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プーチン大統領に忠誠を誓った男たちがいる。「ザ・ナイトウルブス(夜の狼)」は、ロシアで最大かつ最も悪名高いバイカーギャングだが、同時にロシア政府から後ろ盾を得た分離独立派の民兵組織でもある。
ロシアで勢力を強める超国家主義の波に乗った番兵である彼らは「プーチンズ・エンジェルズ」とも呼ばれている。
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The Night Wolves: Putin’s motorbiking militia of Luhansk
迫撃砲の振動が響き、根城の中でバイカーギャングたちが身構える。戦争に引き裂かれ、武装勢力によって支配されるウクライナ東部の街ルガンスクで、「ようやくか。戦いだぞ」と男がニヤリと笑った。
だが大集団がさっと集まると彼らはすぐに仕事に戻った。オークの木は未完成のまま残っているし、フェニックスの衣装も羽根飾りをつけなければならない。
これはロシア最大のバイカーギャング、ナイト・ウルブズのルガンスク支部での光景だ。構成員たちは戦火に脅かされた街で暮らす子供たちのために、新年のショーの準備に忙しく動き回っている。ショーの目玉は、ナイト・ウルブズ自体だ。
彼らは皆、同じヒゲを生やし、刺青を入れ、愛国心を誇示する国旗をはためかせながら、列となって通りを走り回る。だが同時にロシアの後ろ盾を得た分離独立派の民兵組織でもある。
その根城は廃棄されたスポーツ複合施設を改装したもので、戦車の残骸や大砲の砲弾、さらにはマッドマックスをモチーフとした色あざやかな壁など、軍事要塞のような趣を醸し出す。だがソビエト時代の自動車が展示された博物館の裏手では、農作業や養蜂が行われている。
クロームに輝くいかつい風貌だが、ナイト・ウルブズは鼻つまみ者などではない。ロシアで勢力を強める超国家主義の波に乗った番兵なのだ。
ヨーロッパ東部の各地から大勢の構成員が加わっており、プーチン大統領に忠誠を誓っており、密接なつながりがあることから、プーチンズ・エンジェルズとの異名を持つ。
そのモスクワの本部は国際的なメディアでもよく報道されるが、独立を宣言したルガンスク人民共和国の支部についてはあまり知られていない。
ルガンスクの朝は寒く、薄暗い。ウクライナで最も殺風景で、ソビエト時代の名残を色濃く残す都市だろう。副団長のデニス・クズネツォフは軍服の上にバイカージャケットを羽織り、ハンマーと鎌の記章で飾られたオリーブグリーンのベレー帽を被る。ナイト・ウルブズにとって、イメージこそが全てだ。
「全部アメリカのバイカーギャングの影響さ、着こなし方とかもね」とクズネツォフが説明する。「最高のものを自分たちなりにアレンジしたんだ。ナイト・ウルブズはソ連と戦うために結成されたんだが、結局は共闘することになった」
彼が入団したのは90年代初頭のことだという。外科医との愛称で呼ばれていた総長のアレクサンドル・ザルドスタノフのカリスマ性に惹かれたのだという。だがクズネツォフは次第に単なるバイク好きから民兵としての役割を担うようになる。
EUとの統合路線が棚上げになったことを発端として起きた、2013〜14年の冬のキエフで行われた抗議デモでは、彼もまた暴力的なクーデターのみしか目に映らなかった生粋のロシア人の1人だった。
CIAを後ろ盾とするウクライナの”ファシスト”が、親ロシア政権を転覆させたとの報を受けたクズネツォフは、2014年2月に妻と子をモスクワに残し、南へ向かった。彼や他のバイク乗りたちは、レザースーツを防弾チョッキに変え、ロシアのクリミア半島併合作戦に積極的に参加した。ナイト・ウルブズはガス施設やウクライナ海軍基地を急襲し、その功績を称えられ勲章を授けられた。
クズネツォフやナイト・ウルブズの仲間にとって、ソビエト連邦の崩壊は悔やんでも悔やみきれない出来事であった。そしてクリミア半島編入はロシアがかつての力と領土を取り戻す絶好の機会に思えた。「ソ連は世界最強の帝国だった。それなのにわずか1時間で、1発の銃弾も撃たれることなく終わってしまった。風船ガムとジーンズとマクドナルドと引き換えに、何もかも失ったんだ」と彼はこぼしながら物思いに耽る。
ナイト・ウルブズが初めて咆哮を上げたのは、80年代のモスクワだった。ゴルバチョフ政権下のペレストロイカによって自由化の波が押し寄せ、バイカーギャングたちが警察から逃れながら夜な夜な街を走り回るようになった。彼らはやがて、大騒ぎするだけのバイク好きから、クレムリンのプロパガンダ機構に組み込まれていく。そして91年に反ゴルバチョフ派のデモ防止活動に加わったことが転機となる。
激動の90年代、ナイト・ウルブズは毎年バイクショーを開催するようになり、それ以来最大のパトロンがプーチン大統領であった。多額の助成金が与えられ、3輪のハーレーダビッドソンを乗り回しながら、スラヴ民族の土地やロシア正教の聖地を巡回し、スタントとロックと派手な演出で熱烈な愛国心を広め続けた。
言うなれば、クレムリンはプーチンやロシア正教を熱烈に支持し、反アメリカ思想の持ち主でもあったナイト・ウルブズをソフトパワーの源泉として利用することにしたのだ。
「俺は祖国を愛している」と団長のヴィタリー・キシキノフが、マッドマックス風の壁の前で話した。「祖先も、(第二次世界大戦での)偉大な勝利も、血を流して勲章を手に帰ってきた祖父たちも誇りに思っている。この世の何物でさえ、この考えを変えることはできない」と語るキシキノフにとって、その愛国的なセリフの背景がハリウッド映画をモチーフにしているという皮肉などどうでもいいようだ。
キシキノフが「博物館」と呼ぶ遊戯室兼礼拝堂には、狼の皮で飾られたビリヤード台が設えられている。またその一角は親友たちのために捧げられており、アメリカから制裁を受けた写真家の写真などが並べられる。壁には正教会のイコンや十字架像、さらにはスターリンの肖像画などもある。隅にはロシア語で、「オバマの皮を買ってやる」と書かれている。
2014年春、ドンバス地域における分離独立派の緊張の高まりが武力衝突にまで発展したとき、ナイト・ウルブズもロシア側の兵士として戦った。
アメリカ政府は後に構成員とロシア特殊部隊とのつながりを指摘しており、ナイト・ウルブズがソフトパワーとしてだけでなく、より暴力的な装置として変貌を遂げたことがうかがえる。ロシア内務省に統合され、準軍事的機能を果たすようになった。だが同時に草の根的なルーツにも立ち返って、愛国的イベント、反汚職キャンペーン、人道支援などにも力を入れ始めている。
政治におけるプーチン大統領のブランドが、こうした組織が活躍しやすい環境を作り出した。その男臭いカルト的な人気は、同じくカルト的な崇拝を受けたスターリンの現代版だ。
まるでメロドラマのように脚色された政治の舞台において、プーチン大統領は最重要人物である。「彼にはリーダーシップがあり、その政治はロシアにとって最善の道筋だ」とクズネツォフは強く主張する。
クレムリンがかつてのロシアが有していた強大な力に回帰しようとソビエトへの郷愁を利用しているために、スターリンまでがルネッサンスの趣を醸し出している。
ナイト・ウルブズがスターリンを崇拝していることは、そのアジトに足を踏み入れればすぐに分かる。門の前に掲げられたキリストが描かれた旗やロシアとルガンスク人民共和国の国旗の中に、スターリンの顔が混じっているのだ。
ナイト・ウルブズで最も愛想のいいセルゲイ・コマロフは、モスクワ郊外の村で生まれた。今世紀初頭のチェチェン紛争では戦車乗りだったという。このときの経験が今でも続く心理的ダメージを残したことは明らかだ。バイクは一種のセラピーであったようだ。
「いろいろあったよ。立ち直るまでに2年かかったんだ」とコマロフは話す。「バイクは昔から好きだったよ。ガソリンを入れて、ツーリングに行けば、頭が空っぽになるから。2,000kmのツーリングは1ヶ月の休暇に優るね」
昨年、ウクライナの前線の街に人道支援に訪れ、ナディアという少女と出会った。彼女の父親は、分離独立派と一緒に戦うために家を出たのだという。その後、コマロフはナディアと一緒にこのアジトまで引っ越してきた。
「今の生活を選んだわけじゃないの」とコマロフに体を預けながらナディアは語る。「他の場所でも構わないわ。彼はここにいるから」と仲睦まじい2人の様子は、過酷な戦争の中で生まれた感動的な無垢の関係だろう。
このインタビューの前、2ヶ月間のこう着状態が破られ、ドネツィク郊外にある分離独立派の拠点に夜な夜な爆撃が加えられた。ルガンスク付近の前線は比較的穏やかだったが、2014年の戦火の傷跡はそこかしこに残されている。
「何もかも破壊された。大きな戦いだったんだ、とてもね」とキシキノフが風に向かって大声で話した。多くの血が流された。これを思い出すと鳥肌が立つという。自分たちの敵ですら、こうした思いはしてもらいたくないと彼は語る。
この戦争へのロシアの関与について、プーチン大統領はずっと否定しているものの、それを示す数多くの証拠がある。これについて尋ねられたキシキノフは、「ロシアはここに関心などない」と重々しいロシア語で唸った。「ロシアが国境で戦争を始めたことはないし、他国の領土を侵したこともない。俺たちはいつだって自分たちの土地を狙う敵から守っているだけさ」と。
ナイト・ウルブズの存在感と影響力は、ウクライナ全土で沸き起こる苦い民族的な盛り上がりを示している。構成員の多くは地元の男たちであるが、キエフではなくモスクワ側についている。
このことがクズネツォフを悩ませる。「ウクライナ人の捕虜に近寄ったとき、彼らが十字架にキスをして祈っていたんだ。それで連中が俺と同じ祈りの言葉を話すことが分かった。俺たちは正教の信徒だ。俺がウクライナ人を憎んでいるとでも? とんでもない、愛しているさ。それなのに互いに争っている」
街は雲ひとつない冬の夜の下で静かに佇んでいる。構成員の1人は戦争が始まってから、別れ際に「さようなら」を言わなくなったという。ただ「近いうちに会おう」とだけ告げるのだ。
via:theguardian・translated hiroching
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コメント
1. 匿名処理班
国家の犬とか一番嫌がるべきなんじゃないか?
本来なら
2. 匿名処理班
マン・ウィズ・ア・ミッションかな?
3. 匿名処理班
おそロシア
4. 匿名処理班
一方日本の日本の暴走族は・・・高齢化が進み警察に叱られて解散させられていた
5. 匿名処理班
マッドマックス
6. 匿名処理班
リーダーは形から入るタイプだなw
まあ国の役に立ってるんならギャングでもいいんじゃない
つーかロシアでバイクに乗って凍傷になったりしないのかな
7. 匿名処理班
君を、君たちを失いたくないんだ・・・
武力では何も解決しないことぐらい解っているはずだろう
命を奪い合い、悲しみを与えあうことにどんな意味があるのか
悲しむのは愛する者が寿命を全うした時だけでいい
世界中の紛争が一日も早く終わることを願う
8.
9.
10. 匿名処理班
サウスパークのバイカー回を見せてみたい
11. 匿名処理班
ロシアだけは敵に回したくないな。
12. 匿名処理班
不良漫画かな?
13. 匿名処理班
なんかほんと、プーチンって現実離れした人だな
14. 匿名処理班
昔海賊王使って海賊狩りとかやったなぁ
15.
16.
17. 匿名処理班
恐るべしプー様・・・・
ワルさえも虜にするカリスマ性
18.
19. 匿名処理班
ロシアのことをなんにも知らないなぁと思った。当たり前だけど、本当に国の形からして全然違うんだね。1国の元首とギャング。日本では考えられない、少なくとも表沙汰にはなり得ない関係だ。
20. 匿名処理班
映画かよ・・・
21. 匿名処理班
どんな勢力にもその繋がりには複雑な事情が存在する。
人間から戦争を消滅させることは非現実だと思えてならないほどそれは深い。
22.
23. 匿名処理班
夜空を見るたびに思い出せ
24.
25. 匿名処理班
エンジェルってなんだよ(哲学)
26. 匿名処理班
ぷーちん愛してるぜ!
27.
28. 匿名処理班
「ザ・ナイトウルブス(夜の狼)」
↑何でロシア語読みじゃなく英語読みなの?
29.
30. 匿名処理班
ロシア版SAMCROだな。ドラマ化したら見てみたい。
31. 匿名処理班
バイクに跨がるプーチン閣下かっこいいw
32.
33. 匿名処理班
※1
狼やで
34.
35.
36. 匿名処理班
浪士組みたいなもんやろ。さしずめ、狼士組。
37. 匿名処理班
エンジェルズというより拳王侵攻隊という感じがしないでもない
38. 匿名処理班
プーチン素敵過ぎる...
プーチンの画像を待ち受けにしたいくらい好きだけど、誤解を受けそうだからやらない。
この人の魅力はなんだろね。
39. 匿名処理班
エンジェル…?