BlackBerry Privレビュー: ダメ。親の仇にも使ってほしくない
どうなるBlackBerry…。
発売前から色々と話題を振りまいていたBlackBerry Privがついに発売されました。BlackBerry初のAndroid携帯という事もあり、起死回生なるかと思われていましたが、どうやら米GizmodoのMario Aquilar記者によると残念な出来な様子。早速レビューを御覧ください。
私は、本当にBlackBerry Privを好きになりたかったんです。当然でしょう! Androidを搭載したBlackBerryですよ! しかし残念ながら、既に他の携帯へと移ってしまったユーザーを取り戻すには、このBlackBerryの最新で、もしかしたら最後の挑戦はあまりに完成度が低すぎました。
これは何?
BlackBerryによる700ドル(約86,000円!)のスマートフォンであり、初めてAndroidを搭載しています。主な特徴としては、5.6インチディスプレイにスライド式のQWERTYキーボードを備えています。「Priv」とはPrivacyとPrivilegeを意味し、ユーザーとユーザーの情報を守るセキュリティ機能を暗示しています。内部にはQualcomm 808プロセッサに32GBのストーレージ、光学手ブレ補正付きの18メガピクセルのカメラがあり、AT&T及びBlackBerry.comにて11月9日から発売を開始しています。
どうして重要なの?
もう長い間、BlackBerryは崩壊を続けています。しかし、「Android搭載のBlackBerryスマートフォン」という響きは興味深い、いや、刺激的ですらあります。近年のBlackBerryは優秀なハードウェアを作ってきましたが、そもそも出来が悪く欲しいアプリすら無いBB OSが、常に足を引っ張っている状態でした。確かにサードパーティのアプリストアからインストールする事もできますが、非常に手間がかかるので、BlackBerryがAndroidの世界に足を踏み入れたのは賢い一手であったと言えます。
今のBlackBerryは、かつてQWERTYキーボードが時代を一世風靡した頃の残骸ですが、新たなデザインに挑戦している姿は賞賛すべきでしょう。最近の殆どのメーカーはiPhoneをコピーする事を選択していますが、BlackBerryは少なくとも、物理キーボードに縛られているのとはいえ、常に新たなデザインを模索しています。
しかし、PrivでのAndroidへの移行はあまりに遅すぎたと言わざるを得ません。馬鹿馬鹿しい値段を考えればなおさらです。
デザイン
BlackBerryの歴史はQWERTYキーボードと共にあります。Privに関してもそれは例外ではなく、栄光の時を支え、今や希少で伝説上の存在となった「ハードコアユーザー」達の為にその伝統を引き継いでいます。大型スマホとタッチスクリーンの時代に明らかに逆行しているにも関わらず、です。
最初に本体を手に持った時には気づきませんが、キーボードを中心に全てをデザインしたからか、結果的にスライド式キーボードがPrivの最も特徴的な機能になっています。他の多くの携帯に比べるとPrivは分厚いのですが、それでも扱いにくさは感じません。…キーボードをスライドさせるまでは。
スライドのアクション自体は、頑丈そうで満足感を感じる出来になっています。しかしそこ以外の携帯の作りはやや安っぽく、数日もするとカーボンファイバーっぽい背面が緩んできて、いずれ外れてしまうのではと感じるようになりました。
2560x1440 AMOLEDスクリーンは良い選択だったのですが、縦のエッジを包む曲面ディスプレイが台無しにしています。使用感に全くプラスにならないどころか、端に近い文字を読みにくくしているからです。
また、多くのメーカーが高速でより優秀なUSB-Cにスイッチする中、BlackBerryは未だに過去に囚われ、microUSBを使っています。「過去」というのが繰り返されるテーマのようですね。
使用感
それで、Privのキーボードはどうなのでしょう? 小さなキーは押しづらく、スムーズにタイプしているというよりはガチャガチャとボタンを押している感じです。更に、キーボードをスライドさせると本体の上半分に重心が行くので機敏にタイプするのが難しくなります。また、スワイプする事でウェブページ等をスクロールできるタッチパッド機能も重さの所為で使いにくくなっています。キーボードがあまりに役立たずなので、デザインそのものはキーボード中心なのにも関わらず、後で取ってつけたようになってしまっているのです。
メニュー等を使うには、他の携帯同様タッチスクリーンを触ります。Privは決して使い物にならない訳ではありません。他と比べて煩雑な事が多々ありますが、通話に使えるし、メールもチェックできて、マップでナビも行えます。ところが、携帯のキャリア受信感度はここ最近使った中でも最悪です。外で立っていると通話できなくなる時代は終わったと思っていましたが、Privがそれを覆してくれました。安定しない受信は2009年にタイムスリップしたように感じてしまいました。
一度キャリアと繋がれば、Nexus 6Pのような機敏さは無いものの、Privのパフォーマンスは悪くありません。充電は一日持ちますが、頻繁に使う人はお出かけの際、充電器をお忘れなく。
ストックAndroidの体験をキープしたのはBlackBerryの英断でした。有難い事に、UIはAndroid 5.1そのものです。ただ、かつてのファンが愛したBBMなどのアプリを使うよう推奨はしています。問題は、私の友人でも仕事上の知り合いでも、BlackBerry Messengerを未だに使っている人を知らない事ですが。
しかし、一番の古代の遺物はBlackBerry Hubでしょう。退屈で古い事を除けば割と使えます。Hubはスクリーンの端から出ているタブを引っ張るか、ホームボタンを長押しする事で起動します。HubはBlackBerryの予定表でありメッセージセンターです。Privでツイッター、Facebook、グーグル等にログインすると、メッセージやアラート等の情報でHubを満たします。最も便利な点は、カレンダーがいつでもスワイプ1つで呼び出せる事です。逆に最悪な点は、様々なプラットフォームから来る全てのメッセージを、めまいがするようなカスケードで見なければいけない事です。
名前の元になったプライバシーについても、当然語るべきですね。ビジネスマンや心配性のお父さんには魅力かも知れません。セキュリティ機能はDTEKと呼ばれるアプリで前面に押し出されています。これは携帯のシステムや設定をモニタリングして評価するアプリなのですが、素晴らしい事に、何もしていないのにも関わらず「EXCELLENT」の評価をくれました。とは言っても、あくまで常識的な事―スクリーンをロックしたりデータの暗号化をオンにしたり―をしただけなのですが。マルウェアだらけのサイトにわざと行ってみましたがDTEKが何かをしたようには見えませんでした。これってちゃんと機能してるって事なのでしょうか?
ともかく、他の携帯で常識的な心がけをしながら使うより、Privの方が安全だという気は全くしませんでした。ストックAndroidのフィーリングを保ちながらBlackphone並のセキュリティを実現できればBlackBerryが奇跡を起こした事になったのですが、残念ながらPrivはそうではありません。
Privで優秀な物と言えば、カメラです。暗闇でも鮮明な写真が撮れて、UIも使いやすくなっています。1つ不満があるとしたら、オートフォーカスのラグです。かなり時間がかかるのでシャッターチャンスを逃しがちになります。
良い点
Androidは好きです。
悪い点
金額の割に遅いパフォーマンス、古いデザイン、酷いキャリアサービス。
買うべき?
自分自身にも、友達にも、親の仇にも買いません。もしかしたら、例え使い勝手が悪くても、キーボードのついたフラッグシップ品質の携帯が欲しいという人もいるかも知れません。あるいは大した事をしていなくてもセキュリティアプリがあるだけで安心する人もいるかも知れません。
でも、もっと安くで更に、更に、更に優秀な選択があるのに大金を払いたい人はいません。Nexus 6Pを買うべきでしょう。
images by Michael Hession
Mario Aquilar - Gizmodo US[原文]
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