世界一深い海の底で、世界で初めて録った音。結構怖い
轟音、この世のものならぬ呻き、軋み。
圧力と闇が支配する世界のどん底、マリアナ海溝の最深部「チャレンジャー海淵」で初収録した音です。
水深10,911m。音なんかしないものとばかり思ってました。マリアナ海溝は謎多きアビスですね。
「太陽の光って、それほど深くまで届かないんです。でも音波は海中でもかなり遠くまで伝わる。音は、深い海の環境を探る一番の手がかりなんですよ」と、録音プロジェクトを率いたアメリカ海洋大気庁 (NOAA) の海洋学者Bob Dziakさんは米Gizmodoの取材で語ってますよ。
プロジェクトではまず平方インチあたり16,000ポンド(平米あたり11,250,000kg)の超圧力に押し潰されない機材を設計・製作しました。次に考えたのが、その録音機材(チタン製ケースに入れた水中マイク)を海底まで下ろす係留方法です。あんまり急激に下ろしても水圧の変化に順応できなくて壊れちゃうので、スピードを調整しながら、ゆっくりと下ろしていかなければなりません。
こうして海底まで到達後は23日連続で録音を行ない、気候と海の混雑が落ち着く11月を待って引き上げました。 苦労の結晶の初収録音はこちらで聴けます。
・船が通る音
・ヒゲクジラの鳴き声
・ヒゲクジラと付近で起こったM5の地震の音
案外耳障りな音ですよね。録音された音声の1つには海上を通過したカテゴリー4の台風の音まで残っていて、「クジラ、船とか、海上で起こっている物音が意外とはっきり録音されていたのにはビックリでした」とDziakさん。
チームでは将来またチャレンジャー海淵に挑み、ほかの海底の調査にも技術を活用できればと考えています。最近は氷河が溶けて北極海の奥地まで船が通れるようになってます。ああいう場所でも海底は調べなきゃなりませんものね。
「同じ大気圏内でも未知の世界に挑むという意味では、海底調査も太陽系外の探査と同じだよ」というDziakさんの言葉は、ジェームズ・キャメロンの言葉と重なりますね。
Maddie Stone - Gizmodo US[原文]
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