サイバーマンデーの仕掛け人。アマゾンジャパン紣川さんに聞く、究極の年末最大セールの仕掛け方
張本人が舞台裏を語ります。
アマゾンジャパンが毎年恒例の特大セール「サイバーマンデー」を8日から始めました。
12月8日から14日まで、7日間に渡ってさまざまなセールがアマゾンの商品で起こる「今年最後のビッグセール」。家電やPC、MacさらにはDVDから食品、ブランド商品まで、幅広い商品が揃って、大勢のアマゾンユーザーの方は張り付く時間が自動的に増えそうな一週間です。
またプライム会員なら30分早く参加できる「会員限定先行タイムセール」、14日の18時からはプライム会員向けに目玉商品が登場する「Amazonプライム会員特別セール」が用意されるほど、買い物が楽しくなるアマゾンならではのオプションであふれています。
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これまで日本にはあまり馴染みのなかったサイバーマンデーですが、毎年この時期を狙って買い物を楽しむ人や、サイバーマンデーのセールに参加する企業は年々増えています。価格、品揃えをこれでもかと言う程まで努力するサイバー・マンデーを日本で盛り上げているのが、アマゾンジャパン。日本のサイバーマンデーを作るために、日本記念日協会に「サイバーマンデー」を登録しているほど、ネットショッピングへの力の注ぎ方は群を抜いています。
今回ギズモード・ジャパンでは、サイバーマンデーとは何かを詳しく教えてもらうため、アマゾンジャパンに取材に行ってきました。インタビューに応じてくださったのは、アマゾンジャパンのコンシューマーマーケティング本部長で、日本のサイバーマンデーの仕掛け人、紣川謙さん。サイバー・マンデー開催の中に秘められた、ネットショッピングの楽しみ方をより良くしようとする熱い思いを語ってもらいました。
ギズモード(以下ギズ):サイバーマンデーとは一体どんなイベントなのでしょうか?
紣川:一言で言いますと、サイバー・マンデーはオンラインショッピングが一年で最も盛り上がる日です。元々は米国で始まったイベントで、日本では2012年に日本記念日協会に12月の第2月曜日をサイバーマンデーとして認定されました。
今年は12月14日が第2月曜日になりますので、アマゾン・ジャパンではその間の一週間、8日から14日までサイバー・マンデー・ウィークとしてセールを行っていきます。
米国では感謝祭(11月第4木曜日)の次の日が「ブラック・フライデー」と呼ばれる小売店の特大セールの日なんですね。ブラック・フライデーでは、家族みんなで一緒に買い物に出掛ける日で、このイベントは以前からも存在していました。
そのブラック・フライデー後の週末が明けた月曜日に、非常にネットショッピングが盛り上がることが、段々と分かってきました。そして2005年辺りから米国でサイバーマンデーという名称で、ネットショッピングの特大セールが徐々に行われるようになったという歴史があります。
2012年以前は、日本では存在していませんでした。ただ、日本でも同じように12月はネットショッピングの売上が急激に上がることがアマゾンジャパンでは分かっていました。どうしても気になったので私がデータを調べてみると、「冬のボーナス」が12月第2週辺りに出ることと関係していることが分かってきました。ですのでその頃にはユーザーの皆さんが普段以上に買い物をするのではないか、と仮定しました。アマゾンのトラフィックを見ても、2週目には必ず上がっているデータがありましたし。ですから、日本では第2月曜日をサイバーマンデーとしたショッピング・イベントを行うと決めて社内で調整して始めました。
ギズ:なぜサイバーマンデーは世界的にここまで盛り上がったのでしょうか? 特別な理由があるのでしょうか?
紣川:これは私の推測ですが、2005年頃にサイバーマンデーが生まれた大きな理由は、ネットショッピングそのものが段々と利便性が高まり、利用が拡大し始めたことがその頃だったのではないかと感じます。
サイバーマンデーの始まりについてですが、私が聞いた話になりますが、米国では2000年代の早い段階から有線回線による高速インターネットが普通のオフィスにも導入されてきたそうです。ですのでオフィスに行くと高速ネット回線にアクセスできたことから、感謝祭の週末空けにオフィスからECサイトにアクセスする人が非常に増えていったことが、月曜日に買い物が盛り上がった背景だと聞いたことがあります。
ギズ:ネット環境が影響して生まれたイベントとしてここまで大きくなるなんて驚異的ですね。普段からネットで買物をするようになりましたが、日本人から見ると不思議なつながりに見えます。
紣川:日本でも米国のようなネットショッピング・イベントがあったほうが、ECサイトのユーザーが喜んでくれるのでは?と社内で考えました。その結論が、日本独自の決断でサイバーマンデーを開催することになったという歴史があります。
品揃えは昨年の2倍以上
ギズ:日本のサイバーマンデーでは、どんな商品が出品されるのでしょうか?
紣川:アマゾンの主力製品カテゴリーはほとんど出品すると思っていただいて構いません。例えば、家電、ファッション、食料品や飲料、ゲームなど、さまざまな商品が並ぶ予定です。
2014年のデータを再度見てみたところ、プレイステーション4などゲームコンソール、デジタル一眼レフカメラが人気ありました。それから高級腕時計も人気がありました。今年もこれらに近い商品が並ぶ予定です。
今年は、1万7000点ほどの商品をご提供する予定です。去年は6700点でしたので、品揃えは大きく増えました。特にご関心が高いのは、ギズモードの読者さんに人気の高いブランドのラップトップ。あるいは主要メーカーのノートPCも出品する予定です。
また普段とはちょっと違う商品としては、プラダ、エルメス、ルイ・ヴィトンなどのブランド商品や、リモワのスーツケース、家から出たくないこもりたい人向けの日清の冬ごもりセットなどをお手頃価格で用意しています。
ギズ:アマゾンジャパンのサイバーマンデーは、アマゾンならではの楽しみ方も特徴ですよね。
紣川:サイバーマンデーの期間中は、何がセールになるのかが時間によって変わって出品されます。その状況はタイムテーブルで確認いただけます。ただし、どんな商品が次に来るなどの情報は公開していませんので、新しいセールを発見していただくことも、サイバーマンデーならではの楽しみ方かなと思います。
この他にも、12月8日からLINEのAmazonアカウントを追加したり、LINEビジネスコネクト(LINEとAmazonアカウントを連携させるサービス)を利用してくださったお客様には、Amazon公式キャラ「ポチ」のLINEオリジナルスタンプも配信します。
さらに11月からプライム会員のお客様向けに、3,000円以上のお買い物をされた方に500Amazonポイントを差し上げるキャンペーンも実施しています。こちらもサイバー・マンデー前日の7日にポイントを差し上げる予定ですので、お買い物を楽しんでいただけるのではないかと考えております。
徹底したセレクション、価格、利便性へのこだわり
ギズ:実際に出品する品はどうやって決められているのですか?
紣川:各商品カテゴリーのチームごとにデータも分析することは勿論ですが、どんな商品が買われているのか、どんな商品が喜ばれるかは、専門スタッフの知識で把握しています。
社内で特に気をつけている条件ですが、サイバーマンデーはお得な価格でご提供できなければ意味がなくなります。ですので、「セレクション」と「お得な価格」をどう組み合わせてお届けするかが、条件になります。
そして3つ目の条件として私たちが上げているのが、「利便性」です。当日にお客様のお手元に届く商品、または翌日に届く商品を多数用意しています。
ギズ:その利便性、凄く実感しています。
紣川:年々アマゾンが行っているタイムセールやショッピング・イベントを知って利用される方は増えています。今年の夏には「プライムデー」も開催しました。その結果、注目度も高まり製品の調達も社内でスムーズに進むようになってきたことで、品揃えを拡大させることができています。
ギズ:社内で始めたころは、知ってる人は多かったのでしょうか?
紣川:最初は日本オフィスでも「それは何ですか?」みたいな薄い反応しか返ってこない状況でしたよ(笑)。
海外で盛り上がっていたのは知っていたんです。日本でもやりたいねという声がありました。ただそれは「できたらいいね」くらいの客観的な希望の域にとどまっていた話でした。最初に話が出た時は2011年あたりだったはずです。その年は結局何も出来なかったのですが、2012年には大きなショッピングイベントにするという目標を作って、マーケティングチーム内は勝手に盛り上がりました(笑)。
でも一つのハードルは、アメリカのサイバーマンデーをそのまま日本に持ってくることも可能ではありますが、感謝祭の文化やブラック・フライデーなどあまり日本人につながりがないものをそのまま持ってくるのは、ネット文化の違いもあってあまり現実的ではないと思いました。日本のお客様に関係のある日は何だろう?と思ってデータを見て、ボーナスがもらえる週はサイトにアクセスするお客様の数が多いことを把握していました。その時期をお客様に楽しんで頂けるショッピング期間にしようじゃないかと、マーケティングチームと広報チームが動いたことが始まりです。
継続することがお客様の期待を高めるためには必要だと思っていましたので、今年で4回目になりますが、年々盛り上がってきましたので、当初私たちが考えていた企みは実現できているのかなと思います。
最初は社内でも誰も知らなかったので、協力体制も何もなかったところから始めました。ただ2012年の初年度は、実際に商品を調達しなければならなかったので、「サイバーマンデーをやります」と各チームに働きかける啓蒙活動をしました。そこで初めて「サイバーマンデーとはこういうもの」を知ってもらい、協力体制を作ることができました。
継続して期待してもらえるイベントを根付かせたい
ギズ:サイバーマンデーを利用する日本人の客層には、どんな人達が当てはまるのでしょうか?
紣川:お客様はモバイルからのアクセスがデスクトップよりも非常に増えています。商品カテゴリーによっては、モバイルの方がPCよりも売上が大きい場合もあります。
買い物をされるお客様はさまざまな商品を揃えておりますので、幅広い層からアクセスを頂いています。アマゾンジャパンでもモバイルからのアクセスが多い特定のカテゴリーでは、サイバーマンデーの売上は年々大きくなっています。
アマゾンジャパンのセールの楽しみ方も多様化していると思います。プライムデーの時には、有名なYouTuber(Koji Seto)がどんな商品がセールで出てくるか、YouTubeで実況中継をしました。ネットショッピング体験を映像でオープンに追いかける人は初めてで、見ていて楽しかったですし印象的でした。
ギズ:最後の質問ですが、これからアマゾンジャパンのサイバーマンデーはどう進化させていきたいですか?
紣川:元々は日本の冬のボーナスをもらった人がオンラインで買い物をする行動からヒントを得て発案しましたので、この時期に「ショッピングをしたい」というニーズや期待に対して答えられるイベントとして、日本のネットショッピング文化の中でお客様に継続して期待して頂けるイベントとして根付かせたい、そしてこれからも大きくしていきたいと考えています。
これをやれば成功するというようなマジック的なものは存在していないと思っています。ショッピングイベントですので、欲しいものが安く、便利に買える体験をより多くのお客さまにしていただけば自然と広がっていくと思います。テレビ広告やソーシャルメディアを使って広がっていっても嬉しいのですが、それよりもお客様がアマゾンのサイバーマンデーで買い物をして、ネットショッピングって素晴らしいねと気がついていただけたら、その想いが自然に拡がっていってほしいと思っています。
電子決済も楽になったし、配達も早くなって欲しい物は全てネットで買えるほど、ネットショッピングが進化してきました。
普段からなんでもいつでも買えるのは嬉しいですが、売り切れや待ち時間、時間切れなど、特大セールの時間が迫ってくる高揚感や欲しい物を手探りで探すワクワク感が共存した、いつものネットショッピングとはひと味も二味も違った買い物体験を、サイバー・マンデーで味わってみると、行列して買い物をするような新鮮な気分にさせてくれますよ。
source: Amazon(サイバーマンデーウィーク)
(企画/取材/執筆:Yohei Kogami、撮影:吉岡孝太)