ベヘリット「心が叫びたがってるんだ。」
〔内容〕『心が叫びたがってるんだ。』と『ベルセルク』のクロスオーバー
順 「ハァ、ハァ、ハァ」
順 (本当は寄り道はいけないけど、今日はお城を見に行こう)
順 (お城の中ではどんな舞踏会が開かれているのかな?)
順 (いつか、私も行きたいな)
その女の子は小さな山の頂きにあるお城に憧れていました
クリーム色の城壁
尖がり帽子を被せた様な青い屋根を持つ塔
沢山の窓が着いた素敵なお城です
順 「ハァ、ハァ」
順 (着いた……お城だ)
順 「ハァー……すてき……おとぎ話に出てくるお城と同じ……」
順 (あれは……? 車が出て来る、ちょっと隠れよう)
ブロロロロロ
順 (!)
順 (今、車に乗ってたのって……)
順 (パパ!)
順 「ママー!」
泉 「お帰……」
順 「ただいまっ! ママ、あのね、あのね!」
順 「さっきね! 順ね! すごい秘密を知っちゃ……」
泉 「卵焼きで――お口っぽいっ!」
順 「!」
順 モゴモゴ
順 「ほいひい! あまい!」
泉 「順は本当、口から生まれてきたのね。ちょっと待ってね。今、パパのお夜食作っちゃうから」
順 「そうっ、パパがね!」
順 「お城から出てきたの!」
泉 ピクッ
泉 「お城……?」
順 「うん、お山の! パパって王子様だったの! お姫様、ママじゃなかったけど……」
順 「ママ、ごはん作ってたから舞踏会行けなかったの? あっ、もしかしてママ、魔女だったりするの?」
順 「でもママだからきっといい魔女よね?」
泉 「……ダメ」
順 「?」
泉 「その話……誰にもしちゃ……ダメ……」
成瀬宅 玄関
順 「あ、あのねっ! ママとケンカしたならねっ! 順が仲直りさせてあげるっ!」
順の父 「……」
順 「だからね、パパは今まで通り――」
順の父 「順……」
順 「?」
順の父 「本当にお喋りだな」
順 「え……」
順の父 「……全部、お前のせいじゃないか」
順 「ヒック、グスッ……」
順 (順のせいなの? 順のせいでパパとママはケンカしたの? パパはお家出て行っちゃったの?)
占い師 「お嬢ちゃん?」
順 「?」
占い師 「お嬢ちゃん、どうしたんだい?」
順 「これから……お城に行くの」
占い師 「お城? 山の上のお城かい?」
順 「うん!」
占い師 「止めた方がいい。あそこは子供が行くところじゃない」
順 「えっ……?」
順 「お婆ちゃんもいけないって言うの? ねえ、どうして?」
占い師 「あのお城は呪われたお城なんだよ」
順 「呪われた?」
占い師 「そう……」
順 「そんな……。私、いつか素敵な王子様と……お城の舞踏会へ行きたいと思ってたのに……」
順 「これは?」
占い師 「卵だよ。お嬢ちゃん地元の子だね?」
順 「うん」
占い師 「なら、近所のお寺にこれと似た感じで色を塗った卵がお供えされているのを見たことがあるだろう?」
順 「うん」
占い師 「これもその一つだよ。特にこの紅いのは『覇王の卵』と言ってね。自分の血と肉を引き換えに世界を手に入れることが出来る」
順 「でも、私お金持ってない……」
占い師 「特別にこれはタダであげる」
順 「いいの?」
占い師 「ああ、だからもう泣くのはお止し」
順 「ありがとう、お婆ちゃん」
順 (お城を見れば少しは気分が良くなると思ったけど……あまり行きたくなくなってきた……)
順 (さっきお婆ちゃんから貰った赤い卵……)
順 (福笑いみたいに鼻とか口が変な感じについてる……)
真紅のベヘリット ギロッ
順 「ヒィッ!」
順 (目!?)
真紅のベヘリット 「ヴオオオオオオオオオオオオオッ!」
順 (夕方だったのに急に暗くなってる!)
順 (何なの、ここ!)
順 「ママーッ! パパーッ!」
順 (怖い、怖いよ……)
ユービック 「フォフォフォフォフォ」
順 (セミのお化け!?)
順 (助けて……誰か……)
コンラッド 「ボオオオオオオオッ!」
順 (ダルマのお化け!?)
ボイド 「時は来た、我ら……」
順 (ガイコツ!?)
――
順 (順、ひざ枕してもらってる……ママかな……)
スラン 「あら、お目覚め? 可愛い副王さん」
順 (ママじゃなかった……)
スラン 「貴方達怖がらせ過ぎよ」
ボイド 「これでも出来る限り笑顔で接しているつもりだが」
スラン 「貴方も冗談を言うことがあるのね、ボイド」
ユービック 「しかしこの娘が真紅のベヘリットの持ち主とは因果律も気まぐれ……」
順 「ダメッ!」
ムギュッ
スラン 「きゃっ!?」
順 「オバさんお○ぱい丸見えだよ。隠さなきゃ!」
スラン 「オ、オバ……」
ユービック 「オ・バ・さ・ん」
コンラッド 「ホッホッホッ」
スラン ギ口リ
ユービック 「おお怖」
コンラッド 「これは失礼」
順 「でもガイコツ達がいるよ」
スラン 「いいのよ、彼らは」
順 「どうして?」
スラン 「貴方がお着替えする時にペットに見られて恥ずかしいと思う」
順 「思わない」
スラン 「それと同じ」
ボイド 「ペット……」
ユービック (非道い……)
コンラッド (そういうこと言うんだ……)
スラン 「それに貴方の小さなお手手じゃ隠しきれてないわ」
順 「……」
順 「まおう?」
ユービック 「その真紅のベヘリットを手にした時からお前は魔王の資格を得ていたのさ、イヒヒヒヒ」
順 「ベヘリット?」
ボイド 「お前が手にしている紅き卵のことだ」
真紅のベヘリット 「……」
順 (赤い卵が涙を流してる……)
順 (泣きたいのは順の方だよ……)
順 「ウ、ウ、グス、ウワアアアアン!」
ゴッドハンド一同 「!」
順 「怖いよ! もう嫌だよ! お家に帰して!」
ボイド 「皆、こっちへ。作戦会議だ」
ユービック 「やれやれ、泣く子と地頭には勝てぬか」
コンラッド 「そっちへいく」
スラン 「私も」
順 「イヤッ!」
スラン 「えっ!?」
順 「オバさんはここに居て、怖いもん」
スラン 「オ、オバ……」
ボイド 「スラン、頼む。その娘を」
スラン 「ハァ……。ゴッドハンドの私に子守をさせるつもり?」
ユービック 「わしらでは余計怖がらせるだけだ」
スラン 「仕方ないわね……」
スラン 「安心して、貴方はこのお姉さんが守ってあげる」
順 「ありがとう、オバさん!」
スラン 「……」
コンラッド 「今それを言っても仕方あるまい」
ボイド 「未来の副王とはいえ所詮は子供。これからは出来るだけ平易な言葉を使うように」
ユービック 「そんなに小難しい言葉を使っていたつもりはないのだが」
コンラッド 「あと……」
ボイド 「ん?」
ユービック 「何か考えが?」
コンラッド 「話し方を工夫出来ないか?」
スラン (参ったわね……)
ボイド 「たま~ご~に捧げよ~♪」
ユービック 「ビュ~ティフルワ~ルド♪」
コンラッド 「生贄~あり~がとう♪」
順 「……」
スラン 「……」
ボイド 「我等は~卵の~妖精さ~♪」
ユービック 「あなたの~願いを~叶えたくて~♪」
コンラッド 「現れた~王子~様さ~♪」
ユービック (真名を冠する眷属の我らがよりによって)
コンラッド (子供の機嫌を損ねぬよう歌を歌うとは……)
スラン 「ウーッフッハハハハハッ!」
ボイド 「笑い過ぎだ」
スラン 「ハハハハハッ……ハヒッハヒッ、お腹が捩れる!」
ユービック 「少しでも状況を打開すべくやっておるというのに」
スラン 「ごめんなさい……。でも……ア、ダメ我慢出来ない。ハッハッハッハッ!」
順 「イヤ」
コンラッド 「何が気に入らんのだ?」
順 「私の王子様はそんな太ってて気持ち悪い顔してない!」
ユービック 「……」