男「当たり屋でもやるか!」子分「さすが兄貴!」
- 2016年03月02日 23:40
- SS、神話・民話・不思議な話
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男「やべーな……ついに金が底を尽きちまった」
子分「兄貴、食いもんはないんすか……」グゥゥ…
男「さっき食ったパンと牛乳が最後だ。もうなんもねえ」
子分「マジっすか……」
男「こうなったらしょうがねえ……当たり屋でもやるか!」
子分「さすが兄貴!」
男「おめえ、当たり屋も知らねえのかよ」
子分「すんません、なにせ最終学歴が小学校卒業なもんっすから」
男「へっ、まだまだだな。俺なんざ幼稚園中退だぜ!」
子分「マジっすか!?」
男「低温ヤケドってあるだろ? 低学歴も極めると、人をヤケドさせられるんだぜ!」
子分「すげえええええ! 兄貴かっけえええええ!」
男「車がブーンときてキキーッてなって、ドカンってなって、オラオラァってやるだろ?」
男「んでもってヒャッホーイってことだよ」
子分「ようするに、乗用車とわざと接触事故を起こして」
子分「できれば大きな騒ぎにしたくないって相手の弱みにつけ込んで、金品を脅し取るってことっすか!」
男「そういうこった! おめえはバカだけど、たまには理解が早いな!」
子分「これも兄貴の教育のおかげっすよ!」
子分「どこでやるんすか?」
男「このあたりなら、駅前の大通りがいいだろ。交通量も多いからな!」
子分「なぁるほど!」
ブロロ…… ブロロ……
男「見ろよ、この交通量の多さ! 絶好の当たり屋スポットだぜ!」
子分「ホントっすね! 当たり屋界の聖地っすね! エルサレムっすね!」
男「俺の目には黄金の塊が道路を走り回ってるように見えるぜ」
子分「いや……黄金はあくまでも金属なんで、こんな風に走り回ったりしないっすよ」
男「……うん、そうだよね」
子分「兄貴、危ないッ!」
ブロロォッ!
一台の乗用車が歩道にいた男に突っ込んできた。
ドゴォンッ!
男「ぐはぁぁぁっ!」ゴロゴロ…
男「うぐ、ぐ……」ゲホッ…
車から一人の青年が降りてきた。
青年「す、すみませんっ……! だ、大丈夫ですかっ!?」
青年「ぼく、ペーパードライバーなので、ハンドルを切りすぎてしまって……」
子分「ふざけんじゃないっすよ! こうなりゃ金、金を出すっすよ!」
青年「うう……お金で済むのなら……」
男「……待て」
男「俺はまだ、当たり屋をスタートする前だった」
男「つまり、今こいつを脅したら、始業時刻前に働くみたいになっちまって損だ!」
男「よって今俺をひいたお前、許してやるからとっとと消えろ」
青年「えええええ!?」
子分「さすが兄貴! 損得勘定が冴えてるっす! 勘定奉行にお任せあれっす!」
男「だろ?」ニヤッ
男「ん? まだ許され足りないってのか?」
青年「いえ、そうじゃなくて……いくら許されてもぼくがあなたをひいたのは事実!」
青年「このままじゃぼくの気が済みません! どうか罪滅ぼしをさせて下さい!」
男「いいだろう……」
男「だったらお前、俺の手下になれ!」
青年「ありがとうございます!」
男「じゃあ今から当たり屋スタートな!」
子分「兄貴、危ないッ!」
ブロロォッ!
一台の営業車が歩道にいた男に突っ込んできた。
ドゴォンッ!
男「ぐおぉぉぉぉっ!」ゴロゴロ…
男「あががっ……!」
営業車からは一人のサラリーマンが降りてきた。
リーマン「すっ、すみません! 運転中に電話してて、それで……」
子分「ダメっすよ! 運転中に電話しちゃいけないなんて、オレだって知ってるっすよ!」
リーマン「しかし、どうしても急ぎの用だったもので……」
子分「とにかく早く金を出すっすよ! ほら、お医者さんの金! 医者料を出すっす!」
青年「子分さん、ちょっとどいてて下さい」
子分「へ?」
青年「とっととゼニ出さなテメェんとこの会社にこのこと全部ブチまけたるど!」
青年「そうなったらテメェ懲戒だぞ!? このご時世ハローワークか? あぁん?」
リーマン「ひいいっ……! す、すみませんっ!」
青年「すんませんで済んだら、警察も消防も税務署も市役所もいらねんだよォ!!!」
リーマン「あ、あわわ……」ジョボボボ…
男「……待て」
男「だからやめろっての」
青年「どうして!?」
男「謝ってんだから、許してやれよ」
青年「ハァ? なにいってんですか! すんませんで済んだら警察は――」
男「いるよ」
男「だって警察がなくなったら、おまわりさんが困るじゃん」
青年「ぐっ……たしかに……」
子分「さすが兄貴!」
リーマン「いえ……私、会社には戻りません!」
男「どうして?」
リーマン「だって……謝ったら許してくれた人なんて、生まれて初めて出会ったから……」
男「あんたんとこの上司は許してくれないのか」
リーマン「はい、ちょっとミスをするとすぐ人をパンツ一丁にして鈍器で殴るんです」
男「そりゃひでえな」
子分「ブラック企業を通り越して、ダークっす! ダーク企業っす!」
リーマン「どうか、私を仲間に入れて下さい!」
男「いいよ」
リーマン「ありがとうございます!」
男「しかし、だいぶ時間をロスしちまった。こうなりゃ、もっとビッグな車に――」
子分「ビッグな車が来たっすぅぅぅぅぅ!」
ブロロロロロォッ!
一台のダンプカーが歩道にいる男めがけて突っ込んできた。
ドガッシャァァァン!
男「ぐごほぉぉぉぉっ!」ゴロゴロ…
大富豪「いやぁ、すまんすまん。大丈夫かね?」スタッ
男「うう……」ピクピク…
子分「大丈夫なわけないっすよぉ! 複雑骨折っすよ!」
リーマン「あっ、あれは!」
青年「だれなんですか?」
リーマン「世界一の大富豪だよ! ……その総資産は100兆円ともいわれてる!」
青年「100兆円!?」
大富豪「ヒマだったので普通免許しか持ってないのにダンプを運転したら、こんなことになってしまった」
大富豪「お詫びに10兆円ほど差し上げよう」
男「……10兆円ってどのぐらいだ?」
子分「10円の1兆倍っすね」
男「そりゃすげえな!」
子分「1兆円の10倍でもあるっす」
男「そう考えると全然大したことない金額に思えてくるな。いらねえや」
青年&リーマン「ええええええええええ!?」
リーマン「そうですよ! 骨が折れてるんですから!」
男「平気さ……なぜなら俺は今、嬉しくて仕方ないからだ」
子分「どうしてっすか?」
男「だって俺、今複雑骨折してるんだろ?」
男「いつも単純単純ってバカにされてた俺が……初めて“複雑”になれたんだ……」
子分「兄貴……」ブワッ
男「こんなに嬉しいことはない!」シャキーン
男の体は完全回復した!
子分「さすが兄貴!」
男「いらねえってのに」
男「暗証番号忘れちゃったから、どうせ下ろせねえしな!」
リーマン「あなたなら誕生日にしてそうですけど」
男「誕生日も忘れちゃった!」テヘッ
子分「さすが兄貴! さす兄!」
男「おいおい略すなよ。キムタクや国連と同格になったみてえで照れ臭いじゃねえか」
子分「いやいや、兄貴はキムタクや国連よりも上っすよ!」
男「ったく、お世辞がうまくなりやがって!」
ハッハッハ……
大富豪「ダイヤモンドはどうかね?」キラキラ…
男「ダイヤモ
コメント一覧
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- 2016年03月02日 23:48
- 嫌いじゃない
-
- 2016年03月02日 23:59
- すきかも…
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