朝潮「初恋の、ビターチョコレート」
大潮「そう、バレンタイン!最近鎮守府内はその話で盛り上がってるよ!」
荒潮「バレンタインねぇ。朝潮姉さんにはちょっと分からないんじゃないかしらぁ」
大潮「ええっ、いくら何でもそれくらいは知ってるでしょ!ねぇ?」
朝潮「ええ、知っているわよ」
大潮「ほら!」
朝潮「ヴァレンタインの語源はウァレンティヌス。バレンタインデーとは、269年にローマ皇帝の迫害下で殉教した聖ウァレンティヌスに由来する記念日だと、主に西方教会の広がる地域において伝えられていたの」
大潮「え、えぇ~……?」
荒潮「あら~、博識ねぇ」クスクス
満潮「え”っ?あんた、冗談とか言えたの!?」
大潮「そこで食いついてくるんだ……」
朝潮「バレンタインとは女性が好意を持つ男性にチョコレートを送る日。それくらいは私も勉強しているわ」
朝雲「う、うーん?間違ってないというか合ってはいるけど、朝潮姉さんが言うと何か雰囲気を感じないというか……」
山雲「朝潮姉ぇってー……クリスマスの時も思ったんだけどぉ。イベント行事も『楽しむ』と言うより、『学ぶ』姿勢で居るわよね~」
朝潮「艦娘として生まれ変わってから、知らないことだらけの世の中なんだもの。日々が学びの毎日、学ぶことで司令官の助けにもなるはずだから」
大潮「うううぅ……ダメダメ!ダメだよそんなんじゃ!戦うときは戦う!勉強するときは勉強する!遊ぶときは遊ぶ!そう、楽しいことに対してはもっとアゲアゲで楽しまなくちゃ!」
朝潮「私だって楽しんでいるわよ?新しい知識、経験が入ってくる毎日が楽しいわ」
大潮「そういうことを言ってるんじゃなくてぇ!」
朝潮「?」
大潮「うぅ……クリスマスはみんなはしゃいでいたのに……姉さんだけは……」グスッ
朝潮「大潮。ケーキも美味しかったし、とっても楽しい雰囲気だったから。だから落ち込まないで、ね?」ナデナデ
山雲「それってぇ……フォローになっているのかしらー。ねー」
朝雲「確かにまぁクリスマスの時はいつもより笑顔が多かったし、楽しんではいたんでしょうけど」
満潮「まぁ、姉さんに対して『頭空っぽにしてはしゃぎなさい』なんて難しい課題でしょ。諦めなさいって」
満潮「ああ……確か午後は秘書艦だったっけ」
山雲「もうちょっとー、ゆっくりしてからでも良いんじゃないかしら~」
朝潮「艦娘たる者、10分前行動は基本よ、山雲」
荒潮「うふふふふ、相変わらずねぇ。どこかのメガネちゃんや引きこもりさんに、姉さんの爪の垢を煎じて飲ませてあげたいわぁ」
朝潮「それに、霞のことが心配だから……あの子、また司令官に迷惑を掛けていないかと」
大潮「あー、霞はねぇ」
朝潮「……うん。様子見がてらに、もう行くわね。何かあったら執務室を訪ねてちょうだい」パタン
大潮「いってらっしゃーい!」
荒潮「うふふ、霞ちゃんや満潮姉さんの態度はある意味好意の裏返しでもあるのに……姉さんはそうは捉えられないんでしょうねぇ」
満潮「ちょっ、ちょっと!何でそこで私の名前が出てくるのよ!」
朝潮(服装、良し。髪の乱れもなし。うん、いいわ)
朝潮(昨日時点での任務の進み具合も把握してあるから、午前の業務分を霞と引き継いで……)
朝潮(さぁ、今日も頑張りましょう!)スッ
<ちょっと、ちゃんと聞いてるわけ!?
朝潮「……」
<この、クズ司令官!
朝潮「あの子は、また……!」
朝潮「失礼します!」ガチャ
霞「え、あ、朝潮姉さん!?うそ、もうそんな時間?」
朝潮「司令官、午後の秘書艦を務めます、朝潮です!よろしくお願い致します!」
司令官「お、今日も真面目可愛いな。待ってたよ」
朝潮「はい、恐縮ですっ!……霞。声が執務室の外まで響いていたけれど、何を騒いでいたの?」キッ
霞「別に、何でもないわ。……はいこれ、午前の業務分よ」バサッ
朝潮「え……ちょ、ちょっと」
霞「じゃあ私は遠征に行ってくるから。クズ司令官、朝潮姉さんが秘書艦だからって午後はなまけちゃダメよ」バタン
朝潮「霞っ!……もうっ」
司令官「構わないさ。最初こそびっくりしたけれど、近頃はすっかり慣れちゃったし」
朝潮「あの子、本当は良い子なんです。その……ちゃんと、後で注意しておきますから!」
司令官「ああ、良いんだ朝潮。霞が良い子なのは知ってる。今のもね、僕が悪かったから霞に非はないんだ」
朝潮「そうなのですか……?」
司令官「うん。昼を取ったからかその、執務しながらちょっとだけ居眠りしちゃっててさ。霞はそれを注意してくれたんだよ」
朝潮「そ、そうだったんですね。……それにしても、言い方が……」
司令官「言い方はきつかったかもしれないけれど、それも彼女の個性だからね。それに、きつい口調だからって霞は心から相手を貶したり蔑んだりはしない。全部艦隊を思ってのことなんだよ」
――――――――
――――
――
霞『平時だからって気を抜いてたら、痛い目見るわよ?いつ何時、緊急の連絡が入るかも分からないんだから!』
霞『アンタがそんなだとみんなが迷惑するの!何よ、まだ眠そうな顔晒して』
霞『いい?昼に眠くなる位なら夜にもっとしっかり休みなさい!耐えられないなら、意識が落ちる前に時間決めて仮眠でも取りなさいよ!』
霞『ちょっと、ちゃんと聞いてるわけ!?ああもう、見てらんないったら!……ほら、コーヒーでも入れてあげるからそれ飲んで頑張りなさいな!この、クズ司令官!』
――
――――
――――――――
司令官「不器用なとこもあるしきつく当たりがちだけど、なんだかんだ優しいんだ、あいつは」
朝潮「……」
朝潮「そ、そんなことありません!司令官は立派な方です!」
司令官「はは、ありがとう。そうだな、立派な方ってのになれるように、頑張らないとね」
朝潮「いえ……」
朝潮(司令官は、立派です。だって、こんなにもちゃんとみんなを、妹のことを見てくれているのだから)
朝潮(朝潮は本当に素晴しい上官に恵まれました。尊敬しているだなんて、一個人の感情を伝えるのは差し出がましくてとても出来ないけれど……)
朝潮(それでも。一艦娘としてこの人に、私の全てを捧げてついて行きたい)
朝潮「……司令官!朝潮はいつでも任務に取りかかれるよう、準備出来ています!どうぞ、ご命令を!」
司令官「おっ、さすがだな。よっしゃ、じゃあいっちょ頑張りますかね!」
朝潮「はい!」
霰「ふぅ……ただいま」
大潮「おかえりーっ!遠征はどうだった?」
霰「うん……大成功、だったよ」
朝潮「霰、お疲れ様。今丁度山雲と朝雲と荒潮がお風呂に入っているから、行ってくると良いわ」
霰「ありがとう、そうする、ね。姉さんも……秘書艦。お疲れさま」
朝潮「ええ、ありがとう」
満潮「あれ、霞は?」
霰「司令官に、報告……」
大潮「霞が報告かぁ。大丈夫かなー」
朝潮「大丈夫よ、きっと」
大潮「あれ?一番心配がるかと思ったのに」
満潮「不思議なこともあるものね」
霞「今帰ったわ」
荒潮「あら~、霞ちゃん、ずいぶん遅かったわねぇ。うっふふふ、司令官と何かあったのかしらぁ」
霞「はぁ……何もないわよ、荒潮姉さんは相変わらずすぐ変なこと言うんだから」
荒潮「うふふふふふ」
霰「霞は、執務室から直接、お風呂に来たんだよ……ね?」
大潮「そうだったの?」
霞「ええ、まぁ。潮風でべたべただったし、早いとこシャワーを浴びたかったから。今日は疲れたしね」
朝雲「布団は敷いて置いたから、すぐにでも寝れるわよ」
朝潮「もう二二〇〇を越えているし、みんな歯を磨いて着替えて、布団に入ったら消灯しましょうか」
大潮「さんせーい!」
朝潮「霞」
霞「朝潮姉さん……なに?」
朝潮「昼は、ごめんなさい。あなたを責めるような目で見てしまって……」
霞「良いわよ。自分の口調のきつさは知ってるつもりだし」
朝潮「ううん……司令官から聞いたわ、あなたが気を遣ってくれていたこと」
霞「別に……そんなんじゃないわ」
朝潮「司令官、『折角コーヒーを入れようとしてくれたのに、悪かったな』って言っていたわ。私からも……ごめんなさい」ペコ
霞「だ、だから良いってば……何で姉さんが私に頭を下げるのよ」
朝潮「霞」
霞「な、何よ」ビク
朝潮「司令官からの伝言よ。『今度、美味しいコーヒー入れてくれ』……確かに伝えたわ」
霞「……そう」
朝潮「……」
霞「……ふふっ。何それ、バカみたい」クスクス
朝潮「……」クスッ
山雲「今日も~、一日お疲れさまー」
朝雲「と言っても、今日は仕事らしい仕事をしていなかったからあまり疲れていないんだけれどね」
満潮「朝潮姉さんと霰と霞以外は、特に動きもなかったし……」
霞「そういう姉さんは明日遠征じゃなかった?」
満潮「ええ、そうね。いくつかのちっさい企業の輸送船の海上護衛任務だけど」
山雲「一日、出ずっぱりになるわねー。早く寝なきゃ~」
満潮「別にそんな大変じゃないわよ。というか、早く寝るよりも寧ろそろそろ二二〇〇の就寝時間を遅くしたいくらい何だけれど」
荒潮「時報担当は別としても、そもそも私達、何でいつもこんなに早く寝てるのかしらねぇ」
朝雲「暁型の子達だってまだ起きてる時間よね……」
朝潮「うーん、そうね……確かに目が冴えてきたわ」
大潮「……そうだ!8人で怪談でもしない!?話なら寝ながらでも出来るし!」
荒潮「うふふ、良いわねぇ」
満潮「はぁ
コメント一覧
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- 2016年02月16日 23:34
- 尊い
-
- 2016年02月16日 23:43
- 叶わないし敵わないと分かってるってのもなかなかええなぁ…提督はもう身を固めてるってシチュエーションの話は切ないけど良い話だ
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相変わらずのキャラの掘り下げだな…