アマゾン傘下の半導体メーカー Annapurna Labsが、 プラットフォーム・オン・チップ プロセッサ Alpine シリーズをOEMメーカー向けに発表しました。主な対象はWiFiルータやNAS、ホームゲートウェイなどの機器。
比較的非力なことが多い家庭内ネットワーク機器に、4K動画ストリーミングにも対応する最大10Gbpsの有線・無線ネットワーク、高速なストレージインターフェース、暗号化、IoT規格対応、クラウドサービスへの接続といった機能を提供し、いわゆるコネクテッドホームに向けた性能底上げを狙います。
Annapurna Labs (アンナプルナ)は、2011年に創業したイスラエルの半導体企業。アマゾンは2015年1月に約3億5000万ドルを投じて傘下に納めました。
アンナプルナのAlpine シリーズはARMベースのプラットフォーム・オン・チップ製品。すでにASUSやNETGEAR、SynologyやQNAPといったメーカーから、採用ルータやNASが市販されています。
Alpine シリーズの仕様は、ARM v7 (32bit)またはARM v8 (64bit)の最大4CPUコア、DDR4メモリや2MB L2キャッシュ、PCIe Gen3やマルチギガビット有線・無線ネットワーク対応など。OSはLinux および FreeBSDをサポートし、採用OEMにはハードウェア開発キット(HDK)一式も提供します。
家庭内でリッチなサービスを動かせる機器がPC程度しかなかった時代、ルータはネットワーク接続だけを担当する機械、NASはネットワークにつながっただけのストレージでした。しかし家電もセキュリティも配電もネットにつながる時代には、常時通電で常時接続のルータなどは、いわゆるコネクテッドホームのハブになり得ます。
逆にいえばそこの性能が低いと、せっかくネット接続機器が家中に溢れていても、クラウドにすばらしいサービスがあっても、ゲートウェイがボトルネックになって使えなかったり快適でなかったりすることになります。
Apline はアマゾンのサービスにしかつながらないわけではありませんが、Amazon S3,Glacier, Cloud Driveといったクラウドサービスとの容易な接続が売りのひとつ。
またアマゾン本体も、部屋中どこにいても話しかければ家電やネットサービスの操作をしてくれる円筒スピーカー型コンピュータ Amazon Echo や、押すと消耗品の補充が届く注文ボタンデバイス Amazon Dashボタン、Dashの機能を家電に組み込むAPIなどなど、スマートホーム、コネクテッドホームに着々と手を打っています。アンナプルナの買収と半導体ビジネス参入も、IoT時代を取るための戦略と考えられます。なお、Amazon EchoのメインプロセッサはTI製。今のところ自社のAlpineベースではありません。