「艦娘として、生まれて」
艦これSSを2話投稿予定です。
特にその2話に繋がりなどはありません。
ひとつ(不知火)は今から、もうひとつ(日向)は3月中には投稿します。
よかったらお時間下さい。
提督「……不知火」
不知火「おや、司令。お疲れ様です」
提督「なにをしていたんだ?」
不知火「いえ。海を見ていました」
提督「海を? 出撃で飽きるほど見てるだろう」
不知火「ええ、まあ。しかし、陸から見る海は、また違うのですよ」
提督「そういうものか?」
不知火「そういうものです」
提督「そうか。提督になると、海に出ることがめっきりなくなったな」
不知火「司令も以前は、海に?」
提督「ああ、まあな。海自だったから」
不知火「では、連中が出る前ですか」
提督「そう。おまえたちが就役する前」
不知火「……提督は、陸から見る海に、何か感じませんか?」
提督「いや。俺にとって、海は恐怖の象徴でしかないからな」
不知火「それは不知火も同じです。出撃の度、死を覚悟して海に出ています」
提督「お揃いだな。俺もおまえたちを失うのが怖くて仕方がない」
不知火「……しかし、不知火にとって、戦いの海と、陸から見る海は、違います」
提督「どういうことだ?」
不知火「それは……艦娘として生まれて、嬉しかったことがみっつ、あるのです」
提督「嬉しかったこと?」
不知火「はい。ひとつは、この日本が、未だあること」
提督「日本がか」
不知火「ええ。『不知火』の最後の記憶は、早霜乗員の救助に失敗し、船員も、この身も、すべてを失った記憶です」
提督「……」
不知火「その後、守るべき国が、いったいどうなったのか、不知火には知る由もありませんでした」
不知火「艦娘としてこの世に生まれ、敗戦を知ったとき――涙が止まりませんでした。守るべき国が、守るべき民が、蹂躙されたのだと」
提督「不知火」
不知火「不知火の、帝国海軍の、力が及ばなかったばかりにです」
提督「おまえのせいじゃない」
不知火「いいえ。不知火のせいだけではないかもしれません。しかし、不知火に責任の一端があることは事実です」
不知火「しかし同時に、日本が、あの頃からは信じられないほど繁栄を遂げていることを、嬉しく思いました」
提督「……そうだな。俺は大戦を知らないが、その頃からは想像もできないだろう」
不知火「はい。これがひとつめです」
提督「ふたつめは?」
不知火「司令は、海自にいらしたのですね。では御存知と思いますが、海自の艦の名です」
提督「ああ。艦娘と同じ名を持つ艦も多いな」
不知火「残念ながら、『しらぬい』はいませんが。妹の『くろしお』を始め、『ゆうばり』、『あたご』、『こんごう』……多くの名が、受け継がれています」
提督「そうだな。俺の乗っていた艦もそのひとつだった」
不知火「名は体を表す、と言いますが、不知火たちが戦ったことが、無意味ではなかったのだと。私たちが守ろうとしたもの……その思いは受け継がれているのだと、実感できます」
提督「当たり前だ。おまえたちの過去が、無意味なわけがあるものか」
不知火「ふふ。司令はお優しいですね」
提督「いい上司だろう?」
不知火「まったくです」
提督「それで、最後のひとつは?」
不知火「ああ、最後のひとつですか」
提督「みっつ、あるんだろう?」
不知火「ええ。みっつめは当然―――」
不知火「―――再び、守るべきもののために、戦えることです」
不知火「もう二度と、負けはしない。……ああ、そうだ、陸から見る海の話でしたね」
提督「そういえば、そうだった」
不知火「こうして陸から海を見ると、守るべきものが見える」
提督「守るべきもの」
不知火「不知火の背中には日本の民が、日本の大地が、日本人の誇りがある。ここから先へ行かせてはならぬと、想えるのです」
提督「そうだな。俺たちが、守らねばならん」
不知火「ええ。司令、よろしくお願いします」
提督「任せておけ」
不知火「……はい。不知火は、司令を信じておりますよ」
以上です。
陽炎型では不知火が一番好きです。
ありがとうございました。
どうもです。投稿します。
2話予定だったのですが、もう1話投稿しようと思うので、これを投稿した後、そのうちもう1話投稿します。
提督「ん、日向か」
日向「ああ、提督……」
提督「なにをしていたんだ?」
日向「……提督は、私たちをどう思う?」
提督「なんだ、藪から棒に」
日向「艦娘をだよ。いったい、私たちは何のために戦っているのだろうね」
提督「そりゃ……深海棲艦から日本を守るためだろう」
日向「では敵艦隊は? 何のために攻めてくる?」
提督「さあな。連中、恨み言ばっかりで、ろくに会話もできやせん」
日向「私はいつも思うんだ。何のために戦うのか、何のために争うのか」
提督「なんだ、日向には守りたいものはないのか?」
日向「もちろんある。伊勢だって、提督だって、死んで欲しくはない」
提督「それでいいんじゃないか? 俺だって、何だかわからんが攻めてくるから、相手をするだけだ」
日向「……まあ、そうなのだがな。しかし不思議なものだよ」
提督「なにが」
日向「提督は、艦娘の艤装についてどう思う?」
提督「あんなクソ重いもんよく背負える」
日向「そうだな。私も伊勢の艤装を背負おうとしたとき、重くて1ミリも動かせなかった」
提督「なんだ、そうなのか?」
日向「ああ。『日向』以外の艤装を背負おうとすると、私たちの力は、一般女性のそれと変わらない。姉妹艦でさえね」
提督「自分のだと違うのか」
日向「不思議だろう? 『日向』の艤装だけは、私は自分の手足のように扱える」
提督「それが、『在りし日の艦艇の魂』ってやつなんだろ」
日向「……魂か。随分とあやふやなものだよ」
提督「艦娘がわかんねーのに、俺らにわかるもんかね」
日向「『艦娘』について、わからないことが多すぎると思わないか?」
提督「だが戦える。それで充分だろ」
日向「それはそうだが……妖精にしか作れない艤装――艦艇の魂を持たねば扱えない。こんなわけのわからないものに、国家の命運を託しているんだ」
提督「……何が言いたい?」
日向「いや、別に何も。私が言いたいのは、わからないことが多すぎる――それだけだよ」
提督「そうだな。大本営だって、艦娘のすべてがわかってるわけじゃないだろう」
提督「だが、戦える。そんな力に頼らなくちゃいけないくらい、切羽詰ってるんだ」
日向「……そうだな」
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日向「金剛、大丈夫か?」
金剛「ちょっとやられましたネー! 日向も艤装、ボロボロになってマース」
赤城「艦載機も限界ですね……今回はこのあたりで撤退でしょうか」
龍驤「んー……あ、提督から通信。撤退やって」
大淀「あら……では、撤退ですね」
日向「……そうか。進路変更、帰投する。私が殿を務めよう」
金剛「Yes……了解しましター」
日向「……ん?」
深海棲艦「……」
日向「さっきの戦闘の……まだ生きているが、虫の息か」
深海棲艦「……ュ、ァ……」
日向「!」
深海棲艦「……ヒ……ゥ……」
日向「おい。なんだ」
深海棲艦「……ヒゥ、ガ」
日向「……おい。待て。なんと言った」
深海棲艦「……」
日向「……ちっ……だめか。もう死んでるな」
金剛「日向ー? なにしてるですカー? 置いてっちゃいますヨー?」
日向「いや、なんでもない。すぐ行く」
大淀「……」
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日向「伊勢、いるか?」
伊勢「んー? なにさ日向、お風呂?」
日向「いや、今日は入渠があったからもう済ませた。今日の出撃のことなんだが……」
伊勢「あ、そうなの? おつかれさん。撤退だったんだってね」
日向「ああ。それはそうなんだが……伊勢、深海棲艦と喋ったことはあるか?」
伊勢「……は?」
日向「会話じゃなくてもいい。声を聞いたことはあるか?」
伊勢「いや、声って……唸り声みたいなのは聞いたことあるよ。あとはまあ、上位種の連中はちょっとは喋るかな……なに、日向、どうしたの?」
日向「……今日の撤退の際、死にかけの深海棲艦を見た。別に何があったわけでもなく、そいつを見ていたら……そいつが、『日向』、と言ったんだ」
伊勢「名前を呼ばれたってこと? そんな馬鹿な……聞き違いじゃない?」
日向「いや、あれは確かに……」
伊勢「だってねえ……そもそもあいつら、日向の名前なんて知らないよ。偶然じゃない?」
日向「……そうか。そうだな」
日向(あれは……偶然なんかじゃない。確かにあいつは、私を見て……日向、と言った)
日向(私を知っていた……?)
深海棲艦『……ヒゥ、ガ』
日向(私を……違う。あいつは、私を見て、じゃない……私の……『艤装』を……)
日向(他の『日向』を知っていた……?」
大淀「独り言ですか、日向さん?」
日向「!!」
大淀「え、どうしました……そんなに驚いて……」
日向「ああ、いや……すまない、声に出ていたか」
大淀「ええ、まあ。『他の日向』がどうかしましたか?」
日向「……大淀は、大本営にいたのだったな」
大淀「そうですね。1年ほどですが」
コメント一覧
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- 2016年03月26日 23:32
- 日向…なんでいつも気付いて改造されるん…?
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- 2016年03月26日 23:42
- 見た目子供の駆逐にヤニ吸わせんなよ
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- 2016年03月26日 23:49
- 貧乏人ほど煙草を吸いたがる……?
照月、早く逃げ……!
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- 2016年03月26日 23:58
- 日向がこういうのに使われやすいのは戦艦時と航戦時の台詞の違いの影響かな…