一般常識と考えられているものの中には、何の疑いももたず、その根拠を確かめることなしに信じ込んでしまっているものもあるようだ。
その1つに「舌は場所によって味の感じ方が違う」というものがある。舌にはそれぞれの味に対応した”味覚帯”があるというのだ。これは誤りである。その誤解を生み出した張本人はエドウィン・ボーリングというアメリカの著名な心理学者である。
ニューヨーク・タイムズ紙のC・クレアボーン・レイ氏によれば、人間の舌には、確かにある味に対して他の場所よりわずかに敏感な場所があるが、ほんとうに「わずか」で、その場所を正確に突き止めることはほとんど不可能だという。
実際の舌とは、複数の味を検出できる多様な味蕾がひしめく複雑な器官である。それ故に特定の味受容体が特定の部分に偏って存在するということはない。
なぜ誤解が広まったのか?
ではなぜ誤解が広まったのだろうか? レイ氏の主張によれば、”味覚帯”の図は、1942年に当時ハーバード大学やクラーク大学で教鞭を執っていたボーリング博士によって公開されたのだという。
ボーリング博士の図は4種類の味を感じる場所を区分けしたものであった。甘味は舌の先端、塩味はその両脇から中ほどにかけて、酸味はさらにその後ろ、苦味が一番奥といった具合だ。第5の味覚、うま味には触れていない。
スティーブン・D・ミュンガー博士によれば、この間違いはボーリング博士が図の作成にあたって参照したデータが、ドイツのD・P・ヘーニッヒ博士による1901年の論文から得ていたことに起因するようだ。
ヘーニッヒ博士は、ボーリング博士とは違い、そのデータを当時の科学者たちを大いに誤解させるグラフの形で提示した。
それは舌の上の味が検出される部位の輪郭を描いているかのように見えたのだ。実際にヘーニッヒ博士が言わんとしていたのは、ある部位は他の部位と比べて特定の味に対してわずかに敏感であるということだった。特定の味が特定の部位でしか感じられないというのとは大違いである。
この誤解を与える情報は、発表から40年後にボーリング博士によって取り上げられ、例の図が作成された。この図でうま味が扱われていないのも、ヘーリッヒ博士の論文が扱っていなかったことが原因であり、いずれにせよ極めて不完全なものであった。
それにもかかわらず、特定の味は舌の特定の部位が感じているという誤解が世に広まってしまったのだ。
この図は非常に見やすく、子供でも簡単に理解することができた。だが、致命的な欠陥があるのである。そう、完全に間違っていたのだ。
この話が信じられないというのならば、何か苦いものを舌の先っぽに置いたり、甘いものを中ほどに置いてみればいい。ボーリング博士の図が正しいのであれば、対応しない場所に置かれたものの味は感じないはずだ。
時代を経るにつれて、その図は世界中の教室の中に入り込み、いつしか常識となっていった。その間、疑り深い分子生物学者が繰り返し舌の味覚は分割されていないと証明してきたのに、誰も信じようとはしなかった。一度ついてしまった既成概念や、古い習慣は容易に変えられないのだろう。
もしかしたらまだ知られていない味はいくつも存在するかもしれない。とにかく味蕾が複数の味を感知できることは間違いない。つまり「舌は場所によって味の感じ方が違う」というのは誤りであり、舌はどの部分でもほぼ同じように味を感じるようにできているのだ。
もちろん、特定の味に対して敏感な味蕾もある。だが、こうした味蕾は全てが協調して機能する。だから、あるものが塩味に敏感で、あるものは甘味に敏感でも大丈夫なのだ。結局は均一に味を感じることができるようにできているのだ。
via:sciencealert・translated hiroching
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コメント
1. 匿名処理班
今まで正しいと思っていたものがデタラメだったときの感覚チョット好きよ
2. 匿名処理班
粉薬とかどうやって飲んでもにがい。
3. 匿名処理班
今飴玉転がして確認してみた
味に寄る明確な差異は良く分からんが、一応舌の中央は味覚鈍い気がする
4. 匿名処理班
これね・・小さいころからこれはウソでしょ、って思ってた。でも間違ってると言うほどのものでもないしそのまま放置されてたんだな
5. 匿名処理班
これ読むまでそっくりそのまま信じてたよ。科学的伝言ゲームの結果だったとはビックリ。
6. 匿名処理班
でもブラックコーヒー飲むと下の付け根の方めっちゃ苦く感じるんじゃが
7. 匿名処理班
えーーーーー
これ本当なの?
せっかく百科事典で調べたのにーーー
(´・_・`)💢
8. 匿名処理班
自分の舌で試してみればイッパツでわかりそうなんだけどね
9. 匿名処理班
これ信じて広めてた科学者は舌先で薬舐めて苦っ!ってなったこと無いのか?
10. 匿名処理班
じゃあ「旨味」はどこで感じてるんだって話になるしな
11. 匿名処理班
この説を初めて聞いた子供の時からおかしいとはずっと思ってた
だって実際の自分の経験と合致してないからね
12. 匿名処理班
自分もこれは懐疑的だったのですごくスッキリした。
味の種類というか、その味を代表する食べ物の性質の問題だと思うな。
フルーツやコーヒーなんかは香りも大事だからまぁ口の奥に持っていくだろうし、
砂糖や塩はあまり口の奥の方まで突っ込むもんじゃないだろうし。
13. 匿名処理班
知ってたわけじゃないけどなんとなく気付いてた
14. 匿名処理班
ソムリエが舌の場所によってワインの味が変わるのを試してくださいとか言ってて
ちょっと笑ったな。
ソムリエが自分の舌より耳学問のほうを信じてていいのかと。
15. 匿名処理班
速攻で叩かれて「人により違う」になったりして。
16.
17. 匿名処理班
※14
わずかに敏感な部分あるとはいってるから
その微妙な差が分かるのがソムリエなんじゃないの
18. 匿名処理班
確かにあまり疑って無かったな。
味覚訓練とかどーすんだろ?
19. 匿名処理班
でも口内炎で
痛いところは確実にあると思う
20.
21. 匿名処理班
ポーリング博士、この件では何の役にも立ってないwww
22. 匿名処理班
なんかの料理漫画で言ってたような気がする・・・
23. 匿名処理班
砂糖の甘味は舌全体で感じるけど、アマチャズルの甘茶の甘味は舌の奥でしか感じないなあ。
24. 匿名処理班
そんな気がしていたんだよな
25. 匿名処理班
苦味とか明らかに舌の付け根で感じるけど
やっぱり局在してるんじゃないノの?
26. 匿名処理班
>実際にヘーニッヒ博士が言わんとしていたのは、ある部位は他の部位と比べて特定の味に対してわずかに敏感であるということだった
これを理解できてない人が多い
27. 匿名処理班
やっぱそうだよねぇ
変だと思ってたの自分だけじゃなかったか
28. 匿名処理班
天文学とか考古学とか医学って数ヶ月単位で
それまでの常識が塗り変わるよね。
この手の新常識によって
既存の健康食品がいくつ消えていったことか。
29. 匿名処理班
子供の頃角砂糖や粉薬、コーヒーの粉を舌に載せて実験したけど、図の通りじゃないよなー、でもこう書いてあるよなー?って思ってたんで、すっきりしました。
30. 匿名処理班
薄いグラスで飲むと甘く感じるってあるよね?
あれもじゃあ錯覚なのかな?
確かに甘く感じるんだけどなー
不思議!
31. 匿名処理班
子供の頃イヤホンの線かじる癖があって、電気って味がするんだと思ってた
舌先で感じる電気と、奥の方で感じる電気は違ったよ
どんな味って聞かれても電気の味としか答えられないけど
32. 匿名処理班
引きつけを起こして、舌の先端を強く噛み続けた時
一週間くらい甘みを感じなかったよ
33. 匿名処理班
※29
それはたぶん電気の味というよりかは
電線の金属の味じゃないかな。
34. りせ
舌の味覚図が似非科学だというのは常識だと今まで思っていたけど、
コメントの反応をみてると、知らない方のほうが多いのに驚きました。
35. 匿名処理班
おっさんだが。飽くまでその部位はその味を「感じやすい」、だと思ってたけども。
その部位がその味覚「しか」感じない、なんてなったのはいつ頃からなの?
36.
37. 匿名処理班
え?ちゃんと誤解ない正しい説明で教わったけど?