神谷奈緒「幸せのカタチ」
地の文あります。奈緒はアイドル引退してます。
時間軸は
神谷奈緒「幸福な食卓」
よりも後になります。
窓の外に目をやると午前中とは違いどんよりとした曇り空が広がっていた。
「あちゃー……こりゃ降ってくるかもしれないなぁ」
天気予報では降水確率10%未満と言っていたから布団まで干したのだが、これは失敗だったかもしれない。
「おかーさん」
「ん? どうした?」
娘のpが何やら不安そうな顔でこっちを見ている。
「おとーさん、傘持っていってないよ?」
そういえば、Pさんが出勤する時間はあまりにも天気が良かったので傘を持っていかなかったのだ。
「あー……。じゃああとでお迎えに行こうな」
あたしがそういうとpは満面の笑みで、うん!と元気よく返事をしてくれた。
頭を撫でながらPさんの大好きっぷりをからかう。
「んー、でも、おかーさんほどじゃないよ」
「んな!?」
な、なななにを言い出すんだ! なんであたしの事が急に出てくるんだよ!
「えー、だってりんおねーちゃんとかれんおねーちゃんが言ってたよ。『奈緒はPさんが好き過ぎて出張中、泣きそうになってた』って」
pがどこかしら加蓮の真似をしながら、入れ知恵をした犯人を教えてくれる。あんにゃろうめ。
「そっかー、凛と加蓮が言ってたのかー。そうかそうかー」
「お、おかーさん! いたいよー!」
pの頭をぐりぐりと撫で回していたら、pから痛いと苦情が入った。でも、お母さんをからかうからなんてちょっとお仕置きしないとなー?
お仕置き兼ねてぐりぐり撫で回していたら急にpが大声をあげた。
「ん? どうした?」
「おかーさん! テレビ! テレビつけて!」
……ああ、そっか。もうpの好きなアニメの始まる時間か。
「はいはい。じゃあ一緒に座って見ような」
「うん!」
テレビをつけてpと一緒にソファに座る。もう随分と長寿になった魔法少女物のアニメ。昔は日曜の朝にやってたんだけどなぁ。
「~♪」
pがOPに合わせて歌っている。そういや、pが良く歌うようになってからと言うもの、Pさんの親バカが進行した気がする。
まぁ、こんなに可愛いんだから仕方ないんだけども。
「ん? どした?」
pがあたしの方を不思議そうに眺めている。
「きゅうに笑ってどうしたの? まだお歌だよ?」
ああ、あたしが笑ってたのが気になったのか。確かにまだOPだからpにとって楽しい部分はもっと先だよな。
「pが楽しそうに歌ってたからお母さんも楽しくなったんだよ」
言いながらpの頭を撫でてやる。この子もあたしと同じで髪の量が増えそうな感じがする。
「おかーさんも大好きだもんね!」
またニコニコ顔でテレビに向き直る。子供ってのは素直だなぁ、と素直じゃないあたしはつくづく思ってしまう。
「ああ……!」
テレビのなかではお約束ながら魔法少女達がピンチに陥っていた。勝てるとわかってはいるが、思わず息を飲んでしまう。
「がんばれ……! がんばれ!」
隣ではpが魔法少女にエールを送っていた。うん、あたしの分まで声に出して応援してくれ! その分あたしは心の中で応援するから!
pとあたしの応援が届いたのだろう。シナリオとかではなく、きっとそうだ。魔法少女達は苦戦しつつも敵を倒し、平和を取り戻してくれた。
「やったぁ!」
「よっしゃあ!!」
思わずpと抱き合って魔法少女達の勝利を祝う。うんうん。頑張ってくれたもんな!
「pは魔法少女になりたいのか~」
やはり子供の頃はみんなこう思うんだろう。あたしにも記憶がある。思い出すと恥ずかしいけど……。
「おとーさんにたのんだら魔法少女にしてくれるかなぁ」
ん? Pさん? なんでだ?
「なんでお父さんなんだ?」
「だってりんおねーちゃんとかれんおねーちゃんが言ってたよ。おとーさんは魔法使いだって!」
ああ、なるほど。確かにPさんは魔法使いだけど、pが思ってる魔法使いとはちょっと違うんだよな。
「あいどるって?」
「みんなの前で歌って踊って、みんなを笑顔にする人、かなぁ」
子供に説明しようと思うと中々難しい。どう言うのが一番合ってるのだろうか。
「りんおねーちゃんとかれんおねーちゃんのこと!?」
pが目をキラキラさせながら聞いてくる。まぁ、確かにあいつらも昔はアイドルだったけど、今は歌手か女優って言う方が合ってるしなぁ。
「んー、まぁ、厳密には違うけど、そうだな。あいつらはアイドルだ」
今は違うけど、昔はアイドルだったんだ。大体合ってるだろ。
「じゃあおかーさんもアイドルだったんだね!」
「あ」
しまった。pにはあたしがアイドルだったこと秘密にしてたのに。
まだあたしの口からはアイドルだった、なんて言ってないから今から挽回すればセーフだ!
でも、あたしは子供の頭の回転の早さを舐めてたみたいだ。
「だって、りんおねーちゃんとかれんおねーちゃんがむかし、おかーさんといっしょにお仕事してたって言ってたもん」
だからおかーさんも、アイドルなんだよ! と言って嬉しそうにニコニコされると、論破されちまった身には堪えてしまう。
「わたしもアイドルにしてもらえるかなぁ」
さっきまでニコニコしてたと思えば今度は何やら考え事をしているようだ。まったく、子供ってのは忙しいな。
「じゃあ、お父さんに頼んでみるか。なに、あたしの娘だからアイドルの素質はばっちりだよ」
「わーい!」
Pさんとあたしの娘なのだ。アイドルのサラブレッドと言っても過言ではないだろう。
「へ?」
「だってアイドルになるんだもん!」
胸を張りながらそういうpは誇らしげですごくかわいく見えた。アイドルを魔法少女の類いだと思ってるんだな。
「ふふっ、じゃあpにお父さんとお母さんを守ってもらうよ」
やる気いっぱいのpの頭を撫でながら、pがアイドルになっている所を想像する。格好いい衣装を身にまとい、スポットライトに照らされたステージで歌うp。
「うん。最高だな」
「なにかいったー?」
なんでもないよ、と誤魔化して、なんとなく外に目を向ける。
「あ、やばい! p、雨だ! 洗濯物いれるぞ!」
「うん!」
やはり降ってきた雨に大慌てでpと一緒に洗濯物を取り込む。せっかく洗濯したのに濡らしてしまったら意味がない。
布団まで干していたのがいけなかった。案外時間がかかってしまったが、なんとかはなった。
「p?」
さっきまで意気揚々とお手伝いをしてくれてたpが窓の外を見て黙ってしまった。
「どうした?」
「おとーさん……」
「Pさん?」
Pさんならもうすぐ帰ってくるはずだが……。もしかして、窓から見えるのだろうか。
pに倣って窓の外を見てみるが、ただ雨が降っているだけで誰も居ない。しばらく、pと二人で無言のまま窓の外を眺めていた。
降り続ける雨を見て、ようやくpの言いたい事がわかった。
「そっか、迎えに行くって約束してたもんな」
あたしがそう言うとpは待ってましたと言わんばかりに元気良く、うんと答えた。
「じゃあ、行くぞ」
「うん!」
右手でpと手をつなぎ、左手に傘を持ったところで気がついた。
「あれ、これじゃあPさんの傘、持てないな……」
「おとーさんはわたしの傘に入れてあげるんだよ!」
先週買った新しい傘を自慢げに見せてくる。そんなに喜んでもらえると買ってあげた甲斐があったよ。
「じゃあ、お願いしよっかな。pは優しいな」
「だってアイドルになるもん! 優しくないとだめだよ!」
さすが、地球の平和を守るアイドルになる、と言うだけはある。
なんとなく、いつかの日を思い出す。あの日もこうして傘を持って迎えに行ったっけか。
凛と加蓮にからかわれながら、むすっとして迎えに行ったあの日が懐かしい。
「あ、おとーさーん!!」
駅に着くとpが大声をあげながら駆け出した。pが走る先にはあの日と同じように困り顔のPさんが居た。
「走ると危ないぞー!」
pに注意をしながら、気持ち早足であたしもPさんの元へ向かう。
「おとーさん困ってると思ったから!」
pは良い子だなぁ、と言ってにやけながら撫で回すPさん
コメント一覧
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- 2016年02月21日 22:02
- やっぱり出なかったのか、、、。強く生きて
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- 2016年02月21日 22:06
- SSR出したいんだったらバンダイに全財産貢がないとだめだよ?
無課金の俺、SSR一人も出てないのでSRだけを狙って十連続回してる
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- 2016年02月21日 22:13
- ちひろさんとぴにゃを蒸さないと!(アロマディフューザー×30+焼いた石に打ち水)
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- 2016年02月21日 22:38
- 奈緒に対する愛と、千川様への信仰心が足らんよ。オレは手に入れたぞ!
春先の大型二輪の免許とる予定がパーになったがな!
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- 2016年02月21日 22:39
- とりあえず出るまで毎日書けば良いよ(出ても書いて下さい)
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- 2016年02月21日 22:54
- 桜玉吉の漫画とは関係なかった
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- 2016年02月21日 23:17
- いつしか雨は止み、そこには大きな虹が架かるんだよなぁ
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