大和「あなたとならどこまでも」
大和「まだお休みになられてなかったのですか?」 というSSの続きというか一応本編になります
恐らくは前作を読んでいなくても大丈夫だと思いますので
よろしくお願いします
とある前線基地近くの沖。
大和「昨夜。基地が深海棲艦隊に急襲されました」
大和「提督の指揮や艦娘の 奮闘により基地の陥落こそ免れましたが、敵の兵力も多く次に総攻撃されたら持ち堪える事が出来ない程の痛手を負いました」
大和「この基地には貴重な資材や重要な機密情報も多く保管されていて、破損した艦娘と共に安全圏内まで退避させなければなりません」
大和「しかし全ての艦娘を退避させたら確実に追い付かれてしまい、今度こそ全滅してしまう」
大和「ですから艦娘の内、誰かを壁役として深海棲艦の足止めをしなくてはいけない」
大和「そして最小の艦数でそれをこなすには、この基地の艦娘の中で最も火力が高く、且つ先ほどの闘いで損傷の少なかった私
が、その【御役目】を果たす事になりました」
大和「そこまでは分ります。私一隻で艦娘たちや他の提督や軍の方々、それに貴重な資材や情報を護れるのなら、寧ろ艦娘としての本懐です」
大和「ですが――――――」
大和「なぜ私と一緒に貴方がここに残られているのですか?」
大和「提督」
提督「残ってるって。何だ大和お前、怒ってんのか?」
大和「そうです。怒っているんです。なんですかこの戦場に提督が船に乗って来るなんて」
提督「お前が俺に怒るなんて珍しいな」
大和「当り前じゃないですか?ここは私一人が残れればいいのに、どうして提督が―――――」
提督「そりゃそうだろ?だってお前は俺の秘書艦であり、旗艦なんだから」
大和「!!提督…でも―――――」
提督「俺は昔はこのやり方でやってきたんだ、まぁ色々あってここの司令官になってからは、基地に籠る事が多くなって、この船に乗って指揮を採る事もなくなったんだが……」
大和「そうですよ。艦娘の多くは各々の提督をお慕いしているんです。その提督を危険な戦場に出させるなんて、寧ろ気が気じゃないんですよ」
提督「全くお前たち艦娘は……」はぁ
大和「まだ間に合いますから、提督は今すぐにでもその船を旋回させて、撤退中の残存艦隊と合流して下さい。私は皆に、何よりも提督に生きていて欲しいからこそ、死地(ここ)に残ったのですよ?」
提督「その気持ちは嬉しいが、悪いが艦娘たちを撤退させるためにここに誰かを残すのも、俺の旗艦であるお前にその役目を命じたのも俺だ。その俺が、お前を残してのこのこ撤退なんか出来るか」
大和「提督……ですが――――――」
提督「それに艦娘最高の戦力と容姿を誇ると謳われたお前にこんな役を負わせるんだ、俺一人の道連れ位じゃとても釣り合わんが、これで赦して欲しいと思っている」
大和「!!――――――そのお言葉、寧ろ私には勿体無いくらいです」
大和「ですが…それ以前に私だって艦娘の端くれです。お国の為に軍の為にこの命を捧げる事に何の躊躇もありません。既に覚悟は…出来ています」
提督「そうか……」
大和「ですから、私は今回の提督の御決断に何の不服もありません。寧ろ私を選んでくれた事が嬉しいくらいです。恐らくほかの艦娘たちも同じ気持ちでしょう」
提督「確かに…お前以外にもこの役を自ら買って出る艦娘も多かったな……特に鳥海なんかは私も提督にお供しますって、俺に泣いてしがみ付いて離れようとしなかったしな」
大和「鳥海は基地の司令官である提督付きの補佐艦でしたから……」
提督「その鳥海を俺から無理やり引き離して説得してくれたのもお前だったな。ただ、あの時のお前は少々鬼気迫るモノがあったが……」
大和「うっ…そっそうでしたか?あはは///////」あせっ
提督(声に出して言えんが…あの時のお前の貌と声色に、あの状態の鳥海でさえ顔が蒼褪めていたけどな……)
提督「……だが有り難かったよ、軍艦としてもそうだが、あいつの知識と智謀。それにサポート、事務処理、解析の能力は艦娘の…いや、軍全体の中でも群を抜いていて、とても有益で貴重なものだ。いずれ軍にとってあいつは必ず重要な存在になる」
大和「そっそうですね。ですが…それは提督、貴方も同じです。今回の襲撃であれだけの損害で済んだのは紛れも無く提督の手腕によるものですから」
提督「人を買い被ってはいかんぞ」
大和「いいえ、あの大軍の強襲の中、提督だけが冷静に状況を把握され的確な指揮をされていました。私は提督の御傍にいましたから、それがよく分かるんです」
提督「持ち上げてくれるのは嬉しいが、敵さんが攻撃してくる寸前まで気付けなかった時点で、俺は司令官として無能だよ」
大和「提督……でもとにもかくも提督は軍にとっても艦娘にとっても絶対に必要な――――――」
提督「それ以前にな…今回の深海棲艦との戦いでの敗北は決定的で、この基地の責任者である俺は生き延びたとしてもその責任を取る事になるだろう」
大和「ですが――提督は常々本部に掛け合っておられたではないですか。この基地の重要性に比べて兵力があまりに少ないと―――――」
提督「まあ世の中ってのはそういうもんだ。それに正味の話、大和…俺はな――――」
提督「この齢になって怒られるのは嫌なんだよ」
大和「えっ!?」きょとん
提督「まぁ…そう云うこった。だからお前が気に病んだりする事は何もない」きっぱり
大和「まったく、貴方と言う御方は……でしたら他の提督の方々はどうなんですか?提督の代わりに責任を取らされる事になりますよ?」
提督「んーそれについては、一応、提督達には、俺がここまでの経緯を認めた嘆願書をお偉いさん方に渡す様に言っておいたから、多分大丈夫だろ」
大和「もう…まったく貴方という人は、どうなっても知りませんよ」
提督「ははは。まぁアイツ等なら何とかするだろ?」
大和「……………」はぁ
大和(ホントこういう処は子どもみたい……でも私はそんなこの人の事を……そうあの時から―――――)
あの時。
大本営海軍部。
大和「ほっ本日より着任し御艦隊の末席に加わらせて頂く事になりました戦艦の大和です!初着任の若輩者ではありますが、おっお国の為、軍の為、粉骨砕身務めて参る所存ですので、どうか宜しくお願いします!!」ぺこり
提督「そうか。俺がこの艦隊の提督だ。まぁ宜しく頼む」
大和「はっ!よっ宜しくお願い致します提督」びしっ
大和(うう…この提督さん、なんかちょっと怖い感じがするけど大丈夫かな……)
提督「そうか…お前が【あの】大和か……」
大和「はいっ。超弩級戦艦として相応の戦果を期待され求められている事は百も承知です。勿論その期待に応える所存であります!」
提督「そうか…それはホントに大儀なこった」
大和「はい!」びしっ
提督(…………ふむ)
提督「………だがな。そんなに肩肘を張らんでもいいぞ。俺は着任して間もないお前に最初から戦果を期待する気なんてねえから」
大和「えっ!?で…ですが、私は―――――――」
提督「まぁ。お前は真面目そうだからな、少しづつ慣れていけばきっと期待通りの戦果を上げられるはずだ。だから少なくても今はそう色んなモノを背負おうとなんてしなくていい」
大和「提督…しかし私は……」
提督「まぁ……そうだな…俺の下に着いたのなら、これだけは守って欲しい事が一つだけある」
大和「はい!何でしょうか?」
提督「沈むなよ。俺は自分の指揮下の艦娘が轟沈するのが、堪らなく厭なんだよ。その為に俺も尽力するからお前もその心算でいろ」
大和「はっはい!」
提督「あと一つ」
大和「えっまだ……」
提督「お前のとっての初めての提督が、俺みたいな厳つい顔のおっさんで済まんな」
大和「!?いっいえそんな事は……」
提督「ははっ。お前の顔に出てたぞ、このおっさん怖そうだっ…てな」
大和「えっ!?////////」ささっ
提督「ふむ、本当に素直で真面目だなお前は」ふふ
大和「て…提督…私……」
提督「いや意地の悪い事を言って済まんかったな。俺はお前が気に入った。改めて宜しく頼む大和」
大和「はいっ。こちらこそよろしくお願いいたします!!」ぺこり
大和(この人…こんなにお気を遣われて……顔に似合わず優しい方なんだな――――//////////)きゅん
―――――――
大和(そう…あの時からずっと……私は貴方の事をお慕い申し上げていたのですよ。提督……)
じ…
提督「――――――大和」
大和「はい!?//////」どきっ
提督「何かな…こうしていると、昔の……お前が初めて俺の下に着いた時の事を思い出してな」
大和「そうなんですか?」どきっ
大和(提督も私と同じ事を…………ふふ…ちょっと嬉しい)
提督「あの頃のお前は、世間知らずの真面目なお嬢さんって感じだったな……」
大和「えっ!?」
提督「それに俺が本部からこっちに移動する時に、お前は本部に残って他の艦隊に配属される予定だったんだが、どうしても俺と一緒に行くって駄々捏ねて……」
大和「そっそれは……//////」かぁ
提督「あの時は困ったもんだったが、正直、嬉しくもあったな」
大和「!!」ぱぁぁ
提督「娘に懐かれる親みたいでよ」
大和「えっ!?」
提督「俺は女房も子どももいねぇから、娘が出来たみたいで…しかもその娘に懐かれるなんて親冥利に尽きるってな」
大和「そう…ですか…………」
大和(やっぱり貴方にとって私は…何時までも娘なんですね…………)
提督「だが…………………」
大和「?」
提督「その娘だと思ってた女にいつの間にか惚れてたなんてな」はぁ
大和「えっ!!?」どきっ
大和「て…………提督…今、なんて――――――――」どきどき…
提督「大和…これ、受け取って貰えねぇかな……」すっ
大和「!!こ…これって……あの開けてもいいですか?」どきどき…
提督「ああ」
大和「…………………………………」どきどき
ぱかっ
大和「こ…これは……ゆ…指環ですか?」
提督「………………おう。そうだ指環だよ」
大和「提督……」ふるふる
大和「わっ!私とケッコンカッコカリしてくれるのですか!?」
提督「ケッコンカッコカリなんかじゃねえ」
大和「えっ?」
提督「大和…その……なんだ……………………」ぐっ
提督「俺と結婚してくれ」
大和「――――――――――――――――――――――――――!!!!!
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