女騎士「クリームコロッケ」
オーク「如何にも余暇らしい過ごし方だとは思うぞ」
女騎士「というわけで今日はクリームコロッケを作りたい」
オーク「……いや、女騎士だからって何も『く』と『ころ』の響きに拘らなくても……」
女騎士「しかも『っ』まで入れ込み、『せ』を『け』に置き換え母音合わせという細やかな気遣い」エッヘン
オーク「いやまあそのなんだ」
女騎士「何だ、何か文句があるか?」ジロッ
オーク「いや、いいです」フーヤレヤレ
女騎士「全く……停戦から和平交渉に尽力している貴様を労ってやろうというのだ、だまって手料理を振る舞われていろ」フンッ
オーク「へいへい、ありがたいこって」
オーク「うん」
女騎士「で、大きめのフライパンを弱火にかけてバターを溶かす」
オーク「うん」
女騎士「バターが溶けきったらそこに小麦粉60g投入っ!」
シャーーーーッ
女騎士「焦がさないよう炒める」
オーク「お?ドロドロしてたのがボソボソになったぞ?」
女騎士「うん、だがまだ十分じゃない……ちょっと面白いからみてろ」イリイリ
イリイリイリイリイリイリイリイリ
オーク「……おお?急に溶け始めた?」
女騎士「そうなんだ。この変化を見るのが面白くて、最近ベシャメルソース作りにはまってるんだよ」
オーク「そんなに作ることあるのか?」
女騎士「……せっかくお前に振る舞うって決めたんだ、どうせなら旨いもの食べてほしいから練習するじゃないか」///
オーク「おっ?!お、おぅ……」///
オーク「へ、へぇー、そうなんだー!」アワアワ
女騎士「このフライパンを濡れ布巾の上に置いて、熱を冷ますんだ!」
ジューーーーー
オーク「出来れば今の俺達にも濡れ布巾欲しいところだなっ」
女騎士「誰が上手いことを言えと」
オーク「いきなり落ち着いたっ?!」
女騎士「そしてすかさず泡立て器で攪拌!」
シャカシャカシャカシャカ
オーク「おお、混ざる混ざる」
女騎士「ダマができると口当たりが悪くってつまらないからな」
オーク「でもあの固まり嫌いじゃない……」
女騎士(……わからないではないよ……)フッ
オーク「……なんかえらく手間掛かってません?」
女騎士「案ずるな、ソースが出来れば7割方の作業は完了したも同然」
グツグツ……トロトロ……
女騎士「鍋からへらを持ち上げた時にソースが帯状に落ちていく位が目安だな」
タララララララ
オーク「俺、そのソースのまま食いたい」
女騎士「馬鹿者!今日の目標はクリームコロッケだ、このソースは渡さん!」キッ
オーク「でも十分うまそうだぞ?」
女騎士「言うな!ならぬものはならぬ!」
オーク「なにこの戦闘モード」
女騎士「料理は格闘だ!」クワッ
オーク(ちょっとめんどくさいですこの人)フー
オーク「えー……了解ー」ショボーン
女騎士「うっ……そ、そんな顔をするな。我慢した甲斐のあるもの食わせるから!」
オーク「」ノノジノノジ
女騎士「うぅ……し、仕方あるまい。ほれ、一匙だけだぞ」スッ
オーク「!」パアァ!
女騎士「……どうだ?まだ未完だが」
オーク「旨い!女騎士さんの白くて温かくて濃いドロッとしたの、凄く美味しいれす!」ハアハア
女騎士「……表現方法に多少難ありだな、貴様」ジトメ
オーク「お歳暮の季節ですなぁ」
女騎士「オークにもお歳暮の習慣があるのか?」キョトン
オーク「細けぇことはいいんだよ」ハハハハハ
女騎士「……ま、いっか。玉ねぎ一個、人参半分、しめじ一株を微塵切りっと」タタタタ
タタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタ
女騎士「……あーもー微塵切り面倒くさい!袈裟懸けとか凪払いとか突きだけで全て粉々に砕け散れば良いのだ!」ムキーッ
オーク「そんな野菜とあなたが怖い……」
女騎士「……ふぅ、まあまあ微塵になったか。手強いものたちであった……」
オーク「野菜さんたち必ず美味しく頂くので成仏してください」ナムナム
女騎士「?その祈祷スタイルはオークの信仰か?」
オーク「あまり気にするな、ほれほれ料理に戻れ。じゃないと待ちきれなくてソースだけ先に」
女騎士「やらせはせぬ!……ったく。ではこの私の努力の結晶である微塵切りを炒めるぞ」
オーク「なあ、手伝うか?」
女騎士「いや、客の手を煩わす訳にはいかぬよ。それに本来ならとっくの昔に手伝いが」
オーク「ん?誰か来るのか?」
トントン!……ガチャ
???「ごめーん、遅れちゃったぁ……あれ?オっ君もう来てた?」テヘペロ
女騎士「遅いぞ、魔法使い。オークが手を貸そうなどと言い出したところだ」
魔法使い「おお、気遣いの出来る雄はいいねぇ♪」
オーク「そのオっ君てやめないか」
魔法使い「えー、オークよりオっ君の方が断然可愛いし」
オーク「俺、可愛さはあまり求めてないんですが」
女騎士「……鍋も洗えた事だし炒めに入るか」ハァ
女騎士「で、バターが溶けたら微塵切りにした野菜を入れてじっくり炒める……」
ジャーーーーー
女騎士「魔法使い、缶詰めを開けてかに身を解してくれないか?缶汁は取って置いてくれ」
魔法使い「いいわよん♪じゃあ鍵開けの呪文で」
女騎士「いや、それじゃ開かないから。というか普通に缶切り使えば良いから」
魔法使い「えー……だって今時の若者って缶切り使えないのよねー」キコキコ
オーク「見事に使いこなしてるじゃねえか」
女騎士「だな」ジャァジャァ
魔法使い「……このかに身をアンデッドに復活させて二人を攻撃……」ムシリムシリ……ブツブツ……ムシリムシリ
女・オ「食べ物を粗末にするんじゃないっ!」ビシッ
魔法使い「アウェイ感ハンパない……」グスン……ムシリムシリムシリムシリ
魔法使い「お手伝い遅れちゃったし……ちょっと悪いとは思ってんの。はいなっと、かに身出来たよー♪」
女騎士「有り難う。ではこの鍋の中に入れて野菜と一緒に炒めて……」ジャアジャア
女騎士「缶汁と白ワイン100mlを入れてよく煮詰める」
魔法使い「もう既に食べたい」ジュルル
女騎士「かに身をアンデッドに復活させようとした女のセリフとは思えんな」
クツクツクツクツ
オーク「もう既に食べたい」ジュルル
女騎士「貴様はベシャメルソースの件から学習しなかったのか」
クツクツクツクツクツクツクツクツ
トロトロトロトロトロトロトロトロ……
オ・魔「おおおおおおおお!」
女騎士「……で、よく混ぜながらさらに煮込む。塩、胡椒をして」サッサッパッパッ
女騎士「魔法使い、卵を黄身と白身に分けてくれ」
魔法使い「りょーかい♪」パッカーン
女騎士「鍋を火からおろして粗熱をとって……黄身を混ぜて……」
オ・魔「もう既に食べt」
女騎士「貴様等其処に直れ」チャキッ
オーク「包丁が無駄に最強武器に見える不思議!」
魔法使い「エプロンが無駄に最強防具に見えるのは何故?!」
オーク「そんなもんかなー?」
魔法使い「どんなもんかしらねー?」
女騎士「……と、それは置いておいてだな。サラダ油をごく薄く塗ったバットにこれを移し入れて、油紙で幾重かにカバーをしたら……」
魔法使い「ふふーん、出番ねー♪」
女騎士「うむ、頼んだぞ」
魔法使い「いくわよー……『氷結魔法』!!」
ヒュゴッ!……『カキーン!』
オーク「なっ……バットごと凍らせただとっ?!」
女騎士「彼女は中のソースを凍らせていないはずだ。ソースはただただ冷えていく」
魔法使い「ソースから上がる湯気はそのまま氷にしていってるからソースに余計な水気がたまってビシャビシャ、て事もない予定♪」
オーク「そりゃまた面倒くさいことをやってるなぁ」アングリ
魔法使い「そりゃもう練習しましたもの、出力調整」
オーク「え」
女騎士「見事に究めたな」ウンウン
魔法使い「嫌がらせに霜焼け作る程度から魂も抜け出せない位の凍結状態まで、ばっちこいよね」ウフフ
オーク「ニンゲンコワイヨー」
オーク「……なあ、魔法使い」ボソ
魔法使い「ん?なぁに?」
オーク「女騎士……普段から料理するのか?」
魔法使い「うん、趣味みたいね」
オーク「ほう?」
魔法使い「何でもねぇ、昔お芝居でみた、戦艦に乗っていた元アサシンかなんかのコックが、乗り込んできたテ口リストを駆逐していくお話に憧れてるんだって」
オーク「……はあ?」アゼン
魔法使い「『私も退任したらどこかの要塞で料理を作りながら、いざという時に敵を薙ぎ倒すような活躍がしてみたい』とか言っちゃってるわねぇ」
オーク「……はあ……」ポカーン
コメント一覧
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- 2015年12月17日 22:29
- ベシャメルソース作った段階で満足してグラタンかドリアにしちゃうんだよなあ
揚げ物はホントめんどい クリームコロッケは更に凍らせるから尚の事めんどい
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- 2015年12月17日 23:35
- お腹が空いてくるんだよなあ
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- 2015年12月17日 23:42
- クッソ古いテフロン加工が剥げたフライパンで小麦粉炒めてフライパンにとどめを刺してしまったトラウマが
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SSはこうゆうのでイインダヨ(個人感)