富士通は、センシング用デバイスとデータ分析用ミドルウェアからなるBtoB向けIoTソリューション『ユビキタスウェア』を発表しました。
センシング用デバイスは、加速度、地磁気、ジャイロ、気圧を計測できるセンサーとマイクを搭載したモジュールを核として、想定用途別にバンド、バッジ、タグ、スイッチなどの形で実装しています。ユビキタスウェアではこれらのハードウェアに加えて、センサーを制御するアルゴリズムとデータを可視化するゲートウェイアプリケーションを提供します。
ユビキタスウェアで取得・検出・可視化が可能な主なデータは、身体姿勢(座り込む、転倒するなど)、転倒・転落、熱ストレス(熱に対する身体ストレス)、ジオフェンス(危険エリア侵入・高所検知)、生体反応、体調変化(いびき、咳など)、歩数、活動量、位置情報、移動軌道など。
センシング可能な内容の一部
スマートグラスやスマートバンドといったウェアラブル端末をはじめとしたIoTデバイスを業務利用するにあたっては、これまでデバイスを購入した顧客側でアルゴリズムやアプリケーションの設計開発、妥当性の評価を行う必要があり、準備コスト的に高いハードルがありました。
ユビキタスウェアではデバイスに加えて検証済みのアルゴリズムを初めから提供するため、その中から顧客が必要な部分だけを選んで導入できる点に特徴があります。
なおデバイスの形状は、顧客が求める用途に応じて別途設計することもできます。例えば今回発表されたコアモジュールと一連のデバイス群にはカメラを搭載している製品はありませんが、実務上必要であれば、顧客の用意した装置にコアモジュールを後付けで追加し、既存の機器から機能を拡張することも可能です。
ユビキタスウェアのコアモジュール
センシング可能な内容から活用できる分野は多岐にわたりますが、20日に都内で開催された発表会ではペットケア、学校や農業における熱中症検知、施設警備や物流倉庫などでの動線記録、ペットケア、高齢者向け見守りサービスでの利用を提案していました。
迷子バッジサービス
屋内においては、ロケーター(下写真)とBluetooth(Low Energy)通信を行い高精度に位置を検出します
ロケーションバッジを用いて医療従事者の位置を検出。ナースコールが押された際に最寄りのナースが駆け付けられる仕組みづくりに寄与する
ヘルスバンドで検出した熱ストレスによって熱中症のリスクを評価。学校において危険な状態にある生徒(選手)を休ませる目安とする
農業や警備の現場で異常があった際のアラート機能なども提供できる
ペットの状態を監視して、気づきにくい健康リスクにいち早く対処しやすくする用途
ウェアラブル端末の業務利用としては、スマートグラスのAR表示によって業務手順を確認しながら作業する用途などでの活用が始まっていますが、ユビキタスウェアの場合はどちらかと言うと端末使用者の安全確保が重視されている印象を受けます。
今回発表されたデバイス群も総じて小型であることから長時間持ち運ぶ運用を主眼に置いていることが推察でき、センシングによるデータを用いた見守りなど、これまでIoTのなかった場所で、IoTにしかできないことを模索する富士通の姿勢が感じられます。
いずれにせよIoTデバイスのニーズはいまだ掘り起こしの最中であり、ユビキタスウェア自体も実証実験を進めていく段階とのこと。富士通としても少なくとも今年いっぱいは実験を続けるということで、IoTデバイスの本格的な業務活用にはまだまだ時間が必要でしょう。