響「貴音!?」たかね「めんような!」【前半】
響(……ん、 ……あー、朝かぁ)
響(今日はオフだし…… さむそうだし、まだ寝てよ……)
響(そうだ、貴音…… は、もう起きたのかな? いないや)
響(起きてるなら、早く朝ごはん作ってあげなきゃ……)
響(でも、ちょっとだけ…… あと5分だけごろごろしたら、起きよ)
<ガシャーン
響「!?」ガバ
響(なんだろ、貴音、お皿でもひっくり返したかな)
響(まったくもう、おかげですっかり目が覚めちゃったぞ!)
ガチャ
響「貴音、どうしたの? 今の音、いったい」
たかね「!」
響「…… んん!?」
たかね「……」
響「えっ…… ええと、あの、キミ、誰かな……?」
響(この子…… 見たとこ小学生くらい? にしても、臙脂色の目に、腰までの銀髪って、まるで……)
響「……その髪の色とか、長さとか、それに目の色とか…… もしかして貴音なの!?」
たかね「む…… そなた、なにやつです。なぜわたくしのなまえをしっているのですか!」
響(やたら時代がかったしゃべり方もそっくり…… って!?)
響「ちょっ、えっ…… 自分のことわかんないの!? ほら響だよ、我那覇響!」
たかね「…… がなは、ひびき……? しらぬなです」
響「そ、そんな!」
たかね「それより、わたくしをこのようなところにつれてきたのはそなたですか!?」
響「うがっ!? 違うよ、自分そんなことしてないぞ!」
たかね「おだまりなさい! わたくしをかどわかしてどうするつもりですか!」
響(あ、この話聞かないあたり間違いない、これ貴音だ!)
響(ど、どうしよう…… そうだ、とりあえずプロデューサーに連絡!)
たかね「……? そなた、そこでなにをしているのです」
響「ごめん貴音、ちょっと待ってて。すぐ終わるから」
たかね「……なぜわたくしのことをきやすくよぶのか、りかいしかねますが、まあよいでしょう」
響(しっかりしてるようで案外チョロい! やっぱりこれ貴音だ!)
プルルルル
響(プロデューサー、早く電話出てよ……! 今日はお休みだし、朝だから大丈夫なはず……)
ガチャッ
P『……んぁ、響か? まだ8時過ぎたばっかりだぞ…… いきなりどうしたんだ、いったい』
響「プロデューサー! 休みの日にごめん。あのさ、落ち着いて聞いてほしいんだ」
P『あ、ああ……? どうした、なにか問題でもあったのか?』
響「そうなんだ…… あのね、た、貴音が、ちっちゃくなっちゃったんだぞ!」
P『……』
響「……」
P『……響。お前な、せっかくの休日の朝に電話してきてマギー審司の改変とか、そりゃないだろ』
響「ほ、ホントなんだってば! っていうかマギー審司って誰さー!?」
P『待て、俺はそのジェネレーションギャップが地味にショックなんだが』
P『まあいいや…… 貴音がちっちゃくなっちゃったってなんだよ、どういう意味だ?』
響「いや、どういう意味もなにもそのまんまだぞ! 朝起きたら貴音が小学生くらいになってて!」
P『……ん? ちょっと待てよ響、起きたら貴音がちっちゃい子になってた?』
響「もう、だから自分がさっきからそう言ってるじゃないかぁ!」
P『なぁ、そもそもなんで朝起きた時点で響と貴音が一緒にいるんだ』
響「えっ? だって今日は貴音も自分もオフだから、貴音、自分の部屋に昨日から泊まりに来てて……」
P『お泊まりィ!?』
響「うわぁっ!? なに、プロデューサー、どうしたのさ突然」
P『泊まりって…… 響お前、貴音とそんな関係だったのか!?』
響「え? そんな関係って…… えっ、どういうこと?」
P『そ、そんなって…… あれだよ、その…… なんだ、百合百合しいというか、キマシタワー的な』
響「キマシ……? ゆりゆりし…… ……は、はあぁ!?」
P『い、いや、響、いいんだ、愛の形にはいろいろあっていいと思う、俺は気にしないぞ?』
響「ななななに言い出すんだプロデューサー!? やっぱり変態だったんだな!」
響「だ、だいたい、仲のいい同性の友達が家に泊まりに来ることなんて珍しくないだろ!」
P『そ、そうか? 俺はそういうのって怪しいんじゃないかなーと思うんだけど……』
響「全然怪しくないよ! そもそもプロデューサーだってそういう経験あるでしょ!?」
P『……』
響「プロデューサー?」
P『なかった』
響「えっ」
P『俺、友達が泊まりに来たことも、友達の家に泊まったこともないし』
響「あ、そ、そうなんだ」
P『そういえば、仲のいい友達ってもの自体、あんまり』
響「ごめん! プロデューサー、自分が悪かったぞ! だからもう」
P『ノート貸してとか頼まれることはあっても、俺、飲み会とか、合コンとか、ぜんぜん』
響「ぷ、プロデューサー! しっかりして、元気出して! もうこの話やめよう!?」
響「ごめんってば、プロデューサー…… 落ち着いた?」
P『うん…… グスッ、うん大丈夫、もう大丈夫』
響「なんにしてもさ、貴音がちっちゃくなっちゃってるのはホントなんだ」
P『そうは言われてもなぁ…… やっぱり俺もにわかには信じがたい』
響「んー…… あっ、そうだ! じゃあちょっと待ってて、自分、証拠の写メするから!」
P『写メ、なぁ…… まあいいや、わかった、とりあえず待ってるよ』
たかね「……」
響「よーし、じゃあ貴音、ちょっと動かないで、そのまんまだぞー」
響(えっと…… ピント合わせて、っと) <ピピッ
たかね「!」サッ
響「あっ!?」 <カシャッ
響「もー! なんで動くの!」
たかね「……わたくしの、たましいをぬこうとは」
響「はぁっ!?」
たかね「かくしてもむだです。そのめんようなきかいのこと、わたくしはしっております」
響「え、面妖な機械って、これただのスマホだよ?」
たかね「いいえ、それで"かしゃっ"とされると、たましいがぬかれるとききました」
響「めんどくさいなこの子ホントに!」
響「……ここだぁっ!」 <ピピッ
たかね「あまい!」 シュッ
<カシャッ
響「うがーっ! だーかーら、写真撮るだけで魂抜いたりしないから! 大丈夫だから!」
たかね「だいじょうぶだから、さきっちょだけだから、などといってわたくしをたぶらかすつもりですね……」
響「ど、どこでそんなことば覚えたんだー!? いいからじっとするさー!」
たかね「いやです! わたくしのたましいはわたしません!」
響「ぐぬぬ…… しょうがない、こうなったら最終手段だぞ…… おーい、ちょっとこっち来てー!」
たかね「ふん、しょうし! たすけなどよんだところで、このわたく」
へび香「……?」 ニョロ
たかね「しじょっ」 キュウ
響「よくやったへび香! ナイスタイミング!」
響「目を回してるこのスキに、まずは撮影して…… っと」 <ピピッ カシャ
響「…… しかし、貴音、なんでこんなことになっちゃったんだ……」
響「さておき、これならプロデューサーも信じてくれるはずさー。よし、送信っ」
<ピロリン
響「わっ、返信早いなぁ…… でも当然だぞ、こんな一大事だもん。えーと、なになに?」
『1枚だけじゃ判断がつかない もっと沢山、それもいろんなアングルから撮った写真が必要だ』
<ピロリン
『はよ 画像はよ』
響「」
<ピロリン
P「お、響もさすが対応が早いな」
『この変態口リコン』
P「!?」
響「……で、変態プロデューサー、自分の言ってること信じてくれた?」
P『ああ…… 確かに写真見る限り貴音が幼児化してるな…… あと俺は断じて変態じゃ』
響「この子、喋り方とかも貴音によく似てるし、間違いないと思うぞ。でもさ……」
P『なんだ、この上まだなんかあるのか』
響「……貴音、自分のこと、覚えてないみたいなんだ」
P『なんだって!?』
響「まだはっきり確かめたわけじゃないけど、記憶もこの年齢のころに戻ってるとかじゃないのかな……」
P『なんてこった…… 貴音が直近で大きな仕事とか控えてないのは不幸中の幸いってやつだな』
響「うん、どうすれば元に戻るかとか、現状ぜんぜんわかんないからさ……」
P『そうだな。とりあえず、響はその子をしっかり保護しといてやってくれ』
響「もちろんそのつもりだぞ。プロデューサー、貴音のスケジュール調整とかお願いできる?」
P『ああ、できるだけのことはやっとく。明日、事務所で相談しよう。少し早めに来れるか?』
響「うん、大丈夫。今日は自分もできるだけこの子から話聞いてみるね」
P『それがよさそうだな。そっちは任せたぞ』
たかね「……ううん」
響「!」
たかね「……はっ! あ、あのかいぶつはいずこに!?」
響「ここにはもういないから大丈夫だぞ。それよりさ、ねえ貴音、ちょっと自分とお話ししよう?」
たかね「わたくしには、そなたとはなすことなどありません」
響「……"ひびき"!」
たかね「え?」
響「さっきも言ったでしょ? 自分の名前、響って言うんだ。ひ、び、き」
たかね「……ひびき?」