな…確かオーロラとかいう名前だったか」
691: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/21(月)23:55:33 ID:1F9
司書「きっと【ぶんぶく茶釜】の狸さんですね、布を頭に巻いた石像……【笠地蔵】のお地蔵様でしょうか?オーロラ姫は【眠り姫】ですね。本当にいろんなおとぎ話を襲ってるんですね…酷い」
グレーテル「茶釜の狸さんは変化の術が得意……お地蔵様は動く事が出来る不思議なお地蔵様……オーロラ姫は……魔法とか使えたっけ……?」
ヘンゼル「使えないけど、たくさんの魔法を掛けられているからだと思うよ。オーロラ姫は生まれた時十二人の魔法使いから祝福を受けてる。それに姫が掛けられている百年眠り続ける呪いだって言ってしまえば魔法の力には違いないんだ」
ティンカーベル「やっぱ集めてるのは魔法具だけじゃないって事なんだね」
ルンペン「和尚の話だとそいつらは一部らしいけどよぉ、牢は広い。他にも捕まってる奴は居たぜ」
キモオタ「なるほど、先ほど人質として捕まっている者もいたと言っておりましたな、誰が捕まっているか解りますかな?」
ルンペン「名前は知らねぇが白いネズミの娘がしきりに泣いてたな、父親がアリスに捕まって利用されてるってな。婿探しの為に世界中を駆け回るような娘煩悩の父親らしいぜ。あとは…ああ、チルチルって小僧だ」
キモオタ「ほう、チルチル殿でござるか。詳しく聞かせていただきたいwww」
ルンペン「なんでも妹のミチルって娘がアリスの代わりをさせられてるとか言ってたな。小僧はミチルを従わせる為の人質ってわけらしい」
ティンカーベル「キモオタ、聞いた?チルチルだって…ミチルの事も知ってるなら、あいつのいってる事本当かも…」ヒソヒソ
キモオタ「デマカセにしては既に我々が得た情報と合致する部分が多いでござるし、とりあえず信用してもよさそうですな」ヒソヒソ
ルンペン「あとは…事情を知ってる奴だな。アリスが悪さして回ってるって知って解決する為に【不思議の国のアリス】の世界に乗り込んで捕まってる奴、そう言う奴もいたぜ」
キモオタ「やはり、そう言う者もいるのでござるな…我々はアリス殿が様々な魔法具を持っているのを知っている故、軽々しく乗り込む事を控えていたでござるが……」
孫悟空「まぁ悪事を働いてる奴が居ると知っちまったら、じっと機会を待つなんてできねぇ奴もいるだろうぜ。俺もどっちかってぇとそういう性分かもしれねぇ」
ルンペン「警備も万全で兵力も馬鹿みてぇにあるってのに正義感でそんな事するなんざ無意味だと思うがなぁ?」
692: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/21(月)23:57:35 ID:1F9
ルンペン「他人の為に身を危険にさらすなんざ馬鹿げた事だよなぁ。あのブーツを履いた猫の剣士もしっぺい太郎とか呼ばれていた犬だか狼だかもよぉ、その犬の話は俺様も聞いた事あったぜ。確かなぁ…」
ヘンゼル「……その話はしなくていい」
ルンペン「あぁ?なんだテメェ、俺様がそこのデブに親切に教えてやってるってのによぉ!」
司書「【しっぺい太郎】は人身御供の被害を受けた人々の話、私の父さんも同じだから…ヘンゼルは私の事気にしていってくれたんだよね?でも、大丈夫。私は気にしないから」ニコッ
ヘンゼル「……」
ティンカーベル「ねぇ、でもさ…これだけたくさんの人が捕まってるって事はだよ?その人たちが居たおとぎ話の世界ってやっぱり……」
孫悟空「まぁ、消えちまってると考えるのが自然だろうな」
ルンペン「だがよぉ、どうやらアリスの目的ってのはおとぎ話の消滅だけじゃねぇんだなぁ。こいつも和尚に聞いた話だから確実だぜぇ?」
キモオタ「…なんですと!?そんなことまで知っているとは…!」
ルンペン「やっぱりテメェはあいつの真の目的は知らないって事か。そんならこいつはとっておきの情報になっちまうからな、別料金ってやつだぜ。俺が仕入れたあいつの目的を知りたけりゃあ…今すぐ俺を解放しろっ!」
キモオタ「ぐぬぬ…参りましたな。ルンペン殿の話は信憑性ありそうでござるし、ぜひ聞いておきたいでござるが……」
ティンカーベル「足元見てきたよこいつ!教えてくれたっていいのに!」
孫悟空「おい、キモオタ。そればっかりは流石に見過ごせねぇぞ、諦めろ」
ルンペン「いいのかぁ?ここで俺様を逃がしてでも聞いておかないと次のチャンスはいつになるかわからねぇぜ?」クックック
???「現実世界の消滅。それがボクの目的だよ」
キモオタ「…っ!?この声は…っ!?」バッ
アリス「随分と大げさに驚くねキミは。久しぶりだねキモオタ、この世界でキミに会う事になるとは思ってなかったよ」クスクス
693: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/22(火)00:00:12 ID:tMO
キモオタ「どうしてアリス殿が現実世界に…!魔法具を集めアラビアンナイトの結界を破る事がお主の目的だったはずでござる!現実世界に来る意味など……まさかもう結界を破ったでござるか!?」
アリス「物知りだね。残念だけどまだだ、思ったよりシェヘラザード達が作り出した結界は強固だ。一筋縄じゃいかない」
ティンカーベル「じゃあなんで現実世界に来たのさ!」
アリス「ボクだってこんな世界に来たくなかったけどね、ハートの女王の牢屋から逃げだした奴が居たから調査させてたら…驚く事にこの現実世界にまで逃げて来てるって言うじゃないか」
アリス「そこで偵察を送ったら現実世界に意外な人物までいる事がわかってね、それに……」チラッ
ヘンゼル「……?」
アリス「僕に似た思想の人間もいるという情報まで入った。だからボクが直接赴いたってわけさ。うちの偵察役は優秀でね、単なる平和の象徴なんかじゃないってわけさ」クスクス
ティンカーベル「ファミチキ…!あいつがこっそり私達の事スパイしてたってこと!?ホントにあの鳥趣味悪いよね!大嫌いだよ私!」
青い鳥「聞こえてるよ。僕もお前は大嫌いだ、この世界に来て『ファミチキ』の意味がわかったしね…本当に失礼な奴だよ君は、僕は平和の象徴でも食料でも無いんだ」パタパタ
ティンカーベル「黙れバーカ!揚げられろ!バーカ!」
キモオタ「それよりもお主、先ほど言いましたな…現実世界の消滅が目的だと。それは本当なのでござるか?何のためにそんな事を!」
アリス「事実だよ、理由は言えないけどね。こんなことでまたルンペンシュティルツヒェンを逃がされても困るし…それにキミ達なら言わなくてももうそろそろたどり着けると思っていたから、ボクが教えてやった方が手っ取り早いと思ってね」
ティンカーベル「それって、私達があんたの本当の目的を知ってもどうにもできないって思ってるって事でしょ!」
アリス「フフッ、言わないであげたのに自分でいってしまうんだね?その通りだ、今になってはもう知られてもさほど困らないからね」
アリス「でも残念だけど現実世界に来たのはキミ達とお話しする為じゃないんだ」
アリス「どうやらこの場には、ボクが会いたかったおとぎ話の住人が何人かいるみたいだから。ぜひ挨拶をしておきたい、今後の為にもね」
694: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/22(火)00:02:07 ID:tMO
アリス「それにしても不思議な光景だよ。現実世界だと言うのに一か所に七つものおとぎ話の登場人物が揃っているんだから」クスクス
キモオタ「気を付けるでござるよ!アリス殿は数々のおとぎ話を消滅させ、数え切れないほどの魔法具を奪っている張本人でござる!」バッ
アリス「随分な紹介だね?ボクは【不思議の国のアリス】の主人公、アリスだ。キモオタが紹介したように、様々なおとぎ話を消して周っている。今後ともよろしくお願いするよ」
スッ
孫悟空「なにがよろしくだテメェ…よくもぬけぬけと俺の目の前に現れたもんだな…!」
アリス「驚いた。結構離れた場所に居たのに、一瞬で距離を詰めてくるなんて…流石はおとぎ話界最強の孫悟空だ。あぁそうそう、お師匠様はお元気かい?お会いした事は無いけど、あれだけトランプ兵を送り込んだんだからただじゃあ済まなかっただろうね」クスクス
孫悟空「やっぱりテメェの仕業だったってか…!覚悟しやがれテメェ…!」ググッ
アリス「しないよ。戦う気は無いんだ、今日はね。キミがどれだけ素早くても、どんなに強くても……ボクには触れられない」
孫悟空「俺も随分と舐められたもんだなぁ!そっちがそのつもりだってならガキだろうが容赦しねぇぞ!あの小娘を叩きのめせっ!伸びろ…如意棒ッッ!!」ビュバッ
スカッ
キモオタ「アリス殿の姿が……!」
孫悟空「っ!?消えやがっただと…!俺の目にも止まらぬ速さで移動できるやつなんかいるってのか…!?」
スッ
アリス「フフッ、始めましてラプンツェル。キミには一度会いに行ったんだけど会えなくてね……それにしても見惚れてしまうほど長くて美しい髪だね」サワッ
孫悟空「あいつ…っ!俺なんざ相手にしてねぇってのか……!」
アリス「クスクス、そうだよ孫悟空。例えキミが最強だとしても戦いさえしなければボクはキミには負けない、まぁ戦ったとしても簡単には負けないと思うけどね?」クスクス
695: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/22(火)00:05:07 ID:tMO
アリス「どちらにしろボクは今、彼女と話をしてるんだ。キミの相手はまた後でしてあげるよ孫悟空」
孫悟空「テメェ…!それで俺がはいそうですかって諦めるとでも思ってんのか!構わねぇ、何度でもやってやるぜ!行くぜ如意棒ッ!」ビュババッ
アリス「まったく…ボクは今女の子同士の会話を楽しもうとしてるのに…何百年も生きてると言うのに無粋な男だ」
スッ
孫悟空「あいつまた別の間所に移動しやがった…っ!どういう事だ、移動してる姿をみる事すらできねぇ…」ギリッ
アリス「だから言ったじゃないか、ボクはキミとは戦わない。しつこい男にはなにも捕まえられないよ?敵の姿も、女性の心もね」クスクス
ラプンツェル「……私聞いたよ?アリスって女の子は、ママに酷いことしたって」
アリス「ああ、そう言えばそんなこともあったね。ゴーテルは随分と老体だろうにキミを護るために懸命に応戦していたよ、結局ボクのコショウで憎しみを植え付けられてしまったけどねフフフッ」
ラプンツェル「笑わないでっ!私はもう気にしてないけどママはずっと気にしてるんだよ!?あれは魔法具のせいだけど…私の事を娘じゃないって怒鳴った事、今でも謝ってくるもん!」
アリス「へぇ、でもそれはキミ達親子の問題だ。ボクは関係ないだろう?」
ラプンツェル「関係あるよ!アリスがママに魔法具使わなきゃあんなことにならなかったんだよ!」
ラプンツェル「私はママも王子もパパも王子ママも大好きだし、友達の事もみんな大好きだよ!だからみんながニコニコして居られない様な事するアリスは…嫌い!」キッ
アリス「随分と嫌われてるね。できればキミの事も捕えようと思ってたけどやめておこう、聞いた話だとキミは少しおバカなようだ。そういう奴は突拍子もない事をするから手に負えない」
ラプンツェル「悟空!私がアリスの事縛るよ!だからその間ににょいぼーでバーンってやっちゃえ!」
孫悟空「おう、任せやがれ!だがそいつの動き、読めねぇから気をつけやがれ!」ググッ
アリス「フフッ、その髪で僕を縛れれば孫悟空は何も言わなくても追撃してくれるだろうにね。それに気付かずに考えを大声で言うからキミはおバカなんだよ、ラプンツェル」フフッ
696: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/22(火)00:07:30 ID:tMO
ラプンツェル「私の魔法の髪の毛っ!アリスは悪い子だよっ!だからグルグルに縛って動けないようにしちゃえ!」ファサッ
アリス「思ったより速いんだねその髪の毛。少し予想外だったよ、直接見られて良かった」
スッ
ラプンツェル「んもぉ!避けられちゃったっ!悟空ー!もう一回だよっ、今度こそアリスの事捕まえるからっ!」プンス
孫悟空「いや、待てラプ公……またあいつが移動する姿が見えなかった。あれじゃあまるで瞬間移動だ、魔法具の仕業かなにかしらねぇがその仕掛けが見敗れるまでは闇雲に動くのはやめだ、こっちが消耗しちまう」
ラプンツェル「ええっー?でも逃げちゃったりしたら困るよ!」
キモオタ「いや、大丈夫でござろう……無理に攻勢に出るよりも防御に備えるべきですぞ、ラプンツェル殿。あの者は何をするかわからんでござる」
アリス「見かけによらず知恵を使った戦いもできるんだね、キモオタも孫悟空も。さて、次は…キミ達だなお千代にヘンゼルとグレーテル」フフッ
司書「あなたが【不思議の国のアリス】のアリスさん…私の事、知ってるんですね?」
アリス「言っただろう、うちの優秀な偵察役が頑張ってくれたんだ。お父さんの事は大変だったね、それにしてもあんな事があったのに喋る事を封じず読み聞かせしてるんだって?」クスクス
グレーテル「やめて……お千代ちゃんに嫌な事言うの……私、許さないから……それ以上嫌なことしたらかまど、だからね……」
アリス「キミの言うかまどって言葉は確か焼き殺すって意味だったかな?聞いた通り大人しげなのに言動に躊躇が無いね、グレーテルは」
ヘンゼル「妹に近寄るな、それに僕達を巻き込まないでよ。あんたが何を企んでようと、それはあんたとキモオタお兄さん達の問題でしょ」
アリス「違う、これはおとぎ話の世界すべての問題。いや、この現実世界を含めたこの世に存在するすべての世界の問題だ。キミはもう巻き込まれてる」
ヘンゼル「勝手な事言わないでほしいな、僕は家族と幸せに暮らしたいだけだ。おかしな事に巻き込まれるなんてごめんだ」
アリス「キミも聞いた通りだね。でも青い鳥の得た情報によると冷静な君もこうすると、情熱的になるんじゃなかったかな?」クスクス
スッ
グレーテル「……っ!」ギュッ
697: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/22(火)00:10:06 ID:tMO
ヘンゼル「グレーテルに触るな!それ以上僕の妹に何かしたら…僕はお前を絶対に許さない」ゴゴゴゴゴ
アリス「それがキミの魔力ってやつか、確かに凄まじいね。でも安心しなよ、ボクはグレーテルにキャンディをプレゼントしようとしただけさ」グイッ
グレーテル「放して……っ!」ジタバタ
司書「グレーテルから離れて!アリスさんの持つそのキャンディ…【不思議の国のアリス】の世界のものだと言うなら…ただのキャンディじゃない!」
アリス「へぇ流石詳しいね、ボクの世界のキャンディは特別製だ。一粒食べれば必ず笑顔になれる、二粒食べれば陽気になれる魔法のキャンディだ。…さぁ、十粒まとめて食べさせたらグレーテルはどうなるかな?」クスクス
ヘンゼル「そんなこと試させないし試せない!人の姿のままでいたいならグレーテルから……離れろ!」ゴゴゴゴ
ドゴシャアッ
ヘンゼル「…っ!あいつ、この至近距離でなんで避けられるんだ…!」バキベキッ
スッ
アリス「キミは酷いお兄ちゃんだね。陽気になりすぎて完全に自我を失ってヘラヘラと笑うだけのグレーテルの姿…きっとかわいらしいだろうけど、そんなに見たいのかい?」クスクス
ヘンゼル「やめろ!やめてくれっ!なんでどいつもこいつも罪の無いグレーテル達ばかり狙うんだ!こいつがお前に何をしたって言うんだ!」
アリス「そうだな、彼女は悪くないしボクもキミにはあまり嫌われたく無い。だけど力の誇示っていうのは必要だと思うんだ、だから諦めてそこで見てると良いよ」
グレーテル「……助けて……!お兄ちゃん……!」
ヒュッ
ドンッ バラバラバラッ
アリス「……っ」
キモオタ「ゼェゼェ……特訓したとはいえ短距離の移動は慣れませんな。速度の調整、シンデレラ殿にコツを聞いてみますかな……」ゼェゼェ
ティンカーベル「……っ!キモオタ!」
アリス「……何をするんだキモオタ、キャンディがこぼれてしまったじゃないか」フゥ
698: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/22(火)00:15:19 ID:tMO
キモオタ「ゼェゼェ……ドゥフwww不意打ち成功ですなwww」コポォ
孫悟空「どういうことだ!?俺にも今のキモオタの動きは見えた、俺の如意棒が避けられてあいつの突進が避けられない理由なんざねぇだろ…!」
アリス「やられたな、いくらキミがシンデレラのように素早く動けたとしても気がついてさえいれば避けられたのに。不意を付いて突き飛ばされちゃあ避けようが無い」
キモオタ「お主のその瞬間移動じみた動きのカラクリは解らんでござるが…少なくとも気が付いていない動きに対しては対応できないということですなwww」コポォ
アリス「そりゃあね、見えていればどんなものでも避けられるけど。どんくさいキミの事なんかマークしてなかった、これはボクのミスだね。キミはブラフしか能が無いと思っていたけど」
キモオタ「そのどんくさいキモオタにお主はしてやられたわけでござるよwww」コポォ
アリス「そうだね、ちょっと馬鹿にし過ぎていたよ。今のキミにはそんな事が出来る魔法具があるんだね、そうかそうか……シンデレラが履くガラスの靴の俊敏さ、ねぇ…。もしかしてその魔法具ってさ」
アリス「桃太郎の剣技とか……赤ずきんの射撃能力とか……そういうのがキミに身に付いたりするのかな?」
キモオタ「どうですかなwwwそれは見てのお楽しみという事でwww」コポォ
キモオタ(我輩の挑発など意に介さず冷静な分析、それも的を得ているとは…我輩の突進作戦が成功したのは完全に不意打ちだったからでござるな、ラッキーパンチもいいとこでござる。おそらく二度目はないでござろう)
孫悟空「って事はよぉ、予想できない攻撃には対応が遅れるってことだ。数の優位はこっちにあるんだ、キモオタ、ラプンツェル、三方向から攻めりゃあなんとかなるかもしれねぇ!
ラプンツェル「わかったよーっ!じゃあたしあっちからアリスの事捕まえるからねっ!」タッタッタ フンス
アリス「クスクス、困ったな…今のでボクを倒せると思っちゃったかな?流石に二度目はないよ、今度はキモオタも戦えるって解ったからね」クスクス
キモオタ「アリス殿からお褒めの言葉がwwwメルシーボークーwww恐縮のいたりwww」コポォ
アリス「でも言ったよ僕は、戦う気は無いってね。でも一方的な攻撃は、戦いにはカウントされないかな?」フフッ
699: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/22(火)00:18:35 ID:tMO
孫悟空「ゴチャゴチャとうるせぇ奴だ!どうせ避けられちまうだろうが、だからって加減する理由にはならねぇからなぁ!」シュバッ
スッ
アリス「流石だね、早い早い。数多の妖怪共をねじ伏せたその技を間近で見られると思うと少し心躍るよ」クスクス
孫悟空「いつまでも余裕持ってられると思うんじゃねぇぞ!今の俺には動きを制限するもんなんかなにもねぇ!人質も無ぇしお師匠の経も無ぇ!全力でテメェをぶっ飛ばしてやらぁ!」ヒュッ
アリス「そんなにボクと戦いたいっていうならさ、相手になってあげるよ。さぁ、かかっておいでよ……孫悟空!」カチャッ
孫悟空「おう、望むところだ!こっちは端っからそのつもりなんだよぉ!」シュバッ
アリス「ああ、ありがとう。でも残念だけどもう終るよ、孫悟空」スッ
ヒュオオオォォォォォ
孫悟空「……な、なんだこりゃあっ!?俺の身体が、何かに引きずられやがる……っ!」
キモオタ「ご、悟空殿!?悟空殿が何かに吸い寄せられているでござる!」
孫悟空「クソッ…!踏ん張りが効かねぇ…!伸びやがれ如意棒ッ!伸びて伸びて…俺を支える柱になれッ!」ビューン
ギシギシッ…ベキベキベキ
孫悟空「駄目か…!どういうことだ…!如意棒がどれだけ重いと思ってやがる!その上天井と床にがっちり固定したってのに…競り負けてるだと!?」グヌヌ
アリス「キミがおとぎ話界最強だろうと如意棒がどれだけ重く強固だろうと、孫悟空はもう逃れられない。さっきキミはボクの『呼びかけに応じた』じゃないか」
孫悟空「呼びかけに応じた……だとっ!?テメェ、まさかあの魔法具を奪いやがったってのか!」ギリッ
アリス「その通り、でも今更気がついても遅いよ」
カランッ
アリス「この魔法具……発動条件を満たした『紅瓢(べにひさご)』からは何者も逃れられない、それがどんなに機敏な相手でも重く巨大な相手だとしてもね」
700: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/22(火)00:24:19 ID:tMO
今日はここまでです もう今回の話も佳境です!
紅瓢(べにひさご)
【西遊記】に登場する魔法具
名前を呼びかけたり問いかけたりして、それに返事をした相手を吸引して溶かすという瓢箪の形をした魔法具。
発動条件さえ満たせば機敏さ重さ大きさなど無視して吸引できる為、初見殺し性能が非常に高い。
このssではこの漢字でいきます。
ヘンゼルとグレーテル。キジも鳴かずば編 次回に続きます
728: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/27(日)23:29:22 ID:ZEZ
おとぎ話【西遊記】が消滅するずっと前……
西遊記の世界 五行山(悟空が封印されていた山)
孫悟空「ぐあああぁぁぁっ!なんだこりゃあ…!頭が割れそうに痛ぇ!ぐあああ、痛ぇぇぇ!!」ガシャーン
三蔵法師「まったく…呆れた者ですね。数々の悪行と狼藉を繰り返し、その結果としてお釈迦様に五百年もの間封じられ…そして私がその封を解くとこれ幸いと逃げ出そうとするなど……」
孫悟空「おいハゲェ!この忌々しい輪っかを外しやがれっ!この輪っか、テメェが珍妙な経を唱えると頭を締め付けやがる!」
三蔵法師「忌々しい輪っかではなく緊箍児(きんこじ)というあなたの成長を助ける道具です」
孫悟空「あぁ?成長だぁ?俺様にはもう敵なんざいねぇんだ!天界にも地上にも俺様に敵う奴なんざいやしねぇからよぉ!だからもう成長なんざ必要ねぇんだよ、いいから外せハゲ!」
三蔵法師「いいえ、あなたには内面の成長が必要です。先ほど伝えた通り、天竺への旅の共をしてもらいますよ。我が守護者として」
孫悟空「ゴチャゴチャ抜かしてねぇで外せって言ってんだよ!」グイッ
三蔵法師「…ナムナムナム…緊箍児よ、その未熟な暴れ猿の性根を正したまえ…ナムナム…」
孫悟空「ぬあああぁぁぁーっ!テ、テメェ…汚ねぇぞ!こんな輪っか無けりゃあテメェなんざ今頃塵ほどの跡形もなく消しちまってるのよぉ!」ガシャーン
三蔵法師「あなたが真面目に私の守護者として旅をするならば、私はむやみに緊箍児を締め付けたりしません」
孫悟空「……クソッ、この俺様を脅して従わせるなんざいい度胸じゃねぇか!それが僧のやる事か!」
三蔵法師「脅して従わせるなどそんなつもりはありません。しかし力を貸してほしいというのは嘘偽りない本音です…私は悪しき妖怪共に命を狙われている身、あなたの力が必要なのです」
孫悟空「……仕方ねぇ、五百年の封印から解き放ってくれた礼の代わりだ。テメェが妖怪に狙われるってならそいつら相手に人暴れできそうだ、しばらくその旅につきあってやらぁ!」
三蔵法師「助かります。あなたの力があれば、必ずや私達は天竺への旅を成功させる事が出来るでしょう。しかしですね、悟空よ…旅の前に言っておく事があります。ナムナムナム……」
孫悟空「アアァーッ!痛ぇ!なんでだ!?なんで協力するって誓ったのに輪っか締め付けるんだテメェー!」ドガシャーン
三蔵法師「二度と私をハゲなどと呼ばぬよう。私の事はお師匠と呼びなさい、わかりましたね?悟空」
729: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/27(日)23:32:31 ID:ZEZ
・・・
三蔵法師「……というわけです。理解出来ましたか悟空?」
孫悟空「いやいや、待ちやがれ!確かにあんたの守護者になってやるってのは認めたがよぉ、この世界がおとぎ話のひとつだと?そんな突拍子もない話信じられるわけねぇだろハゲ!」
三蔵法師「…ハゲ?」スッ
孫悟空「わ、悪ぃ…お師匠。でもよぉ、さすがに信じられねぇよ。俺達が過ごしてる世界が現実世界の人間に作られた話だってのか?」
三蔵法師「信じられないでしょうが事実です。ですから酷い無茶をして物語を消してしまわないよう、あなたには物語の大まかな流れを説明したのです」
孫悟空「未だに飲み込み切れてねぇけどな。まぁむやみに殺しちまったり、魔法具とかいう不思議な道具を壊したりするなって事でいいんだろ?」
三蔵法師「そうです。特に注意すべきは魔法具の類ですね…不思議な力を持つ物は代用が利かないものが多いです、中でも金角銀角という妖怪が持つ紅瓢という魔法具は貴重な逸品でありながら危険な道具です。
呼びかけに応じただけで瓢箪に吸い込んでしまい、溶かして酒にしてしまうのです。その紅瓢の対処法ですが…」
孫悟空「おい、ちょっと待ってくれお師匠!対処方法なんざ言わねぇでくれ」
三蔵法師「? しかし、物語の細かい内容を知っていればそれだけこのおとぎ話が消えてしまう事を防ぐことが可能なのです、だから知っておくべきです。現にあなたは紅瓢に吸い込まれてしまうわけですし」
孫悟空「だから展開言うなって言ってんだろ!だいたいなぁ、どんな敵が待ち構えていてそいつがどれくれぇ強いとか、どんな不思議な武器を持ってるかなんて前もって聞いちまったらつまらねぇだろ?」
三蔵法師「悟空、これはつまるつまらないの問題ではありません。私達にはこの【西遊記】を滞りなく進め、天竺へとたどり着くという使命があるのです」
孫悟空「その辺はお師匠がうまい事やってくれんだろ?俺様は守護者だ、テメェに襲い来るもんは災厄だろうが妖怪だろうがまとめて叩きつぶしてやらぁ!どんな妖怪相手に大暴れできるのか今からワクワクしちまうぜぇ!」
三蔵法師「悟空……あなた、まさか戦いを望んでいるのではありませんね?暴れる事が出来て幸いだと考えているのでは……?」スッ
孫悟空「な、なわきゃねぇだろうが!俺様は純粋に守護者としてだなぁ……おい!経を唱える準備するのはやめろ!」
孫悟空「……まぁ良いでしょう。異変が起きさえしなければ、我々は天竺へ向かう事が出来ます。戦いに関してはあなたに任せますが、くれぐれもやりすぎる事の無いように」
・・・
730: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/27(日)23:34:40 ID:ZEZ
現代
現実世界 廃墟
ヒュオオォォォォォ
孫悟空「ぐっ…話には聞いちゃいたが、流石は仙人が作った魔法具だぜ。これ以上持ちこたえるのは難しいみてぇだ」ヒュオォォ
孫悟空(あの時、お師匠に紅瓢の対策聞いてりゃあ良かったか…なんて言っても始まらねぇか。さて考えろ孫悟空、どうやってこの窮地を切り抜ける…!)
孫悟空(お師匠が言うには俺たち一行は【西遊記】の結末で天竺にたどり着く事が出来る。って事はその道中で紅瓢を持った妖怪に一行は襲われてるはずだ!)
孫悟空(なら俺はその時、紅瓢の対抗策を考えついてるって事になる。それなら今思いつかない道理がねぇ、考えろ…どうやってあの強力な魔法具を攻略すりゃあいいか…)ヒュオオォォ
ラプンツェル「悟空っ!私の髪の毛に捕まって!頑張って引っ張るからっ!」バッ
孫悟空「よせっ!ラプ公!俺の如意棒ですら紅瓢には対抗できねぇんだ、下手に手を出せばテメェも巻き込まれて吸い込まれちまうかもしれねぇ!」ヒュオオォォ
ティンカーベル「でもっ!このままじゃ悟空吸い込まれちゃうよ!?アリスに捕まっちゃうよ!」
孫悟空「心配いらねぇよ。それに吸い込まれちまうってのも一つの手だな、一度吸い込まれれば吸引は収まる。それから脱出すりゃあ丸く収まるってわけだ」ヒュオオォォ
アリス「へぇ、敢えて吸い込まれるって事は紅瓢の中から逃げられる算段があるって事かな?」クスクス
孫悟空「こちとら伊達に妖怪共との戦いに明け暮れてるわけじゃねぇんだよアリス!だがこの方法は俺一人じゃあ無理なんでな、つぅわけでよぉテメェに頼るぜ司書」ググッ
司書「私…ですか?あの、私戦いの経験もないし魔法も使えないから悟空さんの力には…」
孫悟空「テメェの腕力になんざ期待してねぇよ、だがよぉ【西遊記】の内容を知るテメェなら紅瓢に吸い込まれた俺がどんな思考するか、わかるんじゃねぇのか?」
司書「それなら…わかりますっ!私は司書ですから、知らないおとぎ話はありません。もちろん【西遊記】の内容も全て覚えています、だからわかります。悟空さんの考えっ!」
孫悟空「そりゃあ頼もしいこったな、悪ぃが頼むぜ?脱出さえ出来りゃあ後は俺の独壇場だ、如意棒片手に大暴れしてやるぜ!楽しみにしてな、アリス!」ニッ
アリス「…フフッ、随分な自信だね。孫悟空」
孫悟空「つーわけだ!後は任せるぜ、司書!キモオタ!」バッ
ヒュウウウウウ スポン
731: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/27(日)23:38:24 ID:ZEZ
アリス「随分手間取ってしまったな…しかし流石は孫悟空だ、如意棒を持っているとはいえあそこまで持ちこたえるとは驚いたよ。紅瓢は魔法具の中でも能力の高い部類なのにね」クスクス
ティンカーベル「あんな不意打ちみたいな魔法具使うなんて性格の悪さが良く出てるよねっ!ホントにズルイ奴!」プンスカ
アリス「ズルイなんて酷い言い草だね。紅瓢は確かに強力だけど返事さえしなければただの瓢箪だ、敵の呼びかけに不用意に返事を返す方が間抜けなのさ」
キモオタ「強力な魔法具ではあるものの、発動条件がある以上ネタが割れてしまえば吸い込まれる前の対策自体は簡単でござるしな…」
アリス「だけどこうして悟空は紅瓢に吸引された。あとは酒になるのを待つだけ…一度敢えて吸い込まれるって言うのは対策としては理にかなっているけど、脱出できなければ意味が無い」
司書「出来ますよ、悟空さんは紅瓢から脱出できます…いいえ、私達が必ず悟空さんを救いだします」
アリス「クスクス…いいや、出来ないよ。キミ達が紅瓢から悟空を救いだそうとしてると知って、ボクがわざわざキミ達の相手をすると思ってるの?」クスクス
アリス「悟空と直接対決していればいろいろと面倒な事になっていただろうしね、労せず邪魔者が捕えられたなら結果としては上々だ。あとはルンペンシュティルツヒェンを連れて帰るだけだ」
ルンペン「チッ…こいつらうまい事丸め込んでやろうと思ったってのにとんだ邪魔が入りやがった……」
ティンカーベル「あっ!アリス逃げるつもりなの!?」ブーブー
アリス「逃げるも何も、用事を済ませたから帰るだけさ。それに意味の無い勝負はしたくないんだ。さぁボクについて来てもらうよ、ルンペンシュティルツヒェン」スッ
キモオタ「おおっとwwwさせませんぞwww悟空殿を連れ帰られるわけにはいかないのでwwwこの者を連れて帰りたければ我々を倒す事ですぞwww」ガシッ
ルンペン「テメェ…この俺様をアリスを引きとめる為のダシに使いやがったな!?」
アリス「へぇ、そうくるんだ。別にボク個人としてはルンペンシュティルツヒェンはどうでもいいんだけど…近頃がめつい魔女を引き入れたから、黄金を生成できるそいつは取り返しておかないと後が面倒だ」フゥ
キモオタ「ほうwww悪事を繰り返すお主にも味方をしてくれる魔女が居たとは驚きですなwww」コポォ
アリス「金で雇ってるだけの魔女さ。【シンデレラ】の魔法使いやゴーテルのように善意で味方をしてくれてるわけじゃない、ビジネスの関係だよ。まぁ、そんな事はどうだっていい」
アリス「ボクに立ち向かうつもりなら早くおいで、相手をしてあげるよ。あまりこの世界には長居したくないから手短に済ませよう」スッ
732: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/27(日)23:41:16 ID:ZEZ
キモオタ「ふぅ…なんとかアリス殿を引きとめることには成功しましたな…」
ティンカーベル「でもどうする?司書さんには悟空を助ける考えがあるんだよね?」
司書「助けると言うより悟空さんの脱出を手助けするだけですけどね。やること自体は簡単な事だけど、アリスさん警戒してるだろうから成功させるのは難しいかも…」
ラプンツェル「むむむ…それにあの紅瓢とかいうまほーぐ恐いよね!だって、名前呼ばれて返事しちゃったら吸い込まれちゃうんだよ?みんな気をつけようねっ!」
ヘンゼル「…アリスはもう紅瓢を使うつもり無いと思うけどね」
ラプンツェル「えーっ?なんで?あんなに強いまほーぐだったらアリスはいっぱい使った方がいいんじゃないのかな?」
ヘンゼル「使えない理由があるんだよ。使えるならもう僕達に使ってるはずだよ?気をつけようとか言いながらうっかり返事しちゃいそうな奴も一人いる事だしね、ラプンツェル」
ラプンツェル「あははっ、そんなうっかりさん居ないよー」ニコニコ
キモオタ「ラプンツェル殿wwwそれ怒るところですぞwwwしかし、アリス殿が魔法具を使えない理由とは?」
司書「えっとですね、紅瓢は瓢箪型の魔法具で…栓がありますよね?例え呼びかけに返事をしても栓が開いてなければ吸引されないんです。だけど今のアリスさんは栓を開ける事が出来ないんです」
キモオタ「栓を開ける事ができない?なにか不都合な事があるのですかな?」
グレーテル「【西遊記】のおとぎ話でも……悟空さんは紅瓢の中に吸い込まれちゃうの……でも、ちゃんと出られたよ……」
司書「紅瓢は吸引した相手を溶かしてお酒にする魔法具です。だから吸引された悟空さんは自分の髪の毛で作った身代りを溶かさせて、自分自身は小さな虫に化けたんです」
司書「そして紅瓢を持つ金角銀角が瓢箪の中の様子を覗こうとして栓を開けた隙に、紅瓢の中から抜け出したんです」
司書「きっと悟空さんはその時と同じ方法で紅瓢から抜け出すつもりです。だから私達がすべき事は、紅瓢の栓を抜くこと…!」
733: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/27(日)23:43:26 ID:ZEZ
キモオタ「なるほど、アリス殿もその事を知っているからこそ紅瓢を使わないのですな。いや、使えないと言う方が正しいでござるか」
司書「でもアリスさんだって紅瓢を狙われる事はわかってるから、きっと紅瓢を護ります。それを掻い潜って栓を抜くのは…」
グレーテル「きっと難しいね……でも悟空さんあいつに利用されてただけで……ホントは良い人、だから助けるよ……私、頑張る……」
ラプンツェル「私もやるよっ!難しくってもやることが決まってるんだったら、あとは頑張ってそれをすればいいだけだもんねっ!きっとできるよ!」フンス
ティンカーベル「ふふんっ!こういうのは隙を付いたり素早い動きするのがが重要だからね!そーいうのは私一番得意だから!よーし、活躍するよ!」
ヘンゼル「僕も手伝おう。アリスはグレーテルに手を出したんだ、悟空を捕えてあいつを連れ帰って…なんでもあいつの思い通りに事が進むのは良い気がしないからね」スッ
アリス「フフッ、ボクが直接戦うなんて久しぶりだ。さぁボクの可愛いフラミンゴにハリネズミ達、大きくなって一緒にあいつ等を始末しよう」スッ
フラミンゴ「クエクエッ」モシャモシャ
ハリネズミ「フシュフシュ」モグモグ
ムクムクムク
ラプンツェル「すごい…!キノコ食べたら大きくなったよっ!でもアリスはあれどーするつもりなのかな?あれで戦うのかな?」
キモオタ「ラプンツェル殿、油断してはいけませんぞ。あのフラミンゴを槌代わりにしてハリネズミを打ち出してきますぞ!」
司書「槌代わりのフラミンゴ、ハリネズミの球に食べると大きくなるキノコ…アリスさんは【不思議の国のアリス】での不思議な出来事の数々を武器にしてるってことですね?キモオタさん」
キモオタ「そうですな、他にトランプの兵士を使役してきますぞ!所有している魔法具については数が多すぎる故、割愛しますぞ!」スッ
司書「アリスさんは【不思議の国のアリス】での不思議を武器にしてる。そうだとしたら……悟空さんでも軌道が読めないアリスさんの素早い動きの正体って……」
アリス「そうか、キミはおとぎ話に詳しいんだったね。現実世界での生活が長いなら、おとぎ話の世界では知る事が出来ない事も知っているだろうね」
アリス「余計な事を吹き込まれても面倒だ。まずはキミに味わってもらおうかな、女王陛下式のクロッケーを」スッ
734: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/27(日)23:45:41 ID:ZEZ
バッ
ヘンゼル「まずお千代を狙うと思ったよ、この中で争いに向いていないのは間違いなくお千代だ」バッ
アリス「へぇ、素早い対応だね。キミが相手になるならそれでもボクは構わないよ、キミの魔力を間近で見ておきたい」
ヘンゼル「キミがグレーテルを酷い目に会わせようとした事、忘れてるとでも思ってる?」ゴゴゴ
司書「ヘンゼル!また無茶して自分を傷付けるような魔法の使い方するの駄目だよ、私もグレーテルもそんな事になるのはもう嫌なんだから!」
ヘンゼル「無理な相談だね、あいつの相手をするには多少の無茶が必要そうだよ。それでも…僕が無傷だとしてもグレーテルやお千代が傷ついたら何にもならない」
スッ
キモオタ「ヘンゼル殿wwwその意気は素晴らしいでござるがwwwお主の強力な魔力を小出しにするのは勿体無いですぞwwwここは我輩にお任せあれwww」フリフリフリ
おはなしサイリウム「コード認識完了『赤鬼』 武器モード『金棒』への形状変化を実行」
アリス「その珍妙なダンスにも意味があるなら…魔法具の残光を利用して魔法を使い分けているのかな?」
キモオタ「ドゥフフwww御名答wwwお主が女王陛下式というのならばこちらは鬼の流儀でクロッケーの相手をするとしますぞwww」ズンッ
ルンペン「なんだあのブタの魔法具…!光る棒切れが金棒に変化しやがっただと!?」
アリス「それはさっきキミにシンデレラの素早さを与えた魔法具だね?キミの仲間の特徴を手に入れる魔法具、時にはその形状の変化も駆使するのか…それは赤鬼の力だね?」
キモオタ「質問攻めですなwww情報集めに余念がないのは結構でござるがwww我輩たちを始末するつもりならばその情報収集は無駄になるのではないですかなwww」
バッ
アリス「情報は魔法具以上の力を持つことだってある。それにキミ達をここで始末できても出来なくても収集した情報が無駄になるなんて事は無いよ」ビュオッ
ハリネズミ「フルシュシュー!」バシュッ
キモオタ「そうでござるかwwwならば赤鬼殿の金棒捌きを得たこのキモオタの実力wwwその目に焼き付けると良いですぞwww」ブオン
735: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/27(日)23:47:27 ID:ZEZ
キモオタ「罪の無い動物を痛めつけるのは避けたいでござるが、避けては司書殿やヘンゼル殿が大怪我をしてしまう故…勘弁願いたいッ!」ゴンッ
ハリネズミ「シュシュルー」コロコロ
アリス「へぇ、撃ち返したハリネズミは無傷か。金棒のトゲの無い部分にうまく当てるなんて…ただの形状変化じゃないってことだね」
キモオタ「当然でござろうwwwでなければシティ派の我輩がこのような重厚な武器を振り回すなどできませんからなwww」コポォ
アリス「それもそうだね。でもボクのハリネズミは一匹じゃないからね。ボクの攻撃がこれで終わりだなんて思ってないよね?…っと、危ない危ない」バッ
ヒョイ
ティンカーベル「ぐぬぬっ!こっそり近づいたのに見つかった…!」フワフワ
アリス「キモオタがボクの注意を引きつけている間にティンカーベルが紅瓢を狙う。そういう連携はキミ達得意じゃないか、お見通しだよ」クスクス
ティンカーベル「ふんだっ!失敗しちゃったけど次があるもん、キモオタの方も私の方も両方ともずーっと注意して警戒するなんてできないでしょ!」
アリス「それはキミも同じだろう?ほらほら、餌にされてしまうよ?」クスクス
ビュバッ ガシッ
青い鳥「前にも同じような事があったっけ、でも今度は羽をむしらせたりしないからな。クソ妖精」バサバサ
ティンカーベル「…ファミチキ!ずっと黙ってたくせに…!急に出てきたな!離せ離せー!」ジタバタ
青い鳥「もう同じ失敗はしないからね、今度は掴まえたまま叩き殺す!」ビュオッ
ティンカーベル「だから…離せって言ってるでしょバーカ!」バチーン
青い鳥「うぐっ…顔面に小さな鉛玉が…!なんだこいつ、ピストルでも持ってたのか?」ヨロヨロ
ティンカーベル「私はキモオタみたいに優しくないから教えないよバーカ!私はもうジャムを投げるだけの妖精じゃないんだからねっ!」プンス
736: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/27(日)23:49:14 ID:ZEZ
キモオタ「ティンカーベル殿!そっち任せて大丈夫でござるか!」
ティンカーベル「平気平気!この戦い終わったらファミチキ食べられると思ってても良いくらいだよっ!でもそっちはお願いー!」ピューッ
アリス「やれやれ、彼は偵察は得意だけど戦いはそうでも無いからな…さっさとフォローしてやらないといけないな」スッ
ヒュオ
アリス「それに引き換えティンカーベルは随分と頼もしい仲間だね、キモオタ」スッ
ビュオッ バチーン
キモオタ「おぶっ」ドシャー
司書「キモオタさん!」
キモオタ「フラミンゴで殴られるなど後にも先にも我輩くらいのもんでござろうこれ…しかし、またあの瞬間移動ですかな!?いつの間に我輩の目の前に…などといってる間にまた消えt」
ヘンゼル「どこを見てるんだ…!アリスはあんたの後ろだ!」
ビュオッ バチーン
キモオタ「うぐっ…我輩がいかにどんくさかろうと流石に目の前のアリス殿が動けば気がつけるはずでござるのに…新手の魔法具でござるかな!?」
司書「キモオタさん、気を付けてください!予想ですけど…アリスさんのその瞬間移動は……!」
アリス「…やっぱり気がついたね」スッ
ヒュオ
司書「……っ!」
ヘンゼル「性懲りもなくお千代を狙いに来たってわけか…!」バッ
アリス「知られても問題は無いけどね、ただ知られずに済むのならその方が良い」スッ
737: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/27(日)23:51:21 ID:ZEZ
ラプンツェル「さっせないよーっ!ヘンゼルも司書も逃げて逃げてーっ!」バッ
アリス「ああ、そう言えばキミも居たね」
ラプンツェル「重たい物髪の毛に結んで振り回したら強いよって悟空が教えてくれたからね!それっ!」ビュオッ
シュルルッ
ヘンゼル「なにやってるんだ、柱に髪の毛なんか撒きつけて…あいつ、まさか……!逃げようお千代!ここにいたらあいつの馬鹿な戦略に巻き込まれる!」
ラプンツェル「いっくよーっ!せーのっ!」グイッ
ベキベキッ ミシミシミシッ
アリス「クスクス、やっぱりそうだ。おバカなキミはそういう事を躊躇なく実行に移す。柱をひっこ抜いて投げ飛ばすなんて考えついても普通はやらないよ」クスクス
ラプンツェル「えへへー、私を褒めても柱しかあげないよー?」ブンッ
ドゴシャアアァァァ
キモオタ「ちょ…ラプンツェル殿!そんな事して二階が抜け落ちてきたらどうするつもりですかな!?」
ラプンツェル「あっ、そっか!考えてなかったよー、みんなー?怪我してない?」キョロキョロ
司書「はい、なんとか…でも驚きすぎてちょっと動けそうにないです…」
ティンカーベル「も、もーっ!そういうことするなら先に言ってよね!」プンス
738: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/27(日)23:53:35 ID:ZEZ
ヘンゼル「…もう少し考えて動いてよ。あんたのせいでこっちが全滅するじゃないか」ハァ
ザザッ
アリス「フフッ、まったくだね。広範囲に攻撃するっていうのは良かったけどあんな掛け声あげたらバレバレだよ、それにどんな攻撃をしたところでボクはキミの目の前に一瞬で移動する事が出来るって忘れたの?」
キモオタ「ラプンツェル殿!アリス殿は距離を詰めるつもりでござる!気を付けるのですぞ!」
スッ
アリス「遅いよ。キミの髪の毛は長過ぎて、近くにいる相手には逆に効果が薄いだろう?フラミンゴでの一撃、キミに耐えられるかな?」グッ
ラプンツェル「よーしっ!思った通りだねっグレーテル!」ニコッ
クルリッ
アリス「……っ!」
キモオタ「なんですと!?ラプンツェル殿の背中にグレーテル殿が結び付けられてるでござる!いつの間に…!」
ラプンツェル「へへーんっ!避けられちゃって私の近くに来る事なんてグレーテルが予想済みだよ!ヘンゼルっ!ちょーっとお願いっ!」
ヘンゼル「はっ…?ちょっと、なんで僕を髪の毛で縛り上げて…うわっ!」ビュオッ
グレーテル「だからなんで言っちゃうの……でもアリス……捕まえた、もう放さないよ……」ギュッ
アリス「髪の毛でグレーテルを背中に結びつけていたってわけか…でも所詮は魔力も腕力もない子供だ、これくらい振り払えばいい」グッ
ラプンツェル「させないよっ!ヘンゼル!二人が一緒なら魔法、つかえるんだよねっ!」ヒュッ
ヘンゼル「距離を詰めさせて魔法で仕留めるって……グレーテルが一番危険じゃないかこの作戦…!話は後だ、今はそいつに魔法を思い切りぶつけてやろうグレーテル!」
パシッ
グレーテル「お兄ちゃんありがと……熱い熱いかまど、アリスを……燃やしちゃえ……!」ブンッ
ボボッ
アリス「……っ!」ザザッ
メラメラメラメラーッ!!ボボボウッ
739: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/27(日)23:56:22 ID:ZEZ
メラメラメラーッ
ヘンゼル「またこんな無茶して、気分は悪くない?平気だよねグレーテル?」
グレーテル「うん……大丈夫、でもうまくいって良かったね……ラプお姉ちゃん……」ニコッ
ラプンツェル「うんっ!アリス見当たらないから、別の場所に瞬間移動したわけでもなさそうだしねっ!」キョロキョロ
キモオタ「ちょ、お主等ー!流石にやり過ぎですぞ!それに我々の目的は紅瓢の栓を抜く事でござるよ、早くアリス殿を炎の中から助けださねば…!」
ラプンツェル「確かにちょっとやりすぎちゃったかも……ママに酷いことしたからってやり過ぎは駄目だよね。助けてから怪我ややけど治してあげないと!じゃあ私の髪の毛でちょちょっと助けちゃおう」スッ
ザッ
司書「……ラプンツェルさん!」
ブスリッ
ラプンツェル「あっ…あれ…?おかしいな…気がつかない間に…お腹に、剣……刺さっ」ドサッ
アリス「助けなんかいらないよラプンツェル。確かにやり過ぎに思えるけどこれで貸し借りは無しにしてあげよう」ジャキッ
司書「アリスさんが持っている剣…北斗七星の意匠…七星剣!早くラプンツェルさんの所へ急ぎましょう!キモオタさん!」
キモオタ「もちろんですぞ!ラプンツェル殿…!恐れていた事が起きてしまったでござる…!」
ティンカーベル「ラプンツェル…!ちょ、私に構わないでよファミチキ!ラプンツェルの所行くんだから!!」バッ
グレーテル「……ラプお姉ちゃん……!」
ヘンゼル「なんで平気なんだ…これほどの炎に焼かれたっていうのに!」バッ
アリス「簡単な事だよヘンゼル。ボクは炎熱を無効化する魔法具を持っている、それだけの話さ」
740: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/27(日)23:59:14 ID:ZEZ
ヘンゼル「炎熱を無効化する魔法具…!」
アリス「それくらい予想しないとどんな奇策を練っても奇襲を仕掛けてもかわされてしまうよ?さて、そこをどいてもらおうかグレーテル。ラプンツェルにとどめを刺したい」
グレーテル「……駄目、ラプお姉ちゃんは優しい大人……」ギュッ
アリス「大人に優しいも何もないよグレーテル、どかないのならキミもそのラプお姉ちゃんと一緒に逝くと良い」
バッ
ヘンゼル「僕は言ったよ、妹に手を出すとただじゃすまないって」ゴゴゴゴゴ
アリス「今更そんなただの魔力を打ち出して、ボクに当てる事が出来ると思う?…と、さらに邪魔が入りそうだね、そのシンデレラの機敏さが身に付く魔法具は厄介だな」
シュバッ
キモオタ「ヘンゼル殿、グレーテル殿!我輩の後ろに、アリスは我輩に任せるですぞ!司書殿はラプンツェル殿を頼むでござる」ググッ
アリス「またその『赤鬼』か、金棒相手にボクがまともに戦うと思ってるの?キミが金棒を持つのなら、ボクは遠距離の攻撃を仕掛ける。逆も然りだ」
キモオタ「……ドゥフwww」
アリス「何がおかしい?仲間が刺されておかしくなったかな?」
キモオタ「いやはや、ラプンツェル殿に傷を負わせたのは我輩が至らぬせいでござるが…ラプンツェル殿もなかなかに強い精神力を持っていると思いましてな、流石はおとぎ話の主人公でござるよ」
アリス「まさか…っ!」バッ
カランッ
アリス「紅瓢の栓が抜かれている…!こいつ…動けないと思っていたのに、髪の毛を紅瓢に伸ばしていたなんて……っ」
ラプンツェル「えへへ……これで悟空……紅瓢から逃げられるんだよね……」ニコッ
741: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/28(月)00:02:32 ID:YOx
ラプンツェル「ごめんね、キモオタ……桃太郎の所……連れて行って欲しいな、あとママには心配かけちゃうから内緒にして……ね……?」
キモオタ「もちろんですぞ!さぁ、急いで桃太郎殿の所へ…いや、これは桃太郎殿を及びたてした方がいいですな。司書殿、ラプンツェル殿を安全な場所へ…!」ダダッ
司書「キモオタさん、ラプンツェルさんは酷い怪我です…これはむやみに動かさない方がいいですよ!」
アリス「まったく、参ったな…【ラプンツェル】の世界で無理にでも捕えておくべきだったかな。いいや、ラプンツェルはおバカだから戦力にならないなんて身誤ったボクのミスだね」ハァ
ブーン
蜂「…アリス、俺はテメェを褒めてやるべきなのかもしれねぇな」
ボウンッ
孫悟空「テメェ程の奴が俺が紅瓢から脱出したのに気がつかねぇ訳ねぇ、だってのに逃げずに堂々としてるってのは中々胆が据わってるじゃねぇか」スタッ
ガシッ
アリス「あまり強く掴まないでほしいな…紅瓢の栓を抜かれた時点で、ボクの負けだ。今回はしてやられたから、労いくらいはしてやろうと思ってね」
孫悟空「そうかい、だがテメェには聞きたい事が出来ちまった…炎熱を防ぐ魔法具をどの世界から持ち出したか、とかなぁ!」シュッ
アリス「そんな事が気になるのかい?」クスクス
孫悟空「ふん縛ってからよくよく聞かせて貰うとするぜ。さぁ、観念しやがれ!捕まえちまったら瞬間移動なんざ関係ねぇからなぁ!」
アリス「フフッ、どうかな?今回は酷い醜態をさらしてしまったけど…得たものもあった、それを次に生かさないといけない」スッ
孫悟空「ああ?俺がしっかりと捕まえてんだぞ?まだ逃げられるとでも思ってんのかテメェ」
アリス「もちろん。言っただろ、ボクが逃げてないのはキミ達を労うためだって」
742: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/28(月)00:06:13 ID:YOx
アリス「キミ達はボク相手に良く戦ったよ。まさか悟空を本当に助けだすとは思わなかった」
孫悟空「なん……だとっ!?」バッ
ヘンゼル「悟空がしっかり掴んでいたはずなのに…!また何か魔法具を使ったのか…!」
グレーテル「……わかんない……でも、無理矢理逃げたのは間違いないよ……洋服破けちゃってる……」
孫悟空「何をしたんだテメェ!流石に掴んでるテメェが逃げた事に俺が気がつかないわけねぇ!」
孫悟空「だってぇのにお前が俺の手の中から逃げだした事にまったく気がつかなかった!そんなことがあってたまるか!」
アリス「フフッ、まぁこれは今回善戦した君たちへのご褒美として教えてあげよう」
スッ
ガシッ
ルンペン「ぐお…っ!は、離しやがれテメェ!」
アリス「とは言ってもそこの司書はもう気が付いているみたいだから、彼女に聞いてもらおうかな」クスクス
孫悟空「待ちやがれ!テメェ、ちょこまかとしやがって…いい加減に観念しやがれ!」
スッ
アリス「いやいや、もう帰るよ。少し手の内をさらし過ぎてしまった。だけどその前に……」
スッ
743: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/28(月)00:09:23 ID:YOx
アリス「ヘンゼル、キミに一言だけ」フフッ
ヘンゼル「何…?僕はあんたと話す事なんて…」
アリス「そう言わずに、聞いてもらうよ」
ソッ
アリス「……だ。……だから、ボクは……」ヒソヒソ
ヘンゼル「……っ!」
アリス「フフッ、それじゃあ。また会おうね、ヘンゼル」クスクス
ヘンゼル「……」ギュッ
グレーテル「……お兄ちゃん……?」
ダッ
孫悟空「うおおぉっ!喰らいやがれぇ!」ビュオッ
アリス「数を重ねれば当たるなんて物でもないだろう、キミも懲りないよね」
スッ
744: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/28(月)00:12:47 ID:YOx
アリス「さて、キモオタもティンカーベル……キミ達がここまでするとは思わなかったから正直驚いているけど、聞いてもらうよ?青い鳥、彼女を解放してやれ。もうそろそろ帰ろう」
青い鳥「……」ペイッ
ティンカーベル「ぐぬぬ、なんのつもりなのさ!」
キモオタ「……アリス殿」
スッ
アリス「キミ達の成長はしっかりと見させてもらった。僕達の目的の脅威になるかもしれないと言う事も認める、けれどそれはキミ達を戦争の相手だと認めたという事だ」
アリス「ひとたび戦争が起きれば、傷付くのは戦っている者だけじゃない。キミ達はボクに脅威になると認められた事によって…」
アリス「手放すの無い物まで失う事になってしまう。形があるものも、無いものもね」
キモオタ「それは一体どういう事でござるか!?」
アリス「フフッ、手段を選ばないと言う事さ。戦争は綺麗事じゃあ覆えないから」
ティンカーベル「なにわけわかんないこといってるのさ!」
孫悟空「勝手なことばっかりいいやがって!待ちやがれテメェ!」バッ
スッ
アリス「フフッ、待たないよ。次に会えるのが少し楽しみだよ、また会おう。キモオタ、ティンカーベル」クスクス
745: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/09/28(月)00:35:07 ID:YOx
アリス「さて、キモオタもティンカーベル……キミ達がここまでするとは思わなかったから正直驚いているけど、聞いてもらうよ?青い鳥、彼女を解放してやれ。もうそろそろ帰ろう」
青い鳥「……」ペイッ
ティンカーベル「ぐぬぬ、なんのつもりなのさ!」
キモオタ「……アリス殿」
スッ
アリス「キミ達の成長はしっかりと見させてもらった。僕達の目的の脅威になるかもしれないと言う事も認める、けれどそれはキミ達を戦争の相手だと認めたという事だ」
アリス「ひとたび戦争が起きれば、傷付くのは戦っている者だけじゃない。キミ達はボクに脅威になると認められた事によって…」
アリス「手放すの無い物まで失う事になってしまう。形があるものも、無いものもね」
キモオタ「それは一体どういう事でござるか!?」
アリス「フフッ、手段を選ばないと言う事さ。戦争は綺麗事じゃあ覆えないから」
ティンカーベル「なにわけわかんないこといってるのさ!」
孫悟空「勝手なことばっかりいいやがって!待ちやがれテメェ!」バッ
スッ
アリス「フフッ、待たないよ。次に会えるのが少し楽しみだよ、また会おう。キモオタ、ティンカーベル」クスクス
774: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/10/04(日)00:03:07 ID:CBX
フッ
キモオタ「アリス殿…何やら意味深な言葉を残して消えてしまいましたな…」
ティンカーベル「どうする!?ルンペンなんとかを連れて帰るって事は【不思議の国のアリス】に移動したはずだよ!今だったら追いつけると思う!追いかけてやっつけようよ!」
キモオタ「いやいや、やめておくでござるよ。確かにアリス殿はその世界に居るでござろうけど、完全に向こうのホームでござるよ。まともな準備も無しに乗り込むのは危険ですぞ」
ティンカーベル「でも言ってたじゃん!私達の事を脅威として認めるって!それって今逃げたのは達に負けちゃいそうだったからってことでしょ?」
キモオタ「例えそうだとしても、万全な状態で挑んでも勝てるかどうかわからない相手でござる。下手に追撃しようとして返り討ちなんて笑えんでござるよ?」
ティンカーベル「むぅ…そっか、そうだよね、ラプンツェルの事も心配だし…」
キモオタ「焦りは禁物でござる。おはなしウォッチで桃太郎殿に来てもらってるでござるからラプンツェル殿は心配いらないでござるよ。どうやら司書殿やヘンゼルグレーテル兄妹も見てくれているようでござるし」チラッ
ティンカーベル「みんなが見てくれてるなら安心だね!でもアリスの事はなんとかやっつけたかったね。会うたびに新しい魔法具使ってくるから嫌になるよ…なんかさ、あっちばっかり強くなってる感じー」
キモオタ「向こうも力を付けているのは仕方ないでござる、それ以上に我々が強くなればいいだけでござるよ。まぁ気持ちを切り替えて次の機会に掛けるでござるwww」コポォ
孫悟空「畜生…ッ!すまねぇ、折角紅瓢から出られたってぇのにアリスを取り逃がすなんざ不甲斐ねぇ…!」バンッ
ティンカーベル「まー仕方ないよ、悟空は悪くないって。あのズルイ瞬間移動をどーやってるかわかんないとどうにもなんないかも」
キモオタ「悟空殿ですら目で追えない瞬間移動でござるからな…そう言えばアリス殿は言っておりましたな、司書殿がその秘密の答えを掴んだようだと」
775: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/10/04(日)00:04:36 ID:CBX
孫悟空「そういやそんな事言ってたな、後で司書に聞いてみるとするか。あの瞬間移動は相当に厄介だが、カラクリさえ暴けりゃあなんとでもなるからよぉ」
ティンカーベル「そうそう!強気で行こうよ!どうやってるか解ればあんな奴……あれ?誰かいるよ…!」
ザッ
中華娘?「あーっ!悟空センパイ…!やーっと見つけたッスよ!」ニッコォ
キモオタ「ちょwwwこんなところにチャイナガールがwww悟空殿の事を知っているという事はあの者もしやwww」コポォ
孫悟空「おっ、玉龍!もしかしてテメェもこの廃墟に捕えられていたってのか?」
タッタッタッ
玉龍「そうなんスよ!あのチビのおっさんにおかしな魔法掛けられて…ずーっとこの地下の部屋に閉じ込められていたッス!でも突然魔法が解けて部屋から出られたって訳ッス!」ギューッ
孫悟空「どさくさに紛れて抱きつくな!まっ、なんにせよ無事でよかったけどよ。おう、オメェ等に紹介しねぇとな!こいつは俺と一緒にお師匠の旅の供をしていた奴でな、玉龍って名の…」
玉龍「自己紹介なんてどーだっていいッス!それよりウチずーっと狭い部屋に一人で寂しかったッス…」
玉龍「だから今夜は一晩中慰めて欲しいッスよ、セ・ン・パ・イ♪」チュッ
孫悟空「なに服はだけさせてんだ!お師匠が居ねぇからって好き放題しやがって…たまには大人しくしてやがれっ!」
ゴンッ
玉龍「痛っ…!なにするッスか!愛情表現なら拳よりも抱擁や口づけにして欲しいッス!まぁ玉龍ちゃん的には痛みを伴う愛情表現も…全然アリなんスけどね?」スリスリ
孫悟空「ナシに決まってんだろ黙ってろお前!…あぁ、すまねぇこいつは玉龍、こんなナリだがこれでも竜王の血を継ぐ龍の子だ。どんな奴かってのは今のやり取りで察しただろうが、要は変態で馬鹿だ」
玉龍「ちょ、センパーイ!直球すぎるッスよー!」タハー
776: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/10/04(日)00:05:37 ID:CBX
ティンカーベル「へえーっ、龍だって!かっこいいね!あっ、私はティンカーベルっていうんだ、ティンクって呼んでね玉龍ちゃん!」ニコニコ
玉龍「了解ッス!いやー、妖精って初めて見たッスよー!妖怪は見慣れてるんスけどね、やっぱり妖精は可愛いッス。センパイ、玉龍ちゃんとティンクちゃんどっちが可愛いッスか?」チラッ
孫悟空「ああ、はいはい、わかったわかった。テメェの方が可愛らしいって事にしてやるよ玉龍」ハイハイ
玉龍「んもーっ!玉龍、愛してる。だなんて…!人前で恥ずかしいセンパイっすねー」テレテレ
孫悟空「うるせぇよ、そこまで言ってねぇ。……おい、ティンカーベル。気を悪くしねぇでくれ、こう言っておかねぇと怒りに身を任せた龍が大暴れするんでな」ヒソヒソ
ティンカーベル「あはは、それは大事件だねー。私は別に気にしないけどー」ヘラヘラ
キモオタ「ドゥフフwwwなかなかユニークな娘さんに懐かれているようですな、悟空殿はwww」コポォ
バッ
玉龍「!? 気がつかなかったッス…!猪八戒が何故この世界に居るッスか!?」バッ
キモオタ「ちょwwwまた猪八戒殿ネタwwwそのくだりもう二回やったでござるからwwwもう十分でござr」
シュバッ ジャキッ
キモオタ「ブヒィッ!?ぎょ、玉龍殿の爪が突然鋭くなっt」
玉龍「しらじらしいッスね、龍なんだから爪が鋭いのは当たり前ッス」スルッ
ティンカーベル「キモオタ!下手に動いちゃダメだよ、玉龍ちゃんの爪でスッパリいったら首が取れちゃう!」
キモオタ「ちょ、ちょ…っ!我輩、今日は命を狙われ過ぎですぞぉ!」
777: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/10/04(日)00:07:38 ID:CBX
玉龍「ハハーン、読めたッスよ。お師匠様と沙悟浄をほったらかして自分だけ逃げてきたッスね?相変わらずとんだ豚野郎ッス」ギリッ
キモオタ「だ、だから我輩は猪八戒殿とは別人でござると言うのに…」
玉龍「言い逃れは見苦しいッスよ。さぁ白状するッス、ただし返答の内容次第じゃ玉龍ちゃんの爪がお前を煮て良し焼いて良しのぶつ切り豚肉に変えてしまうッスよ?」ジャキッ
キモオタ「ご、悟空殿ォ!なんとか言ってやっていただきたい!というかなんで黙ってるのでござるかwww」
孫悟空「あぁ、テメェならあの魔法具で何とかなるんじゃねぇかと思ってな。すげぇ魔法具だからなありゃあ、どんな事が出来るのか見てみてぇ気持ちもある」
キモオタ「魔法具見たさに我輩をいけにえに捧げるのはやめていただきたいwww普通に助けてwww」コポォ
孫悟空「仕方ねぇな…おう、玉龍。そいつは猪八戒じゃねぇんだとさ、現実世界のキモオタっていう男だ。見た目もだが中身も猪八戒ぐらい無害な奴だから放してやれ」
玉龍「本当ッスか…?センパイが言うなら放してやるッスけど……こんな豚が世界に二体も居るなんて信じられないッス」バッ
キモオタ「二体www単位に悪意を感じますぞwww」コポォ
ティンカーベル「私はそれよりも猪八戒がどんな人なのか気になる!何回も間違えられるとか逆に興味が出てきたよー」ヘラヘラ
キモオタ「笑いごとじゃないでござるよwwwさて、やるべき事もつもる話も山ほどあるでござるが…まずはラプンツェル殿の様態が気になりますな、そろそろ治癒も完了したころでござろう」
グレーテル「……キモオタお兄ちゃん」スッ
キモオタ「グレーテル殿。確かラプンツェル殿についていてくださったのでは…どうかしましたかな?www」
グレーテル「桃太郎さんが……呼んでる……ラプお姉ちゃんの治療、とりあえず出来る事はした……でも、おかしなことがあるって……すぐ来て」
ティンカーベル「おかしなことがある…?なんだか歯切れが悪い言い方だね、失敗しちゃったのかな?」
キモオタ「そんなことはないでござろう。しかし気になりますな、とにかくラプンツェル殿の元へ行きますぞ」
タッタッタ ドスドスドス
778: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/10/04(日)00:10:08 ID:CBX
キモオタ「桃太郎殿ー!急に呼び出したうえ治癒まで頼んで申し訳なかったでござるー!」ドスドス
桃太郎「来たかキモオタよ。いかなる時であろうと、友の危機とあらば馳せ参じるが日ノ本の侍…故に気にする事など無い」スッ
ティンカーベル「それよりさ、グレーテルに聞いたよ?なんだかおかしなことがあるってどういう事?もしかして治癒に失敗しちゃったの?うっかり?」
桃太郎「うっかりってお前……否、拙者は日ノ本一の侍、その様な失態は犯さぬ。はずだったのだがな……どういうわけか拙者の能力ではラプンツェルの傷を完全に治す事ができぬのだ。このような事は初めて故、拙者自身困惑している」
ラプンツェル「もーっ、桃太郎はあれだなー。かんぺきしゅぎしゃ?だよー、これだけ治ったらバッチリだってばー」ニコニコ
ティンカーベル「あれー?ラプンツェル元気そうじゃん!洋服血まみれだけど、傷は塞がってる感じだし…全然失敗じゃ無いじゃん!」
ラプンツェル「桃太郎の治癒能力って凄いんだねっ!手をかざしただけなのにしゅわわーって傷が塞がっていって、痛いのが無くなっていったよ!」ニコニコ
キモオタ「それは何よりwwwって桃太郎殿話が違いますぞwwwラプンツェル殿普段通りではござらんかwww」コポォ
桃太郎「しかしだな…ラプンツェルよ、刺された場所に痛みは無いと言ったな?」
ラプンツェル「うん、バッチリだよ!あっ、でも洋服が血でぺとぺとするから着替えたいなー」
桃太郎「…暫く辛抱せよ。刺された場所以外に身体に違和感があると言っていたが…その違和感とやらはまだ感じるか?」
ラプンツェル「あー、うん、なんかねー…こう身体がだるーい感じっていうかちょーっともやっとするかなぁ?痛いって言うのとは違うけどちょっと気持ち悪い感じ…我慢できなくは無いんだけどー」
キモオタ「なんだかふわふわしておりますなwwwしかし、その違和感とやらも身体の不調には変わりないのでござるから桃太郎殿に治してもらえばいいのではwww」
ラプンツェル「それ、さっき桃太郎にお願いしたよ?傷は治ったけど、なんだかもやっとするから治してーってね」
桃太郎「うむ、しかし…何度治癒を行おうとも症状が改善しないのだ」
ティンカーベル「身体に感じる違和感なのに、何故か桃太郎でも治せないってこと?」
779: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/10/04(日)00:12:47 ID:CBX
桃太郎「いかにも。拙者の治癒の力は身体を蝕む病や毒を討ち払い、傷や怪我を癒す。故に身体に感じる違和感も、その大本から取り払えるはずなのだが…」
キモオタ「たまたま調子が悪くてうまく治癒ができなかったとかwwwそういうのではないのですかなwww」
桃太郎「拙者の治癒能力は天より授かりし能力。桃から生まれし数奇な運命によって拙者に与えられた、人智を超えし能力……故に日によって冴えたり錆びついたりするような不安定なものではないのだ」
ティンカーベル「そっかー、なんでかなー?司書さんはおとぎ話に詳しいからなにかわかんない?」
司書「そうですね、【ラプンツェル】にもその様な場面はなかったと思うから…考えられるとしたら、ラプンツェルさんを傷付けたその剣かな…?」
ラプンツェル「あの剣がどーかしたー?っていうかもう、すっごく痛かったよ!もうね、うっかりフライパンを足に落としちゃった時の百万倍は痛かったよー!」
ティンカーベル「ひゃ、百万倍……っ!」ゴクリ
キモオタ「ティンカーベル殿wwwそこ食い付かなくていいでござるwwwで、その剣がどうかしたんでござるか?www」コポォ
ヘンゼル「……ラプンツェルを刺した剣、あれに原因があるんじゃないかって、お千代は言いたいんでしょ?」
司書「うん、あの剣はたんなる剣じゃないみたいだから」
桃太郎「単なる剣では無いと?うむ…ラプンツェルの腹部に突き刺さっていたのはこの剣だ。刃として見ても相当な業物だと言う事がわかるが…司書といったな?お主はこれに原因があると言うのか?」
司書「はい。私も実物を見た事があるわけでは無いんですけど…その意匠を見る限り、その刀は……」
ズイッ
玉龍「センパイセンパイ、あの剣ってもしかしてお師匠様が言っていた七星剣じゃないッスか?」
780: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/10/04(日)00:14:31 ID:CBX
孫悟空「玉龍もそう思うか、俺もそうじゃねぇかと睨んでたところだ。北斗七星の意匠があるってこたぁ間違いねぇだろうがな」
キモオタ「七星剣…?そういえば先ほど司書殿も口走っておりましたな、一体どのような武器なのでござるか?」
司書「【西遊記】に登場する金角銀角が所有する武器です。作中ではこれといって特別な能力を持っている武器とは明言されていませんけど」
ティンカーベル「じゃあただの剣って事?それだったらこれに原因があるって考えるのはちょっと考え過ぎじゃない?」
司書「紅瓢もそうですが七星剣も元々は天界にあった道具なんです。仙人様が作り出した天界の魔法具…それを金角銀角が持ちだしたんです」
桃太郎「仙人が作りし魔法具故、斬りつけられたラプンツェルの身体に異変を及ぼしたというのか?しかし仙人だの天界だの……にわかには信じられぬな」
孫悟空「信じられねぇっつってもそいつぁ事実だぜ?天界は不老不死だのなんでもありだからよぉ、剣に魔法妖術で細工がしてあるくらい不思議な事じゃねぇよ」
桃太郎「……」スッ
孫悟空「あぁ?オイ、んだテメェ…桃太郎とかいったよな?どうかしたのかよ、突然黙っちまってよぉ?」ズイッ
桃太郎「何でもない、気にするな。……いや、何でもないので気にしなくても大丈夫だ」
ティンカーベル「あはは、言い変えてるー!もしかして桃太郎、悟空が乱暴そうな外見だからってビビってるんj」モガモガ
グイッ
桃太郎「ちょ…そう言う事言うのやめろよティンク!司書殿もヘンゼルとグレーテルも別の世界のおとぎ話の住人なんだろ!?なんつぅか桃太郎のイメージってもんがあるだろおぉぉ!」ヒソヒソヒソヒソ
キモオタ「まぁ悟空殿はあきらかに外見がヤカラですからなwwwあの顔を見てチビってもしかたないですなwww」ヒソヒソコポォ
桃太郎「チビってねぇよ!拙者がああいうなんかいかにも『戦いを好んでます』的な奴苦手なの察しがつくだろ!ちょっと配慮するとかしてくれてもいいだろぉぉ!気を使わせて悪いけど頼むってぇぇ!」ヒソヒソ
781: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/10/04(日)00:16:49 ID:CBX
ティンカーベル「うわー、鬼退治成功させた英雄のくせにださいよねー?」ケラケラ
桃太郎「ティンクお前…!ダサいとかあれだぞ、いくらなんでもあれだぞお前…!言い過ぎだぞお前…!」ヒソヒソヒソヒソ
孫悟空「テメェ等なにヒソヒソと話してんだ?おい、桃太郎…俺の話気いてやがったのか?」
桃太郎「も、もちろん。その、なんだ、悟空さん……いや、悟空はラプンツェルに突き刺さった七星剣は天界の魔法具…故に、魔法や妖術で何らかの細工がされている可能性があると言いたいわけだな?」
孫悟空「おう、その通りだぜ。なんだ、ちゃんと聞いてやがるじゃねぇかよ。ヒソヒソ話なんかしてやがるからどうしたのかと思っちまったぜ」
玉龍「まぁ【西遊記】が消滅した今、細工をしてるだろうってのも想像になっちゃうッスけどね。でもその可能性は十分にあるッスよ。なにせ仙人がわざわざ作った武器ッス、ただの剣とは考えられないッスよ」
キモオタ「平たく言えば、RPGなどでいう所の追加効果という奴ですなwww物理攻撃しつつ相手を毒にするとかマヒにするとかwwwそんな感じでござろうかwww」
桃太郎「なるほど、拙者の治癒はあくまで肉体の傷や病気を癒すもの。魔法、妖術の類を打ち消したり…呪いを解くような力は無い」
桃太郎「魔法妖術の力で武器に負荷させた効果がラプンツェルの身体に違和感を与えているのであれば、それを取り払う事が出来ないと言うのも納得がいく」
グレーテル「それじゃあ……ラプお姉ちゃんのキズは治ったけど……なにかの魔法が掛けられちゃってる可能性があるって事だね……可哀そう……」
司書「私は魔法には詳しくないですけど、魔法使いさんや魔女さんや…魔法を扱える人物なら、ラプンツェルさんの違和感を取り除くことができるんじゃないかな」
キモオタ「それもそうですなwwwこういう時、つくづく自らの人脈に惚れ惚れしますぞwwwなにしろ知人に二人も魔法の専門家が居るんですからなwww」コポォ
ティンカーベル「そうだねっ!それじゃさっそく、ゴーテルにお願いしにいk」
ラプンツェル「…っ!ママは駄目だよっ!えっとえっと、それじゃあさ、【シンデレラ】の魔法使いの所に行こっ!そうしよっ!」グイグイ
桃太郎「いや、むしろゴーテル殿の方が適任ではないのか…?お主の母親は魔法植物の権威と聞いたぞ。以前ゴーテル殿と話した折、薬学は専門外などと言っていたが…薬草にも造詣が深いように感じたが」
ラプンツェル「ママには心配かけたくないんだってば!だからママには私が怪我した事内緒だよっ!あ、でもでも私が頑張ったおかげで悟空を助けた事は報告してもいいよっ!」フンス
782: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/10/04(日)00:18:31 ID:CBX
桃太郎「しかし、拙者は日ノ本の侍。たとえ友の頼みであろうとも隠し事をするというのは…」
キモオタ「そこは柔軟に行くでござるよ桃太郎殿wwwぶっちゃけ、この事バレたら我輩とティンカーベル殿がどうなるか想像に容易いでござるしwww」コポォ
ティンカーベル「そ、そうだよ桃太郎!ゴーテルには内緒にしようよ!」
桃太郎「しかし、ゴーテル殿には世話になっている身。悪意なくとも欺くなど不義理ではないだろうか…」
ティンカーベル「もーっ!桃太郎は私が死んじゃってもいいの!?」クワッ
キモオタ「ティンカーベル殿必死すぎワロタwww」コポォ
ティンカーベル「こぽぉじゃないよ!キモオタだって他人事じゃないんだからね!きっと滅茶苦茶怒って、野菜の肥料とかに変えられちゃうんだよ…!」ガクブル
桃太郎「おびえ過ぎではないか?素直に事情を話せばゴーテル殿は怒ったりしないと思うが。それに大概、親というものは子供の隠し事などお見通しというもの。拙者にも覚えがある故」
キモオタ「まぁ、実際のところいつまでも隠し通せるとは思いませんがなwww相手は魔女でござるしwww」
ラプンツェル「ママはあんな風に言ってたけどお仕置きなんかしないと思うよ?」
ティンカーベル「そりゃあラプンツェルにはね…私達は塵にされるけどね」ビクビク
ラプンツェル「されないよー!でもきっとママは私の事もだけどキモオタやティンクの事も心配してくれてるよ?だからこれ以上は不安にさせたくないんだ、私ママの事大好きだもん」
桃太郎「…いいだろう。ゴーテル殿を欺くなど気が進まぬが、お主の母親を想っての気持ちを無下にするというのも日ノ本の侍らしからぬ無粋な行為。ラプンツェルの意思を尊重するとしよう」
ラプンツェル「本当っ!?やっぱり桃太郎は優しいさむらいだよーっ!」ピョンピョン
桃太郎「という訳だキモオタよ、拙者はラプンツェルを連れて魔法使い殿の元へ向かう。そうすればラプンツェルの身体の違和感も解消するだろう」
783: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/10/04(日)00:21:49 ID:CBX
キモオタ「魔法使い殿にお任せすれば万事解決でござるなwww頼みましたぞwww」コポォ
ティンカーベル「じゃあさじゃあさ!私が一緒に行くよ!私の世界移動の力を使えばびゅーんとひとっ飛びだよ!」
キモオタ「ナイスアイディアですなwww二人は世界移動の術を持ってませんからなwwwそう言う事ならば我輩も一緒に行きますぞwww」
ティンカーベル「ううん、キモオタはやらなきゃいけない事あるでしょ!司書さんやヘンゼルとグレーテルをそのまま帰らせるつもり?もうお外は真っ暗なんだよ!」プンス
キモオタ「おおっとwww確かにそうですな、我輩とした事が…ジェントルマンが聞いて呆れますなwww」コポォ
司書「あっ、私達は本当に大丈夫ですよ、三人も居ますから。だからキモオタさん、桃太郎さんとティンクちゃん達と一緒に行ってあげてください」
キモオタ「いやいや、ラプンツェル殿には日ノ本一の侍と空を駆ける妖精がついて居るので大丈夫でござるよwww故に我輩が責任を持って司書殿達を自宅までお送りしますぞwww大船に乗ったつもりで帰ると良いですぞwww」
グレーテル「キモオタお兄ちゃん……優しいね、とても紳士的なの……」
ヘンゼル「どうかな…キモオタお兄さんの方が警察に捕まるんじゃない?職務質問とかで」
キモオタ「ちょwwwリアルにありそうなのでやめていただきたいwww」
司書「うふふ、それならお言葉に甘えて送ってもらう事にします。よろしくお願いしますね」ウフフ
玉龍「おおっと!キモオタもなかなか策士ッス!親切を装って司書を送ると見せかけて……これが噂の送り狼ッスねー!?」ウヒョーッ
ヘンゼル「送り狼って確か……ああ、ねぇ、お千代。やっぱりやめておこうよ」
孫悟空「玉龍!ガキの目の前で何言ってんだテメェは!ヘンゼルが警戒しちまっただろうが……おい、それじゃあ俺と玉龍もついて行く、それなら問題ねぇだろヘンゼル。聞きてぇ事もあるしな」
ヘンゼル「まぁ、キモオタお兄さん一人だけよりは安心だね。僕はそれで構わないよ」
キモオタ「ちょwww我輩の信用度の低さwwwとにかくそうときまれば早速帰りますかな、いつまでも廃墟にたむろしていてはそれこそ補導されますぞwww」コポォ
784: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/10/04(日)00:24:03 ID:CBX
現実世界 司書の部屋への帰り道
グレーテル「真っ暗だね……それに私……すっごく眠い……」グシグシ
司書「お家まで我慢できそう?私がおぶってあげてもいいけど、どうする?」
グレーテル「ううん……お千代ちゃんも疲れてるから、私も頑張って歩く……でも帰ったらすぐにお布団に入るね……」ネムネム
ヘンゼル「歩きながら寝ないようにね、グレーテル」
グレーテル「うん……大丈夫……」グシグシ
玉龍「しっかし驚きッスよねー、いきなり捕まえられてなんとか逃げだしたら今度はいろんなおとぎ話の登場人物が一か所に居るんスから!」
孫悟空「まぁ、な。偶然なのか運命の導きなのか知らねぇけどな…【西遊記】【ラプンツェル】【ヘンゼルとグレーテル】【キジも鳴かずば】【ピーターパン】【ルンペンシュティルツヒェン】あと【桃太郎】か」
キモオタ「そうやってタイトルを並べると凄まじいですなwwwしかし我輩としては司書殿がおとぎ話の主人公だと言う事の方が驚きでしたぞwww」
司書「すいません、あまり人にいうものでもないかなと思ったので…それに言ったところで変な顔をされるから現実世界では隠していたんです」ペコッ
キモオタ「いやいや、謝らないでいただきたい。責めているわけではないのでwwwまぁ隠して当然みたいなところありますぞwww」
玉龍「まぁ普通はそうッスよね。自分がおとぎ話の世界の住人だなんて公言するもんじゃないッスよ、キモオタの言うとおり隠して当然ッスね。玉龍ちゃんのセンパイへの想いは包み隠してなんかないそのままの気持ちッスけどね!」ドヤァ
孫悟空「ところで司書、俺ぁお前に聞きてぇことがあんだ。聞いても構わねぇか?」
玉龍「華麗に受け流すとは先輩も手厳しいッスー!そういうクールなところにもしびれるッスー!」タハーッ
司書「えっと、それは構わないんですが、玉龍さんの事ほったらかしでいいんですか…?なんだか身悶えしてますけど…」
孫悟空「おう、アレは居ないものとして考えてくれ。気色悪ぃからな。それでだな、俺がお前に聞きたい事ってのは……」
孫悟空「アリスの瞬間移動の事だ。テメェなら知ってるんだろ、あの瞬間移動の正体をよぉ」
785: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/10/04(日)00:30:01 ID:CBX
司書「あれは瞬間移動なんかじゃありません。でもどう説明すればわかり易いかな……」
キモオタ「ほうwww瞬間移動ではないとwww我輩は何かの魔法具だと思っていたのでござるがなwww」
ヘンゼル「アリスのあの動きは魔法具なんかじゃないよ、そんなのよりももっと手に負えない力だ」
玉龍「手に負えないとは大きく出たッスねー!瞬間移動とまでいかなくても身軽な私やセンパイなら似たような事なら出来るッスよ?」
孫悟空「似たような事ならな、だが移動している最中の姿を一切見る事が出来ないってのはおかしな話だ。俺にも玉龍にもそんな芸当は無理だからなぁ」
孫悟空「どんなに素早い奴でも目的の場所に移動するには動く必要がある、そうなると移動途中の姿を全く見られないなんてのは本来は不可能だ」
司書「これならわかり易いかな……孫悟空さん、キモオタさん、ひとつだけなぞなぞに付き合って下さい。アリスさんが瞬間移動にどんな方法を使ったか解るはずです」
司書「例えば、ですよ。私の部屋から図書館までは歩いて15分ほどかかるんですけど…正午ちょうどに私の部屋を出発して、正午ちょうどに図書館にたどり着く方法……わかります?」
キモオタ「ちょwwwなぞなぞでござるかwwwしかしそれ確実に無理でござろうwwwそれこそ瞬間移動をするしか方法が無いですぞwww」コポォ
司書「それじゃだめです、瞬間移動以外の方法を考えて見てください」
孫悟空「しかしよぉ、俺も同意見だぜ、正午に出発して正午にたどり着くってのはどんな神仏にだって無理だ」
玉龍「フフーン!二人とも頭が硬いッスね!玉龍ちゃんは簡単にわかっちゃったっすよ!ズバリ……時間を止めればいいんスよ!」ドヤァ
玉龍「司書の家で時間を止める、それからゆっくり歩いて図書館に着いたらお茶でも飲んで一息ついてそれから時間停止を解除するッス!これでなんちゃって瞬間移動の出来上がり……ん?どうしたッス、センパイ。そんな恐い顔して……」
孫悟空「……おい、司書ォ!この謎掛けはアリスの瞬間移動のカラクリを説明する為のもんだって言ったよなぁ!?」
司書「はい、そうですね。それに玉龍さんの回答は、大正解です」
孫悟空「おいおい、本気かよ…」
キモオタ「ちょ、ちょっと待っていただきたい。それはつまり、アリス殿は……!」
司書「時間を止めて、制止した時の中を移動している。それがアリスさんの瞬間移動の正体です」
786: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/10/04(日)00:36:36 ID:CBX
キモオタ「アリス殿は時を止める事が出来る……ですとぉ!?」
孫悟空「んな無茶苦茶な事までできるってのかあの小娘…!そんなもんお師匠どころかお釈迦さまだってできやしねぇぞ!?」
司書「【不思議の国のアリス】には数え切れないほどの不思議な出来事が詰まっています。時間を操る力もその一つ、アリスさんの物語の中にちゃんと登場しますよ」
グレーテル「うん、確かお茶会のおはなし……帽子屋さんと三月ウサギさんとヤマネさん……ずーっとお茶の時間のまま止まったその場所で、終わらないお茶会するの……」グシグシ
ヘンゼル「七章目の『狂ったお茶会』に時を操る云々の話は登場するんだったかな」
キモオタ「そう言えばそんなお話もありましたな…恥ずかしながらあんまり覚えてなかったでござるwww」ドゥフ
司書「えっとですね。アリスさんは迷い込んだ不思議の国で、お茶会をしている帽子屋さん達に会うんです。
ですけど帽子屋さんはおかしなことを口にしたり、答えの無いなぞなぞをしてみたりしていて、アリスさんは次第に呆れてしまってこう言うんです「もっと有効な時間の使い方をしたらどう?もったいないわよ」と」
司書「すると帽子屋さんはこう言うんです。「私ほど時間と仲が良ければ、もったいないだなんて彼の事をもののように扱ったりしないよ」と」
キモオタ「時間の事を彼とは…いわゆる擬人化というやつですかな?」
司書「少し違いますね。帽子屋さんが言うには時間と仲良くしていれば、彼は自分の好きなように時計を動かしてくれるそうです。
授業が始まる午前九時、そっと時間に耳打ちをすればたちまち時計はお昼ご飯の時間を指すんです。お腹が空いていなければまた時間に耳打ち、そうすればお腹がすくまで…」
司書「時間は、そのまま時を止めておいてくれる。なにしろ時間とは仲良しなんですから、時間は自分の言う事を聞いてくれる…そういう理屈なんですね」
孫悟空「無茶苦茶に聞こえるが、それがあいつのおとぎ話【不思議の国のアリス】の内容である以上、あいつがその能力を使える事に何ら不思議はねぇな」
キモオタ「しかし、魔法具なら奪うとか壊すとかできそうでござるが。時間殿とアリス殿の絆が原因とあらば、それこそ対抗策を練る事が出来ないのでは…」
司書「いいえ、アリスさんから時間を止める能力を奪う事はきっと簡単です。でも、それはアリスさんと対峙している場面で無いと出来ませんし、それに……」
司書「アリスさんの事で、もう一つ気になる事があるんです」
787: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/10/04(日)00:39:31 ID:CBX
キモオタ「気になる事…でござるか?」
司書「はい。話すと長くなっちゃうんですけど……あるおとぎ話に、本来は登場しない少女が登場するんです」
司書「それは日本の昔話なんです。それなのに金髪で洋服を着た、瞳の色の違う少女……そのおとぎ話には『有巣』という名前で登場していました」
キモオタ「それはまさしくアリス殿ではござらんか…!おとぎ話を消して周っているというのに、なぜそのおとぎ話だけは消さずにいるのでござろうか…司書殿、そのおとぎ話はなんというタイトルでござるか?」
司書「【浦島太郎】という日本の昔話です。その中にアリスさん、いえ有巣という少女として登場していてですね…」
ヘンゼル「盛り上がっているところ悪いけどさ、もう部屋に着いたよ?グレーテルもギリギリみたいだし、今日はもう話を切り上げてしまってよ」
司書「あっ…本当だ。えっと、キモオタさん…申し訳ないんですけどこの続きは…」
キモオタ「いいですぞいいですぞwww明日にでもまた図書館に行くのでその時に教えていただきたいwww」
司書「はい、わかりました。キモオタさん、悟空さん、玉龍さん。ありがとうございました」
孫悟空「おう、アリスが時間を止められるって事教えてくれてありがとよ」
玉龍「玉龍ちゃん、お千代ちゃんにちょーっと興味湧いちゃったッス!だからまた今度女子会するッス!」
司書「うふふ、玉龍さん、女子会…ですか?」ウフフ
グレーテル「……お千代ちゃん……眠い……早く入ろ……」グシグシ
司書「うんうん、ごめんね。ではみなさん、また」フリフリ
788: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/10/04(日)00:42:16 ID:CBX
キモオタ「アリス殿の瞬間移動がまさか時間停止を利用したものだったとは…」
孫悟空「時間停止ってぇと相当だぞ、なにしろこっちが気がつかないうちにアリスはあれこれし放題だってんだからな」
玉龍「けどそれって変じゃないッスか?」
孫悟空「あぁ?なにがおかしいってんだ?」
玉龍「もし時間が止められるなら止めている間にキモオタやセンパイに攻撃を仕掛ける事も、なんなら殺す事だってできるッスよね?玉龍ちゃんももし時間が止められたならセンパイの側に行くだけじゃなくあんなことやこんな事するッスからねー」
孫悟空「テメェはこんな時まで軽口叩きやがって…しかしまぁ、そりゃあ道理だな。時間停止中に攻撃出来ない理由でもあんのかもな」
キモオタ「司書殿も時間停止能力を奪う事は容易いと言っていましたからなwww」
孫悟空「まぁ、考えたって仕方ねぇや。俺達は元居たおとぎ話に帰るぜ、そのおはなしウォッチとかいうの使えば離れていても会話できるんだろ?司書から何か情報を手に入れたら俺にも教えてくれや」
キモオタ「もちろん、構いませんぞwww」
孫悟空「悪いな、なんつーかテメェには助けられちまったしな。これからは何か困った事がありゃあ声掛けてくれや、そうすりゃあ飛んでいってやるからよぉ!」
玉龍「玉龍ちゃんもまぁ協力してやらない事もないッスよ?その代わり、センパイとの仲を取り持つことが条件ッス」
キモオタ「それは心強いですなwwwぜひともお願いしますぞwww時に、悟空殿達が居たおとぎ話とは?もう【西遊記】は消滅しているでござるよね」
孫悟空「ああ、そうだな…教えてやっても言いが、ただ教えるのも面白くねぇな」
孫悟空「今回の礼に、そのうちお前とティンクをそのおとぎ話に招待してやるよ。たいした事はできねぇがうまい飯くらいはごちそうしてやるぜ、なんておとぎ話かはそのときのお楽しみって奴だ」
キモオタ「それは何よりの褒美ですなwww楽しみにしているでござるよwww」
孫悟空「おう、それじゃあまたな、いろいろとありがとうなキモオタ!よし、玉龍…あいつの無事も確認したいし急ぐぜ」
玉龍「わかったッス!じゃあ可愛い女の子の姿とはしばしお別れッスね」シュルルルル
孫悟空「あいつもおとぎ話も無事だと思うが…アリスがグレーテルの火炎を防いだ魔法具はどう考えても、あの魔法具だ…間違いなくあの世界にアリスは来たって事になるからな、油断はできねぇぞ」
玉龍「火炎を防ぐ魔法具…あっ、『火鼠の皮衣』ッスか…そりゃあちょっと気になるっすね。よーし、じゃあ急ぐッスよーっ!」
ヒュンッ
キモオタ「行ってしまいましたな…さて、我輩も帰るとしますかなwww」
789: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/10/04(日)00:44:24 ID:CBX
シンデレラの世界 魔法使いの屋敷
魔法使い「……事情はわかった。しかし、母親に内緒と言うのは感心せんなラプンツェル」
ラプンツェル「お願いだよー、魔法使いだってシンデレラに余計な心配かけたくないって思う事あるでしょ?それと同じだからー」
ティンカーベル「そうだよ!お願い魔法使い!私達の命もかかってるからね、これっ!」
魔法使い「……いいだろう、気持ちはわからんでも無い。しかしゴーテルに知られたとしてもワシは一切庇わんからそのつもりでな。しかし、桃太郎はこんな事をしていていいのか?剣術指南の約束をしているのではなかったか?」
桃太郎「あぁ…友の危機故、事情を説明して待ってもらっている。この後向かう予定にしている故、心配なされぬよう」
ラプンツェル「鍛錬?桃太郎も修行するのー?剣術の修行ー?」
桃太郎「うむ、拙者も特別な鍛錬に取り組みたいと思い立ってな…先日、赤ずきんと赤鬼に相談したのだ。なんと赤ずきんには異国の王子と親交があるらしくてな」
桃太郎「その王子には『鉄』の二つ名を持つ剣術に長けた忠臣が居るらしい、その者に異国の剣術を指南してもらえるように頼みこんだのだ。拙者にとって良い刺激となるだろう」
ラプンツェル「へぇーっ!桃太郎も頑張ってるんだね!じゃあ私も頑張ってアリスの事やっつけられるくらいに強くなるよっ!」フンス
ティンカーベル「私だって強くなるんだからねっ!あいつらには絶対に負けないよっ!」
魔法使い「これこれ、意気込みが十分なのは構わんが無茶はいかん。特にラプンツェルは今日一日は部屋から出ないように、ワシの約束が守れないなら魔法も解かぬしゴーテルに報告するからそのつもりでいるんだぞ」
ラプンツェル「えーっ!?一日も!?それより言う事聞かないとママに告げ口するとかそういうのずるいよ!」プンス
魔法使い「ズルイとはなんじゃ。それにワシとて万能ではないのじゃ、慣れない異国の妖術を解くなんぞ容易くは無い。それくらいの時間は貰うぞ」
ラプンツェル「長いよー、それにやっぱりママに言うって脅すのズルいー」プクー
桃太郎「膨れるな、ラプンツェルよ。一日の遅れなど、お主に強い意志があればすぐにでも取り返せるだろう。共にアリスを倒す為、協力して鍛錬に励むとしよう」
ラプンツェル「むーっ、わかった!ちゃちゃっと治してバーッと練習して、たくさん強くなるよっ!」フンス
ティンカーベル「うんうん!みんなで一緒に頑張ろーっ!」ニコニコ
青い鳥「……」バッサバッサ
790: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/10/04(日)00:47:37 ID:CBX
青い鳥「ふぅ、さっきは驚いたなぁ…」
青い鳥「この【シンデレラ】の世界に偵察に来たらあのクソ妖精が居たから驚いたよ。あいつらに僕達の考えがバレたのかと思ったけど、単なる偶然だったみたいだ」
青い鳥「まぁ、あのクソ妖精なんか簡単に始末できるけどさ。だけど油断はいけない、僕にはシンデレラが住んでいる城の侵入経路を探るっていう立派な任務があるんだから」
青い鳥「うーん、でもこのまま城の周りを飛ぶのは危険かもしれないな。桃太郎やラプンツェル、クソ妖精が城に来るかもしれないし…シンデレラも青い鳥である僕の事を聞いているかもしれない…なにかいい方法は無いかな?」
「おーい、新入りー!角のパン屋に運ぶ小麦粉もしっかり荷車に積んでおけよー」
「へーい、親方ー!」
「急げよー、あんまり時間ねぇぞー!」
青い鳥「小麦粉か…よしっ、あれを変装に使おう。ちょっと水浴びしてから小麦粉の袋に飛び込んで…と」バサバサー
バフッバフバフバフッ
白い小鳩?「ケホケホッ…ちょっと小麦粉を浴び過ぎたかも…ケホケホッ」
白い小鳩?「…でもこれでよし、小麦粉のおかげで前進真っ白。僕は幸運を運ぶ青い鳥なんかには見えない、どこからどう見ても白い小鳩だね。これなら城の周りを飛んでも怪しくないな」バサッ
白い小鳩?「さて、さっさと城に忍び込もうかな。それにしてもあの方はとんでもない事を思いつくよ、しかもそれを行動に移すのがとにかく早い。あいつらはこんなこと夢にも思っていないだろうなぁ、クソ妖精が驚く顔が目に浮かぶよ」
白い小鳩?「さぁ頑張って侵入経路を探ろう。城の警備を掻い潜ってうまくシンデレラをさらってしまわないといけないからね」クスクス
バッサバッサ
791: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/10/04(日)00:48:25 ID:CBX
現実世界 事件の翌朝 司書の部屋
チュンチュン チュンチュン
ヘンゼル「お千代、朝食は食べないの?簡単なもの用意したけど…って無理だね、その様子じゃ」クスクス
バタバタ
司書「折角作ってくれたのにごめんねヘンゼル、今日は朝ご飯食べてる時間が無いんよ…!うぅ、もうこんな時間…急がないと遅刻しちゃうんよ!」バタバタ
ヘンゼル「昨日遅かったから仕方ないね、グレーテルはまだ夢の中だし。それよりお千代…この世界じゃその喋り方はしないんじゃなかったの?」
司書「そうだったんよ…!あ、じゃなくて、そうだったね。現実世界に居る時はきちんと標準語、喋らないとだね」ウンウン
ヘンゼル「僕は前の喋り方の方が好きだけどね」
司書「私もそうだけど、あの喋り方は寂しさを紛らわせるためにお母さんの喋り方を真似してて、それが癖になっちゃったものだから…現実世界では使わないようにしてるの」
司書「見知らぬ世界で一人でも頑張るって決めたからねっ、だからもう亡くなったお母さんやお父さんの事で悲しむのも、面影にすがったりもしないんだ。そう決めたから」ニコッ
ヘンゼル「そっか。お千代も強くなってるんだね、僕が気がついていなかっただけで」フフッ
ヘンゼル「…弱い子供のままなのは。僕だけだ」ボソッ
司書「ヘンゼル?何か言った?ちょっと聞こえなかったんだけど」
ヘンゼル「なにも言ってないよ。それより時間は大丈夫なの?」
司書「大丈夫じゃない…っ!ご、ごめんねヘンゼル!お仕事行ってきます!あ、お昼ご飯は冷蔵庫に…」
ヘンゼル「いいから、適当に済ませるよ。気を付けてね、慌てて事故にあったりしたら馬鹿馬鹿しいよ」
司書「うん、それじゃああとお願いね、ヘンゼル。いつもの時間には帰るからね」ガチャッ
ヘンゼル「うん、いってらっしゃい」
パタン
792: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/10/04(日)00:51:45 ID:CBX
ヘンゼル「……」
ヘンゼル「……グレーテル、お兄ちゃんはなにもできなかったよ」
グレーテル「…zzz」スヤスヤ
ヘンゼル「お千代が誘拐されて、廃墟に行ったは良いけど何もできずに捕まって…結局、お千代を救う事も出来ず」
ヘンゼル「それどころかお前を危険な目にあわせてしまった」
ヘンゼル「……」
ヘンゼル「悟空はみんなを信じて紅瓢に吸い込まれる覚悟をしたし、ラプンツェルだって刺されているっていうのに悟空を助ける事を優先した」
ヘンゼル「あのキモオタお兄さんですら、グレーテルを助けてくれた……それなのに僕は、結局何も出来てない。護る護ると口だけだ、あの日から何も変わっていない」
ヘンゼル「……」スッ
ヘンゼル「あの時アリスが言っていた言葉…」
――アリス「ボクはキミの味方だ。キミと同じで現実世界や作者の存在を憎んでいるんだ。だから、またすぐにキミに会いに行くよ。それまでに考えておいてよ、なんだって協力はしてあげるから。ボクはキミに仲間になって欲しいんだ」ヒソヒソ
ヘンゼル「アリス……あいつはグレーテルに酷い事をしようとした奴だ。でも……」
ヘンゼル「僕と同じ憎しみを持っているあいつなら、悟空やラプンツェルを蹴散らせるほどのあいつと一緒に居れば……僕は変われるだろうか」
ヘンゼル「アリスといっしょに居れば僕は強くなれるかもしれない……魔法具を借りて、大人になることだって……強い武器を手にすることだって……今度こそ妹達を護ることだって……できるかもしれない」
ヘンゼル「アリスと一緒に居れば僕は、グレーテルやお千代に胸を張れるお兄ちゃんに……まだなれるかもしれないんだ」
794: ◆oBwZbn5S8kKC 2015/10/04(日)00:58:22 ID:CBX
おつきあいありがとうございました
本日で七冊目は終了です、レス支援ありがとう!
八冊目は七冊目その2みたいな感じなので孫悟空とかまた出てきますー
もう少しで完結なので頑張る
青い鳥の動向はどうなる?
浦島太郎とアリスの関係とは?
思いつめるヘンゼルの選択は?
八冊目
かぐや姫とオズの魔法使い編 へ続きます
797: 名無しさん@おーぷん 2015/10/04(日)06:29:10 ID:jZC
乙!
思い詰めたヘンゼルにアリスが言った言葉、まさに悪魔の囁きだな…
798: 名無しさん@おーぷん 2015/10/04(日)06:45:56 ID:7XU
乙です!
ヘンゼルには雪の女王のおしおきが必要ですな!1人で思い詰めるとろくな事考えないからなー
・ ニュー速VIP@おーぷん2ちゃんねるに投稿されたスレッドの紹介でした
キモオタ「ティンカーベル殿!おとぎ話の世界に行きますぞwww」七冊目
・管理人 のオススメSS(2015/07/04追加)
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