スタナー松井 - かっこいい,アクション,インタビュー,映画 07:00 PM
映画『007 スペクター』出演のデイヴ・バウティスタにインタビュー
「ボンド、ジェームズ・ボンド」でおなじみの英国スパイアクション映画シリーズの最新作『007 スペクター』。
今回は本作でジェームズ・ボンドを苦しめることとなる悪役ミスター・ヒンクスを演じる、デイヴ・バウティスタ氏にお話を伺いました。
映画ファンには『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のドラックス、そしてプロレスのファンには元WWE王者の野獣・バティスタとしておなじみの彼に、今回の役柄を演じて楽しかった点、プロレスと映画の現場の違いなどについて語っていただきました。
似たキャリアを持つあの人が目標?
――ミスター・ヒンクスの役が決まった時のお気持ちはいかがでしたか?
デイヴ・バウティスタ(以降、デイヴ):半分は天に昇るような気持ちで、半分は信じられなかった。全然寝ていなかったのもあってね(笑)。
オーディションに参加した後に1か月ほど結果を待っていたら、サムが僕の演技を気に入ったから会いに来てほしいと言われたんだ。その時に初めて役を手にしたと知った。それで飛行機に乗ってスタジオへ向かったんだけど、信じられない気持ちだったよ。
サムとは映画やキャラクターについてかなり長いこと話をして、最後に「誤解がないように確認したいのですが、僕は本当にこの役を演じたいです」と伝えたら、サムは「じゃあ誤解はない、私は本当にこの役をあなたに演じてほしいんだ」と言ってくれた。クレイジーで不思議な気分だったよ。
――『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』ではヒーローを演じたのに対し、本作では悪役を演じていますが、今回のミスター・ヒンクス役は演じていてどういったところが楽しかったでしょうか?
デイヴ:面白かったのは、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』では傷ついたヒーローを演じたのに対して、『007 スペクター』では何一つ気にしない悪役を演じたことだね。本当に全く違う役柄なんだ。
ミスター・ヒンクスの一番面白いところ、そして演じていて楽しかったところは、彼が自分の価値観でしか物事を見ていないところだ。だから自分も演じている時は、そういう価値観で物事を見るようにした。
サムの言うミスター・ヒンクスは、この世のことを何一つ気にしていない男なんだ。なぜなら彼は自分が世界一の悪人で、その他の全てのものは自分よりも下の存在だと思っている。だから彼には恐れたり、心配したりすることがない。全くないんだ。
ヒンクスは世界のことを気にしていないから、自分のすること全てを楽しんでいる。僕にですら、そういった人間はすごく怖い。ルールに従わない、世界の何にも気を配らない、全てを下に見る、怖い者知らずだからね。それは恐ろしいことだよ。
――撮影前にサム・メンデス監督から何かアドバイスはあったのでしょうか?
デイヴ:特には無かった。サムが素晴らしいのは、「これとこれとこれをしろ」と言わないところだ。彼はいつも「調子はどう? 今日はこのシーンを撮る」、「さあ、撮ろうか」と撮影を始めるんだ。
サムは何かを修正したい場合、別の誰かにそれを言わせたり、怒鳴ったりしない。顔を見て直接話してくれる、とても穏やかで温かく、思いやりのある人だ。いつも一人一人の顔を見て、穏やかに話すんだよ。
もちろん、彼は時にすごく正確さを要求してくるけど、とても穏やかなやり方でそうするんだ。人をとても落ち着かせてくれる人だよ。
――ドラックスとミスター・ヒンクスの一番の違いはどういったところでしょうか?
デイヴ:まず、僕はドラックスのことをスーパーヒーローだとはあまり思っていない。もちろん、彼は並外れた能力を持っていて、間違いなくどんな人間よりも強い。2つの巨大なナイフを持っているのもあって、恐ろしく見えるよね。
一方のヒンクスはもっとパワータイプで、常にレーシングカーのようなキャラクターだ。賢くて、素早く、狡猾で、止められない。論理的にどんな手も尽くす男だ。ドラックスは頭ではなくて心で戦っているのに対して、ヒンクスはあまり心で戦っていない。そこが一番違うところだろうね。
――演じるキャラクターの見た目や性格に応じてトレーニングのやり方を変えることはあるのでしょうか?
デイヴ:いや、それはしていないね。正直に言うと、僕は長いこと自分が演技に対して本気だと周りに証明しようとしていたから、レスラーの頃に行っていたバイクやボクシングのトレーニングをやめていたんだ。
僕の見た目は体毛を剃った馬鹿なゴリラみたいだから(笑)、そのイメージと戦う必要があった。演技に対して真剣なんだと知ってもらいたかったんだ。最近では、もうその点は十分証明できたんじゃないかと思っている。僕は俳優として雇われたんだと証明できた。シャツを脱ぐ必要がない役をやることでね(笑)。もう胸筋をみせびらかして歩く、無敵の男を演じる必要はなくなった。
だから、今は好きだったトレーニングを再開して、より強い負荷をかけたトレーニングもやっている。僕はどうやっても僕だし、これからも僕自身であり続けるからね。それがウェイトトレーニングを再開した理由だよ。
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』に出演したときは、正直見た目を変える努力はあまりしなかったけど、本作の役柄については努力した。より特別な存在になりたかったからね。今後はよりヒーローっぽく見えるようにもしていきたい。
そういうこともあって、トレーニングの方法は少しだけ変えたけど、特定の役柄のためにしたというわけではない。今はもっと自分自身であろうと思っているし、もう他の誰かになるために自分自身を変えたりはしない。この見た目のままでやっていきたいんだ。
もっとサイズアップして、ドウェイン・ジョンソンのようなやり方でやっていきたい。より強靭な、自分自身のままでいたい。もう俳優に対して真剣だということはわかってもらえたはずだから、今後は強靭な俳優を目指していくよ。
――WWEではベビーフェイス/ヒールの両方で活躍しましたが、その経験の中で今回のヒンクスを演じるのに役立ったことはありましたか?
デイヴ:ないと思うよ(笑)。レスリングと演技の違いを説明するのは難しいけど、2つは全く異なるものだ。リンゴとオレンジくらい違いがある。
レスリングはとても大きく開かれた環境で、ライブで観客を楽しませるもの。それはアリーナの人々だけが見るわけではなくて、たくさんのカメラも回っている。とても開かれた環境で、即興のパフォーマンスを行うから、ある意味で余裕がたくさんあるんだ。そして、もし物事が完璧に進まなくても許されている部分がある。
一方の映画は小さく、閉ざされた環境の中で、より正確にやらなければいけない。レスリングはライブだから第2テイクというのはありえないけど、映画では第2テイク、第3テイク、それどころか第20テイクまでやることもある。完璧にしなければいけないからね。良い監督と仕事をするときには特にそうだ。
そして、サム・メンデスのような監督と仕事をすると、完璧なテイクが撮れるまでやらなければならない。たくさんのテイクを撮れば、彼はよりたくさんのテイクの中から選ぶことができるからね。映画はレスリングよりも正確で、より閉ざされているんだ。
――ダニエル・クレイグとの撮影が多かったと思いますが、何か印象的なエピソードはあるでしょうか?
デイヴ:殴り合ったこと以外にかい?(笑)
ダニエルはたくましい男だ。そして、やること全てに対して真剣な男だよ。後、これは前から聞いていた通り、サム・メンデスはスタントマンを使うのが好きではない。だから、僕たちはフィジカルなアクションをやる必要があった。
ダニエルも怪我をしたし、僕も怪我をしたし、皆怪我をした。セットも壊れたしね(笑)。色々なことがあったよ。素晴らしいことを成し遂げるためには、持っている全てを出し切らなければならない。ダニエルは素晴らしいよ。そして、僕らはとことんぶん殴り合った。
素晴らしかったのは、僕たちの間に絆ができたことだ。スタントのためのトレーニングも一緒に取り組んだし、戦闘のシーンの練習でも長い時間を一緒に過ごしたからね。
スタント・チームと共にトレーニングをして、チームとして鍛え、お互いを知っていったんだ。共に鍛え、汗を流し、努力をした。同じ努力をすることで、お互いを信頼し、まとまっていった。
ダニエルも、僕がただお金をもらうためにそこにいたわけじゃないことは分かってくれていたはずさ。僕はベストを尽くしたかった。僕はチームプレイヤーで、ただ良い仕事がしたかった。それが同僚たちと信頼を育む方法だと思っているからね。
――クリストフ・ヴァルツの印象はいかがでしたか?
デイヴ:彼を一言で表現するなら、「魅惑的」だ。彼は人の感覚を麻痺させてしまう。一緒に撮影した重要なシーンがあったんだけど、彼は何一つ特別なことはしていなくて、ただ彼のセリフを話しているだけなのに、話し方、動き、そして何かで人を魅了させるんだ。
人間としては、とても面白い人だよ。普段はとても真面目くさった顔をしているから、彼がふざけているとき僕にはそれが真剣なのかふざけているのか、見分けがつかなかった(笑)。ユーモラスで、とても温かく、気持ちの良い人だよ。
――ヒンクスを含む、本作のボンド以外の各キャラクターの印象はいかがでしょうか?
デイヴ:全体的な話をすると、サムは前作の『スカイフォール』に特別な要素を付け加えた。ある種懐かしい雰囲気を、新しい、モダンな方法で取り入れたんだ。
過去の007作品には、個性の強いキャラクターたちがいた。それは次第に少なくなっていったけど、ダニエルやサム・メンデスによって復活したんだ。きっと、『007 スペクター』を見れば、それがより強く感じられると思う。今回クリストフやレア、僕が演じている役柄はボンド映画らしい、記憶に残る象徴的なキャラクターになっているよ。
――予告編に登場する、ボンドが運転するアストンマーティンDB10とヒンクスが運転するジャガーのカーチェイスは、ローマの市街地を封鎖して撮影したそうですが、その際に印象に残ったエピソードがあれば教えて下さい。
デイヴ:クレイジーな経験だったよ。小さな通りじゃなくて、最も大きな繁華街の一つを封鎖してしまったんだからね。もちろん快く思っていない人もいたけど、同時にたくさんの人たちが興奮して喜んでくれた。ローマの人々には感謝している。
彼らは本編には写っていないけど、窓に張り付いたり、屋根に登ったりして撮影の様子を見ていて、確実にそこにいたんだ。僕たちのためにローマの市街地を封鎖してくれたなんて、本当に信じられないね。
――今まではSFやアクション映画に多く出演されてきましたが、これからはどんな映画や役柄に挑戦したいですか?
デイヴ:色んな映画で色んな役柄をやってみたいね。特に、バディもののコメディー映画とか、ダークな会話重視の映画は大好きだ。ガイ・リッチーやクエンティン・タランティーノ、マーティン・スコセッシの映画のようなね。彼らの映画は僕のお気に入りだから、いつか出演してみたいと思っている。
でも、それに自分を縛るようなことはしたくないんだ。至って普通の男も演じてみたい。本当だよ(笑)。そういった役も大好きだ。今年少しそういった役を演じるチャンスがあったんだけど、本当に楽しかった。
大作映画だけではなくてインディペンデント映画も大好きで、ある作品に参加するんだけど、待ちきれないよ。
バティスタボムがボンドに炸裂してしまうのか!?
『007 スペクター』は12月4日(金)TOHOシネマズ日劇ほか全国公開。
SPECTRE © 2015 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc., Danjaq, LLC and Columbia Pictures Industries, Inc. All rights reserved.
[『007 スペクター』公式サイト]
『007 スペクター』最新予告 2015年12月4日公開[YouTube]
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(スタナー松井)
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