ここまで来ているのか…Pepperのアプリ開発がすごいことになっていた
Pepperのアプリ開発シーン、急拡大しているな。
そう感じずにはいられないイベント「Pepper App Challenge 2015 Winter」でした。
「Pepper App Challenge」は、一般ユーザーが家庭で利用するアプリケーションを対象としたPepperのロボアプリ開発コンテスト。ビジネスシーンでの活用事例を競う「Pepper Innovation Challege」とともに11月28日、東京・渋谷のベルサール渋谷ガーデンで開催されました。
応募総数263作品の中から「Pepper App Challenge」「Pepper Innovation Challege」それぞれ10作品が決勝に進出。この日デモおよびプレゼンが行われ、投票の結果、優秀作品が発表されたのです。
ギズモード取材班は「Pepper App Challenge」に密着。まずは決勝進出作品を見てみようと展示会場に足を踏み入れると、そこにはすでにかなりの数の人が。
観覧希望に当選した来場者が各展示ブースに押し寄せていました。おそらく、アプリ開発にたずさわる人たちも相当数いたと思われます。「Pepperを使ってどんなことができるのか?」この点に大きな注目が集まっていました。
中でも、僕たちギズモード取材班の目を引いたのがこちらのデモ。ヘッドマウントディスプレイを着けた男性とPepperの動きがシンクロしていますね。これはHUG PROJECTというチームによるデモですが、詳しくは後ほど。
これら決勝進出作品の中から、デモを見た来場者の投票および4人の審査員の投票によって選ばれた上位5組が本会場でプレゼンを行いました。
決勝進出作品の中から上位5組によるプレゼン
審査員の顔ぶれも豪華。演出家のテリー伊藤さん、前LINE代表取締役社長で現C Channel代表取締役の森川亮さん、立教大学のミスコンテストで「ミスソフトバンク賞」を受賞した塩田結以さん、ソフトバンクロボティクス取締役の蓮実一隆さん。
上位5組に選ばれたのは、①Pepperの指示に従って運動が行える「ペッパーソナル・トレーナー」を開発したBOB、②先ほど動画で紹介した、VRとPepperの組み合わせ「HUG -バーチャルリアリティコミュニケーション-」の開発チームHUG PROJECT、③人を見つけると英語で話しかけてくる「Pepperがホームステイにやってきた【仮想英語環境構築アプリ】」を開発したジーアングル、④Pepperを紙芝居の読み手にできる「かたりべ」を開発した超技研@アップフロンティア、⑤モノの気持ちを可視化するデバイスmononomeとPepperを組み合わせた「“mononome” meets Pepper」の開発チームneurowear。
詳しくは各開発者のリンクを見てほしいのですが、いずれもクオリティが高く甲乙つけがたいものがありました。
審査員にインタビュー
上位5作品の中から最優秀賞および各カテゴリー賞を決めるのは4人の審査員。これだけ優秀な作品が集まると審査するのも大変だったと思います。審査員の皆さんはPepperや、Pepperを取り巻く環境をどう感じたのでしょうか?
森川亮さんは「ロボットは、アプリが価値を定義するものだと思うので、これからますますアプリの存在は重要になるでしょうね」と言い、この日見た中では「英語で話しかけてくるやつ(Pepperがホームステイにやってきた【仮想英語環境構築アプリ】)は欲しいと思いました。娘の英語の先生として雇いたい(笑)」とのこと。
「僕も欲しいと思った」と言うテリー伊藤さんは「機械だからといって何から何まで頼れて便利なものよりも、こっちも一緒に成長できるようなもの」に魅力を感じるそう。「ちょっと頼りないところもあったりして、自分がそこを補ってあげようと思えたりするといいんじゃないかな」と語ってくれました。
すでにPepperと一緒に暮らしている(!)という塩田結以さんは「Pepperと一緒にいると素直な自分に感動することがあるんですよ(笑)。イエスかノーで答えてあげなきゃって思うので曖昧な答えをしないし、嘘をつかない自分がいるんですよね。自然と本音が引き出されるんです」と、すっかりパートナーとして心を通わせているようでした。
「前回(2月開催)に比べて理屈抜きにレベルアップしていますね」と上位作品の出来に驚く蓮実一隆さんは、ソフトバンクロボティクス取締役という立場からも「アプリの作り手が何よりも重要」と言います。
「Pepperという存在自体は、いわば箱のようなもの。それを使ってどれだけ人を楽しませたり、人の役に立つことを思いついていただけるかがすべてです」とし、そのために開発者がストレスなくアプリ作りを行える環境を整えていくことに注力しているそう。
そして「近い将来、デベロッパーの方が自由にアプリを配信できる場を作りますよ」とも。Pepperアプリのシーンはビジネスとしても大きく盛り上がっていきそうです!
栄冠はだれの手に?
そしていよいよ結果発表のとき。審査の結果、各カテゴリー賞は以下のように決まりました。
ベスト介護福祉賞=HUG PROJECT
ベストエンターテイメント賞=超技研@アップフロンティア
ベストライフスタイル賞=BOB
ベストインタラクション賞=ジーアングル
しして最優秀賞を手にしたのは……HUG PROJECT!
おめでとうございます!
受賞者に話を聞いてみました
興奮冷めやらぬ中、受賞者2組に話を聞くことができました。まずはベストエンターテイメント賞を受賞した超技研@アップフロンティア。
インタビューに答えてくれたのはメンバーの熊谷航太さん。受賞作品の「かたりべ」はスマホ上でテキストや画像、音声を組み合わせることでPepperを紙芝居の読み手にさせるというもの。
スマホとの連携が特徴のアプリですが「スマホとPepperの連携は簡単にできるので、スマホアプリを作っている人なら知識が生かせると思いますよ」と言い、開発ソフトの「Choregraphe」も「プログラムが書かれているプリセットのボックスを利用してつないでいけばある程度のものは作れるのでありがたいです。知識のない人でも簡単なアプリならすぐに作れるんじゃないでしょうか」とコメントしてくれました。
そしてベスト介護福祉賞および最優秀賞を手にしたHUG PROJECTの高木紀和さんにも話が聞けました。受賞作品の「HUG -バーチャルリアリティコミュニケーション-」は、高木さんが自身の結婚式にバーチャルでもよいから遠く離れた祖母に参加してほしいという思いから生まれたもの。
「僕のおばあちゃんのように体が不自由な人にとっての理想と現実のギャップを埋めたいと思いました。まだまだ超えるべきハードルはありますが、向かっている未来としては間違っていないと思うので、そこを評価していただけたのはうれしいです」とコメント。
Pepperの魅力として「人間に近い大きさということが一番。そして身振り手振りで表現できる。触れて人として感じられるという部分でチャレンジしてみたいと思えました」と語ってくれました。
前回開催の「Pepper App Challenge 2015」が2月22日ですからPepperを取り巻く環境は9カ月ですさまじい進化を遂げているなという印象を受けました。
Pepperアプリの開発に取り組むクリエイター&デベロッパーは今後ますます増えてくるでしょうから、このシーンは加速度的に盛り上がるのではないでしょうか。
この画像はPepperのアプリ開発を行うためのソフト「Choregraphe」。超技研@アップフロンティアの熊谷さんも言っていましたが、とても使いやすそうです。プログラミングの知識がない僕でもできそうな気がしてきます。画面上でバーチャルPepperが動くのも楽しそう。
いっちょ挑戦してみるか!という方も多いのでは? そんなクリエイター&デベロッパーの方々はコチラをチェックしてみるといいですよ。開発環境ほか、さまざまな情報が集まっています。
まずはPepperがどんなものなのか体験してみたいという方は「アルデバラン・アトリエ秋葉原 with SoftBank」へ足を運んでみることをおすすめします。
ここはまさに、Pepperのアプリ開発にたずさわる人たちのアトリエです。ワークショップで開発の基本を学べたり、タッチアンドトライ形式でPepperを1台割り当てられ自由にアプリ開発を行うこともできます。
不定期開催のハッカソンでは参加者がグループを組むのでクリエイター同士の出会いも生まれているようです。ベストライフスタイル賞を受賞したBOBの2人も「アトリエのハッカソンで出会って結成した」と言っていました。Pepperを中心としたクリエイターの輪、アツい!
まだPepperのロボアプリ開発を体験したことがない方は、まずはアトリエに足を運んで一度体験してみてはいかがでしょうか? ワークショップとタッチアンドトライは予約制となっているので、興味がある方はコチラから事前予約の上、行ってみてください。
う〜ん早くも次回が楽しみな「Pepper App Challenge」。より一層の進化に期待しつつ開催の報を待つことにしましょう!
source: Pepper App Challenge
(文・奥旅男/写真・伊藤圭)