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WIRED主催のクリエイティヴアワード WIRED CREATIVE HACK AWARD 2015

FINALIST/PUBLIC VOTE
最終選考通過作品/パブリック賞投票

厳正なる審査の上、以下の32作品を最終選考通過作品として選出いたしました。CREATIVE HACK AWARDでは、みなさんからの投票によって決定するパブリック賞を設けております。ぜひ最終選考通過作品のなかから、お気に入りの作品(いくつでも可)に「いいね!」を!
※パブリック賞への投票にはFacebookへのログインが必要になります。不正行為が発生した場合、受賞を取り消しする可能性がありますので、くれぐれもご注意ください。

GRAPHIC

  • Wire Self-portrait

    尹 智博

    洞窟壁画の中に様々な絵が描かれその中のひとつに「マジックハンド」がある。それは、制作者が壁に手を当て口に含んだ炭のくずを吐き出すことによって手形が複写されているものである。人類が形の記録を様々な方法でとどめていくなかで画家という専門職が誕生し、各時代における権威者達(王様、貴族など)が彼らに「肖像画」を描かせていた。また画家達も他人を描くだけでなく、自分で自分を描くことで「自画像」という領域が登場した。

    一方で、カメラ・オブスキュラなど現実と同じ風景を複写する技術が考案され、近代以降では機械の登場により持ち運びが容易となったカメラが開発され、より簡単に「肖像写真」を取ることが可能になった。現在では、コンパクト・デジタルカメラやスマートフォンなどの撮影機械などの登場によって、誰もが「自分撮り」を容易に行える。

    そして、大阪大学石黒研究室による「米朝ロイド・石黒イド・マツコロイド」などの機械を用いた人間の複写が行われ、3Dスキャナの登場により人間の全身をトレースし3Dプリンタで出力することが誰でも簡単に行える。
    この様に現在では、自己を形で表現することが様々な方法で行われる時代である。

    この作品はセルフ・ポートレイトである。ただし太陽の光を用いてある一定の条件を満たした時だけ、私という存在が現れる。常に存在するのではない自己の表現があっても良いと、私は考える。

    -----------------------------
    プログラミング:Rhinoceros/Grasshopper
    3Dプリンター:Objet Connex500

  • だれか、みえる。

    大倉 愛子
    わたしたちはいまなにをみている。

  • LOGO MOTION

    てらおか 現象

    既存のロゴを使いアニメートをさせる作品です。
    従来のアニメーションは、動かすことを目的とした画像が連続することで 動いているという錯覚を起こさせますが、 「全く別の意図や過程で作られたはずの画像が、交互に見せられることで動いて見える」 これが本当の錯覚ではないかと考えています。 2014年の2月からロゴの収集を始め、日々数を増やしています。

    オリンピックのロゴの騒動で「このサイトが騒動に対して作られた」という、 まとめサイトの嘘の編集や無断転載によりサイトに43万以上のアクセスがありましたが、 作品のコンセプトが故意に変えられた不本意な広まり方をしてしまったため、 正しいコンセプトを提示するため規模の大きい本賞に応募を致しました。

  • I see stars

    佐々木 大輔・前田 麦
    僕たちはいま、人生を楽しんでいます。それはテクニックの楽しみでも、クリエイションをすることの喜びでもなく、感情的に高ぶる何かを求めていつもキョロキョロ、きょろきょろ。辺りを見回しながら、一瞬の爆発的な楽しさを見逃さないように。挙動不審に見えようと、風変わりに見られようと、子どもの頃はただただ楽しかったはずの純粋さを大人になってからも探しています。そしていま、新たに見つけたおもちゃがこのParty animalというシリーズ作品です。この作品は、目から火が出る花火の作品です。

  • the Whyte House

    高橋 窓太郎

    震災を経て、都市全体がバグに見舞われた時、体育館などに人々が集まる。
    そこでは共同生活を行うために各々の領域を明確にすべく、境界が引かれる。
    境界のファサードに現れるのは、ダンボールであり、ビニールであることが多い。
    都市を読み替えハックする人々の持つ都市リテラシーは、計画されていない状況下で人々に指針を与える。

    このグラフィックは、宮下公園の高架下に並んでいるビニールハウスである。
    都市整備、再開発計画によってつまはじきにされたビニールハウスである。
    計画とは一体どこまでのことをいうのだろうか。
    公園を整備した結果,ファサードに現れる計画のバグ。

    ファサードへのリスペクトを含め、ここに自由、権威の象徴であるthe White Houseを挿入することで、 計画への疑問を浮かび上がらせる。
    便宜上グラフィックという名目ではあるが、これは見た者の問題意識を篩いにかける フィルターになるべきプロダクトであり、アイデアである。

  • Age (Lung Adenocarcinoma)

    土井 淳

    遺伝子情報と聞いて、何を思い浮かべるだろうか。遺伝子検査?病院や大学で研究されている?多大な費用が必要?誰でも見られるわけはない?本作品で私たちがハックしたいものは、「遺伝子情報は難解で、専門家でないと分からない」という既成概念である。 誰でもアクセスできる遺伝子情報のデータは、ウェブ上に数多くある。特に、がん研究のデータベース化が進んでおり、The Cancer Genome Atlas (TCGA) プロジェクトで、がん患者のプロファイル(年齢や性別、がんのステージなど)と、遺伝子発現情報、遺伝子の変異やSNPなどの遺伝的な個体差の情報がデータベース化され、公開されている。しかしながら、これらのデータの活用はそれほど進んでいない。データの存在は知っていても見たことがない研究者もいる。その原因は、適切な表示やインターフェイスがないからだと私たちは考える。 今後の医療では個別化医療が求められており、各人の遺伝子情報を表示する仕組みが必要となるだろう。しかし、カルテをいちいちデータアナリストがチェックする未来なんて残念だ。個人の装着している端末に、その人の遺伝子情報が刻々と表示されており、それを見た人が異常や治療方法に気づく、という未来はどうだろうか。そんなことを考えながらデザインしたのが本作品である。

    ポスターの形を取っているが、元になっているのは、1つ1つの円形のオブジェクトで、それが1人の遺伝子情報を表現したものである。オブジェクトの中心はディスプレイ領域であり、今回は、がん患者の年齢を表示した。円形になっている部分は、細い線で表されたネットワークになっており、がん関連の200個余りの遺伝子について、それらの関係を表している。ネットワーク構造自体は、20個のオブジェクトに共通であるが、幾つかの遺伝子とそこに繋がる線がハイライトされている点が異なっている。これらのハイライトされた遺伝子は、遺伝子配列に変異があるもので、1人1人異なっていることが個人差を示す。年齢と変異の情報は、前述のTCGAより取得している。

    ネットワーク構造は、これもTCGAの一部として公開されている、がん細胞の遺伝子発現情報から推定されたベイジアンネットワークである。計算量が多いため、東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターのスーパーコンピューターを利用して推定されたネットワークであり、GNDBというサイトで計算結果が公開されている。

    本作品の複数のバリエーションを並べて遠くから眺めてみると、一定の法則みたいなものが見えてこないだろうか?例えば、がん関連遺伝子に変異がなくても、がんになっている人がいること。また、変異を起こした遺伝子の数と年齢にそれほど関連が無さそうにも見える。見え方のパターンが異なるということは、それだけがんの原因が様々だと考えられる。
    個別化医療には、個人の遺伝子情報を視覚化する市場があると考えられるが、アカデミックには機能性が重視され、レイアウトの美しさ、色合いなどは評価されない向きがある。これは確かに研究ではない。むしろ、ユーザーインターフェイスやユーザーエクスペリエンスの開発であり、研究者ではなく、クリエーターの活躍できる分野と思われる。
    本作品は、D3.js というデータビジュアライゼーション用の JavaScript を用いて実装されている。そのため、数百人のデータであっても、各人の遺伝子情報を反映したパターンを動的に生成できる。また、ウェブ表示であるため、様々なデバイスに対応可能である。それに加え、1個1個の遺伝子をマウスでクリックしてハイライトするなど、インタラクティブな動作も可能である。

    ノーベル賞を取るような研究の例からもわかるように、現在の生命科学のブレークスルーは、直感と閃きによるものが大きい。それを促進するには、まず遺伝子情報が視覚化されていて研究者が「見る」というインプットが必要だろう。すでに大量のデータが公開されているのに、研究者が見られないだけで成果が促進されないのは非常にもどかしい。公開データなのだから研究者の垣根を越えて、デザイナーやプログラマ、ウェブ開発者たちが参入し、美しく、かつ、使いやすいインターフェイスをハックしてもよいはずだ。
    実際に本作品は研究目的ではなく、私(デザイン担当)と双子の兄(プログラム担当)で、1つのアートとして個人的に制作している。データはすべて公開されているものを利用し、普通のMacで開発しているため、特別なコストもかかっていない。本作品を通して、遺伝子情報に対する既成概念が取り払われ、研究者以外の人たちが参入してくれることを願う。

  • テクノ写真「夜景」

    玉村 広雅

    複数の写真を組み合わせた写真シリーズ。

    デジタル写真の進化は、アナログ写真の持っていた輪郭や階調といった連続性の再現、そしてそれを乗り越えることを大きな価値基準として扱ってきた。画素とよばれる本来は不連続であるデジタルデータの最小単位の密度を増すことや、ソフトウェアの処理で「写真らしさ」を獲得しようとしてきた歴史ともいえる。

    アナログからデジタルに変化する中で「らしさ」の模倣とは別の進化をみせたものに音楽がある。それは調整や楽器の習得といった従来のルールから解放され、テクノやサンプリングミュージックといった新しい価値観を提出した。同じように写真表現もテクノロジーを利用することで「写真らしさ」を疑いハックすることができるのではないだろうか。

    手始めに、不連続的のものを擬似的に見せる「写真らしさ」といった方向性ではなく、ピクセルという素材をマチエールとして扱うことで、アナログ写真や絵画の模倣としてではないデジタル写真らしさを提出できないかと考えた。具体的には撮影された時間も場所も異なる写真を編み込むようにプログラムし、1枚1枚が持っているピクセルはそのままに、コラージュではなく、不連続ながらも総体として見える形態を考案した。

  • 宮沢賢治のこころの柔らかいところに触れる-「銀河鉄道の夜」の装幀

    金丸 みのり

    改稿を重ねた未完の物語、銀河鉄道の夜。実は執筆当初とは全く違った結末である事をご存知でしょうか。遺稿となった最終稿を含め全部で4回改稿しており、第3稿までと最終稿とでは、なんと物語の根幹をなす主題そのものが変わっています。第3稿までの結末では、主人公は相談役である頼れる「博士」の援助の下、「みんなのためにほんとうの幸福を求める」という決意を胸に現実を生きていきます。ところが最終稿では、主人公は決意を夢の中に忘れてきてしまうし、「博士」は存在すらしません。切ない幻想奇譚として終わってしまうのです。第3稿執筆後に、賢治の考えを変えさせる何かが起こった事は明らかです。
    しかし、変更前の原稿もそれとわかる形で後世に遺してしまっている。
    ここに、賢治の後を付いて離れない「影」の様な…理想を捨てきれなかった未練が垣間見える様に思えました。
    そこで、右頁では最終稿、左頁では第3稿を展開していく、二つの物語を収めた一冊の本を作成し、賢治の「影」を表現しようと試みました。 巻頭には、導入として最終稿と第3稿それぞれの目次と、宮澤賢治の略歴を掲載。第3稿の文章は、改変内容とそれに至った賢治の心情とを想像するとスミで印字し白日に晒すのは忍びないと思い、空押しして「影」を読む仕様にしました(本文に合わせ、第3稿の目次も空押し)。巻末には改稿の変遷をまとめたものを収録しました。
    また、「賢治の内面」テーマにした本の為、白く柔らかい外装+繊細な本文と、丁寧に扱わざるを得ない装幀にしました。

    作品を単体で読むだけでも読書は充分楽しめますが、著者が作品に何を込めているのかを念頭に読むと、また違った面白さ、深みが出て、それは読んだ私たちをいっそう豊かにしてくれると思います。しかし実際に、著者の来歴や当時の社会情勢等と作品とを照らし合わせるまでする人はそう多くはないのではないでしょうか。
    この本は大目的である物語の媒体という役割に留まらず、視覚と触覚から、読者が宮澤賢治の内面にそっと触れられるように助ける媒体でもあります。
    物理的な本でなければ不可能な表現です。

MOVIE

  • Generative Pigments

    西秦 仁史

    私は長く親しんだ日本画の制作経験を活かし、そこで得た絵画的な感覚をプログラミングと融合させ、自動発生的に紡がれる映像を制作しています。コンピュータの計算結果を視覚的に美しい造形として出力することはこれまで多く行われてきましたが、私は日本画に特有の「古い」「昏(くら)い」といった言葉で表される、深みや複雑さを持った色彩をRGBで表現することを試みています。

    この作品では、スクリーンに日本画の素材である雲母が塗り重ねられています。この上に投影されたドットの色は深度を増し、角度によって違った表情を見せます。これにより、岩絵具が可塑的に動き出し、映像が物質に漸近して固定的な絵画が解体するような中間領域の可能性が示唆されます。

    映し出されるのは大和絵のステレオタイプ的なイメージですが、もともと平面的であったそれらは仮想の3次元空間上に再構築されています。これらが流動する線となって生成変化し、新たな関係性を生み出します。光が集まって象られた馬や鳥の姿は星座を連想させ、文化を超えた古代の人々の想像力や無意識に共有された記憶について再考を促すことにもなります。

  • Bubble Membrane Painting Machine

    Tommy Hui

    The B.M.P.M. stands for Bubble Membrane Painting Machine, is a device designed not only for artistic use but how to use color to reveal the structure and also the tension with bubble membrane.

    Here in the following will have two different experiment, the first one is using UV ink to reveal the bonding of bubbles which usually hard to see in reality, another one is using spray paint to test the weight and tension of a bubble membrane, eventually create a very expressive patterns and also a “bubble” drawing. The experiments, at the end was to found the mysterious relation between the colouring and the soap bubbles, which both have done a surprising results.

  • EMIGRE

    中島 渉

    とある街を襲った大きな災厄と、それを生き延びた一人の少女の記憶を 描いたアニメーション。
    人間の持つ、本能的な生存への欲求を表現したいと考え制作しました。

  • Erg Chebbi

    高橋 昂也

    2014年、作者は古い歴史をもつモロッコの城郭都市を訪れた。
    そこで得た興奮と陶酔、新しい美意識の発見、異文化への畏敬といった複雑な印象を、これまでにない独自の視点で映像化しようと試みた。
    現代の城郭都市を描くにあたって、初期デジタル映像の制限された手法に着目し、色鮮やかな粒子の集合体からなる世界と「見立て」の本質を探った。

  • trace

    宮嶋 風花

    「アニメーションをバグらせたい。」
    そんな思いから生まれた作品が「trace」シリーズです。
    trace=何かが通った後に残った連続した跡。真っ白な道に残されていく、何気ない日常の痕跡。
    人が歩いてくる様子を半透明のセルにコマごとに切り出し、時間・空間的な要素を再構成したのが、「trace」シリーズの原点となる今回の作品である。
    ロトスコープを用い、マルチスクリーン上に位相を伴って人物がレイヤー上に歩いてくる。traceの積み重ねにより生まれた人物は現実と懸け離れたものになり、アニメーションの中で全く違う生き物となって存在してくる。

  • 般若心経読経装置

    倉持 叡子

    従来の読経の姿が持っているネガティブなイメージ(ちょっと怖い、古臭いなど)を払拭して誰でも気軽に触れられるコンテンツにしたいと思い制作しました。 今日、科学技術が進歩して人がなにかを記すことのできる媒体は紙だけではなくなりました。ですが、お寺には和紙に墨でかかれたものばかりが置かれています。かつて呪文を唱えたり石に文字を刻み込んだりしていた人々は紙の発明し、媒体の変化により信仰のカタチが変わったはずです。それならばなぜ新しい媒体としての映像をつかって読経してはいけないのでしょう。そんな気持ちから、誰でも親しみやすく楽しんでもらえるような読経装置をつくりました。

  • iam

    福田 香子

    自分の体のデータをとり、それを等身大で再現したものをドローン(phantom)で飛ばし、またそれドローン(inspire)で空撮しました。

    ドローンで飛ばされる私の二つ目の体は、自然の風に煽られ、他人であるパイロットに操作され、オリジナルの私の意思とは関係なく動くようになります。現代では、インターネット上で自らの名前のついたアカウントが一人歩きする事や、義手や義足の発展で自分の体そのものが別の物質に置き換わっていく現象があり、それは意識的にも身体的にもどこまでが"自分=i am"であるかが曖昧になっているという事だと考えます。この「自分自身とは何か」という問いは太古からある疑問であると考えますが、これをドローンで撮影する事で現代版に表現しました。

  • L'Œil du Cyclone

    平岡 政展

    常に変化し続ける世界。しかし、結局は自分にも戻ってしまう、ミニマムな世界を描きました。自己愛と美しく変化していくもの。

  • fl/rame

    こやま ともえ

    私はキャンドル作家として活動している。これまでずっと炎のゆらぎに魅了され続けてきた。古からキャンドルは、人々の日常を照らしてきた。それは、道具としてだけではなく、絵画や芸能、文学や哲学など様々な文化を醸成してきたメディアである。

    マスメディアの登場以降、街頭や、家庭の団欒の中心にはテレビがあり、人々の生活に関する情報を伝えてきた。教育や、スポーツ、文化や娯楽などチャンネルは多岐に渡っている。やがて現代の情報環境は、スマートフォンなどのパーソナルなデジタルメディアへと変容した。かつては人々が集う場や団欒の中心にあった情報発信装置は、手のひらにおさまるほど小さくなり、一人ひとりが情報の受発信をできるようになった。

    本作品《fl/rame》は、スマートフォンの上にキャンドルをのせた、ちょっと変わった作品である。火を点すとビデオフィードバックを起こし、炎の挙動に追従してディスプレイに映し出された映像が変色し発光しはじめる。そして複数台あるタブレット端末とビデオ通信すると、Jitterの影響を受けて個々にゆらぎ、灯り始める。鑑賞者が足を踏み入れる際に起こる空気の動きや、呼吸までも感知してキャンドルの炎はゆらめく。

    その振る舞いは再びスマートフォンに捉えられ、タブレット端末に転送され、空間を揺るがし続ける。そこにはゆったりした時間が流れ、知らない誰かとも共ににその暗闇の中を過ごすだろう。

  • Gen

    安藤 健翔

    『Gen』は、飛び回る大量のパーティクルを指先で直に触れて自在に操り、敵を倒していくゲームです。

    本作品は「大群を操ることの楽しさ」に注目し、その面白さによりフォーカスするため、大群をプリミティブな形で表現することにしました。自律的に動きまわる大量のパーティクルを制御し、増やし、目的を達成していく面白さをプレイヤーは体験することができます。

    本作品ではゲームをプレイすること自体により様々なジェネラティブ・アートが生成され、ステージクリアが同時に作品の完成となります。 ジェネラティブ・アートは、アルゴリズムと計算による機械的な要素と、ランダム性や様々な要因による要素が有機的に合わさってできるアートです。一定の規則に基づいて作成されながらも、どこかに必ず予測不可能な要素を持ちます。通常不規則性はプログラム上のランダム関数や、環境情報などからもたらされますが、『Gen』ではプレイヤーのゲームプレイそのものが不規則性となり、プレイの傾向により、そのプレイヤーだけの様々なアートが生成されます。私たちはアルゴリズムを設計しますが、最終的な制作物としてのアートはすべてこのゲームのプレイヤーによって制作されることになります。

    大量のパーティクルを操る気持ちよさと、ゲームプレイそのもので生成されるジェネラティブ・アートを組み合わせることで、今までにないゲームプレイを生み出しました。

3D PRODUCTS

  • Wire Seiichi Saito

    尹 智博

    洞窟壁画の中に様々な絵が描かれその中のひとつに「マジックハンド」がある。それは、制作者が壁に手を当て口に含んだ炭のくずを吐き出すことによって手形が複写されているものである。人類が形の記録を様々な方法でとどめていくなかで画家という専門職が誕生し、各時代における権威者達(王様、貴族など)が彼らに「肖像画」を描かせていた。また画家達も他人を描くだけでなく、自分で自分を描くことで「自画像」という領域が登場した。

    一方で、カメラ・オブスキュラなど現実と同じ風景を複写する技術が考案され、近代以降では機械の登場により持ち運びが容易となったカメラが開発され、より簡単に「肖像写真」を取ることが可能になった。現在ではコンパクト・デジタルカメラやスマートフォンなどの撮影機械などの登場によって、誰もが「自分撮り」を容易に行える。

    そして、大阪大学石黒研究室による「米朝ロイド・石黒イド・マツコロイド」などの機械を用いた人間の複写が行われ、3Dスキャナの登場により人間の全身をトレースし3Dプリンタで出力することが誰でも簡単に行える。 この様に現在では、自己を形で表現することが様々な方法で行われる時代である。

    この作品は3Dスケッチである。ただし太陽の光を用いてある一定の条件を満たした時だけ、 齋藤精一氏という存在が現れる。常に存在するのではない自己の表現があっても良いと、私は考える。

  • プログラミング脳を育てるPETS

    秦 優

    子ども達がプログラミングを学ぶのに初めの一歩は何が最適なんだろう?この疑問からスタートしたのがPETSです。
    色々なツールを使って子ども達にプログラミングを教えてみましたが、どれも1人は脱落する子ども達が出てきます。
    そこで初めの一歩として最適だと考えた条件は「モニターを使わない」「手に取って触れる」「インタラクティブである」「楽しい」の4点です。

    PETSは車型のツールで、PETSの上に動きを指定するブロックを置いていきます。
    ブロックの種類は「前に進む」「右に回転する」「左に回転する」「後ろに進む」「ループ」の5種類です。
    与えられたコースに対して、どういう順序でブロックを置いていけばゴールできるかを考えていく、ただそれだけです。
    コースはカード型なので簡単に拡張していけます。

    コースの難易度が上がっていくと、方向を示すブロックだけでは厳しくなりループの機能を使っていく必要があります。

    またPETSの底面にはカラーセンサーがついており、コースの色を判断して様々な機能を持たせる事が可能です。
    例えば、赤を認識すると一番最初のブロックに戻ったりが可能です。

  • toki-

    後藤 映則

    時間と動きの関係性、時間の流れについてを探った作品です。

    動きの時間軸を3次元に立ち上げて、モーフィングで途切れることなく繋ぎます。それを3Dプリントすることで時間と動きが実体化されます。3Dプリントされたものに「現在」という光の線を当てることで時の移ろいが視覚化され、動きが現れます。
    我々が知覚できる世界において時間と動きは深い関係があり、どちらかの概念が欠けているともうひとつの概念を認識することが困難になります。
    また、時間は「過去から未来へ流れて行く」「未来から過去へ流れて行く」「繰り返し流れている」という3つの視点から考察できる構成にすることで、当たり前に感じていた時間に対しての既成概念を問いただします。

    仕組み自体はディスプレイとしての可能性の他に、店舗サイン、照明プロダクト、ファッション、空間演出や建築などにも幅広く応用できる可能性があります。既存のものに視覚化できる「時間」を加えることで新たな価値を見いだせると考えられます。

  • Fairy Lights in Femtoseconds

    落合 陽一

    映像と物質という関係性をハックし,更新する.触覚ある映像は物質と区別がつかない.
    フェムト秒(10の-15乗秒)の単位でプラズマを発火させ、空中に浮かせています。このプラズマという現象は、本来はとても危険なものです。しかし、フェムト秒程度の一瞬であれば、その触り心地を確かめられます。ここで我々が狙っているのは、通常のメディア装置の発想で視覚に属すると思われているような光を、触覚的に味わうことです。私たちは光には視覚が、音には聴覚が対応すると考えがちですが、それはテクノロジーが規定してきた条件に過ぎません。現代のテクノロジーは光が触覚を操ることを可能にしているのみならず我々の受容器の写像としてのメディア装置の存在を覆そうとしています。我々はこの作品によって映像と物質というパラダイムの間にあるもの、新たな魔法的表現によるハックを可能にしました.

IDEA

  • Ethical Things

    Matthieu Cherubini・Simone Rebaudengo

    Due to fast-developing technology and its endless promises, autonomous systems are heading increasingly towards complex algorithms aimed at solving situations requiring some form of moral reasoning. Autonomous vehicles and lethal battlefield robots are good examples of such products due to the tremendous complexity of their tasks that they must carry out.
    When it comes to discussion around the ethics of machines, the focus is often put on extreme examples (such as the above mentioned projects) where human life and death are involved. But what about more mundane and insignificant objects of our everyday lives? Soon, «smart» objects might also need to have moral capacities as “they know too much” about their surroundings to take a neutral stance.

    If a « smart » coffee machine knows about its user’s heart problems, should it accept giving him a coffee when he requests one?

    Even with such a banal situation, the level of complexity of such products cannot accommodate all parties. The system will be designed to take into account certain inputs, to process a 'certain' type of information under a 'certain' kind of logic. How are these “certainties” defined, and by whom? And, moreover, as the nature of ethics is very subjective, how will machines be able to deal with the variety of profiles, beliefs, and cultures?
    The “Ethical Objects” project looks at how an object, facing everyday ethical dilemmas, can keep a dose of humanity in its final decision while staying flexible enough to accommodate various ethical beliefs.
    In order to achieve that, our “ethical fan” connects to a crowd-sourcing website every time it faces an ethical dilemma.
    The fan is designed to let the user set various traits (such as religion, degree, sex, and age) as criterion to choose the worker who should respond to the dilemma, in order to assure that a part of the user’s culture and belief system is in line with the worker, or ethical agent.

    Project page: automato.farm/ethical-things/

  • 余白書店

    内田 聖良

    コンセプト

     私たちは、「足りない」よりも「出来上がって手出しができないように思える」状況に置かれています。この状況下では、0から何かを生み出すこと以上に、既にあるものをどのように扱うか、が有効な創造性のひとつと捉えられるでしょう。仕様書通りに利用するのではなく、暗黙のルールを「あそぶ」・「間違って使う」ことで、ある創造性を発揮できると考えています。
     このプロジェクトは、「書き込み」「印」「線」「折り」「シミ」などの「消費されたあと」・・・「手垢」の価値を評価し、「手垢」のついた「手垢本」のみを扱う、インターネット上の古書店プロジェクトです。
     通常、「手垢」は、本の価値を下げるものとして扱われます。これは、傷のない、パーソナライズされていないものに最高の評価をつける大量生産、大量消費社会のもとで染み付いた価値観といえるでしょう。本プロジェクトでは、この「手垢」を本の個性として、価値のあるものとして扱います。AmazonのマーケットプレイスとTumblrを用いて、流通ルートをつくり再流通させることで、この価値観を表現します。

    制作プロセス

    AmazonとTumblrのシステムを転用して古本屋を開業・運営します。
     Amazonのマーケットプレイス出品用アカウントを作成します。Tumblrのブログを作ります。
     書き込みやシミ、使い込んだ「あと」のために売ることのできない本を無料で回収します(手渡し・郵送など。ガイドラインに基づき、同意を得た場合にのみ行います)。
     本人から希望があった場合はその値段で、無かった場合は、「余白工事の会」メンバーが「手垢の査定」を行い、値段を決定します。通常、定価+α(査定で決定した額)となります。値段が決定した商品は、Amazonのマーケットプレイス「コレクター商品」として出品します。
     Tumblrの記事にそれぞれのマーケットプレイス「コレクター商品」のページをリンクして商品を購入できるようにします。
    ※売上金は「余白書店」の運営資金になります。
    ※在庫管理等はGoogleDriveで行っています。

  • HaNet

    田島 琢巳

    世の中に未だない、既存のカテゴリーに分類できない新しいユーザーインターフェースについて提案します。
    そのネーミングは「HaNet」
    総入れ歯型のネットワークコミュニケーションツールです。
    主な目的として高齢者がインターネットとより繋がりやすくすることにより健康的な老人生活を少しでも長くすごせるようになることです。 健康な生活の為にはより良い食生活、現状の体調維持管理する為の適切な医療サポート、笑いを取り入れた生活、適度な運動等が必要です。それぞれについて高齢者各自が自分なりに注意して管理できないわけではないのですが、やはり今までの生活のくせそのものが、悪影響を与えている場合、自分一人でなかなか軌道修正できないはずです。
    誰かが見守り、手伝ってあげることで健康維持が出来る可能性が格段に高まるはずです。
    この「見守り」という部分を「HaNet」が行います。

    1、より良い食生活:食事の成分を分析し適切な献立に近ずくように逐次アドバイスを行います。そして食事時間、咀嚼回数のデータより食事の方法そのものについてもアドバイスを行えます。
    2、現状の体調維持管理する為の適切な医療サポート:日々のバイタルデータを随時ロギングし蓄積分析することにより、体調の変化を即読み取り適切な処置、指示を与えることができます。
    3、笑いを取り入れた生活:ちょっとお節介なAIが、日々の生活に笑いをプラスさせます。

    これらを実現させる為のインターフェースとして高齢者ならではの必需品「入れ歯」に注目しました。
    「入れ歯とAI」を繋げることにより高齢者の「見守り」を実現できると考えています。

    共同提案者としまして、星野 圭亮、篠原 真奈、田島 琢巳 の3名です。

  • Where Virtual Image is Formed 〜虚像の結ばれる所〜

    石川 達哉

    "虚像の結ばれる所"は、Kinectを物理的にハックするパフォーマンス作品である。パフォーマーの正面にはKinectが設置されており、ポイントクラウドを取得している。背後には、ポイントクラウドの映像がプロジェクションされている。
    パフォーマーがフレネルレンズをKinectへ向けると、その部分のポイントクラウドが周囲から切り離されて表示される。これは、Kinectが赤外線によってDepthを取得しているため、レンズによって赤外線を屈折させることでKinectのDepthをハックすることができるためである。
    Kinectはレンズの向こう側の物体を、実際よりも奥にあると認識する。そしてそこには、身体の一部が分離・拡大されたポイントクラウドが表示される。その際、レンズと身体との距離が離れれば離れるほど奥に、大きく拡大して表示される。また、レンズのゆがみによって、奇妙に歪んで表示される場合もある。これらはすべて、Kinectから見た世界を忠実に表している。
    レンズによって拡大された像は”虚像”と呼ばれる。これは実際に光が集まって像を結んでいないのに、屈折した光を逆向きに延長して集まった場所から光が発しているように見えるものをいう。それは光学的な現象であり、実体ではない。にも関わらず、我々は実体を見るときと同じようにして虚像を認識する。
    Kinectも我々の視覚も同様に、世界を誤認識しているのである。

  • ZERO AID

    麻生 遊・長澤 豪・田中 美奈子

    スマートフォンで、投薬のタイミングを自動化する、薬の可能性を広げるアイデアです。

    《飲んでおいてHACKする薬_ZERO AID》

    我々を苦しめる症状の多くは、体内で不要に増殖した細菌を排出しようとして起こります。
    つまり、「症状がでた時点」で増殖は完了しており、薬は根本治療にはなりません。

    ZERO AID は症状が出る前、早期対処を可能にするアイデアです。
    ① 飲み込んだ、薬は体内に一定時間留まる事ができます。
    ② カプセル溶解の条件はスマートフォンで設定します。
    ③ 体内の薬は、設定した条件が満たされると、体内に投薬します。
    ④ 何も起こらなければカプセルのまま排出されます

    自覚症状がでてくる前に、体内で対処する事にで、《治療》自体を不要のものとします。

  • a Piece of

    池田 昂平

    「人は誰しも掌に個人の土地を所有している」という観点から本作品を制作した。掌を観察すると、そこに刻まれた皺は河川や峡谷に見え、身体を巡る血液とは異なった「第2の流れ」が現れている。本作品は鑑賞者の掌紋(手相)に類似した土地をコンピュータが世界地図から検索してスクリーンに投影する事で、掌から世界の広がりを感じる作品である。
    また、無味乾燥な掌を「地形」という異なる視点から見る事で、自身の肉体を深く見つめる機会を与える事を意図して制作した。年齢を重ねるにつれて皺が増える人間の掌は、時を重ねて刻々と表情を変える大地の表層と共通する部分がある。
    本作品のタイトル"a Piece of"は掌が世界地図の一部"a Piece of the World"であるという作品のコンセプトに由来している。

  • 「他人の頭で連想するメディア“モナド”」

    大坂 景介

    私たちはグーグルや各種SNS,SMSを使いますが、同時に実際に集まってのブレインストーミングもします。なぜグーグルやSNSだけでは不十分なのでしょうか?
    それはブレインストーミングには「誰が何を知っているか」についての情報や「その人固有の物の見方」の共有という隠れた機能が有るためです。
    私が提案するアイデア「モナド」ではこの「誰が、何を、どのように知っているか」についての情報を共有でき、何かを調べる時にまるで「他人の頭で連想する」かのような検索が可能です。
    モナドは拡大度に応じて情報表示量が変わるズーミングUIをもったツリー状のソーシャルブックマーク兼ブラウザです。WEBページをツリー状に保存して、そのツリーの枝を検索要素として類似する他人のツリーを検索、閲覧し他人のブックマークの枝をコピーして自分のツリーにつぎ足すことができます。
    このようにモナドでは情報を文脈ごと共有、検索、閲覧でき、何かを考えるときに自分の頭の中だけではなく他人の頭でも連想できるようになるのです。
    モナドは知識共有と検索とコミュニケーションの既成概念をハックし新たな出会いを作ります。

  • Project MakeupPrinter

    鎌田 学

    化粧をプリントアウトする MakeupPrinter の提案です。
    ・本提案は、ベンチャー企業を目指すものではありません。
    Creative Hack Award を通して、有力な情報プラットフォーム企業に本提案を呼びかけ、プリンターメーカー・化粧品メーカー 等と連携し、日本発で化粧のデジタルファブリケーション化という新たなムーヴメントを起こし、それに伴う新しい産業、文化、価値の創造を目指すものです。
    1. 装置の設計方針
    初期型機の開発は先端技術を使わず、普及技術の組み合わせで実現するよう工夫、技術開発を最小限にする。
    2. 使い方
    ユーザーは、初回は頭部を3Dスキャンし、3Dモデルを作成。
    以降は、メニューを選択し、椅子に腰掛け Start ボタンを押すだけで、ユーザーの3Dモデルを元に短時間で、均質にMakeupできる。技量の個人差にも悩まされない。
    データはクラウド上で管理。外出先でも Makeup Printer の所在をを専用アプリで探して自らが最適に調整したメークができる。
    3. メニュー開発
    基本メニューを元に、あるいは新規に、画面上でユーザーがMakeupメニュー を作成し自分の好みに合うよう微調整を重ね、データを保存する事で最適なMakeupがいつでも出力できるようになる。
    個人ユーザーまたはデベロッパーが作成したMakeupデータは任意に専用アプリからサイト上にアップして、 無料または有料でダウンロードできるよう公開できる。
    ユーザー間での情報交流が進み、Makeupメニューが質・量ともに向上する。
    Makeupメニューの多様化が進むうち、ユーザーの中から開発者が予想できないような新しい使い方が創造される事が予想される。
    4. 開発と改良・改善
    一度動き始めた後は、ユーザーコミュニティの需要に沿って改善開発を進める。
    開発者側の発想との軋轢が予想されますが、両者の競合が、当初の予想を超える新たな製品開発に寄与することが予想されます。
    ※ 本提案 Project MakeupPrinter の主眼は上記の『3. メニュー開発』にあります。
    本提案が実現し普及すると、化粧の方法が変わるだけでなく、ユーザーの中から開発者が予想できない新しい使い方・価値観をもつ 現状の手作業による化粧とは全く異なる新しい Makeup が創造されることが予想されます。

  • #VIsibleMe

    Bhavani Esapathi

    #VisibleMe is an experimental digital pursuit that unfolds in social media to bring attention to a growing social concern that isn’t addressed adequately via mainstream media; invisible disability. From MS to Crohn’s Disease to hundreds of other such chronic conditions that are being diagnosed worldwide every second remain not just incurable but worse, invisible on the outset. As an extension from the project Chronically Driven which shares real stories told by real people on how they have overcome the limitations set forth by such debilitating diagnosis, the mission of the project is to redefine what it means to be disabled whilst enabling people to live lives beyond the confines of what is termed as extraordinary. You can find out more about the project by going to http://www.bhaesa.com/cd-mainpage The Project is currently supported by The British Council, RSA (UK), The Huffington Post and being developed alongside Near Now Studio production (UK) so expanding this onto a Japanese audience would not only question stereotypes in health, biomedicine and as global citizens but also engage communities across Asia via participatory exhibition. The data collected via the exhibition is compiled into a data visualised artwork which can be utilised in innovative ways to speak about an invisible stereotype within the Japanese society. Capturing both the emotional and personal response to such varied situations, the project will culminate into a socially curated visual screen that best responds to invisible disability. The narrative built by bringing together the excerpts from the images as well as the public responses initiated from interactive exhibition will form an effective public intervention tool that can continue gathering data whilst forever reconstructing this digital narrative that is visible for the public to see, engage and contribute to during and even after the exhibition thereby producing a data artwork forever growing.

  • Sound Weave

    Abe Mutsumi

    これは西陣織というかつて日本の京都で生まれたテキスタイル文化の技と伝統をHackするアイデアです。
    このプロジェクトをはじめるきっかけは、WIREDが開催したWXDで音と空間のデザインワークショップに参加したことでした。

    なにかはっきりしたモデルがあらかじめあったわけではないのですが、震災前後の東北地方、ヨーロッパ、アメリカ、アジアを巡りながら、東北の伝統こけし職人と電動轆轤と鉋をつかった展示・実演をしたり、地域のものづくりの在り方について考えていた時期がありました。ワークショップではじめて知り合った音楽家やクリエイター、大学生など、ジャンルや世代を超えた人々が集まり、音にどんな新しいコミュニケーションや表現の可能性があるのか議論しながら、少しずつ形づくっていきました。

    西陣織という伝統工芸品は、需要の低下と後継者の高齢化によって急速に衰退の進むテキスタイル文化のひとつです。
    昭和40年代頃、公害問題、都市の過密化など高度成長に伴うひずみが表面化する中で、大量消費、使い捨ての機械文明に埋没した生活に対する反省の結果として、伝統的なものへの回帰、手仕事への興味、本物指向がみられるようになってきました。一方で、後継者の確保難、原材料の入手難などの問題を抱える伝統的工芸品産業が、産業としての存立基盤を喪失しかねない危機に直面。伝統的工芸品産業を建て直そうという気運が高まりました。このような背景の下に、「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」(伝産法)が昭和49年5月に制定され、国による振興策がはじまりました。「伝産法」は「一定の地域で主として伝統的な技術又は技法等を用いて製造される伝統的工芸品」の「産業の振興を図り、国民の生活に豊かさと潤いを与えるとともに地域経済の発展に寄与し、国民経済の健全な発展に資することを目的」と記されています。

    伝統的工芸品として定めを受けた工芸品は、その名称とともに、技術、原材料、製造される地域という3つの内容が規定されます。伝統的工芸品には、かなり精巧な類似品も多く、一般消費者にとってはその識別はかなり困難といえます。そのため伝統的工芸品の普及啓蒙のため、識別のめやすを提供することは極めて重要と考えられていました。
    産業において標準化を進める意義は、
    1 製品の互換性・インターフェースの整合性を確保
    2 生産効率の向上
    3 製品の適切な品質を確保
    4 相互理解の促進
    にあるそうです。固定することによって守ろうと考えられているのだと思います。

    こうした標準化は、戦後の戦後高度経済成長期において品質保証の役割を果たしたことは明らかです。しかし、これだけモノが大量に溢れる現在では買い求める人がいなければ、それはもはや意味をなしえません。テクノロジーは常に進化し、私たちのライフスタイルも変化しつづけています。変わらないことで伝統を守ることが難しいのなら、むしろかつて日本で生まれた技法と文化を、Hackすることで新しい価値を創ることができないだろうか?と考えました。

    現代、伝統工芸、アート、音楽、デザインなど、さまざまなジャンルにはびこる閉塞感や行き詰まり感とイノベーション。使い古されたフォーマットを逸脱し、実験的で大胆な試みを採用するのに、ハッカーやギークのアイデアはよい口実になります。

    コンピュータで扱いやすい2Dイメージとして、ピクセルがあります。写真、映像、映画、ゲーム、建築、医療などの分野でよく使用されるフォーマットです。西陣織も、柄デザインをコンピュータグラフィック化し、フロッピーディスクで共有、ジャカードを織りをしています。これらピクセルデータを扱うソフトウェアは無限にあり、それぞれのフォーマットを組み合わせて、よりリアルな表現が可能になります。これらは「共有」という目的のためにつくられています。そこに知覚と認識の質を下げることなく、物質性や時間性を持ち込みながら、新しい種類のリアリティが構成されれば、それは衰退する伝統工芸の新しい戦略になりうるのではないでしょうか。そのひとつのアイデアとして、Sound Weaveは生まれました。

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