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「ザ・ファースト・アベンジャー」が他のマーベル映画よりも特別な理由 : ギズモード・ジャパン

「ザ・ファースト・アベンジャー」が他のマーベル映画よりも特別な理由

2016.03.28 21:30
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今こそ再評価すべきな、隠れた名作?

本数もだいぶ蓄えて、これからも順調に増え続けるマーベル映画ですが、誰かにマーベル映画の中でベストな作品はどれか、訊いたことはありますか? 大抵の人は初代「スパイダーマン」だったり、初代「アイアンマン」だったり、あるいは「アベンジャーズ」や「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」等を挙げるのではないでしょうか。しかし、米GizmodoのJames Whitbrook氏は、「キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー」を推したいとのこと。キャップは確かに魅力的なキャラですが、初代キャプテン・アメリカがベストか、と訊かれると…。あまりポピュラーな意見ではありませんが、一体どういうことなのでしょうか?


* * *


マーベルが独自制作した映画の中でのベストを尋ねられると、私は大体「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」と答えます。あるいは、ドラマチックでスリリングな「ウィンター・ソルジャー」という一般的な意見に、達観した仙人のようにうなずくこともあります。でも、私の心は全く違う答えを叫びたがっています: 「ザ・ファースト・アベンジャー」です。

理性で考えれば、初代キャプテン・アメリカはトップになり得ないはずです。とても楽しい映画ですが、今作以降にマーベルが制作した映画群は、マーベルの作り上げたスタイルや方程式を、より野心的な方向に推し進めています。しかしそれでも「ザ・ファースト・アベンジャー」は、他のマーベル映画が成し得なかった何か…今月75周年を迎える、キャプテン・アメリカというキャラクターと共鳴する何かを成し遂げた映画として、私の中で特別な存在なのです。

「ザ・ファースト・アベンジャー」は、キャプテン・アメリカのコミックの歴史を尊重しており、他のマーベル映画ではありえない程に、コミックの黄金時代や銀時代を原点としています。これは決して、他の映画がコミックに忠実でなかったということではありません。それらはコミックからエッセンスを抽出し、「マイティ・ソー」や「アイアンマン」のように現代化させたり、あるいはガーディアンズのように、1番の基本だけを元に、独自のクレイジーなトーンを作り出しているということです。


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しかし、キャプテン・アメリカではそういう訳にはいかなったのです。彼の存在は、キャプテン・アメリカを創り出した時代に大きく依存しています。彼がヒトラーに1発おみまいしている、象徴的な最初のカバーアート。そしてその後、時代と大きくズレてしまった男、というキャラクターが重要になるのです。なので、映画としては非常に素晴らしいのですが、「ウィンター・ソルジャー」からスティーブ・ロジャースの物語を始めたり、あるいは現代が舞台の別の話で、氷漬けから解放されるまでの話を飛ばすために、過去を回想で片づけることはできません。現代劇の片隅に追いやるには、キャプテン・アメリカのヒーローとしての功績と思想は彼の誕生秘話と結びつきが強すぎるのです。「ザ・ファースト・アベンジャー」なら、それらをしっかりと内包することが出来ます。

「ザ・ファースト・アベンジャー」は、キャプテン・アメリカの最初期のコミックで顕著な、快活で、それでいて盲目的な愛国心や、ちょっと大げさな程のキャップの純真さを真正面から称えています。世界の表裏を知り尽くしたトニー・スタークのシャープな皮肉とウィットに喜ぶ観客が大半の世の中で、今作はコミックがもっと純粋だった時代、皮肉とは無縁な、ひたすら正しい行ないをしたいと願うヒーローを表現することで、大きなリスクを負ったと言えます。文字通りプロパガンダのために作られ、コスチュームは星条旗そのものというスーパーヒーローは、イラク戦争後の世界では通用しないハズです。少なくとも、受け入れられるのはアイアンマン程簡単ではなかったでしょう。


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しかし、今作はキャップのキャラクターのそういった面を真っ向から表現しており、結果は大成功しています。脚本家のクリストファー・マーカスとスティーブン・マクフィーリーがスティーブ・ロジャースに吹き込んだ実直さ(キャプテン・アメリカ2作を見事に描ききった2人は、今後「インフィニティ・ウォー/パート1&パート2」でも活躍してくれるでしょう)はクリス・エヴァンスの素晴らしい演技と相まって、キャップを多くの人々に好かれるヒーローにしました。そして彼のさわやかさと純粋さが、「ウィンター・ソルジャー」で描かれる現代社会との素晴らしい対比となり、「シビル・ウォー」で対立する皮肉屋と彼を別ける特徴となるのです。

過ぎ去った過去の時代を再現するため、「ザ・ファースト・アベンジャー」はマーベル映画の中でも未だにユニークで新鮮なスタイルを持っています(その後「エージェント・カーター」に引き継がれるのですが、それはまた後程)。スーパーヒーロー物というのはそれ自体が1つのジャンルなのではなく、何百種類にも及ぶジャンルに対する新しい解釈なのです。つまり今作は、第2次大戦映画をスーパーヒーローで解釈した作品になるわけです。そこで監督のジョー・ジョンストンは、ブラス主体のサントラや、暖色のセピアトーン等を使い、他のマーベル映画とは大きく異なる映画に仕上げました。大戦当時の雰囲気を見事に再現している為、この映画を思い出そうとすると、映像に大げさなフィルムノイズがかかったりする人もいるかも知れません。



ヒーローの理想主義を称えるのと同時に、昔っぽいニュース映画や、快活なミュージカル、スティーブとペギーのロマンスなど、今作は戦争映画の伝統もリスペクトしています。マーベルは、確立されたジャンルにスーパーヒーローというヒネリを加えることで映画を作ってきましたが、「ザ・ファースト・アベンジャー」ほど、目標のジャンルの特徴をしっかりと踏まえた映画は存在しません。スーパーヒーロー映画がどれも同じように見えてくる中、今作だけがスタイルの面で際立っており、それだけでも称賛に値します。

しかし、スティーブ・ロジャースとは別に私たちを楽しませてくれたヒーローを抜きにして、この映画を語ることはできません。私が言っているのは、勿論ペギー・カーターのことです。彼女はキャプテン・アメリカと同等とも言える、確固とした力を持った今作の主人公であり、ただのロマンスの相手ではありません。果敢に敵と戦う、彼女なりのヒーローなのです。勿論、ヒーローの恋の対象でもあり、コミック映画史に残るハートウォーミングなロマンスを見せてくれますが、それが彼女のキャラクターの全てではありません。


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そして実は、徹底した忠実さを誇るこの映画にあって、最もコミックから大きく変更されたのが、原作では一時の恋人でしかなかった(一応何度か再登場するキャラでもあり、SHIELDやアベンジャーズのコミックにも登場します)ペギーでした。しかし、この変更は大きな利益にもなりました。この映画の作りだしたヒロイックなペギーでなければ、「エージェント・カーター」はあり得なかったからです。テレビも映画も似たようなトーンのマーベル作品が続く中、こちらも「ザ・ファースト・アベンジャー」同様、スタイルと作風でオリジナリティが輝く作品になっています。

だからこそ、私はこの映画を愛してやまないのだと思います。マーベルの膨大なシネマティックユニバースの最も初期の基盤を担うという重大な責任を抜きにしても、古臭いヒーローを扱うノスタルジックな映画は本来失敗してもおかしくないはずでした。ですが、成功しただけでなく、非常に楽しい映画に仕上がったのです。現代と全く異なる、過ぎ去った時代を恥じることなく再現し、他の多くのマーベル作品とは一線を画すことに成功したのです。今作以降、同じような成功を成し遂げたマーベル作品は僅かしかありません。


James Whitbrook - Gizmodo io9 [原文]
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