去年あたりから話題になっていたAndroidアプリをマルチウィンドウ表示可能なOS=Remix OSですが、クラウドファンドで資金を調達し、つい最近このOSを搭載した小型PCを販売開始しました。価格は何と$69.99。安過ぎて若干不安ですが、駄目元で購入したのでご紹介します。
Androidアプリがマルチウィンドウで作動するデスクトップ環境=Remix OS
Androidは随分前からキーボードとマウスに対応し、デスクトップPCっぽく使うことができました。但し、全画面のみの表示に加え、ほとんどのアプリがタブレットUIに対応していないこともあり、モニターで表示すると、単に横に間延びした非常に見辛い状況となります。またAndroid 6.0のベータ版まではSplitViewに対応していましたが、リリース版ではアプリ側の対応が必要なこともありDisableになり、先の問題を抱えたままです。
そこに登場したのがAndroidをベースにしたRemix OSです。Androidアプリがそのまま使える上、マルチウィンドウにも対応しています。百聞は一見に如かず。以下の画面キャプチャをご覧ください。
Remix OSのデスクトップ環境
左下にアプリメニュー、下にタスクバー。そしてChrome、YouTube、Excel Mobile、Facebook、Twitterアプリがマルチウィンドウで動いています。ご覧になって「おっ!」と思われた方も多いのではないでしょうか。
またYouTubeとExcel MobileアプリはタブレットUIに対応しているのでタブレットUIで、その他のアプリはスマホUIのまま表示と、2つのUIが混在しています。もちろんどちらもウィンドウサイズを変更でき、最小/最大(ウィンドウ)/終了のボタンも右上にあります。Google設定やES File Explorerなど、一部全画面でしか作動しないアプリもあるようです。
一点面白いのはAndroid搭載機にある[戻る]ボタンの実装方法です。[ホーム]ボタンはウィンドウを切り替えればいいのでもともと不要ですが、アプリ内で前画面に戻るときは[戻る]ボタンが必要となります。これはウィンドウ枠の左上に矢印があり、それをクリックすることで[戻る]ボタン相当となります。なるほどうまい仕掛けです。
Androidは5.1相当です。Remix OSは2.0.104(左) / 標準搭載のアプリ。空白の部分は後からインストールしたアプリで消しています(右)
Remix OSはOTAに対応しているのでOSのアップデートは簡単です。実際初期起動時に一度アップデートがありました。作業自体は数分で終わります。
標準搭載のアプリはご覧のようにかなり少ないですが、Google Playストアが使えるので問題ありません。独自仕様のFile Managerは、ドラッグ&ドロップにも対応。またアプリ間で文字のコピー・ペーストも使え、ほとんどWindowsと同じ感覚で操作可能です。それなりの時間試用しましたが、OSの完成度はかなり高い気がします。
小型PC Remix Mini
これまでRemix OSは、Nexus 9、Nexus 10、Cube i7、Teclast X98 Air3など、既存のAndroidマシンに対応していましたが、今回、独自に開発した、Remix Ultratabletと、Remix Miniが追加され、Remix OS Readyの状態で出荷されます。USのAmazonなどで購入可能なので、興味のある人は検索してください。フロント。正面にPower LED、上のロゴはタップで電源ON(左) / リア。電源入力、Ethernet、USB 2.0×2、microSDカードスロット、HDMI、ヘッドホン出力(右)
付属品はACアダプタ、変換プラグ、HDMIケーブル(左) / パッケージはシンプルです(右)
Remix Mini仕様
プロセッサ | 1.2GHz quad-core cortex A53 (64-bit) Allwinner | |
---|---|---|
メモリ | 2GB | |
ストレージ | 16GB/eMMC+microSDカード | |
OS | Remix OS 2.0 | |
ビデオ | H.265 4K hardware decoding 1080P HDMI output Support for 1920*1080 resolution | |
インターフェース | Ethernet(10/100)、IEEE802.11b/g/n Bluetooth 4.0、USB 2.0×2 microSDカードスロット、HDMI、ヘッドホン出力 | |
サイズ | 124.27×88.20×26mm(幅×奥行き×高さ) |
主な仕様は表をご覧ください。クロック1.2GHz、クアッドコア、メモリ2GB、ストレージ16GB/eMMC、Wi-Fi、Bluetooth、USB 2.0、microSDカードスロット、HDMI...と、今時の小型PCにありがちなスペックです。特に目新しい部分はありません。逆にこのスペックなので$69.99と言う価格が実現できるのでしょう。ボディーもコンパクトで手のひらサイズです。試したところUSB Audioも作動しました。
気になる速度ですが、Google Octane 2.0とAnTuTuベンチマーク6.0のスコアは以下の通りです。残念ながら2015年のAndroidマシンとしてはかなり遅く、Nexus 7(2013)と比較しても約2/3のパフォーマンスしかありません。
ただ実際にFacebookアプリなどを操作すると普通に使え、IMEももっさりせず変換できます。アプリの起動も速く、全体的にあまりストレスは感じません。
但し、Chromeで昔ながらのサイトはスッと出ますが、本サイトのようにJavascriptを多用した今時のサイトだと少しレンダリングに時間がかかります。この点はAtom搭載のWindowsタブレットと似ています。
Google Octane 2.0は2838、AnTuTuベンチマーク6.0は25900。Nexus 7(2013)がそれぞれ3331と34390なので、約2/3ほどの速度と遅いです
互換性は画面キャプチャにあるような、必需品的アプリは動きました。おそらくシステム的にカーネル部分は触らず、画面系だけマルチウィンドウ化している雰囲気で、それなりに大丈夫ではないでしょうか。
日本語環境は問題無し
気になる日本語環境ですが全く問題ありません。海外からSIMロックフリーのAndroidスマホを購入した時と同様、ベースがAndroidなので各国語に対応しています。
初期起動時のセットアップでは英語か中国語しか選べません。まず英語でインストールして、設定の「言語と入力」で日本語に切り替えます。この辺りは素のAndroidと同じです。但しキーボードはASCII配列しか認識しないので、WnnなどIMEを別途インストールすることによってJIS配列キーボードも使えるようになります。[半角/全角]キーでモードがトグルします
GmailアプリはタブレットUIに対応しているのでこのように表示されます。IMEをONにして漢字入力中です。添付している画面キャプチャはメモリ使用状況(クリアもできます)とカレンダーです
以上簡単ですが、Remix OSと、それを搭載したRemix Miniをご紹介しました。実際に使ってみると十分アリな環境と言うことが分かると共に、もしGoogleがこの機能をAndroidに組み込むと、Windows 10 Mobileで実現しようとしているContinuumと完全に競合します。
ARMのパワーがPC並みになってきた昨今、スマホからデスクトップへのアプローチと、デスクトップからスマホへのアプローチ、双方ある中、近い将来どうなっているのか今から非常に楽しみです。