猫「あーあ、どうすんの。死んじゃったじゃんその人」
- 2015年11月15日 22:40
- SS、神話・民話・不思議な話
- 0 コメント
- Tweet
猫「おい男。餌を寄越せ」
男「そんな高圧的な猫にあげる餌なんてありません」
猫「餌がほしいにゃ~ん」
男「キモい狩ってこい」
猫「なぜ目の前に餌を提供してくれる人間がいるのに狩る必要がある?」
男「猫だろ、狩れるだろ。狩ってこいよ」
猫「飼い猫にそんなスキルはない。それに私は本来悪魔であって、猫は男と対話する仮の姿だ」
男「面倒臭いんで母さんとも話せるようになって」
猫「私は男に憑いた悪魔だから、男以外とは話せない」
男「じゃあもう母さんに憑けよ」
猫「実の母親に悪魔を憑けるとか悪魔だな男は」
男「だってお前この家に来てから5年間、ただ俺と話せるだけで何も悪魔らしいことしてないじゃん。せいぜい俺のくらった損害なんて、お前が家に来てから数日間、猫と話す痛い人みたいな目で家族に見られたことくらいだよ」
猫「私が原因かはともかく、痛いのは確かだな」
男「餌やんねぇぞ」
猫「許してにゃん」
男「…………キモいから」
男「しゃあねぇなぁ……」
猫「あ、カリカリは駄目だ。肉を寄越せ」
男「何でしっかり肉食なんだよ。カリカリも初めはうまいうまい食ってたじゃんか」
猫「お前はうまいからといって、毎日同じものが食えるのか?」
男「食えるけど」
猫「……魂寄越せなんかムカつく」
男「なんでだよ」
猫「もういい……カリカリで我慢してやる」
男「だから上から目線やめろよ、餌やんねぇぞ」
猫「はいはい、にゃーにゃー」
男「猫に流された……」
ガサガサッ
男「ほれ、カリカリ」
猫「御苦労」カリカリ
男「……お前さ、魂食えるの?」
猫「どうした急に」
男「いや、なんか魂寄越せとか言ってたから」
猫「あー、まぁ少なくとも、男が生きている内に魂を食うことはない」カリカリ
男「……ふぅん、よくわかんね」
猫「よくわからなくても構わない、私が理解していればそれで問題ない」カリカリ
男「悪魔に憑かれてるのは俺なのに?」
猫「その内説明するさ」カリカリ
男「…………そうかい」
猫「ゲプッ……食った食った。さて男、布団を用意しろ。私は寝る」
男「……その辺で寝ろ猫風情が」
猫「仕方ないなぁ……」
男「さてと……学校行かなきゃ……」
猫「……む、今日は随分と早くに出るのだな」
男「先生の手伝いを頼まれてね。学年全員分のノートを整理しろってさ」
猫「ふむ……雑用か」
男「運悪く日直が当たったんだ」
猫「自らのノートの整理を怠る人間が、他人のノートの整理なんて出来るのか?」
男「俺がいつも出来てない整理と、今日の整理は違うんだよ」
猫「ほう、不思議なものだな」
平日の昼間に思いつきで投下したけど、時間ないや
◆学校◆
先生「お、来たか」
男「おはようございます」
先生「なんだ、眠そうだな。夜更かしでもしたのか?」
男「いえ……いつもこの時間は起きてますけど、普段は家にいるのでリズム的にまだ辛いなと」
先生「たまに早く来る程度でそう言うな。俺なんか毎日この時間だだ」
男「……教師にはなりたくないですね」
先生「起床時間で仕事を決めるのかお前は」
男「食って寝てお金が欲しいです。ニートじゃなくて、食べて寝るのが仕事なんです」
先生「……はぁ、もういい行くぞ」
◆教官室◆
男「クラスごとにノートをまとめれば良いんですか?」
先生「あぁ。出席番号も、上から一二三四って順番通りになるようにな」
男「了解です」
◇◆◇◆◇◆◇◆
コンコン、ガラガラ(ドア)
先生「お、来たか」
女「どうも、おはようございます」
男「よー、遅刻じゃね?」
女「女の子には色々あるの」
男「朝から色々ってなんだよ、どうせ寝坊だろ?」
先生「男、口じゃなく手を動かせ。それと女、遅刻しても処理するノートの量は変わらないからな。急げよ」
女「えー……わかりました……」
男「よし、終わった」
女「うっそ、はや」
男「遅刻してきた奴とは違うんだよ、まぁ頑張れ。俺は先教室行くわ」
先生「お疲れ男。黒板綺麗にしといてくれ」
男「…………えぇ……」
女「頑張れ男! 速く終った人は違うねぇ!」
先生「うるさい手を動かせ」
男「……はぁ」
◆男の家◆
猫「学校、どうだった?」
男「まぁいつも通り、かな」
猫「なんだ、面白くない」
男「面白い事なんてないよ、大して」
猫「そういうものなのか、学校とは」
男「あぁ、今日あった事なんて、朝から疲れた事くらいだ」
猫「男は疲れたら、不幸なのか?」
男「ん? あぁ、不幸だね」
猫「それはなんとも、面白いではないか」
男「……悪魔め」
猫「さて男、宴の時間だ。肉を用意しろ」
男「朝も無いって言ったろ。カリカリで我慢しろって」
猫「しかしだ男、猫はライオンと同じ種族だと言うではないか。ならば、肉を食べさせるのは本来の姿であって、なんら不思議なことは無いと思うのだ」
男「不思議じゃなくても、不気味だよ。少なくとも今の日本ではね」
猫「日本は不便だな」
男「人間だけには便利なんだよ」
猫「ならば、魚ならどうだ。日本とは猫が魚を咥える国だった筈だろう?」
男「まぁ、確かに魚は与える傾向にあるだろうけど、生憎、今家には魚はないんだ。諦めろ」
猫「……仕方ない、今日も今日とてカリカリか」
男「カリカリを楽しめ」
男「……しかし、月曜日ってのは辛いもんだな」
猫「金曜は楽しそうなのに、なぜ月曜は辛いのだ?」
男「学校が始まるからだよ、面倒臭いだろ?」
猫「そうか? どうせ行くと分かっているのなら、面倒臭いも何もないだろう」
男「どうせ行くと分かっているから、面倒臭いんだよ」
猫「学校は行くべき場所だろう?」
男「行かなきゃいけない行きたくない場所だ。もっとも、高校は本来行かなくても構わないんだけどね」
猫「男は寿命というのを知っているか?」
男「なんだよ急に。知ってるよ寿命くらい」
猫「寿命があるのを知っているのに、なぜ人間は多くの時間を勉学に使うのか、私には理解できない」
男「……俺にも理解できないよそんなの」
猫「人間の平均寿命が八十歳だとして、大体学生の期間が、大学を含めて二十年程だろう?」
男「まぁ……そうだな」
猫「四分の一も損しているではないか」
男「……でも、勉強しっぱなしってこともないし、言うほど時間を無駄にしているようには感じないよ」
猫「……人間は自由ではないな。その人間に縛られている私もまた、自由ではないのかもしれない」
男「はいはい、カリカリ出すぞ」
男「お前は悪魔だろ。悪魔は自由じゃないのか?」ガサガサ
猫「魂を食わねば死んでしまうし、悪魔にも寿命がある。それに、人間程の縛りではないにせよ、悪魔の世界にもルールはある」
男「ふぅん……、ほれ、食っていいぞ」
猫「まぁ、今は人間より縛られている気もするがな。人間界に来るときは、何かしらの生き物の形をしなければならないんだ」カリカリ
男「なんで?」
猫「ルールだからだ。仕方ない。お前が欲情しても女を襲わないのと同じ事だ」
男「その例えは何か嫌だ」
男「月曜日は観る番組がない……」
猫「何を言うか。月曜日は豊富なラインナップだろうに」
男「お前が好きなだけだろ。何観る?」
猫「この時間ならまる見えだな。決まっている」
男「はいはい……」カチッ
ガチャッ(玄関)
母「ただいまー」
男「あ、お帰り」
母「ご飯どうした? またコンビニ?」
男「いや、適当に作ったよ」
母「そう。……あら、餌あげてくれたの」
男「……ん、あーまぁ、欲しそうにしてたから」
母「そ、良かったねー猫ちゃん。男とお話ししたのかにゃぁ?」
男「はいはい、もういいよ俺がそいつと話せるってのは」
猫「みゃー」
母「ほら、なんて言ってるか分かる?」
男「あーもういいって、分かんないから」
母「まぁそれはいいとして、お風呂沸いてる?」
男「あぁ、沸かしてないや」
母「じゃあ沸かしてきて。母さんジャンプ買ってくるから」
男「帰りがけに買ってきなよそんなの……」
男「風呂の栓閉めて……と」
猫「そういえば男、私はここ数ヶ月間風呂に入っていない」
男「ん、それで?」ピッ ジョボボボ
猫「汚い」
男「いいよ別に、気にならないし」
猫「まるでゴミのようだ」
男「自分でゴミとか言いますか」
猫「後で私を風呂に入れろ」
男「猫って風呂好きだっけ?」
猫「知らん、私は悪魔だからな」
男「……そうかい」
ピピッ ピピッ
男「風呂沸いたよ母さん」
母「待って、こち亀読んだら」
男「……はいはい」
猫「漫画か。面白いのか?」
男「……」
猫「少なくとも金を払ってまで読む価値があるのかは、甚だ疑問だ」
男「……それでも人間は買うんだよ」
母「ん、何か言った?」
男「いや、別に何も」
母「そ、じゃあ読み終わったし入ってきますかな」
男「いってら」
◆翌朝・家◆
猫「おい、男」
男「ん……なんだよ」
猫「私の朝飯を早く用意しろ」
男「あ、……忘れてた」
猫「……眠そうだな」
男「んー、ゲームしてたから」ガサガサ
猫「漫画にしても、ゲームにしても、人間は不思議なものに金を使うな」
男「人間になれば分かるよ……ほれ、カリカリ」
猫「人間にはなりたくないものだな……」カリカリ
猫「お金を払ってまでしたいこと……」
男「どうした?」
猫「いや、もし私が金銭の取引を行う生物なら、何を買うだろうかと」
男「あぁ……、お前なら肉とかじゃないのか?」
猫「……食物は生き延びる為のものだ。除外する」
男「じゃあ魂とか?」
猫「……食物は生き延びる為のものだ。除外する」
男「あぁ……そういうくくりなんだ……」