少年「あれ……おかしいな、君が居ないよ」
この作品とは関係ありませんが、完結していますので、もし良かったらどうぞ。
少女「実験体……ですか」
女「ええ、非合法の人体実験……。ですが、貴女に断る権利なんて有りませんよ? そこは勿論理解していますよね?」
少女「……どうして」
女「理解していますよね?」
少女「…………」
女「……さて、貴女にはこれから部屋を与えます。12才の少年と同じ部屋ですが……。確か貴女は15歳でしたね。思春期真っ盛りと言ったところでしょうが、まあ、気にせず暮らせますよ」
少女「……どういう事ですか?」
女「着替えなんかも、彼の前で行って貰って何も問題ありません。彼には全く見えていませんから」
女「ええ、現在は彼を使って新しい視力回復の方法の実験をしています。ですけど普通の子ですから、まあ接することにおいては心配いりませんよ」
少女「そう……ですか」
女「……この部屋です。彼が中に居ます、仲良くしてあげてください」
少女「は、はい。分かりました」
女「……では、私はこれで」
少女「…………どんな子だろう……」
コンコン
少年「あ、今開けまーす」
少女(なんか、緊張するな……)
ガチャッ
少年「初めまして! 貴女の顔が見れないのが、非常に残念です……。これからよろしくお願いします!」
◆◇◆◇
少女「ベッドと……トイレ……。それとラジオ……」
少年「それしかないですよ、この部屋には。余計なものがあっても僕にとっては邪魔でしかないですから」
少女「着替えとかは?」
少年「見ての通り、被験者用の服を着ています。一応この施設ではこれを着る指定だそうですので、貴女も同じものを着ていると思うのですが、どうなんでしょう?」
少女「ん、そうだね。私と同じ」
少年「では、毎朝女さんが届けてくれますよ」
少女「まあ、それは良いとして……トイレが剥き出しなんだけど……」
少年「扉は有っても邪魔なだけです」
少女「……仕方ないのかなあ…………」
少年「そうですね。テレビは見れませんし、本も読めませんし」
少女「私は、テレビ欲しいかも……」
少年「女さんに頼んでみてはいかがですか? 僕もそうしてラジオを貰いましたし」
少女「じゃあ、そうしようかな……」
少年「あ、少女さん」
少女「はい、なんでしょう」
少年「ちょっと失礼しますね」スッ
少女「……えっ?」
少年「少し、顔を触らしてください」ペタペタ
少女「な……なん……」
少年「僕にも目が見えていた時代というものがありましたので、やっぱり見た目は気になるものです。こうして触れば少しは分かるのではと」ペタペタ
少女(うわああ! 凄い照れる……! まだ無邪気と言うか……何か……)
少女(何で分かるの!? 目で見ない分他の感覚が優れてるとか……?)
少年「ふむ…………」スッ
少女「えーと……満足?」
少年「ええ! 多分少女さんは綺麗な方です!」
少女「…………っ!」
少年「……どうしました? 急に静かに……」
少女「なっ、何でもない! そうかー! 嬉しいなあ!」
少年「目が見えるときに出会いたかったものです。早く視力が回復すれば良いのですが」
少女(もう! ……もう! 何か恥ずかしい……!)
少年「確か、二年ほど前から居ます」
少女「その時から、視力回復の実験を?」
少年「いいえ、その時はまた別の実験をしてました。……その最中に視力を失ったので、現在は視力回復の実験をしていますが」
少女「へー。じゃあ目が見えなくなったのは最近なんだ」
少年「そうですね」
少女(待って……じゃあやっぱりこの子の前で着替えたりトイレしたりするのって、普通の子の前でするのと変わらないんじゃ……)
少年「あ、そういえば寝るところはどうするんでしょうね」
少女「え……? あ、ああ。寝るところね。確かにベッドひとつしかないもんね」
少年「これも女さんに相談ですね……」
少女(開かない……。ドアはこっちからじゃ開けられないのかな……?)
少年「開きませんよ。そこが開くのは実験に連れ出されるときなど、施設関係者が鍵を使った時だけです」
少女「さっき内側から開けてなかったけ?」
少年「あの時は女さんから言伝があったんですよ。解除しとくからノックされたら自分で開けろって」
少女「良いのそんなんで……」
少年「この施設の人は鍵に無頓着なんですよ。たかだか個人部屋から出られただけでこの施設から逃げ出すことは出来ませんから」
少女「……絶対に?」
少年「試しにやってみたらいかがですか? 最悪の場合は殺されると聞きましたけど」
少女「やめておきます……」
少年「それが一番だと思いますよ。命は大切にしないといけませんからね。まあ、実験体が言うことでもないのでしょうが」
少女「命……ね。確かに大切にしないと……」
少年「……?」
少年「外はこれから雨になるんですね」
少女「そうみたい」
少年「もう随分と雨音を聞いていません」
少女「別に聞きたくなるようなものでもないんじゃない?」
少年「一年くらいここにいれば分かりますよ」
少女「何かそれは分かりたくもないなあ」
ガチャッ
少女「……!」
女「……少女さん、外へ」
少女「は……はい」
少年「では、いってらっしゃいです」
少女「……ん」
女「どうですか、少年君は」
少女「えと……何か無邪気と言うか、でも普通の子でした」
女「そうですか」
少女「あの…………」
女「はい?」
少女「どうして私は男の子と同じ部屋なんですか?」
女「特に理由はありませんよ。未成年の被験者というのは少ないので、適当に詰め込んでる感じです。彼は実験によって視力を失っているので、一時的な観察として一人部屋にしていたのですが、そろそろ問題ないかと」
少女「……」
女「それに、実験でおかしくなった人と同じ部屋なんて嫌でしょう?」
少女「……おかしくなることがあるんですか?」
女「貴女に行う実験ではその心配はありませんよ。まあつまりですね、少年君と貴女は数少ない精神異常を起こさない実験の被験者に選ばれているという事です」
少女「……あの、私って何の実験を受けるんですか?」
女「秘密です。が、成功に近づけば自ずと分かってきますよ」
少女「えと……じゃあ、今から私は何をするのでしょうか……」
女「薬物の投与です。……まあ多分危険ドラッグとかではないと思います。一応貴女の身体の保護には最善を尽くすとの報告を受けていますので」
少女「一応…………多分…………」
女「まあ、そのくらい良く分からないことをしているんですよ、ここは」
少女「私……大丈夫ですかね」
女「どうでしょう、私には分かりませんね」
少年「どうでしたか?」
少女「何か、注射された」
少年「ああ、僕も昔はされてましたよ」
少女「何の実験なのか、教えてもらえた?」
少年「いえ全く。聞いても答えてくれませんでした」
少女「はあ~……。何なんだろ。何が注射されたのかも分からないし……」
少年「まあ、気に病んでも仕方がないですよ」
少女「……そうだね」
少年「……あの、すいません」
少女「ん、なに?」
少年「今からトイレ……良いですかね?」
少女「……っ!?」
少年「あの……」
少女「え!? ああうん、どうぞ! 気にしないで!」
少年「…………? えっと、じゃあ失礼しますね」
少女(あっ、見ないように見ないように!)クルッ
少年「…………」チョロロロ
少女(あーっ! 聞こえない聞こえない!)
少年「ふう……」
少女(ただ壁がないだけなのに……!)
少年「すいません。終わりました」ジョボボ
少女「…………はい、手洗った?」
少年「勿論です……ってあれ、タオルがない…………」
少女「……右」
少年「あっ、すいません」フキフキ
少女(簡易的なので良いから壁を頼もう……)
少女「そうだね、何かする?」
少年「言葉遊びくらいしか出来ないんですよね……、目は見えませんし、どうせ何もないですし」
少女「ん……、あっそうだ」
少年「どうしました?」
少女「1足す1は?」
少年「2ですね……」
少女「田んぼの田でした!」
少年「…………」
少女「…………」
少年「僕はそれで盛り上がれるほど子供じゃないです」
少女「ごめん」
少女「どうぞ」
少年「1足す1は?」
少女「田んぼの田?」
少年「…………」
少女「……2」
少年「では、2足す2は?」
少女「4」
少年「4足す4は?」
少女「8」
少年「8足す8は?」
少女「16」
少女「えっと……32」
少年「32足す32は?」
少女「…………64!」
少年「さて」
少女「これまさかずっと増やしていくだけ?」
少年「いえ、次で最後です……。64足す64は?」
少女「えーと……60足す60で120……8で……128!」
少年「では、5から12の中で好きな数字を思い浮かべてみてください」
少女「え……っと」
少年「言わないでくださいね?」
少女「……はい、思い浮かべた」
コメント一覧
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- 2015年12月21日 22:26
- 悪くはないけど、そこで終わりかぁ…