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1: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ (ワッチョイ 8dc3-VZFC) 2015/11/05(木) 18:40:15.64 ID:3XBYegBd0.net
学校 部室

穂乃果「ねえ、海未ちゃん。そういえばさ」

海未「はい?」

穂乃果「そろそろ凛ちゃんの誕生日の筈だよね、私達準備しなくてもいいのかな?」

海未「……え? 何を言っているんですか?」

穂乃果「いや、だから凛ちゃんの誕生日って確か11月だよね?」

穂乃果「日時までは覚えてないんだけどさ、皆準備してる様子もないからそろそろ始めた方がいいんじゃないかって」

海未「穂乃果……それが……」

ことり「凛ちゃんの誕生日、もう終わってるよ……?」

穂乃果「えっ?」

2: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ (ワッチョイ 8dc3-VZFC) 2015/11/05(木) 18:44:16.89 ID:3XBYegBd0.net
穂乃果「えっ……えー? 嘘だよー」

海未「いや、本当ですが」

穂乃果「そんな筈ないよ。だって、誕生日パーティーもやってないもん」

穂乃果「私、プレゼントすらまだ用意してないしハッピーバースデーを歌った覚えもないんだよ?」

ことり「けど、事実としてもう誕生日は終わってるよ」

海未「サイトのプロフィール欄にも載っているではありませんか、11月1日と」

穂乃果「いや……えっとさ」

穂乃果「これ、あれだよね? ドッキリか何か?」

海未「いえ、事実を言っているだけですよ。わざわざ穂乃果を嵌めるために、サイトを弄るわけないですし」

3: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ (ワッチョイ 8dc3-VZFC) 2015/11/05(木) 18:47:31.44 ID:3XBYegBd0.net
穂乃果「じゃ、じゃあさ……こういうことになるよ?」

穂乃果「皆は凛ちゃんの誕生日を祝わなかったことになっちゃうよ?」

穂乃果「そんなわけないじゃん。皆は最高の仲間の筈なんだから、一人だけ誕生日を祝わないなんてことは……」

ことり「いや、祝ったよ?」

海未「ええ」

穂乃果「え……?」

海未「誕生日パーティーしましたし」

ことり「うん、11月1日に」

5: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ (ワッチョイ 8dc3-VZFC) 2015/11/05(木) 18:49:56.63 ID:3XBYegBd0.net
穂乃果「……したの?」

海未「ええ」

穂乃果「誕生日パーティー?」

海未「ええ」

穂乃果「私、そんなことした覚えないんだけど」

ことり「だって穂乃果ちゃん、その場にいなかったし」

海未「覚えてないのも仕方ないですよ」

穂乃果「ああ、そっか。いなかったんだから覚えてなくても仕方ないよね……」

穂乃果「いや、おかしいよね? 何で私呼ばれてないの?」

6: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ (ワッチョイ 8dc3-VZFC) 2015/11/05(木) 18:53:18.35 ID:3XBYegBd0.net
海未「……」

ことり「……」

穂乃果「いや、黙り込まないで?」

穂乃果「何か理由があったんだよね? 私を呼ばない理由が」

穂乃果「何でもいいから喋ってよ。あれ、何? 私何かした?」

海未「いやぁ……」

ことり「そんなことは……」

穂乃果「ああ、それとも私その日何かしてた? 私の中では何も無い日の筈だけど、勘違いして用事があるとか言ってた?」

ことり「何もなかったよ。パーティー中に暇だってライン来たくらいだもん」

穂乃果「そう、ライン! 言おうか言うまいか悩んでたけどさ、私ラインしたよね!?」

8: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ (ワッチョイ 8dc3-VZFC) 2015/11/05(木) 18:56:45.72 ID:3XBYegBd0.net
ことり「うん、残ってるもん、ほら」

        「暇だよー」 穂乃果
私はちょっと忙しい:既読


ことり「これこれ」

穂乃果「うん、やっぱりおかしい」

海未「はて……見ていて違和感を覚える箇所があるとは……」

穂乃果「大丈夫? 脳味噌ある?」

穂乃果「誘えばいいじゃん! この日この時に! 誕生パーティーに!」

9: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ (ワッチョイ 8dc3-VZFC) 2015/11/05(木) 19:01:18.47 ID:3XBYegBd0.net
ことり「だって来てなかったから……」

海未「ええ……」

穂乃果「だから来なかったんじゃなくて呼ばれなかったの! 分かる? この罪の重さ……」

穂乃果「ひょっとして私嫌われてた? そうならそうと言ってほしいんだけど」

海未「そんなことはありませんよ。皆が穂乃果を嫌う理由がないですし」

ことり「元々私達を集めたのも穂乃果ちゃんで、最初に一歩を踏み出したのも穂乃果ちゃん」

ことり「そんな穂乃果ちゃんを、好きになることはあっても嫌える筈がないよ……」

穂乃果「じゃあ何で呼ばなかったの? え、ごめんごめん」

穂乃果「本当ごめんね? 私全っ然二人の言っている意味が分かんない」

10: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ (ワッチョイ 8dc3-VZFC) 2015/11/05(木) 19:03:55.05 ID:3XBYegBd0.net
穂乃果「まず前提確認させてもらうよ?」

穂乃果「私は皆に嫌われているわけではない」

海未「無論」

穂乃果「私が皆に何かをしたわけでもない」

ことり「うん」

穂乃果「じゃあ、何で誕生日パーティーに呼ばれなかったの? そこなんだよ、問題はさ」

海未「それは……」

ことり「……」

凛「それは凛が説明するよ」

11: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ (ワッチョイ 8dc3-VZFC) 2015/11/05(木) 19:13:37.69 ID:3XBYegBd0.net
穂乃果「凛ちゃん、いつからここに?」

凛「ついさっきだよ。部室の扉が少し開いてて、そこから声が漏れてたにゃ」

凛「……で、だよ。穂乃果ちゃんは、凛の誕生パーティーに呼ばれなかった経緯を知りたいんだよね?」

穂乃果「う、うん……」

凛「それを話すには、まず凛が穂乃果ちゃんに感謝の意を示そうと思った話からしなきゃならないにゃ」

穂乃果「感謝の意って……?」

凛「昔から凛は自分の事を可愛くないと思ってた。小学生の時、男の子にからかわれて以来かな」

凛「そんな凛を励ましてくれたのは、親友のかよちんだったんだ。凛ちゃんは可愛いよ、って何度も何度も凛の可愛さを説明してくれた」

凛「だけど、かよちんが言ってくれたところで凛の心は晴れなかったにゃ」

凛「だって、仮にかよちんがB専だった場合、その可愛いはゴスロリ着てるデブに言う可愛いと同レベルの物になってしまうから」

凛「センスを疑うわけじゃなかったけど、怖かったんだ……」

12: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ (ワッチョイ 8dc3-VZFC) 2015/11/05(木) 19:19:25.95 ID:3XBYegBd0.net
凛「だから凛はセカンドオピニオンを求めたにゃ」

凛「最初に、かよちんとは別の友人に聞いてみたんだ。凛って可愛い? って」

凛「聞いた友人皆、可愛いって言ってくれた。最初は嬉しかったんだけど、よくよく考えてみたらそう言うのって当たり前なんだよね」

凛「だって、誰が友達に向かって可愛くないって言うの?」

凛「凛の友達にも、そりゃ平均以下の子はいるよ? けどその子に可愛い? と聞かれたら凛は可愛いよって返すに決まってる」

凛「だからこそ友人は信用できない」

凛「次に、家族に聞いてみた。可愛いと返ってきたにゃ」

凛「けどそれも、親バカの可能性を否定しきれない。親にとって娘は可愛い以外ある筈ないし」

凛「しかし、一切見知らぬ人に質問しにいくほど凛には勇気もなかった」

凛「路地で「私キレイ?」って口裂け女の手口にゃ。最悪マッポ呼ばれるまである」

14: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ (ワッチョイ 8dc3-VZFC) 2015/11/05(木) 19:32:05.88 ID:3XBYegBd0.net
凛「そこで現れたのが穂乃果ちゃんにゃ」

穂乃果「私?」

凛「穂乃果ちゃんは私達をアイドルにしてくれた。輝く舞台に立たせてくれた」

凛「アイドルを見る人々はある意味正直だよ」

凛「可愛い子は応援され、ブスは地の底に落ちる」

凛「凛はここでなら、本当の評価を得られると思った。自分の容姿に対する本当の評価を、ね」

凛「結果は……時折心無い言葉が書かれるものの、概ね応援してくれている人の方が多い」

凛「少なくとも凛の容姿は人並み以上、平均よりも上ということが判明したにゃ」

凛「つまり、かよちんの趣味が悪くないということが判明したんだよ」

凛「だからこそ、凛は穂乃果ちゃんに感謝した」

凛「気付きの一歩を与えてくれた穂乃果ちゃんに」

穂乃果「うん……けど、誕生日とそれ関係ないよね?」

15: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ (ワッチョイ 8dc3-VZFC) 2015/11/05(木) 19:34:45.18 ID:3XBYegBd0.net
凛「話はここからだよ」

凛「凛は凛の誕生日に、穂乃果ちゃんに感謝の気持ちを伝えるべくサプライズを計画したの」

凛「まず穂乃果ちゃんにパーティーを秘密にし、その裏でスピーチ原稿を用意するなり活動してたんだ」

穂乃果「うん」

凛「そして当日」

凛「色々あって穂乃果ちゃんに伝え忘れた。以上」

穂乃果「うん」

穂乃果「うん?」

16: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ (ワッチョイ 8dc3-VZFC) 2015/11/05(木) 19:37:40.30 ID:3XBYegBd0.net
凛「……」

穂乃果「凛ちゃん?」

凛「以上」

穂乃果「いや、以上じゃなく」

凛「はい」

穂乃果「何、伝え忘れたの? 何で?」

凛「色々あったから」

穂乃果「ことりちゃんのラインの件は?」

ことり「パーティーのことは秘密にしておいてって言われてたから」

穂乃果「いやそれ、多分開始直前で効力切れてる」

穂乃果「切れてるよ」

海未「……ええ」

17: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ (ワッチョイ 8dc3-VZFC) 2015/11/05(木) 19:41:03.23 ID:3XBYegBd0.net
穂乃果「そもそも、何があったの? 色々って」

凛「そこまで大きいことはないよ、どれもよくあること」

海未「絵里がケーキを買い忘れたり、希が炎を生み出したり、にこが雨に打たれて風邪をひいたり」

ことり「凛ちゃんにおちんちんが生えたり、ゾンビが発生したり、ドラゴンが宙に出現したり」

穂乃果「待って」

穂乃果「待って待って、もう一回。変なとこあった」

海未「絵里がケーキを……」

穂乃果「そこじゃない」

海未「希が炎を」

穂乃果「そこも気になるけど、今はどうでもいいよ。ことりちゃんの言った方だよ」

18: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ (ワッチョイ 8dc3-VZFC) 2015/11/05(木) 19:44:47.45 ID:3XBYegBd0.net
ことり「え? どれ?」

凛「ああ、おちんちんなら大丈夫だよ。もう消えたから」

ことり「誕生日限定だったんだよね、あれ」

海未「いきなり「生えたにゃー」と言い出した時は焦りましたが」

凛「女の子じゃなくなったらどうしようかと思ったにゃ」

穂乃果「あーうん! そこも気になる、物凄く気になるけどさ!」

穂乃果「その後、その後だよ!」

海未「はて……」

ことり「うーん……」

穂乃果「何!? 今日の二人、何でそんな脳の回転遅いの!?」

穂乃果「噛まれたの? 脳漿腐ったの?」

19: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ (ワッチョイ 8dc3-VZFC) 2015/11/05(木) 19:48:11.25 ID:3XBYegBd0.net
ことり「ああ、ゾンビの方?」

穂乃果「それとドラゴン」

海未「あれに関しては、何か居ただけですので別に」

凛「うん、深い印象も持ってないよ」

ことり「祝いに来たんだなーくらいの、ねえ」

穂乃果「祝いに来たにしてもおかしいよそんなの!」

穂乃果「ゾンビとドラゴンがナチュラルにいる会場は、なんかもう全部おかしいよ!」

凛「いや、凛も誰かの知り合いかなーって」

穂乃果「いるわけないじゃんそんな知り合い! 知り合いが霊寄りの希ちゃんでもギリッギリいないレベルだよ」

21: 名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/ (ワッチョイ 8dc3-VZFC) 2015/11/05(木) 19:53:27.83 ID:3XBYegBd0.net
穂乃果「いや、もうあれだね。私行かなくて良かったレベルだよ」

海未「まあ、大変でしたからねえ」

ことり「ゾンビは血が飛び散るから掃除も長い時間かかったし」

凛「そうにゃそうにゃ」

凛「……けど、穂乃果ちゃんにも祝ってほしかったな」

穂乃果(凛が、小さく呟いたその言葉)

穂乃果(私が呼ばれなかったのは凛が忘れていたせいで、そう言われるのはお門違いもいいところなんだけど)

穂乃果(何故だろうか、私は泣きそうになった)

穂乃果(秋も深まりつつある夕暮れの空は、いつまでもいつまでも、薄紫の景色を部室の中に落としていた)


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