少年「ボクは、君を守りたいんです」
少年「ボクが、勇者に選ばれたんですか?」
少年「神様に祈りましょう」
少年「恋をしました」
の、続き。
軍事国家アレフガルド 城の地下宝物庫
国王「ここに置かれておるのが、我が国に伝わる秘宝」
国王「勇者のみが真の力を発揮できるとされている……ロトの剣、ロトの盾、そして、ロトの鎧」
国王「かつての勇者は、これを身に付けて魔王を倒したと言う」
少年「そうですか」
国王「うむ。勇者が装備すれば羽のように軽く、勇者以外が装備すれば鉛のように重く、動く事すらままならんのだ」
少年「言い伝えですよね?」
国王「そうだが、実際に如何な豪傑をもってしても、これを使いこなせた者はおらん」
少年「それを、ボクに?」
国王「普通の者では、鎧を装備するのも二人がかりでな……役に立たんのよ」
国王「であれば、魔王の復活した今、勇者に使って貰うのが一番と言うもんじゃろ?」ニヤリ
少年「……」
少年「そうですか。では、有り難く使わせて貰います」
少年「……」チラッ
少年(最初は、剣でも持ってみようかな?)スッ
少年「っ!?」ビクッ
国王「ん? 如何なされたかな?」
少年「いえ、やっぱり要らないです……」
少年(剣に触ろうとしたら、手が焼けそうなぐらい熱くなった。なんで?)
国王「ほお、伝説の装備を不要と申すか? 若いのに頼もしい勇者じゃ」
国王「兵達よ、秘宝を宝物庫の奥へ戻せ」チラッ
兵「はっ!!」
兵「よしっお前ら、せーので運ぶぞ? せーーのっ!!」グイッ
少年「……」
少年(普通の兵士でも、持って運ぶ事はできるんだ? なのにボクは、触る事すらできない)
国王「しかし今は不要でも、必要となった時には自ずと力になるだろう」
国王「これも言い伝えになるが、『勇者が危機に陥った時、その勇者の前に現れた』と有る」
少年「つまりボクがピンチの時に、剣や鎧や盾が駆け付けて助けてくれると?」
国王「あくまでも、言い伝え……じゃがの」
少年「……」
少年(そうは、感じられなかったけどね)
国王「それで勇者よ、学園生活の方はどうじゃ?」
少年「お陰様で、特に困る事も無いです」ペコリ
国王「だがのぉ……わざわざ身分を隠し、未熟な学生から仲間を探さんでも、この国の手練れなら幾らでもあてがうぞ?」
少年「いえ、足りない経験はこれから積めば良いし、完成された人よりも、育てがいが有る方が楽しいんで」
国王「そうか……長い旅になるじゃろて、お主の考えに任せよう」
少年「はい。自由にさせてくれて、助かります」コクリ
国王「……」
国王「あー」
国王「それで、じゃが……」
少年「分かってます。ボクに、何かお願いが有るんですよね?」
国王「我が国は近々、隣国と戦を控えておってな?」
国王「それで勇者には、魔王討伐後……我が国に着いて頂きたい」
国王「ああ、無論!! 名前だけで結構!!」アセアセ
国王「魔王を倒した勇者がこちらに居ると、そう伝わるだけでも隣国には脅威となるじゃろう」
国王「だから是非、勇者には魔王を倒して貰い、名を上げて貰ってだな……」
少年「……」
少年「分かりました。勝手にどうぞ」
少年(救えない……まだ魔王が居るのに、もう人間同士で争う事を考えるなんて)
少年「では……」ペコリ
国王「うむ。旅立ちの際にはまた顔を出すが良い。土産を渡そう」
少年「……」タッ
少年(まぁ、どうでもいいか……)
少年(人間同士の戦いで滅びようがどうしようが、そんなの勇者の仕事じゃないし)
少年(けど、今は凄く楽しい気分なんだ……こんなに楽しいのは、産まれて初めてかも知れない)
少年「ふふっ、くくっ、あははははははははははっ♪」
少年(ホント、笑いが止まらないよ……)クスッ
── アレフガルド ──
世界でも有数の軍事国家。
アレフガルド出身者は、男女問わず十八歳になるまで魔法や剣術を習得する為の教育プログラムが組まれており、臨時には兵に加わって国を守る。
工業や商業が盛んな他、武器職人にも恵まれ、多くの冒険者はこの国で装備を整えて行く。
かつての勇者ロトが、魔王を討伐した際の武具を封印した場所としても有名。
第四話
少年「ボクは、君を守りたいんです」
アレフガルド 巨大学園の教室
教師「返却したテスト用紙を良く確認しろ」
教師「評価がE+以下は追試するからな?」
女騎士「くっ……」ジィーッ
少年「どうだったの?」ヒョコッ
女騎士「ひゃっ!?」ビクッ
女騎士「みっ、見るなバカ!!」サッ
少年「もしかして、追試とか?」
女騎士「うっ……いや、そうじゃないんだが、ギリギリでな」
少年「そっか……なら、放課後は遊べるねっ」ニコリ
女騎士「んっ!?」ドキッ
女騎士「だ、駄目だ駄目だ!! ギリギリだと言ったろ?」
女騎士「しばらくは、図書館で勉学に励まねば」プイッ
少年「……」
少年「こっち向いて?」クイッ
女騎士「うぅっ……」
少年「女騎士の分からない所は、ボクが教えてあげるよ? だったら良いでしょ?」
女騎士「だが、年下のお前に教わりっぱなしでは、私のプライドが……」
女騎士「それに、一人では何も出来ないと、皆から笑われてしまう」
少年「笑わないよ。ボクは笑わない。他の誰にも、笑わせない」
女騎士(ぐっ、ヤバいっ……)キュン
女騎士「しっ、しかしだなっ!!」
少年「ボクは、君を守りたいんです」ニコリ
女騎士「っ……」
女騎士「う、うぅっ、うあぁぁっ……」ドキドキドキドキッ
少年「……」
女騎士「……」
女騎士「あは、は。そう言えば、なぜお前はそんなに頭が良いんだ?」アセアセ
少年「たくさん、勉強したんで」
女騎士「そうかっ、凄いなお前はっ、うんうん!!」
少年(そんな訳ないでしょ? ボクは13歳で、そっちは18歳。どれだけ離れてると思ってるの?)
少年(出来てるのは、テストの答えを知ってるからだよ……)
少年(勉強なんか、やりたくてもやれなかった。ずっと、ブタの相手だからね)
少年(でも……)
女騎士「……」
女騎士「それに比べ、私は弱くなってしまった……」
女騎士「お前がこのクラスに転入してから、たった一月だぞ?」
女騎士「子供の頃から剣術を磨く事だけに明け暮れて、それすらも上手く行かなくてなって……」
女騎士「気付けば、この歳で親友と呼べる者さえ居なかった」
女騎士「それなのにっ、お前が現れてから……」
少年(貴女の不器用な生き方は、嫌いじゃないです)
教師「よし、全員テスト用紙を確認したな? 早いが、今日はこれで解散とする」
教師「だからと言って気を抜くなよ? 明日からは予定通り、調査を兼ねた実地試験だ」
教師「各班ごとに前以て指定していた場所へ赴き、そこの調査、そして何かトラブルが有れば、出来る限り対処しろ」
教師「期間は五日を予定しているが、五日そこへ滞在しろとは言わん。レポートまで全て終わったら、残りの日時は休暇とする」ニヤリ
女騎士「……」
少年「……」
教師「それぞれ現地集合なり、集まって行くなり話し合え。いちいち教室なんぞへ来るなよ?」
教師「以上!! 我がクラス30名、解散!!」
女騎士「サー!! アレフガルドの為に!!」バッ
少年「為に」
女騎士「……」
少年「……」
少年「それで、今日はどこで遊びましょうか?」チラッ
女騎士「はぁっ……あのなぁ、聞いていただろ?」
女騎士「私達の班は、私と、お前と、貴族の三人」
女騎士「これから、最後の打ち合わせをしないと」
少年「打ち合わせって、もう済んでるじゃないですか」
少年「それにほらっ、貴族さんも……」チラッ
貴族「チッ、帰るぞお前ら!!」
生徒「ま、待ってくださいよ貴族さーん!!」タタッ
少年「ね?」
女騎士「アイツ……おい、帰るなっ!!」
少年「待って!!」ガシッ
女騎士「っ……」
少年「恥ずかしいんですよ」
女騎士「恥ずかしい? 誰が、誰に?」
少年「貴族さんが、君に」
女騎士「……」
女騎士「いやいや、ないない。それは無いっ」ブンブン
女騎士「アイツは昔からイタズラや嫌がらせばかりするし、顔を会わせれば悪態を……」
少年「それは、好きだからですよ。男の子は、好きな人に素直じゃないらしいですから」ニコリ
女騎士「う……いやいや、やっぱりないっ。それにアイツは、男の子って歳でもないぞ!?」
少年
コメント一覧
-
- 2015年10月30日 22:54
- 結局、何で少年は捨てられたんだ?
-
- 2015年10月30日 23:11
- 魔王を倒すまでが省略され過ぎだろ…
姉編で裏事情書いてくれるんだろうか
-
- 2015年10月30日 23:28
- あっさりの退場だなぁ
-
- 2015年10月30日 23:56
- まあ後日語られるだろう
だよな?さすがに
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