白菊ほたる「これはゾンビですか?」 モバP「はい、プロデューサーです」
※これゾンのキャラは出ません
設定は少しだけ流用してますが別物です。ほぼゾンビ要素だけです
とある夏の日の朝
P「zzz」
目覚まし時計「ジリジリジリジリ」
P「zzz」
セミ「ジリジリジリジリ」
P「zzz」
朝の日射し「ジリジリジリジリ」
P「………」
P「」カラカラ
P「な、なぜ閉めていたはずのカーテンが全開に……おかげで朝から最悪の気分だ」
P「……お前のしわざか? 俺が遅刻しないようにしてくれたのはありがたいんだけど、もう少し優しい起こし方にしてくれ」
P「干からびるのは嫌なんだ」
??「………」コクリ
P「じゃあ俺、仕事行ってくるから」
ガチャ、バタン
??「……ふわぁ」
P「(俺の名前はP。24歳社会人で、職業はとあるプロダクションの事務員)」
P「(どこにでもあるような普通の家庭に生まれた、どこにでもいるような見た目の男だ)」
P「(ただ、ひとつおおっぴらにできないような秘密を抱えていて――)」
キキーッ!!
P「(タイヤとアスファルトが激しく擦れる音)」
P「(視界に映ったのは、信号無視して横断歩道に侵入しかけているトラックと、その直線上で呆然とたたずむ女の子)」
P「(それを認識した瞬間、俺の身体は素早く動いていた)」
ドンッ
女の子「えっ……?」
女の子「(撥ねられる。そう思った瞬間、私の身体は横に突き飛ばされていました)」
女の子「(直後に私が目にしたのは――私の身代わりになって、男の人がトラックとぶつかる光景)」
女の子「(周囲の人達がざわつく中、私はただただ何もできず、呆然とするだけでした)」
女の子「そ、そんな……私の不幸のせいで、人が……」
女の子「(生まれつき運の悪い私だったけど、まさかこんなことになるなんて……)」
女の子「ぐすっ……ひっく……」
??「大丈夫かい?」
女の子「え?」
女の子「(かけられた声に振り向くと、そこには)」
P「見たところ怪我はなさそうだな。よかったよかった」ブシュー
女の子「」
女の子「(さっき撥ねられた男の人が、頭から血を噴き出しながら立っていました)」
女の子「(私の肩に優しく添えられた右手は、温かい液体で真っ赤に染まっています)」
女の子「あ、あうあう」ガクブル
P「俺、ゾンビだから。このくらいへーきへーき」
女の子「……きゅう」ガクリ
P「……あれ? おーい……気絶している」
P「ん? これは……」
女の子「………」
女の子「……ん……こ、ここは」
P「よかった。目が覚めたか」
女の子「ひいっ!? ご、ごめんなさいごめんなさい! 私のせいで成仏できずにお化けになってしまって」
P「いやいや、俺別にお化けじゃないし。君を助ける前からゾンビではあるけど」
女の子「ぞ、ゾンビ……?」
P「ゾンビって銃で撃たれたりしても死なないだろ? だから俺もあのくらい平気なんだ」
女の子「あ、あの。そんなことを常識のように言われても、私はよくわからないんですけど……」
P「あー、あんまりホラー映画とか見ないタイプか。ほたるさんは」
ほたる「え? どうして私の名前を……」
ガチャリ
ちひろ「失礼します。あ、白菊さん、目が覚めたんですね」
P「君が気を失った時、手にうちの事務所までの地図が握られてたから。とりあえずここまで運んできたんだ」
ちひろ「そこで私が顔を見て、今日のオーディションに参加予定の白菊ほたるさんだと気づいたんです」
ほたる「! そ、そうです。私、アイドルになるためにオーディションを受けようと思って」
ちひろ「今からならギリギリ間に合いますけど……出られます? 一応、身体に異常はないみたいですが」
ほたる「は、はい。出ますっ」
P「おー、やる気だな。それじゃ、頑張ってきてください」
ほたる「はい。……あ、あの。さっきは、助けていただきありがとうございました」
P「どういたしまして。俺は見ての通りピンピンしてるから、心配しなくていいよ。血も止まったし」
ちひろ「血だらけで事務所に来た時はびっくりしましたけど、本当に丈夫な身体ですね」
ほたる「は、はあ……(ほんとにゾンビなんだ……)」
オーディション終了後
P「え? 私をほたるさんのプロデューサーに?」
社長「ああ。彼女には光るものがあるから、うちで頑張ってもらうことにしたんだ」
P「それはいいことですが、私は今までプロデューサーの仕事なんて」
社長「実は、わが社のプロデューサーがひとり他社に引き抜かれてしまってね。新人を雇おうかとも思ったんだが……私は君にティンときた」
社長「君ならきっといいプロデューサーになれる。仕事については千川君がサポートしてくれるから、少しずつ覚えていけばいい」
P「は、はあ。ですが」
社長「もちろん、給料は今より弾むよ」
P「やらせていただきます!」
社長「うむ、いい返事だ」
P「(うちには居候がひとりいるからな。金はできるだけ稼いでおかないと)」
社長「白菊くんにはすでに別室で待ってもらっている。あいさつをしてきたまえ」
P「わかりました」
P「というわけで、今日から君のプロデュースを担当することになった」
P「一緒に頑張っていこう」
ほたる「は、はい。よろしくお願いします」
ほたる「………」
ちひろ「なんだか元気がないですね」
P「何かあった? せっかくオーディションに合格できたのに」
ほたる「あ、その……本当に、これでよかったのかなって」
P「え?」
ほたる「私、すごく運が悪いんです。それで、周囲の人まで不幸に巻き込んでしまって……これまでいくつかのプロダクションに所属していたんですけど、全部倒産してしまって」
P「……マジか」
ちひろ「そういえば、少し前に○○プロダクションが解散になっていましたね」
ほたる「そんな私がアイドルを目指すなんて、わがままなのかなって」
P「………」
P「いや、そんなことはない」
ほたる「え?」
P「君の不幸が周囲を巻きこむのだとしたら、アイドルをやっていようがいまいが同じことだ。迷惑をかける対象が、俺達からそれ以外の誰かに変わるだけ」
P「だったら自分のやりたいようにやればいい。人間なんて、誰だって他人に迷惑かけずには生きていけないんだから」
ちひろ「私もプロデューサーさんがたびたび血まみれで出社してくるので迷惑しています。ごまかすのが大変です」
ほたる「あ……Pさんがゾンビだということは、他の人は知らないんですか」
P「同僚にゾンビがいるような職場で働きたい人間はそういないだろうからな。気味悪がられるのも嫌だし、周りには頭からトマトジュース被るのが好きってことで通してるんだ」
ほたる「それも十分気味悪がられるのでは……」
P「それに、不幸というなら俺だって同じだ。なんせ一度死んでゾンビになったくらいだし。その後も何かと生傷が絶えないし」
ちひろ「なので、今さら運の悪い人がひとり加わったところで、あまり変わりはないと思いますよ」
ほたる「そ、そうでしょうか」
P「あんまり弱気になっちゃだめだ。アイドルをやりたいから、君はここに来たんだろう」
ほたる「………」
ほたる「……夢、なんです。トップアイドルになって、みんなに笑顔を届けたい……」
P「そうか。いい夢じゃないか。俺みたいな男には到底目指せない、立派な目標だ」
P「多少の不幸からなら、俺が守るよ。今日みたいに」
ほたる「……ありがとうございます。私、頑張ります」
P「よし!」
ちひろ「よかったですね」
P「ええ。ここで断られたら俺の給料もげふんげふん」
P「改めて、これからよろしくお願いします」
ほたる「よろしくお願いします!」
ほたる「でも、トラックに撥ねられるのは『多少』の不幸ではないと思います」
P「え、そうなの?」
ちひろ「プロデューサーさん以外にとってはそうです」
その日の夕方
P「ただいまー」
??「おかえりぃー……ふわぁ」
P「喜べこずえ、俺は昇進したぞ!」
こずえ「おおー……」
こずえ「しょうしんって、なぁにー?」
P「アイドルのプロデューサーをやることになって……簡単に言うと、もらえるお金の量が増えるんだ。おいしいものもたくさん食べられるようになるぞ」
こずえ「おいしいもの……こずえ、おいしいもの、すきー」
こずえ「まんかんぜんせきー」
P「うっ……満漢全席とは、なかなか要求がきついな。だがそのうち食わせてやろう、そのうち」
こずえ「えへへー……」
P「(遊佐こずえ、自称11歳。いろいろあって、しばらく前から俺の部屋に住んでいる女の子)」
P「(いわゆる不思議ちゃん系女子だ。顔は申し分なくかわいい)」
P「それでだな。担当することになったほたるさんなんだが、これがまたかわいいんだ。さすが他の事務所でアイドルやってただけあるよ」
こずえ「ふぅん……」
P「まだ13歳だし、これからどんどん身体も成長していくと俺もうれしいなあ」
こずえ「P……へんたいー?」
P「へ、へへ変態ちゃうわ! アイドルとしてボンキュッボンなスタイルは武器になるからそうなってほしいと思っているだけだそれ以外の理由はございません」
こずえ「………」
こずえ「ねぇ……ほたるとこずえ……どっちがかわいいー?」
P「えっ」
こずえ「どっちー……?」
P「いや、タイプも違うし比べられるものでは」
こずえ「じー……」
P「………」
P「こ、こずえ、かな……?」
こずえ「………」
こずえ「ろりこん」
P「ひどい! せっかく空気読んで選んだのに!」
こずえ「えへー……」
P「えへーじゃありません! まったく、どこでそんな言葉覚えてくるんだか」
翌朝
テレビ『今日も関東地方は高気圧に覆われ、雲ひとつない青空が一日中見られそうです』
P「……最悪の天気だ」
こずえ「………」
テレビ『夏といえば海! 今年も浜辺ではたく
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「退魔」って聞くだけで若干いかがわしい気持ちになる俺はもう駄目かもしれない