僕らはもっと勉強がしたい。iPadが変えた「学び」の未来
3月13日(日)に、アップルストア銀座にてとあるイベントが開催されました。イベント名は「Teacher's Night iPadが変える学び」。こちらでは、身体にハンディキャップを抱えた子どもたちの「学びたい」を実現すべく奮闘する、先生や大学生たちの話を聞くことができました。
登壇したのは、筑波大学附属桐が丘特別支援学校の生徒と白石利夫先生。白石先生は、筑波大学の櫻井教授や学生たちと共同で、生徒たちが学びやすいアプリの開発に取り組み、この取り組みは今年で3年目を迎えるそうです。
桐が丘特別支援学校は、大学附属として国内唯一の肢体不自由児を対象とする特別支援学校。生徒たちは、我々が普段当たり前だと考えているようなこと、たとえば、教科書のページをめくったり、鉛筆でノートに書き込んだり、プリントやノートを持ち運ぶ、ということでも、行なうのが難しい場合があります。
そのような生徒たちに、より適した学習方法はないだろうか。白石先生は、さまざまな方法を模索し、アクセシビリティに優れた入力デバイスである、iPadにたどり着いたのだそうです。
その一例がこちらの「FracCalc」。分数の計算が直感的に入力可能なアプリです。一般的な電卓のインターフェイスに、「分の」という文字が見やすく入っていることにより、操作が直感的に行なえます。開発にあたっては、生徒の思考順序を考慮し、分母から入力できる点にも配慮したとのことです。
またこちらの「iPolyFactor」は、因数分解の練習問題が行なえるアプリです。数字を入れていくと正解、不正解が表示されるのですが、これにはそのほかにも工夫が。上部のスライドを切り替えることで、入力部分と表示部分が入れ替わるのですが、これは生徒たちの利き腕に合わせるための仕様とのこと。特に半身が麻痺している生徒さんなどのために加えられた機能なのだそうです。
さらにイベントでは、生徒たちが今後望むアプリや機能についても話され、構音障害(正しく発音することが難しい言語障害の1つ)を持つ生徒が登壇。「自分たちでも使える、音声認識ソフトが欲しい」と語った彼らは、ユーモアたっぷりに「お母さんが目の前で音声認識を使うとイラッとします」とも話してくれました。
開発に携わった学生のほとんどは、入学前までプログラミング経験がなかったといい「実際にアプリを開発し、それが役に立つことがモチベーションになった」と語っていました。また「(収益を生まなければいけない一般企業にはできない)局所的なニーズに応えたい」との意気込みも。「自分も将来、障害者視線からのアプリ開発をしたい」と言ってくれた生徒もいたそうですよ。
このように、生活にハンディを抱えた子どもたちが「学び」の機会を得たことは、iPadをはじめとしたタブレット型端末の新たな可能性を示したといえるのではないでしょうか。
「本当は自分でできることを、今まで人に頼んでいたことに気づいた。自分でできることは自分でやりたいという気持ちになった」と語った生徒たち。この言葉には重さを感じます。
今後は、ほかのハンディキャップを持った人たちにも使えるようなアプリの開発にも取り組みたい、と意気込みを話してくださった先生と学生たち。
みなさんの晴れやかな笑顔が印象に残るイベントでした。
(渡邊徹則)