蘭子「黄泉がえり」
熊本弁に違和感がありましたら申し訳ありません
…しばらく出てこない予定ですが
光輝くステージの上で踊り、歌う
仲間たちも観客も、もちろん私も、ものすごい高揚感だ
ライブが終わり、ステージの袖に戻ると彼が笑顔で出迎えてくれる
―ここで夢は終わり。
かつて何度も見た光景、そして、もう二度と見ることの無い光景
母「あら、今日は自分で起きたの」
蘭子「うん。…朝ごはんは?」
母「できてるわよ」
――
母「…それにしても、蘭子が普通の喋り方をするようになってしばらく経つわね」
蘭子「まだ、変かな?」
母「いいえ、全然。もうこっちの方に慣れちゃったくらい。
…でも、ちょっとだけ寂しいかな」
蘭子「…ごちそうさま」
母「もう学校に行く?」
蘭子「うん」
アイドル時代の話し方や服装はやめて、できるだけ地味に過ごすことに決めた
それでも昔のことを聞いてくる人はいたけれど、答えを渋っているとその内誰も聞いてこなくなった
刺激も興奮も無い平坦な日々
でも、それも悪くないんじゃないかと思う
そう、これでいいんだ
蘭子(…今日はいつもと雰囲気が違う?)
生徒「だからそんなわけ無いだろ、母ちゃん、今学校なんだからイタズラなら後に…え?」
教師「冗談でも言っていいことと悪いことがあるだろう。
…まあいい、詳しいことは帰ってから聞くから」
蘭子(なんだか電話をしている人がやけに多い。
それに、なんだか皆困惑している。
…何かあったのかな?)
昼休みに感じた違和感を、帰り道の途中でも感じた
道行く人々の中に、驚いたような、興奮したような顔をいくつも見かける
地元では滅多に見ることの無い中継車も見かけた
何かが起きている…計り知れない、大きな何かが
…いや、やめよう
『そういうこと』からは、もう卒業したんだ
母「おかえりなさい。…蘭子、ちょっといい?」
蘭子「何?」
母「今ちょっとお客さんが来ているんだけど…説明もなしに会ったらきっと驚くと思って」
蘭子「…?良く分からないけど、挨拶してくるね」
母「あ、ちょっと待って…!」
???「おお、蘭子…だよな?久しぶりだな」
蘭子「…ぷろ、でゅーさー?」
P「ああ。…蘭子が制服姿で髪を下ろしているのも何か新鮮だな」
蘭子「そんな、プロデューサーは去年…」
P「そのことなんだが…どうやら俺は、生き返ったらしい」
蘭子「大丈夫じゃないよ!どういうことなの!?」
母がテレビを付けると、臨時ニュースが流れていた
『死んだ人が生き返った!?』という派手なテロップの下に、私の地元の地名も映し出されている
蘭子「これは…」
母「今日のお昼頃から起き始めたみたいでね、どこもかしこも大慌てよ。
市役所なんて人がごった返すわ、担当がどこかもわからないわでひどい状況みたい。
…で、ニュースを見ていたら突然Pさんから電話がかかってきたの」
P「驚かせてしまって申し訳ありません」
母「いいんですよ。
とりあえず事態が落ち着くまでPさんは家にいてもらおうと思うんだけど、いいわよね?」
蘭子「…いいけど、プロデューサーは実家に帰らないの?」
P「俺の死ぬ前に両親も死んじゃってるから、身寄りが無いんだ。
それでどうしようかと困っていたら、蘭子の実家の電話番号を思い出して」
P「いや、いいよ。
…それにしても、普通に喋っている蘭子っていうのもなんだか不思議だな」
蘭子「なっ…!!」
P「いや、悪い意味じゃなくてさ、1年で蘭子も成長したんだなって実感するよ」
蘭子(…そうじゃない)
P「…なあ蘭子、もう一度アイドルをやってみる気には…」
蘭子「やめて!!」
P「!!」
蘭子「その話はしたくない。
…部屋に戻ってるね」
母「いえ、…私も少しだけ期待していましたから」
P「あの、今後についてなんですが」
母「蘭子もあの様子ですし、夫が帰って来てからまた話しあいましょう。
夕飯、召し上がっていって下さい」
P「…ありがとうございます」
父「…ダメだ」
母「あなた!」
父「年頃の娘がいるのに、男を泊めるわけにはいかない。
…金はこちらで持つから、ホテルにでも泊まってくれ。
今は観光シーズンでもないから空きはあるだろう」
母「Pさんは蘭子の恩人で…」
父「そんなことは分かっている。
だが、当の蘭子が部屋から出てこないじゃないか。
…恐らく、あんたが原因で」
P「…」
父「私は蘭子の父親として、あいつが傷つくようなことはして欲しくない。…それだけだ」
P「…分かりました」
母「すいません、Pさん」
P「いえ、…あの、一つお願いがあるのですが」
P「蘭子、起きてるか?」
蘭子「…」
P「部屋から出てこなくてもいい、…俺はホテルに泊まることになったから、心配しないでくれ。
でもその前に一つ、頼みたいことがあるんだ」
蘭子「…何?」
P「プロダクションに電話してくれないか?」
蘭子「…」
P「俺が生き返ったことを、報告して欲しい。
いきなり死人から電話がかかってきたら向こうも驚くだろうからさ。
もしかしたら、何か助けてもらえるかもしれない。
…このまま蘭子の家に世話になりっぱなしっていうのも悪いと思って。
これ、ホテルの電話番号な。ドアの下に挟んでおくから。
それじゃあ…」
蘭子「プロデューサーは」
P「ん?」
蘭子「…また、アイドルのプロデュースをするつもりなの?」
P「…俺の身体がこれからどうなるか分からないから、はっきりとは言えない。
でも、可能であればプロデューサーの仕事がしたい。
そう、思っている」
蘭子「…」
P「…それじゃあ、もう行くよ。ちゃんと夕飯食べろよ?
それから…ごめんな」
蘭子「…」
蘭子「…ごめんなさい」
父「それじゃあ、Pさんを送っていくから」
P「何から何まで、すいません。
夕飯までご馳走になってしまって」
母「いいんですよ。
…蘭子が機嫌を直したら、また会ってもらえませんか?」
父「母さん」
母「分かっています。
それでも、あの子にとっては大事なことだと思うから」
父「…」
P「分かりました。
…それでは、失礼します」
父「…あんたとは」
P「え?」
父「生きている内に夕食を食べたかったな」
P「…同感です」
父「あいつは、あんたが死んだ後相当傷ついてな。
今はだいぶマシになったが、それでもひどいものだ。
…もしあんたが中途半端な気持ちであいつを傷つけるなら、俺は絶対にあんたを許さない」
P「…俺が蘭子の笑顔を奪ってしまったのなら、今度は全力で取り戻してみせます」
父「…そうか」
名前を告げ、要件を伝えると電子音が二週するほど待たされてから、懐かしい人物に繋がった
ちひろ「お電話ありがとうございます、○○プロダクションの千川です。
…蘭子ちゃん、よね?」
蘭子「お久しぶりです、ちひろさん」
ちひろ「どうしたの、こんな時間に。
…もしかして、復帰する気になった!?」
蘭子「…いえ、あの、ニュースは見ましたか?」
ちひろ「熊本で死んだ人が生き返っているっていうアレのこと?
すごい騒ぎになっているわね」
蘭子「はい。…あの、実はPさんも生き返ったんです」
蘭子「…ちひろさん?」
ちひろ「…!!ごめんなさい、それは本当なの?」
蘭子「はい。それで、Pさんは身寄りがないので、プロダクションの方でなにか手助けしてもらえないかっていうことで…」
ちひろ「わかりました、すぐに手配するわ。
とりあえず、明日にも様子を見に行ってもいいかしら?」
蘭子「えっ、そんなに急にですか!?」
ちひろ「心配はないわ。スケジュールの調整はどうとでもなるから。
今のところお金は神崎さんのお宅で出してもらっているということでいいのよね?
そのあたりのことも、明日詳しく話をさせてもらうわ」
蘭子「…ありがとうございます」
ちひろ「いいのよ。…Pさんには、感謝してもしきれない位だもの。
それから蘭子ちゃん」
蘭子「はい?」
ちひろ「…あまり、無理をしちゃダメよ?」
蘭子「…はい」
ちひろ「それじゃあ、お休みなさい」
電話が終わると、そのままベッドに倒れ込んでしまった
ちひろさんの言った言葉の意味を考えている内に、そのまま眠りに落ちていた
蘭子「…ただいま」
母「お帰りなさい。すごいお客さんが来てるわよ!」
蘭子「…?」
―リビング
ちひろ「お久しぶりね、蘭子ちゃん。
昨日はお電話あ
コメント一覧
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- 2016年03月21日 23:09
- 熊本が舞台だったなそう言えば
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- 2016年03月21日 23:18
- 感☆無☆量!
てっきりドン千が運命を書き換えるのかと思ったら世界線は変えなかったのか
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- 2016年03月21日 23:26
- 良いクロスだ
掛け値なしに
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- 2016年03月21日 23:32
- 蘭子は
この世で
一番可愛い
これはどう考えても
揺るぐことのない事実
そうは思わないかね
……思わないか
-
- 2016年03月21日 23:43
- ※1
むしろ熊本ありきで月のしずくカバーしたんちゃうの?
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