【劇中劇】やよい「西部の町に」アーニャ「銃声が鳴く」
――善人も悪人もねぇ。ただ、真実は銃だけが知ってるのさ――
プロローグ
「血染めのアーニャ」
開拓時代の西部と聞いて思い浮かべる物は人それぞれだ
――ある者は夢を追って、ある者はただ生きるため、ある者は、辛い過去から逃げて――ここにやって来る。
「血染めのアーニャ」と呼ばれる女がいた。
彼女の父は、ロシア人だった。折りしもロシアは内紛の真っ最中。
父親はまだ幼かった彼女を連れてこの国へとやって来た。だが、よそ者に冷たいのはどこへ行っても変わらない。
父親は生きるために銃を握った。金のために人を撃った。他人の命と引き換えにして稼いだ金で、父親は娘を育てた。
娘が大きくなる頃には、彼は立派な人殺しだった。
たった一つの命を守るために、父親は西部で知らぬ者がいないほどの人殺しになっていた。
父親は、毎朝黙って「仕事」に出かけた。そのまま何日か戻ってこない事もあったが、娘はただ父親の帰りをじっと待っていた。
そして、帰って来た父親が言う「ただいま」に、「おかえりなさい」と返すのが娘の「仕事」だった。
ある日、父親が仕事に行く前に「いって来る」と娘に言って家を出た。
初めての出来事に、娘は返事を返す事が出来ず……そのまま、父親は家に帰らなかった――――殺されたんだ。
娘は父親の死を次の日の新聞で知った。父を殺したのは駆け出しの賞金稼ぎで、紙面ではまるで英雄のように扱われていた。
娘は泣いた。それまで自分を守ってくれていた優しい父が、突然この世からいなくなったんだ。
悲しみにくれる娘だったが、同情する者は誰もいない。
父親は冷酷な殺し屋で、凶悪な殺人犯――それが世間の評価であり、全てだった――
たった一人の娘を愛した、温かな父親の事を、娘以外の誰も知らない。
涙も枯れ果てた頃、娘は行動を起こす。
父親が遺した金を使い、集められるだけの情報を集めると、数日後には目的の人物の居場所を探し当てていた。
――寂れた田舎の酒場で、その男は酒を飲んでいた。
かりそめの栄光はすぐにボロを出し、今では誰にも相手にされぬ程に落ちぶれた男。
かつては西部中を沸かした英雄の、余りにも惨めな現実がそこにあった。
後で、一部始終を見ていたと言う奴が、その時の事を詳しく聞かせてくれたよ。
まず、酒場の扉を開いて一人の少女が入って来た。
その場にいた客の誰もが、その少女の髪の色――美しく光る銀髪に息を呑んだという。
そして少女は迷うことなくカウンターへ向かうと、「元英雄」の男に近づいた。
二言三言、言葉を交わした後で、男が突然叫び出した。「俺は、あの人殺しを殺った英雄だぞ!」……と。
酒場の客は皆、「ああまたか」と思ったそうだ。男は酒に酔うと、いつも過去の武勇伝を誰かれ構わずがなり立てた。
そして同じ話を、延々と繰り返すのだ……だが、その日はそうならなかった。
突然大きな銃声が響いたかと思うと、次の瞬間には、男は全身をズタズタにされて床に転がっていたと言う。
そして、それをやったのは、ほかならぬ銀髪の少女。
全身を返り血で赤く染めた彼女の右手には、銃身を切り詰めたショットガンが握られていて、
返り血で髪まで赤くなった彼女は、立ち去り際にこう言ったそうだ。
「私が、その人殺しの娘だ」……とね。
その日から今日まで、彼女の姿を見た者はいない。だがな、娘が死んだわけじゃあないんだ。
なぜなら、彼女の姿を見たが最後、みんな殺されちまうからさ……そうだよ。彼女は生きるために、父親と同じ道を選んだのさ。
――作り話だって疑ってるのか?
だったら、お前の後ろにいる彼女に、直接聞いてみたら良い――もっとも、それまでお前が生きていられたらの話だけどな。
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このssは
「はい、はーい! ザ・アイマスウェスタンがはっじまっるよー!」
の設定を練り直した物です。本来短編だったはずなのですが、長くなるためスレ立て直しました。
※ このssにはオリジナル設定やキャラ崩壊が含まれます。
※ 基本的に765もデレもミリもごちゃまぜです。
※ 暴力描写もありますし、アイドルが退場する事もあります。
※ 時代考証などは完璧ではないですので、年代等のズレがあるとは思いますが
雰囲気優先という事でご容赦ください
※ ゆっくり更新します。では。
1.「凶弾と花嫁」
保安官が、人を撃った。
多くの人間は、「それがどうした?」と思うだろう。
町ではいつでも銃声が鳴り、ギャング達が人知れず死んでいく。
自警のために持つ銃で人を脅し、日々の生活を営む輩だって存在するのだ。
そんな犯罪者を保安官が撃ち殺す。誰も気に止めやしない、それがこの町の日常だった。
――だが、彼女の場合は少し違った。
殺した相手は善良な市民、皆から信頼される正直な男で、次の市長候補としても注目を集めていた人物。
彼は、結婚を控えていた。相手の女性は美しく、腰まで届くプラチナブロンドの髪が特徴的だった。
花嫁は結婚式の前日に彼の家を訪れた。別に、大した用事があったわけではない。
ただ、二人きりの時間が過ごしたかった……それだけの理由だ。
だが、家についた花嫁を待っていたのは、血の池に沈む花婿の変わり果てた姿と、その横に立つ見覚えのある女性。
男の傍らに呆然と立ち尽くす彼女の右手には、鈍く光るピストル。
そして、その胸元には保安官であることを示す、星型のバッジ。
数多くのギャングによる襲撃から、この町を守ってきた優秀な保安官の姿が、そこにあった。
――ナムコタウンの保安官「ガナハ・ヒビキ」は、こうして追う側から、追われる側へと立場を変えた。
三角関係のもつれだとか、人知れぬ因縁があっただとか、当時は色々と騒がれたが、
花嫁を押しのけてその場から去った彼女は結局捕まらず、真相は全て闇の中だ。
町は一夜にして善良な市民と、優秀な保安官の二人を失い。残された花嫁はこの町から去っていった。
そしてこの日を境に、それほど治安の良く無かったナムコタウンは、西部でも有数の無法地帯へと姿を変えていく事となる。
==========
疑惑の保安官役 我那覇 響
2.「シェリフ」
今となっては西部で最も危険な町だと噂されるナムコタウンだが、初めからそうだったわけではない。
むしろ、以前は商業の中心と言われるほど活気に満ちた、潤いの町であった。
周辺の土地は荒野の中でも比較的豊かであり、大小様々な牧場が存在した。
やがて家畜や農産物の取引を目的した商人がやってくると、その中心となる場所で商売を始める。
そこに各地から様々な人間が移り住み、今のナムコタウンの原型が作られたのだ。
町は牧場と共に大きくなったが、それは同時に荒くれ者達のたまり場になる事も意味していた。
牧場で雇われるカウボーイの中には、暴力と銃によって生きてきた者も多い。
仲の悪い牧場のカウボーイ同士が酒場で鉢合わせ、そのまま銃撃戦になる事も少なくはなかったと言う。
――だが、一見なんでもありに見える西部にも、確かな法は存在した。
まさに、一触即発。一つの丸テーブルを挟んで、二人の少女と三人の男が睨みあっていた。
腰に下げたピストルこそ抜いていないものの、今にも相手を撃ち殺しかねない緊張感に包まれている。
その状況を、少し離れたテーブルから、隠れるようにして見ている別の少女の姿があった。
彼女の名前はノノハラ・アカネ。ナムコタウンの保安官代理である。
本来ならばこのような状況をいち早く収めるのが彼女の仕事なのだが、
今の彼女は生まれたての子鹿のようにぷるぷると震えながら、目の前の嵐が過ぎ去るのを待っていた。
――ああ、一体どうしてこうなってしまったのか――彼女の脳裏に、ほんの数分前の出来事が蘇る。
保安官代理役 野々原 茜
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コメント一覧
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- 2016年02月17日 20:17
- ロシア内紛というと丁度中の人が宣伝してたオーガストウォーズという映画があってな
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- 2016年02月17日 20:20
- ロシア人ガンマンとか、どこのタチバナさんだよ…
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- 2016年02月17日 21:54
- 控えめに言って読みにくい
だが、アイドルのカウガールルックはいいものだ
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