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姫「私の初恋と記憶の中の貴方」|エレファント速報:SSまとめブログ

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姫「私の初恋と記憶の中の貴方」

1: ◆WnJdwN8j0. 2016/02/22(月) 16:12:57.68 ID:FFb1ekh20

「俺のお嫁さんになってください」


それは、遠い昔の記憶。
まだまだ子供だった頃の2人が交わした、誰も知らない約束。

「俺はもう国に帰らなくちゃいけないけど――」

あの子と別れる日、私は泣きながら嫌だとワガママを言いました。
だけどあの子は私の指に、ハートの指輪をはめてくれました。その指輪は、あの頃の私の手には、かなり大きかったのだけれど。

「お揃いの指輪。これに誓って、絶対迎えに来るから――」

その言葉で私は涙をこすって、笑顔を作ったのです。

姫「迎えに来てね…ぜったい、絶対に!」


それが、私の初恋でした――




2: ◆WnJdwN8j0. 2016/02/22(月) 16:13:23.43 ID:FFb1ekh20

>中央国王宮、広間


姫「何だかワクワクしますね、お兄様」

兄王子「全く、お前は気楽なものだな…国の未来に関わることなのだぞ」

その日、広間には王家の一族が集まっていた。
その理由はというと――国で功績をあげている剣士を『勇者』として城に招いた為である。

数年前から、ここ中央国は魔王の国と争っていた。
戦争開始当初から数年は中央国が優勢だったが、1年前に魔王の国で王位交代が行われ、それから徐々に中央国は劣勢となった。
中央国の友好国も魔王の国に次々と制圧されていき、中央国の未来は危うい――そういう現状である。

姫「聞く所によると、勇者様って私と同じでまだ成人前だとか! お友達になれたらいいなぁ」

しかし平和な王都でぬくぬく暮らしてきた姫は、どこか能天気だった。
彼女は男ばかりの兄弟の中で紅一点なせいか、親兄弟からも家臣達からも大事にされている。そのせいか、楽天家で世間知らずなところがあった。

この緊張感に包まれている広間で1人能天気な姫に、兄は呆れつつも苦笑した。


兵士「陛下。勇者殿が来られました」

王「うむ。入られよ」

王の呼び声と共に、広間に1人の男がゆっくり入ってくる。


姫「――」

その姿を見て、姫は言葉を失った。




3: ◆WnJdwN8j0. 2016/02/22(月) 16:14:12.95 ID:FFb1ekh20

~回想~


姫「お花さん、こんにちは!」

まだ世の中が平和だった幼少期、私は城の近くの花畑へとよく足を運んでいました。
平原一面に広がる花の景色は、夢見る少女だった私の心をとらえる程に美しかったのです。

姫「…あら?」

「……」

姫「こんにちは!」

その日いつものように遊びに来た私は、珍しい先客に挨拶をしました。

大人しい顔立ちと黒く艶のある髪が印象的な、私と同い年くらいの男の子。
私の挨拶に対して静かに会釈した彼に、人見知りすることを知らなかった私は更に声をかけました。

姫「あなたはだぁれ?」

「俺は……ごめん、名前を言ってはいけないんだ」

それが、私と彼の初めて交わした会話でした。




4: ◆WnJdwN8j0. 2016/02/22(月) 16:15:47.34 ID:FFb1ekh20

姫(綺麗な声だなぁ)

名を名乗れない…そんな彼の事情など二の次で、私は彼に興味津々でした。

姫(あ、わかった。この子、妖精の王子様だ)

人間の女の子に恋をした妖精の王子様は、人間に変身して女の子と仲良くなる。妖精の世界には掟があって、人間に妖精としての正体を知られてはならない…
当時読んでいた絵本がそんなお話で、私は彼がその王子様だと思ったのです。

姫(正体がバレたら王子様は罰を受けるんだわ。じゃあ知らないフリをしないと!)

姫(でも、妖精の王子様とお友達になりたいなぁ)

「?」

姫「あの、私とお友達になってくれませんか!」

「…俺が?」

姫「うん! 私は姫と言います、えぇと…」

彼を何と呼べばいいか…少し考えてから、私は彼の呼び名を決めました。

姫「よろしくお願いします、プリンス!」

プリンス「プリンス…。…うん、プリンスって呼んで!」

こうして私とプリンスはお友達になり、お花畑でよく遊ぶ仲になりました。




5: ◆WnJdwN8j0. 2016/02/22(月) 16:16:41.00 ID:FFb1ekh20




王「…というわけだ。我が国の軍で剣を振るってはくれまいか」

勇者「…御意」

どこか孤独な雰囲気を纏わせている勇者は、言葉少なめにそう返答した。
礼儀作法については無作法であるが、彼には国内で何十匹もの魔物を切り伏せてきた実績がある。

王「とりあえず今日は城に足を運んだので疲れたであろう。城の客室で休むといい」

勇者「…では下がらせて頂きます」


勇者が広間から出た後、王子たちはざわざわ話を始めた。
思っていたよりも細身だとか、彼に頼っていいのだろうかとか、あまり良い印象は持っていない様子だ。

だが、その話の輪に入らず――

兄王子「姫?」

姫は広間から駆け出していた。


勇者「……」ツカツカ

姫「待って下さい!」

勇者「……ん?」

姫「プリンス…ですよね?」

勇者「……!」




6: ◆WnJdwN8j0. 2016/02/22(月) 16:17:08.65 ID:FFb1ekh20

姫「あぁ…。間近で見て、やっぱり、と思いました。プリンスですよね?」

勇者「…まさか……姫、様?」

姫「やっぱりプリンスですね!」

あの頃よりも随分大人しくなってしまったものの、顔貌はあの頃の面影がある。
正体を妖精の王子と錯覚させたその声は、男らしさを含んで美しさに磨きがかかっていた。

姫「嬉しい! まさかプリンスにまたお会いできるだなんて!」ギュ

勇者「!! その、手……」

姫「あ…プリンス、でなくて勇者様、でしたね」ニコ

勇者「~っ……」

姫「? どうされました?」

勇者「も、申し訳ない……。その、そんなに可愛らしい笑顔を間近で見せられては…。その……」

姫「ふふっ。私はあの頃とあまり変わっていませんよ?」ニコニコ

勇者「…っ」

姫「…? 勇者様…もしかして迷惑でした?」シュン

勇者「い、いえいえ! まさか、そんなこと!」アワアワ

姫「そうですか! ふふ、良かったぁ♪」ニコーッ

勇者「~っ……」




7: ◆WnJdwN8j0. 2016/02/22(月) 16:17:54.96 ID:FFb1ekh20

姫「懐かしいですね。覚えていますか? あの花畑…」

勇者「はい、確か…スミレの花が咲く花畑でしたね」

姫「えぇ、そうです。数年前、あの花畑の所に軍事施設ができてしまって…もう、あの場所は無くなってしまいました」

勇者「そうですか…それは残念ですね」

姫「でもこうして貴方と顔を合わせると、色々な思い出が蘇ってきます。あの頃は、楽しかったですねぇ」

勇者「す、すみません、姫様……」

姫「?」

勇者「その…すみません。あの頃の記憶は若干、曖昧なところがありまして……」

姫「まぁ。そんなこと気になさらないで。あれから力を蓄えて勇者になる程、色々なことがあったのでしょう? 記憶が色あせても仕方ありませんわ」

勇者「…かたじけない」

姫「そうだ勇者様、ならあれは覚えていらっしゃいま――」

兄王子「姫」

話が盛り上がってきた所で、現れた兄王子に静止された。

兄王子「そろそろ勘弁して差し上げろ。勇者殿はお疲れだ」

姫「あぁ! そうでした、大変申し訳ありません!」ペコリ

勇者「い、いえ! 貴方に頭を下げさせるわけには!」

姫「今日はどうぞ、ごゆっくりお休み下さいな。…あ、でも勇者様」

勇者「は、はい」

姫「また、色々お話しして下さいね♪ それでは」


兄王子「お前は本当、無防備だな」フゥ

姫「あらお兄様、彼はこの国を救って下さる方なのでしょう?」


勇者「……」ドキドキ

勇者「姫様、か……」




8: ◆WnJdwN8j0. 2016/02/22(月) 16:18:29.80 ID:FFb1ekh20

>翌日


勇者「はぁーっ!!」

兄王子「――っ!」

訓練場にて、勇者と兄王子が剣の打ち合いをしていた。
王子たちの中で最も剣の腕に優れている兄王子は、決して手を抜いてはいなかったが…

兄王子「参った」

勝負は短時間でついた。
剣の腕に優れているからこそ、勇者との圧倒的な差に気付くのは早かった。


姫「きゃあっ、勇者様素敵ですーっ!」

勝負がつくと同時、姫は駆け出して勇者に差し入れのドリンクを渡した。

勇者「ひ、姫様……ありがとう、ございます」

兄王子「冷たいな姫、俺には何もないのか?」

姫「ごめんなさいお兄様、私は勇者様を贔屓しますわ」

兄王子「やれやれ」

姫は朝からこの調子だ。
朝食時は勇者にばかり声をかけ、勇者がどこに行くにでもついて回り、事あるごとに賛美の言葉を口にする。
この露骨なまでのアピールに、王子たちは苦笑するばかりであった。

勇者「…参ったな」

勇者はというと、クールな容貌に反し女慣れしていないのかタジタジである。
そんな勇者の素朴な一面は、同性として王子たちから好感を抱かれていた。




9: ◆WnJdwN8j0. 2016/02/22(月) 16:19:15.83 ID:FFb1ekh20

姫「休憩時間ですか! 勇者様、城下町をご案内しますよ!」

兄王子「こら姫。勇者殿は訓練でお疲れなので、ゆっくり休ませてやれ」

姫「あ…。そうですね、すみません」

勇者「いえ…姫様のお誘い、嬉しく思います」

姫「絶対に私が案内しますから、お暇な時に声をかけて下さいね! あ、お疲れでしたら肩でも揉みましょうか!」

勇者「あ、その…」タジタジ

兄王子「本当に困った妹だ。勇者殿、すまんな」

姫「お兄様は意地悪ですー。向こうへ行って下さい」プクー

兄王子「やれやれ。勇者殿、困ったら逃げてこい」

そう言って兄王子はそこから立ち去る。
ようやく2人きりになれたことに、姫はニンマリした。

姫「…」ジー

勇者「……」タジタジ

勇者は視線を逸らしている。
この困った顔が大好きだ。剣を振っている時の勇ましさとのギャップにきゅんとくる。

自分はどうだろう。可愛い顔をできているだろうか。
歳の割に幼い顔がちょっとコンプレックスなのだけど、勇者はどう思ってくれているのだろうか。

姫(あ、そうだ!)

勇者との話の種にと、持ってきたものがあったのだ。




10: ◆WnJdwN8j0. 2016/02/22(月) 16:19:50.50 ID:FFb1ekh20

姫「勇者様、これを覚えていらっしゃいますか?」

勇者「それは…」

姫が取り出したのは、ハート型の指輪だった。
昔の記憶が薄れているとはいえ、これまで忘れられていたら悲しい、とか思ったりして…。

姫「あの頃は大きかったのですけれど、ぴったりはまるようになりました! ほら!」

勇者「…大事に持っていて下さったのですね。……姫様に求婚とは、身の程知らずのことをしたものです」

姫「身の程知らずだなんて、そんな! 私、本当に嬉しかったのですよ!」

身分の違いだとか、国のことだとか、そんなこと当時の自分は何も考えていなかった。(今もどうか怪しいけれど)
好きになった男の子が、自分のことを好きになってくれた。それを嬉しく思わないはずがない。

姫「初恋の思い出を忘れられる程…私はまだ、大人ではありません」

勇者「……」

勇者の表情は複雑そうだ。その表情から心は読み取れない。

勇者「申し訳ありません、姫様」

姫「…っ」

だから頭を下げられた時は、はっきりフラれるのだと思った。
だけど――

勇者「実は、その…俺の方は、指輪を失くしてしまいまして」

姫「……」

だから、その言葉
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    コメント一覧

      • 1. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2016年02月27日 22:44
      • これは良いNTR
      • 2. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2016年02月27日 23:23
      • 姫が馬鹿過ぎてイライラした
        そんなだからスイーツ()とか言われるんだよ
      • 3. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2016年02月27日 23:34
      • プリンスって書かれるたびに、あのミュージシャンのプリンスの顔が浮かんでフフッってなるからやめて
      • 4. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
      • 2016年02月27日 23:42
      • こいつ、ゴミみたいな兄さんだな、嫌なとこ全部押し付けて美味しいところだけとってくなんて

    はじめに

    コメント、はてブなどなど
    ありがとうございます(`・ω・´)

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