【モバマス】杏「勇者特急ウサミンロボ」
歌って踊ってロボット開発もできるアイドル、池袋晶葉によって開発されたウサちゃんロボ。
ウサちゃんロボもまた、踊って団子も作れる優れロボである。
そのウサちゃんロボの一部を異星超文明のウサミン科学によって強化改造したものこそ、ウサミンロボ!
ウサミンロボは今日も、アイドルたちのために張り切るのだ!
ある日の昼下がり、事務所にモバPの声が響きます。
「いかん! このままだと間に合わないぞ!」
モバPの慌てている姿を見て、ウサミンロボは緊急即応体制をとりました。
これでランチタイム時間切れ昼食難民から熱核戦争シェルター避難、ゾンビパンデミックまで、あらゆる事態に即応できます。
準備は万全です。
「スタジオ入りが間に合わないぞ!」
うさっ!?
これはウサミンロボにも想定外でした。まさかお仕事でモバPがミスをするなんて。
人間的には色々ありますが、仕事マンとしてのモバPは超優秀なのです。
人間的には色々ありますが。
大事なことなので二度言いました。
だけどウサミンロボは慌てません。
「杏、急いで支度をしてくれ」
モバPに名前を呼ばれたのは双葉杏です。ニート・ザ・アイドル、働いたら負ける人です。
「仕方ないなぁ……」
「今日ばかりは絶対に遅刻は許されないんだ」
「えらく今日は慌ててるけど、どうしたの?」
「今日は本当に特別なんだ」
「……なにそれ、初耳だよ」
「変にプレッシャーを与えたくなかったんでな」
「もしかして、共演者?」
「そうだ」
「誰なの?」
「あの、今やアイドル業界向かうところ敵なし、鎧袖一触、絶対無敵、熱血最強、元気爆発の765さんだ」
「……わお」
「わおだよ」
「どうするのさ、とりあえず、仕方ないから杏も急ぐけど」
「今回の遅れは完全にこちらのミスだ。真摯に謝るしかないだろう」
「一緒に謝ろうか?」
「気にするな、俺のミスだ」
「だけど……」
「なーに、お詫び代わりに向こうさんに、うまいラーメンでも腹一杯奢るさ」
「……ちなみに今日の共演者って」
「四条貴音」
「大惨事だね」
うさぁ……
ウサミンロボも恐怖しました。
先日たまたまパトロール中に出会い、望まれるままウサミン団子を作ったところ、一週間分を食べつくされたからです。
「食事前ですので、このくらいの量がちょうどよいですね」と言われたものです。
そんなふうにウサミンロボが脅えている間に、モバPと杏の意見は固まったようです。
「とにかく急ごう」
ここでロボの出番です!
うさっ!
ウサミンロボの緊急連絡がウサロボ秘密基地に届きます。
うさっ、うさっ
ウサウサウサのコールサインです。
待機中のウサミンロボの瞳が一斉に輝き出します!
ウサミンロボの瞳が燃えます。
戦いの海は牙でこぎ、悲しみの海は愛でこぎ、アイドルたちを守るため、愛と勇気の炎を燃やすのです。
夢と希望の明日も願います。
ウサミンロボ緊急発進!
数秒と経たないうちに、二台のウサミンロボが到着しました。
二台は前後に並び、その間に、時代劇に出てくるような駕籠を担いでいます。
駕籠側面にはポップゴシック体で「ウサミンロボ特急」と書かれています。
小さいゴシック体で「うさみんろぼとっきゅう」と振り仮名もついています。お子様向けとしても万全です。
これぞ勇者特急ウサミンロボ、一時間でウサミン星に到達(無人時理論値)する優れモノなのです。
うさうさ
モバPがウサミンロボ特急に気づきます。
「特急? 乗り物か。よし、ロボ、スタジオまで頼む。杏、乗ってくれ」
うさっ!
「頼むね、ロボ」
杏の言葉にウサミンロボは頼もしく応えます。
うさっ!
駕籠に乗り込む杏。だけど駕籠は一人乗りでした。
モバPは首をかしげます。
「俺は?」
うーさー
ロボはモバPのズボンのベルトを掴むと、自分の耳に引っ掛けます。
ウサウサウサ!!!
勇者特急ウサミンロボ発車準備OKです。
「待てロボ、この発車方法は俺が大惨事のような気がする」
うさっ!?
「駕籠が一人乗りなのは仕方ないが、もう一台用意できないか?」
うさうさ
ウサミンロボは賢いので、モバPの言いたいことをすぐに理解しました。
ウサミン特急をもう一台準備して、再び発車準備完了です。
いつモバPが耳元から吹っ飛ばされてもいいように、もう一台が後ろからついていくのです。
吹っ飛ばされたとしても、後ろの一台がいつでもキャッチできます。
これでもう、安心です。
「違う! 俺が言いたいのはそういうことじゃなくて!!!!」
勇者特急ウサミンロボは、直ちにスタジオへと向かいました。モバPの声はもう聞こえません。
すぐにスタジオに到着します。モバPも無事スタジオに着きました。吹っ飛びませんでした。万全です。
うさっ!
「さすがウサミンロボ! 間に合ったよ」
駕籠を下りた杏は、ロボに礼を言うと、控え室へと急ぎます。
ロボは手を振って見送りました。
今日も無事、アイドルのお役に立ったのです。ウサミンロボはとても嬉しい気持ちで一杯でした。
そしてウサミンロボは、このまま杏の仕事が終わるのを待つことにしました。帰りも事務所まで送るためです。
うさ~
スタジオ前でおとなしく待っていると、一台の車が止まりました。
タダの乗用車ではありません。いわゆる高級車、ハイグレードな車です。
前に、ヘレンが乗っているのを見たことがあります。警護を頼まれて、超攻速ウサミンロボ形態で併走したこともあります。
ウサミンロボが見ていると、車を止めた運転手がそそくさと後部に回ってドアを開けました。
「あら、こんなところで何をやっているの? 子豚ちゃんたち」
ひざまずく運転手を踏みつけながら降りてきたのは財前時子さまでした。
ウサミンロボは知っています。これが運転手にとっての「ご褒美」だと。
ウサミンロボにはよくわかりませんが、直接本人に聞いたことがあるから間違いありません。
因みに、この運転手さんは財前時子ファンクラブ会員番号三番の猛者です。
うさ~
時子さまの声に、後から来た方の特急の後ろ側にいたウサミンロボが反応しました。
うさっうさっうさっ
「あら、あなたもいたの? ブタミンロボ」
実はこのウサミンロボは財前時子専属となったこともあるロボで、ブタミンロボという名前をつけられているのです。
時子さまによって、一番の豚(ファン)と認定されたロボは豚王、すなわちPIG王(ピッグオー)とも呼ばれています。
時々、ライブにゲストダンサーとして招かれると、時子さまはピッグオーを呼ぶのです。
「ピッグオー、ショータイム!」と。
ぷぎっ、ぷぎっ
時子さまに大恩のあるウサミンロボは、時子さまの前に出ると声もちょっと変わります。
そして、うさ耳の代わりに豚耳をつけ、顔には豚鼻をつけ、さらに尻尾の電源コードは巻き尻尾形状に変わります。
ブタミンロボの誕生です。
ぷぎっぷぎっ
ウサミンロボの言葉を時子さまはわかりませんが、何故かブタミンロボの言葉はわかるようです。
「そぅ、あなたは、この財前時子を差し置いて他のアイドルの送迎をしているという事ね」
ぷぎっ!?
「そう、わかったわ」
ぷぎっぷぎっぷぎぃいいいいっ!!
「言い訳はいらないわ、わかっているはずよ。この財前時子のファンであるということが、一体どういう意味なのか」
財前時子ファンクラブに入会すると漏れなくもらえる黒革の手帳。
その手帳を開いた一ページ目には、こう書かれているのです。
『この手帳開く者、全てを捧げよ』
それが、それこそが、財前時子ファンの証にして存在意義。
捧げてこそ、全てを捧げ尽くしてこそ、財前時子ファン。
身を惜しんで、何がファンか。身を捧げられることなくして、何がアイドルか。
ぷぎぃぷぎぃ
うさっうさっ!
ウサミンロボは慌ててブタミンロボを弁護します。
「あら、庇うの?」
うさっうさっ
「何言ってるかわからないわ」
うさっ!?
「だけど、庇っているのはわかるわね」
うさ~
「ふふふっ、ほんの冗談よ。女王(クイーン)は暴君(タイラント)であっても、愚者(フール)であってはならない」
ぷぎぃ
「ブタミンロボ、貴方は貴方のつとめを全力で果たしなさい。それでこそ、私の子豚ちゃんよ」
時子さまはそれだけを言うと、身を翻してスタジオへと入っていきます。
コメント一覧
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- 2015年12月12日 23:49
- 何故ロボの胸にウサギがっ!
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- 2015年12月12日 23:55
- 銀の翼に望みを乗せて、灯せ平和の青信号!
勇者特急マイトガイン!
定刻通りに只今到着!!
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- 2015年12月12日 23:57
- それは……かっこいいからだっ!
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- 2015年12月12日 23:57
- それは、可愛いからだ!!!
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