カナダ新政府「これからサイエンスに力を入れます!」
「科学といえばカナダ」となるでしょうか?
先日、カナダの総選挙で圧勝し、政権を握った自由党は、サイエンス(科学技術)に力を入れていくみたいです。カナダのサイエンスへの取り組みは、以前の保守党政権時代におざなりにされていたもの。新内閣はふたつのサイエンス関連の政府機関を設置し、環境省の名前には「気候変動」がつけ加えられました。
保守党が政権を握っていた10年ほどの間、「サイエンス」はカナダ議会でほとんど出てこない単語で、出てきたとしても国務相レベルでした。しかし、科学・技術担当の国務相エド・ホルダー氏は保守政権下で最も目立たない存在で、8月にはそのポジションが消えてしまいました。
この状況を打破するため、ジャスティン・トルドー新首相は重要な変更を発表しました。
まず、新設されたサイエンス省のトップ(日本で言うところの大臣)には、トロント大学の疾病地理学者で、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の2001年レポートにも参加したカースティ・ダンカン(Kirsty Duncan)氏が就任。ダンカン氏は1918年のスペイン風邪に関するノルウェーでの調査を本にした、クールな人物です。
そして内閣にはイノベーション、サイエンス、経済発展省も誕生。率いるのは金融アナリストのナブディープ・ベインズ(Navdeep Bains)氏です。
自由党の広報担当者がカナダのCBCニュースに語ったところによると、純粋なサイエンスを経済発展に向けた商業的な展開から分けたい、という政府の狙いがあるのだそうです。
その他の大きな変更は「環境・気候変動省」と名前を変えた旧環境省。カナダは先進国の中では気候変動への対策が最も遅れていると言われているので、今後本気で取り組んでいく決意の現れとも言えるでしょう。こちらの大臣的ポストには以前、国連で法務アドバイザーを務めていたキャサリン・マッケーナ(Catherine McKenna)氏が就任。マッケーナ氏は自由党のマニフェストであるカナダの環境への取り組みを強化し、温室効果ガスを削減、または低排出にするプロジェクトに20億ドルを出資する「ローカーボン・エコノミートラスト」などの審議を議会に持ち込むことになるでしょう。
今回の内閣改造について、CBCは「カナダ政府がサイエンスに力を入れていく明確なメッセージで、以前の政府よりも科学的なアドバイスを聞き入れるだろう」と報じています。
まず政府が求めることは、「科学者たちを冷遇しないように」ということでしょう。現在のところ、カナダ政府の科学者たちは、自らの仕事について自由に公にしたり、メディアに話したりすることができません。新しい自由党が率いる政府は「サイエンスを高く評価し、科学者たちに敬意を払う」、これまでとは異なる以下の様なアプローチを取ろうとしています。
政府のサイエンスへの取り組み全般を公表するため、我々は最高サイエンス責任者を任命し、科学者たちがそれぞれの仕事について自由に話ができ、政府が決定を下す際には科学的な分析を考慮するものとします。
科学分野の図書館司書で、サイエンス・ブログ(ScienceBlog)のブロガージョン・ドゥピュイ(John Dupuis)さんは、新内閣に次のような提案をしています。
・これまで骨抜きにされていた、環境関連の規制を修復すること。・予算の大幅削減により終了させられた、研究プログラムを復活させること。
・少なくとも、官民連携で何かをしようとする度を越した取り組みを削減すること。特に、国立研究評議会が企業に行っているコンシェルジュサービスに関係するもの。
同時にドゥピュイさんは、新内閣によって以前の保守党政権下で行われた漁業・海洋省配下の図書館閉鎖や、環境省のシステムなどを見直すべきだと言っています。
このエキサイティングな新政府のニュース、米Gizmodoにも、「素晴らしいニュースだ!これまでの政府はなんでも商用化、商用化、ばっかりだったからね」「カナダに移住したい!(寒くなければ…)」なんていうコメントが寄せられて盛り上がっています。
また、閣僚は男女半数ずつで、先住民や少数派民族も含んだとても多様性に富んだメンバーが話題になっています。どんな風にカナダがサイエンスを政策に取り入れていくか、楽しみですね。
source: CBC, ScienceBlog, Nature, カナダ自由党
George Dvorsky - Gizmodo US[原文]
(conejo)