少年「恋をしました」
少年「ボクが、勇者に選ばれたんですか?」
少年「神様に祈りましょう」
の、続きです
夜 酒場
剣士「んぐっ、んぐっ、……」ゴクッ ゴクッ
剣士「ぷはああぁっ!!」ドンッ
剣士(貴方とは結婚できない……って、何だよそりゃ!? フザケんなよあの女!!!)ギリッ
剣士(こっちはなぁ、お前にプロポーズしようと思って、命懸けでピラミッドの奥から秘宝を持ち帰って来たんだぞ!?)
剣士「……」チラッ
剣士(古代人が何千年も前に造ったとされるピラミッド。その最奥に眠る、決して持ち出し不可能とされた秘宝……『黄金の爪』!!)
剣士(こんな、センスの欠片も無い不気味な物が秘宝か?)ジィーッ
剣士「ははっ、くだらねぇ……」
剣士(こんなもんでプロポーズしても、フラれたかも知れない……)
剣士(けどなっ!! なんで戻って来たら、他の男と結婚してんだよ!!)
剣士(せめて、俺にプロポーズぐらいさせろよ!! しかも何だあの男!! もやしみたいな体しやがって!?)
剣士(顔か? えぇおい!? 顔なのかっ!!?)
剣士「んぐっ、んぐっ……」ゴクッ ゴクッ
剣士「ぷはああぁっ!!」ドンッ
剣士「……」
剣士「はぁっ、死にてぇ……」
剣士「俺達、幼馴染みだったろ……」ボソッ
剣士「大きくなったら結婚しようって、言ってくれたじゃないか?」
剣士(俺は、お前を守る為に強くなったんだぞ? そして、この黄金の爪だって……)ガシッ
剣士(まぁ、持ってりゃ、冒険者達からは尊敬される存在になれるかもな)
少年「わぁ、すごーい」タタッ
剣士「あん?」チラッ
少年「それって、ピラミッドの秘宝ですよねっ?」
剣士「ああ、そうだが……」
少年「近くで、見せて貰ってもいいですか?」
剣士「ああ、好きにしろ」コクリ
少年「えへへぇ、ピカピカだぁ♪」ムギュッ
剣士「おっ、おい。そんなにくっ付かなくても見えるだろっ!?」アセアセ
少年「……」ギュッ
少年「欲しいなぁ、コレ……」ボソッ
剣士「あのな? 子供には分からないかも知れないが、これはメチャクチャ高価なんだ。諦めなさい」
少年「ほしいな……」
剣士「……」
剣士(確か、鑑定して貰ったら100万Gはすると言われたな)
剣士「そうだな……なら、君が100万Gで買ってくれるかい?」
少年「ボク、30万Gしか持ってないです」
剣士(こんな子供が、30万Gも持ってるのかよっ!?)ビクッ
少年「……」
少年「ボクに、売ってください」
少年「10万Gで……」ニコリ
剣士(しかも、値切るのか……)
剣士「それじゃあ無理だ。もう一度言うが、諦めなさい」
少年「……」
少年「お兄さん、戦う人なんですよね?」
剣士「ああ、今は私服だが、普段はカッコいい鎧を着てるぞ?」ニヤリ
少年「だと思いました。だってお兄さん、腕とか太いし……」ペタペタ
剣士「ははっ、君は細いな? 女の子みたいじゃないか」
少年「胸板も、厚いですね? 男らしいなぁ……」ナデナデ
剣士「……」
少年「ふふっ。腹筋もっ、硬い……」ナデナデ
剣士「君は、もしかして」
少年「……」ジジィーッ
剣士(ズ、ズボンのファスナーが下げられた!? 何を考えてるんだこの子供は!!)ビクッ
少年「えっと、どこかなー。あ……みーつけたっ」ゴソゴソ
少年「えいっ」グイッ
剣士「っっ!!?」ボロンッ
剣士「店の中だぞっ!? 放しなさいっ!!」キッ
少年「しーーーっ。大声なんか出したら、周りにバレちゃいますよ?」ニコリ
剣士「くっ……」
少年「ボク、これが欲しいんです」ニギッ
少年「ねっ? いいでしょ?」スリスリ コスコス
剣士「おいっ、ヤメっ……」ビクッ
少年「これ、ボクにちょうだい?」シコシコシコシコ
剣士「だ、ダメだっ、これは、俺が命懸けでっ……」ピクッ ピクッ
少年「命懸けで?」ニコリ
剣士「いのちがけでっ、俺はっ……」ブルッ
少年「ほらっ、こんなにピクピクしてっ。イキそう? もう、我慢しなくていいんだよ?」シコシコシコシコ
剣士「うぐっ、がああっ!?」ビュクビュクッ
少年「……」
剣士「はぁっ、はぁっ、はぁっ」
少年「ここの二階って、宿屋になってるんです……」ボソッ
少年「ボクの部屋に、行きましょうか? 一晩で、足りない90万Gを払いますんで」クスッ
── 砂漠の国 ──
文字通り砂漠に囲まれた国。
女王イシスにより治安良く統治され、争いとは無関係の平和な国で有る。
様々な場所へ行く中継地点でもあり、砂漠の中のオアシスとして旅人の疲れを癒している。
第三話
少年「恋をしました」
後日 砂漠の国 女王イシス謁見の間
少年「黄金の爪なら、見付けてピラミッドの中へ戻しましたけど?」
イシス「そうか……」
イシス「それが原因だとばかり思っていたのじゃが」
イシス「グール、ゾンビ、ミイラ。不死の魔物がピラミッドから出て来たのは、秘宝を取り返そうとしてでは無さそうじゃのぉ……」
イシス「どう言う訳か、遠い信仰の街まで向かう魔物もおるそうじゃ」
少年「はぁ」
イシス「勇者どのは、どう思うかえ?」
少年「さぁ、分からないです……」
イシス「……」
イシス「すまぬな、手間を取らせて」ペコリ
少年「いえ、ジパングへ向かう船を手配して貰いましたから」
イシス「すぐに、旅立つのか?」
少年「はい。ここ暑くて、汗臭い人が多いんで」
イシス「カカッ、ここは砂漠の国。汗とは縁切れぬ関係よ」クスッ
少年「……」
少年「では……」ペコリ
イシス「っ……」
イシス「待つのじゃ!!」
少年「……」
少年「なんですか?」チラッ
イシス「そう、急ぐ事も有るまい? 城の客室を与えるゆえ、ゆっくりして行くがよい」
少年「……」
少年「いえ、汗臭いんで結構です」
イシス「っ!? だっ、だから待てとゆうに!!」ビクッ
少年「……」
イシス「もう一つ、頼み事が有る……」
少年「聞くだけ聞きます」
イシス「この国での? 子供が消える……神隠しが起きているのじゃ」
イシス「13歳になる子供だけが、次々と消えて行っておる」
少年「そうですか」
イシス「お願いじゃ!! 勇者どのに、その神隠しを解決して貰いたい!!」
イシス「そして……妾(わらわ)の娘を、どうか守って欲しい」
夕方 砂漠の国 姫の部屋
トントンッ
少年「入ります……」ガチャッ
姫「ふぇっ?」ビクッ
姫「……」
姫「あ、あっ……」プルプル
姫「きゃあああああああああ!!」サッ
少年「何ですか?」
姫「き、着替え中ですっ!! 早く出て行ってください!!」
少年「ボク、気にしないんで」
姫「私が気にするんですっ!!」キッ
少年「……」
少年「はぁ」
少年「分かりました。後ろ向いときます」クルッ
姫「何でそうなるんですかっ!?」
少年「……」
姫「もう、いいです……」
姫「貴方の事、クビにして貰いますからねっ」
少年「は?」
姫「は? って、ここで働く兵士ですよね?」
少年「違います」
少年「イシスさんに、娘へ挨拶してくれと言われたので」
姫「お母さ……じゃなかった、女王様に!?」ビクッ
姫「貴方は一体、誰なのでしょうか?」
少年「……」
少年「取り敢えず、着替え終わらせてください」
数分後 同所
姫「……」
姫「どうぞ、振り返って頂いて平気です……」
少年「はい」
姫「それで、貴方は?」
少年「一応、勇者をやってますけど」
姫「ゆ、勇者様ですかっ!?」
姫「ああっ、さっきは無礼な態度を!!」ペコリ
少年「大丈夫ですから。気にしないでくれますか?」
姫「……」
姫「っ……」
姫「あのっ、勇者様お願いが」
少年「なんですか?」
姫「この国の、外の話を……」
姫「旅のお話しを、私に聞かせてください」
少年「いいですけど……そんなに話せる程、長い旅はしてないですよ?」
姫「それでも構いません。是非、お聞かせくださいませ」ペコリ
少年「では……」
姫「あ、そうだっ!!」パチンッ
姫「勇者様は、この城の裏側へは行ってみましたか?」
少年「城の裏側ですか? 行ってないです」
姫「なら、案内を致しますので、そこへ参りましょう。陽も暮れて来てちょうどいいですし」チラッ
姫「この国の、ちょっとした自慢できる場所が在るんです♪」
少年「そうですか……では、案内をお願いします」
姫「はい
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