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抱きしめて。そしてキスして。au、未来の「クマのぬいぐるみ」を作る : ギズモード・ジャパン

抱きしめて。そしてキスして。au、未来の「クマのぬいぐるみ」を作る

2016.03.30 22:00
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未来は、今と繋がっている。

今、我々のコミュニケーションツールとして欠かすことができない携帯電話。誕生から30年余りが経過し、小型化・高機能化が進んでいます。

最初は音声通話だけでしたが、メールが使えるようになり、写真が撮れるようになり、テレビ電話ができるようになり、今では文字やスタンプでコミュニケーションを取ることが当たり前のようになっています。

そこで問題。数年後の未来のコミュニケーションツールはどんなものになっているのでしょうか?

そんな未来のことを考えているのが、「au未来研究所」です。


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au未来研究所は「”スマホの次”を発明する研究所」。外部の専門家や一般の生活者とともに、コミュニケーションの未来を創造していく、オープンな場所です。

開設は2013年。2014年からハッカソンを開催し、2014年度には15種類のプロトタイプを開発。そしてその中から選ばれた、足音で遊べるキッズシューズ「FUMM」をコンセプトモデルとして発表しました。

そして2015年度は2回のハッカソンを実施、そのうち1回目のハッカソンで生まれ、コンセプトモデルに選ばれたのが「Comi Kuma」です。

この「Comi Kuma」がどのようにして生まれたのか。そして、未来のコミュニケーションはどう変わっていくのか。au未来研究所KDDI宣伝部担当部長である塚本陽一さんにお話を伺いました。


嫌なことやつまらないことが楽しくなるようなデバイスを


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ギズモード編集部(以下ギズ):au未来研究所が行なっているハッカソンのテーマは何でしょうか?

塚本さん:研究所が掲げる大きなテーマは「スマホの次を発明する」というものですが、毎年テーマを変えてハッカソンを開催しています。2014年度は「衣食住」をテーマにしていましたが、2015年度は「BE PLAYABLE」というテーマでハッカソンを行ないました。

ギズ:「BE PLAYABLE」は具体的にはどんな意味でしょうか。

塚本さん:日本語で説明すると、世の中にある嫌なことやつまらないことが、楽しいことや素敵なことになったらいいよねという感じです。例えば、雨の日はみなさんあまり好きではないと思います。ただ、とてもお気に入りの傘があったら、雨の日が待ち遠しくなるかもしれない。

また、注射をする際に、針を刺す痛みを感じなくするシールがあるそうです。それが子どもが喜ぶデザインだったら、子どもたちは注射を怖がらなくなるかもしれない。そういうアイデアをみなさんで持ち寄って、プロトタイプを作っていこうという感じです。


恋人同士の仲直りから生まれた「Comi Kuma」


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ギズ:そこで5つのプロトタイプが生まれ、コンセプトモデルとして選ばれたのが「Comi Kuma」です。

塚本さん:プロトタイプの段階では「Warmy」という名前でしが、コンセプトモデルとして発表するにあたり「Comi Kuma」という名前になりました。

ギズ:このComi Kumaはどういったものなのでしょうか。

塚本さん:キャッチフレーズは「抱きしめるだけで、想いが伝わるぬいぐるみ」です。このぬいぐるみの中に12個のセンサーが入っていて、抱きしめたり、なでたり、キスしたりすることで、スタンプでメッセージを伝えることができるデバイスです。通信はスマートフォンの回線を利用して、Comi KumaとスマートフォンはBluetoothで接続しています。

ギズ:具体的にどのような動作に対応しているのでしょうか。

塚本さん:頭をなでる、キスをする、腕を動かす、手をにぎる、抱きしめる、倒す、足を動かす、足の裏をくすぐるという動作ごとに、あらかじめ設定してあるスタンプを送信することができます。受信したスタンプは、首にあるリボンに搭載された液晶ディスプレイに表示されます。

ギズ:このComi Kumaですが、最初はどのような話から始まったのでしょうか。

塚本さん:ハッカソンメンバーの最初のコンセプトは、「恋人同士のコミュニケーションツール」というものでした。自分の恋人にメッセージを伝えるときに、ぬいぐるみをキュッと抱きしめたら「好き」という気持ちが伝わるみたいなことができたらおもしろいなというアイデアがありまして。また、喧嘩をしたときに言葉では謝りづらいけれども、ぬいぐるみに「ごめん」と話したら、それが相手に伝われば、仲直りのきっかけになるんじゃないかとか。そんな感じでしたね。


ぬいぐるみへのアクションがコミュニケーションに変わる


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ギズ:それが、コンセプトモデルになるにあたって多少変わっていますね。

塚本さん:プロトタイプからコンセプトモデル化のタイミングで議論をしているときに、恋人同士のコミュニケーションデバイスとしては、すこしユニークさに欠けていると感じまして。大げさに言えば、このデバイスだからこその社会的価値はどこにあるのか、そういうことを考えて、1回リセットをしてターゲットとなる人やシーンを議論しました。そして、想定したユーザーが「おじいちゃん・おばあちゃん」と「」です。

ギズ:それは、携帯電話やスマートフォンの操作があまり得意ではない層ということですか?

塚本さん:そうですね。おじいちゃんおばあちゃんと孫が離れて暮らしている場合、普段なかなか会えないですよね。スマートフォンを持っていたとしても、シニア層の方の中には、アプリをダウンロードしてインストールして、スタンプをダウンロードして送信するというのは、ハードルが高いと感じている方が多いかもしれません。逆に、幼稚園のお子さんなども同じでしょう。そのような、スマートフォンの操作があまり得意ではないという方同士でも、ぬいぐるみをギュッと抱きしめるだけでスタンプが送れたら、気軽にコミュニケーションができると思うんです。物理的にも心理的にも距離感がある人たちが、このComi Kumaという存在によってもっとつながることができたら素敵なんじゃないかというのが、今回の狙いです。


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ギズ:つながる手段としては、携帯電話の回線を使っていますが、デバイスがぬいぐるみというところが未来ですね。

塚本さん:コミュニケーションツールは、どんどん人に近い領域に来ている気がしています。これまで、物理的な十字キーやキーボードで操作をしていた。しかし今は、直接画面をタッチして操作しています。究極的には、かわいい女の子を見たときにウインクをしたら、好きっていうメッセージやスタンプを送ることができるようになれば最高なんですが(笑)。それはまだ難しいのですが、ぬいぐるみという人間的なモノの頭をなでる、キスをする、手を挙げるといったアクションが、コミュニケーションに変わっていくというのがコンセプトとして未来的だなと感じました。


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ギズ:携帯電話やスマートフォンの操作が苦手だという人も、Comi Kumaを使うことでコミュニケーションが手軽にできるというところは「BE PLAYABLE」ですね。

塚本さん:シニアの方や、これから成長していく小さい子どもたちが、ぬいぐるみというものを通して、自然にコミュニケーションが取れるようになったらいいなという開発コンセプトは、まさに「BE PLAYABLE」ですね。


スマートフォンと連携するからこそカスタマイズが楽しめる


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ギズ:ハッカソンからこの形になるまでにいろいろ検討されたと思うのですが。

塚本さん:クマというのは、当初から決まっていましたね。やはり、抱きしめるということを考えたときに、犬や猫よりもクマのほうがしっくりくる感じがします。大きさもいろいろ検討しました。もっと大きなサイズという案もあったんですが、あまり大きくすると小さなお子さんが恐怖心を抱いてしまうのではという懸念がありました。あとは、センサーを入れて反応するということを考えて、現実的にこのサイズになりました。

ギズ:センサーの選定などはなんとなくわかると思うのですが、ぬいぐるみも作らなければならないということで、ご苦労があったと思います。

塚本さん:開発に携わるメンバーそれぞれが、顔の好みがバラバラで。その意見を合わせていくのがたいへんでしたね。3回くらい顔が変わっています。それと、肩の位置、耳の大きさなどでも印象がすごく変わるんです。そこで、ぬいぐるみ職人の方に来ていただいて、微妙な調整などをしていただきました。もうひとつ、センサーを内蔵しているので、腕や肩の位置を動かしたら、その都度センサーも微調整する必要がありました。また、腕や足の接合部分の強度問題などもありましたね。


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ギズ:自分でカスタマイズできる要素などはあるのでしょうか。

塚本さん:内部センサーを変更するというのはハードルが高いと思います。逆に、スマートフォン側のアプリを使って新しい機能を持たせるというフレキシビリティはあるでしょうね。現在は、特定の動作をするとスタンプが送られるというものですが、両手を同時に挙げたら連携しているスマートフォンアプリが起動するとか、ちょっとしたゲームができるようにすることも可能ではないでしょうか。誰かとコミュニケーションをするツールですが、もしかしたらこれでネットワークに繋がったユーザーとゲームを同時プレイできるようになるかもしれません。

ギズ:アプリ側でいろいろカスタマイズが可能になるかもということですね。

塚本さん:スマートフォンと連携しているからこその楽しみ方と言えます。通常ならば、ぬいぐるみの中にモジュールやセンサーが入っていて、拡張性はゼロ。そのため、飽きたら終わりです。しかし、スマートフォンと連携していることで、センサーから入ってくる反応をどういう風に解釈してビジュアライズするかというところを、スマートフォンのアプリ側でいろいろ工夫できます。遊びがワンパターンにならないというか。スマートフォンがなくてもいいのではという意見があったのですが、手軽に拡張できるという点では、スマートフォンは必須ですね。


クラウド化がスマートフォンを自由な形にする


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ギズ:au未来研究所のテーマでもある「スマホの次」ですが、将来的にはどうなっていくとお考えでしょうか?

塚本さん:今みたいなスマートフォンの形状は残っていくと思うんですけど。我々au未来研究所の1年目に、「2020年の携帯電話はどうなっている?」というアイデアを募集したことがあります。そのなかで、我々が一番おもしろいと思うアイデアとして発表したのが「携帯しない携帯電話」というものでした。携帯電話は常に持っていなければならない。それが煩わしいと。だから、ランニングのときにはイヤホン、パーティのときはリングというように、TPOに応じて最適な形になるというコンセプトですね。3Dプリンタがある程度普及して、自分の欲しいものがその瞬間に生成できるという時代がくれば可能になるかもしれません。

もうひとつ、今は端末の中にCPUやデータ記憶のための機能があって、データ処理もすべて端末で行なっています。しかし、ネットワークさえあれば、処理はクラウド側へ預けてしまうことができます。データもすべてクラウドにあって、我々が持つ端末はネットワークへ接続するだけの機能で充分になれば、形状はどんなものでもいいということになります。将来的にはそうなっていくのもおもしろいのかなと思います。


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ギズ:ユーザー側の端末は、単にデータを閲覧するだけのものという感じですね。

塚本さん:究極的には、いわゆる空間が電話になっているという。家に帰って電話の着信があったら、家のスピーカーから着信音が鳴って、壁をポンと触ったら通話ができる。そうすると、電話を持っている必要性はなくなりますよね。自分の電話番号と所在地がはっきりしていればいいという。

ギズ:今は、スマートフォンというとこういう板状の形状が当たり前ですけれども、それすらも変わってくるという。

塚本さん:もともと、我々はau Design Projectなどもやってきていて、キャリアとしてオリジナリティのあるものを提供してきたという想いがあります。今はOTT系のサービス(インターネット回線を通じて通信事業者以外の企業が行なう、コンテンツ提供などのサービス)が台頭してきていますが、KDDIとして、auとして提供できる付加価値というものを愚直に考えていくのが、au未来研究所だと思っています。我々だからできる、通信と一体となったサービスを生み出していきたいと思っています。


発展途上だからこそ可能性を秘めている


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実際にComi Kumaを手にすると、思わず触ってしまいたくなるかわいさと、ついついなでてしまう質感の良さが印象的でした。いわゆるガジェット的な雰囲気は一切なく、リビングにポンと置いてあっても、まったく違和感がありません。

未来のコミュニケーションツールは、このように「日常に溶け込んだ」形になっていくのかなと思いました。

インタビューの段階では、まだセンサーの位置などを微調整しているということでしたが、反応は上々。頭を撫でれば、もう一体のComi Kumaにしっかりとスタンプが送られていました。

このようなデバイスが普及していけば、おじいちゃんおばあちゃんとお孫さんのコミュニケーション以外にも、おもしろい使い方が出てくるかもしれません。実際塚本さんは、

「例えば、auのカスタマーサービスと繋がるようにすれば、何かスマートフォンで困ったことが起きたユーザーがぬいぐるみを通じて簡単にカスタマーサービスに助けを求めることができるようになるかもしれません」

とおっしゃっていました。使い方次第では、高齢者の見守りシステムにも進化することも。まだまだ発展途上のComi Kumaですが、それだけ可能性を秘めているデバイスなのです。


数年後の未来のコミュニケーションとは?


このComi Kumaが、どんな風に進化していくのか。想像するだけでもワクワクしますね。

3月29日には、今回紹介したコンセプトモデル「Comi Kuma」の発表会を開催。au未来研究所は、着実に「スマホの次」の形を具現化しています。

未来のワクワクを形にしていく。そして新しいコミュニケーションのあり方を探していく。au未来研究所は、常に未来のコミュニケーションを模索し続けていくところ。

数年後の未来には、どんなコミュニケーションが実現するのでしょうか。もしかしたら、今の我々にはまったく想像できないものが生まれているかもしれませんよ!


source: au未来研究所 

(三浦一紀)

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