【艦これ】キスから始まる提督業!【ラノベSS】【前半】
艦これ地の文・長編SS(ラノベ風)です、本編は>>2から。
1巻に当たる今回のメインヒロインは瑞鶴。
*元ネタにしているラノベがあります、興味のある方は推理してください。
ただし物語の骨組みに参考にしているだけですので、おそらく当てられる方はいないと思います。ラノベ玄人でないと多分知らない作品じゃないかなあ。
一応、後書きの最後でネタバラシ紹介はする予定です。
過去作 メインはシリアス風味のこれら
【艦これ】天龍「オレと、提督の恋」
【艦これ】神通「私と提督の、恋」
【プロローグ】 突然の・・・
唇に温かい感触が広がっていく。
あまりのことに僕は動くこともできずに、その熱を味わっていた。
「んっ・・・・・・」
それは僕を押し倒した少女も同様で、僕と彼女は互いの唇を押し付けたまま、まるで世界が止まったかのように硬直していた。
目の前の少女の気の強そうなつり目は今、驚きのあまり大きく見開かれていて。
整った顔立ちが徐々に紅く染まっていくのを見て、夕焼けみたいだなあなんて。
その時の僕は、そんなのんきな事を考えすらした。
いや、あまりのことに思考がぶっ飛んでしまっただけかもしれないけれど。
世界が再び動き出すのに、いったいどれくらいの時間がかかっただろうか?
「・・・・・・・・・っ」
「・・・・・・・・・っはぁ」
唇と唇が離れる時に漏れる吐息がもどかしい。
密着した身体はそのままに、お互いの顔だけは認識できるくらいに距離が空いた。
僕も彼女と同じくらい顔を真っ赤にしているんだろうなあなんて思いながら。
口に手を当てて呆然とこちらを見てくる彼女を見てすっごく可愛い女の子だな、とこんな時ですら思ってしまう。
唇に、甘くて柔らかい余韻がまだ残ってる。
でも、まだ僕は信じることができないんだ。
「あの、今・・・・その・・・」
「な、な、な・・・・・・・・・」
目の前の美少女と僕が、キスしてしまっただなんて!
「あ、あの?」
「何すんのよ、バカ~~~~~っ!」
「えええ!?」
でも、そんな幻想的な思いはすぐにどこかへ飛んでいってしまった。
なぜなら・・・・・・。
シャラン。
目の前で不思議な音がしたかと思うと、いつの間にか少女の手には弓が握られていて。
「目標、正面の痴漢・・・やっちゃって!」
あろう事か、番えた矢を僕に向かって放ってしまったのだ!!
「ウソだろっ!」
そして。
飛んでくる矢を避けようと何とか動こうとする僕に、またしても不思議な事が起こる。
少女が放った矢が飛行機――いや、これは爆撃機か――に姿を変えて、こちらに突っ込んできたのだ!
「えっ?」
三度目の驚愕、突然視界が変わる。
爆撃機と少女を見ていたはずの僕の視点は今や。
執務室の廊下・・・その天井から僕らを見下ろしている映像へと切り替わっていた。
これは一体・・・・・・?
まるで世界を俯瞰して覗いているかのように・・・。
矢を放った少女、艦載機・・・そしてそれを間近でぼぅっとしてる僕の間抜け面が見える。
・・・・・・って、ぼぅっとしている場合じゃない!
ブンブンと首を振ると、さっき見たのは夢か幻か・・・元通りの視界が広がっていた。
もう爆撃機が目と鼻の先・・・一刻も早く逃げないと七面鳥の丸焼きだ。
我に帰った僕は咄嗟に向いていた方向――つまりは少女が出てきた執務室の方へと――駆け出す。
「あ、待ちなさい!この痴漢!変態!」
「痴漢でも変態でもないってば!」
狙われている僕が室内へ入るということ。
それがどういう効果をもたらすかなんて考えもしなかった。
「騒がしいわね、まったくこれだから」
「瑞鶴・・・どうしたの?」
「あら・・・あなたは?」
のんびりとこちらを見やる三人の少女に、無我夢中で叫ぶのが精一杯だった。
「みんな、伏せてーーー!」
「「「えっ?」」」
「逃がさないんだから!」
ブウウウウウウン、という音とともに爆撃機が室内へ入ってくるのを見て。
部屋の住人たちは、僕が叫んだ意味に気がついたようだ。
「なっ!?」
「瑞鶴ったら何してるの!?」
「とにかくみんな伏せて!」
僕たちがかろうじて床に這いつくばり、物陰に隠れた瞬間。
爆撃機から放たれた爆弾が、丁度部屋の中央に落ちてきて。
ドカン、と。
「うわあああ!?」
これから僕が使うはずだった執務室をまるごと吹き飛ばした。
ああ、どうしてこうなったんだろう。悲鳴を上げながら僕は思うんだ。
ケチがついたのはそう、ついこの前・・・士官学校を卒業してからだ。
第一章 最悪な出会い
15歳で士官学校を卒業するのは、史上最年少記録だそうだ。
おまけに入学以来ずっと主席・・・これは行ける!出世街道まっしぐらだ!!
「横須賀鎮守府提督に任ず」
そんな僕の夢を打ち壊したのは、士官学校の卒業式で放たれたこの言葉。
居並ぶ同窓生たちと比べ頭二つ三つ低い僕が、代表として壇に上げられたとき。
主席卒業の僕は、どんなエリート鎮守府に配属となるか・・・期待に胸をふくらませていた。
佐世保?舞鶴?呉?それとも・・・・・・?
そんな風に多少舞い上がってしまっても、仕方のないことだと思って欲しい。
何しろ古の名将、大軍師たち・・・僕の憧れる鄧禹や諸葛亮ですらその活躍は20代に入ってから。
それを・・・15歳で!
着任したらどんな作戦を立案しようか?
どんな体制を打ち出していこうか?
期待に胸が膨らむ。
「士官学校主席卒業者・・・・・・君を提督に任ずる」
卒業式の壇上で僕の心は跳ね上がった。
いきなり将校たちのトップ・・・提督だって!?
それはつまりどこかの鎮守府をまるごと一つ任されるということ。
地に臥していた龍が天高く羽ばたこうとするその翼を―――
「そう、君を横須賀鎮守府”特別”提督に任ず」
続く言葉にへし折られた。いきなりの・・・左遷の宣言。
横須賀鎮守府って・・・例の、”期待はずれの兵器たち”の鎮守府じゃないか!
そんな僕をさらに驚かせたのが、周りの仲間――だと思ってた人たちの声。
みんな僕よりもはるかに歳上の・・・正規の年齢で卒業していく同期たち。
「ざまあみやがれ」
「調子に乗ってたからだ」
「頭だけ良くてもな・・・最年少ってことで贔屓されてただけさ」
己を切磋し、国のため、人々を守るために巣立つ若鶏の台詞とは思えなかった。
僕はただただ、一生懸命やってただけなのに、何故こうなってしまったのか・・・。
「僕チャンは女と仲良くやってるのがお似合いなんじゃないの?」
背後からドっと笑い声がする。
数々の嫉妬から生まれた嫌味を背にしながら・・・でもただ、腐っててもしょうがない。
せめて新天地で頑張ろうと、僕は赴任先の鎮守府へと一人旅立ったのだ。
緊張する・・・僕は横須賀鎮守府の中、執務室のドアの前に立って呼吸を整える。
提督に任命されたから、今や僕はここの最高責任者だ・・・形だけは。
これから部下にすることになる女の子たち・・・いや、“艦娘”たち。
僕ら軍人が直接戦う他の鎮守府と違い、ここは彼女たちが日々出撃している。
彼女たちの存在が知られ、共通の敵である深海棲艦と戦うようになってから、日は浅い。
当時は様々な憶測、意見が飛び交った。
これで戦争は買ったも同然だとか言う風潮も、しばらくはあった。
「さて、どんな娘たちがいるんだろう」
その、艦娘とは。
曰く、人類の希望。
曰く、役立たずのスクラップ。
今現在どちらの説が有力かは・・・僕みたいな新米を着任させたことでわかりきっている。
”期待はずれの兵器たち”といった言われようはあまりにも有名だし。
不安で胸がいっぱいになりながら・・・それでも執務室へ入ろうと一歩踏みだすと。
複数の女の子の言い争う声が聞こえてくる。
あれれ、何だか部屋の中が騒がしいな・・・誰かいるみたい?。
「ふん、だ。私、演習に行ってきます!」
むくれた少女の声とともに、ドタドタという乱暴な足音・・・。
その騒がしさに気を取られていると。
ガチャリ。
目の前のドアが勢いよく開いて・・・。
「うわっ!?」
「きゃっ」
僕の目線よりもほんの少し上から女の子が降ってきて。
軍人だというのに、情けなくも僕は女の子を支えきれず押し倒されてしまうのだった。
まったく、なんでこんなことになったのかしら。
ドッドッドッドッド。
痛いくらいに脈打つ心臓を意識して、唇にそっと手を当てて。
少年と出会う前の出来事に、空母の少女は思いを巡らす。
それは瑞鶴が執務室を爆破する、ほんの少し前・・・。
「冗談じゃないわ、何様のつもりよ!」
執務室―提督が着任する前なので、艦娘たちの会議室として使われてる―部屋に、空母瑞鶴の叫び声が響く。
「瑞鶴・・・あまり大きな声を出しちゃいけないわ」
「翔鶴ねえは黙ってて、私たち五航戦がなめられてるのよ!?」
そんな二人を冷ややかに見つめるのは、翔鶴、瑞鶴と呼ばれた二人よりもやや歳上に見える少女。
白い道義に青袴、瑞鶴を睨む目と整った顔立ちが・・・クールと表現するにはいささか鋭すぎる印象を与えている―。
「当たり前です・・・一航戦である私と赤城さんを、あなたたちと一緒に語らないで」
「海域の攻略が難しいって話をしただけじゃない!」
激光した瑞鶴は、姉艦である翔鶴の静止も聞かず再び反論する。
「あなたの実力ではそうね、難しいでしょう」
「何よ、加賀さんだって結局攻略できてないんだから、一緒じゃない!」
今度は加賀と呼ばれた、先ほどの青袴の少女が声を荒げる番だった。
形の良い眉をピ