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穂乃果
20130710151916_original

1: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/03/11(金) 20:20:58.69 ID:xB59Oxbl.net
凛「…って何だにゃ?」

にこ「まあちょっとした都市伝説みたいなものなんだけどね」

絵里「に、にこがそんなは、話するなんてめ、珍しいわね……」

希(まだ怖がるポイント来てへんで、絵里ち)

にこ「これは別に特別なエレベーターの話じゃなくてね、
どこにでもある普通のエレベーターを使って異世界に
行くことが出来るって言う話なんだけどね、」

凛「なんか聞いたような話だにゃ~」

花陽「凛ちゃん話の腰を折っちゃ駄目だよ…」

にこ「もう、凛~…でね、そのやり方なんだけど…」

穂乃果「うんうん」

にこ「まず10階建て以上のビルに行ってね、
1階からエレベーターに乗って、4階、2階、6階、2階、10階の順に
移動するの。ちなみにこれをやるときは絶対一人でやらなきゃだめで、
ついでにここまでの行程で誰か別の人がエレベーターに乗り込んで来たら
異世界には行けなくなっちゃうんだけど…。そして10階に着いたところで
5階に行くの、そしたらそこで若い女の人がエレベーターに乗り込んで
来るのね、まあここで乗り込んで来る人は人であって人でないらしいんだけ」

絵里「ヒッ」

にこ「…何よ絵里…」

絵里「え…いや…。しゃっくりよ、失礼」

希(絵里ち可愛いなあ)

にこ「…まあちなみにここで乗り込んで来る人は必ずしも
若い女の人ってわけじゃないらしいわ、にこも詳しくは知らないんだけど。
で、その女の人が乗り込んで来たら1階のボタンを押すの、そしたらエレベーターは
1階には向かわず10階に着くわ。エレベーターを出るとそこは異世界ってわけ。
ああ、あとその女の人に話しかけたら失敗しちゃうから気をつけてね。」

海未「気をつけて…って、そんなことを実行する人はいませんよ…」

凛「そうにゃそうにゃ」

真姫「下らない話ね…」

にこ「うるさいわね~ちょっとした雑談じゃない…」

穂乃果「……」

5: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/03/11(金) 20:32:39.65 ID:xB59Oxbl.net
穂乃果「…面白そうだね、それ!」

海未「!?何を言っているのですか穂乃果!?」

穂乃果「私異世界に行ってみたい!」

ことり「ほ、穂乃果ちゃん…危ないよ~…やめた方が良いよ~…」

真姫「何よ、あなたたちこんなにこちゃんの世迷い言信じてるの?」

にこ「世迷い言って何よ!」

海未「い、いえ…別に信じているわけではないですが…」

絵里「ま、まあそもそもそのビルに迷惑よね」

希「あれ~絵里ち怖いん~?」

絵里「そそそそんなわけないじゃない全く希は全く…」

にこ「ま、ただの都市伝説よ、あんまり本気にしないでよね」

穂乃果「え~面白いと思うんだけどな~」

海未「…穂乃果、実行しないで下さいね…」

7: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/03/11(金) 20:45:02.92 ID:xB59Oxbl.net
―放課後―

~とあるビルA~

真姫「…えっと…確か4階…2階…6階…」

ピンポーン

真姫(あっ、人が乗ってきたわ)

真姫「…」

真姫(く、下らないわね、やっぱりただの都市伝説だわ///)

~とあるビルB~

穂乃果(…海未ちゃんには止められてるけど…)

穂乃果「…やっぱり、気になるよね」

穂乃果「えっと、確か4階、2階、6階、2階、10階の順だったよね」

穂乃果(まずは4階…っと)

穂乃果「あ、ことりちゃんにLINEしてみよっと」

穂乃果:ことりちゃーん

ことり:なーに穂乃果ちゃん?

穂乃果:今穂乃果は異世界に向かっています

ことり:え、穂乃果ちゃんあの話実行してるの!?

穂乃果:そうだよ~

ことり:危ないからやめた方が良いよ…

穂乃果:大丈夫だって~ことりちゃんもやってみたら?

ことり:ええ?怖いよ…

穂乃果:へーきへーき

9: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/03/11(金) 21:11:34.06 ID:xB59Oxbl.net
~とあるビルC~

ことり(…う~ん…確かに今ちょうど近くにビルはあるんだけど…)

穂乃果:危なくなったら降りたら良いんだし、大丈夫だってば~

ことり(…ちょっとぐらい良いかな…)

ことり:うん、ことりもちょっとだけやってみるね!

穂乃果:さすがことりちゃ~ん

ことり「えっと…まずは4階…っと」

ことり「2階…6階…2階…10階…」

ことり(誰も乗ってこない……)

ことり「だ、大丈夫かな……」

ことり「ご、5階……」

ピンポーン

ことり「!?」

???「…………………」

ことり(わ、若い女の人が乗ってきた………!)

???「…ア"…ア"ア"………」

ことり(こ、この人絶対人間じゃない……!)

ことり(逃げなきゃ!)ダダッ

???「…………………マ"……」

プシュー…バタン…ゴウンゴウンゴウン…

ことり(た、助かった…エレベーターは上に行っちゃったみたい…)

ことり「………」

ことり「……そうだ穂乃果ちゃんは!?」

10: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/03/11(金) 21:16:16.31 ID:xB59Oxbl.net
ことり:穂乃果ちゃん!

ことり:やっぱりこれ危ないよ!!

ことり:私も今すっごく怖い目にあって…

ことり:今すぐエレベーター降りて!穂乃果ちゃん!

ことり(…既読がつかない……!)

ことり:穂乃果ちゃん!?どうしたの穂乃果ちゃん!!

ことり:返事して!お願い!!

ことり「……………」

ことり「どうしちゃったの……穂乃果ちゃん……」

12: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/03/11(金) 21:40:40.23 ID:xB59Oxbl.net
~とあるビルB~

穂乃果(ふふ、ノッてきたねことりちゃん…)

穂乃果「よし、10階に着いた…次は5階だね!」

穂乃果(ふふ…本当に誰か乗ってきちゃったりして……)

ピンポーン

穂乃果「!?」ビクッ

???「…………………」

穂乃果(わ、若い女の人だ………!)

穂乃果(しかも……なんか異様な雰囲気だ……この世のものとは思えないような…)

穂乃果「…………?」

???「…………」ポロポロ

穂乃果(……泣いてる……?)

穂乃果(……それに、なんか…この人……まるで……)

穂乃果「…………海未…ちゃん?」

???「……!!」

穂乃果(……いや、確かにちょっと海未ちゃんみたいな感じは
するけど……、やっぱりなんだかおどろおどろしい雰囲気だし……
絶対海未ちゃんじゃないよ……そもそもこんなところにいるわけないし……)

???「……ア"……ア"ア"ア"……」ポロポロ

穂乃果「ヒッ」

プシュー…バタン

穂乃果(あっ、扉閉まっちゃった……)

ゴウンゴウンゴウンゴウン……

穂乃果「あれ…何もしてないのに勝手に上に上がってる…」

ピンポーン

穂乃果「……10階だ…」

穂乃果(そうだ、さっきの人は……)

穂乃果「!?」

穂乃果「……誰も……いない……」

14: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/03/11(金) 21:55:58.11 ID:xB59Oxbl.net
穂乃果「……とりあえずエレベーターを出よう……」

穂乃果「……ここが、異世界…?」

穂乃果「なんだか何も変わってないような……」

穂乃果「……ちょっと散策してみよう」

………
……


穂乃果「…うん」

穂乃果(とりあえず町内をざっと見て回ったけど、やっぱりここは
私の元いた世界とは別の場所みたいだ……だって町自体は
私の知ってる町と同じなのに、家屋がボロボロになっていたり、
あるいは倒壊していたり、ビルにヒビが入って壁に植物が生い茂っていたり
なんかしている……
まるで時間だけが何千年何万年って単位で流れてしまったみたいな……)

穂乃果「空も淀んでるし……なんだか空気も悪い……」

穂乃果(それに何より……)

穂乃果「人が……私以外誰もいない……」

16: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/03/11(金) 22:12:15.01 ID:xB59Oxbl.net
穂乃果「……とりあえず……家に帰ってみようかな……?」

……


穂乃果「……家が潰れてる……」

穂乃果(まあなんとなくそんな気はしてたけどね……元々昔ながらの木造家屋だったし…)

穂乃果「この町の状態を考えると家が無事な方がおかしいよね……」

穂乃果(……学校いってみよ)

………
……


穂乃果「あ、良かった~学校は無事だ~…」

穂乃果「……まあ相当老朽化はしてそうだけどね……」

穂乃果「…中はわりと綺麗だね…」

穂乃果(う~んどうしようかな……異世界に来てはみたものの……
穂乃果はもっとファンタジーな世界を想像してたんだよな~…
こう、妖精とか王子様とか出てくる感じのさ……これなら元の世界の方が
全然楽しいよ……元の世界……帰りたいな……)

穂乃果「まあ何にせよ活動の拠点は必要だよね~」

穂乃果「とりあえず部室に行こう!」

穂乃果(……?あれ?変だな……もうかれこれ三時間くらいは
歩きっぱなしで……いつもならとっくに晩ごはんの時間なのに…
ちょっと疲れてはいるけどあんまりお腹空いてないや……)

19: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/03/11(金) 22:23:57.93 ID:xB59Oxbl.net
穂乃果「えーと部室部室……」

穂乃果「あっ、着いた着い…た?」

穂乃果「……何?…コレ……」

穂乃果(部室の入り口が……ない……壁だ……これじゃあ中に入れたもんじゃないよ……
しかも本来扉があるところの辺りになんか木の看板が立ってるけど…
コケまみれだし…木自体も相当傷んでるし……何か文字が書いてあるみたい
だけど……とても読めやしないね……)

穂乃果「……はあ……なんでこんな世界来ちゃったんだろ……」

穂乃果(海未ちゃんやことりちゃんは忠告してくれたのに……)

穂乃果「ごめんね……みんな……」

穂乃果「……きっと帰るからね……!」

21: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/03/11(金) 22:48:22.86 ID:xB59Oxbl.net
―翌朝―

海未「遅いですね穂乃果は…まあいつものことですが……」

海未(しかしことりまで寝坊ですか?…少し変です……)

ことり「海未ちゃんおはよう……」

海未「遅いですよことり……」

海未「……ことり?」

ことり「……海未ちゃん…あのね……」

海未「はい?」

ことり「いや…ごめん、放課後皆が集まってから話すね」

海未「?わかりました…それにしても穂乃果は遅いですね…」

ことり「穂乃果ちゃんは…今日は来ないよ……」

海未「欠席ということですか?珍しい……私にも連絡してくれれば良いのに…」

ことり「……うん……」

海未「………?」

海未(ことりの様子がおかしいです……昨日穂乃果と何かあったのは
明らかですが……放課後皆に話をするというからにはそれを待ちましょうか…)

23: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/03/11(金) 22:51:01.21 ID:xB59Oxbl.net
~学校~

海未「…やはり穂乃果は欠席ですか……」

海未(……おや?)

海未「……穂乃果の机が……ない」

ミカ「どうしたの海未?」

海未「ミカ…あの、穂乃果の机がどこにあるか知りませんか?
よもやいじめ等ではあるまいとは思うのですが……」

ミカ「……へ?」

海未「?」

ミカ「ホノカって……誰?」

海未「……は?ミカ、冗談は…」

ヒデコ「どーしたのミカー?」

ミカ「ああヒデコー、なんかね、海未がホノカの机がどうとかって……」

ヒデコ「……ホノカ……?誰それ?」

海未「!!……冗談はよして下さい…怒りますよ?」

ヒデコ「い、いやいや冗談じゃないよ……」

フミコ「なになにー?」

海未「…………」

26: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/03/11(金) 23:10:17.13 ID:xB59Oxbl.net
―放課後―

絵里「――つまり、穂乃果の存在そのものが無かったことになっている…ってこと?」

海未「信じがたいですが……そのようです」

海未「クラスメイトは誰一人穂乃果の事を知りませんでしたし、出席をとる
時にもそもそも穂乃果は呼ばれませんでした…念のため穂乃果の家にも
連絡を取ってみましたが、高坂家に娘は雪穂一人しかいないようです…
私とことりと雪穂が幼馴染みということになっていました…」

凛「凛も…クラスの友達にμ'sの8人はいっつも仲良しだねって言われた…」

真姫「…私もその場にいたわ…」

絵里「……壮大なドッキリってわけじゃなさそうね…」

花陽「なんで……なんでこんなことにっ……!」ポロポロ

凛「かよちん泣かないで……」

絵里「海未…原因に心当たりはないの?」

海未「私にはありません……ですが、」

ことり「あのっ、あのねっ!」

絵里「…ことり?どうしたの?」

30: >>25 それは別の方ですよ あれ面白かったですよね(家)@\(^o^)/ 2016/03/11(金) 23:33:34.50 ID:xB59Oxbl.net
ことり「穂乃果ちゃんはね……異世界に行っちゃったの……」

絵里「異世界…?って…昨日にこが言ってたアレ?」

ことり「うん……」

絵里「そんな馬鹿なことが……でも…実際に穂乃果はいなくなっちゃったみたいだし…」

真姫「……私には何も起きなかったけどね…」

絵里「……?真姫、試したの?アレ」

真姫「あ……べ、別に!」

真姫「……でも実際穂乃果はいなくなってしまったんだし、ことりの話を聴く
価値は十分にあると思うわ…話して?ことり…」

ことり「うん…あのね、昨日穂乃果ちゃんはにこちゃんから教えてもらった方法で
異世界に行こうとしたの。私は穂乃果ちゃんとLINEで連絡を取っていて、
穂乃果ちゃんと別のビルで私もその方法を試してみたの。でもエレベーターが5階に
着いたとき、本当にこの世のものとは思えないような不気味な女の人が乗り込んで
きて、私は怖くてエレベーターから逃げ出したんだ……。その後穂乃果ちゃんに
連絡を取ってみたんだけど全然反応がなくて……多分穂乃果ちゃんはエレベーターを
降りずにそのまま乗ってて、本当に異世界に行っちゃったんだと思う……」

にこ「……」

ことり「…ごめん…ごめんね……ことりが一緒になって試したりしないで
もっとちゃんと穂乃果ちゃんに注意できていれば……!」ポロポロ

海未「な、泣かないで下さいことり…!そんなことを言ったら私にも非はあります…!」

真姫「そうよ、それにまだ穂乃果が本当に異世界に行ったかどうかなんて……」

にこ「……違うわ」

真姫「……にこちゃん?」

にこ「全部…私のせいよ…私があんな下らない話したから……!」

にこ「ごめんなさい…ごめん…ごめん…!」ポロポロ

海未「に、にこまで…落ち着いてください…」

33: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/03/11(金) 23:46:26.91 ID:xB59Oxbl.net
絵里「海未の言う通りよ、皆落ち着きましょう……」

真姫「落ち着くのは良いけど…穂乃果、どうする?」

絵里「…そうね、存在自体が抹消されている以上警察にも頼れないし…
しばらくは様子を見るしかできないわね……」

海未「そんなっ、悠長に構えていたら私たちまで穂乃果のことを忘れて
しまうかもしれないのですよ!?私が異世界に行って穂乃果を連れ戻します!」

絵里「海未…あなたの気持ちはわかるわ…でも、現状では本当に穂乃果が異世界に
飛ばされてしまったのかも定かではないし、あまり迂闊な行動はできない……」

海未「………くっ…」

絵里「……三日…、三日経っても何も手掛かりが得られなければ…
穂乃果は異世界に飛ばされてしまった…として行動を起こしましょう」

絵里「…だからそれまで待って?海未…」

海未「……わかり……ました」

希「……」

38: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/03/11(金) 23:58:45.92 ID:xB59Oxbl.net
―三日後―

海未(とうとう何の手掛かりも得られないまま三日が過ぎてしまいました)

海未(私は今日穂乃果を救出しに異世界へ向かいます)

~部室~

絵里「ついに三日経っちゃったわね…」

絵里「海未一人に危険な役目を負わせるのは気が引けるけど…」

にこ「例の方法は一人でしかできないからしょうがないわよ…海未だって乗り気だし…」

凛「三日…穂乃果ちゃん大丈夫かな…」

希「異世界…ということを考えると、時間の流れもこっちとは違うかもしれんよ?
案外まだ穂乃果ちゃんが異世界に行ってから一時間も経ってないかも……」

真姫「それじゃあ逆に何年も経ってるかもしれないってことじゃない……」

希「……せや…ね」

海未「…では、そろそろ参ります」

真姫「海未、GPSちゃんとONにしといてよね」

海未「わかっています、位置情報の確認は任せましたよ」

ことり「ごめんね海未ちゃん…本当はことりが……」

海未「いえ、良いのです…ことりは待っていてください」

海未「穂乃果は必ず連れて帰ります」

ことり「うん……」

花陽「頑張って…海未ちゃん…!」

海未「はい……!」

にこ(…さすが海未ね…)

39: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/03/12(土) 00:11:26.41 ID:JzVlVhD8.net
………
……


海未:問題なく10階に到着しました

海未:続いて5階に向かいます

真姫(まだ位置情報は正確に海未の位置を示しているわ……)

海未:5階に着きました

真姫「!」

真姫(海未の現在地を示すマークが点滅し出した…!)

海未:女性が乗り込んできました

海未:確かに異様な雰囲気です

海未(不気味…ですね…しかしこの女性…)

海未(どことなく…絵里の面影があるような……)

真姫:海未、大丈夫?

海未:問題ありません 10階へ向かいます

真姫「――!」

真姫(位置情報が……消えた……!)

41: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/03/12(土) 00:23:42.48 ID:JzVlVhD8.net
海未(10階に着きました…)

海未「……先程の女性は消えてしまったようですね…」

海未「……さて、ここが異世界ですか…一見元の世界と変わらないように……」

海未「……!いえ……」

海未(この建物の老朽化具合……とても元の世界と同じには思えません…)

海未「…少し探索してみますか」

………
……


海未「…………」

海未(町中を探し回りましたが穂乃果の姿はありませんでした…一番可能性が
高いと思われた穂乃果の家にも穂乃果はいませんでした……いやそもそも
穂乃果どころか人間が誰一人いません……残すは学校だけ……ですか)

海未「……ゴホッ…ゴホッ…」

海未(……それにしても空気が悪い…少し気分が悪くなってきました…
空もどんよりとしていますし……一見この世界は元いた世界とさして
変わりないように感じましたが……この荒廃具合……やはりとても元の世界と同じには
思えませんね……なんとも不気味な世界です……)

海未「早く学校に……」

海未「!いや……」

海未「待ってください……」

43: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/03/12(土) 00:49:08.21 ID:JzVlVhD8.net
海未(ここは……ひょっとすると……)

海未「……あり得ますね…」

海未「だとしたら……ここは危険です…!せめて屋内に…早く…学校へ向かわなければ…!」

―――
――


ことり「海未ちゃんが異世界へ向かってから一週間…」

絵里「何の進展もなし…ね…」

真姫「結局海未もこの世界では初めから存在していないことになっちゃったわね…」

花陽「………」

にこ「………次は私が行くわ」

絵里「にこ!?」

花陽「何言ってるのにこちゃん!?」

真姫「あの海未でさえ未だ異世界から帰還できていないのよ?今にこちゃんが
異世界に行って……海未の助けになれると思う……!?」

凛「真姫ちゃんちょっと失礼だにゃー」

にこ「いいのよ凛……ええ、確かに私は頭もそんなに良くないし、身体能力だって
海未には劣るでしょうね……でも……私の話した下らない都市伝説が発端で
こんなことになった以上、やっぱり責任を感じるし…私の手で…なんとかしたい」

真姫「で、でも……!」

にこ「お願い……行かせて」

真姫「……!」

希(真姫ちゃん……心配なんやね、にこっちのことが……)

48: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/03/12(土) 01:10:59.82 ID:JzVlVhD8.net
………
……


にこ(やっと皆を説得できたわ…)

にこ「…じゃあ、行ってくるわね」

ことり「にこちゃん…はいこれ…お守り…」

にこ「…ありがとう、ことり…」

花陽「にこちゃん……」

凛「にこちゃん……」

にこ「うるさいわねあんたたち……大丈夫よ、必ず二人を連れて帰るわ」

絵里「にこ…信じてるわよ」

にこ「ふん、絵里もしおらしくなったもんね!じゃあもう行くわよ!」

………
……


にこ(次は…5階ね…)

にこ「!」

???「………………」

にこ(何よ……不気味な女の人ね……いや……女の人…というかそもそも
人間なのかしら?今までに見たことない奇妙な生き物ね…まあ見た目は人間…に
見えるけど……誰よコイツ本当に……あの子たちよくこんな不気味な生物と
一緒にエレベーター乗れたわね…尊敬するわ……)

真姫:にこちゃん大丈夫?

真姫:平気?

にこ「……」

にこ:にっこにっこにー♪

真姫(……にこちゃん……)

真姫(位置情報が…消えた……)

49: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/03/12(土) 01:31:44.83 ID:JzVlVhD8.net
にこ「――着いたわね」

にこ(あの不気味な人も消えた…)

にこ「ここが異世界…?」キョロキョロ

にこ「何よ、元の世界と何も変わらないじゃない」

にこ「ひょっとして失敗したのかしら」

にこ「……いや、来たときは青空だった…」

にこ「空が汚い……」

にこ「……!?」グニャア

にこ「……!……!」

にこ(な、何なのよこれ……!頭がガンガンする……!視界も定まらないし……
吐き気がする……!ダメ…まともに立っていられない……!)

にこ「……くはっ……」バタッ…

にこ(穂乃果……海未……こ、こんな情けない先輩で……ごめんね……)ポロポロ

にこ「…………」

にこ「――」

―――
――


花陽「……ねえ、凛ちゃん」

凛「…なーに?かよちん…」

花陽「私たち…にこちゃんにいっぱいお世話になったよね……」

凛「うん……」

花陽「私…私ね、恩返しするなら今しかないと思うんだ…」

50: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/03/12(土) 01:41:02.71 ID:JzVlVhD8.net
凛「!?どういうこと!?」

花陽「だからね、にこちゃんを助けに――」

凛「い…嫌だよ!」

花陽「凛ちゃん…?」

凛「…かよちんまで…向こうの世界に行っちゃったら……凛……耐えられないよ……」

凛「もちろん…にこちゃんのことは大切に思ってるけど…
凛は…かよちんまで失いたくないにゃ……ごめんね…」

花陽「凛ちゃん……」

花陽「私が、凛ちゃんを置いて一人で行くと思う?」

凛「かよ…ちん?」

花陽「凛ちゃん、一緒ににこちゃんを助けに行こう…!」

凛「!」

凛「それなら……!」

凛「…!で、でも…」

花陽「何?」

52: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/03/12(土) 01:50:09.07 ID:JzVlVhD8.net
凛「あの方法って…二人一緒には行けないんじゃ…」

花陽「あっ……」

花陽「……」ションボリ

凛「…!で、でもでも物は試しだにゃ!ひょっとすると
二人一緒でも行けるかもしれないにゃ!試してみるにゃ!」

花陽「…!」パァッ

花陽「そ、そうだよね!試してみる価値はあるよね!」

凛「そうにゃそうにゃ!」

花陽「うん…仮に行けないとしてもそれだけの話だし……よし、やってみよう!」

凛「わかったにゃー!」

………
……


花陽「えっと…4階…」

凛「…2階…」

花陽「…6階…」

凛「…2階…」

花陽「…10階…」

凛「…………5階……」

53: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/03/12(土) 02:08:58.57 ID:JzVlVhD8.net
花陽「…ねぇ凛ちゃん…」

凛「なーにかよちん…」

花陽「…誰かが5階で乗ってくるんだよね…」

凛「そうだよ…」

花陽「こ、怖いから後ろ向いとかない…?」

凛「わかったにゃ…」

ピンポーン

プシュー…バタン…

花陽(………!)

凛(誰か乗ってきたにゃ………!)

ゴウンゴウンゴウンゴウン……

花陽(か、勝手に上に……!)

凛(こ、怖いにゃ……)

花陽(ち、ちょっとだけどんな人が乗ってきたのか見てみようかな……)チラッ

花陽「………!!」

凛「………」

凛「………?」

凛(かよちん……?)チラッ

???「………………」ジロッ

凛「う、うわあああああああ!!!!」

凛(な、何なのこの黒い化物……!?女の人が乗ってくるんじゃないの……!?)

???「…………アアアアアアア"ア"ア"ア"ア"ア"…!!!」

凛「ヒッ……!」

???「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"!!!」

………
……

54: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/03/12(土) 02:24:10.35 ID:JzVlVhD8.net
絵里「……にこが向こうに行ってからもう何日かしら……」

真姫「……10日よ」

ことり「…………」

希「…………」

希(……確かに…感じる…海未ちゃんの霊気を……でもおかしいな…縁起でもないけど…
仮に…本当に仮に…海未ちゃんが向こうの世界で死亡していたとしても…その霊魂が
こっちの世界に戻ってくるということはまず考えられん……どういうことなんや……)

希(しかも……絵里ちに至っては…絵里ち本人がこの場にいるにも関わらず…
絵里ちの霊気をまた別に感じる…これはいったいどういうことなんやろう…)

希(……ウチがおかしくなってしまったんかな……)

絵里「……希?どうしたの?」

希「…!い、いや、何でもないんよ」

絵里「…?そう…」

真姫「…にしてもいよいよもってどうしようもなくなってきたわね……」

真姫「何か異世界に別の手段でアプローチできないかしら…」

絵里「…希、なんかテレパシーとかで異世界と通信できたりしないの?」

希「……できるわけないやん……」

絵里「……そうよね……」

真姫「……」

55: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/03/12(土) 02:42:38.82 ID:JzVlVhD8.net
絵里「……私が行くわ」

希「…絵里ち……!?」

真姫「本気なの!?」

真姫「三人もの人間が異世界から帰ってきていない以上、エレベーターを用いた
正攻法での空間移動では帰還が困難であるとみるのが妥当よ!?なんで……」

絵里「わかっているわ……だから私で最後」

絵里「私が行ってもなお誰もこっちの世界に帰ってこれないようなら…
その時は私たちの事は忘れてμ'sの活動に専念してほしい」

真姫「!?何を……!」

絵里「私たちは今回の件でかれこれ三週間はまともに活動できていない……
これは由々しき事態よ。幸い真姫とことりは無事だし…作詞の問題さえクリア
できればなんとかμ'sとして活動再開できるはずよ……!」

ことり「そ、そんな……!全員揃わなきゃμ'sじゃないよ……!」

絵里「ことり……この世界ではね、既にこのメンバーがμ'sの全メンバーなのよ」

ことり「……そんな……寂しいこと言わないでよ……」

絵里「希……皆をよろしくね」

希「絵里ち……」

絵里「……」

希「……うん……わかった……」

真姫「希……!?」

絵里「ありがとう…希」

希「ねえ、絵里ち…約束して?」

絵里「ええ、絶対に皆を連れて……」

希「帰って……来てね?」

56: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/03/12(土) 02:55:17.74 ID:JzVlVhD8.net
………
……


絵里「次は5階……」

ピンポーン

絵里(!誰か乗ってきた……!)

???「…………………」

絵里(な、なんて不気味なの……本当に人間なのかしら……?)

???「…………ア……アア……」

絵里「ヒッ」ビクッ

絵里(お……おぞましいわ……なんなのよこの人……)

絵里(人……?うーん…人…なのかしら……?なんだか得体の知れない恐怖を感じるわ…)

絵里(……あら?生理的に不愉快なはずなのに……)

絵里(……なんだか……この人…ちょっとだけ……)

???「……………………」

絵里(…………………………)

絵里(…………にこ……?みたいな……)

絵里「…………」

ピンポーン

絵里(…………!10階だわ!)

絵里「……あら?あの人は…?」

絵里「……とりあえずエレベーターを出ましょう…」

57: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/03/12(土) 03:09:58.67 ID:JzVlVhD8.net
絵里「……ここが…異世界……?」

絵里「なんだか思ってたのと随分違うわね……っていうかほぼ元の世界と同じじゃない…?」

絵里「うーん……でも、空は濁ってるし…」

絵里「……ゴホッ……空気は悪いし……」

絵里「……ちょっと見渡してみた感じ町はさびれてるし……」

絵里「……うん、異世界ね……」

絵里「ちょっと歩いてみようかしら…ゴホッ……あら?」

絵里「あそこに倒れてるのは……」

絵里「………!」ハッ

絵里「……にこ!!」ダダッ

絵里「にこ……!にこ……!」ユサユサ

にこ「う……うーん……」

絵里「にこ!」

にこ「!」ハッ

絵里「にこ……!」ポロポロ

にこ「絵里……?」

にこ「なんで……絵里が……ここに…?」

62: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/03/12(土) 03:29:48.54 ID:JzVlVhD8.net
絵里「それは……私もエレベーターでこっちに……」ポロポロ

にこ「そう……まったく……馬鹿なんだから……」

にこ「…………」

にこ「……………!?」

にこ「絵里!!」

絵里「わっ、なによぅ」ビクッ

にこ「ここ…………どこ…………?」

絵里「どこって……そりゃあ異世界よ……」

にこ「違う……違うわよ……」

絵里「違うって何がよ……?」

にこ「私が来たときは……もっと空がどす黒かった……それに……町だって
こんなんじゃなかった……もっと元の世界に近かった……ていうかほとんど
同じだった……空気だって……そりゃあ今も息苦しいけど……さっき……
私が倒れるまでは…、そう、私が倒れるついさっきまではまともに呼吸もできない
くらいだったのに……私が気を失っていた数時間……あるいは……数日間…
のうちに……こうまで変わってしまうものなのかしら……?ここが異世界だから…?」

にこ「怖い……まるで浦島太郎にでもなった気分よ……」

絵里「…………」ギュッ

にこ「わっ、急に何よ……」

絵里「大丈夫よ、落ち着いて……」

にこ「……子供扱いしないでよね、ついさっきまで泣いてたくせに……」

絵里「ふふ……」

絵里「……ねえにこ、さっきまでのこの世界はもっと元の世界に近かったのよね?」

にこ「そうよ、でも町並みとかそういうとこだけね。今言ったように空は
ドブみたいな色だったし、空気だって……いや、空気っていうより…
空間そのものが淀んでるような……おぞましい感じだったわ……」

絵里「……そう……」

にこ「……絵里?」

絵里「……うん、ちょっとわかったかも」

にこ「この世界のことが?何よ教えなさいよ」

絵里「ええ……でもその前にまずは町に出てみましょう…歩ける?大丈夫?」

にこ「…うん、随分ましになってるわ、大丈夫よ…」

………
……

78: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/03/12(土) 11:38:18.05 ID:JzVlVhD8.net
絵里「……どこもかしこも随分とさびれてたわね……」

にこ「そうね……でも、町自体は私たちの知っている町と全く同じに見えた…」

にこ「そう、まるで時間だけが何百年何千年…って過ぎてしまったみたいに……」

絵里「そう、それなのよ、にこ」

にこ「?何がよ」

絵里「今にこが言った二つのポイントがこの世界の謎を紐解く鍵になる…ってことよ」

にこ「そういえばあんたこの世界のことがわかったみたいなこと言ってたわね…」

にこ「もったいつけないで教えなさいよ」

絵里「ええ……。にこ、例えば…ペリメニを何日か外に放置したらどうなるかしら?」

にこ「はあ?何言ってんのよあんた……」

絵里「……いいから答えてよぅ」

にこ「……」

絵里「……」

にこ「…まあ…季節にもよるでしょうけど…そりゃあ腐っちゃうんじゃないの…?」

絵里「ええ、その通りよにこ…」

にこ「?」

絵里「つまり、私たちの世界では…形あるものは時間の経過と共に
その形を保てなくなる……食べ物であれば、まずは腐り…そして風化する」

にこ「……ごめん、何が言いたいかさっぱりわからないんだけど……」

絵里「まあまあ最後まできいてよ」

絵里「でね、その当たり前すぎる常識は…この世界でも通用するはずなのよ」

にこ「あっ……なるほど……!」

絵里「わかったかしら」

にこ「それは……にこが気絶している間にこの世界が
時間の経過と共に崩壊の方向に進んでいたから…ってことね?
まあもちろん時間が逆流してるとかなんとか意味不明な現象が発生してなければ……だけど」

絵里「あら、賢いわねにこ!」

にこ「馬鹿にしないでよね!……でも、それがどうしたっての?」

79: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/03/12(土) 11:49:00.46 ID:JzVlVhD8.net
絵里「ふふ、まあ待ちなさいよ…」

絵里「で、ここからが重要なんだけど…」

にこ「……」

絵里「この世界には私たちしかいないみたいじゃない?」

にこ「……そうね、穂乃果や海未はどこかにいるのかもしれないけど……
少なくともこの世界自体には人間が元々存在していないような感じね」

絵里「そうね……なのに、この町は私たちの知っている町と同じ……」

絵里「これって変だと思わない?」

にこ「?…そりゃ変と言えば何もかも変だけど……何がよ…?」

絵里「この町…誰が作ったの?」

にこ「……!」

81: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/03/12(土) 12:02:44.77 ID:JzVlVhD8.net
絵里「結論から言うわね」

にこ「……」ゴクリ

絵里「多分……この町は誰も作っていない」

にこ「……は?」

絵里「これはあくまで仮説なんだけど……この町は初めからこうだったのよ……」

にこ「ち、ちょっと待ってよ、どういうことよ?」

絵里「つまり……この世界は私たちの世界と全く同じ状態で生まれた…ってことよ」

にこ「……!」

絵里「だってこの世界人がいないのよ?新たに建築物を建てる
手段がない以上……この世界は初めからこうだった……って考えるのが自然じゃない…?」

にこ「…そ、そうよね……」

にこ「…でも!…この世界に初めから人間がいなかった…とも限らないわよ?」

絵里「ええ、そうね。だからこれはあくまで仮説……」

にこ「…でも待って、仮にそうだとしたら…」

にこ「……にこってこの世界のかなり形成初期段階でこっちに来たんじゃ……?」

絵里「おそらく、そうでしょうね」

84: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/03/12(土) 12:15:16.12 ID:JzVlVhD8.net
にこ「ち、ちょっと待ってよ…!」

絵里「どうしたのよにこ」

にこ「じゃあ穂乃果と海未は……?私より先にこの世界に来たはずじゃない…!」

絵里「……それなんだけどね、多分……穂乃果と海未はまだこの世界に来ていないわ」

にこ「!?」

絵里「ここが私たちの元いた世界とは全く別の時空に存在しているとするなら……
元の世界からこっちに転送されるといっても、それがどの時点でのこの世界に……
なのかは元の世界での時の流れとは全く関係ないと思わない……?」

にこ「……!」

にこ「そ、それじゃあ一体どうすれば……」

絵里「待って、まだ希望はあるわ…」

86: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/03/12(土) 12:29:12.80 ID:JzVlVhD8.net
絵里「思い出して、にこ…あなたがほんのちょっと
気絶している間にこの世界はどうなっていたかしら…?」

にこ「……あ!」

にこ「……時間が……まるで何百年…何千年も経過したみたいに変化してた……!」

絵里「そう…つまりね、この世界の時間の流れ方はとてつもなく早いのよ……」

にこ「じ、じゃあほんの何日か待てば…!」

絵里「ええ、おそらく穂乃果と海未が……やってくるはずよ…!」

にこ「さっすが絵里!希望が見えてきたわ……!」

絵里「ふふ……」

絵里(……でも、何かがおかしい……今の私の解釈だけじゃ
説明しきれないような何かがある……うーん……どうにもすっきりしないわね……
時間の流れが早いからといって……それがもうすぐ穂乃果と海未が
やってくる論理的な根拠にはならない?…うん、それはそうなんだけど…
そうじゃなくて……もっと根本的な……何か……)

にこ「?どうしたのよ絵里」

絵里「!い、いや、何でもないわ…!」

にこ「?そう…」

絵里「……」

88: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/03/12(土) 12:42:02.91 ID:JzVlVhD8.net
絵里「とりあえず…ここでじっとしていてもしょうがないし…
今日はお互い自分の家に帰って休みましょう?明日また集まって
穂乃果と海未を探すことにしましょう……」

にこ「……そうね、まあ自分の家って言っても自分の家みたいな気は全くしないんだけど…」

絵里「でも他人の家よりは良いでしょう?」

にこ「…それもそうね」

絵里「じゃあまた明日ね…」

にこ「……あ……」

絵里「…どうしたのにこ…寂しいの?一緒に寝る?」

にこ「ば、馬鹿にしないでよね!さよなら!!」

絵里「ふふ……」

89: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/03/12(土) 12:51:18.49 ID:JzVlVhD8.net
~絵里宅~

絵里「……さて…」

絵里(この家も随分と廃れたものね……)

絵里「……」

絵里(この世界が元の世界と全く同じだとすると……)

絵里「…あ、あったあった」

絵里(保存食…とは言っても流石に何百年もはもたないわよね…やっぱり……)

絵里「うわ……」

絵里(……でも、どうにか食べられないことはなさそうね……助かるわ……)

絵里(水は……問題ないわね)

絵里(……早速ちょっと食べてみましょう…)

絵里「……」モシャモシャ

絵里「……」モシャモシャ……

絵里「……」

絵里(寂しい………………)

絵里「ふう……やっぱりにこと一緒にいれば良かったかしら…?ふふ…」

90: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/03/12(土) 13:01:30.49 ID:JzVlVhD8.net
~にこ宅~

にこ「……何もないわ……」

にこ「……当然水道も止まってるし……」

にこ「うわ、本当になにもない……」

にこ(我が家っていったい……)

にこ「これじゃあ穂乃果たちが来る前に死んじゃうわよ……」

にこ(でも流石に人様の家の保存食を食べるのは気が引けるわね…たとえ誰もいないとしても…)

にこ「……あーやめやめ!一日食べないくらいで死なないわよ!」

にこ「にこはいつでも笑顔!にこっ!」

にこ「にっこにっこにー!」

にこ「……」

にこ(……むなしい)

にこ「やっぱり絵里と一緒に……」

にこ(いや、これは乙女の意地よ…絶対一緒には寝ないわ…)

にこ「……!夜…ね」

にこ(すごい……電気も通ってないし……空もどんよりして星の光を遮って……)

にこ「本当の暗闇ね……気味悪いわ……」

にこ「……寝ましょ」

~絵里宅~

絵里「く、くらい…こわい…」ガタガタガタガタ

91: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/03/12(土) 13:09:56.33 ID:JzVlVhD8.net
―翌日―

絵里「おはよう、にこ」

にこ「……」

絵里「……にこ…?」

にこ「……」

絵里「……」

にこ「にっこにっこにー!!」

絵里「!?」

にこ「おはようニコ!あなたのハートににこにこにーの矢澤にこでーす!」

絵里「……」

にこ「……」

絵里「……」

にこ「…何よ……」

絵里「にこ、無駄な体力は使わない方が良いわよ……」

にこ「……うるさいわね…明るくいこうとしただけじゃない……」

にこ(一日何も食べないのも案外大丈夫なものね、なんとか元気に振る舞えそうだわ…)

絵里「…じゃあ二人を探しに行きましょうか……」

にこ「にこっ!」

………
……

92: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/03/12(土) 13:14:01.49 ID:JzVlVhD8.net
絵里(こうして私たちは二人を探したわ)

絵里(毎日、毎日……)

絵里(でも二人は現れなかった)

絵里(そうして数日が過ぎた頃……)

93: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/03/12(土) 13:28:14.43 ID:JzVlVhD8.net
にこ「絵里……話が違うじゃない……」

絵里「……そうね、二人はまだ現れない……」

にこ「……それもそうなんだけど……」

絵里「…………」

にこ「おかしいじゃない………」

絵里「……何がよ……」

にこ「あれからもう何日も経つのに……建物の風化が一向に進まないじゃない………!」

絵里「………!」

にこ「ねえ絵里、この世界の時間の流れはめちゃくちゃ早いんじゃなかったの?
数日も経てばそれだけでこの世界では数千年分の時間が流れるんじゃなかったの…?」

絵里「…………」

にこ「ねえ、答えてよ……!ねえ……!」

絵里「…………」

にこ「本当はもう別の可能性に気づいてるんじゃないの……?どうなの……?」

絵里「それは……」

にこ「……それにね、おかしいのはそれだけじゃないの」

絵里「……?」

にこ「今までは心配させないように黙ってたんだけど……にこはこっちの世界に
来てからこのかた何も食べてないの……なのに……全然お腹が空かない……」

絵里「な……!」

にこ「どころか……水すら一滴も摂取してないのに……喉が渇かない……!」

にこ「何なのよ…一体…!頭がどうにかなりそうだわ……!」

絵里「にこ……!」

95: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/03/12(土) 13:39:35.42 ID:JzVlVhD8.net
にこ「さらに言うなら……この空気の淀みはなに…?まあ異世界特有の障気
みたいなものなのかもしれないけど……それにしたってやっぱり何か変よ……」

絵里「……私が考えていたのは、この世界は邪悪な気か何かによって作られた
世界で…世界が生まれた直後はまだ障気の濃度が高くて…そこにやってきた
にこはその障気にあてられてしまった…そして、その障気は
時間の経過と共に弱まっている……って感じのことだったんだけど……」

にこ「……一応筋は通った話ね、でも…」

絵里「ええ、もちろん私だってこれだけで説明がつくなんて考えていない…」

にこ「……」

絵里「でも……その先はわからないわ…」

にこ「……わかった、ありがとう」

にこ「……ねえ、絵里……」

絵里「なに、にこ…?」

98: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/03/12(土) 13:54:03.71 ID:JzVlVhD8.net
にこ「そこに…鉄パイプがあるわよね?」

絵里「?ええ」

にこ「それで私を……思いっきり叩いてくれない…?」

―――
――


真姫「絵里が異世界に向かってからもう三日になるわね……」

ことり「そうだね……」

真姫(こんな状態でμ'sの活動に専念なんてできないわよ……!絵里……!)

希「……」

ことり「どうしたの…?希ちゃん…」

希(感じる……海未ちゃんの…絵里ちの……そしてにこっちの霊気を……)

希「…いや……」

ことり「…みんな……」

ことり「もう一度……会いたいよ……!」ポロポロ

101: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/03/12(土) 14:05:18.68 ID:JzVlVhD8.net
真姫「……会い…たい……」ポロポロ

希「……せやな……会いたい……!」

真姫「みんな……!」

カッ

希「!?」

キラキラ…

ことり「な…なに…この光……」

真姫「……あ……!」

海未「……」

絵里「……」

にこ「……」

ことり「みんな………!」

真姫「な、なんで……!」

………
……

103: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/03/12(土) 14:18:45.79 ID:JzVlVhD8.net
希「……そういうことやったんか」

真姫「この部室の扉がこっちの世界に戻ってくるゲートだったなんてね…」

ことり「でもなんでこの扉が…」

希「実はな、今までだまっとったんやけど…この部室は霊的特異点なんよ…」

真姫「霊的…特異点?」

希「鬼門…とも言うな…人の世とそれ以外を繋ぐ場所…
実はこれまでにもしょっちゅう霊や妖の類いはこの部室を出入りしとったんよ…」

絵里「ヒッ」

にこ「どうしたの絵里」

絵里「い、いや、しゃっくりよ、失礼」

希「……多分向こうの世界はこっちの世界の鏡みたいな感じなんやないかな…」

真姫「鏡…ね」

絵里「そういえば…向こうの世界では何をしても死ねなかったのだけど……」

真姫「!?死のうとしたの!?」

絵里「い、いや、色々あったのよ……」

絵里(10年もあればそりゃね……)

希「…それは多分霊的呪縛やな」

絵里「の…呪い…なの?救済じゃなくて?」

104: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/03/12(土) 14:24:13.50 ID:JzVlVhD8.net
希「だって帰ってこれるゲートはこの扉しかないんやで?
普通の人ならまず見つけられない…普通なら永遠に死ぬことなく異世界を
さ迷い続けることになるんや……皆、この学校の生徒でよかったなあ…」

絵里「ヒッ」

真姫「よくしゃっくりが出るわね」

にこ「やっぱりにこの言った通りじゃない~」

絵里「え、ええ、そうね…いきなり鉄パイプで殴れなんて
言い出した時はどうしたのかと思ったわよ……」

にこ「あんたもよくそんな昔のこと覚えてるわね~感心するわ」

真姫(昔……?)

ことり「……?でも、皆はなんでこの扉がそうだってわかったの?」

絵里「ああ、それはね……」

106: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/03/12(土) 14:32:43.94 ID:JzVlVhD8.net
絵里「たまたま…そう、本当にたまたま…」

絵里「この部室を訪れた時に扉の前に立て札があってね、」

絵里「その立て札にはこんな感じの事が書かれていたわ…」

『この門を潜りし者異形の者となりて現世に還るなり
異形の者は現世の生者を身代わりに幽体として友の元へ立ち現る
友の思い重なりし時肉体は復元されるであろう…』

ことり「………」

真姫「…それってつまり…」

108: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/03/12(土) 14:48:49.78 ID:JzVlVhD8.net
真姫「エレベーターの5階で乗り込んでくる若い女性っていうのが……」

絵里「……そういうことよ」

真姫「……なんてことなの……!それじゃあ結局……」

絵里「そう、私たちは他の誰かを代わりにして戻ってきただけ……
誰かが…初めて誰かがあの世界に行った時から…この連鎖は始まって……」

絵里「終わらない…終わりようがない…私たちにはこの連鎖を
断ち切ることは出来なかった…!唯一の救いは…私たちが直に
身代わりにした相手が今この場に帰ってこれたことだけ……!」

絵里「もちろん私たちだってこんな方法で戻って来たくはなかった……!」

絵里「でも……これしかなかった……!」

にこ「……私はこんな呪いを仕組んだ奴を絶対に許さないわ…
一生かけてでも見つけ出してみせる……そして、呪いを解除させる……!」

絵里「それが……私たちの…罪滅ぼし…」

真姫「………まあなんにせよ…」

110: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/03/12(土) 14:51:16.74 ID:JzVlVhD8.net
ことり「……うん……」

真姫「これでμ'sが全員揃ったんだから…ひとまずはよしとしようじゃない……」

絵里「……そうね……」

海未「……………………」

113: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/03/12(土) 14:59:55.39 ID:JzVlVhD8.net
海未「…………」チラッ

希「…………」

希(海未ちゃん…ウチは覚えてるよ……)

海未「…………」

海未(やはり……やはり皆穂乃果のことを忘れてしまっています……
覚えているのは……私と…希…だけ…。いえ、違います……皆穂乃果を
忘れてしまったのではありません……。皆……知らないのです…穂乃果なんて…
最初から…………!もはや、ここはそういう世界なのです……!)


……
………

穂乃果「……海未…ちゃん……?」

海未「!!!!」

海未「あ……ああ……」

海未(なんということでしょう……)

………
……


海未(あの時穂乃果は……私に話しかけてしまいました……
それは……失敗……そう、失敗です…。にこは確かに…話しかけてしまったら…
それは失敗だと言いました…異世界に行けないのではなく……失敗…。)

海未(恐らく穂乃果は…帰る手段もなく……永遠にあの寂しい町をさ迷い続けて
いるのでしょう…今も……いえ、今…というのは適切ではないのかもしれませんが…)

希(穂乃果……ちゃん……)

114: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/03/12(土) 15:06:20.15 ID:JzVlVhD8.net
海未(穂乃果……!私は……一生かけてでも…あなたをなんとかして
救いだしてみせます……!あなたのいないμ'sなど……μ'sではありません……!)

海未(μ'sは……七人揃って…μ'sなのです……!)

希「…………」

希(海未ちゃん……海未ちゃんなら……薄々感づいていてもおかしくない……)

115: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/03/12(土) 15:11:13.22 ID:JzVlVhD8.net
―その夜―

~海未宅~

海未「穂乃果…」

海未「一生かけてでも……」

海未「……一生?……」

海未「…ええ、一生…です……」

~希宅~

希「海未ちゃん……ほんまは気付いてるんやろ…?」

116: 名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/ 2016/03/12(土) 15:25:31.30 ID:JzVlVhD8.net
数日後、地球上の全人類が死滅した
原因は某国の開発した細菌兵器である
某研究所の試算した隕石の軌道は
半年後の地球の滅亡を示しており
地球からの脱出を計画した各国
首脳陣であったが国民の暴動による
脱出失敗を恐れた彼らは
完成したばかりの細菌兵器で
この世界を終末へと導いた
しかし皮肉にも隕石は地球との
衝突を避け…各国首脳陣を乗せた
宇宙船に激突 宇宙船はその場で大破した
残された地球は蒸発した人間による
分厚い黒雲と高濃度の汚染大気、
そして細菌たちで彩られた
まさに地球は死の星と化したのである…

………
……


ピンポーン…

にこ「…ここが異世界…?なんだか元の世界と変わらないような……」

にこ「……!な、何なのこれ……!まともに立っていられない……!」

………
……




おしまい