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グーグルが神経科学の権威をヘッドハント、精神疾患判定マシン開発へ? : ギズモード・ジャパン

グーグルが神経科学の権威をヘッドハント、精神疾患判定マシン開発へ?

2015.10.29 22:00
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心は生体データで測れるのか。

グーグルの親会社・アルファベットが、また謎のヘッドハンティングを公表しました。米国国立衛生研究所の元所長、トーマス・インセル氏を雇ったんです。彼はグーグルでの自分の仕事について、風変わりな、そして危ういアイデアを持っています。

インセル氏はChicago Ideas Weekで講演した際、アルファベットが彼に何を求めているのかまだわからないと言いつつ、自分がしたいことについては説明していました。彼は米国で自殺者数が増えている状況を改善すべく、グーグルのデータ分析ツールを使って、メンタルヘルスの研究がしたいそうです。

彼はFusionでもこう言っています


我々は自殺という意味では、死亡率を低下させられていません。それは、人々に必要なケアを提供していないからです。がんや心臓病、糖尿病については、そんな事態を許していません。


では、テクノロジーで自殺を減らすにはどうすればいいんでしょうか? インセル氏は、気分や認知、不安感を測定するウェアラブルセンサーを開発したいそうです。そのデバイスが「睡眠」「動作」、そして「言語使い」などまでトラッキングし、メンタルヘルス上の問題があればアラートを出すというわけです。基本的にそれは、彼いわく気分や心の健全さのレベルを測るためのFitBitです。

でもそのアイデアにはいろいろ問題がありそうです。単に物理的な運動や心拍数を追いかけるフィットネストラッカーと違い、気分トラッカーは物理的なデータと心理的な状態を結びつけるもので、当たり外れがあります

ストレスを感じるときの反応は人それぞれです。インセル氏が言っているような気分のトラッカーは、たとえばSpireなどがすでにあります。Spireは心拍数や呼吸を監視し、「集中している」「不安」「活発」といった状態を読み解くものです。が、Spireは生体データはちゃんと取れていても、気分の解釈の方は完全ではありません。Spireを着けているときに何かイライラすることをしても、意識的に呼吸を深くし集中しようと務めていると、Spireは「集中している」と解釈したりします。

それはまだ良い方です。心拍数や睡眠パターンや呼吸、言葉使いといったものからメンタルヘルスまで判別しようとすると、ただ興奮したり、躊躇したり、時差ボケだったりするだけでストレスと誤解されたりする可能性があります。その逆もまたありです。でも気分トラッカーが間違うだけなら、まだ問題は小さいです。

インセル氏がグーグルのインフラを使おうとしている理由を考えてみます。米国では自殺率が上昇中ですが、研究では早い段階で周囲が自殺を防ぐべく介入することで命を救えるとされています。うつになってしまうと、世界から引きこもり、自ら孤立し、手遅れになることが多いんです。だからインセル氏は、「気分トラッカーが危険な傾向を察知したら、しかるべき人にアラートを出す」みたいなことを考えているのでしょう。何らかのデバイス、または皮膚に貼る電子回路みたいなものを身に着けるだけで、データがクラウドに保存され、分析され、メンタルヘルスの専門家に送られるというわけです。

でもそれは実際、誰に送られるんでしょうか? 勤めてる会社のカウンセラーでしょうか? 地元の保健所でしょうか? また、アラートされた人はどういう対応をするんでしょうか? 問題のある人のコンピューターの画面にメッセージをポップアップさせて、「今日の気分は良くないようです。有給休暇を取りましょう」なん出てくるんでしょうか? 「あなたの言葉使いと睡眠状態から、精神疾患の徴候を発見しました。すぐに医師にかかってください」とか?

インセル氏がこれまで神経科学研究者として進めてきた研究を見ると、さらに心配になります。彼は遺伝子とホルモン、不貞の傾向の間の相関を明らかにしようとしていたんです。「不貞」なんて人間の文化から生じる観念であり、社会集団によって考え方は大きく違います。そんなものと何らかの生理的尺度を結びつけようとすれば、問題が噴出するのは言うまでもありません。

感情を正確に測れるテクノロジーはありません。たしかに、ヒントになるテクノロジーはあるし、心の病気にはある程度のパターンもあります。でも、それが誰にでも通用するわけではありません。データをアルゴリズムに分析させてのメンタルヘルス監視というアイデアは、どうなんでしょうか…?

インセル氏は、多くの人が精神疾患で苦しむのを防ぎたいと考えていて、それ自体は有意義なゴールです。でもその実現する方法によっては、利益よりも害のほうが大きくなってまう可能性があります。


Image by skin circuit by John Rogers.

Annalee Newitz-Gizmodo US[原文
(miho)

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