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下町ロケットばりのLAVIE Hybrid ZERO開発秘話。技術を駆使してグラム単位で削った最軽量へのこだわり - Engadget Japanese


NECパーソナルコンピュータが1月13日に発表した「LAVIE Hybrid ZERO」シリーズの新モデル、11.6インチのデタッチャブル(分離型)PC「HZ330/HZ300/HZ100」シリーズ。タブレットモデルが約398g、キーボードと合体しても約798gという驚異の軽さを実現した裏には、さまざまな苦労が......。技術説明会でその詳細が明かされました。

写真は左から第一商品開発本部 技術戦略部 杉本繁伸氏、第一商品開発部 設計技術部 梅津秀隆氏、商品企画本部 中井裕介氏、NECダイレクト販売部 梅田裕氏。

LAVIE Hybrid ZERO開発秘話

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65 枚



より軽さを目指した結果11インチモデルに

まず、NECパーソナルコンピュータの商品企画本部 中井裕介氏による商品コンセプトからはじまりました。LAVIE Hybrid ZEROシリーズは2012年7月に発表された13インチのノートPCながら約875gという軽さを実現し、当時度肝を抜かれました。翌年の2013年10月にはさらなる軽量化をし約795gという異次元のレベルに。タッチモデルでも964gと1kg切りを実現してきました。



第三世代機はちょうど1年前の2015年1月。2in1モデルを登場させ、約926gを実現。クラムシェルタイプも20g軽くし約779gと進化しました。そして今回、それまで13インチにこだわり続けてきましたが、ここで11インチモデルを投入してきました。

11インチにした理由を「軽さへの追求」と語る中井氏。13インチはPCとしての使い勝手はいいが、タブレットとしてのハンドリングは不向き。これに対して11インチなら、PCとしては13インチより使い勝手は劣るが、タブレットとしてのハンドリングはいい。タブレットとして重量を突き詰めるため、デタッチャブルを選択したそうです。



だからといって、単なる軽さだけを追求したわけではありません。使い勝手もよく、インターフェースも充実させ、デタッチャブルであるにもかかわらず、薄さにもこだわって開発しています。Windowsタブレットとして8インチクラスの重さである約398g、キーボードと合体しても約798gは、11.6インチ液晶搭載のデタッチャブルタイプとしては世界最軽量になります。



キーボードもキーピッチ17.5mm、キーストローク1.2mmとし、USB3.0×2とHDMI出力を備え、ドッキング時の厚さは最大17.9mm。最薄部で13.4mmとし、キーボードチルト機構も搭載しました。また、同時に薄型のカバーキーボードも開発。約187gで厚さは3.5mmながらキーボードにクリック感を持たせ、スタンドも装備するこだわりっぷり。

「13インチは移動先で使うが、11インチだと移動中でも使うことを意識した」と中井氏が言うように、軽くすることを追求しながらもLTE通信機能を内蔵させたのは、11インチにしたときのライフスタイルの変化も考慮して開発しているからなのです。

匠のなせる技、究極の軽量化を目指して

続いて登壇したのは、第一商品開発部 設計技術部 梅津秀隆氏。今回、究極の軽さを実現するため「技術で常識を覆す」とドラマ「下町ロケット」のごとく技術者魂に火がついたそうです。

まず、タブレットとキーボードを分離させるデタッチャブルとしたとき、どのような仕様にするのか。クラムシェルタイプとWindowsタブレットとの使い勝手や機能性のバランスを考えつつ、頑丈で容易なドッキングでキックスタンドレス、そして一見スリムPCのようなデザインを目指しました。

試作機をつくった段階では、キーボードとのセットで約1kg、タブレット単体で約500gでした。第三世代の軽量化技術だけでは満足のいく出来ではありません。ここから、いくつもの課題をあげ、ひとつひとつ潰していくことによって、最終的な重量と性能、デザインを実現しました。



ターゲットとなる重量は、企画段階ではトータルで900g未満。タブレットが軽くなればキーボードがそのぶん重くなっても900g未満に必達すればよしとしましたが、技術的にはそれぞれ400g未満という目標を掲げ、挑戦していくスタンスで望んだそうです。



トレードオフではなく、匠の技で新技術を編み出したりこれまでの技術を強化することで、11.6インチで400g未満と堅牢性、厚さ7.6mm以下を達成しました。そんな匠の技をひとつひとつ見ていきましょう。



13.3インチで採用していたタッチパネルの構造は、フルフラット画面であるものの重いのが難点でした。そこでFFF(Film-Film-Film)構造だったのをFF2(Film-Film)構造にすることで、重量を約1/5に厚みを約1/3になりました。これにより、フルフラット構造からベゼル構造にはなりましたが、ベゼルに面取りを施すことで、エッジスワイプも利用でき、大幅な軽量化が図られました。また、画面をノングレアにしたのは、外ではグレアだと液晶画面が見えづらいためです。



LCD部分も新構造を採用しています。Glassの厚さが0.2mmのLCD Cellを採用しバックライトフィルムの材質とシートの構成を変更することで軽量化を実現。またMg-Li(マグネシウム・リチウム)合金のミドルフレーム上にこれらを組み込むことで軽量化と薄さに貢献しています。




▲ミドルフレームを採用して薄さと軽さ、堅牢性を実現。素材ははMg-Li合金製。

タブレットの利用シーンを考慮し、ベゼルとバックカバーの合わせ方も改良。ベゼルを端まで伸ばし、堅牢性を保つためにシミュレーションを繰り返し、試作機を作って強度を検証して従来機と同様レベルにしています。



バッテリーは、サイズやバッテリーライフ、重量など目標をクリアできず新たに開発。バッテリーの固定方法もネジ止めからフックに変更しネジと作業工程数を削減しています。



筐体などで使う素材には鋳造(フォージング)Mg-Li合金や鋳造(ダイカスト)Mg合金を、それぞれ適材適所に採用。軽さと堅牢性を併せ持つ筐体を実現しました。



ファンレス構造のため熱対策にも配慮。極薄で高性能のグラファイトシートを採用することで、各部品や筐体表面の温度上昇を防止。試作機で懸念された3Dカメラモジュールの発熱にも対応しています。




▲黒いシートがグラファイトシート。熱対策と薄さに貢献している。

LTEを搭載することでアンテナの設計も見なおしています。PCBタイプ(板状)のアンテナを採用すると筐体の強度が落ち、ベゼルの幅が広くなってしまうため、プラスチックホルダーにフイルムアンテナを巻くような形状にすることで、アンテナと筐体の隙間がなくなり強度を維持。設置面積も30%縮小しつつ、アンテナ性能は従来の装置と同等だとしています。



▲こちらが従来使用していたアンテナ。隙間が空いて、強度的に不安。


▲こちらが新規に採用したアンテナ。プラスチックホルダーに巻きつけたものになっている。

すべてが順調に進んだわけではありません。立ちはだかる難題に対して苦労した部分を語ってくれました。

まず、LTEアンテナとWi-Fiアンテナ、3Dカメラの配置です。液晶の上部に配置するのが強度的にも感度的にもベストだということは分かっています。しかし、これまでの各モジュールを並べると横幅からはみ出してしまいます。重ねて配置したり、2列にしたりしても厚くなったりベゼルの幅が広くなってしまってダメ。このため、LTEモデルには3Dカメラを搭載しないことになりました。



次にユーザービリティを考えキーボードのリフトアップ機構を備えたいが、試作段階ではリフト量が少なく、ドッキング位置が高いため隙間が発生していました。これをドッキングボックスがより下に飛び出すようにし、ドッキング位置も下げて隙間もなくすようにしています。




▲試作モデル。第三世代の技術をベースに作られている。

▲試作モデルのときのドッキング部分。

また、ドッキング時に液晶を開いたとき倒れないような重心設計と軽量化のバランスを最適化するのに苦労しました。液晶上部を押したとき、キーボードの重心は手前に、タブレットの重心もドッキング側に寄せる必要がありました。さらに、リフトアップさせるためのドッキングボックスの支点の位置も後ろへずらすことで、倒れにくくしています。各部の構造が変わるたびに重量バランスも変化するので、その都度計算して監視していました。



タブレットとキーボードのドッキングさせるときの仕様も、容易な着脱を目指しました。試作時はガイドピンを長くしてタブレットを挿入して固定させる方法をとっていましたが、挿入しにくく見た目にもよくありません。そこで、壁をつくることで、ガイドピンを短くし、装着性を高めるとともに見た目にもよくしました。強度を保つため、筐体を厚くするのではなくキーボード上部に凹みをつけて強度を高めています。

もう一つ、鋳造Mg-Li合金の薄型化にも挑戦しました。タッチパネルや液晶パネルなどを固定する鋳造Mg-Li合金のミドルフレームは、試作では0.5mmでしたが0.4mmに。加えて、その下に収めているバッテリーの薄型化や基盤部品もより低いものを使用することで、4mmから3.815mmにし、タブレットの厚さを試作の7.94mmから7.6mmにしています。



▲タブレットの内部。ミドルフレームにバッテリーや基板が組まれている。

0.1mm単位での肉厚削減ですが、最悪の事態も考えて、ミドルフレームは0.5mmに戻す準備はしていたそうです。

このようにして、薄くて軽量なタブレットとキーボードを完成させたのです。


200g以下で作れと言われ努力を重ねたフラットカバーキーボード

タブレットに装着するカバーキーボードも、今回かなりこだわりを持って作られました。第一商品開発本部 技術戦略部 杉本繁伸氏が、開発の経緯を語ってくれました。

フラットカバーキーボードを作るにあたり、200g以下にすること、そして厚さは3mm以下(キーストロークが0mmの場合)にすることが要求されました。しかもタブレットを立てるためのスタンド付き。この要求に対し、実現するにはかなり苦労することになります。



まず、試作をつくったところ、328gでキーボードとスタンドが分割されていると重量を軽減できない状態でした。 しかもキーストロークは0mm。これだと打鍵が硬く疲労感が伴うので、クリック感が必要だと認識。また、厚さを3mm、1.7mm、1.2mmと変えてみたところ、1.2mmでようやく212g。しかし、メンブレン方式のため、内部に補強がないとメンブレンがダメージを受けてしまうのでこれでは無理でした。



▲厚さ3mmの試作。これだと重すぎた。​

▲厚さ1.75mm。これでも重さがクリアできない。
▲0.12mmの試作品。ペラペラで使いものにならない。

そのため、小型軽量スタンドの開発にあたりました。タブレット本体にスタンド機能を付けると本体重量が大幅に増えてしまうので却下。カバーキーボード側に持たせる必要があります。さらに厚さ3mm内にそのスタンドを仕込まなければなりません。

そこで、キーボードから引き出してタブレットを3つのパーツで支える折りたたみ式のスタンドを考案しました。スプリングを入れて自動的に自立するような工夫も施しています。折りたためば厚さ3mmのフラットになる仕組みです。



▲小さなバネを仕込んで、引き出すと飛び出す仕組みになっている。​

次にクリック感への挑戦です。キーボードの厚みを抑えてクリック感を出すにはどうすればいいか。そこで採用したのが、メタルドーム方式です。携帯電話のボタンに用いられていたもので、スイッチがオンになるストロークが0.3mm、実ストロークは0.45~0.75mmになります。



こうして、試作段階での2つの課題を解決する案をもとに、紙でのモックを作成し、実現性を検証しました。パーツごとに分解し、それぞれ重量を計って試算したところ、201gとなり「これならいける」と自身を持ちました。




▲紙で試作して実現性を確認した。

キーボードのベースとなる基板には、フレキシブルプリント配線板(FPC)を使おうとしましたが、サポートするものが必要なので、単体で大丈夫なプリント基板(PCB)を採用して軽量化を図りました。

そして、可動モックを試作したところ、見積もりを下回る178g、厚さは3.2mmとなりました。メタルドームを採用したので3mmよりは厚くなりましたが、0ストロークではないので許容範囲内でした。タブレットに装着した状態でもぐるっと回り、スタンドを出した状態でも大丈夫。スタンドはABS樹脂の削りだしにしました。




▲可動モックを試作。ここで更に課題が見つかる。

この段階で生まれた課題が、キーの形状がわかる手段とメタルドームの有効範囲の改善でした。表皮にマイクロファイバー素材を採用したことで、フラットになり指で触ってもキーの位置がわかりにくかったのです。エンボス加工して凹凸をつけようとしましたが、マイクロファイバー素材はくっきりしたエンボス加工ができませんでした。そこで、ポリウレタン素材に変更し、エンボス加工を追加しました。



メタルドームの有効範囲の改善は、当初キーが反応する範囲が狭くて、打ちづらかったのですが、サポートシートをメタルドームの上に追加することで、範囲は広くなりました。しかし、今度は隣のキーも反応する事態となり、サポートシートにキーごとのスリットを設けることで、隣のキーが押される事態を解消しました。



こうして、重量187g、厚さは3.5mm、キーピッチは17.5mmとモバイルパワーキーボードと同じ、フラットカバーキーボードが完成したのです。


▲これが完成版。クリック感があるので、タイプしている感じがある。


▲このようにスタンドにタブレットを立てかけて利用する。

開発期間中、常に上司から「200g」とプレッシャーをかけられ続け、それでいて実現させたのは、技術屋魂のなせる技だと思います。

「HZ330/HZ300/HZ100」シリーズは2月24日以降順次出荷予定で、NECダイレクトではただいま予約受付中。ダイレクトだけで販売されるプレシャスゴールド色は、2年前から検討していましたが実現しなかった特別色。また、LTEモデルも色が選べるので、こだわりのある方は店頭モデルではなくダイレクトモデルをオススメします。


▲ダイレクトでの販売のみのプレシャスゴールド色。 

なお、LAVIE Direct HZ(D)を予約した方、先着300個限定でbuzzhouse designの「ハンドメイドフェルトクラッチケース for LAVIE Hybrid ZERO 11.6型ワイド」をプレゼント。購入すると6000円になるので、かなりオトクです。


▲キャンペーンで先着300名にプレゼントされる「ハンドメイドフェルトクラッチケース for LAVIE Hybrid ZERO 11.6型ワイド」。




下町ロケットばりのLAVIE Hybrid ZERO開発秘話。技術を駆使してグラム単位で削った最軽量へのこだわり

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