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動物と同じ環境で育った13人の子供たちのリアルな物語とそれをイメージした写真「野生児たち(Feral Children)」 : カラパイア

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 ドイツ生まれで、ロンドンを拠点に活動している写真家、ジュリア・フラートン=バテンによる最新フォトプロジェクト「野生児たち」は、野生という特殊な環境下で育った子供たちの実話にもとづいて、そのイメージを写真で表現したシリーズだ。

 ジュリアは、野生児だった本人が執筆した『失われた名前』に刺激されて、ほかの野生児のケースをもっと掘り下げてみたいと思った。野生児になるケースは結構あるようだ。子どもたちが野生動物にさらわれて行方不明になっても、親がなにもしなかったために、野生児になってしまうケースもあり、ほぼ全世界的にこうした事件は記録されている。

 ここでは13人の動物に育てられたり、動物と同じ環境で育った子供たちのリアルな物語とそれをイメージしたジュリアの写真を見ていくことにしよう。
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デビルズリバーのオオカミ少女(メキシコ) 1845〜1852年
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 1845年、ヤギの群れを襲ったオオカミの群れの中に、四つん這いで走り回るひとりの少女がいた。一年後、オオカミと一緒にヤギの肉を食べている少女が目撃され、少女は捕えられたが、逃げ出した。1852年、2匹のオオカミの子どもに授乳している少女の姿が再び目撃されたが、彼女は森の中に逃げ込み、二度と人前に姿を現わすことはなかった。


犬に育てられた少女:オクサナ・マラヤ(ウクライナ)1991年
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 1991年、オクサナは犬小屋で暮らしているところを発見された。8歳だったオクサナは、6年間犬たちと一緒に暮らしていた。オクサナの両親はアルコール中毒で、ある夜、彼女を外に置き去りにした。暖を求めて3歳のオクサナは農場の犬小屋へ潜り込み、犬たちの間で丸くなった。発見されたとき、オクサナは四つん這いで走り回り、舌を出して喘ぎ、歯をむき出して吠え、まるで犬のような行動をとった。

 人間と接触していなかったため、知っている単語はイエスとノーしかなかった。集中的な治療で、オクサナは社会生活の基本、言葉の使い方を学んだが、5歳児の能力しかなかった。現在30歳になったオクサナは、オデッサの診療所で暮らしていて、世話人の監視の元、農場の動物の世話をしている。


狼に育てられた少年:シャムデオ(インド)1972年
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 1972年、4歳くらいの少年がインドの森の中で発見された。少年はオオカミの子どもと遊んでいて、皮膚は真っ黒で、歯は鋭く、爪は長い鉤のようになっていた。髪はこごなって、手のひらや肘、膝には固いたこができていた。

 鶏を狩るのが好きで、土を食べ、血を飲みたがり、犬と仲良くなった。生肉を食べるのはやめるようになったが、話すことはできず、手話をいくつか学んだ。1978年、インド、ラクナウにあるマザーテレサの家に入ることができ、そこでパーセルと名づけられたが、1985年2月に亡くなった。


鳥少年:プラヴァ(ロシア)2008年
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 7歳のプラヴァは、寝室2部屋の狭いアパートで31歳の母親を暮らしているところを発見された。彼は鳥カゴでいっぱいの部屋に閉じ込められ、母親のペットのたくさんの鳥たちと、彼らのエサや糞の中で暮らしていた。母親はプラヴァをペットの鳥と同じに扱っていた。肉体的な虐待などはなかったが、母親はプラヴァに食事を与えず、話しかけることもなかったという。

 彼は鳥としかコミュニケートできず、しゃべることができず、鳥のようにさえずるだけだった。理解できないときは、腕や手を鳥のように羽ばたかせた。児童保護にあずけられ、さらに心理学ケアセンターに移されて、医師たちによるリハビリが続けられている。


サルに育てられた少女:マリーナ・チャップマン(コロンビア)1959年
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 1954年、マリーナは5歳のときに南米の人里離れた村から誘拐され、ジャングルの中で置き去りにされた。ノドジロオマキザルの家族と5年間共に暮らし、ハンターによって発見された。ベリーや木の根、サルが落としたバナナを食べ、木の洞で眠り、四つん這いになって歩いていた。

 あるとき、悪い食べ物にあたったことがあり、年長のサルに水を飲まされて毒素を吐き出したため、回復したという。若いサルたちと仲良くなり、木登りや安全な食べ物について学んだ。木の上で一緒になって座り、遊んだり、毛づくろいもした。

 ハンターに見つかったときは、完全に言葉を忘れてしまっていて、風俗のお店に売られてしまった。そこを逃げ出してストリートチルドレンになり、さらにマフィアの家族の奴隷のようになった。隣人に助け出されてボゴタへ行かされて、そこで隣人の娘夫婦に引き取られた。彼らは自分たちの5人の実子とともにマリーナを育てた。

 十代半ばのとき、家政婦と乳母の仕事が舞い込み、1977年にその家族と共にイギリスのヨークシャー、ブラッドフォードに引っ越した。現在もそこに住んでいて、結婚して子どももできた。マリーナは次女のヴァネッサ・ジェームズと共同で、自身の野生生活をつづった本『失われた名前 サルとともに生きた少女の真実の物語』を出版した。

失われた名前 サルとともに生きた少女の真実の物語



犬に育てられた少女 マディーナ(ロシア)2013年
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 マディーナは生まれたときから3歳まで犬と暮らしていた。エサを分け合い、一緒に遊び、寒い冬は一緒に寝た。2013年にソーシャルワーカーが彼女を発見したとき、裸で四つん這いになって歩き、犬のように唸ったという。

 マディーナの父親は彼女が生まれてすぐ失踪し、23歳の母親はアルコール中毒だった。飲み過ぎてマディーナの面倒をみられずに、よく姿をくらました。また母親はよく仲間のアルコール中毒者を家に招いたが、母親はテーブルで食事をし、娘のマディーナは床で犬と一緒に骨にくらいついていたという。

 マディーナはほとんど話すことができず、誰にでもくってかかったので、人間の子どもには相手にされず、犬が唯一の友だちだった。医者によると、マディーナは過酷な環境にもかかわらず、肉体的、精神的には健康なので、同世代の子どもと同じようにちゃんと話すことを覚えれば、普通の生活に戻れるチャンスはあるという。


ヒョウに育てられた少年(インド)1912年
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 1912年、少年は2歳のときにメスのヒョウにさらわれた。その3年後、そのヒョウがハンターに殺され、3頭の子どもの中にいた5歳になった少年が発見されて、インドの小さな村に住む家族のもとに帰された。

 発見時、少年は2足歩行の大人よりと同じくらい速く四つん這いで走った。膝には固いたこができていて、爪先は甲に対してほぼ直角に曲がっており、手のひらと足の爪先、親指のはらは固い皮膚で覆われていた。近づく者には誰かれかまわず飛びかかって噛みつき、村で飼っている鳥の肉を生で食べた。しゃべることはできず、唸り声しか出せなかった。のちに少年は言葉と二足歩行を覚えたが、白内障で目が見えなくなってしまった。これはジャングルでの生活が原因ではなく、家系的なものだという。


ニワトリ小屋で育った少年:スジット・クマール (フィジー)1978年
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 スジットの両親が、彼を鶏小屋に閉じ込めたため、彼は普通の子どもの行動ができなくなった。母親は自殺し、父親は殺されてしまったため、祖父が彼の面倒をみることになったが、鶏小屋での監禁は続いた。道の真ん中で食べ物をがつがつ食べ、羽ばたく真似をしていて発見されたとき、8歳だった。

 彼は食べ物を口でついばみ、止まり木にとまるように椅子にうずくまり、舌でチッチッという音を出した。指は内側に曲がっていた。ケアワーカーによって年配者の家に引き取られたが、攻撃的な行動を見せたため、20年以上ベッドに縛りつけられていた。現在30歳を越えたが、彼を救い出したエリザベス・クレイトンによって保護されている。


オオカミに育てられた姉妹:カマラとアマラ(インド)1920年
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 1920年、伝道師ジョセフ・シングによって、12歳のカマラと8歳のアマラがオオカミの巣穴から発見された。これは、野生児のもっとも有名なケースのひとつ。オオカミが留守にした洞窟の中にいたふたりはひどい形相で、四つん這いで歩き、とても人間には見えなかったという。捕えられたとき、ふたりはうずくまって眠っていたが、唸り、人間の服を引き裂き、生肉以外食べず、遠吠えした。腕や足の腱や関節は短く、人間との関係には興味を示さなかった。聴覚、視覚、嗅覚はひときわ優れていた。

 アマラは捕えらえた翌年死んだが、カマラは二本足で歩くことや、言葉を多少は覚え、1929年に17歳で腎不全で死んだ。


野良犬の群れのリーダーとなった少年:イヴァン・ミシュコフ(ロシア)1998年
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 家族に虐待されていたイヴァンは、4歳のときに家を逃げ出した。ストリートで物乞いをして生活するうちに、野良犬の群れと信頼関係を築いて、エサをシェアするようになった。犬たちも彼を信用するようになり、ついにイヴァンは群れのリーダーになった。

 2年間、こうして生活したが、つかまって児童保護の家に送られた。ある程度言葉が話せたし、犬との生活が短かったせいか、比較的早く人間性を回復し、今は普通の生活を送っている。


シャンパーニュの野生少女:マリー・アンジェリク・メミー・ル・ブラン(フランス)1731年
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 子ども時代は別として、18世紀のメミーの話は驚くほどよく記録されている。10年間、彼女はフランスの森をずっと歩き続けていた。鳥やカエル、魚、木の葉、木の枝、木の根を食べて、棍棒で武装して、オオカミなど野生動物を撃退した。

 19歳で捕えられたとき、肌は真っ黒で毛が生え、爪も鉤爪のようになっていた。メミーはひざまずいて水を飲み、左右を繰り返し横目でにらみ、常に警戒する様子を怠らない。話すことはできず、金切り声をあげるだけ。ウサギや鳥の皮を剥いで、生のまま食べ、何年も調理されたものは口にしていない。木の根をほじくり出したり、サルのように木から木へ飛び移ったりするためか、親指は変形していた。

 1737年、ポーランドの女王でフランス女王の母が、フランスへの旅の途中、メミーに狩りの共をさせ、そこで彼女は誰よりも早く走ってウサギを捕えたという。野生生活からの回復はめざましく、裕福な支援者のもとで、読み書きを学び、フランス語を流暢にしゃべることができるようになった。1775年、パリで裕福なまま63歳で亡くなった。


サルと暮らした少年:ジョン・セブンヤ(ウガンダ)1991年
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 1988年、ジョンが3歳のときに父親が母親を殺すのを目撃してしまい、家を逃げ出した。ジャングルの中に逃げ込み、それ以来そこでサルたちと暮らした。1991年に捕まり、6歳で孤児院に送られた。そのとき、彼の全身は毛で覆われていた。

 おもな食料は木の根、ナッツ、サツマイモ、キャッサバで、腸内の寄生虫が異常に発達していて、1メートル以上もの長さの寄生虫が発見された。サルのような歩き方をしていたため、膝には固いたこができていた。ジョンは読み書きや人間らしい行動を学び、さらにすばらしい声をもっていたため、アフリカの子どもたちの聖歌隊に所属し、イギリスツアーも行ったことで有名になった。


アヴェロンの野生児ヴィクトール(フランス)1797年
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 よく研究され、驚くほど記録も残っている野生児のケース。ヴィクトールと名づけられたこの少年は18世紀末に南フランスの森の中で発見された。このときは逃げられてしまったが、1800年1月8日に再び捕まった。およそ12歳くらいと推定され、全身傷だらけでしゃべることができなかった。

 このニュースが流れると、大勢が少年を調べようと押し寄せた。野生児になったいきさつなど背景についてはほとんど知られていなかったが、少年は7年間野生で暮らしていたと思われていた。

 生物学の教授は、ヴィクトールを雪の戸外に裸のまま放置して、風邪に対する抵抗力を調べたが、寒さには影響を受けないことがわかった。また、別の学者は彼にしゃべることや普通にふるまうことを教えようとしたが、進歩はなかった。もっと幼少の頃はしゃべったり、聞くことはできたと思われるが、野生から帰ってきてからはできなかった。最終的にはパリの施設に送られて、40歳で死んだ。

via:juliafullerton-batten・translated konohazuku / edited by parumo

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コメント

1

1. 匿名処理班

  • 2015年11月04日 20:40
  • ID:7veKb6df0 #

どうすれば最善なんだろうね。

2

2.

  • 2015年11月04日 21:03
  • ID:aDL.qQa.0 #
3

3. 匿名処理班

  • 2015年11月04日 21:05
  • ID:1955NOOM0 #

早く死んでしまうケースが多いな。人間の振る舞いを教えたからといって、それが彼らを救うことになるとはかぎらないよね、、、

4

4. 匿名処理班

  • 2015年11月04日 21:14
  • ID:aGR5PXLI0 #

野生のエルザだったけ?
保護されて寿命短かった。

5

5. 匿名処理班

  • 2015年11月04日 21:25
  • ID:ZEODENoH0 #

捕まらずに暮らしてたほうが幸せだったかもしれないな

6

6. 匿名処理班

  • 2015年11月04日 21:30
  • ID:XO38zZYq0 #

ほとんど保護したら早死にしてるんだな。逆にそのままの生活を続ければもっと長生きしたのかな。

7

7. 匿名処理班

  • 2015年11月04日 21:31
  • ID:XogLuHB90 #

絵の趣旨の為にあえて皆服を着せて描かれているんだろうなぁと思いながら見たけど
マリー・アンジェリクだけ服着てないように見える。何故だろう。

8

8. 匿名処理班

  • 2015年11月04日 21:51
  • ID:zfx.D4kg0 #

職場環境が変わっただけで鬱になったり自殺しちゃうんだから、これだけ環境が変わったらストレスすごいだろうな

9

9. 匿名処理班

  • 2015年11月04日 22:00
  • ID:nWTLqBVJ0 #

こういう話を聞くと、人間を人間足らしめているものは社会、教育なんだと思う

10

10. 匿名処理班

  • 2015年11月04日 22:01
  • ID:8zPQzkQJ0 #

この手の記事を読んで度々思うのは
物凄く否定したい考えなんだけど

若い人の犯罪者ほど更正できないんじゃないかなって

動物に育てられた子のその心は
動物と同じになわけでしょ
人の心は人が教えるのと同じだと思うんだ

だとしたら若い頃犯罪犯したタイプは
根本的な更正ができないんじゃないかと思う
それこそ牢屋に一生入れていたほうが
幸せなんではないかと

動物と暮らしていた人達は
動物とそのまま暮らしていたほうが
幸せだったのかもね残酷(?)かもしれないけど

11

11. 匿名処理班

  • 2015年11月04日 22:41
  • ID:BqdGLLWI0 #

※10
そういえば日本では「三つ子の魂百まで」っていうもんなぁ。
昔の人はそういうことが経験則で分かっていたのかもね。

12

12. 匿名処理班

  • 2015年11月04日 22:49
  • ID:UuL4OOZ.0 #

※10
思うのは自由。決めるのは社会と国家。

13

13. 匿名処理班

  • 2015年11月04日 23:11
  • ID:DCmjIUH10 #

家猫のほうが寿命長いしそのままだったらもっと早死だったんじゃないかな
ていうかこんなに色々いるんだな
こんなかじゃ鳥少年くらいしか知らなかった

14

14. 匿名処理班

  • 2015年11月04日 23:33
  • ID:.mowub.H0 #

他の事例がどうかは知らんが、アマラとカマラに関して言えば、単に哀れな障害児が詐欺師によって見世物にされていただけのようだね
巷にあふれる野生児のうち何割かは、汚い大人によって“人工的に作られた”ものなのかもしれない……

15

15.

  • 2015年11月04日 23:37
  • ID:kKXnxEPU0 #
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