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「絶対的な現実という状況において長い間正気を保ち続けることができる生き物はいない。ヒバリやキリギリスでさえ、何らかの夢を見ると考えられている。
魔女やゾンビ、吸血鬼などがホラーの象徴としてメディアに食いつくされてしまった今、幽霊屋敷は真の恐怖を呼び起こさせる最後の砦かもしれない。そこに足を踏み入れれば、幽霊など信じていない者でも背筋がゾクゾクし、恐怖を感じざるをえないだろう。そこに誰もいないはずなのに、風すら吹いていないのに、耳をすませば何かが軋む音がする。そして背後に何かの気配を感じる・・・
現代科学はもちろん幽霊に懐疑的な眼差しを向けている。だが、もしあの奇怪な物音が心霊現象ではないというのならば、一体何が原因なのだろうか?
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可聴下音と幽霊の関係
幽霊屋敷の原因の候補の1つとして、人間の可聴域を下回る20Hz以下の可聴下音が挙げられる。
1998年、イギリスにあるコヴェントリー大学のヴィク・タンディは、医療機器工場で自分自身が味わった不気味な体験を基に論文を執筆した。そこの従業員たちの間では、時々不気味な感覚を味わったり、部屋の中に何かの気配を感じるという噂が流れていた。
こうしたことを全く信じなかったタンディであるが、その工場で過ごしていたある晩、寒気を感じ、嫌な気分になり始めた。医療ガスが漏れていないことを確認した後、机に座って休んでいると視界の端に灰色の人影らしきものが見えるではないか。どうにか勇気を振り絞って、その正体を確かめようと目を向けると、影も形もなく消えてしまった。
その後、金属を切断中に起きた体験から、タンディは音のエネルギーが不可思議な経験の原因なのではないかと推測するようになる。建物内の特定のファンを停止すると、幽霊は消えたと論文に記載されている。
この仮説を証明することは困難だった。エアコンの風から地震まで、可聴下音を作り出すものはたくさんある。ある実験では、イギリス、エディンバラにあるメアリー・キングの路地と呼ばれる心霊スポットで幽霊ツアーを実施し、その最中に可聴下音発生器を隠して作動させてみた。ここは壁の中に犠牲者が埋め込まれていると噂される場所である。
その結果、超常現象そのものを体験した人の数が変化することはなかったが、可聴下音を照射されたグループからは不思議な経験をしたという報告がなされた。また、可聴下音を照射されたグループの20%がツアー中に体温の高まりを感じたと回答している。されていないグループで同じ回答をした割合は5%だ。
だがこれは、心霊現象の原因が可聴下音であると断言できるような証拠ではない。何と言っても、幽霊屋敷では寒気を感じるのであって、体温の高まりを感じることはないのだ。可聴下音によって妙な体験をする人が増える理由もはっきりしないが、少なくともそうした人は実際にいるわけである。
電磁気エネルギーと幽霊の関係
幽霊の説明に電磁気エネルギーが挙げられることもある。幽霊がいるかどうかは分からないが、電線や家電など、私たちが電磁場に囲まれていることは確かだ。
2000年、カナダ、ローレンシア大学の認知神経学者マイケル・パーシンガーは、心霊体験に見舞われるという45歳の男性の脳を磁場によって刺激してみた。すると、その男性が長年見続けてきたという幽霊を「召喚」し、その恐怖を再現することに成功した。
翌年、彼らは、聖霊によって妊娠させられたと主張する10代の少女の事例について報告している。その少女は左肩に目に見えない赤ちゃんの存在を感じるのだという。論文によれば、彼女は幼いころ脳に障害を負っているが、その外傷だけが原因ではなかったようだ。彼女のベッドの脇には電気式の時計が置かれており、ラットにてんかん発作を引き起こすような磁気パルスを発生させていた。そこで、この時計をどかしてしまうと、何者かの気配は消えてしまった。
人の中には混乱しやすい側頭葉を持つ人がいる。そして、偶然にもこの部位は脳が情報を合成する場所でもある。脳の外科手術を受けた患者からは、現実を体験する上で側頭葉がいかに重要な役割を果たしているのか明らかになっている。側頭頭頂接合部という側頭葉と頭頂葉が接する場所を刺激すると、幽体離脱を引き起こすことすらできるという。
心霊現象の本当の犯人は人間の脳?
しかし、ユニバーシティ・オブ・ロンドンの心理学者クリストファー・フレンチは、可聴下音と電磁場によって幽霊を説明できるという証拠を探すために実験を行った。ある実験で、フレンチの研究チームは可聴下音と電磁場によって人工的な心霊現象が起きる部屋を作り、被験者に50分間中に入ってもらった。
その結果、大半の被験者から実験の最中におかしな感覚があったと回答があった。その内訳は例えば、80%がめまい、半数が回転するような感覚、23%が身体から離れたような感覚である。何より注目すべきは23%が何かの気配を感じ、8%が強い恐怖感を味わっていることだ。こうした実験は確かに心霊現象で体験される感覚を再現している。
だが、そうでないケースもある。例えば、5%が性的な興奮を覚えたと回答している。しかも、フレンチらがデータを解析した結果、実験における諸条件は関係ないことが判明したのだ。電磁場の使用や不使用、可聴下音の使用や不使用で被験者の回答に変化はなかったのである。むしろ、結果を左右したのは、個人の暗示のかかりやすさだった。
フレンチの研究が示唆しているのは、心霊現象の本当の犯人は人間の脳なのかもしれないということだ。
1996年の研究では、2人の被験者に1ヶ月間自宅で起きた「ポルターガイストのような」現象について日記をつけてもらった。すると、突然ポルターガイストらしき現象が至る場所で起きるようになった。その後の研究で、研究者は心霊現象とは、曖昧な出来事を超常現象と勘違し、それが強化されることが原因であるという仮説を立てている。
人は何もないところにパターンを見出すよう進化した
夜中の不審な物音を心霊現象に結びつける人に関しては、これが特に当てはまりそうだ。アメリカのチャップマン大学の調査によれば、怖がりな人ほど超常現象を信じる傾向にあることが判明している。また、超常現象を信じている人はある出来事の背後に意思を持った存在があると信じる傾向があることを明らかにした研究もある。
この研究は、人間が何もないところにパターンを見出すよう進化してきたという理論に基づいている。夜中に1人で森を歩いていると想像してみてほしい。すると、木々がカサカサ揺れる音が聞こえてきた。そのような時、あなたは先に進むだろうか、それとも引き返すだろうか? ここで進めば攻撃を受ける可能性がある。逃げ出せば危険を回避できるだろう。
脳が目を欺く
進化を研究する学者は、出来事を意思を持つ実体に結びつけるこの傾向によって、幽霊、あるいは天使や悪魔、さらには神に対する信心を説明できるかもしれないと考えている。
オランダ、アムステルダム大学の心理学者ミハエル・ファン・エルクは、これを検証するために、超能力フェアに赴き、観客に光の点が動く何種類かのコンピューターアニメーションを見てもらった。そうした点にはまったくランダムなものあれば、歩き回る透明な人物の関節の位置に来るように配置されたものもあった。
アニメーションを見た被験者に点の動きがランダムであるか、何らかの意味があるのか尋ねたところ、違いが明確な場合は超能力を信じる人も信じない人も正確に区別することができた。しかし、ランダムな点を混ぜて、より分かり難くした場合では、信じる人の方が歩く人がいると答える傾向にあった。この研究は、家の軋みや木々の音が簡単に幽霊と結びつけられてしまうことを示唆している。
だが、実験の被験者の証言ですらおいそれとは信用できない。というのもファン・エルクは自身の実験結果を再現できなかったからだ。
彼は、その原因は超能力を信じている被験者は人を喜ばせたいという気持ちが強かったからではないかと考えている。つまり、彼らは幻覚を見やすいのではなく、実験者の期待に沿うように大げさに情報を解釈していた可能性があるということだ。これは彼らが嘘を吐いていたということではない。被験者自身、現実がそうなっていると思い込んでいるのだ。
超能力の実験以外にも、人が自分の信頼性を過大評価していることを示唆する証拠はある。フレンチが行ったある実験では、被験者に超能力者(実際は手品師)が念力で金属の鍵を曲げるビデオを観てもらった。一部のビデオでは、最後の場面で超能力者がテーブルの上に鍵を置いて、「じっと見つめれば、まだ曲がり続けているのが分かるはずです」と語りかけている。
実際には鍵は曲がっていない。だが、その場面を観た40%が曲がっていると答えている。それと対照的に、このセリフを聞いていないグループでは、曲がっていると答えた被験者は皆無だ。
さらに、大勢の目撃証言があるからといって、信憑性が高まるわけでもない。同じ実験で、誰かが鍵が曲がっていると答えているのを聞いたグループでは、曲がっていると答えた被験者の割合が40%から60%に跳ね上がっている。
想像力豊かな人ほど記憶が改ざんされやすい
こうした研究から、超常現象を信じる人たちは豊かな想像力の持ち主で、物事に没頭しやすい傾向にあることが判明した。また、そうした人は一般よりも記憶が改ざんされやすい。例えば、2002年にバリで起きた爆破事件の映像について問われて、記憶が改ざんされやすい人は、それをどこで、誰と、いつ見たのかはっきりと答えるかもしれない。だが、実際にはその現場を撮影した映像は存在しない。
フレンチはこれについて、そうした人は映像を観たと想像した時のことを思い出しているのではないかと推測している。彼らにとっては想像したことが、現実とほとんど変わらなくなっているのである。
つまり、この説によれば心霊現象は本物の幽霊よりも恐ろしいということだ。自分自身の頭の中でさえ、信頼できないということなのだから。
via:livescience・translated hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
なぜ興奮したし
2.
3. 匿名処理班
19Hzの音を聞くとって言うのは怪しい伝説でやってたけどあの番組では無関係ってことになってた
被験者が少なすぎて無関係って断言するのは?だったけど
電磁波がっていうのは電子レンジだの携帯電話だの無線LANだの増え続けてるわけだから
幽霊のオンパレードになっちゃうと思うんだけど
4. 匿名処理班
>ヒバリやキリギリスでさえ、何らかの夢を見ると考えられている
気になりましたので、このことについて詳細をお願いします!
5. 匿名処理班
ソースが海外のものだとなんかしっくりこないんだよなぁ。
日本のジメッとした陰湿陰惨な心霊現象も検証してほしいな。文化もあるんだろうけど海外とは何か違うんだよな。というか日本ではこういう事してないのかしら。
いやむしろ海外の研究家が日本に来てくれ。こういうのはやはり第3者視点から見てもらうのが一番いいだろうそうだろう。
6. 匿名処理班
超常現象は科学で解明できると思ってたけど、やっぱりか・・・
あとは心霊映像の解明だね。
7. 匿名処理班
仮説に可能性に推測のオンパレード
結局は無いということを証明することなどできないってこった
8. 匿名処理班
自称霊能学者達よりよほど説得力あるな
あの人たちはその霊の時代考証まで出来るってのに説明できないんだから
9. 匿名処理班
毎度のことながら漠然とした仮説だなぁ
人類規模で死生観が変わらないかぎり幽霊の概念はなくならないし、存在も非存在も証明できるようなもんでもないから無理に科学的なこじつけにはしることもないんじゃない?