スタナー松井 - SF/ファンタジー,アクション,アニメ,インタビュー,ホラー,声優,映画 07:00 PM
劇場アニメ『亜人』出演の声優・小松未可子さんにインタビュー
まただ、ちゃんと死んだはずなのに......マンガ『亜人』。
今回は、死んでも死んでも蘇る「亜人」と普通に死ぬ人間たちのドラマを描く、本作の劇場アニメ3部作&TVアニメシリーズで下村泉役を演じる声優・小松未可子さんにお話を伺いました。
IBMを引き連れて編集部へやってきた小松さんに、劇場アニメ第1部『亜人―衝動―』の見どころ、過去にあまり経験のなかったジャンルでの演技、かなり怖い心霊体験などについて語っていただいています。
一部ネタバレがありますので、ご注意ください。
小松未可子さんの思う『亜人』の魅力とは?
――『亜人』という作品の第一印象はいかがでしたか?
小松未可子(以下、小松):ここまで過激なバイオレンス描写のある作品は意外とアニメでも関わるチャンスがなかったので、携わるものとしても、普段自分が読むものとしても珍しいタイプの作品だと思いました。
――下村泉を演じる際に意識したことはなんでしょうか?
小松:日常的にはありえないようなファンタジー作品に出演させていただくことが多かったので、本作のような等身大の人間がリアルに描かれる中で展開されるファンタジーでは、どうやってお芝居をしていこうかな? というのを考えさせられました。
ナチュラルな演技が求められることもありましたし、通常のアニメーションでは絵があって、その上に声を入れることがほとんどなんですけど、今回は逆で、声を先に収録してからアニメーションを作るプレスコだったので、全体的にイレギュラーでしたね。
原作を読まれている方は、過去の描写から泉が戸崎という上司についている理由がわかると思うんですけど、映画ではそこにガッツリとは触れないので、逆に戸崎へのストイックな忠誠ということを求められました。
後、泉は一見クールでテキパキと秘書的な役割をこなせる部下なんですけど、けっこうドジなところもあるので、そのギャップをシリアスなテンションが持続する作品の中でどこまでやっていいのか難しかったです。やりすぎると作品の色としておかしくなってしまうので、どこまでドジさを存在させていいのかというのは相談しながら演じました。
――ここまでバイオレンス描写がある作品はご自身の出演作ではなかったとのことですが、そういったシーンは演じていていかがでしたか?
小松:刺されて一瞬で死ぬといったシーンは過去に演じたことはあったんですけど、あんなにがっちりとエグられて飛ばされてというのは初めてでした。
バトルシーンでは先輩方がそのまま映像で撮っても違和感がないくらい、本意気のお芝居をマイク前でされていてすごかったです。特に永井圭役の宮野真守さんはそういうシーンが多くて、顔を真っ赤にしながら演じられていることもありました。それを見て、私も......! と挑みました。
とはいえ泉も亜人なので、なるべく不気味さを残すように、死にそうなのかなどうなのかな......? というギリギリのラインを考えながら演じています。だいぶ喉はヒリヒリしましたね(笑)。
エグられたり、走り続けたりするシーンはやっぱりハードでした。アクションシーンだと、どこをどの程度殴られているのか? といったプランが監督の頭の中にしかないので、演じてみて「もうちょっと殴られ続けてください」とか「この扉はもっと重いので、重そうに開けて下さい」といった演出指導をしていただきました。想像力を働かせるのはけっこう難しかったですね。
「みぞおちからもっとグワッとくる感じで!」と言われたんですけど、みぞおちを殴られたことがないので、どんな感じだろう......と悩みましたね(笑)。
――本作に限らず、キャラクターに入り込む時に意識することはなんでしょうか? 現場以外の日常生活で何か訓練として行っていることはありますか?
小松:「このキャラクターはこうだから」と入り込んでいくというよりは、情報を断片的に入れた状態でお芝居します。
キャラクター自身も、自分の過去の出来事を念頭に置きながら常に話しているわけではないと思うんです。なので、あまりキャラクターの背景が重く出すぎないように、とりあえず自分の中に情報として「こういう過去があったな」というのを落とし込みます。その時の心情になってみるというよりは、それを踏まえて、この人はどう動くのかな? というお芝居にすることが多いです。
どんなキャラクターでも「この人はこういう声だろうな」というイメージは皆さんそれぞれ何となくあるものなので、そこにズレがないようにということは意識しますね。逆にそれを裏切る、見た目に対してもっと低めにしてください、高めにしてくださいといった演出をいただいて調整することもけっこうあります。
道行く人を見ていると、そんなに大げさなリアクションってすることないじゃないですか(笑)。本作のような作品の場合だと、リアルなトーンでおしゃべりするってどういうことなんだろう? と考えて、普段しゃべっている人の会話のトーンとか、どこに抑揚をつけているんだろう? とかは観察します。
複雑な過去を持つ下村泉
――下村泉とご自身の間に何か共通点はあるでしょうか?
小松:過去も境遇も育ってきた環境も全く違いますけど、彼女は戸崎に大きな恩があって、その上で忠誠を誓っているといったところは人間の良い部分だと感じるんですね。そういった面で彼女は「人間ってこうあってほしいな」という心を持っていると思うので、自分もそうありたいなと思います。
――戸崎は上司としていかがでしょうか?
小松:一番近くにいる泉からしたらよくわかる人なんでしょうけど、自分が部下だったらと考えると、心の読めない、難しい人だなあと思います(笑)。
現場でもそういう話にはなったんですけど、戸崎は戸崎で意外とズレているところがあると思うんですね。ちょっとシュールなギャグになってしまうかもしれませんけど、意外と役に立ってない! とか(笑)。キャラクターとして愛せるようなズレというものが戸崎にはあると思います。
――泉以外で、本作中一番好きなキャラクターは誰でしょうか?
小松:TVシリーズで初登場するキャラなんですけど、中野攻が好きです。
演じていらっしゃる福山潤さんもどんどんキャラクターを際立たせる形で、そういう方向にお芝居を持っていってました。泉との掛け合いもあって、シリアスな展開の中でもちょっと和むシーンがあるのは攻のおかげだなと思います。
――下村泉はIBMのことを「黒ちゃん」と呼んでいましたが、小松さんだったら何と名付けますか?
小松:泉の場合は単純に黒いから「黒ちゃん」って安直につけたんだと思いますけど(笑)、なんでしょうね? 圭は「幽霊」ですし......。
でも意外と身近にいたら愛着が湧くと思うので、けっこう真剣に人間らしい名前をつけると思います。作品でも情が湧く人ほどちゃんと名前をつけている印象がありますしね。
今日一緒に来たIBM(トップ画像参照)の中の方はサトウさんなので、サトウさんにします。『亜人』に佐藤さんっていうキャラクターいますけどね(笑)。
――もしIBMを出せたら、何をさせてみたいでしょうか?
小松:あまり攻撃的には使いたくないんですけど、力仕事はさせたいですね。一人暮らしをしていて、ゴミ捨てとか段ボールを畳んで紐で結んでまとめる作業が大変なので(笑)。
後は側にいてくれればいいですかね。たまに話しかけます。
――もし、亜人のように死なない、死んでも蘇るとしたら、挑戦してみたいことはありますか?
小松:基本的に痛い思いはしたくないんですよね(笑)。
ジェットコースターとか落ちる系のアトラクションが苦手なので、もし本当に死なないなら乗ってみてもいいかなとは思います。あと、中国に最近できたガラスの橋は渡ってみたい気がします。
――IBMは「黒い幽霊」とも呼ばれていますが、小松さんご自身は幽霊を見たことはあるのでしょうか?
小松:私自身は見たことがないんですけど、10年前くらいにお仕事で幽霊が見える子とホテルに相部屋で泊まった時にそれらしい体験をしたことがあります。
部屋に入った時からその子は「嫌な予感がする」と言っていたんですね。私は心霊体験をしたこともなかったので、全然信じていなかったんですけど、そんなバカなと思いながら部屋のカーテンを閉めようと思ったら、カーテンにベトベトした赤黒いものがついていて......。
「いやいや、そんなテンプレみたいなことないでしょう!」とか言いながら、その後も部屋で過ごしていたんですけど、夜中に部屋がパキパキする音とか水が勝手に流れる音とかが聞こえました。
私は壁側のベッドで寝ていて、一緒にいた幽霊が見える子は隣のベッドで寝ていたんですけど、その子が私の方を見ながら金縛りにあっちゃったんです。私はならなくて、金縛りにあっている人も初めて見たんですけど、真横で本当に動かない様子を見ただけでけっこうヒヤッとしました。
そんな状況だったので全然眠れなくて、テレビもつけっぱなしで一夜を明かしたんですけど、次の日に詳しく話を聞いたら、私がいた壁側の方に顔が浮かんでいて、私のことをずっと見ていたんだと......。
それを聞いてからは1人でホテルに泊まれなくなりましたね......。
――十分ハードなものを経験していらっしゃると思います......。
小松:それ以来は特に何もないですよ!(笑) 心霊に限らず、ホラー作品も苦手なんですよね......。
ダブルのシャカサイン
――ホラーは苦手とのことですが、『亜人』のようなサスペンス/SF/アクションといった要素のある作品で何かお好きなものはありますか?
小松:ベタですし、明るい作品ですけど、SFだったら『バック・トゥ・ザ・フューチャー』とか『ターミネーター』とか『グレムリン』は好きですね。
ホラーは避けてきたので......。小学校の頃に観た、一作目の『学校の怪談』がトラウマになって、なるべく見ないように過ごしてきたんです。ある時、韓国のじっとりとした暗いホラー映画が好きな友達に薦められて、とある作品を観たんですけど、もう二度と見ないぞ! と思いました(笑)。ただ、自分が携わるとなったら、1つのエンターテインメント作品としてしっかり研究させていただきます!
実際、ホラー映画の吹き替えはやらせていただいたんですよね。それは驚く系の作品だったので、割りと平気でした。でも、やっぱり日本とか韓国の静かでじめじめした、現実に起きそうな、人の怨念が詰まっているホラーは苦手です......。
――本作を見て、ギャーッとなったシーンはあるでしょうか?
小松:ざくざく殺されていくシーンとか、エグられちゃう描写とかは目をつぶってしまいました。どこに刺さったの今? と痛みを想像してしまって......。
でも、私の父親はホラーもグロいのもエイリアン系も大好きなんですよね。家にいっぱいビデオとかありました。だから『亜人』への出演は喜んでくれると思います。「待ってたこういうの!」って(笑)。
私は平穏な生ぬるい世界で生きてきたなと思うくらい(笑)、あんまりホラーとか殴り殴られ、流血みたいなものって本当に見ていないですね。
――最後に、小松さんの思う本作の見てほしいポイント、今後の展開の中での注目のポイントを教えて下さい。
小松:第1部はかなり原作に忠実な形で描かれているんですけど、特に映画で初めて『亜人』を観る方は、想像している展開とはどんどん変わっていくと思います。終着点がどうなるのか? というのは本当に想像がつかないんじゃないでしょうか。
アクションはきわどいものになっていきますし、破壊の描写などはかなり見応えがあると思います。撮り方もアニメーションというよりは、実写に近いようなアングルだとかカット割りが多いので、逆に見やすいと思いますね。いい意味でアニメーションっぽくない作品かもしれません。
全体を通して死んで初めて生きることに執着を持つといった「生と死」や人種問題といったことがテーマで、最初は人間対亜人の戦いだったのが、「何と戦っているんだろう?」といった状況になっていったり、見ていてどこかワクワクすると思います。
テーマも含めヘビーな要素はあるんですけど、個人的にはグロテスクなものが苦手でもけっこう大丈夫だなとも感じたので(笑)、あんまり重く考えずにアトラクションとして捉えて観ていただいても、きっと面白い作品です。
後は音響にもすごくこだわっていて、お芝居も音に気をつけて録った部分があるので、劇場で見ていただくとより楽しめると思います。臨場感を是非味わっていただきたいです。
TVシリーズでは劇場版で補完できていない部分や細かい部分もより詳しく拾われているので、併せて観るとより深く楽しめると思います。
劇場アニメ3部作第1部『亜人―衝動―』は2015年11月27日(金)より、TOHOシネマズ新宿ほかにて2週間限定公開。第2部『亜人―衝突―』は2016年5月に公開予定です。
©桜井画門・講談社/亜人管理委員会
[「亜人」公式サイト]
劇場アニメ「亜人 -衝動- 」第2弾本予告[YouTube]
プレスコ[Wikipedia]
(スタナー松井)
撮影:三浦一紀
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