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白菊ほたる「不幸のカタチ」|エレファント速報:SSまとめブログ

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白菊ほたる「不幸のカタチ」

1: ◆Xz5sQ/W/66 2016/02/26(金) 01:33:06.47 ID:w8NXKRp60


※ オリジナル設定、キャラ崩壊注意


「おっかしいなぁ……なんで動かないんだろ?」

 ハンドルを握るPの何気ない呟きを聞き、助手席に座っていたほたるがごめんなさいと言葉を返す。
 
「その、また私のせい……ですよね?」

 眉を困ったように八の字にしてうつむくほたるを見たPが、慌てた様子で君のせいじゃないと付け加える。

 
「いいんです……不幸には、慣れてますから」



2: ◆Xz5sQ/W/66 2016/02/26(金) 01:34:44.68 ID:w8NXKRp60


 世の中には、何をやってもついていない、いわゆる「不幸体質」と呼ばれる人がいるとされるが
 
 彼女、白菊ほたるほど、その言葉がぴたりと当てはまる者もいないだろう。
 
 
 仕事先でアクシデントに巻き込まれるのは当たり前、黒猫が目の前を横切るのもしょっちゅうだし、
 
 表紙を飾った雑誌が急に廃刊になる、出演した番組が突如打ち切り、CDを出せば余りの売れ行きで在庫が底を尽き
 
 再び店頭に並べられるまでの間、関係先にクレームの嵐が吹き荒れた事だってあった。



3: ◆Xz5sQ/W/66 2016/02/26(金) 01:36:52.09 ID:w8NXKRp60

 
 そして極めつけとも言えるのが、彼女がこれまでに所属していた事務所が全て倒産しているという、
 
 この業界において、ある意味「いわくつき」と噂されるアイドルなのである。
 
 
 ちなみに、先ほどのPと言う男――現在彼女の担当をしているプロデューサーだ――彼もまた、そんなほたるに対して
 
 他のアイドル達と同様に接しているため、「不幸が怖くない男」「むしろ不幸にまみれていて気がつかない男」等と、
 
 業界において同じく奇異の目を向けられていた。



4: ◆Xz5sQ/W/66 2016/02/26(金) 01:40:19.45 ID:w8NXKRp60

 
 二人はこの日、とあるテレビ番組の収録のために、車で仕事先へ向かおうとしていたところだった。
 
 だが、いざ車に乗り込んでエンジンをかけようとしたときに、問題は起きた。

 
 ガソリンは満タン、バッテリーも異常なし、だというのに、何度試してもエンジンがかからない。
 
 その他にも色々と原因は考えられたものの、車にさほど詳しいわけでもないPでは、この問題の解決方法は

 思いつくことが出来なかった。



5: ◆Xz5sQ/W/66 2016/02/26(金) 01:42:20.36 ID:w8NXKRp60


 とはいえ、二人の対応は慣れた物だ。手早く車から降りると、Pは左腕に巻いた時計へと目をやる。

 
「仕方ない……車よりは時間がかかるけど、今日は歩いていくしかないなぁ」

 
 そう言って、Pが心配そうに隣にたつほたるの顔を見る。そんなPに、ほたるが大丈夫ですよと笑う。

 
「でも、一昨日まで風邪で寝込んでたろ? 病み上がりなんだから、もしもって事があるじゃないか」

「もう熱も下がりましたし……本当に大丈夫です。元気一杯、ですよ」


 ほたるが、小さくガッツポーズをしてみせる。それならばと、ほたるに押し切られる形で、
 
 二人は目的地を目指して歩き始めた。



6: ◆Xz5sQ/W/66 2016/02/26(金) 01:43:46.48 ID:w8NXKRp60

 
 さて、車が動かないとなれば、徒歩ではなくバスや電車を使えばいいじゃなかと言う声が聞こえてきそうなので
 
 その事についても少し、説明しておかねばなるまい。
 
 
 そもそも、こうして出発前に車の調子が悪くなり、別の交通手段を使って仕事先に向かわねばならなくなると
 
 いう事態を、二人は過去に何度となく体験していた。



7: ◆Xz5sQ/W/66 2016/02/26(金) 01:50:44.53 ID:w8NXKRp60

 
 しかし、電車に乗ると何かしらの理由で電車が止まり、ならばバスだとバス停に向かえば、着いた途端に目の前でバスが走り去る。
 
 タクシーにいたってはそもそも二人の周りに現れないし捕まらない等々……とにかく何かしらの理由で到着できなかったり、
 
 仮に無事辿りつけたとしても、予定の時間よりも大幅に遅刻する事を、この体験から二人は学習する。
 
 
 そのため最近では、受ける仕事もなるべく事務所から遠くない場所、そして出発の前には時間に余裕を持って
 
 さらに今回のような移動手段のトラブルに巻き込まれにくい徒歩で仕事先に向かうようになっていた。
 
 
 これは「不幸体質」と呼ばれるほたるのプロデュースを始めてから数ヶ月。Pとほたるが二人で編み出した、
 
 彼等なりの不幸への対処法でもあったのだ。



8: ◆Xz5sQ/W/66 2016/02/26(金) 01:52:36.44 ID:w8NXKRp60


――事務所を出てから数十分。
 
 うららかな日差しの下、街路を並んで歩くほたるとP。そんな二人の間を風が抜けていくと、うなじの辺りから丸く
 
 揃えられたほたるの髪が風に揺れ、辺りに甘い花のような香りを広げる。

 
 きっと、彼女の使っているシャンプーの匂いなのだろう……そんな事を考えながら、Pはそっと
 
 隣を歩くほたるの様子をうかがう。



9: ◆Xz5sQ/W/66 2016/02/26(金) 01:53:53.64 ID:w8NXKRp60

 
 日の光を柔らかに反射する透き通るような白い肌に、薄幸そうな顔立ち、
 
 それらがほたるの纏う儚げな雰囲気と合わさって、何かこう……人の庇護欲を刺激するのだ。
 
 この魅力が、ファンの心を掴んで放さないのだな。等と、そんな彼女の横顔を眺めながらPが考えていた時だ。
 
 
 そんなPからの視線に気がついたほたるが、少しばかり困った表情になり。「あの、なにか……」と小首を傾げる。
 
「いや……なに、本当に具合は大丈夫なのかと思ってさ」

 まさか、彼女の横顔に見惚れていたとも言えず、Pは笑って誤魔化すと、視線をまた前へと戻した。



12: ◆Xz5sQ/W/66 2016/02/26(金) 12:01:47.25 ID:w8NXKRp60

 
 いつもならばこうして歩いていると、何の前触れもなく頭上から植木鉢が落ちてきたり、どこからかボールが飛んできたり、
 
 なぜかカラスが集まってきたり、不審者と間違われてPが警官に呼び止められたりするのだが、
 
 今のところは事務所を出てからここまでの道のりは、いたって順調である。
 
 
 このまま何事も無く仕事先へと行けますように……そうPが、普段は信じてもいない神様にお願いをした時だった。



13: ◆Xz5sQ/W/66 2016/02/26(金) 12:03:13.71 ID:w8NXKRp60

 
 一瞬、頭の上に何か冷たい物が落ちてきて、それが続けざまに二度、三度……

 やがてぽつぽつと足元のアスファルトに小さな点ができ、辺りの空気も湿り気を帯びたものに変わっていく。
  
「あ、雨ぇっ!?」

 唐突に振り出した雨粒を避けるため、二人は近くにあった建物の影へと避難した。
 
 だがみるみるうちに雨の勢いは強くなり、先ほどまでの快晴がまるで嘘であったかのような土砂降りに。



14: ◆Xz5sQ/W/66 2016/02/26(金) 12:04:08.83 ID:w8NXKRp60

 
「ちくしょう……今日は晴れるんじゃなかったのかよ」

 二人と同じように雨宿りをしていた見知らぬ男が、空に向かって悪態をつくと、その言葉を聞いたほたるの顔が曇る。

 
「やっぱり……今日もついてないんですね……」

「ま、まぁまぁ……天気予報が外れるなんて、別に珍しい事じゃないさ」


 そうは言ったものの、完全には彼女の不運を否定できないと経験で分かっているだけに、Pの心も辛かった。
 
 深いため息をついて落ち込むほたるをなんとか励ましたかったが、天気ばかりは人の手でどうにかできるものでもない。



15: ◆Xz5sQ/W/66 2016/02/26(金) 12:04:45.95 ID:w8NXKRp60


「とりあえず、傘がいるな……そこのコンビニで買ってくるから、ちょっと待っててくれないか?」


 ますます勢いを強くする雨になるべく濡れないよう注意して、Pが数軒先にあるコンビニへと向かう。

 そんなPの後姿を見ながら、ほたるは申し訳ない気持ちで一杯になっていた。



16: ◆Xz5sQ/W/66 2016/02/26(金) 12:05:38.34 ID:w8NXKRp60


――最初に説明したが、ほたるは現在の事務所にやって来るまでにも、何度かの移籍を経験している。

 そのいずれもきっかけは違ったが、どれも最後には所属していた事務所が倒産し、移籍せざるを得なくなったのが理由だ。

 
 だが、そんな状況でも彼女がアイドルの道を諦めるという事は無かった。
 
 今まで人一倍不幸に見舞われていたからこそ、誰かを笑顔にする……他人を幸せな気持ちに出来るアイドルという存在に、
 
 ほたる自身、強い思い入れがあったからである。



17: ◆Xz5sQ/W/66 2016/02/26(金) 12:06:07.85 ID:w8NXKRp60


 だから、例え移籍先の事務所で疫病神扱いされようと、
 
 また、同僚から腫れ物に触るように接されても、ただひた向きにアイドルとしての活動を続けてきた。

 
 そして何度目かの移籍の末、遂に彼女はPと出会う。



18: ◆Xz5sQ/W/66 2016/02/26(金) 12:06:38.79 ID:w8NXKRp60

 
「白菊ほたるといいます……あの、いきなりですが、これまで所属していた事務所が倒産してしまって……」

「それに、どうも私は不幸を呼び寄せるみたいで……知り合いが事故にあったり、同僚がトラブルに巻き込まれたり……」

「で、でも! アイドルを頑張ろうという気持ちは、誰にも負けないつもりなので……」



19: ◆Xz5sQ/W/66 2016/02/26(金) 12:07:18.02 ID:w8NXKRp60


 その頃になると、業界の中に彼女の運の悪さを知らない者はおらず、そしてほたる自身、この期に及んで
 
 そんな自分を受け入れてくれる移籍先がまだあるとは、思ってもいなかった。

 
 正直、これが最後のチャンスになるかもしれない……そう考えると相手の顔もまともに見れず、
 
 自己紹介でも暗い話題をつい口走ってしまう。



20: ◆Xz5sQ/W/66 2016/02/26(金) 12:09:30.76 ID:w8NXKRp60

 
「うん、よろしく……ところで君、ドーナツは好きかい?」

 呆気にとられてつい顔を上げると、担当だと名乗った男が自分の座るデスクの上を指差す。
 
 そこには、一つずつ袋に入れられたドーナツが山のように積まれていた。



21: ◆Xz5sQ/W/66 2016/02/26(金) 12:10:06.88 ID:w8NXKRp60

 
「うちのアイドルがさ、差し入れだって持って来たんだけど……さすがに一人でこの量は食べられなくってね」

「あ、あの……私の話は、聞いてましたか?」

「あぁ、前の事務所が倒産したんだって? よくある話ではあるけど……大丈夫、この事務所は心配ないよ」


 男がドーナツの袋を手に取りながら、向かいのデスクに座る緑色のスーツを着た女性へと目を向ける。
 
「うちにはやり手の事務員さんもいるから……それで、チョコとイチゴだったらどっちの方が好きかな?」

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コメント一覧

    • 1. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
    • 2016年02月26日 21:36
    • なんか中途半端な終わり方だな
    • 2. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
    • 2016年02月26日 21:37
    • 実際ほたるは幸せになってほしい
    • 3. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
    • 2016年02月26日 21:37
    • ほたるかわいすぎんよー
    • 4. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
    • 2016年02月26日 21:37
    • 何処が不幸なんですかね
    • 5. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
    • 2016年02月26日 21:46
    • 不幸のせいにして「ずぶ濡れになったから温めないとね」と耳元で囁き続けながら濡れ透けほたるを抱きしめたい
    • 6. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
    • 2016年02月26日 22:33
    • こういうのでいいんだよこういうので

はじめに

コメント、はてブなどなど
ありがとうございます(`・ω・´)

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