モバP「Don’t Stop ゆるふわ Fuwa Fuwa」
藍子「このまま時間が止まってくれたら」
藍子「――って思うこと、ありませんか?」
P「ある」
藍子「あ、本当ですか?」
P「ああ、しょっちゅうだよ」
P「何度、欲しいと思ったことか」
P「精神と時の部屋な」
藍子「せいしんと……?」
藍子「えっと……」
P「あ、知らない?」
P「簡単に言えば、時間の進みがすっごく遅くなる部屋のことだよ」
P「そこで修行するの」
藍子「? 修行、ですか?」
P「昔の漫画にそういうのがあったんだよ」
P「主人公がそこに入って、短期間でめちゃくちゃパワーアップするっていう」
P「ある種あの漫画のご都合主義を体現したような……」ボソ
藍子「そうなんですね。時間の進みが遅くなる部屋、かあ……」
藍子「ふふっ、ちょっと私も入りたくなってきました」
P「だろ? 読んだ人はみんなそう思うんだ」
P「小学校の頃とか、夏休みが終わる時期になるとな」
P「たまった宿題を前によく現実逃避したもんだよ」
P「ああ、精神と時の部屋があればな……って」
藍子「ふふふ」
藍子「私もその漫画読んでたら、きっと同じこと考えてたと思います」
藍子「素敵ですね。そのお部屋」
P(実際はあの部屋、結構過酷な環境なんだけど)
P「そう、今でも欲しいもんな」
P「大学の卒論書いてたときとか、特にそうだった」
藍子「卒論……卒業論文、ですね」
P「途中まで順調に進んでたんだけどさ」
P「提出の一週間前にデータが吹っ飛んでな」
藍子「ええっ、い、一週間前ですか?」
藍子「た、大変じゃないですか」
P「うん。しかもろくにバックアップとってなかったもんだから」
P「もう修羅場も修羅場でさ……」
P「いや、あのときは本当に時間が止まって欲しかった」
藍子「それは、大丈夫だったんですか?」
P「おかげさまで期限いっぱい、ぎりぎりで提出できてな」
P「すんでのところで留年せずにすんだよ」
藍子「そうなんですね。よかった……」ホッ
P「いやいやこんなの序の口だぞ」
P「精神と時の部屋案件は、挙げたらきりがなくてな」
P「こないだなんて、さあ帰るぞってところにちひろさんが来て――」
藍子「はいっ」
P「あ」
藍子「?」
藍子「ちひろさんが、どうしました?」
P「いや、ごめん」
藍子「えっ?」
P「なんかさっきから俺ばっか話してなかった?」
P「大丈夫?」
藍子「そんな、全然いいんですよ」
藍子「私、もっとPさんのお話が聞きたいんです」
P「そう? ならいいんだけど……」
P「そもそも、なんでこんな話になったんだっけ?」
藍子「ちょっと興味があったんです」
藍子「Pさんは、時間が止まって欲しいって思うこと、ないのかなって」
P「ふうん」
P「そりゃまた、なんでだ?」
藍子「それはですね――」
カランカラン
イラッシャイマセー
藍子「……少し、混んできましたね」
P「この時間帯いつも混むよな。ここ」
藍子「どうしましょう、そろそろ出ましょうか?」
P「うん。ぶらぶら散歩しながら戻ろうか」
―――
――
藍子「……日が落ちるのも早くなりましたね」
P「まだこんな時間なのに、すっかり真っ暗だな」
藍子「銀杏の木も、あんなに綺麗に色づいていたのに」
藍子「ほとんど葉が落ちてしまいましたね」
P「もうまるっきり冬なんだなあ」
藍子「そうですね」
藍子「……ちょっと、寂しくなりますね」
藍子「……Pさん、さっきの話ですけど」
P「うん」
藍子「あ、寒くないですか?」
藍子「もしよければ、どこか別のお店にはいりましょうか?」
P「そりゃ俺のセリフだ」
P「そんな格好で大丈夫か? いかにも寒そうだが」
藍子「大丈夫ですよ、ほら」
藍子「このストール、おっきくて暖かいんです」
P(これストールっていうんだ)
P「じゃ、歩きながらでいいか」
藍子「……Pさんが言ってたのとは、少し違うかもしれませんけど」
藍子「私最近、よく思うんです」
藍子「このまま時間が止まってくれればいいのにって」
藍子「この幸せな時間が、ずっと続いてくれたらいいのにって」
P「ほう」
藍子「アニバーサリーライブ、この間やりましたよね」
P「ああ」
P「大成功だったな」
P「まさにこれまでの集大成って感じのライブだった」
藍子「私、あんなたくさんの人の前で歌うの初めてで、いつも以上に緊張したんですけど……」
藍子「未央ちゃんや他のみんなの助けもあって、どうにかやりとげることができて」
藍子「終わるころには観客も出演者も、みんな笑顔になってくれて」
藍子「本当に、大きな幸せを感じることができたんです」
P「よかったな」
P「ファンの人もきっと、同じ気持ちだろうさ」
藍子「……でも、なぜだかわからないんですけど」
藍子「同時にちょっと、不安にもなったんです」
P「不安?」
藍子「はい」
藍子「この幸せな日々は、いつまで続くんだろうって」
藍子「いつか、魔法が解ける日が来るのかなって」
P「魔法が解ける日、か」
藍子「変ですよね」
藍子「幸せなのに、不安になるなんて」
P「いや……」
藍子「私、Pさんにはいつも感謝しているんです」
藍子「日常のささいな幸せしか知らなかった私を、アイドルにしてくれたこと」
藍子「未央ちゃんや茜ちゃんに出会わせてくれたこと」
藍子「ステージの上で輝く機会を与えてくれたこと」
藍子「本当に、感謝してもしきれないくらい」
藍子「Pさんからは、いっぱい幸せをもらいました」
藍子「でも……」
藍子「でも、だからこそ怖いんです」
藍子「いつかこの幸せも、失われちゃうんじゃないかって」
P「……」
藍子「すみません。おかしなこと言って」
藍子「私、わがままですよね」
P「わがまま?」
藍子「はい。ライブも成功して、Pさんがいて、たくさんの友達がいて」
藍子「こんなに毎日充実していて、なんの不満もないはずなのに」
藍子「怖いだなんて、変なこと言って」
P「そうかな」
P「誰にでもあることだよ、きっと」
藍子「……」
藍子「私、今だって思ってるんです」
P「ん?」
藍子「今だって、時間が止まって欲しいって思ってるんです」
藍子「ずっと、隣にいたいって」
藍子「このまま、離れたくないって」
藍子「いつまでも、今のままで……」
P「……」
藍子「本当、わがままですよね」
P「……そろそろ、駅だな」
藍子「……」
P「お、見ろ、藍子。あそこ」
藍子「え?」
P「駅前広場のとこ。ほら、ツリーが立ってるぞ」
藍子「わ、本当ですね」
藍子「あんなに大きなツリー、前はなかったような……」
P「まあ、もうクリスマスが近いもんな」
P「しかし、まだ何の飾り付けもしてないみたいだな」
P「ただモミの木が立ってるだけ、って感じだ」
藍子「そうですね」
藍子「ふふ、これはこれで新鮮ですね」
藍子「これからいろんなオーナメントを付けていくんでしょうね」
P「ここら一帯イルミネーションにするみたいだし」
P「電飾巻き付けて、光らせるのかもしれないな」
藍子「どんな風になるんでしょうね」
P「楽しみだな」
P「今は地味だけど、きっと見違えることだろう」
P「……うん、楽しみだ」
藍子「……Pさん?」
P「俺もな、たまに不安になる」
P「今が過去になることが惜しくなる」
P「いずれ終わりがくることが怖くなる」
藍子「……」
P「でも、ポジパの三人といるとさ」
P「不思議とそういうの、どっかに行っちゃうんだよな」
藍子「私たちといると……」
藍子「それは、どうしてですか?」
P「なんでだろうな」
P「不安より、わくわくが勝るからかな」
コメント一覧
-
- 2015年12月17日 22:56
- スレタイ見てQueen思い出した
-
- 2015年12月17日 23:27
- なんだってんだ、や藍天
-
- 2015年12月17日 23:31
- 藍子はモバPの癒しってはっきりわかんだね
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というわけで俺が持って帰ります