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チームPerfumeの舞台裏に迫る、SXSWライブ直撃インタビュー : ギズモード・ジャパン

チームPerfumeの舞台裏に迫る、SXSWライブ直撃インタビュー

2015.12.22 20:00
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2015年という年は、Perfumeファンにとって大きな記憶となって残る年になりました。

3月のSXSW(South by Southwest)でのライブパフォーマンス。9月には結成15周年・メジャーデビュー10周年のアニバーサリーイベント&ライブ。そして、10月末には初のドキュメンタリー映画と、これだけバラエティーにとんで、いろいろなトピックが集中した年なんてそうそうないからです。

そこで今回は、その2015年の起点ともなった3月のSXSWの現場についてのロングインタビューをお送りします。

インタビューのお相手は、テクノロジーを駆使したインタラクティブなメディアアートを得意とするクリエイター集団ライゾマティクスの真鍋大度さん。実は、そのSXSWのステージが終わった直後の3月17日に真鍋さんをつかまえてインタビューを実施していたのでした。

SXSWでのPerfumeのパフォーマンス「STORY」は、その現場の様子、ライブ中継、ライブ後の熱狂について、ネットに多くのことが流れたこともあり、記憶している人は今でも多いと思います。ただアメリカでのイベントでのことですから、その内容を見たことがある人は、少なかったのです。

それが日本で初披露されたのは、メジャーデビュー10周年記念ライブ「LIVE 3:5:6:9」でのこと。このライブパフォーマンスはACC CM FESTIVALの総務大臣賞 / ACCグランプリグッドデザイン賞のダブル受賞をしていたこともあり、その意味でもまさにお披露目だったのです。

そして、さらにここから現在も公開中のドキュメンタリー映画「WE ARE Perfume -WORLD TOUR 3rd DOCUMENT」に続くことで、そのライブパフォーマンスの内容を多くの人が知ることになります。



この予告編の0:47付近に出ているのがSXSWでのライブパフォーマンスです。もちろん、本編でもばっちり出てきます。

このすさまじいライブパフォーマンスはどうやって実現されたのでしょう。その鍵を握っているのが、チームPerfumeです。

このチームPerfumeについての話は、なかなか表には出てきません。それをお伝えできるのが、今回の真鍋大度さんへのロングインタビューなのです。

さて、この記事でこれからする話は、Perfumeというグループが、いかにすごいチームを作り上げているかという話です。順番に話していくので、どうかじっくり読んで欲しいのです。


SXSWステージ


さて、まずはこのPerfumeが立ったSXSWのステージについて説明しなくてはいけません。SXSWというイベントについては、細かくは書きませんが、とにかく世界最大クラスのテクノロジーと音楽とその他もろもろのごった煮イベントと考えてください。世界中から目の肥えた客がオースティンという場所を目がけてやってくるのです。ツイッターが最初にブレイクしたのは、このSXSWでの情報共有が発端だったと言えば、なんとなくその感じが伝わるでしょうか。

今回のプロジェクト、そもそもどこから始まったのかというと、PerfumeがSXSWミュージックの初日かつ、SXSWインタラクティブの最終日となる17日に、ヘッドライナーとしてトリのパフォーマンスをオファーされたことを発端としています。

SXSWですから、音楽関係者だけではなく、テクノロジービジネスの最先端にいる人たちが集まってきます。そんな場所で音楽だけではなくて、テクノロジーの面でも注目され、かつこれをきっかけにして、世界中から新しいファンが増えるようなアプローチが必要となってくる厳しいステージです。

そのため、ここに向けて、数多くの準備がされています。まずは新曲。なんとSXSWのためのプロジェクト楽曲を、中田ヤスタカさんにオファー。最新のPerfume、SXSWからこれからに向けての想いを曲と歌詞に込め、この新曲にテクノロジーチームも入って全く新しい演出を作って披露することになったそうです。現地からの中継は一曲だったのですが、その一曲に入魂というわけです。

現地のSXSWステージは、アリーナクラスのアーティストが狭い空間で近くに感じられることでも知られ、ここ数年Perfumeがやってきた大箱とは違う演出が必要。しかも、日本や世界から中継で応援してくれる人も現地と同じぐらいにPerfumeのパフォーマンスを楽しめるものでないとダメですよという、なんというムリゲーな企画ですか。


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そこに対して、このチームはこんな展開をしました。

・会場全体にモーションキャプチャーカメラを設置
・会場全体をスキャンし3Dモデルを作成
・複数の撮影カメラにマーカーを取り付けカメラの位置、角度を取得。それらの情報と3Dモデルの情報を用いたカメラ映像モーフィングシステムを開発
・スクリーンにマーカーを取り付け位置、角度を取得し自動でプロジェクション画角を補正するシステムを開発
・リアルとバーチャルの世界をシームレスに行き来するために上記の情報、システムを使用


突撃チャットインタビュー(前編)


さて、ここまで、すでにそこそこ長くなっているのですが、ここからが本番です。

説明をしておくと、真鍋大度さんが担当しているのはこのステージのテクノロジー面。そして、このインタビューは真鍋さんがSXSWを終えて空港にいるところを捕まえて半ば無理やりにチャット取材したものです。つまり、この取材は2015年3月17日のライブパフォーマンス当日に行ったのです。ありがとうございました。

では、どうぞ。

いしたにまさき(以下I):YouTubeの中継見てました。なんですか、あのカメラ。もう至るところで話題。意味わかんない(笑)。

真鍋大度氏(以下M):ありがとうございます! しかし....これはPerfumeがすごいのです…。

I:Perfumeがすごいんだよ!って、いい話だ。

M:そりゃそうですよ。Perfumeじゃなきゃできないスキルセット、皆を奮い立たせる能力、運の良さ。ギズモードに、これだけは掲載しておいてください(笑)。

I:えーと、もう少し話があって…日本側は、中継されたあの一曲しか見てないもので…。

M:取材の件、どこまで仕組みを明かして良いか分からないのですが…事前に会場を丸っとスキャンしていたり、メンバーをスキャンするなどテック的には組み合わせの妙があるのですが、でもすごいのはこういうのをきちんと演出に落とし込むところですね。

I:インタビュー、ここでやっていいですか(笑)。

M:どうぞ(笑)。バーチャルとリアルを跨ぐと言うコンセプトは昔からPerfumeがやっていることですよね。基本的なコンセプトは継承しつつ新たな表現を追求して今回の仕組みを考えて演出家のMIKIKO先生に提案したというところです。

I:あああ、なんか見えてきた感じ。


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M:リアリティのない世界リアルな会場シームレスに行ったり来たりところがポイントです。

I:YouTubeの中継では、その辺の切り替わりがほとんどわかりませんでしたけど、カメラがこの位置にないはずなのにあるから、そこがバーチャルってことですね。

M:ですね。リアルの世界の会場で踊るPerfumeも時空を超えたバーチャルの世界で踊るPerfumeも寸分違わず同じ動きをしてます。凄いですよ。

I:あああ!そこなんですよね。

M:そこなんです。

I:リアルがリアルとしてすごいから、バーチャルとして展開可能。

M:訓練されたダンサーならできるのでは、と思うかもしれませんが本番環境で一度も踊ってないんですよ。彼女たち。ものすごい過酷な条件ですよ。ぶっつけ本番。プロジェクションで眩しい中、しかも暗い中正確に踊らなくてはならないので相当難易度高いですよ(笑)。

I:え、ぶっつけ?

M:はい。当日早朝に来るはずの電源が5時間遅れて届いて

I:なんてこった…。

M:記憶力と記憶スピード。現場力ハンパないので。あと、どうやって見せたらもっと良くなるかっていうアイディアもガンガン出てきます。プロですね。彼女たち自身はその凄さをアピールしないので目立たないところですが。

I:逆に目立ったら、それはそれでおかしいわけですからね。高度すぎると一見普通に馴染んでしまって、すごさがわかりにくくなってしまうというやつですね。

M:後はMIKIKOさんのテクノロジーの翻訳能力ですね。

I:そこも知りたい! それは知りたい。

M:今回みたいな特殊な条件、というか制約だらけのステージと新規の複雑なシステムを使って演出を考えるっていうのは大変だと思います。ちなみに映像のコンテも照明やカメラワークの指示書もMIKIKO先生が作ってますよ。

I:えええええええええええええええええ! びっくりした! ホントにびっくりした。そっか、そこまで考えているんですね。

M:演出家ですから、照明とかも。ライゾマが演出とか言われたりするのは甚だ間違いでして…。

I:外からみると演出のパートが違うということなのかなあと思います。それにしてもいいチームですね。でも、総合ディレクションの人がいちばん繊細なアーティストの身体の部分を完璧に把握して振付をして、それをまたアーティスト本人たちが完全に再現するから、あのパフォーマンスが可能になっているというのがすごみなんですよね。アナログ的な精度の高さがあるから、そこに遠慮なくデジタル技術を注ぎ込める。なんか、やっぱとんでもないですよ、これ(笑)。Perfumeってなんなんですかね。アスリートじゃないし、情緒的なだけじゃないし、もちろんマシーンでもないしこれはなんなんだろう(笑)。

M:それは僕ではなくPerfumeとMIKIKO先生に聞くのがいいかもしれないですね。

I:あはは。ファン根性丸出しでいいますけど、最初の横アリのオープニング、つまりワンルームディスコの出だしですね。あれ、脳内で完全再生できるんですよ、私(笑)。腕の角度まで脳内で再現できる。でも、それって私の記憶力がいいとかいう問題じゃなくて、記録してしまうだけの強度を持っていたんだなあ。今日の話を聞いていて、そう思いました。動作の精度が高いから、すっと記憶できちゃう。最初の横アリって、何年前だよ(笑)。

M:いまMIKIKO先生と遭遇しました(笑)。何か聞きましょうかね…?

I:え! ええ! どうしよう…。

ということで、なんとMIKIKO先生からもコメントをいただいてしまいました。なんというラッキー感あふれるインタビューなんでしょう(笑)。ということで、以下、MIKIKO先生からのコメントです。


MIKIKO先生コメント



今回のパフォーマンスはカンヌに引き続き電通菅野さんにお話を頂きました。

Perfumeの3人からもSXSWでしかできない新しいチャレンジをしてみたい! 日本にいるファン、世界中にいるファンと一緒に作り出すパフォーマンスがしたい!と話があり、ワールドツアーを3回経験した彼女達が今何を表現するべきか話し合いを重ねました。

SXSWは小箱で話題のアーティストのライブが見られるのが醍醐味だそうなのですが、ステージのサイズが想像以上に狭くまともには踊れない、照明装置があまりないからいつものような光の演出ができない、ステージの構造上映像を背負って踊ることができない、という条件でいつになく難解な設定でした。

なので、今回はこの条件を楽しむしかない!と頭を切り替えてメンバーが自分たちで動かす移動式ハーフスクリーンのマッピングを使うアイディアや、中継映像にエフェクトを加えて映像とメンバーがコラボを行うアイディアをベースに演出を模索することにしました。

彼女たちのリアリティやアイデンティティはどこにあるのかということを考えながら、大度さんに技術的なアイディアを頂き演出や映像を構成していきました。

グラフィックにはtakcomさん、ライゾマのテッシーさんという、私が今一番リスペクトしているビジュアルアーティストに参加してもらっていますが、途中で出てくる文字はみなさんがtranslyricsのウェブサイトで翻訳してくださった歌詞です。

中田さんには今回の演出の意図、3人の想いを伝えて作曲をお願いしたのですが、ドンピシャの楽曲が送られてきて演出をする上でもインスピレーションを数多く頂きました。

カンヌでもリハーサルができずぶっつけ本番、今回のステージでも実際にプロジェクションをして踊ることができたのは本番のみという、パフォーマーに取っては非常にシビアな条件でしたが、Perfumeの3人は逆境をモノともせずにいつも通りテクノロジーとのコラボレーションを楽しみながら堂々としたパフォーマンスを見せてくれました。


突撃チャットインタビュー(後編)


ということでこれを踏まえて、真鍋さんへのチャットインタビューをもう少し読み解いていきます。

M:あとは翻訳サイトである「Perfume Translyrics Project」ですね。


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「Perfume Translyrics Project」


・Perfumeは、ファンとの関係を何より大事に考えて表現をつくっている。SXSWのちょうど一週間前に立ち上げた「Perfume Translyrics Project」は、Perfumeの楽曲の歌詞を世界中のみんなの力で46の言語で翻訳し、投稿していく参加型のプロジェクト

・3月に結成15周年、9月にメジャーデビューアニバーサリーイヤーにもふさわしいプロジェクトとして企画された

・3回のワールドツアー、全米デビューを経て、世界中のファンたちが参加してもらえる、楽しむことができるプロジェクト

・これまで日本語がわからず歌詞の意味やそれに呼応する振り付けの意味がわからなかったファンや、これまでPerfumeの音楽を聞くきっかけのなかった世界中のひとたちが曲を聴くきっかけになりえるサイト


I:中継前、YouTubeのコメント欄にメキシコから書きこみすげえ入ってましたよ(笑)。

M:メキシコに来いって話ですよね、きっと。

I:あれを見てて、ああ、翻訳サイト届いたんだなあと思いました。おれなにもしてないけど、それ見てすげえうれしかったです。ちゃんとファンに言葉が届いているじゃん!!って。

M:事前に集めたデータを演出に使うというのもPerfumeならではですよね。

M:我々はあくまでパフォーマンスや楽曲、演出ありきのテックサポート。裏方です。

I:真鍋さんの前で言うのもなんなんですけど「ライゾマすげえ」って、そうじゃないだろ全部だよ、なにが欠けてもダメなんだよ、と。

M:今回のライブを実現するためにビックリするくらい多くの人数が関わっています。

I:なるほど、ホントは映画みたいな長いクレジットが必要なんですね(笑)。

M:まさに総合芸術ですよ。


そしてこのステージを含むドキュメンタリー映画へ


PerfumeのSXSWのライブステージ。総合芸術としてのライブステージ。もちろん、このステージ、私は現地の様子は知る由もないのですが、幸い友人の何人かが現地で見ていたので、その様子を知ることは少しできました。これが面白いのですが、意見が真っ二つに割れているのです。

・最前線に陣取ったせいで、全体がわからなかった。これ中継の方がいいかも
・中継は中継ですごいと思ったけど、現場の動くパネルのすごさを体感した感覚とはまた違うと思う

この感想、いろんな受け取り方があると思うのですが、私は中継も現場も楽しませるというMIKIKO先生の狙いが見事に的中した結果と受け取っていいのではないかと思いました。

そして、もう一度説明しましょう。

このチームPerfumeの様子は10月31日から日米で同時公開となった初のドキュメンタリー映画「WE ARE Perfume -WORLD TOUR 3rd DOCUMENT」で、見ることができます。



まだロングラン上映が日本全国で続いています。これから見たい人、もう一度見たい人は、以下の映画のオフィシャルサイトで上映館をご確認ください。

そして、このPerfumeの映画は、すでに海外にも広がっています。その中には、インタビューの中にも出てきたメキシコも含まれています。やっぱりメキシコにも届いたんですね。

このチームPerfumeがこのチームらしい仕事をする限り、ファンとPerfumeの幸福な関係はいつまでも続くのではないでしょうか。


source: WE ARE Perfume, Rhizomatiks

(いしたにまさき、野間恒毅)

写真提供:アミューズ

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