転載元:神様「神様だっ!」 神使「神力ゼロですが・・・」
【#1】
テクテク
神様「う〜 さぶっ!!」
神使「氷点下いっているでしょうね」
神様「んなこと言われなくても分かるわ! 腐れ神使」
神使「神様? 一応女性なのですからもう少し上品な言葉使いをなされては・・・」
神様「うっさい! 一応って何だよ! っていうかまだ着かないの〜」
神使「そこを曲がれば次の勤務先のにょろにょろ神社です。 宮司さんへのお土産は?」
神様「あるよ。 大九で買ったどらやの羊羹」
テクテク
神様・神使「・・・・・・」
神様「なぁ、社務所ないぞ? っていうか神社がないぞ?」
神使「これは大きな駐車場ですね・・・」
ヒュー
・【※閲覧注意※】見れば見るほど心が病んでくエ□GIFスレ・・・(GIF大量)
・【エ□GIF】ちょwwこの駅弁激しすぎワロタwww俺達にできない事を平然とやってのけるAV男...
・【GIFあり】韓国アイドルがエ□を追求し過ぎた結果・・・(17枚)
・【※炉利注意※】風呂で小便させられてる中●生のGIFヤバ杉、、、(GIFあり)
・【※GIF25枚】普通のエ□GIFじゃ満足できなくなった殿方ちょっくら寄っておくれやっしゃスレ。
・【H注意】 長澤まさみのこのgifエッッッッッッロすぎンゴwwwwwwww(画像)
・男性閲覧注意。「本当にチ●コがデカいやつ」はこうなるらしい・・・(画像)
・女子高生、全裸いじめ映像がアウトすぎる(※ 加害者顔モザイクなし)
・失踪して行方不明だったアイドル、MUTEKIからAVデビュー!このAV墜ちは闇が深い………
・【画像】 マ ジ か よ ……っ て な る 画 像 gif く だ さ い【65枚】他
――― 翌朝
神様「ヘックショイッ!」ズズー
神使「神様、大丈夫ですか?」
神様「大丈夫なように見える? ねぇ、そう見える?」
神使「いえ・・・ その・・・」
神様「お前は犬に姿を変えられるから良いよな〜」
神使「ですから私を抱いていれば少しは暖かいと申しましたのに」
神様「獣臭くなる」
神使「・・・いや、私は姿を変えても神使ですから獣臭くはないかと・・・」
神様「それよりさぁ〜、本当にここは東京なのか?」
神使「はい」
神様「でも緑が多すぎると思うんだけど。 川のせせらぎも聞こえるし」
神使「村ですから・・・」
神様「へっ?」
神使「ひのひの村です」
神様「東京じゃないの?」
神使「東京ですよ? 一応、都内です」
神様「・・・・・・」
神使「都内で仕事が少ない所とのご希望でしたので神様の条件にピッタリかと」
神様「神使君さぁ、私の使いは何年目?」
神使「3年目ですね」
神様「うん、そしたらこのチョイスは変だよね」
神使「?」
神様「私はね? 祥寺とか下北とかに行きたいって言ったよね」
神使「はい」
神様「はいじゃ無くてさ、そしたらここは違うと思わない?」
神使「申し上げにくいのですが吉祥寺や下北沢は・・・ その・・・ 位が高くないと・・・」
神様「ん? なに?」
神使「神様の神階では・・・」
神様「あ〜、そっか〜 そうだよね〜 私、神階が最低位だもんね、忘れてた」ズーン
神使「神様!」
神様「!?」
神使「神様は最低位なんかじゃありません!」
神様「神使・・・ おまえ・・・」
神使「ランク外です。 お間違いの無いように」
神様「・・・・・・」
ゲシッ ゲシッ
神使「痛っ! 痛いです」
神様「神罰だ」ゲシッ ゲシッ
神使「本当のことじゃないですか、それに神罰じゃなくてただの足蹴りですよそれ」
神様「それよりさぁ、どうすんだよ〜」
神使「社がなければ、別の所へ行けますが・・・」
神様「んじゃ、次行く?」
神使「いえ、あるじゃないですかお社が」
神様「へ?」
神使「駐車場の隅に・・・」
神様「いやいや、あれは神棚だろ? ホームセンターで売ってるの見たぞ?」
神使「しかし、ご神体が入っていますので」
神様「え〜、あんな小さい所ネズミも住めないって」
神使「規則ですし、形だけでも少しは滞在しないと・・・」
神様「こんな真冬に何日も野宿なんて凍死するぞ?」
神使「その前に警察に通報されますね。 困りましたね・・・」
テクテク
そうそう、それでさ〜
へぇ、そうなんだ
神様「ん?」
神使「神様どうされました?」
神様「・・・・・・」ジー
神使「女子高生のようですね。 こんなに朝早くから大変で―――」
神様「お〜い」タッ タッ タッ
神使「あっ、神様?」
タッ タッ タッ
お〜い!
ちょっと神様〜 待って下さ〜い
少女「?」
友「少女ちゃん知り合い?」
少女「知らない・・・」
神様「おはよう!」スタッ
少女「おはようございます・・・ あの失礼ですが」
神様「神使よ、挨拶を」
神使「はい・・・ 私たちこういう者です」スッ
少女「はぁ・・・ 名刺?」
友「神様? 神使?」
少女「神様・・・」
神様「そう、神様!」ヘヘン
友「神様より神使の方が名刺立派なんですね。 紙の厚さも違う」
神様「・・・・・・」
神使「神様は神階がランク外ですが、私は神使の中でも最高位ですので」
ゲシッ ゲシッ
神使「神様、痛いです」
友「少女ちゃん行こ、神様とか言って変だよこの人達」
少女「うん」
スタスタ
なんで神様がジャージ姿なの? 男の人はちょっと格好良かったのに残念
そうだね
神様「少女よ! 私はそこの駐車場にいる。 いつでも来てくれ」バイバーイ
少女「・・・・・・」チラッ
神様「」バイバーイ
少女ちゃ〜ん バス来ちゃうよ〜
少女「うん」タッ タッ タッ
神使「神様? どういうおつもりですか?」
ピロリロリン♪
神様「あっ、メールだ」ゴソゴソ
神使「いえ、私の携帯です」ポチ ポチ
神様「・・・お前さぁ、着信音変えてくれない? それ私と同じなんだよ」
神使「神宮からです。 荷物は明日到着で送ったとのことです」
神様「は? どこに?」
神使「ここです」
神様「ここ駐車場だよ?」
神使「神宮も駐車場になっていることを把握していないんでしょうね」
神様「勘弁してくれよ。 駐車場に住み着いて野宿する神なんて聞いたことないぞ?」
神使「そうですね、神宮に電話してみますか?」
神様「それよりお腹がすいた。 カストのモーニングへ行かないか?」
神使「ありませんよ」
神様「へ?」
神使「カストも、古野屋も、竹屋もありません」
神様「なんで?」
神使「ちなみに、一番近いコンビニはバスで30分かかります」
神様「朝ごはんは? 朝ごはん食べたい!」
神使「来るとき近くに個人商店がありましたから、何か買ってきますか?」
神様「ダッシュだ犬ころ!」
神使「はいはい、じゃぁ大人しく待っていて下さいよ? 動かないで下さいね」タッ タッ タッ
神様「ったく、子供扱いすんなよ・・・」
神様「しかし・・・さっきの少女って」ポチ ポチ
神様「・・・・・・」クニャ クニャ
神使「・・・・・・」クニャ クニャ
神様「なぁ、なんで私たちは朝から駐車場でコンニャクを食べているんだ?」クニャ クニャ
神使「近くにあった商店はコンニャク屋でした・・・」クニャ クニャ
神様「コンニャク屋って何だよ」クニャ クニャ
神使「この辺の名産だそうです」クニャ クニャ
神様「・・・・・・」クニャ クニャ
神使「・・・・・・」クニャ クニャ
神様「お前の味噌って私のと違う?」
神使「私のはゆず味噌ですね」
神様「くれ」
神使「半分だけですよ?」
―――2日後・夕方
ピンポン
少女「?」
ピンポン ピンポン
少女「は〜い」
ガラガラ
神様「ねぇ、なんで来ないの?」ブルブル
少女「・・・・・・」
神様「2日も経ったよ? 駐車場で待ってるって言ったよね」ブルブル
少女「・・・失礼します」ガラガラ
神様「まっ、まって!!」ガシッ
少女「何ですか? 私、宗教とかは・・・」
神様「違うの、寒いの! コンニャクなの! 中に入れて!」
少女「こんにゃく?」
神使「ちょっと神様!」
少女「警察呼びますよ?」
神使「すいません、今帰りますので。 ほらっ、神様行きますよ!」グイグイ
神様「お前、先月神宮へ行ったろ」ジタバタ
少女「!?」
神使「え?」
――― 少女宅
少女「お茶です」コトッ
神使「ありがとうございます」
少女「どうぞ」コトッ
神様「あっ、コーラとかある? 炭酸系」
少女「・・・・・・」
神様「うそうそ。 こたつ強にしても良い?」
少女「・・・どうぞご自由に」
神様「それと、はいお土産」スッ
少女「これは?」
神様「どらやの羊羹。 結構グレード高いヤツ」
少女「・・・ありがとうございます」
神様「気にしないで。 後で食べよ?」
少女「はあ・・・」
神使「お土産自分で食べるんですか?」
神様「良いじゃん、高いヤツだし食べてみたいじゃんよ〜」
少女「ところで・・・」
神様「ん〜?」ズズッ
少女「なんで私が神宮に行ったこと知っているんですか?」
神様「だって、鞄に付いてるお守り売ったの私だもん」
少女・神使「え?」
少女「でも、これ巫女さんに・・・」
神様「驚くなよ? その巫女さんの正体が何を隠そう私なのだ!」
神使「あ〜、神様は位がものすごく低いので巫女のバイトをしないと給料が―――」
神様「うっせんだよ、腐れ神使」ゲシッ
少女「・・・本当に神様なんですか?」
神様「その通り! 初めてでしょ! 初めて見たでしょ!!」
少女「でも神宮で会っているんだよね?」
神様「あ〜・・・ うん、そうね・・・」
神使「神様は姿を見せないのが常識なんですが、この方は神力がゼロなので姿を―――」
神様「お前喧嘩売ってんの?」ゲシッ
少女「・・・・・・」ジトー
神様「もしかして疑ってる?」
少女「神様にしては若すぎない? どうみても私と同じくらいの年でしょ?」
神様「彼女は今すごく良いことを言った!! 神使、メモ」
神使「騙されないで下さい。 これでもこの神様は―――」
神様「神使くん? その先を言ったらマジでやばいよ?」ギロッ
神使「・・・・・・」
神様「よし、証拠を見せよう」
少女「証拠?」
神様「神使よ、犬ころに変身する芸を」
神使「芸じゃないんですけど・・・」ボンッ
少女「!?」
神様「どうだ?」フフン
少女「うそ・・・」
神使「私は狛犬の神使でして。 一応神使の中では最高位ですので―――」
神様「だから余計な事は喋らなくて良いんだよ!」
少女「嘘みたい」
神様「これで信じてもらえた?」
少女「あなたは?」
神様「へ?」
少女「え? 神様なんでしょ?」
神様「私は・・・ 神様だから力を見せつけたりはしない!」
神使「神力がないので何もできないのです」
神様「・・・神使よ、人の姿に戻れ」
神使「はい」ボンッ
神様「神罰」ゲシッ ゲシッ
神使「痛い、痛いですって! だからそれ神罰じゃなくて体罰ですから!」
少女「あの・・・」
神様「名前は?」
少女「私?」
神様「うん」
少女「少女です」
神様「神様です」
少女「はい・・・」
神様「よろしくお願いします」
少女「よ・・・ よろしく・・・ お願いします?」
神様「よし」
少女「?」
神様「さてと、空いている部屋とかある?」
少女「部屋?」
神様「泊めてくれ」
少女「えっ?」
神様「お願いします! 泊めて下さい!」ドゲザー
少女「そんな急に言われても」
神様「本当はにょろにょろ神社に滞在する予定だったの」
少女「にょろにょろ神社・・・」
神様「うん、でも行ったら駐車場になってたの」
少女「神社は先月取り壊しで駐車場に・・・」
神様「だから・・・ 住むところがなくて。 もう2日も野宿なの、外寒いの! コンニャクなの」
少女「野宿? っていうか、さっきからこんにゃくって何?」
神様「お願い! 何でもするから! 3月までには出て行くから!」
少女「そんなに長く!?」
神様「大丈夫、家賃は入れる。1人月10万でどう?」
神使「10万って、神様の手取り以上じゃないですか」
神様「は? 私は月14万もらってるぞ?」
神使「それ神宮手当と巫女のバイト代が付いていただけですから」
神様「うそ!」
神使「今月から神様の手取りは確か8万5千円です」
神様「8万5千円!? ちょっと待てよ、少なすぎだろ!!」
神使「私に言われても」
神様「ちなみになんだけどさぁ、神使君はおいくらなの?」
神使「私は手取りで58万5千円です」
神様「なんで使いの方が給料高いんだよ! ふざけんなよ!」
神使「階位で基本給が変わりますので」
神様「くそ! 絶対労働組合作ってやる」グヌヌ
神使「そんなことに労力を使わず、神階を上げようとは思わないのですか?」
神様「少女、家賃は先払いで神使が出す」
神使「私!?」
神様「迷惑料と食費光熱費入れて58万5千円を先払いだ」
神使「ちょっと待って下さい。それ私の手取額じゃないですか」
神様「悪い話じゃ無いだろ〜?」
少女「・・・・・・」
神様「足りないか?」
少女「えっ?」
神様「あーあ、また野宿かー。 神社さえ残っていればこんな苦労はしなかったのになー」
少女「分かった。 泊めてあげる」
神使「いいんですか?」
神様「よし! 決まりっ!」
神様「神使、あとで銀行に行ってお金を下ろして少女に渡せ」
神使「・・・・・・」
神様「返事は?」
神使「貸しですよ神様?」ハァー
神様「よし、ところで夕飯は食べた?」
少女「まだ」
神様「神使、食事の準備を超特急で」
神使「少女さん、台所お借りしても良いでしょうか?」
少女「あっ、私作ります」
神様「まぁまぁ、神使は犬ころのくせに料理の腕はそこそこだ。 任せてちょ」
少女「はあ・・・ じゃぁ手伝います。 台所はこっちです」
神使「ありがとうございます」
スタスタ
神様「・・・・・・」
神使「お待たせしました」
神様「なぁ、これって・・・」
神使「コンニャクの煮物、コンニャクのオイスター炒め、コンニャクの―――」
神様「もう良い! コンニャク以外が食べたいよ〜」ゴロゴロ
少女「もらい物で・・・ 買い物も中々行けなくて」
神使「明日買い物に行きますから。 ワガママはダメですよ?」
神様「まぁ、味噌だけのコンニャクよりは数百倍マシだな。 白米もあるし」
神使「居候の身分で文句を言わないで下さい。 神の品格に関わります」
神様「うっさいな〜 何だよ品格って」
神使「では、頂きましょうか」
一同「いただきます」
神様「なぁ少女、聞いても良いか?」モグモグ
少女「なに?」
神様「その・・・」
少女「・・・・・・ もしかして神宮でお参りし―――」
神様「ここって夜遊ぶ所ってある?」
少女「へ?」
神様「ゲーセンとか、カラオケとか」
少女「ない・・・ かな」
神様「ビデオレンタル屋は?」
少女「ない」
神様「そうかぁ・・・ もしかしてここはド田舎だったりする?」
少女「超が付くほどのド田舎だと思う」
神様「やっぱり」シュン
少女「知っていて来たんじゃないの?」
神様「いや、私の希望は吉祥寺か下北沢だったんだが」
少女「・・・・・・」
神使「神様の神階が低すぎて行けなかったのです」
神様「・・・神使君さぁ、次の人事査定で評価落とすよ?」
神使「え? 神様って人事権もってるんですか?」
神様「これでも私は君の上司だよ? 神だよ?」
神使「・・・・・・」
神様「あ〜あ、今まで全部特A+にしてあげてたのにな〜」チラッ
神使「神様、明日はステーキなどいかがですか? 腕によりをかけてお作りします」
神様「うそ! ステーキ? 少女、明日のディナーは豪華だぞ!」ピョンピョン
神使「神様? 食事中ですから跳ねたりしないで下さい」
神様「分かってるよ」
少女「ふふっ」
神様「おっ、やっと笑ってくれた」
少女「・・・・・・ ///」プイッ
神様「う〜んっ、照れちゃって可愛いぞっ!」ポンポン
神使「神様? お行儀が悪いですよ?」
神様「だから子供みたいに扱うなよ」
神使「ところで少女さんはお一人でお住まいなのですか?」
少女「ここは祖父の家でして」
神使「そうでしたか。 今日はお出かけですか?」
少女「入院中です・・・」
神使「それは・・・ 大変ですね。 ご両親は別の所で?」
少女「私が小学生の頃に・・・」
神使「・・・すいません」
少女「気にしないで下さい」
神様「」モグモグ
神様「流れぶった切って悪いんだけど、お代わりもらっても良い感じ?」
少女「食べるの早いね」
神様「神様なもので///」テレッ
神使「すいません、躾がなっていないもので・・・」
神様「・・・・・・」ゲシッ
少女「お風呂沸いたけど入る?」
神様「良いの?」
少女「うん、熱かったら水で薄めて」
神様「熱いの大好き!」タッ タッ タッ
神使「・・・色々とご迷惑をおかけいたします」
少女「なんか、急すぎて私もよく分かんない」
神使「反省いたします」
少女「それより、何でこんな田舎に?」
神使「お恥ずかしい話なのですが・・・ 神様が神宮でちょっとミスをいたしまして」
少女「ミス?」
神使「はい、その・・・ 2000円のお守りを300円で売っていて・・・ 3年間も・・・」
少女「・・・・・・」
神使「その罰で他の神社に短期出向を命じられたのです」
少女「その出向先がにょろにょろ神社?」
神使「えぇ、比較的位の高い社の中で100年以上神様の立ち寄りがない神社だったもので」
少女「そうだったんだ・・・」
神様「A CHI CHI A CHI〜 燃えてるんだろうか〜♪」ヌギヌギ
神様「やべっ、下着の替え忘れた」
タッ タッ タッ
神様「あれ? この部屋だっけ?」ソー
全く神様の相手は疲れますよ
何となく分かるかも・・・
神様(あの腐れ神使、また私の文句たれてんのか?)コソッ
神使「しかし、駐車場になってしまっているとは知りませんでした」
少女「先月の大雨で裏の山が崩れて神殿が潰れちゃったんです」
神使「え?」
少女「こんな田舎だし、修復するお金も集まらなくて・・・」
神使「そうだったんですか」
少女「放置するのも危険だって、取り壊して先月仮設の駐車場に・・・」
神使「宮司さんは?」
少女「土砂崩れに巻き込まれて・・・ 今は入院しています」
神使「そんな! お見舞いに行きたいのですがどちらの病院か分かります?」
少女「日曜日でよければ一緒に行きますか?」
神使「お知り合いなのですか?」
少女「私の・・・ 祖父です」
神使「!?」
ヘックショイ!
少女「?」
神使「神様?」スタスタ
ガチャッ
神使「うわっ、神様下着姿で何やってるんです?」
神様「下着の替えをくれ」
神使「もう、神宮じゃないんですからそんな姿でうろつかないで下さい」
神様「なんだよその言い方。 まるで私が普段から下着姿でうろうろしてる見たいじゃないか」
神使「はぁ〜 ちょっと待っていて下さい」
少女「・・・可愛い下着ね」
神様「照れるじゃないか〜」クネクネ
ガサゴソ
神使「はいどうぞ」
神様「サンキュ〜」タッ タッ タッ
少女「大変ですね」
神使「世話の焼ける神様です・・・」
ザバーン
うぎゃー! 風呂A CHIーー!!
少女・神使「・・・・・・」
神様「・・・・・・」ポチポチ
神使「神様、最近よく携帯いじってますよね」
神様「ん〜 あ〜」ポチポチ
神使「何やっているんです?」
神様「ライン〜」
神使「え? 神様って友達いるんですか?」
神様「・・・・・・」プチッ
神様「よ〜し! 腐れ犬ころ、今日という今日は許さないぞ!!」ゴゴゴゴ
神使「すっ、すいません今のは言い過ぎました」
神様「私にだって友達くらいいるわ!」
神使「誰とラインしてたんです?」
神様「A子ちゃん」
神使「去年入った巫女のA子ちゃんですか?」
神様「そう。 A子ちゃんとは話が合うんだよね〜」
神使「あの子も結構変わってますからね」
神様「“も”ってなんだよ! 犬ころ」
神使「A子ちゃんは神様の正体は知っているんですか?」
神様「さぁ〜、巫女だと思ってるんじゃない?」
神使「教えてあげないんですか?」
神様「え〜、だって仕事の事なんて関係ないじゃん」
神使「・・・神様って、きちんと巫女の仕事はしているんですか?」
神様「お前、私の神使だろ?」
神様「神宮だと一緒にいることなんてほとんど無いじゃないですか」
神様「そう言えばそうか」
神使「神様は祭儀にも出ないですし・・・ 出られないですし」
神様「神使君さぁ、なんで今言い直したの?」
神使「そうだ、日曜日にょろにょろ神社の宮司さんのお見舞いに行きますよ」
神様「少女のおじいさまね」
神使「神様知ってい―――」
ガチャ
少女「部屋の準備できたました」
神使「あっ、ありがとうございます」
神様「どうも〜」
少女「しばらくこの部屋を使って下さい」
神様「おっ、広いじゃん! 10畳はあるんじゃない?」
神使「神宮の神様の部屋は3畳でしたからね」
神様「そうそう、押し入れの方が広い・・・ ってどんな間取りやねん!」ゲシッ
神使「ちょ、私に八つ当たりしないで下さい」
少女「・・・じゃぁ、おやすみなさい」
神様「おやすみ〜」
ガチャ
神使「神様? 少女さんのこと知ってるんですね?」
神様「なにが?」
神使「宮司さんの事とか、にょろにょろ神社の事とか」
神様「うんにゃ、そこまで詳しくは知らなんだ」
神使「でも、何か知ってる雰囲気ですよね? 急に少女さんの家にまで来て」
神様「あ〜、これ」サッ
神使「神様の携帯って、かなり古い機種ですよね」
神様「そこじゃねーよ。 画面見ろよ」
神使「神宮お願い事リスト?」
神様「そっ、神宮にお参りした人の願い事をリストにしたやつ」
神使「見せて下さい」
神様「ダメ〜 これは神様しか見ちゃいけないんです〜」ベー
神使「・・・・・・」イラッ
神使「あれ? ちょっとイラッっとした? ねぇイラッとした?」
神使「してませんが」
神様「ほれ」ポイッ
神使「おっとっと」
神様「他のリストは見るなよ?」
神使「おじいちゃんが元気になりますように(69)、お金があつまりますように(51)」
神使「これは?」
神様「少女が神宮に来たときにお参りした内容〜」
神使「この後ろの数字は何です?」
神様「あぁ、成就指数だね」
神使「成就指数?」
神様「うん、70以上が神に上がっていくお願いで90以上が神力成就」
神使「それ以下はどうなるんです?」
神様「祈祷、まぁ神には上がらないお願いってこと」
神使「こんなシステム化されているんですね」
神様「10年前からね」
神使「お金が集まりますようにというのは、さすがに低いですね・・・」
神様「まぁ良くある願いだからね。 普通は成就指数10以下なんだわ」
神使「でもこれって神社復興の為の資金って事ですよね」
神様「たぶん」
神使「なんでこんなに成就指数が低いんです?」
神様「もう少し分かるようにお願いしないと、さすがにこっちも分からんよ」
神使「ちなみに成就指数っていうのはどうやって決まっているんですか?」
神様「下に詳細ボタンってあるだろ?」
神使「はい」ポチッ
ズラッー
神使「これは・・・」
神様「少女が神宮に来た回数とか買ったお守りの種類とか、その他備考なんか色々」
神使「こんな細かく調べているんですか?」
神様「大変なんだな〜 これ作るの」
神使「・・・もしかしてこれ神様が?」
神様「だって、わたし他に仕事ないし〜」ゴロゴロ
神使「・・・・・・」
神様「成就指数が上がるように書いたんだけど中々数字が上がらんのよ」
神使「全ての参拝者にやっておられるのですか?」
神様「まさか〜 そんなの無理無理。 おっ、みかん見っけ」ヒョイ
神様「たまたま私がお守りを売って、なんとなく気になったからってだけ」ムキ ムキ
神使「やっぱりここに来る前から全て知っていたんじゃないんですか」
神様「そんな訳ないじゃんよ、神力ゼロの私をなめんなよ?」パクッ
神使「威張ることではないと思います」
神様「お守り持った彼女見た時は、こっちがビックリしたわ」モグモグ
神様「このみかん すっぱ!」
――― 翌日
チュン チュン
神使「神様? 朝ですよ」
神様「ん〜 ふぁ〜」ノビー
神使「なんで寝たときと頭が逆の位置にあるんですか?」
神様「毛布が気持ちいい〜 神宮の宿舎にも毛布欲しいよな」スリ スリ
神使「え? いや・・・ なんでもないです」
神様「・・・もしかしてさぁ、神使君って自室に毛布ある感じ?」
神使「・・・・・・」
神様「そうなんだ・・・ うん、分かってる」シュン
神使「あ〜、ほら神様! 今日は良い天気ですよ?」
神様「うん・・・ 神宮に帰ったら毛布買って・・・」
神使「はい」
スタスタ
神使「おはようございます少女さん」
神様「ふぉ〜 ふぁ〜 よ〜」ノビー
少女「おはようございます・・・」
神使「神様? 朝の挨拶くらいきちんとして下さい」
神様「うひょ〜 見ろよ神使! 朝ご飯出来てる!」
少女「こんなもんで良いかしら?」
神使「申し訳ございません。 本来は居候である私達の仕事なのに・・・」
神様「達じゃない、お前の仕事だ腐れ犬ころ神使」
神使「・・・・・・」
少女「気にしないで下さい、料理するの好きなんで」
神様「私も! でも、あんま料理作らせてもらえないからな〜」
神使「この前10人病院に送ってましたよね」
少女「・・・・・・」
神様「それは私のせいじゃない!」
神使「本当ですか?」
神様「牡蠣だろ? 悪いのは牡蠣だろ? 私じゃないだろ?」
神使「神様が毒を盛っているのを見たとか色々と噂が立ってますよ?」
神様「なんだよそれ! めっちゃ犯罪じゃねーかよ!」
神使「しかも、それを見てほくそ笑んでたとか」
神様「私は悪魔かよ! いい加減にせーや」ムキー
神使「はいはい、分かりましたから落ち着いて下さい」
神様「神宮に帰ったら言いふらした犯人絶対見つけてやる・・・」グヌヌ
少女「・・・さめちゃうし、食べよ?」
神使「そうですね、すいません」
神様「そうだな、食べるか」
一同「いただきます」
神様「うまい!」パク パク
少女「ありがとう」
神使「少女さん、宮司さんがご入院されている病院というのは近いのですか?」
少女「バスで駅まで行って、そこから電車で30分くらいです」
神使「結構距離ありますね」
神様「都会?」モグモグ
少女「そこまで都会じゃないかな。 ここよりはずいぶん栄えているけど」
神使「そうだ、銀行に行きたいのですがここら辺にありますでしょうか?」
少女「ATMであれば駅前にあります」
神使「駅前ですか」
少女「日曜日も空いているんで病院に行く時に寄った方が良いと思います」
神使「そうですね。 お家賃の方はそれまでお待ち頂いてもよろしいですか?」
少女「気にしないで下さい」
神様「私も少しお金下ろそっかな〜」
神使「こっちへ来る前に通帳記帳して600円しか入ってなかったじゃないですか」
神様「・・・・・・」
神使「今日は少女さん学校ですよね?」
少女「はい。 18時頃には帰ります」
神様「留守は任せろ! ゲーム機ってある?」
少女「ごめん、ないかな」
神様「遊ぶ所って・・・」
少女「ない」
神様「ですよね〜 はい! 寝てます!」
神使「神様は他にやることないんですか?」
神様「巫女の仕事なら出来るぞ? お守りでも売るか!」
神使「なんですか、それ・・・ せめてお掃除とかっていう発想はないんですか?」
少女「あっ、バス来るまであと15分しかない。 急がなきゃ」
神様「じゃぁ、もう一杯だけご飯を」
少女「もう食べたの? 早いね・・・」
神様「神様なもので///」テレッ
神使「・・・・・・」
神様「・・・・・・」ゲシッ
神使「ちょ、何ですか? 何も言ってなじゃないですか」
――― 数日後・日曜日
神使「さてと、神様? そろそろ出ますけど準備良いですか?」
神様「おっけ〜」
神使「いや、ジャージはダメです」
神様「やっぱり?」
ゴソゴソ
神使「この服でどうです?」
神様「おっ、いいね〜 かわゆい」
神使「あれ? こんな服ありましたっけ?」
神様「A子ちゃんからもらったお下がり〜」
神使「立場が逆じゃないですか? 明らかにA子ちゃんの方が年下ですよね?」
神様「・・・・・・」ゲシッ
神使「お待たせしました」
少女「じゃぁ、いきましょうか」
テク テク
神様「しかし、何もないね〜」
神使「神様? 失礼ですよ」
少女「でも、本当のことだし」ピタッ
神様・神使「?」
神様「どったの? バス停ってもっと先でしょ?」
少女「あっ、休日だからバス予約制でココで乗せてくれるの」
神様「まじで! 家の前まで来てくれんの?」
プップッー
神使「本当だ、来ましたね」
神様「でもバス? ワゴンだよねあれ」
ガラガラ
運転手「駅で良いの? 少女ちゃん」
少女「はい、おじいちゃんのお見舞いで」
運転手「そちらさんも?」
少女「はい、祖父の・・・ お知り合いの方達です」
神様「神様です」ドヤッ
運転手「・・・・・・」
神使「すいません。 さっ、面白くない冗談言っていないで早く乗って下さい」
神様「はぁ〜っ??」
運転手「他に予約無いから駅までノンストップで行くよ?」
少女「ありがとうございます」
ブーン
――― 駅前
神様「気持ちわる〜」
神使「中々豪快な運転でしたね」
少女「大丈夫?」
神様「大丈夫。 神使、コーラ買ってきて」
神使「お茶とかの方が良いんじゃないんですか?」
神様「どうせ買うなら、甘くて炭酸入っている方が得した感じじゃね?」
神使「・・・お茶買ってきます」
少女「あっ、ATMはそこの角にあります」
神使「電車の時間は大丈夫ですか?」
少女「まだ大丈夫です」
神使「では行って参ります。 神様? 大人しくしていて下さいよ」タッタッ
神様「だから、私は子供じゃないっつてんだろーが」
少女「神使さんいい人ですね」
神様「騙されちゃダメ、あれは腐れ犬ころだからね? 悪の使いだから。 邪犬だから」
少女「そうは見えないんだけど・・・」
神様「それより、おじいさまの具合はどうなの?」
少女「あんまり良くないかも」
神様「そっか」
少女「うん・・・」
神様「すまないな。 わざわざ神宮まで来てお参りしてもらったのに・・・」
少女「元々気休め程度だったし」
神様「役立たずでごめん・・・」
少女「・・・・・・」
タッ タッ タッ
神使「お待たせいたしました。 はい神様お茶です」
神様「ありがとう」
神使「!? どうしたんです? そんなに体調悪いんですか?」
神様「は?」
神使「神様が素直にお礼を言うなんて・・・」
神様「うっさい、犬ころ!」
神使「? 少女さんもお茶どうぞ」
少女「ありがとうございます」
神使「それと、これ家賃ですのでお納め下さい」スッ
少女「でもこんなに・・・」
神様「気にする必要ナッシング。 正当なお金だ」
少女「・・・・・・」
神様「受け取ってもらわないとこっちが困る」
少女「・・・じゃぁ、お預かりします」
神使「では駅に行きましょうか」
少女「はい」
――― 電車内
ガタンゴトン
神様「Zzz・・・」カックン カックン
少女「なんか、全然神様って感じしませんね」
神使「お恥ずかしい限りです」
少女「でも、本物なんですよね?」
神使「神力がゼロで姿も見えてますけど、間違いなく神籍を有した神様ですね」
少女「なんだか不思議」
神使「私も思います」
少女「神使さんもそう思ってるんですか?」
神使「私は神宮に3年前に赴任したのですが・・・ 初めてお目にかかったときは、びっくりしました」
少女「?」
神使「巫女の格好でお守りを売っていたんですから。 しかも他の巫女さんと一緒になって」
少女「他の神様はしないんですか?」
神使「ありえませんね。 人や神使と普通に会話をする神なんてこの方くらいかと」
少女「へー、意外です」
神様「Zzz・・・」コテッ
少女「あっ」
神使「神様? 少女さんに寄りかかっちゃダメですよ?」ユサユサ
神様「んぁっ・・・ ごめん」ボー
少女「気にしないで」
神様「ん〜 あとどのくらい?」
少女「次の駅かな」
神様「そう。 ふあぁ〜〜」ノビー
神使「神様? 人前でそんな大あくびなんて、はしたないですよ?」
神様「一々うるさいな〜 少女も何か言ってやってくれ」
少女「私も神使さんと同じ意見かな」
神様「・・・・・・」
―――うめうめ病院
神様「大きな病院だな〜」
少女「ここら辺では一番大きいかな」
神様「おっ、看護師さんだ。 ナース服かわゆいな〜」
神使「神様? あんまり恥ずかしいことはしないで下さいね」
神様「わかってるよ。 なんだよその言い方」
神使「そこの売店でお見舞いの果物でも買っていきましょう」
少女「あっ、気になさらないで下さい」
神様「私はあの大きい網々のメロンが良いな」
神使「神様が食べるものじゃないんですけど」
スタスタ
少女「この部屋です」
神様「あ〜 念のため私達が神と神使って言うことは秘密にしておこう」
神使「そうですね」
少女「わかりました」
ガラガラ
少女「おじいちゃん? 起きてる?」
宮司「少女ちゃんか?」
少女「うん、どう? 体の具合は」
宮司「あ〜、天気が良い分いくらかマシだな。 ん? そちらの方は?」
神様「神社の方から来ました」
神使「なんですか、その胡散臭い言い方は・・・」
少女「・・・・・・」
神使「すいません。 神宮から使いで参りました」
宮司「神宮? これはわざわざ」ヨイショ
神使「あっ、そのままで」
宮司「可愛らしいお嬢ちゃんも神宮の方ですか?」
神使「え〜と・・・ うちの巫女です」
神様「可愛いだなんて///」クネクネ
神使「この度は大変でしたね」
宮司「大切な社を申し訳けない」
神様「社のことなど気にする必要は無いぞ? 神宮の方でなんとかする」
神使「そんな上から目線なしゃべり方したらバレちゃうじゃないですか」ボソッ
神様「うっ・・・」
少女「この果物お二人からもらったんで台所で切ってくるね」スタスタ
宮司「お嬢さんの方は、もしかして神宮の神様ですかな?」
神様「あっ、バレた?」
宮司「やはりそうですか。 50年ほど前、神宮で5年間奉職していましたので」
神使「そうなんですか!?」
神様「もしかして、私の事知ってたりする?」
宮司「私は事務方でしたので、でも何度かお見かけしました」
神使「神様って、そんなに前から巫女のバイトしてたんですか?」
宮司「巫女? とんでもない! 大変立派な神様でしたよ?」
神使「え?」
神様「うわー! 昔の話はダメ! 絶対!」ゲシッ
神使「痛っ! え? なんで私蹴られたんですか??」
宮司「こんな老いぼれのためにわざわざ・・・ お忙しいのに申し訳ございません」
神使「お気になさらず」
神様「そうそう、全然忙しくないし。 あっ、こいつは犬ころ神使」
神使「申し遅れました。 私、神様の使いで狛犬の神使と申します」
宮司「おや、神使さんまで来て頂けるなんて。 ありがとうございます」
神様「あまり体調がすぐれないようだな」
宮司「正直・・・ 入院前はピンピンしていたのですが。 やはり年ですので一度体を壊すと・・・」
神使「そんなことおっしゃらずに」
宮司「神様と神使様に会えたんですから、いつお迎えが来ても思い残すことありません」
神様「私達なんかに会っても冥土の土産にもならないぞ? そこら辺歩ってるし」
神使「そうですよ、少女さんだってまだ若いんですから」
宮司「ありがとうございます」
神様「すまないな〜 にょろにょろ神社は100年以上神の立ち寄りがなかったそうだな」
神使「神宮からの達しで立ち寄りを行うために来たのですが・・・」
宮司「そうだったのですか」
神様「もう少し早く来ていればなぁ」
宮司「いいえ。 跡取りもいませんし・・・ きっとこうなる定めだったのでしょう」
神使「少女さんはお継ぎにならないのですか?」
宮司「あの子には、こんな田舎で一生を終えて欲しくは無いのです」
神様「・・・・・・」
ガラガラ
少女「おじいちゃん、果物切ってきた」
神様「うまそ〜! メロン一切れもらって良い?」
宮司「どうぞ、どうぞ」
神使「神様? さすがにそれはどうなんですか?」
神様「だから遠慮して一切れって言ったじゃん」
宮司「神様と一緒に食べるだなんて、なんだか不思議ですな」
少女「あれ? バレてる?」
神使「はい、バレた原因は神様です」
神様「肝心な部分を端折って話すなよ。 あむっ」モグモグ
――― 病院帰り道
テクテク
神使「宮司さんお元気そうでよかったですね」
神様「お前の目は節穴だな」
神使「え?」
神様「かなり無理してたぞ?」
神使「すいません、気がつきませんでした」
少女「・・・・・・」ギュッ
神様「・・・・・・」チラッ
神使「? あっ、それ神宮のお守りですね」
少女「え? ・・・はい」
神様「私が売ったやつ〜」
神使「神様が直々にお授けされたお守りですから御利益満点ですね」
神様「・・・・・・」ゲシッ
神使「痛っ」
神様「空気読めよ神使」
神使「すいません・・・」
神様「謝るくらいなら私と少女にステーキご馳走しろ」
神使「またですか?」
神様「お店でステーキが食べたいんだよ!」
神使「はぁ・・・ 少女さん、お昼はステーキでも良いですか?」
少女「私はなんでも・・・」
神様「犬ころの奢りだ。 国産黒毛和牛のサーロイン400gとか注文しような」
神使「どんな胃袋してるんですか・・・」
神様「神様なもので///」ゲシッ
神使「痛っ!」
―――数日後
ジリリリ ジリリリ
少女「はい、もしもし・・・ えっ・・・」
神使「?」
少女「そんな・・・」
神様「燃えろっ! いい女〜♪ 燃えろっ! ナッツコ〜〜♪」テクテク
神様「はぁ・・・ スーパーまで往復1時間って拷問だろ」テクテク
神様「ただいま〜」ガラガラ
スタスタ
神様「みんなが大好きなかわゆい神様がお帰りですよっと」ガチャ
バタンッ!
神様「ぐへっ!」ビタン
少女「はっ、はっ、はっ」ダッ ダッ ダッ
神使「少女さん!!」
神様「痛い・・・」
神使「神様! 大変です!」
神様「ほんとだよ・・・ 痛つつ」
神使「宮司さんの容体が!」
神様「!!」
神使「先ほど病院から電話があって宮司さんが危篤状態になったと」
神様「・・・お守りがないな」
神使「お守り?」
神様「少女の鞄に着いていたお守りだ」
神使「そういえば飛び出す前に鞄をゴソゴソしてました」
神様「・・・・・・」
神使「私達も向かいますか?」
神様「ここで待とう」
神使「・・・分かりました」
―――翌日
ガラガラ
神使「少女さん!?」
神様「」
タッ タッ タッ
少女「・・・・・・」
神使「少女さん! 宮司さんの御容体は?」
少女「意識・・・ 不明です・・・」ギュッ
神様「・・・・・・」
神使「取りあえず家の中へ」
神様「少女・・・ その・・・」
少女「何が・・・」
少女「何が神様よ! こんなお守り効きもしないじゃない!」バンッ
神様「・・・・・・」
少女「神社は取り壊されて、おじいちゃんは意識不明に・・・ なんでよ・・・」
神様「・・・・・・」
神使「少女さん、落ち着いて下さ―――」
少女「出て行って!」
神使「・・・・・・」
少女「何も守ってくれないじゃない! 嘘・・・つき・・・」タッ タッ タッ
神使「少女さん!」
神様「・・・・・・」
神使「神様・・・」
神様「行くぞ」
神使「どちらへ?」
神様「・・・出て行けと言われたんだ」スタスタ
神使「あっ、神様!」スタスタ
ガラガラ
少女「うっ・・・ うっ・・・」
トテトテ
神様「・・・・・・」シュン
神使「神様?」
神様「・・・・・・」
神様「神使よ、この近辺で一番神力の強い神はどこにいる」
神使「うごうご山にある、うご山神社の主神様かと・・・」
神様「うごうごか・・・」
神使「神様? 何を考えているんです?」
神様「・・・・・・」
神使「それよりこれからどうするんですか?」
神様「疲れた、寝る」
神使「どこで寝るのですか?」
神様「・・・・・・」
――― 深夜・駐車場
神使「神様?」
神様「・・・・・・」ポチポチ
神使「携帯なんかいじって何しているんです?」
神様「・・・・・・」ポチポチ
神使「今夜は冷えます。 寒ければ私を抱いていて下さい」
神様「・・・・・・」ポチポチ
神使「・・・おやすみなさい神様」
神様「・・・・・・」
モソモソ
神様「・・・・・・」ギュッ
神使「・・・・・・」
――― 翌日
チュンチュン
神使「う〜ん・・・ 朝?」
ゴソゴソ
神使「神様?」
ゴソゴソ
神使「お出かけですか?」
神様「買い物」
神使「今準備しますので少しお待ち下さい」
神様「いや、私一人で行ってくる」
神使「まさか、うご山神社じゃないでしょうね?」
神様「うごうごは・・・ 明日の朝に行く」
神使「ではどちらへ?」
神様「ん? あぁ〜」
神使「神様?」
神様「大丈夫だ。 お土産を見繕ってくるだけだ」
神使「ハァ・・・ お金は持っているんですか?」
神様「ぅ・・・」
神使「何を買うのか知りませんが、これで足ります?」サッ
神様「うん」
神使「お戻りは」
神様「夕方には戻る。 私の正装を用意しておいてくれるか?」
神使「分かりました」
神様「じゃぁ行ってくる」テクテク
―――翌日・うごうご山参道
神使「結構急な山道ですね」
神様「はっ はっ」ゼェ ゼェ
神使「神様、大丈夫ですか? 少し休憩をされては・・・」
神様「はっ はっ」ゼェ ゼェ
神使「・・・・・・」
――― 山頂・うご山神社
神様「は〜 ふぅ〜」
神使「やっと頂上ですね」
スタスタ
神様「おい、そこの巫女よ」
巫女「?」
神様「私は神宮神籍、内宮付きの神様である」
巫女「神宮!?」
神様「ここの神に用があって参った。 主様に取り次ぎを願いたい」
巫女「はい、少々お待ち―――」
主神「だれかと思えばお前か、久しぶりだな」パッ
巫女「主様」
神様「お願いがあって来た。 話を聞いて欲しい」
主様「隣は?」
神様「私の神使だ」
神使「はじめまして。 神様の使い、狛犬の神使と申します」
主様「巫女よ、下がっていろ」
巫女「はい」スタスタ
主様「その格好・・・ お前巫女にでもなったのか?」
神様「・・・・・・」イラッ
神使「神様は神階ランク外のため礼装がなく申し訳ございません」
神様「・・・・・・」ゲシッ
主様「ははははっ、これは愉快だな」
神様「神階など不要だ」
主様「ほぅ、相変わらずだな。 さて、何用かな?」
神様「にょろにょろ神社の宮司を助けてもらいたい」
主様「ダメだ」
神様「・・・・・・」
主様「人の生死をいたずらに弄るのは規定違反なこと位お前も知っているであろうが」
神様「そこを理解した上でお願いしている」
主様「お前のその発言自体が神としては重罪だぞ?」
神様「承知している」
主様「はぁ〜」
神様「お願いします!」
主様「頭を下げてもダメなものはダメだ」
神使「神様・・・ さすがにそのお願いは無茶すぎます・・・」
神様「・・・・・・」ピラピラ
主様「? なんだその紙切れは」
神様「聖騎魔II 黒ミサコンサート」ボソッ
主神「」ピクッ
神様「全席死刑ツアー アリーナ席、前列」ニヤッ
主様「」ピクッ
神様「主様、もう一度お願いします。 宮司をお助け下さい!」ピラピラ
主様「ケーブルカーを使わずよくここまで歩いてきた。 大変だったであろう」
神様「主様へ謁見するのにそのような失礼は出来ません!」ピラピラ
主様「よかろう、褒美だ。 その願い聞き入れよう」
神様「ありがとうございます!」ピラピラ
神使「・・・・・・」
神様「それと主様、もう一つご相談が」
主様「なんだ、まだあるのか?」
神様「デモン閣下ディナーショー S席チケット」ピラピラ
主様「なんだとっ!?」クワッ!
主様「失礼。 お前との仲だ、何でも言うが良い」
神様「ありがとうございます!」ピラピラ
神使「・・・・・・」
ゴウン ゴウン
神使「帰りはケーブルカーなんですね」
神様「もうあいつに用はないし〜」
神使「賄賂だなんて犯罪ですよ?」
神様「何のこと言ってんの?」
神使「コンサートチケットと交換で宮司を助けるだなんて」
神様「は? あれは歩って山頂まで行った褒美だぞ?」
神使「バレたらヤバいですよ?」
神様「バレねーよ、ビビってんじゃねーよ犬ころ」
神使「神様?」
神様「・・・・・・」
神様「なぁ、神使」
神使「なんです?」
神様「神があまり人と接触を持たない理由って知っているか?」
神使「え?」
神様「どの神も若い頃は積極的に人と関わりを持つんだよ。 人が嫌いな神なんかいない」
神使「・・・・・・」
神様「でも・・・ 神のくせに身近な一人の願いすらまともに叶えられない」
神使「・・・・・・」
神様「何回も、何百回も、何千回も・・・ その繰り返しを味わうんだ。 私達は長生きだからな」
神様「そして、いつしか距離を置くようになる。 いや、遠くから見守る存在になると言った方が良いか」
神使「神様・・・」
神様「私はそれでもいいと思っている。 間違っていないしな」
神様「でも・・・ 私は・・・」
神様「今、私の手の届く範囲で神として手を差し伸べなければならない者がいる」
神様「だから私はその者に全力で手を差し伸べる。 力がない分どんな手を使ってでもな」
神様「それが私のやるべき事であり、存在できるたった一つの理由だ」
神使「神様・・・」
神様「だから、神使よ」
神使「はい」
神様「下に降りたら売店で、いか焼きとりんご飴を奢ってくれ」フッ
神使「・・・・・・」
神使「シリアスは最後まで続けないと寒いですよ?」
神様「・・・・・・///」
―――翌日・病院
少女「おじいちゃん・・・」
トントン
少女「・・・はい」
ガラガラ
?「にょろにょろ神社の宮司はここで良いのか?」
少女「そうですが、祖父のお知り合いの方ですか?」
?「あ〜 何というか・・・ 神社の方から来た」
少女「・・・・・・もしかして神様のお知り合いの方ですか?」
?「なんだ、あいつを知っているのか?」
少女「・・・・・・」コクッ
主神「じゃぁ話は早い。 うごうご神社の主神だ」
少女「うごうご?」
主神「ちょっと入らせてもらうぞ?」スタスタ
少女「あの・・・」
主神「なるほどな。 さてと、少女よ少し下がっていてくれ」
少女「?」
主神「このじいさんをこれから助ける」
少女「えっ!?」
主神「では、いくぞ」
ポワッ ポワッ ポワッ
主神「久しぶりだから腕が鈍っていないと良いが」
ポワッ ポワッ ポワッ
主神「まぁこれで大丈夫だろう。 じゃぁワシは帰るぞ」スタスタ
少女「あの!」
主神「なんだ?」
少女「一体何を?」
主神「その者の生命力を高めた。 時期に目覚めるだろう」
少女「えっ?」
主神「腐れ縁のバカ神から頼まれたのでな」
少女「神様のことですか?」
主神「昨日の朝にワシの所に来てな。 お前のじいさんを助けろと」
少女「神様が・・・」
主神「礼なら私でなくあのバカに言え。 にょろにょろ神社跡の駐車場でしょぼくれているぞ」
少女「なんで神様がそんなことを・・・」
主神「神に願い事をしておいて変なヤツじゃな」
少女「でも、私・・・ 神様に酷いことを」
主神「飯でも作ってご馳走してやれ。 あいつは大抵それで何とかなる」
少女「・・・・・・」
主神「それと、そのじいさんの目が覚めたら、うご山神社の宮司にするから言っといてくれ」
少女「?」
主神「じいさんの命を助ける。 じいさんの再就職先を斡旋する。 そう約束した」
少女「そんなことまで・・・ 神様が・・・」グスッ
主神「あのバカの前でそんな暗い顔や涙なんか見せるなよ? あいつはそういうのが一番苦手だ」
少女「・・・・・・」コクッ
主神「だから、あいつの前では明るく笑っていてやってくれ・・・ って何言ってんだワシは」ボリボリ
主神「じゃぁな。 あいつとの縁は切るなよ」
少女「ありがとうございます」フカブカ
主神「だから礼はあのバカに言えって。 じゃぁ・・・ そうだな、また会おう」ガラガラ
―――駐車場
神様「お前さぁ〜 コンニャク以外の物を買ってこいよ!」ゲシッ
神使「付近にコンニャク屋さんしかお店がないんですから我慢して下さい」
少女「神様・・・」
神使「少女さん!」
神様「ん? 少女? って!」
少女「・・・・・・」
神様「あっ、ごめん! すぐこの町から出て行くから」
少女「あの・・・」
神様「分かった! 今すぐ片付ける! ほら神使ブルーシートどかせよ!!」ゲシッ
神使「痛っ」
少女「違う!!」
神様・神使「!?」
少女「違うの・・・ その・・・」
神様「?」
少女「・・・ありがとうございます! それとごめんなさい!」
神様「え? なに? どしたの?」
少女「さっき、うご山神社の主神さまに・・・」
神様「うごうご? アイツに会ったの?」
少女「今日の朝に病室へ来て・・・」
神様「あいつが人前に現れるなんて珍しいな」
神使「そうなんですか?」
神様「まぁ、どうせアイツのことだから私の悪口でもほざいてたんでしょ」
少女「そんなことない」フルフル
神様「うごうごには、聖騎魔IIのチケット渡しに行っただけだって」
少女「私・・・ 神様に失礼なことを言って・・・ どうしよう・・・」
神様「本当のことだし、気にしなくても大丈夫よん」
少女「おじいちゃん、来週には退院できるって」
神様「そう、よかったね」ニコッ
少女「おじいちゃんの再就職先も神様が斡旋してくれたって」
神様「あ〜 うご山神社は神主不在で派遣の巫女しかいなかったからね〜」
少女「ありがとうございます、神様」
神様「いや、私は何もしてないんだけど・・・」
少女「・・・・・・」
神様「少女?」
少女「その・・・ 料理作ったんだけど食べに来て・・・ もらえないでしょうか」
神様「うそ! いいの?」
少女「はい、ぜひ来て下さい」
神様「行く行く! コンニャク飽きちゃってさ〜」
神使「ダメですよ神様? そんな失礼なことを言っちゃ」
神様「うるさいよ腐れ犬ころ」
少女「本当に・・・ ありがとうございます」
神様「ねぇ、敬語はやめて? 友達として接して欲しいな」ニコッ
少女「・・・ ありがとう」グスッ
神様「泣くより笑っていた方が良いと思うよ? 私はそっちの方が嬉しい」
少女「そうだね」
神様「はい」スッ
少女「?」
神様「携帯。 ラインやってる? ふるふるしよ?」
少女「うん」
神様「やった! 二人目だ!」フルフル フルフル
少女「神様? ガラケーじゃ、ふるふる出来ないと思う・・・」
神様「・・・・・・」フル
―――少女宅
神様「いや〜 ご馳走様!」
少女「お粗末様でした」
神使「やはり温かいご飯は美味しいですね」
少女「お茶です」コトッ
神使「ありがとうございます」
少女「神様はコーラで良い?」
神様「分かってるね〜」
少女「はい」シュワシュワー
神様「ゴクゴク あ〜 美味しい〜」ゲップ
神使「神様?」
神様「分かってるよ、下品なんだろ?」
神使「それもそうなのですが・・・ 明後日ここを離れることになりました」
少女・神様「え?」
神使「先ほど神宮から連絡がありまして」
神様「ずいぶんと急だな。 っていうか私にはそういう連絡は来ないの?」
神使「・・・・・・」
少女「まだこっちに来てそんなに経っていないですよね?」
神使「今後のこともありますし、おじいさまが退院するまでは残りたかったんですけどね」
神様「後は神宮の方で何とかすんでしょ。 私達よりは役に立つはずだし」
少女「神様・・・」
神様「少女よ、私との別れは辛いであろう・・・ しかし私は少女の今後を影―――」
少女「私、高校卒業したらおじいちゃんの後を継ぐ!」
神様「はい?」
少女「神主さんってどうやったらなれるの?」
神様「・・・・・・」
少女「やっぱり修行とかしないとダメなのかな」
神使「私もあまり詳しくはないのですが、専門の養成機関や大学などがあるようです」
神様「え? そうなの?」
神使「神様、知らないんですか?」
神様「だって神宮の玄さんなんか草野球やっているときに宮司に誘われたって言ってたぞ?」
神使「それは・・・」
少女「野球できないとダメ?」
神様「いや、2年前入ったB夫は神宮に来る前はハッカーしてたって言っていた」
神使「それ大丈夫なんですか・・・」
少女「一芸なの?」
神使「違います」
神使「少女さんはおじいさまが神職ですし、推薦状があれば養成所に入れると思います」
少女「そうなんですか?」
神使「神様が推薦状を付けてあげれば今からでも間に合うんじゃないですか?」
神様「え〜、私の推薦状なんか意味ないだろ」
神使「一応は神様ですし・・・ その位は・・・」
神様「いや、絶対無いと思う。 逆効果になる可能性の方が高い」
神使「あ〜 それもそうですね」
神様「そこは否定しろよ」ゲシッ
神使「でも少女さんは高校卒業されたらどうするつもりでいたのですか?」
少女「おじいちゃんの神社のお手伝いをと」
神様「あ〜 でも、もう無いよね・・・」
少女「うん」
神使「でも神職だなんて、おじいさまがなんて言うか」
神様「そこは関係ないんじゃない? 少女の人生だし」
神使「そうですね」
少女「それに、この前神様が私の夢に出てきたんだよ」
神様「私?」
少女「うん、凄く神様オーラ全快でちょっとイメージと違ったけど」
神様「うそ、私かわゆかった?」
少女「後ろの光がまぶしくてあんまりよく分からなかったけど。 でもお日様みたいに温かかった」
神様「・・・・・・」
少女「で、神様が私に“立派な<かみしょく>になるがよい”って」
神使「かみしょく? しんしょく(神職)じゃないんですか?」
少女「そうなのかな」
神様「・・・・・・」
神使「神様って夢枕に立てるんですか?」
神様「えっ? 私は・・・ほら、神力ないから夢に入れないんだけどさぁ・・・」
神使「そうですよね。 そんな神様っぽいこと出来ませんよね」
神様「・・・・・・」ゲシッ
神使「でも、少女さんが神職になる頃はにょろにょろ神社も復興されているでしょうしね」
少女「でも、復興には凄くお金がかかるみたいで」
神様「神宮が復興費用を出す。 再建までには何年かかかると思うけど」
少女「えっ?」
神使「話はついています。 近いうちに神宮から復興に関する連絡があると思いますので」
少女「そんなことまで・・・」
神様「仕事だから、し・ご・と! 気にする必要ナッシング」
神様「でも、神主だなんて・・・ 本気?」
少女「うん、絶対揺るがない」
神様「・・・まぁ、好きにしてちょ」
だからお願いだって!
良いじゃんよその位さぁ〜
神使(ん? 神様? こんな遅くに携帯で誰と・・・)コソッ
いや、1人くらい入れてあげてよ。
すごく優秀な子だってば〜
頼むって お前が神勅!とか言えば良いだけなんだから
なんでも言うこと聞くからさぁ〜
本当? いや〜ありがとう!
うん、じゃぁよろしくね。 バイビー
神使「・・・・・・」フフッ
――― 翌日
神様「あの〜 少女?」
少女「なに?」
神様「本当に神主になるの?」
少女「うん、今年はもう間に合わないけど来年行こうかと思って」
神様「その〜 なんか私の知ってる神社が神主候補を募集しているようで・・・ いく?」
少女「えっ? 本当に!?」
神様「少し遠いしここを離れないといけなくなるだろうから無理にとは言わなけどさ」
神使「へぇ〜、珍しいですね。 どこの神社なんですか?」
神様「・・・神宮」
少女「神宮って、もしかして・・・」
神使「神社の頂点みたいな所ですね。 普通じゃ入れませんよ?」
神様「たまたま空いていたみたいで・・・ ちょうど相談を受けて・・・」
神使「へぇ〜 そうなんですか。 そんな採用枠初めて聞きました」
神様「お前さぁ、なんか言いたいことあるの?」
神使「いいえ、特にありません」ニコッ
神様「・・・・・・」イラッ
少女「ありがとう・・・ でも私ばっかり神様にこんな沢山お願いを叶えてもらって悪い気が・・・」
神様「は? 私は仕事しただけだし、これで給料もらってるから気にする必要は無いと思うけど」
少女「でも・・・ これはお返しします」スッ
神様「・・・・・・」
神使「これは家賃としてお支払いしたお金ですか?」
少女「はい、これはお返しさせて下さい」
神使「気になさらないで下さい。 一度お渡した物ですし」
少女「でも」
神様「おじいさんが退院したら旅行にでも連れて行ってあげれば〜」
少女「・・・・・・」
神様「残りは入院費にでもまわせば良いし」
少女「・・・・・・」
神様「気にするなって〜、それとも神様が渡した物をいらないと言って返すつもり?」
少女「ありがとう」
神様「神宮へ行くんだろ? 色々お金もかかる。 私からの選別と思ってくれ」ニコッ
神使「神様? それ全額私の給料ですけどね・・・」
――― 夕方
神使「さてと、神様忘れ物はないですか?」
神様「うん」
神使「では、少女さん。 お世話になりました」
少女「また会えるかな」
神様「約束する。 絶対に会える」
少女「うん、楽しみにしてる」
神様「そうだ少女、これ」スッ
少女「お守り・・・」
神様「私が作ったヤツだから御利益ないんだけど」
少女「これって神様が作ったやつだったの?」
神様「御利益なしは実証済みだけど、こんな物しか作れないし」
少女「ありがと・・・ すごい御利益あったよ。 一生大切にする」
神様「いや、そこまでする必要は無い」
神使「神様の神階が上がったら作り直してあげて下さい」
神様「うっせーよ、犬ころ」ゲシッ
少女「ふふっ」ニコッ
神様「じゃぁ、暇なときラインちょうだいね〜」
少女「分かった」
神使「では少女さん、お元気で」
神様「ばいば〜い」
――――
―――
――
ガタンガタン
神使「少女さん良い子でしたね」
神様「あれ? ほの字?」
神使「からかわないで下さい。 でも良い神職になれそうですね」
神様「あぁ、きっと・・・ 良い神様になるな」ボソッ
神使「何か言いました?」
神様「いいや、順番的にはお前が先だな」
神使「順番? 何のですか?」
神様「なんでもない」ニコッ
神使「?」
神使「そうだ、神様機構から懲罰書が届いてますよ?」
神様「・・・・・・」
神使「当面、全国の神職不在神社の管理を命ずる だそうです」
神様「えっ?」
神使「それと人事院からも届いています」
神様「はっ?」
神使「半年間給料30%カットを命ずる だそうです」
神様「30%オフって何だよ! 手取りいくらになるんだよ!」
神使「6万切るでしょうね」
神様「無理、っていうか何でバレてんの?」
神使「さぁ?」
神様「お前、まさかチクったんじゃないだろうな?」
神使「私は何もしてませんってば」
神様「なんだよー! なんでだよ! 完璧な作戦だったのに〜!」ムキー
神使「あとですね」
神様「なんだよぉ〜 まだあるのかよぉ〜」
神使「クレジットカードの明細に身に覚えのない項目があるんですけどね?」
神様「・・・・・・」
神使「ヤホーかんたん決済という項目で12万ほど」
神様「・・・・・・」
神使「身に覚えありますか? 神様」
神様「・・・・・・」
神使「最近何か落札されましたか? 例えばコンサートチケットとか」
神様「・・・・・・」
神使「分かりました。 神様の給料から天引きしておきますね?」
神様「えっ?」
神使「来月まで給料ありませんよ?」
神様「狛犬さま〜 堪忍じでぐだざい・・・」
神使「あきらめて下さい」
神様「うぅ・・・」
神使「と言う訳で、このまま次の勤務先に行きましょう」
神様「吉祥寺です?」
神使「まさか〜」
神様「下北沢です?」
神使「そんな訳ないでしょうが」
神様「どこです?」
神使「着いてからのお楽しみです」
神様「いやだー! おしゃれな街に行きたいよーーーーー!」
神様「神様だっ!」 神使「神力ゼロですが・・・」#1 ―END
乙!!!!
2話も期待してまっとるで
〜前回のあらすじ〜
神様「私は神様! 神宮に籍を置くとっても立派でかわゆい神様だ!」
神使(訳)「神力ゼロの神様は、神宮でミスを連発し地方へ短期出向を命じられたのでした」
神様「私の神々しい力を待つ者達を救うべく、今日も旅を続ける」
神使(訳)「立ち寄り先で、問題解決のため別の神様へ賄賂を送ったことがバレて無期出向に」
神様「よし! 今日はお前の願い叶えてしんぜよう」
神使(訳)「問題を起こしにあなたの所へ行く可能性があります。 逃げて下さい」
【#2】
プシュー
神使「神様、ホームに段差がありますから気をつけて降りて下さい」
神様「・・・・・・」
神使「いや〜 疲れましたね」
神様「おい、腐れ神使」
神使「?」
神様「なんだよここ」
神使「しかしか高原駅です」
神様「駅名を聞いたんじゃねぇよ」
神使「いや〜 想像以上に凄いですね」
神様「木しかねぇじゃん、人いねぇじゃん、秘境じゃん!」
神使「この景色、ひのひの村なんか比べものになりませんね」ハハッ
神様「んがーー! なにコレ、嫌がらせなの? ねぇ、悪質な虐め?」
神使「さて、暗くなる前に行きますよ」
神様「マジかよ〜 勘弁してくれよ〜」
テクテク
神様「なぁ、もうだいぶ歩いたけど民家ゼロなんだけどさぁ」
神使「そうですね」
神様「そうですね、じゃなくてさ〜 こんな所で何すんだよ」
神使「暗くなってきましたし、懐中電灯つけますか」ポチッ
神様「うわ〜 気味悪いな」
神使「あっ、お社が見えましたよ」
神様・神使「・・・・・・」
神様「神使君、帰らない? コレ絶対ヤバいって」
神使「さすがにちょっと引きますね」
神様「間違いなく幽霊出るってコレ、帰ろ? 怒られても良いから帰ろ?」
神使「きっと怒られるだけじゃすまないですよ?」
神様「でもさぁ〜 こんなの無理だって」
神使「取りあえず入りましょう」
神様「嘘だろ〜」
ギィー
神使「・・・・・・」
神様「あっ、無理無理。 床ねーじゃん」
神使「ご神体も見当たらないですね」
神様「よし! ご神体もないし帰ろう!」
神使「神宮に問い合わせてみます」スッ
神様「も〜 はやくしてちょ」
神使「・・・圏外ですね」
神様「だよね〜 人いないもん」
神使「神様の神力で神宮に問い合わせできませんか?」
神様「喧嘩売ってるのか犬ころ」ゲシッ
神使「暗くなってきましたし、ここに泊まります?」
神様「はははっ、お前埋めるぞ?」ギロッ
神使「・・・・・・今日は戻って別の場所で宿に泊まりましょう」
神様「よっしゃ、1つ前の駅がしおしお温泉だったよな」
神使「ではそちらへ行きますか」
テクテク
神使「今から行って泊まれますかね? もう19時まわってますし」
神様「・・・・・・」
神使「神様? どうしました?」
神様「つけられてる」ボソッ
神使「!? ・・・後ろですか?」ボソッ
神様「あぁ」
神使「気付きませんでした、申し訳ありません」
神様「取りあえず駅まで向か―――!? 神使! 伏せろ!!」
神使「えっ?」サッ
ビュン
神様「神使! 大丈夫か!?」
神使「はい、間一髪です」
神様「当たらなかったか? ケガはないか?」
神使「え、えぇ。 大丈夫です。 これは・・・ 小石?」
神様「誰だ! 姿を見せろ!!」クルッ
タッ タッ タッ
神使「逃がすか!」
神様「待て! 深追いするな」
神使「しかし・・・」
神様「暗すぎる、危険だ」
神使「分かりました」
神様「もう一本懐中電灯を」
神使「はい、どうぞ」
神様「お前は前を照らせ。 駅まで全速力で走るぞ」
神使「分かりました」
神様「ダーシュッ!」
タッ タッ タッ
――― しかしか高原駅
タッ タッ タッ
神様「次の電車は何分だ」ハァ ハァ
神使「30分後です」
神様「電車が来るまで後ろを見張ってくれ、私は前を見張る」
神使「はい」
神様「懐中電灯を灯台のように振って周囲を照らし続けろ」
神様「誰か隠れているみたいだな」
神使「えぇ、2人確認できます」
神様「一体何なんだ?」
神使「でも・・・ 襲ってくる気配はなさそうですね」
神様「大人しく立ち去れってことか?」
ファーン ガタンガタン
神使「電車が来ました」
神様「早く〜! もっと早く〜!」
プシュー
神使「神様、足下気をつけて乗って下さい」
神様「はぁ〜、助かった〜」
ガタンガタン
次は しおしお温泉口です
神使「一体何者なんですかね?」
神様「こっちが聞きたいわ」
神使「どうしましょう、神宮に報告します?」
神様「う〜ん、宿に着いてから考えよう」
神使「分かりました。 それより神様ずいぶん慣れてましたね」
神様「あん?」
神使「いや、何かいつものだらしない神様とは別人のような対応でしたので」
神様「全然褒めてないよね? っていうかかなりナメた発言だよね?」
神使「いえ、そう言うつもりではないんですが・・・」
神様「昔は多かったんだよ、こういうの」
神使「そうなんですか?」
神様「あぁ・・・ 多かったんだ・・・」
――― しおしお温泉旅館
神使「すいません。予約なしで突然来てしまいまして」
仲居「気にしないで下さいな。 シーズンオフですし、こっちが助かります」
神使「ありがとうございます」
仲居「時間も遅いですし、先にお食事の支度しちゃいますね」
神使「お願いします」
神様「じゃぁその間に」ヌギヌギ
神使「ちょっと神様? 仲居さんがいるのに下着姿にならないで下さい」
仲居「あら、可愛らしい下着ですね」
神様「照れるじゃないか〜」クネクネ
神使「・・・・・・」
神様「お前も浴衣に着替えたら?」
神使「後ほど・・・」ハァ
神様「やっぱ和服の方が落ち着くな〜」シュルシュル
仲居「お若いのに珍しいですね。 帯の結びも綺麗ですし」
神様「いや〜ん 褒められた?」クネクネ クネクネ
神使「・・・・・・」
神使「あの、ちょっとお伺いしても良いですか?」
仲居「なんですか?」
神使「先ほど、しかしか高原に行ってきたのですが住んでいる方とかいるんでしょうか」
仲居「誰かにお会いになりましたか?」
神様「変な集団に追いかけられた」
仲居「近づかない方が良いですよ? 宗教団体があるんです」
神使「宗教団体?」
仲居「えぇ、詳しくは知らないんですが他人を近づけたがらないんです」
神様「気持ちわる!」
仲居「本当ですよ」
神様「宗教団体ってのが胡散臭さ倍増だな」
神使「・・・自分だってそうじゃないですか」ボソッ
仲居「一体何がしたいんだか」
神使「そうなんですか・・・ 神様どう思います? 」
神様「うわっ、これウマそうじゃん」
神使「・・・・・・」
仲居「しおしお牛のすき焼きです。 食べ終わりましたら廊下にでも出しておいて下さい」
神使「ありがとうございます」
仲居「ではごゆっくり」スタスタ
神様「食べよう!」
神使「そうですね」
神様・神使「いただきます」
神様「うんま! うんまっ!」パク パク
神使「どうされますか?」
神様「どうって?」モグモグ
神使「あの神社ですよ」
神様「う〜ん・・・ ちょっとあの社のこと調べてくれる?」
神使「分かりました」
神様「な〜んか、嫌な感じするな〜」パク パク
神使「嫌な感じですか?」
神様「う〜ん・・・ なんかあの神社、昔に一度来た記憶はあるんだけどな〜」
神使「本当ですか?」
神様「よく覚えてない」モグモグ
神使「どのくらい前なんです?」
神様「さ〜な〜 100年? 500年? いやもっと前だったかな」
神使「はい!?」
神様「だから良く覚えてない」
神使「ちょっと待って下さい、神様ってお生まれはいつなんですか?」
神様「あれ? 聞いてない?」
神使「えぇ、神様に関する情報ってなんか詳しく教えてもらえなかったんです」
神様「ふ〜ん」パク パク
神使「教えて下さいよ」
神様「めんどい。 そのうち教えてあげる」モグモグ
神使「はあ・・・」
神様「それより、お前の肉と私のシイタケ交換しないか?」
神使「申し訳ございませんが、それは出来ません」
――― 翌日
神使「神様? 朝ですよ」ユサユサ
神様「あと6時間・・・」
神使「何言ってるんですか。 起きて下さいっ」ユサユサ
神様「も〜 なんだよ・・・ まだ昼前じゃん」ヨイショ
神使「あの・・・ 神様? 浴衣はどうされたんですか?」
神様「浴衣?」
神使「下着姿ですよ?」
神様「ん? 本当だ。 あれ? どこいったんだ?」キョロキョロ
神使「昨日の神社の件ですが神宮のデータベースを調べてみました」
神様「あ〜 しかしか神社?」
神使「はい。 200年ほど前から宮司と主神の連絡が途絶えているようですね」
神様「神も連絡取れないの?」
神使「はい」
神様「ふ〜ん、 逃げたか?」
神使「いえ、主神から神籍抹消依頼が出ているようで・・・」
神様「神籍抹消?」
神使「はい、そこから先の連絡書類が書かれておらず・・・」
神様「それ以降は分からないと?」
神使「そうですね」
神様「神宮も結構雑な仕事してんのな」
神使「なので、神社自体は廃社にはなっていないようです」
神様「どうすっかな〜 明るいうちにもう一回だけ行ってみるか」
神使「それが良いと思います」
神様「それよりさぁ神使君」
神使「何でしょうか」
神様「それ何?」
神使「? ノートパソコンのことですか?」
神様「なんで持ってんの?」
神使「神様も神宮から支給されてませんか?」
神様「私、ワープロだよ? オアシス。 10Kgもあるヤツ」
神使「物持ちが良いですね・・・」
神様「いや、そういう問題じゃないでしょ」
神使「3年ごとに更新されてると思うんですが・・・」
神様「初耳。私の30年くらい経ってるけど?」
神使「・・・私が前に使っていたヤツでよければ差し上げますが」
神様「ソレくれ」
神使「これは・・・ ちょっと・・・」
神様「いいじゃんよ〜 私もちっちゃいパソコン欲しい〜」
神使「次のボーナスで買えば良いじゃないですか」
神様「ボーナス?」
神使「まさか神様・・・」
神様「・・・・・・」
神使「すいません」
――― しかしか神社
神様「昨日は暗くてよく分からなかったけど、結構やばいなこの本殿・・・」
神使「よく崩れずに残ってますね」
神様「手分けして何か手がかりでも探してみるか」
神使「そうですね。 私は裏手に回ってみます」テクテク
神様「んじゃ、私は本殿に入りますかねっと」
ギィー
神様「いや〜 やっぱキツいなこれ・・・ 」
ガサゴソ
神様「ん〜 やっぱりご神体ないな〜」
神様「でも掃除された形跡はあるなぁ」
神使「神様!」
神様「ん〜? なにかあった?」スタスタ
神使「見て下さい。 裏手に建物があります」
神様「うわ〜 仲居さんが言っていた宗教団体のやつじゃね?」
神使「<おきつねこんこん教>って書いてありますね」
神様「なに!? おきつねこんこん教だと!?」
神使「知っておられるのですか?」
神様「引きつけるネーミングだ・・・ 入信したいかも」ゴクリ
神使「何を言ってるんですか・・・」
神使「それよりもどうします?」
神様「お前ちょっと潜入してこい」
神使「・・・・・・」
神様「バレるなよ? 慎重にな」ポンポン
神使「・・・・・・」
神様「どうした?」
神使「すいません、何を言っておられるのですか?」
神様「どうも〜! って行っても中に入れてもらえる訳ないだろ?」
神使「そうでしょうね」
神様「そしたら潜入するしかないじゃん」
神使「神様は?」
神様「私は神力がない故に協力が出来ないのだ」フッ
神使「神力関係ないですよ? 私も神じゃないので神力ありませんし」
神様「他宗教である私が行くとか喧嘩売りに行くようなもんだろ?」
神使「私も同じですが・・・」
神様「いいから行けよ! 捕まったら助けるからさ」
神使「本当ですか?」
神様「私がお前を置いて逃げるようなヤツに見えるのかよ。 これでも神だぞ?」
神使「絶対助けて下さいよ?」スタスタ
神使「この壁結構高さありますね・・・」ンショ ンショ
信者「お前何やってんだ?」
神使「えっ!?」
信者「侵入者だ! みんな捕まえろ!」
神使「うわっ、放して下さい〜」ジタバタ
信者「あっちに連れの女もいるぞ!」
神様「やべっ」ダッ ダッ ダッ
こら〜 逃げるな〜!!
神様「私関係ないです〜!! その人知らないです〜!!」
嘘つくなー! 待てー!
女が駅に向かって逃げたぞ!
神使「神様・・・ あなたって人は・・・」
神様「ぎゃー! 助けて〜」ダッ ダッ ダッ
待てこらー!
仲間を置いて逃げるな−!
神様「駅だ! おっ、電車いるじゃんよ、ラッキ〜」ダッ ダッ ダッ
神様「電車待って〜 乗る! 乗るよ〜」
タッ タッ タッ
プシュー
神様「ふ〜 助かった〜」アセアセ
ガタンガタン
次は、たじたじ駅です
神様「あっぶね〜 神使は・・・ まぁ、うん」
――― 2時間後
駅員「お客さん?」ユサユサ
神様「ふぁ」ポー
駅員「終点だよ? 降りて」
神様「んぁ、すいません」
トテトテ
神様「あれ? ここどこ?」キョロキョロ
駅員「えーと、しかしか高原駅からなんで2360円です」
神様「2360円!? 高けー!」
駅員「だって20駅以上あるよ?」
神様「20駅!? しおしお温泉行きたかったんですけど」
駅員「え? 逆だよ? 戻る? 帰り分でもう2360円かかるけど」
神様「・・・・・・いえ、このまま降ります」
―――あいあい駅前
神様「うわ〜 超寝過ごしたな」
テクテク
神様「おっ、サイセリアあるじゃん。 お腹すいたし入ろっかな〜」
神様「でも、電車賃払ったから金ないしな〜」ウロウロ
神様「ほうれん草のソテーだけなら食えるかな・・・」ウロウロ
?「か〜みちゃん」
神様「??」
?「久しぶり〜」
神様「エキノコックス?」
?「狐神だコラ」ゲシッ
神様「あうっ」
狐神「あんたこんな所で何してんの?」
神様「お腹すいたからサイセリアに入りたいんだ」
狐神「うちの神社素通りしてサイセリアに向かうとか舐めてんの?」
神様「お前の神社?」
狐神「となり」
神様「あ〜、神社あったんだ。 気付かなかった」
狐神「お前は、神社よりサイセリアの方が重要なのかよ・・・」
神様「いま金ある?」
狐神「たかりたいの?」
神様「金なくてさ、食わしてよ」
――― サイセリア店内
店員「いらっしゃいませ」
狐神「2人です」
店員「こちらへどうぞ」
神様「よっこいしょ」ボフッ
神様「私はペペロンチーノとほうれん草のソテー、あとドリンクバー」
狐神「私はドリンクバーだけで」
店員「はい」
狐神「で? こんなとこまで来て何用?」
神様「お前こそこんな所で何してんの? びっくりしたわ」
狐神「200年前から隣の神社の主神やってる」
神様「まじで?」
狐神「いや、配属辞令出したのアンタでしょうが」
神様「まじで!?」
狐神「あんたの神使だった私を無理矢理 神籍 に入れて送り込んだ張本人だろうが」
神様「あ〜、そんなこともあったっけ。 1000年くらい前?」
狐神「だから200年前って言った」
神様「飲み物取ってくる」
狐神「聞けよ!」
神様「何飲む? ドクダミ茶?」
狐神「はぁ〜、いいよ私取ってくる」スタスタ
神様「私コーラね〜」
狐神「はい、コーラ」コトッ
神様「サンキュー」チュウチュウ
狐神「で? 何しに来たの?」
神様「神宮の嫌がらせで、しかしか神社の立ち寄り」
狐神「しかしか神社・・・」
神様「そう」
狐神「ようやく神宮も重い腰を上げたんだ・・・ それで私の所に?」
神様「は? 電車乗り過ごしただけだけど? 何言ってんの? バカなの?」
狐神「・・・・・・」イラッ
神様「ぷは〜 コーラおいしい」ゲップ
狐神「はしたないわね。 もう少し何とかなんないの?」
神様「お前は私の神使かっつーの」
狐神「元神使ですが?」
神様「私の神使って同じようなヤツばっか」ハァ
狐神「そういえば、あんたって今は神使いるの?」
神様「犬ころ一匹飼ってる」
狐神「狛犬か。 あんたの神使ってことは相当優秀なんでしょうね」
神様「私の元神使がそれ言うの? 自意識過剰なの? バカなの?」
狐神「・・・・・・」イラッ
店員「お待たせしました」コトッ
神様「ん〜 おいしそ〜!」
狐神「んで、しかしか神社にはもう行ったの?」
神様「さっき行ってきた」モグモグ
狐神「どうだった?」
神様「犬ころが捕まったから逃げてきた」
狐神「・・・・・・え?」
神様「いや〜、裏手にあったおきつねこんこん教に侵入させたんだけどさ」
狐神「侵入?」
神様「中に入る前に神使が捕まった」
狐神「まさか神使置いて逃げてきたの?」
神様「人聞きの悪い。 潜入捜査と行ってくれ」
狐神「潜入じゃないじゃん。 捕まってんじゃん」
神様「大丈夫だって」モグモグ
狐神「厄介だよ? しかしか神社は」
神様「なんだよ〜 やっぱ曰く付きかよ〜」
狐神「元凶はアンタでしょうに」
神様「は? 私何もしてないよ? 何言ってんの? ボケでも始まったの?」
狐神「・・・・・・ あんた200年前ちゃんと事後処理した?」
神様「事後処理?」
狐神「神籍抹消」
神様「??」モグモグ
狐神「しかしか神社の主神から出てた神籍抹消依頼を担当したのアンタでしょ?」
神様「??」モグ… モグ
狐神「やっぱり・・・」
神様「あ〜 そういえば昔、そんな手続きした記憶があるかも」
狐神「ちゃんとやったの?」
神様「神籍の抹消手続きは〜 した。 うん、間違いない」
狐神「ご神体の方は?」
神様「ご神体?」
狐神「そう、神力抜いた?」
神様「・・・・・・」
狐神「抜いた?」
神様「・・・・・・」モグモグ
狐神「やっぱり」ハァ
神様「だってそんな事言われてないもんっ!」
狐神「常識だろ」
神様「言われたことしかやらない。 それが私流」
狐神「主神がご神体の管理できなくなるのに、神力抜かないでどうすんのよ」
神様「でも宮司がいたし、ご神体の管理くらいできるでしょ」
狐神「主神の神籍抹消の理由は知っているわよねぇ?」
神様「ん〜・・・ なんだっけ?」
狐神「宮司と駆け落ち」
神様「まじかよ!」
狐神「あんたが神籍抹消して主神は人間になって宮司と二人でどっか行ったわ」
神様「もしかして・・・ 神力入った状態でご神体放置?」
狐神「そう」
神様「たしか結構強い神力持ってたよね?」
狐神「そう」
神様「ダメじゃん」
狐神「そう」
神様「でも、あの主神はご神体のこと何も言ってなかったよ?」
狐神「神籍抹消でご神体の神力抜くのは常識だから・・・」
神様「それに、ご神体に神力残ってるって言ってなかったし」
狐神「人間になって神力無くなってんのに、ご神体の状態が分かる訳ないでしょ・・・」
神様「・・・・・・」
狐神「はぁ〜」
神様「ちょっと待てや。 お前はそこまで知っていてなんで放置してんだよ」
狐神「管轄地域外だから手が出せない」
神様「はぁ〜? だったら神宮に連絡しとけや!」
狐神「したわよ。 何度も」
神様「放置してんのか? 神宮は」
狐神「広域特務課って所に何度も申請書類出してるんだけどね・・・」
神様「広域特務課?」
狐神「そう。 アンタ知ってる?」
神様「・・・・・・」
狐神「・・・・・・ もしかしてだけどさぁ」
神様「・・・・・・」
狐神「あんた、今の所属は?」
神様「・・・・・・」
狐神「名刺ちょうだい」
神様「・・・・・・」ソロリ
狐神「内宮神籍 神宮所属 “広域特務課” 審査係 神様、なるほどね」
神様「お願い! 神宮には黙ってて! これ以上減給されると給料マイナスになる!」
狐神「マイナスって・・・」
神様「驚くなよ、私は来月まで無給だ」
狐神「無給なんてあるの?」
神様「この件は私が内密に処理する」
狐神「コソコソやって、ばれるとマズいわよ?」
神様「バレねーよ、ビビってんじゃねーよエキノコックス」
狐神「・・・・・・」ゲシッ
神様「あぅ」
狐神「どうなっても知らないわよ?」
神様「とりあえず、知ってること教えて?」
狐神「ここじゃあれだし、うちの神社行こうか」
――― あいあい神社
神様「・・・コックスの神社って結構大きいのね」
狐神「土地が広いだけで本殿はそんなでもないわよ? って言うかコックスって何よ」
神様「聞く?」
狐神「・・・・・・」ゲシッ
神様「あぅ」
巫女「あ、お帰りなさいませ神様」
神様「ただいま〜」
巫女「?」
狐神「気にしないでくれ」
巫女「お知り合いの方ですか?」
狐神「あぁ、コレは一応神宮の神様だ」
神様「ど〜も〜」
巫女「神宮!? 神様!?」
狐神「そう、しかも私の大先輩だ」
巫女「え!? あっ、初めまして! 私、巫女の・・・あの・・・」アタフタ
神様「あ〜、巫女ちゃんさぁ〜」ハァー
巫女「はっ、はい! すいません! あの・・・ その・・・」オロオロ
神様「竹箒はもう少し水平にして円を描くように使わないと」
巫女「え?」
神様「貸してみ?」
巫女「はい・・・」
神様「こう」サァー サァー
巫女「お〜」
狐神「あんた、何でそんなこと知ってんの?」
神様「私は巫女のスペシャリストだ」サァー サァー
狐神「・・・それ巫女関係ないだろ」
――― 社務所
狐神「適当に座って」
神様「あれ? 宮司とかはいないの?」
狐神「総出で地鎮式。 明日まで帰ってこない」
神様「あ、そう。 ・・・ねぇ、儲かってんの?」
狐神「はぁ?」
神様「装飾とか結構金かかってんじゃん」
狐神「儲かってる訳ないじゃんよ。 年を追う毎に苦しくなる一方よ」
神様「ふ〜ん・・・ ねぇ余ってる服とかない?」
狐神「はぁ?」
神様「頂戴」
狐神「服って装束とか?」
神様「ちげーよ、要らねーよそんなの。 普段着だよ普段着!」
狐神「普段着って・・・ あんた、服くらい自分で買いなさいよ」
神様「薄給の私をなめんなよ?」
狐神「あげても良いけど、私ほとんど着物だよ?」
神様「はぁ? 着物? じゃあ要らない」
狐神「・・・・・・」イラッ
トントン
狐神「どうぞ」
巫女「失礼いたします」スタスタ
神様「?」
巫女「あ、先ほどは大変失礼いたしました・・・」ペコリ
神様「・・・・・・」ジィー
巫女「お茶です///」コトッ
神様「巫女ちゃんはさぁ、ここ何年目?」
巫女「えっ? あっ2年目です」
神様「そう。 ねぇ、コーラとかある? 炭酸系」
巫女「はい! すぐお持ちいたします」
狐神「持ってこなくてもいい。 下がって良いぞ」
巫女「承知いたしました。 失礼いたします」スタスタ
パタン
神様「偉そうに。 身内にはもっとフレンドリーに接しないとダメよん」
狐神「立場ってもんがあるでしょうが」
神様「あ〜やだやだ。 可哀想だからあの巫女ちゃん神宮に頂戴?」
狐神「ダメだバカ。 せっかく見つけたのに」
神様「なんだよケチ」
狐神「そんな事より続きを話すわよ」
神様「へいへい」
狐神「しかしかの主神のその後とかは聞いてる?」
神様「いいや聞いてない。 私その後すぐに異動しちゃったから」
狐神「あんたが神籍抹消した後、二人はどこかでひっそりと暮らしていたみたい」
神様「主神は神籍抹消して人間になったから・・・ さすがにもう亡くなっているか」
狐神「そうね」
狐神「で、残ったご神体は管理されずに神力がそのままで放置された」
神様「危険なことするな〜」
狐神「アンタのせいでね」ギロッ
神様「・・・はい」
狐神「ご神体からはゆっくりと神力解放が続いて周辺で不思議な現象が起っていたみたい」
神様「不思議な現象?」
狐神「まぁ、よくある神力による自然現象ね。見えないものが見えたりとか」
神様「あの場所でそれは嫌だな・・・」
狐神「そうねぇ、だからしばらくは人が近づく事なかったんだけど」
神様「状況が変わったと?」
狐神「30年くらい前かな? 願いが叶うってちょっとした名所になって」
神様「願いが叶う?」
狐神「参拝者の願いが結構な確率で叶ってたみたい」
神様「あ〜、管理者がいないから無差別に神力が解放されたのか」
狐神「当然そんなことになったら悪巧みする人間も出てくる訳よ」
神様「そりゃそうだわな。 私だって飛びつくわ」
狐神「あんたはそのくらい自力で何とでもなるでしょ」
神様「ねぇ、それ嫌み? 神力ゼロの私へのイジメ?」
狐神「へぇ〜 神力ゼロねぇ〜」
神様「・・・なんだよ」
狐神「だいぶ貯め込んでるように見えるけど?」ジー
神様「・・・・・・」
狐神「私を神籍に入れて譲渡したときの神力よりも多いんじゃない?」
神様「・・・・・・」
狐神「狛犬君用?」ニヤッ
神様「・・・・・・」イラッ
狐神「ごめんごめん悪かったって」
神様「お前、それ言い触らすなよ?」ムスッ
狐神「はいはい、神の出生に関わる口外禁止事項ですものね」
神様「だから口にするなっての」
神様「ごめんってば〜」
神様「それより、お前かなり神力増えてるんじゃないの?」
狐神「そうでもないと思うけど?」
神様「・・・・・・ ちなみになんだけどさぁ〜 フォックスって今の神階は?」
狐神「ん? 従一位」
神様「あ〜・・・ そう。 うん、がんばったね」チッ
狐神「っていうか、次コックスって言ったらご神体放置の件神宮にチクるよ?」
神様「は? フォックスって言ったんだけど? 耳まで悪くなったの?」
狐神「うぐっ」イラッ
狐神「話を戻すわよ!!」
神様「へいへい」
狐神「ちょっとした名所になってからすぐに、ご神体が消失する事件があったの」
神様「消失・・・ 盗まれたって事か?」
狐神「えぇ」
神様「持ち出しても意味ないのにな」
狐神「1年後にはちゃんと戻ってきたけどね」
神様「神域から持ち出したら神力解放できないしな」
狐神「盗人もそれに気付いたんでしょうね」
狐神「それと同時に神社の裏手に宗教団体が立ち上がった」
神様「それがおきつねこんこん教か・・・」
狐神「そう、最初はこぢんまりとコソコソ私腹を肥やしてたんだけど・・・」
神様「欲には勝てないと」
狐神「これ以上肥大化する前にはカタ付けておきたいわね」
神様「う〜ん・・・ おきつねこんこん教については?」
狐神「信者は30人くらいで幹部以外は真面目な信徒みたい」
神様「ネーミングセンスがイカしてるんだけどキツネと関係あんの?」
狐神「あぁ、しおしお神社って稲荷系だからじゃない? 深い意味はないと思う」
神様「なんだ〜 それだけか〜 お前とは関係ないの?」
狐神「ない。 私は北海道出身だし」
神様「はぁ〜 どうすっかな〜」
狐神「きちんと解決していってよね」
神様「めんどくさいな〜 帰りたいな〜」
狐神「あんたねぇ、神使置いて帰るつもり?」
神様「あぁ〜 犬ころもいるんだよな〜」
狐神「心配なくせに」
神様「・・・・・・」
狐神「もしかして、わざと置いてきたんじゃないの?」
神様「・・・・・・」
狐神「図星?」
神様「もぉ、こいつメンドい」
狐神「まぁ、どっちでも良いわ。 ちゃんと解決してね 」
神様「でもな〜 やっぱ、面倒くさいな〜」ダラー
狐神「神宮にバレたくなければ解決する以外に道はないわよ?」
神様「はぁ〜」ズーン
神様「・・・しゃぁね〜な〜」スッ
狐神「? なにその手」
神様「金くれ」
狐神「は?」
神様「財布に250円しかない」
狐神「銀行に行って自分のお金下ろしてきなさいよ」
神様「無給だっていってんだろ! 銀行に600円しかねーよ! 下ろせねーよ!」
狐神「本当に無給なんだ・・・」
神様「照れるじゃないか〜」クネクネ
狐神「褒めてないし。 貯金くらいしときなさいよ・・・」
―――翌日
神様「さてと、んじゃ連れてって?」
狐神「は?」
神様「いや、従一位様ご自慢の神力使ってバビューンって」
狐神「この駅から向こうは管轄外だから神力効かない」
神様「うそ! だって電車で20駅も先だよ?」
狐神「金あげたでしょ? 5万も」
神様「え〜」
狐神「解決して戻ってきたらお駄賃もう5万あげるから」
神様「まじで? よっしゃ! 絶対だぞ! 絶対だからな!! 」
狐神「はいはい。分かったからはよ行けって」ヒラヒラ
神様「燃えたぎってきた〜!!! いってきまーーーーす」ダッ ダッ ダッ
狐神「全く、どっちが面倒くさいヤツなんだか・・・」クスッ
テクテク
神様「ちかれた〜 やっと着いたよ」
神様「さて、どうやって潜入しよっかな〜」ウロウロ
信者「お嬢ちゃん?」
神様「ん?」クルッ
信者「ダメだよ? 潜入とか物騒な事しちゃ」ガシッ
神様「え? うそ。 もう捕まった??」
信者「監視カメラあるからね」
神様「ぎゃー 助けて〜 襲われる〜」ジタバタ
信者「襲わないから、取りあえず事務所来て?」
――― おきつねこんこん教
神様「・・・・・・」
信者「で、なんで勝手に入ろうとしたの?」
神様「昨日来たとき、すごくイカした名前で興味があって」
信者「ん? もしかして昨日逃げた女の子か?」
神様「あいつとは関係ありません。 今日初めて来ました」
信者「言ってること矛盾しまくってるよ?」
スタスタ
神使「あれ? 神様?」
神様「・・・・・・」
信者「神様?」
神使「はい、昨日私と一緒に居た・・・」
信者「やっぱ逃げた子じゃん」
神様「すいません」
信者「でもこの子が神様なんですか? 狗神様」
神様「狗神?」
神使「ですから、私は神でなくその方の神使なのですが・・・」
信者「またまた。 狗神様はご冗談もうまいですね」ハハハッ
神様「おい、犬ころ」
信者「貴様! 狗神様に失礼な呼び方をするな!」
神様「!? はい! すいませんでした!!」
神使「あの・・・ 申し訳ございませんがこの方と二人にして頂けますでしょうか」
信者「大丈夫ですか?」
神使「ご心配なく」
信者「では、なにかございましたらお呼び下さい狗神様」スタスタ
ガチャ
神様「ねぇ、神使君っていつの間に神になったの?」
神使「何度も神使だと言ったのですが・・・」
神使「神様に見捨てられた後、びっくりして狛犬になってしまいまして・・・」
神様「あ〜、それでお前を神と勘違いしてんのか。 って言うか見捨ててないし」
神使「いえ、それはもう見事な逃げっぷりでした」
神様「・・・・・・」
神様「それより、中の様子はどうだ?」
神使「えぇ、昨日から色々内部を見て回っているのですが特に怪しい気配などなく」
神様「そうか・・・」
神使「皆さんご神体に向かって一生懸命お祈りされていましたね」
神様「しかしかのご神体があるのか?」
神使「よく出来ていますが、たぶんレプリカだと思います」
神様「レプリカか・・・ 本物の場所は分かるか?」
神使「いいえ、まだそこまでは」
神様「ん〜・・・」
神使「何かあったのですか?」
神様「実は、しかしか神社のご神体が神力の入ったまま放置されているらしいんだ」
神使「神力が入ったままですか!?」
神様「あ・・・ うん」
神使「それは問題ですね。 すぐに神宮に連絡した方がよろしいかと」
神様「え? いや・・・ これは私達で解決しようと思う」
神使「しかし、神力が入ったままのご神体放置なんて大問題ですよ?」
神様「そうなの?」
神使「もしかして、200年前の神籍抹消と関係しているのでは・・・」
神様「!? で、でも200年も前だし? 神籍抹消の担当神も分からないし? 」アセアセ
神使「なるほど。 分かりました」
神様「よし!」ホッ
神使「神籍抹消を担当したのが神様なんですね?」
神様「・・・・・・」
神使「神様のことですから、その際ご神体から神力を抜くのを忘れた、といった所でしょうか」
神様「・・・・・・」
神使「そうなんですね?」
神様「はい・・・ すいません。 その通りです」
神使「やはりそうですか」
神使「で、どうされるおつもりですか?」
神様「ご神体から神力を抜く」
神使「それは当然ですが作戦は・・・」
神様「う〜ん・・・ お前さぁ、このまま神として振る舞ってろ」
神使「え?」
神様「私はお前の神使・・・ いや動物じゃないから巫女。 うん、それで行こう」
神使「作戦の意図が見えないのですが・・・」
神様「決まりだ! 頼んだぞ狗神様」
神使「その作戦大丈夫なんですか?」
神様「大丈夫だよ。 私が神だってバレないようにするからさ」
神使「いえ、神様が神だとバレることはないと思うのですが・・・」
神様「ん? どういう意味?」
神使「神様が自分から神だと名乗っても信じる人はいないと思いますので」
神様「あ〜・・・」ゲシッ
神使「痛っ」
神様「ほら、行くぞ」
神使「はぁ」
神様「・・・・・・」
神使「・・・・・・」
神様「早く行けよ、お前が神なんだから先に行くんだよ」
神使「あ、はい。 では失礼します」スタスタ
ガチッ
信者「あ、狗神様」
神使「お待たせして申し訳ございませんでした」
信者「で、そちらのちっちゃい女の子は一体・・・」
神使「あぁ、え〜と・・・」
神様「私は狗神様の使いで巫女をさせて頂いております。 神ちゃんとでもお呼び下さい」
信者「使いの方でしたか。 通りで馴れ馴れしいと思いました」
神様「・・・・・・」イラッ
神使「いいえ、これは神ちゃんの最も優れた特技ですから」
信者「なるほど・・・ さすが狗神様、素晴らしい解釈ですね」
神使「そういうつもりではないのですが・・・」
信者「またご謙遜を」
神様「はははっ。 ところで皆さん、この後は?」イライラ
信者「そうだ! 皆が待ってますので続きを」
神使「はい、今行きます」
神様「つづき?」
スタスタ
神様「お〜 人がいっぱい居るな〜」ボソッ
神使「おきつねこんこん教の信者の方達です」ボソッ
神様「何か一生懸命書いているみたいだけど何やってんだ?」
神使「祝詞を書いているんです」
神様「祝詞?」
神使「はい、明日の朝に読む分だそうです」
神様「ふ〜ん。 真面目だな」
女信者「狗神様? お聞きしたいのですがよろしいでしょうか」
神使「はい」スタスタ
女信者「ここなんですけど」
神使「あぁ、これはここで区切ったらどうでしょうか」
女信者「でも、この部分とうまく繋がるかが・・・」
神使「ん? そうですね。 そしたらここでどうでしょうか」
神様「・・・・・・」ジィー
――― 1時間後
信者「では、今日はこの辺で終わりにしましょう」
神使「はい」フゥ
信者「狗神様、今夜も祝詞をお願いできますでしょうか」
神様「? 神が祝詞を朗誦するのか?」
信者「勉強のためにも是非お願いできればと」
神使「分かりました」
神様「・・・・・・」
信者「では、本殿でお待ちしております」スタスタ
神使「本殿はこの先です。 行きましょうか神様」
神様「神ちゃん」
神使「そうでした。 神ちゃん」
神様「それよりお前さぁ、もう少し神らしく―――」
女信者「狗神様、一緒に本殿へ行きましょう!」
神使「あ、はい。 神さ・・・ いえ神ちゃんも行きましょう」
神様「はい・・・」
スタスタ
――― 本殿
神様「あの祭壇の上に乗っかってんのがしかしか神社のご神体か・・・」
神使「レプリカですが、たぶん本物と形は同じだと思います」
神様「きっとこの建物のどこかに隠してあるんだな」
神使「確証はありませんが、幹部室が一番怪しいかと」
神様「幹部室? あの端の部屋か」
神使「唯一鍵がかかっている部屋でしたので」
神様「なるほどな・・・」
信者「狗神様、準備が出来ましたのでよろしくお願いします」
神使「分かりました。 では―――」
神様「まて、いや・・・ お待ち下さい狗神様」
神使「?」
神様「私が朗誦します」
信者「あなたが?」
神様「神に祝詞を朗誦させるなど、私が許さない。 代わりに私が読む」
神使「神さ―――」
神様「狗神様、どうか使いである巫女の私にお任せ下さい」
神使「・・・神ちゃんが言うのでしたら任せます」
信者「では巫女さんお願いします」
神様「稲荷祝詞でいいか? 何も書いていないから略式だぞ」スタスタ
神様「神聖な祝詞だ。 朗誦中は目を閉じ私の言葉に集中しろ」
神使「皆さん、神ちゃんの言うとおりに」
・・・・・・
神様「では」
神様「掛巻も恐き稲荷大神の大前に恐み恐みも白く〜」
信者「・・・・・・」
神様「堅磐に常磐に命長く 子孫の八十連屬に至まで〜」ゴソゴソ
神使「・・・?」
神様「夜の守日の守に守幸へ賜へと〜 恐み恐みも白す〜」
――― 夜・寝室
神使「神様ってあんなにスラスラと祝詞を読めるんですね」
神様「はぁ? お前バカにしてる?」ゲシッ
神使「しかも暗記してるだなんて」
神様「基本くらいは押さえてるっつーの」
神使「はぁ」
神様「それよりもだ」
神使「?」
神様「お前、形とは言え今は神なんだぞ? もう少し神らしく振る舞えよ」
神使「はい?」
神様「もう少し何というか・・・」
神使「そのお言葉そのまま神様へお返しいたします」
神様「ぅっ・・・ 私はほら、神と言っても神力も使えないランク外だし」
神使「いいえ、同じですよ神様だって立派な神なんですから」ニコッ
神様「ったく、どいつもこいつも・・・」ハァ
モソモソ
神使「?」
神様「寝る」
神使「暖房がないので私を抱いて寝ますか?」
神様「・・・好きにしろ」
神使「それ、私の台詞だと思うのですが・・・」
神様「・・・なぁ」
神使「何ですか?」
神様「お前は・・・ 神になりたいと思うか?」
神使「え?」
神様「・・・なんでもない」
――― 翌日
チュンチュン
神使「神様?」ユサユサ
神様「ん〜ん・・・ あと6時間」
神使「ほら、起きて下さいってば」ユサユサ
神様「なんだよ・・・ 早すぎだろ」ヨイショ
神使「朝ご飯持ってきてもらいましたから食べましょう」
神様「朝ご飯? どこ?」キョロキョロ
神使「目の前にあるじゃないですか」
神様「・・・ なにこれ?」
神使「お稲荷さんです」
神様「小さいなぁ・・・」
神使「それよりどうするんですか?」
神様「今日中にカタを付けるぞ。 長居無用だ」
神使「まずは、ご神体を見つけないとですね」
神様「そう言えば、幹部というのはいるのか?」モグモグ
神使「数日おきにこちらへ来るようなのですが」
神様「ふ〜ん。 今はいないんだな?」
神使「えぇ、ただ幹部専用の裏口から入るようで来ても誰も分からないそうです」
神様「よし、今のうちに私が幹部室に潜入して探してこよう」
神使「でも鍵閉まってますよ?」
神様「これ」ジャラジャラ
神使「いつの間に・・・」
神様「昨日、祝詞を読んでいるときにな」
神使「ゴソゴソしていたのはそれですか・・・」
神様「ご丁寧に鍵入れと書いた箱が祭壇の近くにあった」
神使「他の鍵も丸ごと持ってきてバレますよ?」
神様「だから早めに忍び込むんだよ」
神使「昨日の夜に忍び込めばよかったと思うのですが」
神様「私もそう思ったんだが、監視のヤツが扉の前に居てな」
神使「そうなんですか?」
神様「神であるお前が逃げないように監視でもしてるんじゃないか?」
神使「すいません、全く気がつきませんでした」
神様「まぁ、それは良い。朝も当然祝詞をあげるんだろ?」
神使「はい、その後は本殿の掃除と聞いています」
神様「よし、祝詞をあげているときに忍び込もう」
トントン
神使「はい」
朝の祝詞のお時間です
神使「分かりました。今参ります」
神様「よし、いくぞ」
信者「あの・・・ 祝詞の方ですが・・・」
神様「狗神様に朗誦させるのはダメだ。 今日はお前達が読め」
神使「そういう事ですので・・・」
信者「・・・分かりました」
神様「私が作った祝詞だ。 これを読むと良い」スッ
信者「はぁ、うわっ長!」
神様「いいか、集中して読めよ? 他の者は目を閉じて言葉に集中しろ」
信者「はい」
神使「いつの間にあんなの用意したんですか?」ボソッ
神様「昨日の夜中にな。 20分は時間が稼げるはずだ」ボソッ
神使「なるほど・・・」
神様「じゃぁ頼んだぞ?」コソコソ
――― 幹部室
ガチャ
神様「よし! 開いた!」
ギィー バタン
神様「向かいの扉が幹部専用の入り口か・・・ 帰ってきませんように」パンパン
神様「さてと、ご神体を探しますかね」ガサゴソ
フンフンフーン♪
神様「嘘だろー 幹部か? ヤバいヤバい! 隠れなきゃ」イソイソ
ガチャッ
幹部「ん? 誰か居るのか?」
シーン
幹部「気のせいか・・・」
prrr prrr
ピィ
幹部「なんだ? あ〜 お前か・・・」
神様(あっぶねー、って言うか私ってついてね〜)
幹部「あぁ、順調だよ問題ない」
神様(ん? これってご神体じゃん! ラッキ〜 私ってついてる〜)
幹部「だから問題ねーよ・・・ 取りあえずうちの信者達の生前分与だけ急がせろ」
神様(・・・?)
幹部「構わねーよ、こっちにはご神体があるんだからよ。 怖いもんなしだよ」
神様(・・・・・・)
幹部「はぁ? 信者なんてただの金ズルだよ。 面倒くさくなったら切り捨てれば良いんだよ」
神様(・・・・・・)イラッ
幹部「おう、信者の数は半年以内に10倍にする。 あぁ、だいぶ稼げるぞ」
ガタン
神様「おい!お前!!」
幹部「? なんだ、貴様どっから入りやがった! ってテメーなんでそれ持ってんだ!」
神様「うるさい! ふざけんのもいい加減にしろ!」
信者「恐み恐みも白く〜」
ドタバタ
ガシャーン
信者「なんだ? 幹部室か?」
神使「神ちゃん」タッ タッ タッ
ガチャッ
神使「神ちゃん、大丈夫ですか!?」
ドタバタ
ガシャーン
神様「信者の心をもてあそぶな! 純粋に信仰を捧げる者達の心を踏みにじるな!」ドタバタ
信者「巫女! あんた何でこの部屋にいるんだ」スタスタ
幹部「おい! この部屋に入ってくるんじゃない!」
信者「」ピタッ
神使「神ちゃん!」
幹部「なんだ? お前、うちの信者じゃないな?」
神様「は〜な〜せ〜よ〜」ジタバタ
神使「その方を放しなさい」
幹部「なんだと? おい、お前達その男も捕まえろ!」
信者「・・・・・・」
幹部「何やってんだよ! 早くしろよ!」
神使「幹部さん、あなた達のやろうとしていることは全てバレています」
幹部「あ?」
神様「祭壇に飾っているのはレプリカ、あなたがその手に持っているのが本物ですよね?」
信者「え?」
幹部「!? 何言ってんだ・・・ これはレプリカ。 そうこっちがレプリカだ!」
信者「幹部さん、あなた・・・ もしかして騙していたんですか・・・」
幹部「は? お前達はこんな得体の知れないヤツの言うことを信じるのか!」
信者「・・・・・・」
神使「それとあなたが捕まえた巫女さんですが早く解放した方が良いですよ?」
幹部「はぁ? こんな女ごときに何が出来るってんだよ」
神使「その方は神宮の神ですよ?」
幹部「神だと? はっ、笑わせんな」
神使「その方に危害を加えると大変な神罰が下ってしまいますが・・・ 忠告はしましたからね?」
幹部「・・・・・・」チラッ
神様「いいの? 全力で行くよ?」ベー
神使「神力が本当に存在することくらい、そのご神体の効果で知っていると思うのですが・・・」
幹部「この女が神だって言う証拠でも見せてみろや」
神使「・・・・・・」ボンッ
幹部「うわぁ! なんだ??」
神使「私は狛犬です。 驚きましたか?」
幹部「うそだろ・・・」
神使「神様にわざわざ神力を使わせることなど出来ませんので」ボンッ
幹部「お前達何者だ・・・」
神使「私達は神宮から来ました」
幹部「神宮?」
神使「神職不在のしかしか神社への立ち寄りが目的です」
幹部「じゃぁ、うちと関係ないだろ! 出てけよ!」
神使「あなたの持っているご神体は、しかしか神社のものです」
幹部「・・・・・・」
神使「この土地も、しかしか神社の土地だと思うのですが?」
幹部「・・・・・・」
神使「返して頂けますか?」
幹部「ふ、ふざけるな! 渡すわけないだろ!」
神使「交換条件でどうです?」
幹部「交換条件だぁ?」
神使「そのご神体を置いて今すぐ立ち去るのでしたら一切を不問にします」
幹部「はぁ? 嫌だと言ったらどうすんだよ」
神使「全ての神の力を使って最大の苦痛を永遠に与えることになるでしょう」
幹部「・・・・・・」
神使「本気ですよ? あなたにとっては選択の余地などないと思うのですが」
神様「そうだぞ、あきらめろや!」ジタバタ
幹部「おい! ガキは大人しくしてろ!」ゲシッ
神様「あぅ」
神使「無礼はやめなさい!」
幹部「あん?」
神使「そちらの神様は多くの神の中でも神階を超越した最高神です!」
神様「え? お前なんでそれ知ってんの?」
神使「え?」
神様「え?」
・・・・・・
神様「あ〜 秘技! 金玉頭突き!!」ガンッ
幹部「ぁっ・・・」フラフラ
信者「うわぁ、痛そう・・・」キュン
幹部「おま・・・え・・・ そこは・・・」
バタン
神様「どうだ! 神の力思い知ったか!」フンスッ
神使「神の力なんですか・・・ それ・・・」
信者「狗神様、お見事でした!」
神使「はい?」
信者「まるであの巫女が神のような錯覚を覚えるほどの演技。 素晴らしかったです」
神使「いえ・・・」
神様「狗神様は演技派で売り出し中なのです。 何かあればマネージャーである私を通して仕事をご依頼下さい」
神使「・・・・・・」
信者「やはりこの幹部は私達を騙していたのですか・・・」
神使「残念ながら」
信者「しかし、ご神体を取り戻して頂きありがとうございます」
神使「大変申し上げにくいのですが・・・ このご神体は回収させて頂きます」
信者「回収!?」
ザワザワ
神使「はい」
信者「そんな・・・ ご神体なしでは私達は・・・」
神使「残念ですが、これは本来ここにあってはならない物なのです」
信者「しかし・・・」
神使「あちらのご神体でも皆さんが大切にして下さればきっと神力も入っていくでしょう」
信者「・・・そうだ! 狗神様がこれからは私達の神様になって―――」
神様「いい加減にしろ!」
信者「!?」
神使「神ちゃん・・・」
神様「ご神体が偽物だと分かった途端、お前達は別の神を見立てるのか」
神様「そのご神体を今まで奉ってきたんだろ! 失礼だとは思わないのか!」
信者「!?」
神様「お前達の信仰はそのご神体にも伝わっている。 悲しませないでやってくれ」
信者「・・・・・・」
神様「狗神様が言ったようにこれからも大切にしろ」
信者「・・・・・・」
神様「行きましょう、狗神様」
神使「え? あっ、はい」
信者「狗神様・・・ どちらへ」
神使「長居も出来ませんので・・・ 申し訳ございませんが失礼いたします」
神様「神宮の使いの者が数日中にここへ来る。 それまでここを絶対に離れるんじゃないぞ」
信者「・・・・・・」
神様「分かったか? 絶対離れるなよ?」
信者「・・・分かりました」
神使「・・・・・・」
神様「行くぞ」ボソッ
神使「はい」
スタスタ
神使「神様・・・」
神様「あん?」
神使「お願いがあるのですが・・・」
神様「なんだ急に」
神使「このお社は廃社にするんですよね」
神様「ん? あ〜 そうだな」
神使「その・・・ もし出来ればなのですが」
神様「?」
神使「あの方達のために、この土地を譲渡するということは出来ないでしょうか」
神様「・・・・・・」
神使「すいません、他宗教ですし無理ですよね。 忘れて下さい」
神様「・・・電車の時間がない。 急ぐぞ」
神使「はい」
――― あいあい神社
神様「ただいま〜」
狐神「ん? もう帰ってきたの?」
神使「御邪魔します」
狐神「おや? そちらは神使君?」
神使「初めまして、神様の神使を務めております狛犬です」
狐神「ちょっと! 格好いいじゃん!」
神様「はぁ?」
狐神「あいあい神社の主神、狐神よ。 よろしく」
神使「お初にお目にかかります。 ご丁寧にありがとうございます」
狐神「よく出来た子ね。 あんたには勿体ないわ」
神使「そんなことありません。 私の方が神様には不釣り合いでして」
神様「ねぇ、そういうのやめて? むなしくなるから・・・」
神使「どうして神様がむなしくなるんですか?」
神様「腹減った、何か食わせて〜」
狐神「巫女に何か作らせるわ。 巫女! いるか?」
巫女「はい、神様」スタスタ
狐神「何か作ってやってくれるか?」
神様「あ〜作らなくて良いよ。ピザ頼もう? ピザ」
狐神「神社でピザかよ・・・ まぁ良いわ、じゃぁピザ注文してくれるか」
巫女「畏まりました。 ご希望はございますでしょうか」
神使「では、みみまでソーセージのベーコンポテトを、あとコーラをお願いします」
神様「さすが犬ころ! 分かってるね〜」
神使「神様の大好物くらいは心得ておりますので」
神様「そうだ、はいご神体」コトッ
狐神「え? あんた持ってきたの?」
神様「だって、神力抜く準備とか何もしないで行ったからさぁ」
狐神「・・・・・・」
神様「お前が抜け」
狐神「はぁ?」
神様「いいじゃんよ〜 抜けや」
狐神「もぉ、しようが無いわね・・・」
神様「神力抜いたら、おきつねこんこん教へ送ってくれ」
神使「え?」
神様「もう何十年もアイツらが持っていたんだ。 所有権はおきつねこんこん教にある」
神使「神様・・・」
狐神「へぇ〜 優しいじゃん」
神様「私はいつでも優しくてかわゆいのだ」
狐神「分かった。 明後日おきつねこんこん教へ行ってくるから渡してくる」
神様「は? お前が直接行くの?」
狐神「神宮から連絡があってね。 しかしか神社の廃社手続き処理任された」
神様「・・・・・・」
狐神「でね? その後に、とある団体に譲渡手続きをしに行かないといけないの」
神使「譲渡手続きですか?」
狐神「えぇ、信者さんって方がいる団体に土地と建物を無償譲渡するようにって」
神使「なんでそんな・・・」
狐神「どっかの優しくてかわゆい神が仕込んだんじゃない?」
神使「神様・・・」
神様「コックス君さぁ、なんでそういうことを言うの? トップシークレットだよね? それ」
狐神「そうだったけ?」
狐神「でもさぁ、あんた他の宗教法人へ譲渡するって言ってないでしょ」
神様「・・・・・・」
狐神「神宮は稲荷神社保存の氏子団体って言ってたよ?」
神様「・・・・・・」
狐神「ばれるとマズいわよ〜」
神様「ば、バレねーよ・・・ び、ビビってんじゃねーよ」アセアセ
狐神「ふ〜ん」
神様「・・・ お願い、黙ってて」
神使「私からも、お願いします!」
狐神「ちょっと、やめてよ。 大丈夫だって、私は言わないから」
神使「ご迷惑をおかけしま-
1: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/17(水) 00:19:25 ID:4ef8WnAw
【#1】
テクテク
神様「う〜 さぶっ!!」
神使「氷点下いっているでしょうね」
神様「んなこと言われなくても分かるわ! 腐れ神使」
神使「神様? 一応女性なのですからもう少し上品な言葉使いをなされては・・・」
神様「うっさい! 一応って何だよ! っていうかまだ着かないの〜」
神使「そこを曲がれば次の勤務先のにょろにょろ神社です。 宮司さんへのお土産は?」
神様「あるよ。 大九で買ったどらやの羊羹」
テクテク
神様・神使「・・・・・・」
神様「なぁ、社務所ないぞ? っていうか神社がないぞ?」
神使「これは大きな駐車場ですね・・・」
ヒュー
・【※閲覧注意※】見れば見るほど心が病んでくエ□GIFスレ・・・(GIF大量)
・【エ□GIF】ちょwwこの駅弁激しすぎワロタwww俺達にできない事を平然とやってのけるAV男...
・【GIFあり】韓国アイドルがエ□を追求し過ぎた結果・・・(17枚)
・【※炉利注意※】風呂で小便させられてる中●生のGIFヤバ杉、、、(GIFあり)
・【※GIF25枚】普通のエ□GIFじゃ満足できなくなった殿方ちょっくら寄っておくれやっしゃスレ。
・【H注意】 長澤まさみのこのgifエッッッッッッロすぎンゴwwwwwwww(画像)
・男性閲覧注意。「本当にチ●コがデカいやつ」はこうなるらしい・・・(画像)
・女子高生、全裸いじめ映像がアウトすぎる(※ 加害者顔モザイクなし)
・失踪して行方不明だったアイドル、MUTEKIからAVデビュー!このAV墜ちは闇が深い………
・【画像】 マ ジ か よ ……っ て な る 画 像 gif く だ さ い【65枚】他
2: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/17(水) 00:20:37 ID:4ef8WnAw
――― 翌朝
神様「ヘックショイッ!」ズズー
神使「神様、大丈夫ですか?」
神様「大丈夫なように見える? ねぇ、そう見える?」
神使「いえ・・・ その・・・」
神様「お前は犬に姿を変えられるから良いよな〜」
神使「ですから私を抱いていれば少しは暖かいと申しましたのに」
神様「獣臭くなる」
神使「・・・いや、私は姿を変えても神使ですから獣臭くはないかと・・・」
3: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/17(水) 00:21:55 ID:4ef8WnAw
神様「それよりさぁ〜、本当にここは東京なのか?」
神使「はい」
神様「でも緑が多すぎると思うんだけど。 川のせせらぎも聞こえるし」
神使「村ですから・・・」
神様「へっ?」
神使「ひのひの村です」
神様「東京じゃないの?」
神使「東京ですよ? 一応、都内です」
神様「・・・・・・」
神使「都内で仕事が少ない所とのご希望でしたので神様の条件にピッタリかと」
4: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/17(水) 00:22:58 ID:4ef8WnAw
神様「神使君さぁ、私の使いは何年目?」
神使「3年目ですね」
神様「うん、そしたらこのチョイスは変だよね」
神使「?」
神様「私はね? 祥寺とか下北とかに行きたいって言ったよね」
神使「はい」
神様「はいじゃ無くてさ、そしたらここは違うと思わない?」
5: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/17(水) 00:24:20 ID:4ef8WnAw
神使「申し上げにくいのですが吉祥寺や下北沢は・・・ その・・・ 位が高くないと・・・」
神様「ん? なに?」
神使「神様の神階では・・・」
神様「あ〜、そっか〜 そうだよね〜 私、神階が最低位だもんね、忘れてた」ズーン
神使「神様!」
神様「!?」
神使「神様は最低位なんかじゃありません!」
神様「神使・・・ おまえ・・・」
6: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/17(水) 00:26:56 ID:4ef8WnAw
神使「ランク外です。 お間違いの無いように」
神様「・・・・・・」
ゲシッ ゲシッ
神使「痛っ! 痛いです」
神様「神罰だ」ゲシッ ゲシッ
神使「本当のことじゃないですか、それに神罰じゃなくてただの足蹴りですよそれ」
7: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/17(水) 00:28:19 ID:4ef8WnAw
神様「それよりさぁ、どうすんだよ〜」
神使「社がなければ、別の所へ行けますが・・・」
神様「んじゃ、次行く?」
神使「いえ、あるじゃないですかお社が」
神様「へ?」
神使「駐車場の隅に・・・」
8: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/17(水) 00:29:05 ID:4ef8WnAw
神様「いやいや、あれは神棚だろ? ホームセンターで売ってるの見たぞ?」
神使「しかし、ご神体が入っていますので」
神様「え〜、あんな小さい所ネズミも住めないって」
神使「規則ですし、形だけでも少しは滞在しないと・・・」
神様「こんな真冬に何日も野宿なんて凍死するぞ?」
神使「その前に警察に通報されますね。 困りましたね・・・」
9: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/17(水) 00:30:34 ID:4ef8WnAw
テクテク
そうそう、それでさ〜
へぇ、そうなんだ
神様「ん?」
神使「神様どうされました?」
神様「・・・・・・」ジー
神使「女子高生のようですね。 こんなに朝早くから大変で―――」
神様「お〜い」タッ タッ タッ
神使「あっ、神様?」
10: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/17(水) 00:31:50 ID:4ef8WnAw
タッ タッ タッ
お〜い!
ちょっと神様〜 待って下さ〜い
少女「?」
友「少女ちゃん知り合い?」
少女「知らない・・・」
11: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/17(水) 00:34:18 ID:4ef8WnAw
神様「おはよう!」スタッ
少女「おはようございます・・・ あの失礼ですが」
神様「神使よ、挨拶を」
神使「はい・・・ 私たちこういう者です」スッ
少女「はぁ・・・ 名刺?」
友「神様? 神使?」
少女「神様・・・」
神様「そう、神様!」ヘヘン
友「神様より神使の方が名刺立派なんですね。 紙の厚さも違う」
神様「・・・・・・」
神使「神様は神階がランク外ですが、私は神使の中でも最高位ですので」
ゲシッ ゲシッ
神使「神様、痛いです」
12: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/17(水) 00:36:02 ID:4ef8WnAw
友「少女ちゃん行こ、神様とか言って変だよこの人達」
少女「うん」
スタスタ
なんで神様がジャージ姿なの? 男の人はちょっと格好良かったのに残念
そうだね
神様「少女よ! 私はそこの駐車場にいる。 いつでも来てくれ」バイバーイ
少女「・・・・・・」チラッ
神様「」バイバーイ
少女ちゃ〜ん バス来ちゃうよ〜
少女「うん」タッ タッ タッ
13: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/17(水) 00:37:53 ID:4ef8WnAw
神使「神様? どういうおつもりですか?」
ピロリロリン♪
神様「あっ、メールだ」ゴソゴソ
神使「いえ、私の携帯です」ポチ ポチ
神様「・・・お前さぁ、着信音変えてくれない? それ私と同じなんだよ」
神使「神宮からです。 荷物は明日到着で送ったとのことです」
神様「は? どこに?」
神使「ここです」
神様「ここ駐車場だよ?」
神使「神宮も駐車場になっていることを把握していないんでしょうね」
神様「勘弁してくれよ。 駐車場に住み着いて野宿する神なんて聞いたことないぞ?」
神使「そうですね、神宮に電話してみますか?」
14: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/17(水) 00:39:29 ID:4ef8WnAw
神様「それよりお腹がすいた。 カストのモーニングへ行かないか?」
神使「ありませんよ」
神様「へ?」
神使「カストも、古野屋も、竹屋もありません」
神様「なんで?」
神使「ちなみに、一番近いコンビニはバスで30分かかります」
神様「朝ごはんは? 朝ごはん食べたい!」
神使「来るとき近くに個人商店がありましたから、何か買ってきますか?」
神様「ダッシュだ犬ころ!」
神使「はいはい、じゃぁ大人しく待っていて下さいよ? 動かないで下さいね」タッ タッ タッ
神様「ったく、子供扱いすんなよ・・・」
神様「しかし・・・さっきの少女って」ポチ ポチ
18: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/17(水) 23:06:11 ID:4ef8WnAw
神様「・・・・・・」クニャ クニャ
神使「・・・・・・」クニャ クニャ
神様「なぁ、なんで私たちは朝から駐車場でコンニャクを食べているんだ?」クニャ クニャ
神使「近くにあった商店はコンニャク屋でした・・・」クニャ クニャ
神様「コンニャク屋って何だよ」クニャ クニャ
神使「この辺の名産だそうです」クニャ クニャ
神様「・・・・・・」クニャ クニャ
神使「・・・・・・」クニャ クニャ
神様「お前の味噌って私のと違う?」
神使「私のはゆず味噌ですね」
神様「くれ」
神使「半分だけですよ?」
19: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/17(水) 23:07:28 ID:4ef8WnAw
―――2日後・夕方
ピンポン
少女「?」
ピンポン ピンポン
少女「は〜い」
ガラガラ
神様「ねぇ、なんで来ないの?」ブルブル
少女「・・・・・・」
20: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/17(水) 23:10:06 ID:4ef8WnAw
神様「2日も経ったよ? 駐車場で待ってるって言ったよね」ブルブル
少女「・・・失礼します」ガラガラ
神様「まっ、まって!!」ガシッ
少女「何ですか? 私、宗教とかは・・・」
神様「違うの、寒いの! コンニャクなの! 中に入れて!」
少女「こんにゃく?」
神使「ちょっと神様!」
21: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/17(水) 23:11:17 ID:4ef8WnAw
少女「警察呼びますよ?」
神使「すいません、今帰りますので。 ほらっ、神様行きますよ!」グイグイ
神様「お前、先月神宮へ行ったろ」ジタバタ
少女「!?」
神使「え?」
22: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/17(水) 23:12:55 ID:4ef8WnAw
――― 少女宅
少女「お茶です」コトッ
神使「ありがとうございます」
少女「どうぞ」コトッ
神様「あっ、コーラとかある? 炭酸系」
少女「・・・・・・」
神様「うそうそ。 こたつ強にしても良い?」
少女「・・・どうぞご自由に」
23: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/17(水) 23:14:22 ID:4ef8WnAw
神様「それと、はいお土産」スッ
少女「これは?」
神様「どらやの羊羹。 結構グレード高いヤツ」
少女「・・・ありがとうございます」
神様「気にしないで。 後で食べよ?」
少女「はあ・・・」
神使「お土産自分で食べるんですか?」
神様「良いじゃん、高いヤツだし食べてみたいじゃんよ〜」
24: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/17(水) 23:15:38 ID:4ef8WnAw
少女「ところで・・・」
神様「ん〜?」ズズッ
少女「なんで私が神宮に行ったこと知っているんですか?」
神様「だって、鞄に付いてるお守り売ったの私だもん」
少女・神使「え?」
少女「でも、これ巫女さんに・・・」
神様「驚くなよ? その巫女さんの正体が何を隠そう私なのだ!」
神使「あ〜、神様は位がものすごく低いので巫女のバイトをしないと給料が―――」
神様「うっせんだよ、腐れ神使」ゲシッ
25: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/17(水) 23:16:55 ID:4ef8WnAw
少女「・・・本当に神様なんですか?」
神様「その通り! 初めてでしょ! 初めて見たでしょ!!」
少女「でも神宮で会っているんだよね?」
神様「あ〜・・・ うん、そうね・・・」
神使「神様は姿を見せないのが常識なんですが、この方は神力がゼロなので姿を―――」
神様「お前喧嘩売ってんの?」ゲシッ
26: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/17(水) 23:18:02 ID:4ef8WnAw
少女「・・・・・・」ジトー
神様「もしかして疑ってる?」
少女「神様にしては若すぎない? どうみても私と同じくらいの年でしょ?」
神様「彼女は今すごく良いことを言った!! 神使、メモ」
神使「騙されないで下さい。 これでもこの神様は―――」
神様「神使くん? その先を言ったらマジでやばいよ?」ギロッ
神使「・・・・・・」
27: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/17(水) 23:19:55 ID:4ef8WnAw
神様「よし、証拠を見せよう」
少女「証拠?」
神様「神使よ、犬ころに変身する芸を」
神使「芸じゃないんですけど・・・」ボンッ
少女「!?」
神様「どうだ?」フフン
少女「うそ・・・」
神使「私は狛犬の神使でして。 一応神使の中では最高位ですので―――」
神様「だから余計な事は喋らなくて良いんだよ!」
28: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/17(水) 23:21:05 ID:4ef8WnAw
少女「嘘みたい」
神様「これで信じてもらえた?」
少女「あなたは?」
神様「へ?」
少女「え? 神様なんでしょ?」
神様「私は・・・ 神様だから力を見せつけたりはしない!」
神使「神力がないので何もできないのです」
神様「・・・神使よ、人の姿に戻れ」
神使「はい」ボンッ
神様「神罰」ゲシッ ゲシッ
神使「痛い、痛いですって! だからそれ神罰じゃなくて体罰ですから!」
29: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/17(水) 23:22:25 ID:4ef8WnAw
少女「あの・・・」
神様「名前は?」
少女「私?」
神様「うん」
少女「少女です」
神様「神様です」
少女「はい・・・」
神様「よろしくお願いします」
少女「よ・・・ よろしく・・・ お願いします?」
神様「よし」
少女「?」
30: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/17(水) 23:23:25 ID:4ef8WnAw
神様「さてと、空いている部屋とかある?」
少女「部屋?」
神様「泊めてくれ」
少女「えっ?」
神様「お願いします! 泊めて下さい!」ドゲザー
少女「そんな急に言われても」
31: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/17(水) 23:24:22 ID:4ef8WnAw
神様「本当はにょろにょろ神社に滞在する予定だったの」
少女「にょろにょろ神社・・・」
神様「うん、でも行ったら駐車場になってたの」
少女「神社は先月取り壊しで駐車場に・・・」
神様「だから・・・ 住むところがなくて。 もう2日も野宿なの、外寒いの! コンニャクなの」
少女「野宿? っていうか、さっきからこんにゃくって何?」
神様「お願い! 何でもするから! 3月までには出て行くから!」
少女「そんなに長く!?」
32: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/17(水) 23:25:44 ID:4ef8WnAw
神様「大丈夫、家賃は入れる。1人月10万でどう?」
神使「10万って、神様の手取り以上じゃないですか」
神様「は? 私は月14万もらってるぞ?」
神使「それ神宮手当と巫女のバイト代が付いていただけですから」
神様「うそ!」
神使「今月から神様の手取りは確か8万5千円です」
神様「8万5千円!? ちょっと待てよ、少なすぎだろ!!」
神使「私に言われても」
33: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/17(水) 23:26:39 ID:4ef8WnAw
神様「ちなみになんだけどさぁ、神使君はおいくらなの?」
神使「私は手取りで58万5千円です」
神様「なんで使いの方が給料高いんだよ! ふざけんなよ!」
神使「階位で基本給が変わりますので」
神様「くそ! 絶対労働組合作ってやる」グヌヌ
神使「そんなことに労力を使わず、神階を上げようとは思わないのですか?」
34: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/17(水) 23:27:45 ID:4ef8WnAw
神様「少女、家賃は先払いで神使が出す」
神使「私!?」
神様「迷惑料と食費光熱費入れて58万5千円を先払いだ」
神使「ちょっと待って下さい。それ私の手取額じゃないですか」
神様「悪い話じゃ無いだろ〜?」
少女「・・・・・・」
神様「足りないか?」
少女「えっ?」
35: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/17(水) 23:29:21 ID:4ef8WnAw
神様「あーあ、また野宿かー。 神社さえ残っていればこんな苦労はしなかったのになー」
少女「分かった。 泊めてあげる」
神使「いいんですか?」
神様「よし! 決まりっ!」
神様「神使、あとで銀行に行ってお金を下ろして少女に渡せ」
神使「・・・・・・」
神様「返事は?」
神使「貸しですよ神様?」ハァー
36: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/17(水) 23:30:28 ID:4ef8WnAw
神様「よし、ところで夕飯は食べた?」
少女「まだ」
神様「神使、食事の準備を超特急で」
神使「少女さん、台所お借りしても良いでしょうか?」
少女「あっ、私作ります」
神様「まぁまぁ、神使は犬ころのくせに料理の腕はそこそこだ。 任せてちょ」
少女「はあ・・・ じゃぁ手伝います。 台所はこっちです」
神使「ありがとうございます」
スタスタ
神様「・・・・・・」
40: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/18(木) 21:16:27 ID:2mYtABX2
神使「お待たせしました」
神様「なぁ、これって・・・」
神使「コンニャクの煮物、コンニャクのオイスター炒め、コンニャクの―――」
神様「もう良い! コンニャク以外が食べたいよ〜」ゴロゴロ
少女「もらい物で・・・ 買い物も中々行けなくて」
神使「明日買い物に行きますから。 ワガママはダメですよ?」
神様「まぁ、味噌だけのコンニャクよりは数百倍マシだな。 白米もあるし」
神使「居候の身分で文句を言わないで下さい。 神の品格に関わります」
神様「うっさいな〜 何だよ品格って」
神使「では、頂きましょうか」
一同「いただきます」
41: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/18(木) 21:17:37 ID:2mYtABX2
神様「なぁ少女、聞いても良いか?」モグモグ
少女「なに?」
神様「その・・・」
少女「・・・・・・ もしかして神宮でお参りし―――」
神様「ここって夜遊ぶ所ってある?」
少女「へ?」
神様「ゲーセンとか、カラオケとか」
少女「ない・・・ かな」
神様「ビデオレンタル屋は?」
少女「ない」
42: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/18(木) 21:19:24 ID:2mYtABX2
神様「そうかぁ・・・ もしかしてここはド田舎だったりする?」
少女「超が付くほどのド田舎だと思う」
神様「やっぱり」シュン
少女「知っていて来たんじゃないの?」
神様「いや、私の希望は吉祥寺か下北沢だったんだが」
少女「・・・・・・」
神使「神様の神階が低すぎて行けなかったのです」
神様「・・・神使君さぁ、次の人事査定で評価落とすよ?」
神使「え? 神様って人事権もってるんですか?」
神様「これでも私は君の上司だよ? 神だよ?」
神使「・・・・・・」
43: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/18(木) 21:20:36 ID:2mYtABX2
神様「あ〜あ、今まで全部特A+にしてあげてたのにな〜」チラッ
神使「神様、明日はステーキなどいかがですか? 腕によりをかけてお作りします」
神様「うそ! ステーキ? 少女、明日のディナーは豪華だぞ!」ピョンピョン
神使「神様? 食事中ですから跳ねたりしないで下さい」
神様「分かってるよ」
少女「ふふっ」
神様「おっ、やっと笑ってくれた」
少女「・・・・・・ ///」プイッ
神様「う〜んっ、照れちゃって可愛いぞっ!」ポンポン
神使「神様? お行儀が悪いですよ?」
神様「だから子供みたいに扱うなよ」
44: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/18(木) 21:22:21 ID:2mYtABX2
神使「ところで少女さんはお一人でお住まいなのですか?」
少女「ここは祖父の家でして」
神使「そうでしたか。 今日はお出かけですか?」
少女「入院中です・・・」
神使「それは・・・ 大変ですね。 ご両親は別の所で?」
少女「私が小学生の頃に・・・」
神使「・・・すいません」
少女「気にしないで下さい」
神様「」モグモグ
45: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/18(木) 21:23:16 ID:2mYtABX2
神様「流れぶった切って悪いんだけど、お代わりもらっても良い感じ?」
少女「食べるの早いね」
神様「神様なもので///」テレッ
神使「すいません、躾がなっていないもので・・・」
神様「・・・・・・」ゲシッ
46: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/18(木) 21:25:11 ID:2mYtABX2
少女「お風呂沸いたけど入る?」
神様「良いの?」
少女「うん、熱かったら水で薄めて」
神様「熱いの大好き!」タッ タッ タッ
神使「・・・色々とご迷惑をおかけいたします」
少女「なんか、急すぎて私もよく分かんない」
神使「反省いたします」
47: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/18(木) 21:26:30 ID:2mYtABX2
少女「それより、何でこんな田舎に?」
神使「お恥ずかしい話なのですが・・・ 神様が神宮でちょっとミスをいたしまして」
少女「ミス?」
神使「はい、その・・・ 2000円のお守りを300円で売っていて・・・ 3年間も・・・」
少女「・・・・・・」
神使「その罰で他の神社に短期出向を命じられたのです」
少女「その出向先がにょろにょろ神社?」
神使「えぇ、比較的位の高い社の中で100年以上神様の立ち寄りがない神社だったもので」
少女「そうだったんだ・・・」
48: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/18(木) 21:27:59 ID:2mYtABX2
神様「A CHI CHI A CHI〜 燃えてるんだろうか〜♪」ヌギヌギ
神様「やべっ、下着の替え忘れた」
タッ タッ タッ
神様「あれ? この部屋だっけ?」ソー
全く神様の相手は疲れますよ
何となく分かるかも・・・
神様(あの腐れ神使、また私の文句たれてんのか?)コソッ
49: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/18(木) 21:29:03 ID:2mYtABX2
神使「しかし、駐車場になってしまっているとは知りませんでした」
少女「先月の大雨で裏の山が崩れて神殿が潰れちゃったんです」
神使「え?」
少女「こんな田舎だし、修復するお金も集まらなくて・・・」
神使「そうだったんですか」
少女「放置するのも危険だって、取り壊して先月仮設の駐車場に・・・」
50: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/18(木) 21:29:58 ID:2mYtABX2
神使「宮司さんは?」
少女「土砂崩れに巻き込まれて・・・ 今は入院しています」
神使「そんな! お見舞いに行きたいのですがどちらの病院か分かります?」
少女「日曜日でよければ一緒に行きますか?」
神使「お知り合いなのですか?」
少女「私の・・・ 祖父です」
神使「!?」
51: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/18(木) 21:31:13 ID:2mYtABX2
ヘックショイ!
少女「?」
神使「神様?」スタスタ
ガチャッ
神使「うわっ、神様下着姿で何やってるんです?」
神様「下着の替えをくれ」
神使「もう、神宮じゃないんですからそんな姿でうろつかないで下さい」
神様「なんだよその言い方。 まるで私が普段から下着姿でうろうろしてる見たいじゃないか」
神使「はぁ〜 ちょっと待っていて下さい」
少女「・・・可愛い下着ね」
神様「照れるじゃないか〜」クネクネ
52: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/18(木) 21:32:04 ID:2mYtABX2
ガサゴソ
神使「はいどうぞ」
神様「サンキュ〜」タッ タッ タッ
少女「大変ですね」
神使「世話の焼ける神様です・・・」
ザバーン
うぎゃー! 風呂A CHIーー!!
少女・神使「・・・・・・」
57: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/19(金) 23:19:12 ID:ojJxENE6
神様「・・・・・・」ポチポチ
神使「神様、最近よく携帯いじってますよね」
神様「ん〜 あ〜」ポチポチ
神使「何やっているんです?」
神様「ライン〜」
神使「え? 神様って友達いるんですか?」
58: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/19(金) 23:21:01 ID:ojJxENE6
神様「・・・・・・」プチッ
神様「よ〜し! 腐れ犬ころ、今日という今日は許さないぞ!!」ゴゴゴゴ
神使「すっ、すいません今のは言い過ぎました」
神様「私にだって友達くらいいるわ!」
神使「誰とラインしてたんです?」
神様「A子ちゃん」
神使「去年入った巫女のA子ちゃんですか?」
神様「そう。 A子ちゃんとは話が合うんだよね〜」
神使「あの子も結構変わってますからね」
神様「“も”ってなんだよ! 犬ころ」
59: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/19(金) 23:23:29 ID:ojJxENE6
神使「A子ちゃんは神様の正体は知っているんですか?」
神様「さぁ〜、巫女だと思ってるんじゃない?」
神使「教えてあげないんですか?」
神様「え〜、だって仕事の事なんて関係ないじゃん」
神使「・・・神様って、きちんと巫女の仕事はしているんですか?」
神様「お前、私の神使だろ?」
神様「神宮だと一緒にいることなんてほとんど無いじゃないですか」
神様「そう言えばそうか」
神使「神様は祭儀にも出ないですし・・・ 出られないですし」
神様「神使君さぁ、なんで今言い直したの?」
60: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/19(金) 23:24:58 ID:ojJxENE6
神使「そうだ、日曜日にょろにょろ神社の宮司さんのお見舞いに行きますよ」
神様「少女のおじいさまね」
神使「神様知ってい―――」
ガチャ
少女「部屋の準備できたました」
神使「あっ、ありがとうございます」
神様「どうも〜」
61: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/19(金) 23:28:29 ID:ojJxENE6
少女「しばらくこの部屋を使って下さい」
神様「おっ、広いじゃん! 10畳はあるんじゃない?」
神使「神宮の神様の部屋は3畳でしたからね」
神様「そうそう、押し入れの方が広い・・・ ってどんな間取りやねん!」ゲシッ
神使「ちょ、私に八つ当たりしないで下さい」
少女「・・・じゃぁ、おやすみなさい」
神様「おやすみ〜」
ガチャ
64: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/20(土) 22:41:19 ID:kmOiIMDE
神使「神様? 少女さんのこと知ってるんですね?」
神様「なにが?」
神使「宮司さんの事とか、にょろにょろ神社の事とか」
神様「うんにゃ、そこまで詳しくは知らなんだ」
神使「でも、何か知ってる雰囲気ですよね? 急に少女さんの家にまで来て」
神様「あ〜、これ」サッ
神使「神様の携帯って、かなり古い機種ですよね」
神様「そこじゃねーよ。 画面見ろよ」
神使「神宮お願い事リスト?」
神様「そっ、神宮にお参りした人の願い事をリストにしたやつ」
65: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/20(土) 22:43:07 ID:kmOiIMDE
神使「見せて下さい」
神様「ダメ〜 これは神様しか見ちゃいけないんです〜」ベー
神使「・・・・・・」イラッ
神使「あれ? ちょっとイラッっとした? ねぇイラッとした?」
神使「してませんが」
神様「ほれ」ポイッ
神使「おっとっと」
神様「他のリストは見るなよ?」
神使「おじいちゃんが元気になりますように(69)、お金があつまりますように(51)」
66: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/20(土) 22:44:29 ID:kmOiIMDE
神使「これは?」
神様「少女が神宮に来たときにお参りした内容〜」
神使「この後ろの数字は何です?」
神様「あぁ、成就指数だね」
神使「成就指数?」
神様「うん、70以上が神に上がっていくお願いで90以上が神力成就」
神使「それ以下はどうなるんです?」
神様「祈祷、まぁ神には上がらないお願いってこと」
神使「こんなシステム化されているんですね」
神様「10年前からね」
67: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/20(土) 22:45:22 ID:kmOiIMDE
神使「お金が集まりますようにというのは、さすがに低いですね・・・」
神様「まぁ良くある願いだからね。 普通は成就指数10以下なんだわ」
神使「でもこれって神社復興の為の資金って事ですよね」
神様「たぶん」
神使「なんでこんなに成就指数が低いんです?」
神様「もう少し分かるようにお願いしないと、さすがにこっちも分からんよ」
68: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/20(土) 22:46:38 ID:kmOiIMDE
神使「ちなみに成就指数っていうのはどうやって決まっているんですか?」
神様「下に詳細ボタンってあるだろ?」
神使「はい」ポチッ
ズラッー
神使「これは・・・」
69: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/20(土) 22:47:30 ID:kmOiIMDE
神様「少女が神宮に来た回数とか買ったお守りの種類とか、その他備考なんか色々」
神使「こんな細かく調べているんですか?」
神様「大変なんだな〜 これ作るの」
神使「・・・もしかしてこれ神様が?」
神様「だって、わたし他に仕事ないし〜」ゴロゴロ
神使「・・・・・・」
70: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/20(土) 22:49:44 ID:kmOiIMDE
神様「成就指数が上がるように書いたんだけど中々数字が上がらんのよ」
神使「全ての参拝者にやっておられるのですか?」
神様「まさか〜 そんなの無理無理。 おっ、みかん見っけ」ヒョイ
神様「たまたま私がお守りを売って、なんとなく気になったからってだけ」ムキ ムキ
神使「やっぱりここに来る前から全て知っていたんじゃないんですか」
神様「そんな訳ないじゃんよ、神力ゼロの私をなめんなよ?」パクッ
神使「威張ることではないと思います」
神様「お守り持った彼女見た時は、こっちがビックリしたわ」モグモグ
神様「このみかん すっぱ!」
71: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/20(土) 23:11:06 ID:kmOiIMDE
――― 翌日
チュン チュン
神使「神様? 朝ですよ」
神様「ん〜 ふぁ〜」ノビー
神使「なんで寝たときと頭が逆の位置にあるんですか?」
神様「毛布が気持ちいい〜 神宮の宿舎にも毛布欲しいよな」スリ スリ
神使「え? いや・・・ なんでもないです」
神様「・・・もしかしてさぁ、神使君って自室に毛布ある感じ?」
神使「・・・・・・」
神様「そうなんだ・・・ うん、分かってる」シュン
神使「あ〜、ほら神様! 今日は良い天気ですよ?」
神様「うん・・・ 神宮に帰ったら毛布買って・・・」
神使「はい」
72: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/20(土) 23:12:18 ID:kmOiIMDE
スタスタ
神使「おはようございます少女さん」
神様「ふぉ〜 ふぁ〜 よ〜」ノビー
少女「おはようございます・・・」
神使「神様? 朝の挨拶くらいきちんとして下さい」
神様「うひょ〜 見ろよ神使! 朝ご飯出来てる!」
少女「こんなもんで良いかしら?」
神使「申し訳ございません。 本来は居候である私達の仕事なのに・・・」
神様「達じゃない、お前の仕事だ腐れ犬ころ神使」
神使「・・・・・・」
73: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/20(土) 23:14:31 ID:kmOiIMDE
少女「気にしないで下さい、料理するの好きなんで」
神様「私も! でも、あんま料理作らせてもらえないからな〜」
神使「この前10人病院に送ってましたよね」
少女「・・・・・・」
神様「それは私のせいじゃない!」
神使「本当ですか?」
神様「牡蠣だろ? 悪いのは牡蠣だろ? 私じゃないだろ?」
神使「神様が毒を盛っているのを見たとか色々と噂が立ってますよ?」
神様「なんだよそれ! めっちゃ犯罪じゃねーかよ!」
神使「しかも、それを見てほくそ笑んでたとか」
神様「私は悪魔かよ! いい加減にせーや」ムキー
74: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/20(土) 23:15:52 ID:kmOiIMDE
神使「はいはい、分かりましたから落ち着いて下さい」
神様「神宮に帰ったら言いふらした犯人絶対見つけてやる・・・」グヌヌ
少女「・・・さめちゃうし、食べよ?」
神使「そうですね、すいません」
神様「そうだな、食べるか」
一同「いただきます」
神様「うまい!」パク パク
少女「ありがとう」
75: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/20(土) 23:17:20 ID:kmOiIMDE
神使「少女さん、宮司さんがご入院されている病院というのは近いのですか?」
少女「バスで駅まで行って、そこから電車で30分くらいです」
神使「結構距離ありますね」
神様「都会?」モグモグ
少女「そこまで都会じゃないかな。 ここよりはずいぶん栄えているけど」
神使「そうだ、銀行に行きたいのですがここら辺にありますでしょうか?」
少女「ATMであれば駅前にあります」
神使「駅前ですか」
少女「日曜日も空いているんで病院に行く時に寄った方が良いと思います」
神使「そうですね。 お家賃の方はそれまでお待ち頂いてもよろしいですか?」
少女「気にしないで下さい」
76: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/20(土) 23:18:45 ID:kmOiIMDE
神様「私も少しお金下ろそっかな〜」
神使「こっちへ来る前に通帳記帳して600円しか入ってなかったじゃないですか」
神様「・・・・・・」
神使「今日は少女さん学校ですよね?」
少女「はい。 18時頃には帰ります」
神様「留守は任せろ! ゲーム機ってある?」
少女「ごめん、ないかな」
神様「遊ぶ所って・・・」
少女「ない」
神様「ですよね〜 はい! 寝てます!」
77: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/20(土) 23:20:11 ID:kmOiIMDE
神使「神様は他にやることないんですか?」
神様「巫女の仕事なら出来るぞ? お守りでも売るか!」
神使「なんですか、それ・・・ せめてお掃除とかっていう発想はないんですか?」
少女「あっ、バス来るまであと15分しかない。 急がなきゃ」
神様「じゃぁ、もう一杯だけご飯を」
少女「もう食べたの? 早いね・・・」
神様「神様なもので///」テレッ
神使「・・・・・・」
神様「・・・・・・」ゲシッ
神使「ちょ、何ですか? 何も言ってなじゃないですか」
81: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/21(日) 21:50:08 ID:/ejTu7VM
――― 数日後・日曜日
神使「さてと、神様? そろそろ出ますけど準備良いですか?」
神様「おっけ〜」
神使「いや、ジャージはダメです」
神様「やっぱり?」
ゴソゴソ
神使「この服でどうです?」
神様「おっ、いいね〜 かわゆい」
神使「あれ? こんな服ありましたっけ?」
神様「A子ちゃんからもらったお下がり〜」
神使「立場が逆じゃないですか? 明らかにA子ちゃんの方が年下ですよね?」
神様「・・・・・・」ゲシッ
82: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/21(日) 21:51:24 ID:/ejTu7VM
神使「お待たせしました」
少女「じゃぁ、いきましょうか」
テク テク
神様「しかし、何もないね〜」
神使「神様? 失礼ですよ」
少女「でも、本当のことだし」ピタッ
神様・神使「?」
83: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/21(日) 21:52:50 ID:/ejTu7VM
神様「どったの? バス停ってもっと先でしょ?」
少女「あっ、休日だからバス予約制でココで乗せてくれるの」
神様「まじで! 家の前まで来てくれんの?」
プップッー
神使「本当だ、来ましたね」
神様「でもバス? ワゴンだよねあれ」
84: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/21(日) 21:54:34 ID:/ejTu7VM
ガラガラ
運転手「駅で良いの? 少女ちゃん」
少女「はい、おじいちゃんのお見舞いで」
運転手「そちらさんも?」
少女「はい、祖父の・・・ お知り合いの方達です」
神様「神様です」ドヤッ
運転手「・・・・・・」
神使「すいません。 さっ、面白くない冗談言っていないで早く乗って下さい」
神様「はぁ〜っ??」
運転手「他に予約無いから駅までノンストップで行くよ?」
少女「ありがとうございます」
ブーン
85: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/21(日) 21:55:42 ID:/ejTu7VM
――― 駅前
神様「気持ちわる〜」
神使「中々豪快な運転でしたね」
少女「大丈夫?」
神様「大丈夫。 神使、コーラ買ってきて」
神使「お茶とかの方が良いんじゃないんですか?」
神様「どうせ買うなら、甘くて炭酸入っている方が得した感じじゃね?」
神使「・・・お茶買ってきます」
少女「あっ、ATMはそこの角にあります」
神使「電車の時間は大丈夫ですか?」
少女「まだ大丈夫です」
神使「では行って参ります。 神様? 大人しくしていて下さいよ」タッタッ
神様「だから、私は子供じゃないっつてんだろーが」
86: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/21(日) 21:57:11 ID:/ejTu7VM
少女「神使さんいい人ですね」
神様「騙されちゃダメ、あれは腐れ犬ころだからね? 悪の使いだから。 邪犬だから」
少女「そうは見えないんだけど・・・」
神様「それより、おじいさまの具合はどうなの?」
少女「あんまり良くないかも」
神様「そっか」
少女「うん・・・」
神様「すまないな。 わざわざ神宮まで来てお参りしてもらったのに・・・」
少女「元々気休め程度だったし」
神様「役立たずでごめん・・・」
少女「・・・・・・」
87: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/21(日) 21:59:34 ID:/ejTu7VM
タッ タッ タッ
神使「お待たせいたしました。 はい神様お茶です」
神様「ありがとう」
神使「!? どうしたんです? そんなに体調悪いんですか?」
神様「は?」
神使「神様が素直にお礼を言うなんて・・・」
神様「うっさい、犬ころ!」
神使「? 少女さんもお茶どうぞ」
少女「ありがとうございます」
88: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/21(日) 22:00:39 ID:/ejTu7VM
神使「それと、これ家賃ですのでお納め下さい」スッ
少女「でもこんなに・・・」
神様「気にする必要ナッシング。 正当なお金だ」
少女「・・・・・・」
神様「受け取ってもらわないとこっちが困る」
少女「・・・じゃぁ、お預かりします」
神使「では駅に行きましょうか」
少女「はい」
89: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/21(日) 22:01:51 ID:/ejTu7VM
――― 電車内
ガタンゴトン
神様「Zzz・・・」カックン カックン
少女「なんか、全然神様って感じしませんね」
神使「お恥ずかしい限りです」
少女「でも、本物なんですよね?」
神使「神力がゼロで姿も見えてますけど、間違いなく神籍を有した神様ですね」
少女「なんだか不思議」
神使「私も思います」
90: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/21(日) 22:03:43 ID:/ejTu7VM
少女「神使さんもそう思ってるんですか?」
神使「私は神宮に3年前に赴任したのですが・・・ 初めてお目にかかったときは、びっくりしました」
少女「?」
神使「巫女の格好でお守りを売っていたんですから。 しかも他の巫女さんと一緒になって」
少女「他の神様はしないんですか?」
神使「ありえませんね。 人や神使と普通に会話をする神なんてこの方くらいかと」
少女「へー、意外です」
91: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/21(日) 22:04:50 ID:/ejTu7VM
神様「Zzz・・・」コテッ
少女「あっ」
神使「神様? 少女さんに寄りかかっちゃダメですよ?」ユサユサ
神様「んぁっ・・・ ごめん」ボー
少女「気にしないで」
神様「ん〜 あとどのくらい?」
少女「次の駅かな」
神様「そう。 ふあぁ〜〜」ノビー
神使「神様? 人前でそんな大あくびなんて、はしたないですよ?」
神様「一々うるさいな〜 少女も何か言ってやってくれ」
少女「私も神使さんと同じ意見かな」
神様「・・・・・・」
93: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/23(火) 01:28:53 ID:GQpgFhWg
―――うめうめ病院
神様「大きな病院だな〜」
少女「ここら辺では一番大きいかな」
神様「おっ、看護師さんだ。 ナース服かわゆいな〜」
神使「神様? あんまり恥ずかしいことはしないで下さいね」
神様「わかってるよ。 なんだよその言い方」
神使「そこの売店でお見舞いの果物でも買っていきましょう」
少女「あっ、気になさらないで下さい」
神様「私はあの大きい網々のメロンが良いな」
神使「神様が食べるものじゃないんですけど」
94: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/23(火) 01:29:49 ID:GQpgFhWg
スタスタ
少女「この部屋です」
神様「あ〜 念のため私達が神と神使って言うことは秘密にしておこう」
神使「そうですね」
少女「わかりました」
ガラガラ
少女「おじいちゃん? 起きてる?」
宮司「少女ちゃんか?」
少女「うん、どう? 体の具合は」
宮司「あ〜、天気が良い分いくらかマシだな。 ん? そちらの方は?」
95: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/23(火) 01:31:00 ID:GQpgFhWg
神様「神社の方から来ました」
神使「なんですか、その胡散臭い言い方は・・・」
少女「・・・・・・」
神使「すいません。 神宮から使いで参りました」
宮司「神宮? これはわざわざ」ヨイショ
神使「あっ、そのままで」
宮司「可愛らしいお嬢ちゃんも神宮の方ですか?」
神使「え〜と・・・ うちの巫女です」
神様「可愛いだなんて///」クネクネ
96: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/23(火) 01:32:06 ID:GQpgFhWg
神使「この度は大変でしたね」
宮司「大切な社を申し訳けない」
神様「社のことなど気にする必要は無いぞ? 神宮の方でなんとかする」
神使「そんな上から目線なしゃべり方したらバレちゃうじゃないですか」ボソッ
神様「うっ・・・」
少女「この果物お二人からもらったんで台所で切ってくるね」スタスタ
97: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/23(火) 01:33:33 ID:GQpgFhWg
宮司「お嬢さんの方は、もしかして神宮の神様ですかな?」
神様「あっ、バレた?」
宮司「やはりそうですか。 50年ほど前、神宮で5年間奉職していましたので」
神使「そうなんですか!?」
神様「もしかして、私の事知ってたりする?」
宮司「私は事務方でしたので、でも何度かお見かけしました」
神使「神様って、そんなに前から巫女のバイトしてたんですか?」
宮司「巫女? とんでもない! 大変立派な神様でしたよ?」
神使「え?」
神様「うわー! 昔の話はダメ! 絶対!」ゲシッ
神使「痛っ! え? なんで私蹴られたんですか??」
98: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/23(火) 01:35:04 ID:GQpgFhWg
宮司「こんな老いぼれのためにわざわざ・・・ お忙しいのに申し訳ございません」
神使「お気になさらず」
神様「そうそう、全然忙しくないし。 あっ、こいつは犬ころ神使」
神使「申し遅れました。 私、神様の使いで狛犬の神使と申します」
宮司「おや、神使さんまで来て頂けるなんて。 ありがとうございます」
神様「あまり体調がすぐれないようだな」
宮司「正直・・・ 入院前はピンピンしていたのですが。 やはり年ですので一度体を壊すと・・・」
神使「そんなことおっしゃらずに」
99: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/23(火) 01:36:19 ID:GQpgFhWg
宮司「神様と神使様に会えたんですから、いつお迎えが来ても思い残すことありません」
神様「私達なんかに会っても冥土の土産にもならないぞ? そこら辺歩ってるし」
神使「そうですよ、少女さんだってまだ若いんですから」
宮司「ありがとうございます」
神様「すまないな〜 にょろにょろ神社は100年以上神の立ち寄りがなかったそうだな」
神使「神宮からの達しで立ち寄りを行うために来たのですが・・・」
宮司「そうだったのですか」
神様「もう少し早く来ていればなぁ」
宮司「いいえ。 跡取りもいませんし・・・ きっとこうなる定めだったのでしょう」
神使「少女さんはお継ぎにならないのですか?」
宮司「あの子には、こんな田舎で一生を終えて欲しくは無いのです」
神様「・・・・・・」
100: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/23(火) 01:37:32 ID:GQpgFhWg
ガラガラ
少女「おじいちゃん、果物切ってきた」
神様「うまそ〜! メロン一切れもらって良い?」
宮司「どうぞ、どうぞ」
神使「神様? さすがにそれはどうなんですか?」
神様「だから遠慮して一切れって言ったじゃん」
宮司「神様と一緒に食べるだなんて、なんだか不思議ですな」
少女「あれ? バレてる?」
神使「はい、バレた原因は神様です」
神様「肝心な部分を端折って話すなよ。 あむっ」モグモグ
102: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/24(水) 00:12:47 ID:bo0GfM2I
――― 病院帰り道
テクテク
神使「宮司さんお元気そうでよかったですね」
神様「お前の目は節穴だな」
神使「え?」
神様「かなり無理してたぞ?」
神使「すいません、気がつきませんでした」
少女「・・・・・・」ギュッ
神様「・・・・・・」チラッ
神使「? あっ、それ神宮のお守りですね」
少女「え? ・・・はい」
神様「私が売ったやつ〜」
103: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/24(水) 00:15:26 ID:bo0GfM2I
神使「神様が直々にお授けされたお守りですから御利益満点ですね」
神様「・・・・・・」ゲシッ
神使「痛っ」
神様「空気読めよ神使」
神使「すいません・・・」
神様「謝るくらいなら私と少女にステーキご馳走しろ」
神使「またですか?」
神様「お店でステーキが食べたいんだよ!」
104: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/24(水) 00:16:09 ID:bo0GfM2I
神使「はぁ・・・ 少女さん、お昼はステーキでも良いですか?」
少女「私はなんでも・・・」
神様「犬ころの奢りだ。 国産黒毛和牛のサーロイン400gとか注文しような」
神使「どんな胃袋してるんですか・・・」
神様「神様なもので///」ゲシッ
神使「痛っ!」
105: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/24(水) 00:17:52 ID:bo0GfM2I
―――数日後
ジリリリ ジリリリ
少女「はい、もしもし・・・ えっ・・・」
神使「?」
少女「そんな・・・」
106: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/24(水) 00:20:02 ID:bo0GfM2I
神様「燃えろっ! いい女〜♪ 燃えろっ! ナッツコ〜〜♪」テクテク
神様「はぁ・・・ スーパーまで往復1時間って拷問だろ」テクテク
神様「ただいま〜」ガラガラ
スタスタ
神様「みんなが大好きなかわゆい神様がお帰りですよっと」ガチャ
バタンッ!
神様「ぐへっ!」ビタン
少女「はっ、はっ、はっ」ダッ ダッ ダッ
107: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/24(水) 00:21:32 ID:bo0GfM2I
神使「少女さん!!」
神様「痛い・・・」
神使「神様! 大変です!」
神様「ほんとだよ・・・ 痛つつ」
神使「宮司さんの容体が!」
神様「!!」
108: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/24(水) 00:22:35 ID:bo0GfM2I
神使「先ほど病院から電話があって宮司さんが危篤状態になったと」
神様「・・・お守りがないな」
神使「お守り?」
神様「少女の鞄に着いていたお守りだ」
神使「そういえば飛び出す前に鞄をゴソゴソしてました」
神様「・・・・・・」
神使「私達も向かいますか?」
神様「ここで待とう」
神使「・・・分かりました」
109: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/24(水) 00:25:21 ID:bo0GfM2I
―――翌日
ガラガラ
神使「少女さん!?」
神様「」
タッ タッ タッ
少女「・・・・・・」
神使「少女さん! 宮司さんの御容体は?」
110: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/24(水) 00:26:59 ID:bo0GfM2I
少女「意識・・・ 不明です・・・」ギュッ
神様「・・・・・・」
神使「取りあえず家の中へ」
神様「少女・・・ その・・・」
少女「何が・・・」
111: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/24(水) 00:28:10 ID:bo0GfM2I
少女「何が神様よ! こんなお守り効きもしないじゃない!」バンッ
神様「・・・・・・」
少女「神社は取り壊されて、おじいちゃんは意識不明に・・・ なんでよ・・・」
神様「・・・・・・」
神使「少女さん、落ち着いて下さ―――」
少女「出て行って!」
神使「・・・・・・」
少女「何も守ってくれないじゃない! 嘘・・・つき・・・」タッ タッ タッ
神使「少女さん!」
112: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/24(水) 00:29:00 ID:bo0GfM2I
神様「・・・・・・」
神使「神様・・・」
神様「行くぞ」
神使「どちらへ?」
神様「・・・出て行けと言われたんだ」スタスタ
神使「あっ、神様!」スタスタ
ガラガラ
少女「うっ・・・ うっ・・・」
113: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/24(水) 00:31:03 ID:bo0GfM2I
トテトテ
神様「・・・・・・」シュン
神使「神様?」
神様「・・・・・・」
神様「神使よ、この近辺で一番神力の強い神はどこにいる」
神使「うごうご山にある、うご山神社の主神様かと・・・」
神様「うごうごか・・・」
神使「神様? 何を考えているんです?」
神様「・・・・・・」
神使「それよりこれからどうするんですか?」
神様「疲れた、寝る」
神使「どこで寝るのですか?」
神様「・・・・・・」
114: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/24(水) 00:32:26 ID:bo0GfM2I
――― 深夜・駐車場
神使「神様?」
神様「・・・・・・」ポチポチ
神使「携帯なんかいじって何しているんです?」
神様「・・・・・・」ポチポチ
神使「今夜は冷えます。 寒ければ私を抱いていて下さい」
神様「・・・・・・」ポチポチ
神使「・・・おやすみなさい神様」
神様「・・・・・・」
モソモソ
神様「・・・・・・」ギュッ
神使「・・・・・・」
115: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/25(木) 01:33:54 ID:XzXb3j5E
――― 翌日
チュンチュン
神使「う〜ん・・・ 朝?」
ゴソゴソ
神使「神様?」
ゴソゴソ
神使「お出かけですか?」
神様「買い物」
神使「今準備しますので少しお待ち下さい」
神様「いや、私一人で行ってくる」
116: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/25(木) 01:35:02 ID:XzXb3j5E
神使「まさか、うご山神社じゃないでしょうね?」
神様「うごうごは・・・ 明日の朝に行く」
神使「ではどちらへ?」
神様「ん? あぁ〜」
神使「神様?」
神様「大丈夫だ。 お土産を見繕ってくるだけだ」
神使「ハァ・・・ お金は持っているんですか?」
神様「ぅ・・・」
117: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/25(木) 01:36:28 ID:XzXb3j5E
神使「何を買うのか知りませんが、これで足ります?」サッ
神様「うん」
神使「お戻りは」
神様「夕方には戻る。 私の正装を用意しておいてくれるか?」
神使「分かりました」
神様「じゃぁ行ってくる」テクテク
118: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/25(木) 01:38:22 ID:XzXb3j5E
―――翌日・うごうご山参道
神使「結構急な山道ですね」
神様「はっ はっ」ゼェ ゼェ
神使「神様、大丈夫ですか? 少し休憩をされては・・・」
神様「はっ はっ」ゼェ ゼェ
神使「・・・・・・」
119: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/25(木) 01:43:30 ID:XzXb3j5E
――― 山頂・うご山神社
神様「は〜 ふぅ〜」
神使「やっと頂上ですね」
スタスタ
神様「おい、そこの巫女よ」
巫女「?」
神様「私は神宮神籍、内宮付きの神様である」
巫女「神宮!?」
神様「ここの神に用があって参った。 主様に取り次ぎを願いたい」
巫女「はい、少々お待ち―――」
主神「だれかと思えばお前か、久しぶりだな」パッ
巫女「主様」
120: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/25(木) 01:45:07 ID:XzXb3j5E
神様「お願いがあって来た。 話を聞いて欲しい」
主様「隣は?」
神様「私の神使だ」
神使「はじめまして。 神様の使い、狛犬の神使と申します」
主様「巫女よ、下がっていろ」
巫女「はい」スタスタ
主様「その格好・・・ お前巫女にでもなったのか?」
神様「・・・・・・」イラッ
神使「神様は神階ランク外のため礼装がなく申し訳ございません」
神様「・・・・・・」ゲシッ
主様「ははははっ、これは愉快だな」
121: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/25(木) 01:48:28 ID:XzXb3j5E
神様「神階など不要だ」
主様「ほぅ、相変わらずだな。 さて、何用かな?」
神様「にょろにょろ神社の宮司を助けてもらいたい」
主様「ダメだ」
神様「・・・・・・」
主様「人の生死をいたずらに弄るのは規定違反なこと位お前も知っているであろうが」
神様「そこを理解した上でお願いしている」
主様「お前のその発言自体が神としては重罪だぞ?」
神様「承知している」
主様「はぁ〜」
神様「お願いします!」
主様「頭を下げてもダメなものはダメだ」
神使「神様・・・ さすがにそのお願いは無茶すぎます・・・」
122: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/25(木) 01:50:11 ID:XzXb3j5E
神様「・・・・・・」ピラピラ
主様「? なんだその紙切れは」
神様「聖騎魔II 黒ミサコンサート」ボソッ
主神「」ピクッ
神様「全席死刑ツアー アリーナ席、前列」ニヤッ
主様「」ピクッ
123: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/25(木) 01:51:32 ID:XzXb3j5E
神様「主様、もう一度お願いします。 宮司をお助け下さい!」ピラピラ
主様「ケーブルカーを使わずよくここまで歩いてきた。 大変だったであろう」
神様「主様へ謁見するのにそのような失礼は出来ません!」ピラピラ
主様「よかろう、褒美だ。 その願い聞き入れよう」
神様「ありがとうございます!」ピラピラ
神使「・・・・・・」
神様「それと主様、もう一つご相談が」
主様「なんだ、まだあるのか?」
神様「デモン閣下ディナーショー S席チケット」ピラピラ
主様「なんだとっ!?」クワッ!
主様「失礼。 お前との仲だ、何でも言うが良い」
神様「ありがとうございます!」ピラピラ
神使「・・・・・・」
124: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/25(木) 01:52:59 ID:XzXb3j5E
ゴウン ゴウン
神使「帰りはケーブルカーなんですね」
神様「もうあいつに用はないし〜」
神使「賄賂だなんて犯罪ですよ?」
神様「何のこと言ってんの?」
神使「コンサートチケットと交換で宮司を助けるだなんて」
神様「は? あれは歩って山頂まで行った褒美だぞ?」
神使「バレたらヤバいですよ?」
神様「バレねーよ、ビビってんじゃねーよ犬ころ」
神使「神様?」
神様「・・・・・・」
125: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/25(木) 01:55:33 ID:XzXb3j5E
神様「なぁ、神使」
神使「なんです?」
神様「神があまり人と接触を持たない理由って知っているか?」
神使「え?」
神様「どの神も若い頃は積極的に人と関わりを持つんだよ。 人が嫌いな神なんかいない」
神使「・・・・・・」
神様「でも・・・ 神のくせに身近な一人の願いすらまともに叶えられない」
神使「・・・・・・」
神様「何回も、何百回も、何千回も・・・ その繰り返しを味わうんだ。 私達は長生きだからな」
神様「そして、いつしか距離を置くようになる。 いや、遠くから見守る存在になると言った方が良いか」
神使「神様・・・」
126: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/25(木) 01:57:03 ID:XzXb3j5E
神様「私はそれでもいいと思っている。 間違っていないしな」
神様「でも・・・ 私は・・・」
神様「今、私の手の届く範囲で神として手を差し伸べなければならない者がいる」
神様「だから私はその者に全力で手を差し伸べる。 力がない分どんな手を使ってでもな」
神様「それが私のやるべき事であり、存在できるたった一つの理由だ」
神使「神様・・・」
神様「だから、神使よ」
神使「はい」
127: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/25(木) 01:58:13 ID:XzXb3j5E
神様「下に降りたら売店で、いか焼きとりんご飴を奢ってくれ」フッ
神使「・・・・・・」
神使「シリアスは最後まで続けないと寒いですよ?」
神様「・・・・・・///」
129: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/26(金) 03:32:25 ID:JgXwXzCI
―――翌日・病院
少女「おじいちゃん・・・」
トントン
少女「・・・はい」
ガラガラ
?「にょろにょろ神社の宮司はここで良いのか?」
少女「そうですが、祖父のお知り合いの方ですか?」
?「あ〜 何というか・・・ 神社の方から来た」
130: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/26(金) 03:33:43 ID:JgXwXzCI
少女「・・・・・・もしかして神様のお知り合いの方ですか?」
?「なんだ、あいつを知っているのか?」
少女「・・・・・・」コクッ
主神「じゃぁ話は早い。 うごうご神社の主神だ」
少女「うごうご?」
主神「ちょっと入らせてもらうぞ?」スタスタ
少女「あの・・・」
主神「なるほどな。 さてと、少女よ少し下がっていてくれ」
少女「?」
主神「このじいさんをこれから助ける」
少女「えっ!?」
131: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/26(金) 03:34:36 ID:JgXwXzCI
主神「では、いくぞ」
ポワッ ポワッ ポワッ
主神「久しぶりだから腕が鈍っていないと良いが」
ポワッ ポワッ ポワッ
主神「まぁこれで大丈夫だろう。 じゃぁワシは帰るぞ」スタスタ
少女「あの!」
主神「なんだ?」
少女「一体何を?」
主神「その者の生命力を高めた。 時期に目覚めるだろう」
少女「えっ?」
132: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/26(金) 03:35:55 ID:JgXwXzCI
主神「腐れ縁のバカ神から頼まれたのでな」
少女「神様のことですか?」
主神「昨日の朝にワシの所に来てな。 お前のじいさんを助けろと」
少女「神様が・・・」
主神「礼なら私でなくあのバカに言え。 にょろにょろ神社跡の駐車場でしょぼくれているぞ」
少女「なんで神様がそんなことを・・・」
主神「神に願い事をしておいて変なヤツじゃな」
少女「でも、私・・・ 神様に酷いことを」
主神「飯でも作ってご馳走してやれ。 あいつは大抵それで何とかなる」
少女「・・・・・・」
133: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/26(金) 03:37:44 ID:JgXwXzCI
主神「それと、そのじいさんの目が覚めたら、うご山神社の宮司にするから言っといてくれ」
少女「?」
主神「じいさんの命を助ける。 じいさんの再就職先を斡旋する。 そう約束した」
少女「そんなことまで・・・ 神様が・・・」グスッ
主神「あのバカの前でそんな暗い顔や涙なんか見せるなよ? あいつはそういうのが一番苦手だ」
少女「・・・・・・」コクッ
主神「だから、あいつの前では明るく笑っていてやってくれ・・・ って何言ってんだワシは」ボリボリ
主神「じゃぁな。 あいつとの縁は切るなよ」
少女「ありがとうございます」フカブカ
主神「だから礼はあのバカに言えって。 じゃぁ・・・ そうだな、また会おう」ガラガラ
134: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/26(金) 03:38:36 ID:JgXwXzCI
―――駐車場
神様「お前さぁ〜 コンニャク以外の物を買ってこいよ!」ゲシッ
神使「付近にコンニャク屋さんしかお店がないんですから我慢して下さい」
少女「神様・・・」
神使「少女さん!」
神様「ん? 少女? って!」
少女「・・・・・・」
135: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/26(金) 03:39:49 ID:JgXwXzCI
神様「あっ、ごめん! すぐこの町から出て行くから」
少女「あの・・・」
神様「分かった! 今すぐ片付ける! ほら神使ブルーシートどかせよ!!」ゲシッ
神使「痛っ」
少女「違う!!」
神様・神使「!?」
少女「違うの・・・ その・・・」
神様「?」
136: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/26(金) 03:41:16 ID:JgXwXzCI
少女「・・・ありがとうございます! それとごめんなさい!」
神様「え? なに? どしたの?」
少女「さっき、うご山神社の主神さまに・・・」
神様「うごうご? アイツに会ったの?」
少女「今日の朝に病室へ来て・・・」
神様「あいつが人前に現れるなんて珍しいな」
神使「そうなんですか?」
神様「まぁ、どうせアイツのことだから私の悪口でもほざいてたんでしょ」
少女「そんなことない」フルフル
神様「うごうごには、聖騎魔IIのチケット渡しに行っただけだって」
137: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/26(金) 03:42:40 ID:JgXwXzCI
少女「私・・・ 神様に失礼なことを言って・・・ どうしよう・・・」
神様「本当のことだし、気にしなくても大丈夫よん」
少女「おじいちゃん、来週には退院できるって」
神様「そう、よかったね」ニコッ
少女「おじいちゃんの再就職先も神様が斡旋してくれたって」
神様「あ〜 うご山神社は神主不在で派遣の巫女しかいなかったからね〜」
少女「ありがとうございます、神様」
神様「いや、私は何もしてないんだけど・・・」
少女「・・・・・・」
神様「少女?」
138: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/26(金) 03:43:30 ID:JgXwXzCI
少女「その・・・ 料理作ったんだけど食べに来て・・・ もらえないでしょうか」
神様「うそ! いいの?」
少女「はい、ぜひ来て下さい」
神様「行く行く! コンニャク飽きちゃってさ〜」
神使「ダメですよ神様? そんな失礼なことを言っちゃ」
神様「うるさいよ腐れ犬ころ」
少女「本当に・・・ ありがとうございます」
139: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/26(金) 03:45:09 ID:JgXwXzCI
神様「ねぇ、敬語はやめて? 友達として接して欲しいな」ニコッ
少女「・・・ ありがとう」グスッ
神様「泣くより笑っていた方が良いと思うよ? 私はそっちの方が嬉しい」
少女「そうだね」
神様「はい」スッ
少女「?」
神様「携帯。 ラインやってる? ふるふるしよ?」
少女「うん」
神様「やった! 二人目だ!」フルフル フルフル
少女「神様? ガラケーじゃ、ふるふる出来ないと思う・・・」
神様「・・・・・・」フル
140: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/26(金) 03:47:13 ID:JgXwXzCI
―――少女宅
神様「いや〜 ご馳走様!」
少女「お粗末様でした」
神使「やはり温かいご飯は美味しいですね」
少女「お茶です」コトッ
神使「ありがとうございます」
少女「神様はコーラで良い?」
神様「分かってるね〜」
少女「はい」シュワシュワー
神様「ゴクゴク あ〜 美味しい〜」ゲップ
神使「神様?」
神様「分かってるよ、下品なんだろ?」
141: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/26(金) 03:48:04 ID:JgXwXzCI
神使「それもそうなのですが・・・ 明後日ここを離れることになりました」
少女・神様「え?」
神使「先ほど神宮から連絡がありまして」
神様「ずいぶんと急だな。 っていうか私にはそういう連絡は来ないの?」
神使「・・・・・・」
少女「まだこっちに来てそんなに経っていないですよね?」
神使「今後のこともありますし、おじいさまが退院するまでは残りたかったんですけどね」
神様「後は神宮の方で何とかすんでしょ。 私達よりは役に立つはずだし」
少女「神様・・・」
142: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/26(金) 03:50:15 ID:JgXwXzCI
神様「少女よ、私との別れは辛いであろう・・・ しかし私は少女の今後を影―――」
少女「私、高校卒業したらおじいちゃんの後を継ぐ!」
神様「はい?」
少女「神主さんってどうやったらなれるの?」
神様「・・・・・・」
少女「やっぱり修行とかしないとダメなのかな」
神使「私もあまり詳しくはないのですが、専門の養成機関や大学などがあるようです」
神様「え? そうなの?」
神使「神様、知らないんですか?」
神様「だって神宮の玄さんなんか草野球やっているときに宮司に誘われたって言ってたぞ?」
神使「それは・・・」
143: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/26(金) 03:52:02 ID:JgXwXzCI
少女「野球できないとダメ?」
神様「いや、2年前入ったB夫は神宮に来る前はハッカーしてたって言っていた」
神使「それ大丈夫なんですか・・・」
少女「一芸なの?」
神使「違います」
神使「少女さんはおじいさまが神職ですし、推薦状があれば養成所に入れると思います」
少女「そうなんですか?」
神使「神様が推薦状を付けてあげれば今からでも間に合うんじゃないですか?」
神様「え〜、私の推薦状なんか意味ないだろ」
神使「一応は神様ですし・・・ その位は・・・」
神様「いや、絶対無いと思う。 逆効果になる可能性の方が高い」
神使「あ〜 それもそうですね」
神様「そこは否定しろよ」ゲシッ
144: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/26(金) 03:52:41 ID:JgXwXzCI
神使「でも少女さんは高校卒業されたらどうするつもりでいたのですか?」
少女「おじいちゃんの神社のお手伝いをと」
神様「あ〜 でも、もう無いよね・・・」
少女「うん」
神使「でも神職だなんて、おじいさまがなんて言うか」
神様「そこは関係ないんじゃない? 少女の人生だし」
神使「そうですね」
145: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/26(金) 03:54:07 ID:JgXwXzCI
少女「それに、この前神様が私の夢に出てきたんだよ」
神様「私?」
少女「うん、凄く神様オーラ全快でちょっとイメージと違ったけど」
神様「うそ、私かわゆかった?」
少女「後ろの光がまぶしくてあんまりよく分からなかったけど。 でもお日様みたいに温かかった」
神様「・・・・・・」
少女「で、神様が私に“立派な<かみしょく>になるがよい”って」
神使「かみしょく? しんしょく(神職)じゃないんですか?」
少女「そうなのかな」
神様「・・・・・・」
146: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/26(金) 03:54:54 ID:JgXwXzCI
神使「神様って夢枕に立てるんですか?」
神様「えっ? 私は・・・ほら、神力ないから夢に入れないんだけどさぁ・・・」
神使「そうですよね。 そんな神様っぽいこと出来ませんよね」
神様「・・・・・・」ゲシッ
神使「でも、少女さんが神職になる頃はにょろにょろ神社も復興されているでしょうしね」
少女「でも、復興には凄くお金がかかるみたいで」
神様「神宮が復興費用を出す。 再建までには何年かかかると思うけど」
少女「えっ?」
147: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/26(金) 03:55:36 ID:JgXwXzCI
神使「話はついています。 近いうちに神宮から復興に関する連絡があると思いますので」
少女「そんなことまで・・・」
神様「仕事だから、し・ご・と! 気にする必要ナッシング」
神様「でも、神主だなんて・・・ 本気?」
少女「うん、絶対揺るがない」
神様「・・・まぁ、好きにしてちょ」
148: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/26(金) 03:56:51 ID:JgXwXzCI
だからお願いだって!
良いじゃんよその位さぁ〜
神使(ん? 神様? こんな遅くに携帯で誰と・・・)コソッ
いや、1人くらい入れてあげてよ。
すごく優秀な子だってば〜
頼むって お前が神勅!とか言えば良いだけなんだから
なんでも言うこと聞くからさぁ〜
本当? いや〜ありがとう!
うん、じゃぁよろしくね。 バイビー
神使「・・・・・・」フフッ
149: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/26(金) 03:57:44 ID:JgXwXzCI
――― 翌日
神様「あの〜 少女?」
少女「なに?」
神様「本当に神主になるの?」
少女「うん、今年はもう間に合わないけど来年行こうかと思って」
神様「その〜 なんか私の知ってる神社が神主候補を募集しているようで・・・ いく?」
少女「えっ? 本当に!?」
神様「少し遠いしここを離れないといけなくなるだろうから無理にとは言わなけどさ」
神使「へぇ〜、珍しいですね。 どこの神社なんですか?」
神様「・・・神宮」
150: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/26(金) 03:58:42 ID:JgXwXzCI
少女「神宮って、もしかして・・・」
神使「神社の頂点みたいな所ですね。 普通じゃ入れませんよ?」
神様「たまたま空いていたみたいで・・・ ちょうど相談を受けて・・・」
神使「へぇ〜 そうなんですか。 そんな採用枠初めて聞きました」
神様「お前さぁ、なんか言いたいことあるの?」
神使「いいえ、特にありません」ニコッ
神様「・・・・・・」イラッ
151: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/26(金) 03:59:45 ID:JgXwXzCI
少女「ありがとう・・・ でも私ばっかり神様にこんな沢山お願いを叶えてもらって悪い気が・・・」
神様「は? 私は仕事しただけだし、これで給料もらってるから気にする必要は無いと思うけど」
少女「でも・・・ これはお返しします」スッ
神様「・・・・・・」
神使「これは家賃としてお支払いしたお金ですか?」
少女「はい、これはお返しさせて下さい」
神使「気になさらないで下さい。 一度お渡した物ですし」
少女「でも」
152: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/26(金) 04:00:33 ID:JgXwXzCI
神様「おじいさんが退院したら旅行にでも連れて行ってあげれば〜」
少女「・・・・・・」
神様「残りは入院費にでもまわせば良いし」
少女「・・・・・・」
神様「気にするなって〜、それとも神様が渡した物をいらないと言って返すつもり?」
少女「ありがとう」
神様「神宮へ行くんだろ? 色々お金もかかる。 私からの選別と思ってくれ」ニコッ
神使「神様? それ全額私の給料ですけどね・・・」
153: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/26(金) 04:02:58 ID:JgXwXzCI
――― 夕方
神使「さてと、神様忘れ物はないですか?」
神様「うん」
神使「では、少女さん。 お世話になりました」
少女「また会えるかな」
神様「約束する。 絶対に会える」
少女「うん、楽しみにしてる」
154: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/26(金) 04:03:45 ID:JgXwXzCI
神様「そうだ少女、これ」スッ
少女「お守り・・・」
神様「私が作ったヤツだから御利益ないんだけど」
少女「これって神様が作ったやつだったの?」
神様「御利益なしは実証済みだけど、こんな物しか作れないし」
少女「ありがと・・・ すごい御利益あったよ。 一生大切にする」
神様「いや、そこまでする必要は無い」
神使「神様の神階が上がったら作り直してあげて下さい」
神様「うっせーよ、犬ころ」ゲシッ
少女「ふふっ」ニコッ
155: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/26(金) 04:05:26 ID:JgXwXzCI
神様「じゃぁ、暇なときラインちょうだいね〜」
少女「分かった」
神使「では少女さん、お元気で」
神様「ばいば〜い」
――――
―――
――
156: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/26(金) 04:06:57 ID:JgXwXzCI
ガタンガタン
神使「少女さん良い子でしたね」
神様「あれ? ほの字?」
神使「からかわないで下さい。 でも良い神職になれそうですね」
神様「あぁ、きっと・・・ 良い神様になるな」ボソッ
神使「何か言いました?」
神様「いいや、順番的にはお前が先だな」
神使「順番? 何のですか?」
神様「なんでもない」ニコッ
神使「?」
157: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/26(金) 04:08:22 ID:JgXwXzCI
神使「そうだ、神様機構から懲罰書が届いてますよ?」
神様「・・・・・・」
神使「当面、全国の神職不在神社の管理を命ずる だそうです」
神様「えっ?」
神使「それと人事院からも届いています」
神様「はっ?」
神使「半年間給料30%カットを命ずる だそうです」
神様「30%オフって何だよ! 手取りいくらになるんだよ!」
神使「6万切るでしょうね」
神様「無理、っていうか何でバレてんの?」
神使「さぁ?」
神様「お前、まさかチクったんじゃないだろうな?」
神使「私は何もしてませんってば」
神様「なんだよー! なんでだよ! 完璧な作戦だったのに〜!」ムキー
158: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/26(金) 04:09:18 ID:JgXwXzCI
神使「あとですね」
神様「なんだよぉ〜 まだあるのかよぉ〜」
神使「クレジットカードの明細に身に覚えのない項目があるんですけどね?」
神様「・・・・・・」
神使「ヤホーかんたん決済という項目で12万ほど」
神様「・・・・・・」
神使「身に覚えありますか? 神様」
神様「・・・・・・」
神使「最近何か落札されましたか? 例えばコンサートチケットとか」
神様「・・・・・・」
159: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/26(金) 04:10:41 ID:JgXwXzCI
神使「分かりました。 神様の給料から天引きしておきますね?」
神様「えっ?」
神使「来月まで給料ありませんよ?」
神様「狛犬さま〜 堪忍じでぐだざい・・・」
神使「あきらめて下さい」
神様「うぅ・・・」
160: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/26(金) 04:13:14 ID:JgXwXzCI
神使「と言う訳で、このまま次の勤務先に行きましょう」
神様「吉祥寺です?」
神使「まさか〜」
神様「下北沢です?」
神使「そんな訳ないでしょうが」
神様「どこです?」
神使「着いてからのお楽しみです」
神様「いやだー! おしゃれな街に行きたいよーーーーー!」
神様「神様だっ!」 神使「神力ゼロですが・・・」#1 ―END
163: 以下、名無しが深夜にお送りします 2016/02/26(金) 06:52:31 ID:/hBL8M36
乙!!!!
2話も期待してまっとるで
165: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/29(月) 01:16:20 ID:WvfqAQRo
〜前回のあらすじ〜
神様「私は神様! 神宮に籍を置くとっても立派でかわゆい神様だ!」
神使(訳)「神力ゼロの神様は、神宮でミスを連発し地方へ短期出向を命じられたのでした」
神様「私の神々しい力を待つ者達を救うべく、今日も旅を続ける」
神使(訳)「立ち寄り先で、問題解決のため別の神様へ賄賂を送ったことがバレて無期出向に」
神様「よし! 今日はお前の願い叶えてしんぜよう」
神使(訳)「問題を起こしにあなたの所へ行く可能性があります。 逃げて下さい」
166: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/29(月) 01:17:30 ID:WvfqAQRo
【#2】
プシュー
神使「神様、ホームに段差がありますから気をつけて降りて下さい」
神様「・・・・・・」
神使「いや〜 疲れましたね」
神様「おい、腐れ神使」
神使「?」
神様「なんだよここ」
神使「しかしか高原駅です」
神様「駅名を聞いたんじゃねぇよ」
167: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/29(月) 01:18:43 ID:WvfqAQRo
神使「いや〜 想像以上に凄いですね」
神様「木しかねぇじゃん、人いねぇじゃん、秘境じゃん!」
神使「この景色、ひのひの村なんか比べものになりませんね」ハハッ
神様「んがーー! なにコレ、嫌がらせなの? ねぇ、悪質な虐め?」
神使「さて、暗くなる前に行きますよ」
神様「マジかよ〜 勘弁してくれよ〜」
168: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/29(月) 01:19:28 ID:WvfqAQRo
テクテク
神様「なぁ、もうだいぶ歩いたけど民家ゼロなんだけどさぁ」
神使「そうですね」
神様「そうですね、じゃなくてさ〜 こんな所で何すんだよ」
神使「暗くなってきましたし、懐中電灯つけますか」ポチッ
神様「うわ〜 気味悪いな」
神使「あっ、お社が見えましたよ」
169: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/29(月) 01:20:25 ID:WvfqAQRo
神様・神使「・・・・・・」
神様「神使君、帰らない? コレ絶対ヤバいって」
神使「さすがにちょっと引きますね」
神様「間違いなく幽霊出るってコレ、帰ろ? 怒られても良いから帰ろ?」
神使「きっと怒られるだけじゃすまないですよ?」
神様「でもさぁ〜 こんなの無理だって」
神使「取りあえず入りましょう」
神様「嘘だろ〜」
170: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/29(月) 01:21:26 ID:WvfqAQRo
ギィー
神使「・・・・・・」
神様「あっ、無理無理。 床ねーじゃん」
神使「ご神体も見当たらないですね」
神様「よし! ご神体もないし帰ろう!」
神使「神宮に問い合わせてみます」スッ
神様「も〜 はやくしてちょ」
神使「・・・圏外ですね」
神様「だよね〜 人いないもん」
171: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/29(月) 01:23:00 ID:WvfqAQRo
神使「神様の神力で神宮に問い合わせできませんか?」
神様「喧嘩売ってるのか犬ころ」ゲシッ
神使「暗くなってきましたし、ここに泊まります?」
神様「はははっ、お前埋めるぞ?」ギロッ
神使「・・・・・・今日は戻って別の場所で宿に泊まりましょう」
神様「よっしゃ、1つ前の駅がしおしお温泉だったよな」
神使「ではそちらへ行きますか」
172: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/29(月) 01:24:10 ID:WvfqAQRo
テクテク
神使「今から行って泊まれますかね? もう19時まわってますし」
神様「・・・・・・」
神使「神様? どうしました?」
神様「つけられてる」ボソッ
神使「!? ・・・後ろですか?」ボソッ
神様「あぁ」
神使「気付きませんでした、申し訳ありません」
173: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/29(月) 01:25:20 ID:WvfqAQRo
神様「取りあえず駅まで向か―――!? 神使! 伏せろ!!」
神使「えっ?」サッ
ビュン
神様「神使! 大丈夫か!?」
神使「はい、間一髪です」
神様「当たらなかったか? ケガはないか?」
神使「え、えぇ。 大丈夫です。 これは・・・ 小石?」
神様「誰だ! 姿を見せろ!!」クルッ
174: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/29(月) 01:26:33 ID:WvfqAQRo
タッ タッ タッ
神使「逃がすか!」
神様「待て! 深追いするな」
神使「しかし・・・」
神様「暗すぎる、危険だ」
神使「分かりました」
神様「もう一本懐中電灯を」
神使「はい、どうぞ」
神様「お前は前を照らせ。 駅まで全速力で走るぞ」
神使「分かりました」
神様「ダーシュッ!」
タッ タッ タッ
175: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/29(月) 01:27:19 ID:WvfqAQRo
――― しかしか高原駅
タッ タッ タッ
神様「次の電車は何分だ」ハァ ハァ
神使「30分後です」
神様「電車が来るまで後ろを見張ってくれ、私は前を見張る」
神使「はい」
神様「懐中電灯を灯台のように振って周囲を照らし続けろ」
176: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/29(月) 01:28:19 ID:WvfqAQRo
神様「誰か隠れているみたいだな」
神使「えぇ、2人確認できます」
神様「一体何なんだ?」
神使「でも・・・ 襲ってくる気配はなさそうですね」
神様「大人しく立ち去れってことか?」
177: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/29(月) 01:29:48 ID:WvfqAQRo
ファーン ガタンガタン
神使「電車が来ました」
神様「早く〜! もっと早く〜!」
プシュー
神使「神様、足下気をつけて乗って下さい」
神様「はぁ〜、助かった〜」
ガタンガタン
次は しおしお温泉口です
神使「一体何者なんですかね?」
神様「こっちが聞きたいわ」
178: ◆8YCWQhLlF2 2016/02/29(月) 01:30:44 ID:WvfqAQRo
神使「どうしましょう、神宮に報告します?」
神様「う〜ん、宿に着いてから考えよう」
神使「分かりました。 それより神様ずいぶん慣れてましたね」
神様「あん?」
神使「いや、何かいつものだらしない神様とは別人のような対応でしたので」
神様「全然褒めてないよね? っていうかかなりナメた発言だよね?」
神使「いえ、そう言うつもりではないんですが・・・」
神様「昔は多かったんだよ、こういうの」
神使「そうなんですか?」
神様「あぁ・・・ 多かったんだ・・・」
181: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/01(火) 00:56:34 ID:wJKXwtFA
――― しおしお温泉旅館
神使「すいません。予約なしで突然来てしまいまして」
仲居「気にしないで下さいな。 シーズンオフですし、こっちが助かります」
神使「ありがとうございます」
仲居「時間も遅いですし、先にお食事の支度しちゃいますね」
神使「お願いします」
神様「じゃぁその間に」ヌギヌギ
182: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/01(火) 00:57:58 ID:wJKXwtFA
神使「ちょっと神様? 仲居さんがいるのに下着姿にならないで下さい」
仲居「あら、可愛らしい下着ですね」
神様「照れるじゃないか〜」クネクネ
神使「・・・・・・」
神様「お前も浴衣に着替えたら?」
神使「後ほど・・・」ハァ
神様「やっぱ和服の方が落ち着くな〜」シュルシュル
仲居「お若いのに珍しいですね。 帯の結びも綺麗ですし」
神様「いや〜ん 褒められた?」クネクネ クネクネ
神使「・・・・・・」
183: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/01(火) 00:58:53 ID:wJKXwtFA
神使「あの、ちょっとお伺いしても良いですか?」
仲居「なんですか?」
神使「先ほど、しかしか高原に行ってきたのですが住んでいる方とかいるんでしょうか」
仲居「誰かにお会いになりましたか?」
神様「変な集団に追いかけられた」
仲居「近づかない方が良いですよ? 宗教団体があるんです」
神使「宗教団体?」
仲居「えぇ、詳しくは知らないんですが他人を近づけたがらないんです」
神様「気持ちわる!」
仲居「本当ですよ」
神様「宗教団体ってのが胡散臭さ倍増だな」
神使「・・・自分だってそうじゃないですか」ボソッ
184: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/01(火) 00:59:48 ID:wJKXwtFA
仲居「一体何がしたいんだか」
神使「そうなんですか・・・ 神様どう思います? 」
神様「うわっ、これウマそうじゃん」
神使「・・・・・・」
仲居「しおしお牛のすき焼きです。 食べ終わりましたら廊下にでも出しておいて下さい」
神使「ありがとうございます」
仲居「ではごゆっくり」スタスタ
185: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/01(火) 01:00:42 ID:wJKXwtFA
神様「食べよう!」
神使「そうですね」
神様・神使「いただきます」
神様「うんま! うんまっ!」パク パク
神使「どうされますか?」
神様「どうって?」モグモグ
神使「あの神社ですよ」
神様「う〜ん・・・ ちょっとあの社のこと調べてくれる?」
神使「分かりました」
186: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/01(火) 01:02:05 ID:wJKXwtFA
神様「な〜んか、嫌な感じするな〜」パク パク
神使「嫌な感じですか?」
神様「う〜ん・・・ なんかあの神社、昔に一度来た記憶はあるんだけどな〜」
神使「本当ですか?」
神様「よく覚えてない」モグモグ
神使「どのくらい前なんです?」
神様「さ〜な〜 100年? 500年? いやもっと前だったかな」
神使「はい!?」
神様「だから良く覚えてない」
187: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/01(火) 01:03:34 ID:wJKXwtFA
神使「ちょっと待って下さい、神様ってお生まれはいつなんですか?」
神様「あれ? 聞いてない?」
神使「えぇ、神様に関する情報ってなんか詳しく教えてもらえなかったんです」
神様「ふ〜ん」パク パク
神使「教えて下さいよ」
神様「めんどい。 そのうち教えてあげる」モグモグ
神使「はあ・・・」
神様「それより、お前の肉と私のシイタケ交換しないか?」
神使「申し訳ございませんが、それは出来ません」
188: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/01(火) 01:05:08 ID:wJKXwtFA
――― 翌日
神使「神様? 朝ですよ」ユサユサ
神様「あと6時間・・・」
神使「何言ってるんですか。 起きて下さいっ」ユサユサ
神様「も〜 なんだよ・・・ まだ昼前じゃん」ヨイショ
神使「あの・・・ 神様? 浴衣はどうされたんですか?」
神様「浴衣?」
神使「下着姿ですよ?」
神様「ん? 本当だ。 あれ? どこいったんだ?」キョロキョロ
189: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/01(火) 01:06:17 ID:wJKXwtFA
神使「昨日の神社の件ですが神宮のデータベースを調べてみました」
神様「あ〜 しかしか神社?」
神使「はい。 200年ほど前から宮司と主神の連絡が途絶えているようですね」
神様「神も連絡取れないの?」
神使「はい」
神様「ふ〜ん、 逃げたか?」
神使「いえ、主神から神籍抹消依頼が出ているようで・・・」
神様「神籍抹消?」
190: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/01(火) 01:07:34 ID:wJKXwtFA
神使「はい、そこから先の連絡書類が書かれておらず・・・」
神様「それ以降は分からないと?」
神使「そうですね」
神様「神宮も結構雑な仕事してんのな」
神使「なので、神社自体は廃社にはなっていないようです」
神様「どうすっかな〜 明るいうちにもう一回だけ行ってみるか」
神使「それが良いと思います」
191: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/01(火) 01:09:29 ID:wJKXwtFA
神様「それよりさぁ神使君」
神使「何でしょうか」
神様「それ何?」
神使「? ノートパソコンのことですか?」
神様「なんで持ってんの?」
神使「神様も神宮から支給されてませんか?」
神様「私、ワープロだよ? オアシス。 10Kgもあるヤツ」
神使「物持ちが良いですね・・・」
神様「いや、そういう問題じゃないでしょ」
192: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/01(火) 01:11:58 ID:wJKXwtFA
神使「3年ごとに更新されてると思うんですが・・・」
神様「初耳。私の30年くらい経ってるけど?」
神使「・・・私が前に使っていたヤツでよければ差し上げますが」
神様「ソレくれ」
神使「これは・・・ ちょっと・・・」
神様「いいじゃんよ〜 私もちっちゃいパソコン欲しい〜」
神使「次のボーナスで買えば良いじゃないですか」
神様「ボーナス?」
神使「まさか神様・・・」
神様「・・・・・・」
神使「すいません」
194: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/02(水) 01:37:27 ID:XnVfOfiI
――― しかしか神社
神様「昨日は暗くてよく分からなかったけど、結構やばいなこの本殿・・・」
神使「よく崩れずに残ってますね」
神様「手分けして何か手がかりでも探してみるか」
神使「そうですね。 私は裏手に回ってみます」テクテク
神様「んじゃ、私は本殿に入りますかねっと」
ギィー
195: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/02(水) 01:38:50 ID:XnVfOfiI
神様「いや〜 やっぱキツいなこれ・・・ 」
ガサゴソ
神様「ん〜 やっぱりご神体ないな〜」
神様「でも掃除された形跡はあるなぁ」
神使「神様!」
神様「ん〜? なにかあった?」スタスタ
神使「見て下さい。 裏手に建物があります」
神様「うわ〜 仲居さんが言っていた宗教団体のやつじゃね?」
196: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/02(水) 01:40:54 ID:XnVfOfiI
神使「<おきつねこんこん教>って書いてありますね」
神様「なに!? おきつねこんこん教だと!?」
神使「知っておられるのですか?」
神様「引きつけるネーミングだ・・・ 入信したいかも」ゴクリ
神使「何を言ってるんですか・・・」
197: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/02(水) 01:42:39 ID:XnVfOfiI
神使「それよりもどうします?」
神様「お前ちょっと潜入してこい」
神使「・・・・・・」
神様「バレるなよ? 慎重にな」ポンポン
神使「・・・・・・」
神様「どうした?」
神使「すいません、何を言っておられるのですか?」
神様「どうも〜! って行っても中に入れてもらえる訳ないだろ?」
神使「そうでしょうね」
神様「そしたら潜入するしかないじゃん」
198: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/02(水) 01:44:23 ID:XnVfOfiI
神使「神様は?」
神様「私は神力がない故に協力が出来ないのだ」フッ
神使「神力関係ないですよ? 私も神じゃないので神力ありませんし」
神様「他宗教である私が行くとか喧嘩売りに行くようなもんだろ?」
神使「私も同じですが・・・」
神様「いいから行けよ! 捕まったら助けるからさ」
神使「本当ですか?」
神様「私がお前を置いて逃げるようなヤツに見えるのかよ。 これでも神だぞ?」
神使「絶対助けて下さいよ?」スタスタ
199: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/02(水) 01:45:05 ID:XnVfOfiI
神使「この壁結構高さありますね・・・」ンショ ンショ
信者「お前何やってんだ?」
神使「えっ!?」
信者「侵入者だ! みんな捕まえろ!」
神使「うわっ、放して下さい〜」ジタバタ
信者「あっちに連れの女もいるぞ!」
200: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/02(水) 01:46:03 ID:XnVfOfiI
神様「やべっ」ダッ ダッ ダッ
こら〜 逃げるな〜!!
神様「私関係ないです〜!! その人知らないです〜!!」
嘘つくなー! 待てー!
女が駅に向かって逃げたぞ!
神使「神様・・・ あなたって人は・・・」
201: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/02(水) 01:48:54 ID:XnVfOfiI
神様「ぎゃー! 助けて〜」ダッ ダッ ダッ
待てこらー!
仲間を置いて逃げるな−!
神様「駅だ! おっ、電車いるじゃんよ、ラッキ〜」ダッ ダッ ダッ
神様「電車待って〜 乗る! 乗るよ〜」
タッ タッ タッ
プシュー
神様「ふ〜 助かった〜」アセアセ
ガタンガタン
次は、たじたじ駅です
神様「あっぶね〜 神使は・・・ まぁ、うん」
202: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/02(水) 01:51:38 ID:XnVfOfiI
――― 2時間後
駅員「お客さん?」ユサユサ
神様「ふぁ」ポー
駅員「終点だよ? 降りて」
神様「んぁ、すいません」
トテトテ
神様「あれ? ここどこ?」キョロキョロ
203: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/02(水) 01:52:54 ID:XnVfOfiI
駅員「えーと、しかしか高原駅からなんで2360円です」
神様「2360円!? 高けー!」
駅員「だって20駅以上あるよ?」
神様「20駅!? しおしお温泉行きたかったんですけど」
駅員「え? 逆だよ? 戻る? 帰り分でもう2360円かかるけど」
神様「・・・・・・いえ、このまま降ります」
206: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/03(木) 01:29:28 ID:8GsPhRw2
―――あいあい駅前
神様「うわ〜 超寝過ごしたな」
テクテク
神様「おっ、サイセリアあるじゃん。 お腹すいたし入ろっかな〜」
神様「でも、電車賃払ったから金ないしな〜」ウロウロ
神様「ほうれん草のソテーだけなら食えるかな・・・」ウロウロ
?「か〜みちゃん」
神様「??」
207: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/03(木) 01:30:21 ID:8GsPhRw2
?「久しぶり〜」
神様「エキノコックス?」
?「狐神だコラ」ゲシッ
神様「あうっ」
狐神「あんたこんな所で何してんの?」
神様「お腹すいたからサイセリアに入りたいんだ」
208: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/03(木) 01:31:23 ID:8GsPhRw2
狐神「うちの神社素通りしてサイセリアに向かうとか舐めてんの?」
神様「お前の神社?」
狐神「となり」
神様「あ〜、神社あったんだ。 気付かなかった」
狐神「お前は、神社よりサイセリアの方が重要なのかよ・・・」
神様「いま金ある?」
狐神「たかりたいの?」
神様「金なくてさ、食わしてよ」
209: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/03(木) 01:32:14 ID:8GsPhRw2
――― サイセリア店内
店員「いらっしゃいませ」
狐神「2人です」
店員「こちらへどうぞ」
神様「よっこいしょ」ボフッ
神様「私はペペロンチーノとほうれん草のソテー、あとドリンクバー」
狐神「私はドリンクバーだけで」
店員「はい」
210: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/03(木) 01:33:21 ID:8GsPhRw2
狐神「で? こんなとこまで来て何用?」
神様「お前こそこんな所で何してんの? びっくりしたわ」
狐神「200年前から隣の神社の主神やってる」
神様「まじで?」
狐神「いや、配属辞令出したのアンタでしょうが」
神様「まじで!?」
211: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/03(木) 01:34:24 ID:8GsPhRw2
狐神「あんたの神使だった私を無理矢理 神籍 に入れて送り込んだ張本人だろうが」
神様「あ〜、そんなこともあったっけ。 1000年くらい前?」
狐神「だから200年前って言った」
神様「飲み物取ってくる」
狐神「聞けよ!」
神様「何飲む? ドクダミ茶?」
狐神「はぁ〜、いいよ私取ってくる」スタスタ
神様「私コーラね〜」
212: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/03(木) 01:35:18 ID:8GsPhRw2
狐神「はい、コーラ」コトッ
神様「サンキュー」チュウチュウ
狐神「で? 何しに来たの?」
神様「神宮の嫌がらせで、しかしか神社の立ち寄り」
狐神「しかしか神社・・・」
神様「そう」
狐神「ようやく神宮も重い腰を上げたんだ・・・ それで私の所に?」
神様「は? 電車乗り過ごしただけだけど? 何言ってんの? バカなの?」
狐神「・・・・・・」イラッ
213: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/03(木) 01:36:25 ID:8GsPhRw2
神様「ぷは〜 コーラおいしい」ゲップ
狐神「はしたないわね。 もう少し何とかなんないの?」
神様「お前は私の神使かっつーの」
狐神「元神使ですが?」
神様「私の神使って同じようなヤツばっか」ハァ
狐神「そういえば、あんたって今は神使いるの?」
神様「犬ころ一匹飼ってる」
狐神「狛犬か。 あんたの神使ってことは相当優秀なんでしょうね」
神様「私の元神使がそれ言うの? 自意識過剰なの? バカなの?」
狐神「・・・・・・」イラッ
214: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/03(木) 01:37:21 ID:8GsPhRw2
店員「お待たせしました」コトッ
神様「ん〜 おいしそ〜!」
狐神「んで、しかしか神社にはもう行ったの?」
神様「さっき行ってきた」モグモグ
狐神「どうだった?」
神様「犬ころが捕まったから逃げてきた」
狐神「・・・・・・え?」
神様「いや〜、裏手にあったおきつねこんこん教に侵入させたんだけどさ」
狐神「侵入?」
215: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/03(木) 01:38:17 ID:8GsPhRw2
神様「中に入る前に神使が捕まった」
狐神「まさか神使置いて逃げてきたの?」
神様「人聞きの悪い。 潜入捜査と行ってくれ」
狐神「潜入じゃないじゃん。 捕まってんじゃん」
神様「大丈夫だって」モグモグ
狐神「厄介だよ? しかしか神社は」
神様「なんだよ〜 やっぱ曰く付きかよ〜」
狐神「元凶はアンタでしょうに」
216: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/03(木) 01:40:14 ID:8GsPhRw2
神様「は? 私何もしてないよ? 何言ってんの? ボケでも始まったの?」
狐神「・・・・・・ あんた200年前ちゃんと事後処理した?」
神様「事後処理?」
狐神「神籍抹消」
神様「??」モグモグ
狐神「しかしか神社の主神から出てた神籍抹消依頼を担当したのアンタでしょ?」
神様「??」モグ… モグ
狐神「やっぱり・・・」
217: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/03(木) 01:41:21 ID:8GsPhRw2
神様「あ〜 そういえば昔、そんな手続きした記憶があるかも」
狐神「ちゃんとやったの?」
神様「神籍の抹消手続きは〜 した。 うん、間違いない」
狐神「ご神体の方は?」
神様「ご神体?」
狐神「そう、神力抜いた?」
神様「・・・・・・」
狐神「抜いた?」
神様「・・・・・・」モグモグ
狐神「やっぱり」ハァ
218: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/03(木) 01:43:12 ID:8GsPhRw2
神様「だってそんな事言われてないもんっ!」
狐神「常識だろ」
神様「言われたことしかやらない。 それが私流」
狐神「主神がご神体の管理できなくなるのに、神力抜かないでどうすんのよ」
神様「でも宮司がいたし、ご神体の管理くらいできるでしょ」
狐神「主神の神籍抹消の理由は知っているわよねぇ?」
神様「ん〜・・・ なんだっけ?」
狐神「宮司と駆け落ち」
神様「まじかよ!」
219: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/03(木) 01:44:21 ID:8GsPhRw2
狐神「あんたが神籍抹消して主神は人間になって宮司と二人でどっか行ったわ」
神様「もしかして・・・ 神力入った状態でご神体放置?」
狐神「そう」
神様「たしか結構強い神力持ってたよね?」
狐神「そう」
神様「ダメじゃん」
狐神「そう」
神様「でも、あの主神はご神体のこと何も言ってなかったよ?」
狐神「神籍抹消でご神体の神力抜くのは常識だから・・・」
神様「それに、ご神体に神力残ってるって言ってなかったし」
狐神「人間になって神力無くなってんのに、ご神体の状態が分かる訳ないでしょ・・・」
神様「・・・・・・」
狐神「はぁ〜」
220: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/03(木) 01:45:26 ID:8GsPhRw2
神様「ちょっと待てや。 お前はそこまで知っていてなんで放置してんだよ」
狐神「管轄地域外だから手が出せない」
神様「はぁ〜? だったら神宮に連絡しとけや!」
狐神「したわよ。 何度も」
神様「放置してんのか? 神宮は」
狐神「広域特務課って所に何度も申請書類出してるんだけどね・・・」
神様「広域特務課?」
狐神「そう。 アンタ知ってる?」
神様「・・・・・・」
221: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/03(木) 01:46:14 ID:8GsPhRw2
狐神「・・・・・・ もしかしてだけどさぁ」
神様「・・・・・・」
狐神「あんた、今の所属は?」
神様「・・・・・・」
狐神「名刺ちょうだい」
神様「・・・・・・」ソロリ
狐神「内宮神籍 神宮所属 “広域特務課” 審査係 神様、なるほどね」
222: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/03(木) 01:47:24 ID:8GsPhRw2
神様「お願い! 神宮には黙ってて! これ以上減給されると給料マイナスになる!」
狐神「マイナスって・・・」
神様「驚くなよ、私は来月まで無給だ」
狐神「無給なんてあるの?」
神様「この件は私が内密に処理する」
狐神「コソコソやって、ばれるとマズいわよ?」
神様「バレねーよ、ビビってんじゃねーよエキノコックス」
狐神「・・・・・・」ゲシッ
神様「あぅ」
狐神「どうなっても知らないわよ?」
神様「とりあえず、知ってること教えて?」
狐神「ここじゃあれだし、うちの神社行こうか」
225: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/05(土) 02:59:32 ID:rcioMquE
――― あいあい神社
神様「・・・コックスの神社って結構大きいのね」
狐神「土地が広いだけで本殿はそんなでもないわよ? って言うかコックスって何よ」
神様「聞く?」
狐神「・・・・・・」ゲシッ
神様「あぅ」
226: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/05(土) 03:00:53 ID:rcioMquE
巫女「あ、お帰りなさいませ神様」
神様「ただいま〜」
巫女「?」
狐神「気にしないでくれ」
巫女「お知り合いの方ですか?」
狐神「あぁ、コレは一応神宮の神様だ」
神様「ど〜も〜」
巫女「神宮!? 神様!?」
狐神「そう、しかも私の大先輩だ」
巫女「え!? あっ、初めまして! 私、巫女の・・・あの・・・」アタフタ
227: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/05(土) 03:03:04 ID:rcioMquE
神様「あ〜、巫女ちゃんさぁ〜」ハァー
巫女「はっ、はい! すいません! あの・・・ その・・・」オロオロ
神様「竹箒はもう少し水平にして円を描くように使わないと」
巫女「え?」
神様「貸してみ?」
巫女「はい・・・」
神様「こう」サァー サァー
巫女「お〜」
狐神「あんた、何でそんなこと知ってんの?」
神様「私は巫女のスペシャリストだ」サァー サァー
狐神「・・・それ巫女関係ないだろ」
228: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/05(土) 03:04:38 ID:rcioMquE
――― 社務所
狐神「適当に座って」
神様「あれ? 宮司とかはいないの?」
狐神「総出で地鎮式。 明日まで帰ってこない」
神様「あ、そう。 ・・・ねぇ、儲かってんの?」
狐神「はぁ?」
神様「装飾とか結構金かかってんじゃん」
狐神「儲かってる訳ないじゃんよ。 年を追う毎に苦しくなる一方よ」
229: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/05(土) 03:05:46 ID:rcioMquE
神様「ふ〜ん・・・ ねぇ余ってる服とかない?」
狐神「はぁ?」
神様「頂戴」
狐神「服って装束とか?」
神様「ちげーよ、要らねーよそんなの。 普段着だよ普段着!」
狐神「普段着って・・・ あんた、服くらい自分で買いなさいよ」
神様「薄給の私をなめんなよ?」
狐神「あげても良いけど、私ほとんど着物だよ?」
神様「はぁ? 着物? じゃあ要らない」
狐神「・・・・・・」イラッ
230: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/05(土) 03:07:36 ID:rcioMquE
トントン
狐神「どうぞ」
巫女「失礼いたします」スタスタ
神様「?」
巫女「あ、先ほどは大変失礼いたしました・・・」ペコリ
神様「・・・・・・」ジィー
巫女「お茶です///」コトッ
231: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/05(土) 03:08:16 ID:rcioMquE
神様「巫女ちゃんはさぁ、ここ何年目?」
巫女「えっ? あっ2年目です」
神様「そう。 ねぇ、コーラとかある? 炭酸系」
巫女「はい! すぐお持ちいたします」
狐神「持ってこなくてもいい。 下がって良いぞ」
巫女「承知いたしました。 失礼いたします」スタスタ
パタン
232: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/05(土) 03:08:52 ID:rcioMquE
神様「偉そうに。 身内にはもっとフレンドリーに接しないとダメよん」
狐神「立場ってもんがあるでしょうが」
神様「あ〜やだやだ。 可哀想だからあの巫女ちゃん神宮に頂戴?」
狐神「ダメだバカ。 せっかく見つけたのに」
神様「なんだよケチ」
狐神「そんな事より続きを話すわよ」
神様「へいへい」
233: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/05(土) 03:42:22 ID:rcioMquE
狐神「しかしかの主神のその後とかは聞いてる?」
神様「いいや聞いてない。 私その後すぐに異動しちゃったから」
狐神「あんたが神籍抹消した後、二人はどこかでひっそりと暮らしていたみたい」
神様「主神は神籍抹消して人間になったから・・・ さすがにもう亡くなっているか」
狐神「そうね」
狐神「で、残ったご神体は管理されずに神力がそのままで放置された」
神様「危険なことするな〜」
狐神「アンタのせいでね」ギロッ
神様「・・・はい」
234: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/05(土) 03:43:18 ID:rcioMquE
狐神「ご神体からはゆっくりと神力解放が続いて周辺で不思議な現象が起っていたみたい」
神様「不思議な現象?」
狐神「まぁ、よくある神力による自然現象ね。見えないものが見えたりとか」
神様「あの場所でそれは嫌だな・・・」
狐神「そうねぇ、だからしばらくは人が近づく事なかったんだけど」
神様「状況が変わったと?」
狐神「30年くらい前かな? 願いが叶うってちょっとした名所になって」
神様「願いが叶う?」
235: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/05(土) 03:44:09 ID:rcioMquE
狐神「参拝者の願いが結構な確率で叶ってたみたい」
神様「あ〜、管理者がいないから無差別に神力が解放されたのか」
狐神「当然そんなことになったら悪巧みする人間も出てくる訳よ」
神様「そりゃそうだわな。 私だって飛びつくわ」
狐神「あんたはそのくらい自力で何とでもなるでしょ」
神様「ねぇ、それ嫌み? 神力ゼロの私へのイジメ?」
236: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/05(土) 03:45:59 ID:rcioMquE
狐神「へぇ〜 神力ゼロねぇ〜」
神様「・・・なんだよ」
狐神「だいぶ貯め込んでるように見えるけど?」ジー
神様「・・・・・・」
狐神「私を神籍に入れて譲渡したときの神力よりも多いんじゃない?」
神様「・・・・・・」
237: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/05(土) 03:47:05 ID:rcioMquE
狐神「狛犬君用?」ニヤッ
神様「・・・・・・」イラッ
狐神「ごめんごめん悪かったって」
神様「お前、それ言い触らすなよ?」ムスッ
狐神「はいはい、神の出生に関わる口外禁止事項ですものね」
神様「だから口にするなっての」
神様「ごめんってば〜」
238: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/05(土) 03:48:37 ID:rcioMquE
神様「それより、お前かなり神力増えてるんじゃないの?」
狐神「そうでもないと思うけど?」
神様「・・・・・・ ちなみになんだけどさぁ〜 フォックスって今の神階は?」
狐神「ん? 従一位」
神様「あ〜・・・ そう。 うん、がんばったね」チッ
狐神「っていうか、次コックスって言ったらご神体放置の件神宮にチクるよ?」
神様「は? フォックスって言ったんだけど? 耳まで悪くなったの?」
狐神「うぐっ」イラッ
240: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/06(日) 04:56:35 ID:bmynmkO.
狐神「話を戻すわよ!!」
神様「へいへい」
狐神「ちょっとした名所になってからすぐに、ご神体が消失する事件があったの」
神様「消失・・・ 盗まれたって事か?」
狐神「えぇ」
神様「持ち出しても意味ないのにな」
狐神「1年後にはちゃんと戻ってきたけどね」
神様「神域から持ち出したら神力解放できないしな」
狐神「盗人もそれに気付いたんでしょうね」
241: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/06(日) 04:57:08 ID:bmynmkO.
狐神「それと同時に神社の裏手に宗教団体が立ち上がった」
神様「それがおきつねこんこん教か・・・」
狐神「そう、最初はこぢんまりとコソコソ私腹を肥やしてたんだけど・・・」
神様「欲には勝てないと」
狐神「これ以上肥大化する前にはカタ付けておきたいわね」
242: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/06(日) 05:00:11 ID:bmynmkO.
神様「う〜ん・・・ おきつねこんこん教については?」
狐神「信者は30人くらいで幹部以外は真面目な信徒みたい」
神様「ネーミングセンスがイカしてるんだけどキツネと関係あんの?」
狐神「あぁ、しおしお神社って稲荷系だからじゃない? 深い意味はないと思う」
神様「なんだ〜 それだけか〜 お前とは関係ないの?」
狐神「ない。 私は北海道出身だし」
243: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/06(日) 05:02:54 ID:bmynmkO.
神様「はぁ〜 どうすっかな〜」
狐神「きちんと解決していってよね」
神様「めんどくさいな〜 帰りたいな〜」
狐神「あんたねぇ、神使置いて帰るつもり?」
神様「あぁ〜 犬ころもいるんだよな〜」
狐神「心配なくせに」
神様「・・・・・・」
狐神「もしかして、わざと置いてきたんじゃないの?」
神様「・・・・・・」
244: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/06(日) 05:03:49 ID:bmynmkO.
狐神「図星?」
神様「もぉ、こいつメンドい」
狐神「まぁ、どっちでも良いわ。 ちゃんと解決してね 」
神様「でもな〜 やっぱ、面倒くさいな〜」ダラー
狐神「神宮にバレたくなければ解決する以外に道はないわよ?」
神様「はぁ〜」ズーン
245: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/06(日) 05:06:49 ID:bmynmkO.
神様「・・・しゃぁね〜な〜」スッ
狐神「? なにその手」
神様「金くれ」
狐神「は?」
神様「財布に250円しかない」
狐神「銀行に行って自分のお金下ろしてきなさいよ」
神様「無給だっていってんだろ! 銀行に600円しかねーよ! 下ろせねーよ!」
狐神「本当に無給なんだ・・・」
神様「照れるじゃないか〜」クネクネ
狐神「褒めてないし。 貯金くらいしときなさいよ・・・」
246: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/06(日) 05:09:00 ID:bmynmkO.
―――翌日
神様「さてと、んじゃ連れてって?」
狐神「は?」
神様「いや、従一位様ご自慢の神力使ってバビューンって」
狐神「この駅から向こうは管轄外だから神力効かない」
神様「うそ! だって電車で20駅も先だよ?」
狐神「金あげたでしょ? 5万も」
神様「え〜」
狐神「解決して戻ってきたらお駄賃もう5万あげるから」
神様「まじで? よっしゃ! 絶対だぞ! 絶対だからな!! 」
狐神「はいはい。分かったからはよ行けって」ヒラヒラ
神様「燃えたぎってきた〜!!! いってきまーーーーす」ダッ ダッ ダッ
狐神「全く、どっちが面倒くさいヤツなんだか・・・」クスッ
247: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/06(日) 05:42:33 ID:bmynmkO.
テクテク
神様「ちかれた〜 やっと着いたよ」
神様「さて、どうやって潜入しよっかな〜」ウロウロ
信者「お嬢ちゃん?」
神様「ん?」クルッ
信者「ダメだよ? 潜入とか物騒な事しちゃ」ガシッ
神様「え? うそ。 もう捕まった??」
信者「監視カメラあるからね」
神様「ぎゃー 助けて〜 襲われる〜」ジタバタ
信者「襲わないから、取りあえず事務所来て?」
248: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/06(日) 05:43:28 ID:bmynmkO.
――― おきつねこんこん教
神様「・・・・・・」
信者「で、なんで勝手に入ろうとしたの?」
神様「昨日来たとき、すごくイカした名前で興味があって」
信者「ん? もしかして昨日逃げた女の子か?」
神様「あいつとは関係ありません。 今日初めて来ました」
信者「言ってること矛盾しまくってるよ?」
スタスタ
神使「あれ? 神様?」
神様「・・・・・・」
249: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/06(日) 05:44:41 ID:bmynmkO.
信者「神様?」
神使「はい、昨日私と一緒に居た・・・」
信者「やっぱ逃げた子じゃん」
神様「すいません」
信者「でもこの子が神様なんですか? 狗神様」
神様「狗神?」
神使「ですから、私は神でなくその方の神使なのですが・・・」
信者「またまた。 狗神様はご冗談もうまいですね」ハハハッ
250: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/06(日) 05:45:42 ID:bmynmkO.
神様「おい、犬ころ」
信者「貴様! 狗神様に失礼な呼び方をするな!」
神様「!? はい! すいませんでした!!」
神使「あの・・・ 申し訳ございませんがこの方と二人にして頂けますでしょうか」
信者「大丈夫ですか?」
神使「ご心配なく」
信者「では、なにかございましたらお呼び下さい狗神様」スタスタ
ガチャ
251: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/06(日) 05:46:33 ID:bmynmkO.
神様「ねぇ、神使君っていつの間に神になったの?」
神使「何度も神使だと言ったのですが・・・」
神使「神様に見捨てられた後、びっくりして狛犬になってしまいまして・・・」
神様「あ〜、それでお前を神と勘違いしてんのか。 って言うか見捨ててないし」
神使「いえ、それはもう見事な逃げっぷりでした」
神様「・・・・・・」
252: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/06(日) 05:47:45 ID:bmynmkO.
神様「それより、中の様子はどうだ?」
神使「えぇ、昨日から色々内部を見て回っているのですが特に怪しい気配などなく」
神様「そうか・・・」
神使「皆さんご神体に向かって一生懸命お祈りされていましたね」
神様「しかしかのご神体があるのか?」
神使「よく出来ていますが、たぶんレプリカだと思います」
神様「レプリカか・・・ 本物の場所は分かるか?」
神使「いいえ、まだそこまでは」
神様「ん〜・・・」
神使「何かあったのですか?」
253: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/06(日) 05:48:50 ID:bmynmkO.
神様「実は、しかしか神社のご神体が神力の入ったまま放置されているらしいんだ」
神使「神力が入ったままですか!?」
神様「あ・・・ うん」
神使「それは問題ですね。 すぐに神宮に連絡した方がよろしいかと」
神様「え? いや・・・ これは私達で解決しようと思う」
神使「しかし、神力が入ったままのご神体放置なんて大問題ですよ?」
神様「そうなの?」
神使「もしかして、200年前の神籍抹消と関係しているのでは・・・」
神様「!? で、でも200年も前だし? 神籍抹消の担当神も分からないし? 」アセアセ
神使「なるほど。 分かりました」
神様「よし!」ホッ
254: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/06(日) 05:49:43 ID:bmynmkO.
神使「神籍抹消を担当したのが神様なんですね?」
神様「・・・・・・」
神使「神様のことですから、その際ご神体から神力を抜くのを忘れた、といった所でしょうか」
神様「・・・・・・」
神使「そうなんですね?」
神様「はい・・・ すいません。 その通りです」
神使「やはりそうですか」
255: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/06(日) 05:50:37 ID:bmynmkO.
神使「で、どうされるおつもりですか?」
神様「ご神体から神力を抜く」
神使「それは当然ですが作戦は・・・」
神様「う〜ん・・・ お前さぁ、このまま神として振る舞ってろ」
神使「え?」
神様「私はお前の神使・・・ いや動物じゃないから巫女。 うん、それで行こう」
神使「作戦の意図が見えないのですが・・・」
神様「決まりだ! 頼んだぞ狗神様」
256: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/06(日) 05:51:24 ID:bmynmkO.
神使「その作戦大丈夫なんですか?」
神様「大丈夫だよ。 私が神だってバレないようにするからさ」
神使「いえ、神様が神だとバレることはないと思うのですが・・・」
神様「ん? どういう意味?」
神使「神様が自分から神だと名乗っても信じる人はいないと思いますので」
神様「あ〜・・・」ゲシッ
神使「痛っ」
257: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/06(日) 05:52:13 ID:bmynmkO.
神様「ほら、行くぞ」
神使「はぁ」
神様「・・・・・・」
神使「・・・・・・」
神様「早く行けよ、お前が神なんだから先に行くんだよ」
神使「あ、はい。 では失礼します」スタスタ
258: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/08(火) 04:35:18 ID:qgDacTR6
ガチッ
信者「あ、狗神様」
神使「お待たせして申し訳ございませんでした」
信者「で、そちらのちっちゃい女の子は一体・・・」
神使「あぁ、え〜と・・・」
神様「私は狗神様の使いで巫女をさせて頂いております。 神ちゃんとでもお呼び下さい」
信者「使いの方でしたか。 通りで馴れ馴れしいと思いました」
神様「・・・・・・」イラッ
259: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/08(火) 04:36:15 ID:qgDacTR6
神使「いいえ、これは神ちゃんの最も優れた特技ですから」
信者「なるほど・・・ さすが狗神様、素晴らしい解釈ですね」
神使「そういうつもりではないのですが・・・」
信者「またご謙遜を」
神様「はははっ。 ところで皆さん、この後は?」イライラ
信者「そうだ! 皆が待ってますので続きを」
神使「はい、今行きます」
神様「つづき?」
260: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/08(火) 04:36:51 ID:qgDacTR6
スタスタ
神様「お〜 人がいっぱい居るな〜」ボソッ
神使「おきつねこんこん教の信者の方達です」ボソッ
神様「何か一生懸命書いているみたいだけど何やってんだ?」
神使「祝詞を書いているんです」
神様「祝詞?」
神使「はい、明日の朝に読む分だそうです」
神様「ふ〜ん。 真面目だな」
261: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/08(火) 04:37:55 ID:qgDacTR6
女信者「狗神様? お聞きしたいのですがよろしいでしょうか」
神使「はい」スタスタ
女信者「ここなんですけど」
神使「あぁ、これはここで区切ったらどうでしょうか」
女信者「でも、この部分とうまく繋がるかが・・・」
神使「ん? そうですね。 そしたらここでどうでしょうか」
神様「・・・・・・」ジィー
262: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/08(火) 04:38:38 ID:qgDacTR6
――― 1時間後
信者「では、今日はこの辺で終わりにしましょう」
神使「はい」フゥ
信者「狗神様、今夜も祝詞をお願いできますでしょうか」
神様「? 神が祝詞を朗誦するのか?」
信者「勉強のためにも是非お願いできればと」
神使「分かりました」
神様「・・・・・・」
信者「では、本殿でお待ちしております」スタスタ
263: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/08(火) 04:39:19 ID:qgDacTR6
神使「本殿はこの先です。 行きましょうか神様」
神様「神ちゃん」
神使「そうでした。 神ちゃん」
神様「それよりお前さぁ、もう少し神らしく―――」
女信者「狗神様、一緒に本殿へ行きましょう!」
神使「あ、はい。 神さ・・・ いえ神ちゃんも行きましょう」
神様「はい・・・」
スタスタ
264: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/08(火) 04:40:16 ID:qgDacTR6
――― 本殿
神様「あの祭壇の上に乗っかってんのがしかしか神社のご神体か・・・」
神使「レプリカですが、たぶん本物と形は同じだと思います」
神様「きっとこの建物のどこかに隠してあるんだな」
神使「確証はありませんが、幹部室が一番怪しいかと」
神様「幹部室? あの端の部屋か」
神使「唯一鍵がかかっている部屋でしたので」
神様「なるほどな・・・」
265: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/08(火) 04:41:42 ID:qgDacTR6
信者「狗神様、準備が出来ましたのでよろしくお願いします」
神使「分かりました。 では―――」
神様「まて、いや・・・ お待ち下さい狗神様」
神使「?」
神様「私が朗誦します」
信者「あなたが?」
神様「神に祝詞を朗誦させるなど、私が許さない。 代わりに私が読む」
神使「神さ―――」
神様「狗神様、どうか使いである巫女の私にお任せ下さい」
神使「・・・神ちゃんが言うのでしたら任せます」
信者「では巫女さんお願いします」
神様「稲荷祝詞でいいか? 何も書いていないから略式だぞ」スタスタ
266: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/08(火) 04:42:31 ID:qgDacTR6
神様「神聖な祝詞だ。 朗誦中は目を閉じ私の言葉に集中しろ」
神使「皆さん、神ちゃんの言うとおりに」
・・・・・・
神様「では」
神様「掛巻も恐き稲荷大神の大前に恐み恐みも白く〜」
信者「・・・・・・」
神様「堅磐に常磐に命長く 子孫の八十連屬に至まで〜」ゴソゴソ
神使「・・・?」
神様「夜の守日の守に守幸へ賜へと〜 恐み恐みも白す〜」
267: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/08(火) 04:43:48 ID:qgDacTR6
――― 夜・寝室
神使「神様ってあんなにスラスラと祝詞を読めるんですね」
神様「はぁ? お前バカにしてる?」ゲシッ
神使「しかも暗記してるだなんて」
神様「基本くらいは押さえてるっつーの」
神使「はぁ」
268: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/08(火) 04:44:39 ID:qgDacTR6
神様「それよりもだ」
神使「?」
神様「お前、形とは言え今は神なんだぞ? もう少し神らしく振る舞えよ」
神使「はい?」
神様「もう少し何というか・・・」
神使「そのお言葉そのまま神様へお返しいたします」
神様「ぅっ・・・ 私はほら、神と言っても神力も使えないランク外だし」
神使「いいえ、同じですよ神様だって立派な神なんですから」ニコッ
神様「ったく、どいつもこいつも・・・」ハァ
269: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/08(火) 04:45:19 ID:qgDacTR6
モソモソ
神使「?」
神様「寝る」
神使「暖房がないので私を抱いて寝ますか?」
神様「・・・好きにしろ」
神使「それ、私の台詞だと思うのですが・・・」
神様「・・・なぁ」
神使「何ですか?」
神様「お前は・・・ 神になりたいと思うか?」
神使「え?」
神様「・・・なんでもない」
270: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/08(火) 04:45:58 ID:qgDacTR6
――― 翌日
チュンチュン
神使「神様?」ユサユサ
神様「ん〜ん・・・ あと6時間」
神使「ほら、起きて下さいってば」ユサユサ
神様「なんだよ・・・ 早すぎだろ」ヨイショ
271: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/08(火) 04:46:30 ID:qgDacTR6
神使「朝ご飯持ってきてもらいましたから食べましょう」
神様「朝ご飯? どこ?」キョロキョロ
神使「目の前にあるじゃないですか」
神様「・・・ なにこれ?」
神使「お稲荷さんです」
神様「小さいなぁ・・・」
272: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/08(火) 04:47:35 ID:qgDacTR6
神使「それよりどうするんですか?」
神様「今日中にカタを付けるぞ。 長居無用だ」
神使「まずは、ご神体を見つけないとですね」
神様「そう言えば、幹部というのはいるのか?」モグモグ
神使「数日おきにこちらへ来るようなのですが」
神様「ふ〜ん。 今はいないんだな?」
神使「えぇ、ただ幹部専用の裏口から入るようで来ても誰も分からないそうです」
神様「よし、今のうちに私が幹部室に潜入して探してこよう」
273: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/08(火) 04:48:09 ID:qgDacTR6
神使「でも鍵閉まってますよ?」
神様「これ」ジャラジャラ
神使「いつの間に・・・」
神様「昨日、祝詞を読んでいるときにな」
神使「ゴソゴソしていたのはそれですか・・・」
神様「ご丁寧に鍵入れと書いた箱が祭壇の近くにあった」
神使「他の鍵も丸ごと持ってきてバレますよ?」
神様「だから早めに忍び込むんだよ」
274: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/08(火) 04:49:46 ID:qgDacTR6
神使「昨日の夜に忍び込めばよかったと思うのですが」
神様「私もそう思ったんだが、監視のヤツが扉の前に居てな」
神使「そうなんですか?」
神様「神であるお前が逃げないように監視でもしてるんじゃないか?」
神使「すいません、全く気がつきませんでした」
神様「まぁ、それは良い。朝も当然祝詞をあげるんだろ?」
神使「はい、その後は本殿の掃除と聞いています」
神様「よし、祝詞をあげているときに忍び込もう」
275: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/08(火) 04:50:21 ID:qgDacTR6
トントン
神使「はい」
朝の祝詞のお時間です
神使「分かりました。今参ります」
神様「よし、いくぞ」
276: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/08(火) 04:51:17 ID:qgDacTR6
信者「あの・・・ 祝詞の方ですが・・・」
神様「狗神様に朗誦させるのはダメだ。 今日はお前達が読め」
神使「そういう事ですので・・・」
信者「・・・分かりました」
神様「私が作った祝詞だ。 これを読むと良い」スッ
信者「はぁ、うわっ長!」
神様「いいか、集中して読めよ? 他の者は目を閉じて言葉に集中しろ」
信者「はい」
神使「いつの間にあんなの用意したんですか?」ボソッ
神様「昨日の夜中にな。 20分は時間が稼げるはずだ」ボソッ
神使「なるほど・・・」
神様「じゃぁ頼んだぞ?」コソコソ
277: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/08(火) 04:51:59 ID:qgDacTR6
――― 幹部室
ガチャ
神様「よし! 開いた!」
ギィー バタン
神様「向かいの扉が幹部専用の入り口か・・・ 帰ってきませんように」パンパン
神様「さてと、ご神体を探しますかね」ガサゴソ
278: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/08(火) 04:52:41 ID:qgDacTR6
フンフンフーン♪
神様「嘘だろー 幹部か? ヤバいヤバい! 隠れなきゃ」イソイソ
ガチャッ
幹部「ん? 誰か居るのか?」
シーン
幹部「気のせいか・・・」
279: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/08(火) 04:53:29 ID:qgDacTR6
prrr prrr
ピィ
幹部「なんだ? あ〜 お前か・・・」
神様(あっぶねー、って言うか私ってついてね〜)
幹部「あぁ、順調だよ問題ない」
神様(ん? これってご神体じゃん! ラッキ〜 私ってついてる〜)
280: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/08(火) 04:54:18 ID:qgDacTR6
幹部「だから問題ねーよ・・・ 取りあえずうちの信者達の生前分与だけ急がせろ」
神様(・・・?)
幹部「構わねーよ、こっちにはご神体があるんだからよ。 怖いもんなしだよ」
神様(・・・・・・)
幹部「はぁ? 信者なんてただの金ズルだよ。 面倒くさくなったら切り捨てれば良いんだよ」
神様(・・・・・・)イラッ
幹部「おう、信者の数は半年以内に10倍にする。 あぁ、だいぶ稼げるぞ」
281: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/08(火) 04:55:03 ID:qgDacTR6
ガタン
神様「おい!お前!!」
幹部「? なんだ、貴様どっから入りやがった! ってテメーなんでそれ持ってんだ!」
神様「うるさい! ふざけんのもいい加減にしろ!」
282: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/08(火) 04:55:44 ID:qgDacTR6
信者「恐み恐みも白く〜」
ドタバタ
ガシャーン
信者「なんだ? 幹部室か?」
神使「神ちゃん」タッ タッ タッ
ガチャッ
神使「神ちゃん、大丈夫ですか!?」
283: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/08(火) 04:56:28 ID:qgDacTR6
ドタバタ
ガシャーン
神様「信者の心をもてあそぶな! 純粋に信仰を捧げる者達の心を踏みにじるな!」ドタバタ
信者「巫女! あんた何でこの部屋にいるんだ」スタスタ
幹部「おい! この部屋に入ってくるんじゃない!」
信者「」ピタッ
神使「神ちゃん!」
幹部「なんだ? お前、うちの信者じゃないな?」
神様「は〜な〜せ〜よ〜」ジタバタ
神使「その方を放しなさい」
284: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/08(火) 04:57:33 ID:qgDacTR6
幹部「なんだと? おい、お前達その男も捕まえろ!」
信者「・・・・・・」
幹部「何やってんだよ! 早くしろよ!」
神使「幹部さん、あなた達のやろうとしていることは全てバレています」
幹部「あ?」
神様「祭壇に飾っているのはレプリカ、あなたがその手に持っているのが本物ですよね?」
信者「え?」
幹部「!? 何言ってんだ・・・ これはレプリカ。 そうこっちがレプリカだ!」
信者「幹部さん、あなた・・・ もしかして騙していたんですか・・・」
幹部「は? お前達はこんな得体の知れないヤツの言うことを信じるのか!」
信者「・・・・・・」
285: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/08(火) 04:58:12 ID:qgDacTR6
神使「それとあなたが捕まえた巫女さんですが早く解放した方が良いですよ?」
幹部「はぁ? こんな女ごときに何が出来るってんだよ」
神使「その方は神宮の神ですよ?」
幹部「神だと? はっ、笑わせんな」
神使「その方に危害を加えると大変な神罰が下ってしまいますが・・・ 忠告はしましたからね?」
幹部「・・・・・・」チラッ
神様「いいの? 全力で行くよ?」ベー
286: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/08(火) 04:59:05 ID:qgDacTR6
神使「神力が本当に存在することくらい、そのご神体の効果で知っていると思うのですが・・・」
幹部「この女が神だって言う証拠でも見せてみろや」
神使「・・・・・・」ボンッ
幹部「うわぁ! なんだ??」
神使「私は狛犬です。 驚きましたか?」
幹部「うそだろ・・・」
神使「神様にわざわざ神力を使わせることなど出来ませんので」ボンッ
287: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/08(火) 04:59:42 ID:qgDacTR6
幹部「お前達何者だ・・・」
神使「私達は神宮から来ました」
幹部「神宮?」
神使「神職不在のしかしか神社への立ち寄りが目的です」
幹部「じゃぁ、うちと関係ないだろ! 出てけよ!」
神使「あなたの持っているご神体は、しかしか神社のものです」
幹部「・・・・・・」
神使「この土地も、しかしか神社の土地だと思うのですが?」
幹部「・・・・・・」
神使「返して頂けますか?」
幹部「ふ、ふざけるな! 渡すわけないだろ!」
288: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/08(火) 05:00:25 ID:qgDacTR6
神使「交換条件でどうです?」
幹部「交換条件だぁ?」
神使「そのご神体を置いて今すぐ立ち去るのでしたら一切を不問にします」
幹部「はぁ? 嫌だと言ったらどうすんだよ」
神使「全ての神の力を使って最大の苦痛を永遠に与えることになるでしょう」
幹部「・・・・・・」
神使「本気ですよ? あなたにとっては選択の余地などないと思うのですが」
289: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/08(火) 05:01:24 ID:qgDacTR6
神様「そうだぞ、あきらめろや!」ジタバタ
幹部「おい! ガキは大人しくしてろ!」ゲシッ
神様「あぅ」
神使「無礼はやめなさい!」
幹部「あん?」
神使「そちらの神様は多くの神の中でも神階を超越した最高神です!」
神様「え? お前なんでそれ知ってんの?」
神使「え?」
神様「え?」
・・・・・・
290: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/08(火) 05:02:12 ID:qgDacTR6
神様「あ〜 秘技! 金玉頭突き!!」ガンッ
幹部「ぁっ・・・」フラフラ
信者「うわぁ、痛そう・・・」キュン
幹部「おま・・・え・・・ そこは・・・」
バタン
神様「どうだ! 神の力思い知ったか!」フンスッ
神使「神の力なんですか・・・ それ・・・」
291: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/08(火) 05:02:42 ID:qgDacTR6
信者「狗神様、お見事でした!」
神使「はい?」
信者「まるであの巫女が神のような錯覚を覚えるほどの演技。 素晴らしかったです」
神使「いえ・・・」
神様「狗神様は演技派で売り出し中なのです。 何かあればマネージャーである私を通して仕事をご依頼下さい」
神使「・・・・・・」
292: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/08(火) 05:03:57 ID:qgDacTR6
信者「やはりこの幹部は私達を騙していたのですか・・・」
神使「残念ながら」
信者「しかし、ご神体を取り戻して頂きありがとうございます」
神使「大変申し上げにくいのですが・・・ このご神体は回収させて頂きます」
信者「回収!?」
ザワザワ
神使「はい」
信者「そんな・・・ ご神体なしでは私達は・・・」
神使「残念ですが、これは本来ここにあってはならない物なのです」
信者「しかし・・・」
293: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/08(火) 05:05:34 ID:qgDacTR6
神使「あちらのご神体でも皆さんが大切にして下さればきっと神力も入っていくでしょう」
信者「・・・そうだ! 狗神様がこれからは私達の神様になって―――」
神様「いい加減にしろ!」
信者「!?」
神使「神ちゃん・・・」
神様「ご神体が偽物だと分かった途端、お前達は別の神を見立てるのか」
神様「そのご神体を今まで奉ってきたんだろ! 失礼だとは思わないのか!」
信者「!?」
神様「お前達の信仰はそのご神体にも伝わっている。 悲しませないでやってくれ」
信者「・・・・・・」
神様「狗神様が言ったようにこれからも大切にしろ」
信者「・・・・・・」
294: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/08(火) 05:06:20 ID:qgDacTR6
神様「行きましょう、狗神様」
神使「え? あっ、はい」
信者「狗神様・・・ どちらへ」
神使「長居も出来ませんので・・・ 申し訳ございませんが失礼いたします」
神様「神宮の使いの者が数日中にここへ来る。 それまでここを絶対に離れるんじゃないぞ」
信者「・・・・・・」
神様「分かったか? 絶対離れるなよ?」
信者「・・・分かりました」
神使「・・・・・・」
神様「行くぞ」ボソッ
神使「はい」
295: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/08(火) 05:07:09 ID:qgDacTR6
スタスタ
神使「神様・・・」
神様「あん?」
神使「お願いがあるのですが・・・」
神様「なんだ急に」
神使「このお社は廃社にするんですよね」
神様「ん? あ〜 そうだな」
神使「その・・・ もし出来ればなのですが」
神様「?」
神使「あの方達のために、この土地を譲渡するということは出来ないでしょうか」
神様「・・・・・・」
神使「すいません、他宗教ですし無理ですよね。 忘れて下さい」
神様「・・・電車の時間がない。 急ぐぞ」
神使「はい」
296: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/08(火) 06:29:44 ID:qgDacTR6
――― あいあい神社
神様「ただいま〜」
狐神「ん? もう帰ってきたの?」
神使「御邪魔します」
狐神「おや? そちらは神使君?」
神使「初めまして、神様の神使を務めております狛犬です」
狐神「ちょっと! 格好いいじゃん!」
神様「はぁ?」
狐神「あいあい神社の主神、狐神よ。 よろしく」
神使「お初にお目にかかります。 ご丁寧にありがとうございます」
狐神「よく出来た子ね。 あんたには勿体ないわ」
神使「そんなことありません。 私の方が神様には不釣り合いでして」
神様「ねぇ、そういうのやめて? むなしくなるから・・・」
神使「どうして神様がむなしくなるんですか?」
297: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/08(火) 06:30:43 ID:qgDacTR6
神様「腹減った、何か食わせて〜」
狐神「巫女に何か作らせるわ。 巫女! いるか?」
巫女「はい、神様」スタスタ
狐神「何か作ってやってくれるか?」
神様「あ〜作らなくて良いよ。ピザ頼もう? ピザ」
狐神「神社でピザかよ・・・ まぁ良いわ、じゃぁピザ注文してくれるか」
巫女「畏まりました。 ご希望はございますでしょうか」
神使「では、みみまでソーセージのベーコンポテトを、あとコーラをお願いします」
神様「さすが犬ころ! 分かってるね〜」
神使「神様の大好物くらいは心得ておりますので」
298: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/08(火) 06:31:31 ID:qgDacTR6
神様「そうだ、はいご神体」コトッ
狐神「え? あんた持ってきたの?」
神様「だって、神力抜く準備とか何もしないで行ったからさぁ」
狐神「・・・・・・」
神様「お前が抜け」
狐神「はぁ?」
神様「いいじゃんよ〜 抜けや」
狐神「もぉ、しようが無いわね・・・」
神様「神力抜いたら、おきつねこんこん教へ送ってくれ」
神使「え?」
299: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/08(火) 06:32:20 ID:qgDacTR6
神様「もう何十年もアイツらが持っていたんだ。 所有権はおきつねこんこん教にある」
神使「神様・・・」
狐神「へぇ〜 優しいじゃん」
神様「私はいつでも優しくてかわゆいのだ」
狐神「分かった。 明後日おきつねこんこん教へ行ってくるから渡してくる」
神様「は? お前が直接行くの?」
狐神「神宮から連絡があってね。 しかしか神社の廃社手続き処理任された」
神様「・・・・・・」
狐神「でね? その後に、とある団体に譲渡手続きをしに行かないといけないの」
神使「譲渡手続きですか?」
狐神「えぇ、信者さんって方がいる団体に土地と建物を無償譲渡するようにって」
神使「なんでそんな・・・」
300: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/08(火) 06:33:16 ID:qgDacTR6
狐神「どっかの優しくてかわゆい神が仕込んだんじゃない?」
神使「神様・・・」
神様「コックス君さぁ、なんでそういうことを言うの? トップシークレットだよね? それ」
狐神「そうだったけ?」
狐神「でもさぁ、あんた他の宗教法人へ譲渡するって言ってないでしょ」
神様「・・・・・・」
狐神「神宮は稲荷神社保存の氏子団体って言ってたよ?」
神様「・・・・・・」
301: ◆8YCWQhLlF2 2016/03/08(火) 06:34:18 ID:qgDacTR6
狐神「ばれるとマズいわよ〜」
神様「ば、バレねーよ・・・ び、ビビってんじゃねーよ」アセアセ
狐神「ふ〜ん」
神様「・・・ お願い、黙ってて」
神使「私からも、お願いします!」
狐神「ちょっと、やめてよ。 大丈夫だって、私は言わないから」
神使「ご迷惑をおかけしま