FBIが匿名ネットワーク「Tor」を傍受との報道、プロジェクトは大学の関与を指摘
FBIによって匿名ネットワーク「Tor(トーア)」が破られユーザーの個人情報が傍受されたとする報道を、複数の海外メディアが伝えています。
Torは、P2Pの技術を利用した独自の仮想接続手法によってネット上での匿名性を高める通信システム。Torを経由してネットに接続することで高いレベルでユーザーの個人情報を秘匿することが可能になることから、ネットの中立性を維持する上で重要なシステムであるとする意見がある一方で、機密情報の漏洩といった重大犯罪の温床になっているとの指摘もあり、その存在については議論が分かれています。
今回、Torプロジェクトの責任者を務めるRoger Dingledine氏は、公式ブログの中で「FBIがTorネットをクラックに成功し、その技術開発のためにカーネギーメロン大学の研究者に少なくとも100万ドルを支払っている」と主張。「このような行為は倫理に基づく研究のための信頼と基本ガイドラインを侵害する行為であり、無関係のユーザーを危険にさらすものだ」とコメントしています。
Torは昨年にも匿名解除を目的とした攻撃を受けており(※1)、その際に関与が疑われたカーネギーメロン大学の研究者が今回の攻撃にも関係しているとDingledine氏は指摘。これに対してカーネギーメロン大学のスポークスマンであるEd Desautels氏は、今回の告発について直接的な否定はしていないものの、米Wiredに対して「具体的な根拠を知りたい。金銭のやり取りについては把握していない」と語っています。
大学の研究者がが国家機関の個人情報特定に協力していたとすると大きな問題になりそうですが、現時点ではTor側も具体的な根拠を開示していないため、今後の展開が気になるところです。
なお、2015年時点でのTorネット利用者は全世界でおよそ200万人とされています。
[Wired via THE VERGE] [Forbes] [arstechnica]
(※1)Torでユーザーの匿名解除を試みる攻撃が発覚(2014年7月31日付ITmediaエンタープライズ)
ソーシャルシェア
著者
企業の研究所でR&D業務に携わっておりましたが、2013年4月をもって退職し、当サイトの専属となりました。ソース明示とポイントを押さえた解説を心がけてゆきたいと思います。
コメント投稿