本日11日(木・祝)から開催中の第8回恵比寿映像祭で13日(土)・17日(水)に上映予定の短編アニメーション特集プログラム「荒れ地の先へ─短編アニメーション」で、昨年のアヌシー国際アニメーション映画祭(フランス)メインコンペティションにノミネートしたことでも話題となった坂元友介さんの新作『ナポリタンの夜』が上映されます。

本作、国内でもなかなか上映の機会がなく、まだ観れていない!という方も多いのではないでしょうか。そして、既にご覧になった方も「もう一度観たい!」と思っているはず・・・あの狂気、病みつきになりますよね。

高校生のころから短編アニメーション作品を制作、発表し続けている坂元さん。『ナポリタンの夜』の完成度の高さはため息が出るほど圧倒的で、余裕まで垣間見られる散りばめられた遊びに観客は翻弄されるしかありません。鑑賞後には「一体今観たものは何だったのか?!」と誰もが自問してしまう衝撃作『ナポリタンの夜』について、監督坂元友介さんに伺いました!


画像: 『ナポリタンの夜』の1シーン

―― アニメーション制作歴、随分長くなってきましたね。

坂元: 高校二年生の頃に自主制作アニメーションを始めて以来、人形アニメーション、切り紙アニメーションなど様々な技法で短編アニメーションを作り続けました。東京造形大学アニメーション専攻を卒業しています。

―― 社会人になって作り続ける難しさはありますか?坂元さんにとって自主制作活動を続けるということとは?

坂元: 学生時代と比べて、一番大変なのは制作時間を確保できないことです。自主制作を続けるのは私にとってごく自然なことで、空気を吸ったり吐いたりするのと同じように思っていました。

―― 『ナポリタンの夜』について教えてください。本作をを一言で説明すると?

坂元: 伝統的な和食でもないし、かといって本格的イタリア料理でもないナポリタンスパゲッティが己を見失い、夜の田舎道を徘徊するアニメーションです。


画像: 『ナポリタンの夜』の1シーン

―― なぜナポリタンを題材に?

坂元: 以前なにかの記事で、イタリア人にとって日本のナポリタンスパゲティは調理法からして容認されていない、ということを知り、ジェノベーゼやカルボナーラみたいな本場イタリアン・パスタにいじめられ、疎外されるナポリタンを夢想しました。それがきっかけです。
どこにも帰属できない苦しみがもたらす孤独感を、ナポリタンから感じるようになりました。

―― なるほど・・・そしてそれをストーリーに?

坂元: ・・・それを踏まえて、ナポリタンがイタリアンレストランを飛び出して、林を走っている一枚の絵を描き、そこから話を膨らませていきました。


画像: 最初に描いたイメージ

―― 今回、坂元さんの作品としてはモノローグでの進行を久しぶりに感じました。しかも、ところどころ韻を踏んでいるのが可笑しくて・・・冒頭の「もう故郷へはノーリターン」でやられました。

坂元: 特に何かを意図してモノローグを使った訳ではなく、ごく当たり前にこういう構成になりました。
「ノーリターン」という文言は私の大好きな野坂昭如(あきゆき)さんの唄『マリリン・モンロー・ノー・リターンの影響かと思われます。韻を踏んだり、少し不自然な言葉遣いをすることで、物語を突き放すことを意識しました。

―― ホラーなのかギャグなのか、真面目なのか不真面目なのか、坂元さんの作品の特徴でもあるその絶妙な曖昧さが、今回もとても面白いです。狙ってやっているのですか?

坂元: おっしゃる通りギャグとシリアスの境目を狙っています。後味の悪い作品になるなぁ、と思いながら作画していた気がします。


画像: 『ナポリタンの夜』の1シーン

―― お仕事の合間の作業だったと思いますが、本作の制作期間・使用したソフトウェアを教えてください。制作はお独りで?そして気になる声の出演はどなたが?独特の口調ですよね。

坂元: 制作期間はほぼ一年、Photoshopで着彩し、After Effectsでコンポジットしました。今作はすべて一人で作りました。
ナポリタンの声は私が読みました。当初は外国人の読む片言の日本語にしようと画策しましたが、結局は面倒になって自分で読みました。

―― 新作の予定はあるのでしょうか?

坂元: ありません。この「ナポリタンの夜」が坂元最後の個人制作アニメーションになります。

―― えっ!どういうことでしょうか、呼吸するのを止めてしまうと?!

坂元: ただの休止なのかどうかはわかりませんが、とりあえず現状で言えばこの作品が坂元の最後の短編アニメーションです。・・・あまり詳しくは申し上げられません。すみません、秘密主義なので。

―― 恵比寿映像祭で『あいたたぼっち』をご覧になる方にメッセージをお願いします。

坂元: 私の作品を観てくださって、または観ようとしてくださって本当にありがとうございます。これから喫茶店やファミレスでナポリタンを注文する時に、ふとこの作品のことを思い出してくれたら、嬉しいです。


画像: 『ナポリタンの夜』の1シーン

坂元友介さん、どうもありがとうございました。

鑑賞していると衝撃の連続で、予想外の展開が次々と巻き起こる『ナポリタンの夜』。何度でも観たくなる作品です。ナポリタンが背負う孤独や、その声の主を知った今、ますます楽しむことが出来るのではないでしょうか。

ナポリタンは孤独から救われるのでしょうか?そのような思考を保つ冷静さを未だ持ち合わせているのでしょうか?そもそもナポリタンに意思は存在したのでしょうか?いやまず、ナポリタンは、本当にナポリタンだったのでしょうか?謎は深まるばかり。なのに最後には何もかもどうでもよくなってしまう?!そんな坂元友介監督『ナポリタンの夜』の衝撃を、第8回恵比寿映像祭で。
お楽しみください!


第8回恵比寿映像祭 動いている庭
Yebisu International Festival for Art & Alternative Visions 2016
Garden in Movement
http://www.yebizo.com/

会期: 平成28年2月11日(木・祝)~2月20日(土)
      [10日間・会期中無休]
開催時間: 10:00~20:00
※ただし最終日平成28(2016)年2月20日(土)のみ18:00まで

「荒れ地の先へ─短編アニメーション」
会場: 恵比寿ガーデンシネマ
日時: 2月13日(土)18:30、2月17日(水)15:00