転載元:勇者「仲間TUEEEEEEEEEEEEEE!!」


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ー 妖魔の森、北西地区

      魔王軍拠点 ー


魔軍師「魔王様が帰ってこられたのか!」

魔兵士「はっ! 昨日、時空魔法によってお戻りになり、魔王城にその姿を現されたとの事です!」


ガルーダ(鳥悪魔)「ほう。意外に早かったな」 (全長21メートル)

【北西地区担当、八大将軍の一人】
『体力 :525万
 攻撃力:319万
 防御力:250万
 魔力 :336万
 素早さ:327万』


ガルーダ「で、魔王様は異界からの援軍は連れて来られたのか?」

魔兵士「それが……手傷を負わされて、撤退された模様で……」

魔軍師「あの魔王様がか!?」

魔兵士「はっ。横に側近様がおられただけで、他には誰もいなかったそうです……」

ガルーダ「ふっ。ふはははははっ。情けない。つまりは負けて帰って来たという訳か」

魔軍師「……ガルーダ。今の発言は不敬に値するぞ。笑い事ではない。やめろ」

ガルーダ「ああ、そうとも。確かに笑い事ではない。竜界に侵略してより、早100年近く過ぎてるというのに、一向に決着がつかないままなのだからな。無駄に時間と兵が失われていってるのだぞ」

魔軍師「……だからこそ、魔王様も異界行きを決断されたのだ。今回はその結果が失敗に終わったが、現状は前と何も変わっていない」

ガルーダ「そう。前と同じだ。小競り合いの繰り返しで段々と戦力が削られていくだけだろう。消耗戦など、敵地でやる事ではない。だから、あの時、我は反対したのだ。神界の攻略のみで留めておくべきだと」

魔軍師「それについては今更だ。とにかく、士気を下げる様な事を将軍が口走るな。ただでさえ、この地区は連敗が続いてるのだ。これ以上、何か言うのであれば、将軍職の剥奪も考えるぞ」

ガルーダ「ちっ。面白くない」クルッ、スタスタ

魔軍師「待て、どこに行く」

ガルーダ「そこら辺を軽く回ってくるだけだ、今の気分で良い作戦など浮かぶはずがないからな」バサッ、バサッ!!


魔軍師「勝手な事を……」

魔兵士「…………」




803: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/25(金) 17:56:03.33 ID:MhQ+Ndmgo

魔軍師「ガルーダは最近、常にあの様な感じか」

魔兵士「はっ……。前に比べて酒と魔結晶を飲む量が増えていますし……。連敗が続いた事と、長い遠征により、厭戦感が出ているようです……」

魔軍師「将があれでは兵もそうだろうな。本来ならばあいつは強くて粘りのある優秀な指揮官なのだが……。飢えと故郷を懐かしむ気持ちだけは私でもどうしようもない」

魔兵士「……正直なところを申し上げれば、私もそろそろ魔界に帰りたく思っています」

魔軍師「しかし、今戻ればそれこそ無駄な遠征だ。領土も何も得る事なく、犠牲と出費だけ出して帰る事になる」

魔兵士「それはそうでしょうが……」

魔軍師「……あるいは、戦力がまだある内に一大決戦を挑むべきかもしれんな。今のままでは、確かに旗色が悪いし、士気も下がっていく一方だ。今後、それが良くなる可能性もほとんどないだろうからな……」

魔兵士「…………」

魔軍師「余計な事を口走った。今の事は全て忘れろ。決して口外するな」

魔兵士「は、はい……!!」

魔軍師「この後、予定を変更して私も魔王城へと戻る。魔王様から今後の事について考えをお聞きしたいからな。各方面にはそう伝えておくように」

魔兵士「はっ!」




804: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/25(金) 17:57:58.32 ID:MhQ+Ndmgo

ー 同時刻、魔王城 ー


魔王「そうか……。魔軍師は今、北西地区に出向いているのか」

側近「…………」


大魔導師「はい。留守を私めに任せて、一番旗色の悪い北西地区の守りへと向かわれました」

魔王「して、今の各方面の状況は。余が出る前と出た後で変化した事のみ挙げよ」

大魔導師「……日にちもさほど経ってはおりませんので、万事、変わりありません。以前と同じ状況でございます」

魔王「よしっ。ならば、全軍全面攻勢の用意をさせよ。本日を持って決戦の準備に入る!」

大魔導師「……!! 決戦ですか!?」

魔王「そうだ。これ以上戦いを長引かせる意味はない。何より、余はこれまで大きな勘違いをしていたからな」

大魔導師「勘違いとは、一体……」

魔王「竜王を倒し、三界を統一するのが最終目標だと余はそう考えていた。故に、これまで慎重に事を進めてきたが、それは過ちであった」

魔王「三界の統一など、余にとっては通過点に過ぎぬ。最終目標は異界を含めての四界の統一だ。故に!」

魔王「たかが竜界ごときに時間をかける必要など、皆無! 余、直々に出向いて、次の一戦で竜王を倒し、竜どもを残らず片付けてくれようぞ!」

大魔導師「!!」

魔王「大魔導師! 軍師に代わり、急ぎ、出陣の準備を整えよ! 魔軍師と各方面の将軍にも伝えよ! 次の一戦で竜王軍を蹴散らし、魔界へと凱旋するとな!」

大魔導師「は、ははーっ!」


魔王「それと、側近」

側近「はっ!」

魔王「余の盾の役目、しかと果たせよ。前に言った通り、死ぬ事は許さぬぞ」

側近「ははっ! 我が名と、既に散っていった同胞達の魂にかけて!」




805: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/25(金) 18:00:05.76 ID:MhQ+Ndmgo

ー 妖魔の森、最南端付近、上空 ー


女大富豪『……って、感じかな? 今の私達は』

魔導機神「」ドギュッ!! (飛行中)


真魔王「そうだね。これが、僕達の大体の近況だよ」ヒュンッ (飛行中)


勇者「」

天海竜『』バッサ、バッサ!!! (飛行中)


聖女「驚いた、勇者? 勇者が頑張ったのと同じで、わたしたちもみんな頑張ったんだよ」バッサ、バッサ!!! (飛行中)


剣聖「そうだな。おかげで最近ようやく、勇者の仲間だって胸を張って言えるような強さと地位になれた」

天馬「」バッサ、バッサ!!! (飛行中)


女闘神「剣聖はそうだろうけどさ。残念だけど、あたしは地位じゃ胸を張っては言えないな。海賊王とか言われてても悪名だしさ」

鳳凰「」バッサ、バッサ!!! (飛行中)


真魔王「それを言うなら僕もかな。異界で魔法の開発とか研究してるだけだからね。働いてすらいないからなあ」ヒュンッ


女大富豪『というか、真魔王って働く必要ないんじゃないの? 錬金術も出来るんでしょ?』

魔導機神「」ドギュッ!!


真魔王「うん。マネーバランス崩しちゃうから、あまり使わない様にしてるけどね。異界だとお金持っていてもほとんど意味ないし」ヒュンッ


勇者「」

天海竜『』バッサ、バッサ!!!


女闘神「お金に価値を見出だしてないもんな。やっぱ、聖女と真魔王だけ別格かあ。聖女もこの前、石ころを宝石に変えてたしさ」

鳳凰「」バッサ、バッサ!!!


聖女「お金に困ってる子供がいたからね。女神様もそれぐらいの奇跡は許してくれると思うの。自分の為に使ってる訳じゃないし」バッサ、バッサ!!!


勇者「」

天海竜『』バッサ、バッサ!!!




806: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/25(金) 18:02:16.97 ID:MhQ+Ndmgo

女大富豪『でも、あれ。私からしたら、聖女の奇跡ってほとんど反則なんだけどね。多分、魔法理論とかまったく無視してるし。どれだけ調べても原理の解明とか絶対出来ないと思う』

魔導機神「」ドギュッ!!


女闘神「それを言うなら、真魔王も十分反則だけどな。今、魔法で出来ない事とかないだろ、真魔王って?」

鳳凰「」バッサ、バッサ!!!


真魔王「そんな事はないよ。僕のは魔法理論に基づいてるから、聖女みたいな理論を超えた事は出来ないし」ヒュンッ

真魔王「それに、僕からしたら、誰でも使う事が出来る物を発明している女大富豪や、魔力がなくても大丈夫な気功とかを使える女闘神のがよっぽど凄いよ」ヒュンッ


剣聖「……何か、みんなの話を聞いてると、何故か俺だけ凡人みたいな気になってくるから自信を無くすんだよな。国王とは言っても、立憲君主制に移行してる最中だから、ほとんどお飾りみたいなもんだしな」

天馬「」バッサ、バッサ!!! (飛行中)


勇者「」

天海竜『』バッサ、バッサ!!!




807: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/25(金) 18:03:37.75 ID:MhQ+Ndmgo

聖女「そんな事ないよ、みんなの中で一番偉くなってるのは剣聖なんだし。それに、剣の腕前じゃみんな敵わないでしょ?」バッサ、バッサ!!!


剣聖「そうだといいんだが、多分、勇者の方が強いだろうからな。剣の腕前でも勝てるかどうか」

天馬「」バッサ、バッサ!!! (飛行中)


勇者「!?」

天海竜『』バッサ、バッサ!!!


女闘神「というか、勇者を引き合いに出したら、あたしら全員、一番がいなくなっちゃうじゃん」

鳳凰「」バッサ、バッサ!!!


勇者「!!??」

天海竜『』バッサ、バッサ!!!


真魔王「だよね。勇者に選ばれてる訳だから僕らより強いのは間違いないだろうしさ。何よりネームバリューがね」ヒュンッ


聖女「『伝説の勇者』だもんね。それに比べたらみんな名前負けしてるよね」クスッ



アハハッ、ホントダヨ、サスガユウシャ、ハハハッ



勇者(多分みんなより弱いとか言い出せる雰囲気じゃない……助けて)グスッ




808: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/25(金) 18:04:53.74 ID:MhQ+Ndmgo

女大富豪『しかも、あれでしょ? 勇者って魔王を倒したら、南の国のお姫様と結婚が決まってるんでしょ? そうしたら次期国王だしさ』

魔導機神「」ドギュッ!!


勇者「し、知ってたの!?」ビクッ

天海竜『』バッサ、バッサ!!!


剣聖「そりゃ、女大富豪は全世界に支店を持ってるしな。そんな大ニュースを聞き逃すはずがないだろ」ハハッ

天馬「」バッサ、バッサ!!!


勇者「」

天海竜『』バッサ、バッサ!!!


女闘神「それ聞いた時、あたし、ちょっとショックだったんだけどね。別に勇者の事を狙ってた訳じゃないんだけど、なんかこう複雑っていうか……」

鳳凰「」バッサ、バッサ!!!


聖女「わたしも残念だったなあ……。今だから言えるけど、わたし、子供の頃、勇者が好きだったもん……。でも、十五年も経ってるし、今更仕方ないけどね」バッサ、バッサ!!!


勇者「」

天海竜『』バッサ、バッサ!!!




809: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/25(金) 18:07:21.04 ID:MhQ+Ndmgo

真魔王「国の事情とか絡んでるとね。個人じゃどうしようもない面とかもあるしね。でも、勇者も乗り気みたいだし、良かったよ」ニコッ


勇者「え、乗り気!?」ビクッ

天海竜『』バッサ、バッサ!!!


女大富豪『お姫様からの熱い求婚、喜んで受けたんでしょ? 今更隠さなくてもいいよ。私達も応援するって決めてるし』ニコッ

魔導機神「」ドギュッ!!!


勇者「いや、あれはでも、姫も俺もああ言わないと体面上まずいってわかってるからだし。確かに姫は美しい方だし、悪い気はしてないけど、でもあくまで儀礼的なものだし本当にどう思ってるかなんて」オロオロ

天海竜『』バッサ、バッサ!!!


女闘神「そんな、気を遣わなくてもいいって、勇者。優しさってのは時々、逆に人を傷付けるしさ。昔の話なんだし、聖女もそこまで気にしてないって」

鳳凰「」バッサ、バッサ!!!


勇者「ち、ちが」

天海竜『グルルルルッ!!』ビリビリ

勇者「!!」ビクッ!!


聖女「あ、妖魔の森が見えてきたよ!」バッサ、バッサ!!!

剣聖「ああ、もうすぐ決戦の時だな。残念ながら、お喋りはここまでだ」チャキッ

天馬「」ヒヒーン!!

女闘神「腕が鳴るね! この日の為に今まで修行して来たんだし!」ポキポキ

鳳凰「」バッサ、バッサ!!!

真魔王「勇者! 魔王の所へ辿り着くまでの露払いは僕達がやるから、任せて!」ヒュンッ!!

女大富豪『勇者は魔王の事だけ考えてて! 行くわよ!』ガコッ

魔導機神「」ジャキッ (大型魔力凝縮出力砲×2門を組み合わせて構える)



女大富豪『突撃!! 決戦の狼煙を上げるわ!!』


魔導機神「」ギュイイイイーーーンン…… (エネルギーチャージ)



「ツインバスターライフルッッ!! いっけええええーーーーー!!!」ガチッ!!




チュドオオオオオオーーーーンンンッッッ!!!!




勇者「!!!!????」ビクッ!!

天海竜『グルルルルッ!!』




810: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/25(金) 18:08:35.13 ID:MhQ+Ndmgo

ー 北西地区 ー


ガルーダ「ちっ。ずいぶんと飛び回ったが、未だに腹の虫が収まらぬな」バッサ、バッサ (全長21メートル)

ガルーダ「が、戻ったらまたあの頭でっかちな軍師と下らぬ会議の続きだ」バッサ、バッサ

ガルーダ「配給品の酒と魔結晶も尽きてきた頃だし、そろそろ」


キラーン……


ガルーダ「?」



チュゴゴゴゴゴゴオオオオーーーーーーーンンンッッッ!!!!!



ガルーダ「!!!!」ジュワッ…… (消滅)



キラキラキラ…… (光)


 




811: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/25(金) 18:09:30.55 ID:MhQ+Ndmgo

魔導機神から放たれた、大型魔力凝縮出力砲。

それは世界の五分の三を占めると言われる広大な森、妖魔の森上空を一直線に切り裂いて貫き、目映いばかりの光を放ちながら彼方へと消え去っていった。


この瞬間、妖魔の森にいたありとあらゆる生物が、上を向いた。


運悪く、その直線上にいた魔物は全て光へと還元した。


老いも若きも、強きも弱きも、魔物も竜も、等しくその光り輝く未知の閃光に見いった。


そして、彼らはその数十秒後、その光が放たれた先から、飛んで向かってくる者達の存在に気付いた。


彼等こそが、伝説の勇者、その仲間たち。


魔王を倒す、最強にして最高のパーティーが、今!


この地に君臨した瞬間だった!!


 




812: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/25(金) 18:10:56.32 ID:MhQ+Ndmgo

ー 魔王城、玉座の間 ー


魔兵士「」ダダダダッ

魔兵士「も、申し上げますっ!! 南の方角から敵襲!!」

魔兵士「先程の閃光を放った者達かとっ!! また、その閃光により、北西地区のガルーダ様が巻き込まれ討死したとの事!!」


側近「ガルーダがっ!?」


魔兵士「はいっ! 更に奴等は迎撃に向かった兵士達をなぎ倒しつつ、この魔王城へ向けて進軍してきておりますっ!!」


大魔導師「何だとっ!!」

側近「っ!!」

魔兵隊長「まずい!!」


ザワザワ、ザワザワ、ザワザワ!!!



城内にいた兵士達が一斉にどよめく。彼等もまた、あの光を見た者達だった。

あの瞬間、誰もが、何が起きたかは理解出来なかった。
だが、今が異常事態だという事と、その光の壮絶さだけは頭ではなく魔物の本能ではっきりと理解していた。

そして、今、この地に向かってきている者達が、自分達の理解を遥かに超えた者達であるという事は、容易に想像がつく。
だからこそ、動揺、恐慌、不安、そういったものがこの場にまるで伝染病の様に蔓延していく。

しかし!



魔王「狼狽えるなっ!!」ビリリッ


大魔導師「!」

側近「!」

魔兵隊長「!」


魔兵士たち「!!」



魔王「強い敵が来たなら、更に強い戦力で叩き潰せばいいだけの事だ! 何を恐れる事がある! お前たちは、それでも余の誇る最強の魔王軍か!」


魔王の鋭い一喝が広い玉座の間に響き渡る。これにより、玉座の間は再び元の静寂さを取り戻す。

かの者は魔王。歴代の魔族の中で最も強く、最も兵から信頼を受ける、常勝の軍神、覇王、英雄……。

その場にいる誰もが、その事をはっきりと思い出した。




813: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/25(金) 18:12:44.85 ID:MhQ+Ndmgo

側近「……失礼しました、魔王様。思わず取り乱しました。陳謝します」

魔王「構わぬ。それよりも、報告を続けよ。その者らの数は」


魔兵士「は、ははっ。竜と巨大な霊獣・神獣ペガサス・天使、あと異形の怪物が一匹いるとの事です。その背には何故か人間が乗っている模様です!」


魔王「人間……? まさか、魔軍師が前に言っていた勇者とやらか?」

側近「御冗談を。人間ごとき、仮に女神の祝福や加護を受けようとも話になりません」

魔王「が、他には思い当たる節がない……。さしずめ、余を倒す為の混成軍を編成したというところか。天使も混ざっているという事は、間違いなく女神の差し金であろう。あの女め、封印されながらまだ余計な事を……」チッ

側近「……しかし。何にしろ、数が少ないのは幸いです。少数精鋭なのでしょうが、何重にも包囲して殲滅してしまえば取るに足りません。あの光にのみ注意しておけば問題ないでしょう」

魔王「うむ。出陣の準備を整えていたのは不幸中の幸いだな。魔王城に常駐させている遊撃部隊と近衛兵はもう出られるか」


大魔導師「はい! そちらは既に整っております」


魔王「ならば、余自ら出て殲滅戦の指揮を取る。五分後には遊撃部隊と近衛兵、両軍を魔王城前に集結させよ」

側近「魔王様自らがですか……。ここは大魔導師に指揮を任せても宜しいかと思いますが……」

魔王「元々、守りは性に合わぬ。果実も、人の手から与えられるよりは、自らの手でもぎ取った方が美味かろう」スクッ

魔王「出るぞっ! 他地区まで被害が広がる前に、一気に片付ける! 急げっ!!」


側近「はっ!」

大魔導師「ははっ!!」

魔兵隊長「急げっ! 出陣だ!!」


「ははっ!!!」

 




847: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/29(火) 20:05:53.69 ID:TFwo0+zOo

ー 神界、封印の牢獄内 ー


女神「勇者達が、魔王城へと向かいましたね……」

大天使「ええ。ほとんどの過程を飛ばして、一路、魔王城へと……。もう妖魔の森上空にまで来ております」

女神「そして、未だに誰も勇者の本当の強さを知りません……」

大天使「はい」

女神「……運命の女神たる私が、この様な事を言うのは憚られますが」



「これも運命なのでしょうか……」



大天使「全ての出来事が、勇者を『伝説の勇者』たらんとせしめていますからね……」

女神「ええ……。幸運と呼ぶべきか不運と呼ぶべきか……。あるいはこれこそが本物の天運というものなのでしょうか……」

大天使「では、やはり……」

女神「ええ、この流れからすれば、そうした方が良いでしょう……」

女神「危険極まりない方法ですが、あの『計画』を実行へと移します……」

大天使「全ては世界の安定の為に、ですか」

女神「ええ……。私の最後の切り札です……」



「勇者には、強いと仲間から誤解されたままでいてもらいましょう……。その為の計画です」







849: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/29(火) 20:07:15.70 ID:TFwo0+zOo

大天使「ですが、あの『計画』は両刃の剣ではないかと……。下手すれば、逆に世界を崩壊させる可能性も十分ありますが……」

女神「それも承知の上です……。ですが、今の関係がこの先、変にこじれるかもしれない事を考えると、まだこちらの手段の方が世界崩壊の可能性は低くなるでしょう……」

女神「それに機会は今しかありません……。決断の時です」

大天使「しかし……。かなりの不安が残ります……。私達もそれにより罪深い存在となってしまいますし……」

女神「もう決めた事です……。これにより私達は引き返せない位置へと進むでしょう……。そして、勇者も同様に後戻り出来ない地点へと……」

大天使「全て、覚悟の上ですか……」

女神「ええ……。この世界の平和の為に……」



「勇者にはこのまま『伝説』となってもらいましょう」


「この先、例え何年経とうとも、この勇者を超える事が出来ないと誰からも思われる様な絶対的な存在に……」


「無理矢理にでもなってもらいます……」



大天使「我らが罪を許したまえ、勇者よ」サッ…… (十字を切る)




850: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/29(火) 20:08:46.31 ID:TFwo0+zOo

女神「それでは大天使は、今、聖女に代わって大聖堂にいる女に『例の連絡』を……」

大天使「はい……」

女神「私は残り最後の力を全て使って、少しの間だけ魂のみを竜界へと降臨させます……。これが私の最後の役割となるでしょう……」

大天使「勇者の元に行かれるのですね」

女神「ええ……。恐らく時間はそうありません。私が降臨し、そして勇者との会話が終わるまでには、大天使と女は全ての手筈を整えておいて下さい……」

大天使「はい……」


女神「必ず、世界中の皆に、『あの事』を伝えるように……」

大天使「わかっています……。万事つつがなく……」




851: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/29(火) 20:09:42.23 ID:TFwo0+zOo

ー 中央国、大聖堂内、円卓の間 ー



教皇「…………」

枢機卿A「…………」

枢機卿B「…………」

枢機卿C「…………」

枢機卿D「…………」

神殿騎士団長「…………」



教皇「騎士団長よ。未だ……女は特別大礼拝堂に立て籠ったままか」

神殿騎士団長「……申し訳ありません。信じられぬほど強力な結界が中に張ってありまして」

神殿騎士団長「また、聖女様のドラゴンが女の側についております。仮に結界を破れたとしても、我等がその場で取り押さえるのは不可能かと……」

教皇「…………」




852: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/29(火) 20:11:09.84 ID:TFwo0+zOo

教皇「しかし、これまで水も食事も渡しておらぬのであろう……。いかに女と言えど、そろそろ衰弱しておるのではないか」

神殿騎士団長「それが、扉ごしの会話にはきちんと受け答えをしております……。女曰く、天使様が補助してくれていると……」

枢機卿A「天使とはな……。世迷い言を……」チッ

教皇「…………」


枢機卿A「教皇貎下。今更の話ですが、あの女を教会に復帰させたのはやはり間違いだったのです」

枢機卿B「左様。聖女の逃亡の手伝い、許される事ではありません。捕まえたら魔女裁判にでもかけて処刑すべきです」

枢機卿C「今は過ぎた事を言っても仕方あるまい。それよりも、これらの事態を世間からどう隠すかについてを話し合うべきだろう。捕まえた後の事は、捕まえてから決めれば良い」

枢機卿D「だが、聖なる盾も聖女に奪われているのだぞ。こちらは勇者に渡すと言っていたから隠しようがないが、どうするつもりかね。偽物を作って誤魔化すとでも言うのか」

枢機卿A「奪われたのは神殿騎士団の責任だ。そちらで何とかしたまえ。聞けば、抵抗もせず聖女に渡したというではないか」

神殿騎士団長「それは……。ですが、竜を連れてる聖女様相手に我等が何が出来たというのです。抵抗してもしなくても結局は奪われたでしょう」

枢機卿B「それが言い訳になるか。『奇跡の鐘』・『聖女』・『伝説の盾』と、今や教会の三大シンボルの内、二つが消えているのだぞ。この事態をどうおさめるつもりだ」

枢機卿C「落ち着け。聖女に関しては、元から姿を滅多に見せていなかったのだ。そこはどうにかなる。伝説の盾も勇者に譲渡したとするしかあるまい。問題は今後の事だ。教会の威信をどう取り戻すかだろう」

枢機卿D「その前に、立てこもっている女を外に引っ張り出すのが先ではないのかね。女を人質にすれば、この後の事はどうとでもなるだろう」

枢機卿A「いや、『伝説の盾』を勇者に譲渡した事にするのであれば、先に勇者の存在を教会が認めねばなるまい。まずは急いで式典を開いて……」


教皇「頭が痛くなるな……。この事態、どこから手をつけるべきか……」ハァ




853: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/29(火) 20:12:38.19 ID:TFwo0+zOo

コンコン、ガチャッ!!

大司教「し、失礼しますっ! 一大事です!」


枢機卿D「何だ、今は重要な会議中だぞ!」

大司教「申し訳ありません、ですがっ!!」


教皇「……どうした」


大司教「女が特別礼拝堂から出て、大聖堂へと向かっておりますっ!! 竜も一緒です!!」


教皇「!?」

枢機卿A「自分から出ただと……!!」

枢機卿B「一体、何が目的だ……!!」


大司教「そ、それが、『奇跡の鐘』を必要としているとっ!!」


神殿騎士団長「奇跡の鐘だと!? すぐ行くっ!!」スクッ

教皇「今度は何を企んでおる……あの女は!」




854: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/29(火) 20:13:51.21 ID:TFwo0+zOo

ー 大聖堂内、中央礼拝堂 ー


神殿騎士A「お、お引き下さい! 奇跡の鐘は神聖な聖具でございます! 例え誰であろうと、許可なくこの鐘を渡す訳には!!」


女「……お下がりなさい。私は女神様の神託により、その鐘を必要としているのです。許可など必要ありません」

地海竜『ギルルルッ!』ギロッ


神殿騎士A「うぅっ!!」ビクッ!!

神殿騎士B「で、ですが!!」

神殿騎士C「それでも、あの鐘を渡す訳には……!!」


女「……お下がりなさいと私は言いました。私の言葉は、そのまま女神様の言葉だと思いなさい」ピカーッ (後光が射す)

天使「退くが良い……。女神は鐘を必要としておられる」フワリ (降臨)


神殿騎士A「!!」

神殿騎士B「せ、聖なる光が……!!」

神殿騎士C「て、天使様まで降臨を……!!」



女「では、行きましょう。鐘を鳴らす準備を整えに……」スタスタ……

天使「はい……」フワッ



神殿騎士A「い、一体、何の為にあの鐘を……」ガクガク

神殿騎士B「普段は絶対に鳴りもしないが、鳴れば世界中に響くと言われる伝説の鐘……」ガクガク

神殿騎士C「前にあの鐘が鳴ったのは、魔王が現れた時だと聞いているぞ……。じゃあ、今度は一体何があるって言うんだ……」ガクガク




855: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/29(火) 20:15:54.24 ID:TFwo0+zOo

ー 同時刻、南の国

  王宮二階、バルコニー ー



姫「…………」




ー 王宮の庭 ー


騎士A「最近、姫様はよくバルコニーから外を眺めておられるな。今日もだ」

騎士B「ああ、以前はそんな事はなかったんだがな。やはり、勇者様の事が気になっておられるのだろうか」

騎士C「戻れば結婚されるという事だったからな。気にならない訳はないだろうが……」

騎士D「実際、どう思っておられるのだろうな? 姫様は勇者様の事を」

騎士A「さあな。だが、少なくとも悪くは思っておられないだろう。お嫌なら御自分の部屋にでも引き込もっておられるんじゃあないか?」

騎士A「勇者様の事が心配だから、ああして外を眺めておられると俺は思うがな」

騎士B「勇者様は美男子だし、真面目で誠実な性格をしていたからな……。姫も優しく賢いお方だからきっとお似合いの……ん?」



ピカーッ (後光が差す)


騎士A「!?」

騎士B「な、何だ!? 魔物か!?」ガチャッ (魔法銃を構える)

騎士C「いや、待て! あれは……!!」



天使「」フワリ

姫「!?」



「天使様!!?」

 




856: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/29(火) 20:17:18.84 ID:TFwo0+zOo

ー 同時刻、東の国、王都 ー


「はい、いらっしゃい、いらっしゃい! 安くしとくよー!」

「おっと、そこの男前な兄さん、このかんざしとか贈り物にどうだい! 女の子にあげりゃイチコロだぜ!」

「安くて美味しいリンゴだよー! 昨日、果樹園からもいできたばかりのだ! 見てよ、この色ツヤ! 美味そうだろ!」

「一つ目オオカミの毛皮あるよー! どれも上物ばかりだよー! さあ、買った買った!」


名剣士「しっかし、ちょっと留守にしてる間に王都も活気が出てきたな」スタスタ

名剣士「前は役人の怒声と、悲鳴や泣き声ばかりだったからな。陛下の政治が上手くいってる証拠だ。俺も苦労した甲斐があったってもんだ」

名剣士「それじゃあ、王都の空気も十分堪能した事だし、そろそろまた旅にでも出ようかね。今度は西の国にでも行ってみるか。何か面白い事があるかもしれないしな」スタスタ


ザワザワ、ザワザワ、ザワザワ!!!


名剣士「ん? やけに騒がしいな。何だ?」



「おい、聞いたか!? 今、記念広場の真上に天使様が降臨してるらしいぞ!!」

「天使様が!? 一体、何で!?」

「いや、知らないが、何でも重大な知らせがあるとかで!!」



名剣士「天使様が……!? それに、重大な知らせ!?」

名剣士「そうと聞いちゃ行くしかないだろ! 記念広場は確か向こうか!」タタタッ




857: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/29(火) 20:19:08.96 ID:TFwo0+zOo

ー 同時刻。北の国、山奥の大屋敷 ー


大賢者「九尾の狐さん、九尾の狐さん」

九尾の狐「」スヤスヤ


大賢者「駄目か……。起きてくれない」ハァ

九尾の狐「」スヤスヤ


大賢者「すっかり体も回復したし、助けてもらったお礼をしたいのに……」

九尾の狐「」スヤスヤ


大賢者「ここ二日ばかり、ずっと眠りっぱなしだ。無理矢理起こそうとすると尻尾ではたかれるし……」

大賢者「危うくそれで死ぬとこだったからな……。一体、僕とどれだけ差があるんだろう……」

大賢者「本当にあの占い師のおばあさんの言う通りだったな……。上には上がいたし、世界は驚くぐらい広いや……」

大賢者「九尾の狐さん……。その世界の垣間でも良いので僕に少しだけ見させてもらえないでしょうか? 弟子入りさせてもらえないでしょうか?」

九尾の狐「」スヤスヤ


大賢者「まあ、ずっとこの調子だけどね……。僕が何を言ってもまるで起きてくれないし……」

九尾の狐「」スヤスヤ

大賢者「どうやったら起きてくれるかな……」


九尾の狐「」ピクッ

大賢者「!?」


九尾の狐「何じゃ、この予感は……?」ムクッ

大賢者「お、起きた!?」

九尾の狐「妾の第六感が強く告げておる……。じゃが、何じゃ……?」

大賢者「あ、あの、九尾の狐さん!」

九尾の狐「黙っておれ、小僧。今、妾は集中しておる」

大賢者「あ、す、すみま」

九尾の狐「向こうか。遥か北の方角じゃな……」トテトテ


ガラッ (屋敷の襖を開け放つ)


九尾の狐「一体、何が起こるというのじゃ……」(外を眺め、北の方角をじっと見つめる)

大賢者「……?」




858: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/29(火) 20:20:42.63 ID:TFwo0+zOo

ー 同時刻。南の国、凪の海賊団アジト ー


うみねこA「」ニャー、ニャー

うみねこB「」ニャー、ニャー



男船長A「くそっ……。まだ大船長にやられたところが痛むぜ……」ズキズキ

男船長B「全員、派手にのされたからな……」ズキズキ

副船長「束になってかかっても、結局、足止めすら出来なかったからな……。完全にやられ損だ……」ズキズキ

女船長C「大船長からしたら軽く稽古つけた様なもんでしょ、あれ……。もう別世界の人よ、あんなの……」ズキズキ

女船長「にしても、これからどうしてくかよ。手探りで貿易やってくしかないけど、不安が……」


シーン……


女船長「ん?」ピクッ

男船長A「お前も気付いたか。何だ、この雰囲気……」キョロキョロ

男船長B「何かが襲ってきたって訳じゃない……。殺気も闘気も感じられない……。だが、何だ、この違和感は……? 急に何か変わったぞ」

副船長「いや、わかった! お前ら上を見ろ!」

女船長C「上?」ツイッ


シーン……


女船長「そうか……! 何か起こったんじゃなくて……!」

男船長A「ああ、消えちまったんだ……! あれだけ空を飛んでいたうみねこが、いつのまにか! どこにもいなくなってる! 鳴き声すら聞こえなくなったぞ!」

男船長B「だけど、お前……。この島を俺達のアジトにしてからもう四年以上経ってるが、その間、一度でもうみねこの声が聞こえなくなった事ってあったか……?」

副船長「……いや、覚えてねえな。なかったはずだ」

女船長C「じゃあ、何で急に……?」

女船長「何かあったのかも……。私らの知らないところで、何か大きな事が……」

副船長「あるいは……。これから何か起こるのかもしれないぞ……」

男船長A「何が起きるってんだよ、副船長……。鳥が一斉に避難する程の何かって事だろ、それ……」

副船長「船が沈没する前にはネズミがいなくなるってのはよく聞くが……」

女船長「何なの、一体……。気味が悪い……」




859: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/29(火) 20:23:00.72 ID:TFwo0+zOo

ー 同時刻。西の国、農業で栄える町 ー


秘書「では、こちらの農園との専属契約はこれで全て交渉終了という事で……」

農民A「ああ、七つ星商会さんところに全部卸すだよ。いいブドウさ出来るのを期待してけろ」

秘書「ええ、宜しくお願いします」


大風車「」カタカタ、カタカタ…… (高さ12メートル)

大風車「」ピタッ……


秘書「おや……? 風が、止まった?」


農民A「そ、そんな嘘だべ! この町は風が常に吹いてる町なんだ。あの大風車が止まったとこ、俺は見た事ねえぞ」

農民B「俺もだ。生まれて初めて見ただ……。この町で風が止まる事なんかあるんだべな……」


秘書「……風が止まる。しかし、何故……」

秘書「!!」

秘書「あれは……! 風車の上に!」



天使「」フワリ…… (降臨)



農民C「て、天使様!?」

農民D「何でこったらとこに天使様が!?」



天使「皆の者、よく聞きなさい……。これより、勇者に関する事で、伝えるべき事がある」



農民A「ゆ、勇者の事で!?」

農民B「一体、なんだべさ!?」


秘書「まさか、女大富豪さん達に何かあったのでは!!」




860: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/29(火) 20:24:10.20 ID:TFwo0+zOo

ー 妖魔の森、南西部、上空 ー


アスタロト(悪魔)「怯むな! 奴等を生かして帰すな!! 飛べる奴等は全員殺しにかかれっ!!」バッサ、バッサ!!

【南西地区担当、八大将軍の一人】
『体力 :617万
 攻撃力:422万
 防御力:365万
 魔力 :409万
 素早さ:158万』


剣聖「雑魚は、俺の前に出てくるなっ!!」チャキッ

天馬「」ヒヒーン!!!


「魔法剛剣技!! フ レ ア ダ ウ ン ッ !!」


ズバッ!!!!



アスタロト「っ!!!!」ガフッ!!!!

ヒューーーン……ドサッッッ!!!!



剣聖「冥土の土産だ! 魔法剣の威力、冥界でとくと語るといい!」




861: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/29(火) 20:25:07.63 ID:TFwo0+zOo

巨大屍鳥A「グギャギャッ!!!」バササッ (全長31メートル)

巨大屍鳥B「グギャギャッ!!!」バササッ

巨大屍鳥C「グギャギャッ!!!」バササッ

巨大屍鳥D「グキャギャッ!!!」バササッ

巨大屍鳥E「グギャギャッ!!!」バササッ

巨大屍鳥F「グギャギャッ!!!」バササッ

巨大屍鳥G「グキャギャッ!!!」バササッ

巨大屍鳥H「グギャギャッ!!!」バササッ

巨大屍鳥I「グギャギャッ!!!」バササッ



女大富豪『ふふっ。飛んで火に入るなんとやらってやつね。この程度の数、ウイングフリーダムにとっては何の意味もないわよ! 武装展開!』ガコッ

魔導機神「」シュババババッ!! (遠隔操作型、魔力出力小型砲台×32機を背面から展開)


女大富豪『奏でなさい! 破滅のメロディ! フィンファンネル!!!』


小型砲台A「」ギュインッ、ドシュッ!! (空中を自在に移動しながら魔力レールガンを発射)

小型砲台B「」ギュインッ、ドシュッ!! (魔力レールガンを発射)

小型砲台C「」ギュインッ、ドシュッ!! (魔力レールガンを発射)


(以下略)


小型砲台Z「」ギュインッ、ドシュッ!! (魔力レールガンを発射)



巨大屍鳥A「ギッッ……!!」ヒューーーン……ドサアッ!!!

巨大屍鳥B「ガグッッ……!!」ヒューーーン……ドサアッ!!!

巨大屍鳥C「グギッッ……!!」ヒューーーン……ドサアッ!!!

巨大屍鳥D「ッッ……!!」ヒューーーン……ドサアッ!!!

巨大屍鳥E「ガッッ……!!」ヒューーーン……ドサアッ!!!

巨大屍鳥F「ギギッッ……!!」ヒューーーン……ドサアッ!!!

巨大屍鳥G「ガギッッ……!!」ヒューーーン……ドサアッ!!!

巨大屍鳥H「グギッッ……!!」ヒューーーン……ドサアッ!!!

巨大屍鳥I「ギッッ……!!」ヒューーーン……ドサアッ!!!



女大富豪『千年後に出直して来なさい!』




862: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/29(火) 20:26:06.72 ID:TFwo0+zOo

集団コウモリ×4000「ギギギィッ!!!」バサササササッ!!!!



女闘神「へえ、まるで一匹の巨大なコウモリだね、気持ち悪い」

鳳凰「シギャアアアアッ!!」ビリビリッ


女闘神「でもさ、一匹一匹が話にならない弱さだよ。そんなんじゃ、あたしの足止めは出来ないね」スッ (気功破の構えを取る)



「いくぞっ!! 超 級 覇 王 真 光 弾 !!!」

女闘神「破ぁぁっっ!!」ドンッ!!


気功破「」ギュインッ!!!! (全長79メートル)



ドッゴオオオオオオオンンンンッ!!!



集団コウモリ×4000「グギィッ……!!!」ジュワッ…… (蒸発)



女闘神「武闘家、舐めんな!! 多対一でも弱点にならないのがあたしだ!!!」




863: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/29(火) 20:26:56.98 ID:TFwo0+zOo

地獄トンボA「……!」ブイーンッ!!!! (全長16メートル)

地獄トンボB「……!」ブイーンッ!!!!

地獄トンボC「……!」ブイーンッ!!!!

地獄トンボD「……!」ブイーンッ!!!!



真魔王「速さも強さもそれほどでもないね……。君達程度に魔力を使うのはもったいないから、少し温存させてもらうよ」ブインッ…… (魔力で長大剣を生み出す)


「魔力剣! 乱 れ 雪 月 花 !!!」


ザシュッ、ドシュッ、ズバッ、ドシュッ!!!!




地獄トンボA「……!!!」 (一刀両断)

地獄トンボB「……!!!」 (一刀両断)

地獄トンボC「……!!!」 (一刀両断)

地獄トンボD「……!!!」 (一刀両断)



真魔王「魔法使いだからって、剣が使えない訳じゃないからね。むしろ、結構得意な方なんだ」ヒュンッ (高速飛行)




864: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/29(火) 20:27:55.75 ID:TFwo0+zOo

グリフォン「ガギギャアアアアッ!!!」ビリビリッ (全長45メートル)

【伝説の魔獣】
『体力 :443万
 攻撃力:308万
 防御力:176万
 魔力 :292万
 素早さ:339万』



聖女「うん……。わたしもあなたに恨みはないけど、これでさよならだね」バササッ

聖女「回復魔法。この者に癒しの光を与えたまえ……」パアアッ



グリフォン「!??」

『グリフォンの体力が9999億回復した!!』

グリフォン「グッ……!! ゴッ……!!!」ガフッ!!!!

グリフォン「」ブクブク…… (気絶)

グリフォン「」グラッ、ヒューーーン……ドサアッ!!!!



聖女「わたしの回復は強すぎるの……。加減しないと、体がもたないぐらいにね……。ごめんね」バササッ




865: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/29(火) 20:28:47.20 ID:TFwo0+zOo

虹色蝶A「…………」バッサ、バッサ!! (全長7メートル)

虹色蝶B「…………」バッサ、バッサ!!

虹色蝶C「…………」バッサ、バッサ!!




勇者「…………」ポツーン……

天海竜『グルルッ!!』グワッ (口を開ける)


天海竜『ギャオオオッ!!』ゴオオオッ (灼熱の炎)



虹色蝶A「!!!」ジュワッ (炎焼)

虹色蝶B「!!!」ジュワッ (炎焼)

虹色蝶C「!!!」ジュワッ (炎焼)

ヒューーーン……ポトッ、ポトッ、ポトッ



勇者「…………」ポツーン……

天海竜『グルルルルッ!!』フンスッ




866: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/29(火) 20:30:01.41 ID:TFwo0+zOo

勇者「……俺は、一体、何の為にここにいるんだろう……?」

天海竜『グルルッ?』


勇者「いや、一人言だよ……。それにしても、お前は強いな……。さっきは守ってくれてありがとう……」

天海竜『グルルルッ』フンスッ


勇者「あ……。あれが魔王城かな……。ほら、地平線の先に微かに見えるけど……」

天海竜『グルルルッ』コクコク


勇者「あそこに魔王いるんだ……。きっと強いんだろうね……」

天海竜『グルルルッ』


勇者「でも、みんなも強いからなあ……。もう何か別世界の出来事みたいでさ……」

天海竜『グルルルッ?』




867: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/29(火) 20:31:09.92 ID:TFwo0+zOo

勇者「もうさ……。出来れば、俺だけ帰りたいんだけど……。やっぱり帰っちゃ駄目なのかな……?」

天海竜『グルルッ??』


勇者「いや、俺もう完全に蚊帳の外だしさ……。いらないよ、ていうか無理だよ……。俺がいなくても大丈夫っぽいし……。むしろ、足手まといだよ……」

天海竜『グルルルッ……?』


勇者「あ、でも、伝説の剣を俺が持ってたっけ……。これがないと魔王倒せないんだよね……。ひょっとして、それだけの為に連れて来られたのかな、俺……」

天海竜『グルルルッ???』


勇者「あ、いや、ごめん……。ちょっと愚痴を吐きたくなってさ……。なんか想像してたのと全然違ったから……」グスッ

天海竜『グルルルッ!』アセアセ


勇者「俺、本当に何の為にここにいるんだろうって……。さっきから何もしてないし……。何も出来ないし……。勇者だってのに、何も……」グスッ

天海竜『グルルッ! グルルルッ!!』アセアセ




868: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/29(火) 20:32:42.79 ID:TFwo0+zOo

ー 妖魔の森、東部 竜王のねぐら ー


竜王『ガルルッ……グルルルルッ……(勇者たちの一行が……破竹の勢いで進軍しておるな……)』

【竜族の長】
『体力 :904万
 攻撃力:818万
 防御力:796万
 魔力 :479万
 素早さ:682万』


黄龍『ギルッ……(はい)』


(以下、鳴き声省略)


竜王『それで……勇者からの合図はまだ来ておらぬのだな』

黄竜『はい。未だ……。とうに来てもおかしくはないのですが、まだ送られてきてはおりません……』

紫龍『ギリギリまで戦力を自分達に引き付けておいて、と考えているのでしょうかね』

竜王『かもしれぬな……。気遣われるのはむしろ我等の方であろうから……。あの者らなら、我等の力など必要としておらぬだろうに……』


竜王『依然、我等は待機だ……。勇者からの合図が来たら、我の命令を待たず、すぐさま魔王軍に襲いかかれ』

黄竜『はい』




871: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/29(火) 20:37:39.77 ID:TFwo0+zOo

ー 同時刻。魔王城前、大広場 ー


大魔導師「魔王様。遊撃部隊八千名、近衛兵一万二千名。全て出陣の準備、整いました」

魔王「遅い!」

大魔導師「も、申し訳ありません!」

魔王「奴等、既に南西部を突破し、中央付近にまで来ているというではないか。すぐに出るぞ!」

大魔導師「は、はい!」

魔王「飛べる魔物は全員、鶴翼の陣を維持しつつ余に続け! 飛べぬものは下から向かえ!」ヒュンッ (浮上)


「はっ!!」


魔王「叩き落として地上戦に持ち込む故、下の者らはとどめの用意をせよ! 指揮は側近に任せる!」

側近「ははっ!」


魔王「よいか、皆の者!! 例え敵がどれ程の強敵であろうと、余と、余の誇る軍の敵ではない!」

「はっ!!」

魔王「前後左右に加えて、空と陸から完全に包囲して殲滅戦に持ち込めば我らの勝利は約束されている! 余の指揮に従うだけでお前たちは勝利の美酒にあずかれるのだ!!」

「ははっ!!」


魔王「皆、恐れず進め! 余自ら先陣を切る!!」ヒュインッ (高速飛行)


「ははっ!! 魔王様に続けーーーーっ!!!!」



『グオオオオオオッ!!!!』×魔物20000体


 




872: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/29(火) 20:39:10.26 ID:TFwo0+zOo

ー 妖魔の森、中央部付近 ー


キラー女王蜂A「!!」ブイーンッ!!! (全長32メートル)

キラー女王蜂B「!!」ブイーンッ!!!



剣聖「しつこいっ!!」ズバッ!!!!

天馬「」バッサ、バッサ!!


キラー女王蜂A「!!!!」(一刀両断)




女大富豪『甘いよっ!!』ガチッ

魔導機神「」ドシュンッ!! (魔力レールガン発射)


キラー女王蜂「!!!!」(一撃死)




女闘神「ったく。強さは大した事ないんだが、数が多くて面倒だな」

鳳凰「」バッサ、バッサ!!


聖女「うん。予想してたよりも多いね」バササッ


真魔王「だけど、下、見てよ! やっと暗黒湖を越えたよ!」ヒュンッ


剣聖「お、本当だな! 竜王の話によると、これでようやく半分ってとこか。流石に妖魔の森は広い!」


女大富豪『ね、なら、そろそろ! 勇者に合図を送ってもらおうよ! これまでに十分魔物を引き付けたよ、私達!』


聖女「そうだね! 竜王さん達もきっと待ってるだろうし、そろそろ来てもらいたいよね!」


女闘神「じゃあ、あたしが代表して勇者と話してくる! 皆はそのまま近寄ってくる魔物を倒しててくれ!」


剣聖「了解! 頼んだぞ!」




874: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/29(火) 20:41:17.05 ID:TFwo0+zOo

ー 仲間達からやや後方地点 ー


勇者「……なんかもう、これからどうしていいか、俺」グスッ

天海竜『グルルッ!!』アセアセ


「勇者ぁーー!!!」


勇者「」ビクッ

勇者「ぅっ……」ゴシゴシ


女闘神「よしっと、辿り着いた」

鳳凰「」バッサ、バッサ!!


勇者「ど、どうしたの、女闘神?」

女闘神「ああ、勇者。実はそろそろ合図を送ってくれないかってな」

勇者「合図?」

女闘神「ああ、竜王への一斉攻撃の合図だよ。勇者には勇者の考えがあると思うんだけど、あたしらは今が良いタイミングなんじゃないかって思ったからさ」

勇者「あ、合図ね。う、うん……。わかった、そうだよね、送るよ……。でも、どうやって送ればいいのかな……」

女闘神「何でもいいよ。女大富豪みたいに派手な事をしてくれりゃ、それで合図になるから。魔法でも気功でも剣技でも何でもいいからさ。勇者ならそれぐらい楽勝だろ?」

勇者「え」ビクッ!!




876: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/29(火) 20:44:54.63 ID:TFwo0+zOo

女闘神「え、ってどうしたんだよ、勇者。やっぱ送るのはもう少し後からの方がいいのか?」

勇者「い、いや、そうじゃないんだけど……!!」アセアセ

女闘神「なら、頼んだ。流石に近寄ってくる魔物が鬱陶しいからさ。ドカンと一発、派手なのかましてくれ」

勇者「あ、あの……で、でも……」オロオロ

女闘神「勇者? 本当にどうしたんだよ? 何かまずいのか?」

勇者「そ、その……実は俺は……」グスッ

女闘神「……?」

勇者「あ、あれだけ派手な合図なんて……出来な」



ピカーッ!!! (天からの光)



勇者「!?」

女闘神「!?」



キラキラキラキラキラ……


女神「お待ちなさい、勇者よ……」 (降臨)

女神「その先を言う必要はありません……」



勇者「女神様!!?」

女闘神「!!?」




895: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/30(水) 17:30:36.87 ID:EDqZDKuQo

勇者「い、一体、何故ここに……!」


女神「もちろん、あなたを助ける為ですよ、勇者……」


勇者「俺を……!」

女闘神「勇者を……?」


女神「あなたの悩みは全てわかっています……」

勇者「!!」


女神「仲間との力の差がありすぎて、それで躊躇っているのですよね……」

勇者「……はい」

女闘神「力の差が……? そうなのか、勇者!?」

勇者「うん……ごめん」

女闘神「!!」




896: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/30(水) 17:32:40.89 ID:EDqZDKuQo

勇者「本当にごめん……。今まで隠してて……。なんか言い出せなくて……」

女闘神「い、いや、あたしは別に気にしてないけど……。でも、それ本当に本当なのか……?」

勇者「うん、そうなんだ……。嘘とかじゃないよ……」


女神「ええ……。私も保証します……。勇者の言う事に嘘偽りはありません……」

女闘神「女神様までそう言うなら……本当なのか。そっか……」


勇者「うん……。悪い……。ずっと黙ってて……」




898: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/30(水) 17:33:57.06 ID:EDqZDKuQo

女神「ですが、勇者よ……」

勇者「はい……」

女神「あなたは『選ばれし勇者』なのです……」

勇者「はい……」


女神「例えどれだけ仲間達と差があろうとも、その事をあなたが気に病む必要はありません……」

勇者「…………」

女神「あなたは、私が選んだ世界でたった一人の勇者なのです……」

勇者「はい……」

女神「自信を持って進みなさい……。あなたの仲間達も、それを気にする程、器の小さい者達ではないはずです……」

勇者「……ですが」


女闘神「いや、女神様の言う通りだ、勇者!」

勇者「え……」

女闘神「あたしはどれだけ勇者と差があっても、気にはしない! それは皆も同じはずだ!」

勇者「女闘神……。それ、本当に……?」

女闘神「ああ! 当然だろ!」

勇者「良かった……。ありがとう、女闘神……」グスッ




900: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/30(水) 17:35:42.45 ID:EDqZDKuQo

勇者「俺……今までずっとその事でどうしようか悩んでて……」グスッ

勇者「ほんの少しだけど、嘘ついて誤魔化そうかとかも思ったんだ……。勇者だってのに……」グスッ

勇者「でも、それは俺が子供の頃から憧れてた勇者とは真逆の行為で……。そんな風に考えてしまった自分が情けなくて……」グスッ

勇者「だけど、皆から嫌われたり、呆れられたりするんじゃないかって風にも思えて……。だから……」ポロポロ……


女闘神「何を言ってんだよ、勇者! 泣くなよ!」

女闘神「あたしも、あたしらもそんな事で勇者の事を嫌いになる訳あるかよ! それは絶対だ! 断言出来る!」


勇者「女闘神……」ポロポロ


女闘神「むしろ、誇らしくあるぞ! それだけ勇者が強いって事なんだからな!」

勇者「え…………?」

女闘神「あたしらだって相当強くなったって思ってたんだ。でも、勇者はそれを遥かに越えてるってんなら、嬉しい限りだろ!」

勇者「あ、あれ……。女闘神……?」

女闘神「あたしらはそんな強い勇者の仲間でいられるんだ! 一生の自慢に出来る! あたしはそれが純粋に嬉しいよ!」

勇者「いや、あの、そうじゃなくて逆な」


女神「勇者よ、聞いての通りです。あなたのその強大な力の一端を、今こそ仲間達に……。そして、世界中の皆に知らしめなさい……」

勇者「え、ちょっ」

女神「その為の準備は全て整えてあります……。あなたの凄さを知らしめる用意が既に……」

勇者「!?」 




901: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/30(水) 17:37:00.54 ID:EDqZDKuQo

ー 中央国、大聖堂

  大礼拝同、屋根の上 ー


女「では……女神様の神託通り、今こそ『奇跡の鐘』を鳴らします」

天使「はい……。お願いします、女様……」


女「勇者様の強さ、偉大さ、凄さ……。それを世界中の皆に届ける為に……」スッ (鐘に手で触れる)



『この世に生きる全ての者よ……』

『天上からの旋律のしらべを聞きなさい……』

『この鐘の音を全世界に……』



女「」ソッ (鐘に聖力を送り込む)



カラーン、コローン……

 カラーン、コローン…… カラーン、コローン……

  カラーン、コローン…… カラーン、コローン……

   カラーン、コローン…… カラーン、コローン……




902: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/30(水) 17:38:12.61 ID:EDqZDKuQo

ー 同時刻、南の国

  王宮二階、バルコニー ー


カラーン、コローン…… カラーン、コローン……

 カラーン、コローン…… カラーン、コローン……



姫「これは……。何て美しい響き……」

姫「空から、鐘の音が……」



天使「姫よ……。勇者の帰りを待ちし姫よ……」


姫「はい。天使様……」

姫「私に何かご用がおありなのでしょうか……?」


天使「鐘が鳴りし時、世界は動く……」

天使「そなたの想い人たる勇者……。かの者が魔王を倒すであろう……」


姫「!!」

姫「勇者様が!!」


天使「そう……勇者が。かの者の力、その一端をここから眺めると良い……。もうすぐそれは起こる……」


姫「もうすぐ……」




903: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/30(水) 17:39:43.09 ID:EDqZDKuQo

ー 同時刻、東の国

  王都、記念広場 ー


カラーン、コローン…… カラーン、コローン……

 カラーン、コローン…… カラーン、コローン……



「鐘の音が空から……」

「まさか……これが『奇跡の鐘』!」

「天使様も降臨されてる! 間違いない!」

「だけど、一体、何が起こるんだ、これから!」


名剣士「これが奇跡の鐘かよ……。生まれて初めて聴く音色だ……。ヤバイぐらいに綺麗だな……。ついつい聞きいっちまう」

名剣士「だが、この鐘が鳴る時は、災厄か奇跡のどちらかが起こるって噂だ。一体、今回はどっちだ……?」


ザワザワ、ザワザワ、ザワザワ!!



天使「皆の者よ……。怯える事はない……」

天使「この鐘は奇跡の前兆……。女神様はこう仰られた……」


『鐘が鳴りし時、北の空を見上げよ……』

『さすれば、勇者のその強さが理解出来るであろう……』



ザワザワ、ザワザワ、ザワザワ!!



名剣士「北の空……?」

名剣士「つまりは妖魔の森の方角か……。師匠達なら、もう妖魔の森に向かっててもおかしくないだろうが……」

名剣士「それと関係があるのか……?」クイッ (空を見上げる)




904: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/30(水) 17:41:10.85 ID:EDqZDKuQo

ー 同時刻。北の国、山奥の大屋敷 ー


カラーン、コローン…… カラーン、コローン……

 カラーン、コローン…… カラーン、コローン……


大賢者「これは……!」

九尾の狐「まさか、また聴く事になろうとはな……。奇跡の鐘の音じゃ……」

大賢者「やっぱり、そうなんですね! だけど、何て美しい音色なんだ……!」

九尾の狐「奇跡の鐘には二種類の音色があるんじゃよ、小僧。この美しき音は良い事が起こる前触れの方じゃな」

大賢者「良い事ですか……! だけど、今の時点で良い事と言えば……」

九尾の狐「前回は魔王が現れた時じゃったな……。となると、今回は魔王が倒されでもするのかの……」

大賢者「まさか、あの南の国に現れたという勇者が、もう……!」

九尾の狐「ほう。その様な奴がおったのか。しかし、人間ではあの魔王を倒すのは無理じゃと思うが……」

大賢者「いえ、勇者は魔王を倒す為に女神様が選んだ人です。不可能じゃありませんよ!」

九尾の狐「なるほどの、女神が一枚噛んでおるのか。それなら可能かもしれんが……さて、どうか」

九尾の狐「何にしろ、小僧。勇者が魔王を倒すにしても、今は北の空を見ておれ。妾の予感からすると、何か起こるなら向こうの方角じゃ」

大賢者「は、はい!」




906: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/30(水) 17:42:39.55 ID:EDqZDKuQo

ー 同時刻。南の国、凪の海賊団アジト ー


カラーン、コローン…… カラーン、コローン……

 カラーン、コローン…… カラーン、コローン……


男船長A「おい、今度は空から鐘の音が聞こえてきやがったぞ……!」

男船長B「こりゃ奇跡の鐘じゃねえのか!? 何かドデカイ事が起こった時に鳴るっていう伝説の!」


ザバザバザバッ!!

ザザザッ!! (水音)


副船長「マジかよ……。海、見てみろよ。今度は魚が一斉に南の方角に移動し始めてるぞ……」

女船長C「しかも、イルカとシャチが並んで泳いでるじゃないの……。周りを気にしてる余裕すら無いって事……?」


ザッバーーーンッ!!!

クジラ「」ザバザバッ



女船長「クジラまで南の方角に……。こりゃ、本格的にヤバイかもね……」

副船長「避難先が南なんだから……。当然、何か起こるとしたら北の方角か……」

男船長A「北の方角って言ったら、あれだよな……。妖魔の森があるとかいう……」

男船長B「魔王がいる場所かよ……。って事はもしかして大船長のせいか? 大船長なら速攻で乗り込んで派手にやらかしててもおかしくはねえが……」

副船長「だが、その大船長が前に言ってたぞ。あたしより勇者の方がきっと何倍も強いってな……」

女船長「じゃあ、何かよ、副船長……。今、魚や鳥が避難してるのは、大船長じゃなくて勇者の仕業だって事か?」

副船長「多分な……。流石にあの人が全力出しても、ここまで大事にゃならねえだろ……。あるとしたら、勇者か魔王のどっちかじゃねえか……」

女船長「どっちにしろ、半端ないね、きっと……」

副船長「だろうな……」




907: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/30(水) 17:44:08.50 ID:EDqZDKuQo

ー 同時刻。西の国、農業で栄える町 ー


カラーン、コローン…… カラーン、コローン……

 カラーン、コローン…… カラーン、コローン……


天使「さあ、皆の者よ、刮目して北の空を見よ……」

天使「後にも先にもこの勇者を越える者は現れぬ……」

天使「それを自分達の目で確かめると良い……」

天使「女神様の加護と祝福を受けし勇者の力を照覧せよ……」

天使「天地も、草木も、鳥も、地を這う獣も、人も、昆虫も、何もかも……」


天使「その目に焼き付けて後世に伝えるのだ……」


カラーン、コローン…… カラーン、コローン……

 カラーン、コローン…… カラーン、コローン……



農民A「今から勇者様の力が……」ドキドキ

農民B「何が起こるんだっぺ……」ゴクッ

秘書「北の空か……」ジッ




908: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/30(水) 17:45:22.03 ID:EDqZDKuQo

ー 同時刻。妖魔の森

  東部、竜王のねぐら ー


カラーン、コローン…… カラーン、コローン……

 カラーン、コローン…… カラーン、コローン……


竜王『ガルルルルッ……(女神が降臨したとはな……)』

黄龍『ギルッ……。グギギルルッ……(はい。そして、この鐘の音は恐らく奇跡の鐘……)』


(以下、鳴き声省略)


竜王『何があったか……。はたまた、これから何が起こるかは想像もつかぬが……』

紫龍『恐らく、今日、魔王軍との決着はつくのでしょうな……』

竜王『そうじゃな……。それで間違いあるまい……』

黄竜『願わくば、我等に勝利を……』

竜王『勇者とその仲間達がおる……。余程の事がない限りは我等の勝利で終わるだろう……。後はこちらにどれだけの犠牲が出るかじゃな……』


竜王『我等の数も少なくなった……。出来れば犠牲は少なくおさめたい……』

竜王『勇者と女神に期待しよう……。かの者達の力に……』

竜王『女神が何をしに現れたかはわからぬが、あの者達から目を放すな……。しかと見届けよ……』

黄竜『はい……』




909: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/30(水) 17:47:11.09 ID:EDqZDKuQo

ー 同時刻。魔王城近く、上空 ー


カラーン、コローン…… カラーン、コローン……

 カラーン、コローン…… カラーン、コローン……


魔王「ちっ。耳障りな。これは奇跡の鐘か」ヒュンッ (飛行中)

大魔導師「いえ、魔王様、これは吉兆でございます! これこそ魔王様が今日、この世界を統一するという証! 奴等にとってのレクイエムでございましょう!」ヒュンッ (飛行中)

魔王「下らぬ事を。女神が創った玩具ごときに一々踊らされるな。余がそれを聞いて喜ぶとでも思ったか。二度とその様な事を口にするな」

大魔導師「は、ははっ! 失礼しました!」


ザワザワ、ザワザワ、ザワザワ!!


魔王「見よ。案の定、軍が動揺し浮わついた。鐘一つで何を騒ぐ!」ビリリッ


シーンッ!!


魔王「一時、進軍を止めよ! 崩れた陣形を再編する!」

大魔導師「ははっ!」

魔王「しかし、余計な事を。女神め! とことんまで余の邪魔をするか!」




910: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/30(水) 17:48:20.98 ID:EDqZDKuQo

ー 妖魔の森、中央部、上空 ー


カラーン、コローン…… カラーン、コローン……

 カラーン、コローン…… カラーン、コローン……


女大富豪『ちょっと、これって……!』

魔導機神「」キキィッ


聖女「うん……。間違いないよ……」バサッ……


真魔王「奇跡の鐘だ……」ピタッ


剣聖「勇者の元に女神様も降臨してるのか! だが、何で鐘が鳴る!?」

天馬「」バッサ、バッサ……


女大富豪『勇者に何かあったの!?』

聖女「わからないけど、きっと!」

真魔王「どういう事だろ……」

剣聖「良い事か悪い事か、どっちだ!?」




911: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/30(水) 17:49:13.28 ID:EDqZDKuQo

ー 仲間達からやや後方 ー


カラーン、コローン…… カラーン、コローン……

 カラーン、コローン…… カラーン、コローン……


女闘神「これ、奇跡の鐘か!?」

鳳凰「シギャアアアッ!」バッサ、バッサ……



キラキラキラキラキラ……


女神「時は来ました……」

女神「讃えなさい、誇りなさい、そして後の世にまで語り継ぎなさい……」

女神「この世に生きる全ての者よ……。今こそ伝説の勇者の力を見るのです……」



勇者「」

天海竜「グ、グルルッ!?」アセアセ




912: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/30(水) 17:50:55.60 ID:EDqZDKuQo

勇者「め、女神様……」ガクガク

勇者「お、俺は……こんな……無理……」ガクガク


女神「安心なさい……勇者よ。あなたは魔王城目掛けて魔法を使うだけで良いのです……」

勇者「で、ですが……」ガクガク


女神「よく聞くのです、勇者よ……。今から私があなたに最後の祝福を与えます……」

女神「それにより、あなたはこの世で恐らく最強の魔法を手にする事でしょう……」

勇者「!?」


女神「この魔法をあなたに教えるかどうかで、私は相当悩みました……。それぐらい、この魔法は強力なのです……」

女神「ですから勇者よ……。この魔法は禁忌とし、これ以降、自ら使うのを封印なさい……」

女神「今のあなたが使えばこの世界そのものを崩壊させかねない……。それほどの魔法なのです……。私の最後の切り札なのです……」

勇者「そ、そんな魔法を俺に……!」


女闘神「勇者スゲーな! そんな桁違いに強いのかよ!!」キラキラ




913: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/30(水) 17:52:27.95 ID:EDqZDKuQo

女神「ですので、勇者よ……。この魔法を使う時は可能な限り手加減をしなさい……」

女神「くれぐれも全力で使わない様に……。良いですね」


勇者「で、ですが……!」アセアセ


女神「では、頼みましたよ……勇者。あなたに最後の祝福を……」パァァッ……


勇者「っ!!」


『勇者は【伝説の魔法】を覚えた!!』



女神「さあ、その魔法を魔王城に……」


女闘神「勇者! 一発ぶちかましてやれ!」


女神「良いですか、勇者……。最大級の手加減をもって放つのですよ……」



勇者「そ、そんな事言われても……!」




914: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/30(水) 17:53:09.13 ID:EDqZDKuQo

勇者(例え伝説の魔法だって、俺が使ってもきっと仲間達には遠く及ばないだろうし……)

勇者(全力で放っても構わないんじゃ……)


勇者(でも、女神様からああまで念押しされてるから……)

勇者(あ、間を取って半分ぐらいの力で……)


勇者「」スッ (手を上にかざす)



女闘神「」ドキドキ、ワクワク

女神「」ドキドキ、ハラハラ



勇者「……伝説の魔法」


「 ミ ナ デ イ ン !!!!」

 




915: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/30(水) 17:56:08.13 ID:EDqZDKuQo

その瞬間、仲間達五人と勇者の力が一つになり、その全ての魔力エネルギーが、雷魔法へと還元した。

勇者だけでなく、仲間全員の魔力を増幅して放つ最強の雷魔法、ミナデイン。


大気そのものが震えた。

空全体が黒を通り越した漆黒の雷雲で埋め尽くされた。

信じられない程の轟音が世界全体を貫いた。

稲光によって世界は数瞬もの間、激しい閃光に包まれた。

それらが集約され、巨大な雷となって、信じられないほどの一撃が魔王城へと放たれた。


それは『雷』とは到底呼べない代物だった。最早、人類史上最悪最凶の天災と呼んでも良い。


稲妻の直径はおそよ30キロメートルにも及び、それがおよそ2分間、136秒もの間、一切途切れる事なく降り注ぎ続けた。

それは遥か遠くから見れば巨大な一本の大木に見えたに違いない。魔導機神が放った大型凝縮魔力出力砲の160倍以上ものエネルギーと規模がそこにはあった。


その小惑星の激突にも似た史上最大規模の『魔法』は、女神と天使達の尽力により、ほぼ世界中の人間が目にする事となった。

女神のハープにも似た音楽的な声が歌う様に全世界に奏でられ、天使達は一斉に祝福のラッパを鳴らした。


『勇者を讃えよ。これが勇者の力なり』



……目映いばかりの光が消え、北の空に見えていた巨大な光の柱がようやく見えなくなった時、人々は誰もが揃ってこう叫んだ。




916: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/30(水) 17:57:52.37 ID:EDqZDKuQo

ー 中央国、大聖堂 ー


神殿騎士たち「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」

大司祭「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」

大司教「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」

枢機卿「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」

教皇「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」

女「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」



ー 南の国、王宮 ー


騎士たち「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」

騎士団長「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」

国王「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」

王妃「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」

姫「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」



ー 東の国、王都 ー


町人「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」

商人「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」

神父「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」

子供「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」

名剣士「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」




917: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/30(水) 17:58:25.39 ID:EDqZDKuQo

ー 北の国、山奥、大屋敷 ー


大賢者「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」

九尾の狐「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」



ー 南の国、凪の海賊団アジト ー


海賊たち「勇者SUGEEEEEEEE!!!!」

男船長A「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」

男船長B「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」

女船長C「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」

副船長「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」

女船長「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」



ー 北の国、農業で栄える町 ー


農民A「勇者SUGEEEEEEEE!!!!」

農民B「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」

農民C「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」

秘書「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」



ー 竜王のねぐら ー


竜王『ガルルルルッ!!!!(勇者SUGEEEEEEEE!!!!)』

黄竜『ガルルルルッ!!!!(勇者SUGEEEEEEEE!!!!)』

紫竜『ガルルルルッ!!!!(勇者SUGEEEEEEEE!!!!)』




919: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/30(水) 17:59:44.73 ID:EDqZDKuQo

ー 妖魔の森、中央部、上空 ー


女大富豪『勇者TUEEEEEEEEEEEEEE!!!!』

魔導機神「」ヒュイン


聖女「勇者TUEEEEEEEEEEEEEE!!!!」


真魔王「勇者TUEEEEEEEEEEEEEE!!!!」


剣聖「勇者TUEEEEEEEEEEEEEE!!!!」

天馬「」ヒヒーン!!!!


女闘神「勇者TUEEEEEEEEEEEEEE!!!!」




勇者「え、え、あれ……」オロオロ

天海竜『グルルルルルルッ!!!!』フンスッ



女神「だから思い切り手加減をなさいとあれほど……」シュン




920: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/30(水) 18:00:26.80 ID:EDqZDKuQo

ー 『元』魔王城付近 

  『現在』巨大クレーター

  草木一本もない焼け焦げた荒れ地 ー



『この地全体に164兆2879億ダメージ』



魔物たち「」…… (炭屑)×20000体


側近「」…… (炭屑)

大魔導師「」…… (炭屑)



魔王「」ピクッ、ビクッ……
残り体力:1




922: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/30(水) 18:01:22.87 ID:fwVsAfMFo

生き残った魔王SUGEEEEEEEEEE!!!!




956: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/31(木) 17:34:43.47 ID:AnYy5EW8o

勇者があの一撃で砕いたのは、何も魔王城や魔王軍の一部だけではない!



ー 妖魔の森、西部 ー


ベルゼブブ(悪魔)「無理だ……。あの勇者には絶対に勝てない……」

ヤーマ(死神)「例え一生かかっても、あの勇者を超えるのは不可能だ……」

バアル(悪魔)「終わりの時が来たのか……」



ー 妖魔の森、北部 ー


アポフィス(破壊神)「自信を失った……。我はもう戦えぬ……」

カーリー(死神)「私が死を予感するとはな……。あれには勝ち目がない……」

ハデス(死神)「これで詰みだ……。全て終わったのだ」




勇者は魔王軍の戦意を! 士気を! 自信を! 根こそぎ砕き潰した!!




957: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/31(木) 17:35:36.43 ID:AnYy5EW8o

ー 妖魔の森、中央付近、上空 ー



女神「勇者よ……」ハァ


勇者「は、はい!」ビクッ

天海竜『グルルッ!』


女神「これでもう理解しましたね……。あの魔法は世界を滅亡させかねないと……」

勇者「は……い……」

女神「出来れば、二度と使う事のないようにして下さい……。あなたには頼れる仲間がいるのですから……」

勇者「はい……」

女神「あなたのその力は絶対的なものなのです……。故に、抑止力として存在しなさい……。あなたにはそれだけの力があります……」

勇者「抑止力、ですか……」


女神「ええ、あなたが力を使う必要はないのです……。ただ力があるというだけで、それだけで皆にとっては十分なのですから……」

女神「故に、決して、絶対に、何があろうとも、その力に溺れる事のないようにして下さい……」

女神「世界大戦を起こさない為だけに、その力を使うのです……。それを約束して下さい……。勇者よ、良いですね……」


勇者「はい……。女神様……」




958: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/31(木) 17:36:31.68 ID:AnYy5EW8o

女神「それでは、お願いしますね、勇者よ……」ニコッ

女神「私の力も残りわずかです……。もう神界へと戻らねばなりませんから……」


勇者「……はい。女神様のお言葉、忘れません」


女神「ええ、そうして下さい……。あなたは誠実で自然と人に好かれる性格をしています……。それはあなただけの才能です……」

女神「魔王がいなくなれば、この世界には平和が戻るでしょう……。その世界に、あなたのその才能はきっと必要とされるはずです……」

女神「伝説の勇者として……。この世界を争いのない平和な世界へと導いていって下さい……」

女神「仲間達を信頼し、尊敬し、時に引っ張り、時に諌めて、皆と仲良く協力してやっていくのですよ……」

女神「頼みましたよ、勇者……」


キラキラキラキラキラキラ……



勇者「消えていく……。神界へとお戻りになられたのか……」


勇者「ありがとうございます、女神様……。少しだけ自信を頂けました。そして、何より勇気を」

勇者「必ず、魔王を倒してみせます! そして、この世界に平和を!」




959: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/31(木) 17:37:36.73 ID:AnYy5EW8o

女闘神「勇者! 女神様からあんなに頼りにされてるなんてスゲーな!」

鳳凰「」バッサ、バッサ


勇者「うん。素直に嬉しいよ。それに、凄い魔法を教えてもらったし」


女闘神「だよな! あれ、スゴかったぞ! あたしもびっくりしたよ! 流石、勇者だな!」

勇者「俺も驚いたよ。まさかあそこまで威力があるなんて。女神様の言う通り、この魔法は危険だから魔王を倒したら封印しようと思う。もう使わない方が良いだろうから」

女闘神「そうだな! そっちの方が良いかもな! あんなん連発したら世界が壊れちまうだろうし!」

勇者「そうだね。そうなったら俺が魔王になるのかな? 気を付けないと」

女闘神「ははっ。勇者が魔王とか信じられないけどさ!」

ダヨネ、オレモダヨ、ハハハッ



「勇者ぁぁー!!!」



勇者「あ、皆も! わざわざ来てくれたんだ!」

女闘神「そりゃ来るって! あれだけの事があったんだし!」




960: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/31(木) 17:39:10.43 ID:AnYy5EW8o

女闘神「それにさ! さっきの勇者の魔法で魔物たち皆、攻撃してこなくなっちまったからな! スゲー痛快な気分だよ!」

勇者「そうだね。いつのまにか、魔物達がいなくなってる」


バッサ、バッサ!!


剣聖「おーい、勇者! 流石だな、この野郎! 何年経っても俺の遥か上を行きやがって!! スゲー嬉しいぜ!!」

天馬「」バッサ、バッサ


聖女「ホントだよ、スゴいよ、勇者! やっぱり勇者だけ昔から特別だね!!」バササッ


真魔王「だよね! 参ったよ、あんな凄い魔法見た事ないもん! 勇者はやっぱり僕たちの勇者だよ!!」ヒュンッ


女大富豪『うん!! 何かスッゴい自分の事みたいに嬉しい!! 思わず顔がにやけちゃうぐらい!! 勇者があんなに強かっただなんて!!』

魔導機神「」ドギュッ



勇者「ありがとう。でも、強いのはあの魔法だけだよ。俺自身はそうでもないんだ。他の事では、俺は皆よりもずっと劣ってると思う」


剣聖「おいおい、ここまで来て謙遜か! ったく! 叶わねえなあ、勇者には!」

聖女「勇者、慎み深いね! わたしも見習わなきゃ!」

女闘神「何せ、思いっきり手加減してあれだからな! あたしらの事は気にしなくていいってのにさ!」

真魔王「いや、気にするからこそ勇者なんだよ。昔からずっと僕たちの事を気遣ってくれてたしさ」

女大富豪「そうだよね! 引っ込み思案だった私が皆と仲良くなれたのも勇者のおかげだし!」


勇者「いや、本当なんだ。謙遜とか嘘とかじゃなくて。だからさ」


「? だから?」






961: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/31(木) 17:40:21.81 ID:AnYy5EW8o

勇者「前に女大富豪が説明してくれた通り、魔王は不死身だって話だよね。だから、きっとまだ生きているはず」


剣聖「だな!」

聖女「うん……。まだ魔王の悪しき気配が残ってる」

女闘神「あれで死なないとか反則だよな! 魔王のやつ!」

真魔王「というか、最悪、ノーダメージって可能性もあるからね……。『闇の衣』以外にどんな秘宝を持っているかもわからないし……」

女大富豪『十分、気を引き締めていかないとって事ね!』


勇者「うん。だから、皆! こんな情けない俺を助けて欲しい! 手伝って欲しいんだ!」

勇者「皆がいないと、魔王を倒す事なんか俺には絶対に無理だから!」

勇者「だから、もう一度お願いするよ! 俺に力を貸してくれ、みんなっ!!」



剣聖「当たり前だっ!! 任せておけ!!」

聖女「もちろんだよっ!! 全力でわたしたちも勇者を手伝うから!!」

真魔王「僕たちで勇者をしっかりと補佐するよ!!」

女闘神「っし! 改めて、気合いを入れ直そうぜ!!」

女大富豪『だね、せーのっ!!』



「魔王を倒すっ!! 約束通り、この六人でっ!!!」







962: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/31(木) 17:42:00.79 ID:AnYy5EW8o

【英雄譚、『伝説の勇者』より一部抜粋】


決意を新たにした勇者とその仲間達は、悠々堂々と魔王が待ち構えているであろう魔王城跡へと空から向かった。

その進撃を阻む魔物は一切存在しなかった。
竜ですら勇者からの合図があったというのに動きを見せようとはしなかったのだから。

各所にいた魔物たちは脅え震え、物陰に隠れつつ、ただ無気力な目を遠巻きから勇者一行に向けるだけだったと伝えられている。

ただし、『勇者伝記』によると、やけになった魔物達が一斉に群れとなって襲いかかったとされている。
また、各地に残る伝承によっては魔物達は揃って一目散に逃げ出したとされている場合もあり、真偽の程は定かではない。

しかし、竜が全く動かなかった時点で、戦争を起こす必要性がこの時には皆無だったのではないかという推測がされる為、魔物達が一斉に襲いかかったという『勇者伝記』の記述には疑わしいものがある。


何にせよ、この後、勇者一行はそのまま魔王城跡地へと進んでいき、そしてそこで初めて魔王と対面する事となる……。




963: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/31(木) 17:43:12.82 ID:AnYy5EW8o

ー 魔王城、跡地

  現、巨大クレーター ー



魔王「」…… (瀕死・気絶状態)
残り体力:1



勇者「…………」


剣聖「…………」

聖女「…………」

女闘神「…………」

真魔王「…………」

女大富豪『…………』




964: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/31(木) 17:44:06.23 ID:AnYy5EW8o

【古書、『勇者伝記』より一部抜粋】


勇者は魔王を見るなり強く叫んだ。それは名乗りであり、また自らの覚悟を声に出して外に出したものなり。

対して、魔王は不敵な笑みを浮かべ、妖しげな黒き魔力を全身から漂わせながら、勇者の実力不足と不運さを嘲笑し始めた。

かの伝説の魔法を受けても、その体には傷一つ無く、またその背後からは、新たに魔界から召喚された巨大な魔物が続々と現れ続けていたからだ。

これには流石の勇者も額に汗を滲ませ、自らの死を予感せざるを得なかった。

これまでの死闘により、仲間達は揃って満身創痍の体。かつ、自分の魔力と体力も若干の翳りを見せていたのだから……。




965: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/31(木) 17:45:50.36 ID:AnYy5EW8o

魔王「」…… (瀕死・気絶状態)



勇者「えっと…………」


剣聖「勇者……その、なんだ……」

聖女「う、うん……」

女闘神「なんつうか……あれなんだけどさ……」

真魔王「僕らも、その……。正直、この事態は予想してなかったんだけど……」

女大富豪『勇者がちょっと強すぎたんだろうね……。うん……』


勇者「正直……こういう時、どういう顔をしたらいいかわからないんだけど……」


剣聖「い、いや。俺達の事は気にせず、喜んでくれればいいからな……」

聖女「そ、そうだよ、勇者……。勇者が魔王を倒したんだもん。子供の頃からの夢が……か、叶ったんだし……」

女闘神「だ、だよな! あたしらも苦労したかいが……! あ、あったと思うしさ……」

真魔王「あ、あの……! 本当に気にしなくていいからね。ゆ、勇者一人で魔王を倒すって凄い事なんだしさ……」

女大富豪『……う、うん。ちょっと呆気なかったけど、私達も勇者を護衛してここまで来た訳だし……。魔王を倒す役には少しは立ててる……様な気がするからさ……』



勇者「な、なんか本当にごめんね、みんな……」

勇者「俺一人で魔王を倒しちゃって……」

勇者「皆には何て謝ったらいいか……」



「き、気にするなって!! 大した事じゃないからさ!!」アセアセ




966: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/31(木) 17:47:17.16 ID:AnYy5EW8o

剣聖「とにかく勇者! その、あれだ! ま、魔王にとどめを!」

女闘神「そ、そうだな、今の内に!」


魔王「」…… (瀕死・気絶)
残り体力:1


勇者「う、うん……。じゃあ……」チャキッ (伝説の剣を構える)


聖女「…………」

真魔王「…………」

女大富豪『…………』


勇者「さらば、魔王……。冥界へ旅立て……」ドスッ!!

魔王「!!!」ガフッ!!

『勇者は闇の衣を引き裂いた!!!』

『魔王に1のダメージ!!!』


魔王「っ! がっ!!!」ビクンッ!!!!

魔王「ぁ……。っ……」ゴフッ……


勇者「…………」


剣聖「…………」

女闘神「…………」

聖女「…………」

真魔王「…………」

女大富豪『…………』




967: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/31(木) 17:50:20.49 ID:AnYy5EW8o

ーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー
ーーーーーー



余は夢を見た……。

長く果てない夢を……。

世界で誰よりも強い存在になるという真っ直ぐな夢を……。

魔界を統一した時、その夢は少しの間、叶った……。

神界を征服し、女神を封印した時も少しだけ叶った……。

だが、夢はあくまで夢でしかなかった……。

手に入れようとしていたものは指先からこぼれ落ち、そして余はこれまで手に入れたもの全てを失った……。

余の両目から、雫が一つ二つ落ちていった……。


「ようやく気が付いたかの、馬鹿者めが……」


気が付くと、横に師匠がいて……。

師匠は困ったような、呆れたような、それでいて優しい顔をしていた……。


「力で力を得ようなどと愚かな事じゃ……。ワシはそれを最期までお前に教えきらんかった……」

「じゃが、ワシの弟子達が……。そして、ワシの弟子達が慕う、勇者がそれを教えたじゃろうて」

「力で得たものは、更にそれより大きな力によって奪われるのじゃ……。じゃが、力以外で得たものはどれだけの力をもってしても絶対に奪えぬ……」

「信頼、絆、友愛、誇り、優しさ……。そういったものを得よ。それこそが真の強者というものじゃて……。ふぉっふぉっふぉっ」


ふと気が付くと、師匠の横には余の右腕と左腕たるルシファーと側近がいた……。

側近とルシファーはにこやかに笑っていた……。


「魔王様、次は冥界でナンバーワンとおなり下さい」

「私どもは魔王様にどこまでもついていきます」


余は静かに……。それが当然の様にうなずいた。


「行くか、二人とも。余の誇る、最強の矛と盾よ!」


「ははっ!!」
「はいっ!!」




968: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/31(木) 17:52:27.51 ID:AnYy5EW8o

ーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーー
ーーーーーーー



魔王「」…… (骸)



勇者「終わったね……」


剣聖「ああ」

聖女「後は、残ってる魔王軍との戦いかな……」

女闘神「そうだな。残党狩りをしないと、まだ完全に平和が来ないだろうから……」

真魔王「殲滅戦か……。あまり気は進まないけど……」

女大富豪『竜達にも手伝ってもらって、私達も手分けして魔物を倒しに行こうか』


「待て! 勇者達よ!!」


勇者「!?」


魔軍師「」ヒュインッ、スタッ (上空から降り立つ)



勇者「魔物!!」チャキッ


魔軍師「剣を構えるな! 我等は降伏する!!」


勇者「!?」




969: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/31(木) 17:55:40.58 ID:AnYy5EW8o

魔軍師「繰り返す! これ以上の争いは無用!!」

魔軍師「魔王様亡き今、我等は勇者達に全面降伏するっ!! 寛大な処置を願う!!」

魔軍師「既にこちらの戦意は潰えた! 先程確認したが、これは他の八大将軍達も含めた魔王軍の総意である!!」


魔軍師「繰り返す!! 魔王軍参謀総長、魔軍師の名にて通達する!! 我等は勇者達に全面降伏するっ!!」

魔軍師「どうか寛大な処置を願う!! 我等はこれ以上、侵略する気も抵抗する気もない!!」



勇者「……降伏」

剣聖「どうする、勇者? 魔王軍が動いていない今、全面降伏は信用していいと思うが……」

聖女「うん……。嘘はついてない……。わたしが保証するよ」

女闘神「聖女が言うなら本当だな……。後はあたしらがどうするかだけど……」

女大富豪『勇者、私は受けていいと思う。殲滅戦なんて、勇者のやる事じゃないだろうし』


勇者「そうだね……。俺達まで魔王の様な振る舞いをするのはやっぱり間違っていると思う」

勇者「降伏を受けよう。大人しく軍を退いて魔界に帰ってくれるのであれば、こちらもこれ以上戦わない。魔王の遺骸も引き渡すよ」

勇者「みんなもそれでいいかな?」


剣聖「ああ、いいぞ」

聖女「うん!」

女闘神「いいよ! 勇者に任せた!」

真魔王「じゃあ、竜達にもそれを伝えてこようか。聖女、ついてきてくれる?」

聖女「うん、わかった」

女大富豪『これで、魔王軍との事は決着だね!』


魔軍師「かたじけない……。勇者達の寛容な心に感謝する」




970: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/03/31(木) 17:58:41.42 ID:AnYy5EW8o

【古書、『勇者伝記』より一部抜粋】


魔王と勇者との戦いは熾烈を極めた。

未知なる魔法の応酬が繰り広げられ、瞬きも出来ない程の斬撃が飛び交う。

既に仲間達は地に伏せ、息も絶え絶えの様子。その仲間達を守る為に勇者は一歩も退かじと奮戦す。

数万体もいた魔物達も今や残すは片手の指で足りる程度。全て勇者が葬るものなり。

この時、勇者の持つ伝説の盾は既に砕け散り。

伝説の兜も魔王の強大な魔法により跡形もなく壊れたり。

残すは鎧と剣の二つだけ。その二つも今やひびが入り、風前の灯火。

かようなまでに勇者は死闘を繰り広げ、魔王もこの強さと勢いを止められず、既に手酷い傷を負うものなり。

勇者もまた、これまでに負った手傷は幾百か。血を失い目の前が霞む。しかし、それでもその両の目には溶岩の様な熱い闘志が宿っていた。

諦めぬ者、勇者。どの様な逆境に遇おうとも、どの様な試練が与えられようとも。

この者は決して揺るがぬ。それこそが正に伝説の勇者たる証し。


その目を見て、魔王が気圧される。己の危機を感じ、魔王は最後の賭けに出た。

魔力全てを込めた一撃を食らわそうと詠唱を始める。

これを受け、勇者もまた、最後の賭けに出る。

人々に託された想い、願い、期待。その全てを背負いて剣を構え、魔王に向け渾身の一撃を食らわそうと走り出す。

魔王の最強の魔法が放たれた。

勇者はその一撃を食らいながらも、魔王に向けて剣を振る。


決着が着いた。


伝説の鎧は最後の役目を果たして砕け散り、また伝説の剣も根本から折れたり。

しかして、地上に立っていたのは勇者。

勝者は勇者。偉大なる勇者。女神様より神託を受けし、世界を救った勇者。


かの者こそ、世界で最も祝福を受けし者。最強無比の伝説の勇者なり……。




9: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/01(金) 22:16:03.44 ID:7F9FnNVvo

ー 少しだけ時間を遡って

     神界、女神の間 ー


パリィィィンッッ……!!!



女神「封印が……」

大天使「解けましたね」


女神「ええ……。勇者が魔王を倒してくれたようです……。これで私も自由に動けます」

大天使「では、すぐに」

女神「はい。勇者が魔王を倒した事を世界中の人々に知らせましょう……」


女神「今いる全ての天使にこの事を伝えなさい。私も世界中の教会へと御告げを出します」

大天使「はい!」




10: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/01(金) 22:16:58.83 ID:7F9FnNVvo

勇者が魔王を倒したというその事実は、女神の御告げと世界中に降臨していた天使によって、瞬く間に伝わった。

町には歓喜の声が上がり、その日はどこもかしこも大々的なお祭り騒ぎとなった。



「勇者様、バンザァァァイ!!!」

「魔王が倒された!!! これで平和な暮らしになるぞっ!!!」

「もう魔物に怯えながら暮らさなくて済むんだ!!!」

「町の防壁も、もう必要ない!!! 大手をふって外を歩けるぞっ!!!」

「自由に外を歩き回れるんだっ!!! 世界中を安全に旅出来るっ!!!」

「勇者様、ありがとうっ!!!」

「この世界を救ってくれてありがとうっ!!!!」




11: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/01(金) 22:18:07.46 ID:7F9FnNVvo

皆、仕事も家事も忘れ、全てをほっぽりだして、ひたすら祝いあった。

酒場から祝いの酒樽が幾つも広場へと運び込まれ、飲める者は揃って何度もそこで乾杯した。

楽隊がパレードさながら町中を練り回り、その音楽に合わせて人々は感謝のワルツを踊る。

花火魔法が空に何発も打ち上げられ、吟遊詩人は勇者を讃える歌を即興で何曲も唄った。

踊り子は満面の笑顔で喜びのダンスを披露し、子供たちははしゃぎながらそこら中を走り回った。


あちこちで夢見る子供たちの願い事が聞こえる。


「ボク、大きくなったら絶対に勇者になるんだ!!」


母親は困ったような笑顔で、その必要はないと優しく諭した。


「大丈夫よ。だって、もう魔王はいないんだから。これからは平和な世の中になっていくんだから」

「全部、勇者様のおかげなの。あなたがこの先、魔物にやられる心配をしなくて済む様になったのも全部……」




12: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/01(金) 22:19:40.20 ID:7F9FnNVvo

ー 南の国、王宮 ー


国王「祝え! 全ての酒蔵を開けよ! 皆の者に振る舞うのだ!」

国王「今日は記念すべき日だ! 夜が明けるまで歌い、踊り、祝い尽くせ!」

「ははっ!!」


ーーーーーーーーーーーー


王妃「姫……。あなたの結婚相手が決まったわね。今日はその前祝いも兼ねましょうか」スッ (ワイングラスを差し出す)

姫「ええ、お母様。祝福して下さい。世界で最も気高き御方の妻となる私を」スッ



「勇者様に乾杯」カチンッ……


ーーーーーーーーーーーーー


騎士団長「見てるか……。親友。お前の息子が伝説となったぞ」

騎士団長「旅立ちからわずか十日と一日だ。それだけで魔王を倒してしまった……。女神様の加護と祝福を受けたとはいえ、あれだけ強くなっているとは私も知らなかった……」

騎士団長「生きていたら、お前は勇者にどう言うかな……。誉める前に泣きそうな面になってそうだがな……」

騎士団長「私の息子だと言えないのが残念だ。だが、心の中だけではそう誇ってもお前は許してくれるよな……」

騎士団長「お前の息子に。そして、私の息子に乾杯……」スッ (グラスをそっと掲げる)




13: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/01(金) 22:21:07.98 ID:7F9FnNVvo

ー 騎士団長の家 ー


幼馴染み「勇者……。本当に魔王を倒しちゃったんだね……」

幼馴染み「嬉しいけど、何か寂しいよ……」

幼馴染み「私の勇者が……。みんなの勇者みたいになっちゃった感じがして……」グスッ

幼馴染み「それに、姫様との結婚もしちゃうんだよね……。わかってる……。元からどうしようもないってわかってたんだけど……」グスッ

幼馴染み「うっ……」ポロポロ……


幼馴染み「こんなおめでたい日に泣いちゃうとかダメだよね……。でも、何か涙がね……自然と……」ポロポロ

幼馴染み「だけど、大丈夫、大丈夫だから……。勇者が帰ってきた時にはちゃんと笑顔でいるから……」ポロポロ

幼馴染み「それで、勇者の事をいっぱいいっぱい誉めてあげるから……。勇者が引くぐらい誉めてあげるから……。だから……」ポロポロ

幼馴染み「今日だけは泣かせて……。それでちゃんと心の整理つけるから……」ポロポロ

幼馴染み「勇者……。本当に好きだったよ……。勇者、勇者……」ポロポロ




14: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/01(金) 22:25:05.45 ID:7F9FnNVvo

大勢の人々からの感謝、歓喜、尊敬、憧れ……。

そういったより大きなものに呑まれ、一つの小さな失恋は歴史の影へと消えていく……。

彼女もまたいつか恋をして、それらも過去の良き思い出へと変わる日がきっと来るだろう……。


だが、世界の流れは止まらない。

勇者の名は一分一秒ごとに伝説として深く刻まれ、人々に感謝と畏敬の念を叩き込んでいく。


また、その一方で、大半の人とは真逆の感情を覚える者達もわずかながら存在していた。

焦燥や不安などがそれに該当する。
勇者が魔王を倒すまでがあまりに早すぎたが故の失策。
彼等はまだ、勇者を勇者として正式に認めていない。


言わずと知れた教会本部である。




15: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/01(金) 22:26:49.60 ID:7F9FnNVvo

ー 中央国、大聖堂 ー


女「弁明があるのならば、お聞きします。もし、あるのであればの話ですが」

地海竜『ギルルルッ!』ギロッ

天使「…………」フワリ



教皇「っ……」

枢機卿A「わ、私達は勇者の事を認めていた! ただ、公表が遅くなったというだけで!! それだけだ!! 決して勇者を軽く扱った訳では!!」


女「戯れ言を! あなた方が私にどのような取引を持ちかけたのか、それを忘れたとお思いですか!」

女「勇者様の排除をちらつかせ、この世界の平和を取引の道具として用いたではありませんか!」

女「その様なあなた方に、聖職者を名乗る資格はありません! 女神様の名のもと、然るべき処分を受けて頂きます!」


枢機卿A「ぐっ……」




16: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/01(金) 22:28:49.52 ID:7F9FnNVvo

枢機卿B「し、神殿騎士団!」

神殿騎士A「…………」ザッ、ザッ
神殿騎士B「…………」
神殿騎士C「…………」


枢機卿B「この女は『聖女』様を騙し、勝手に『奇跡の鐘』を鳴らし、今また、ある事ない事を吐き続ける大罪人だ! 裁判にかけるまでもない! 今すぐ処刑せよ!!」

神殿騎士A「」チャキッ
神殿騎士B「」チャキッ
神殿騎士C「」チャキッ


女「…………」


神殿騎士A「申し訳ないが、失礼する」ガシッ
枢機卿B「!?」

神殿騎士B「枢機卿殿……。動かれない事をお勧めする。私達も不要な殺戮はしたくない」スッ (剣を喉元に)
枢機卿B「な、何故だ!!」


神殿騎士C「あなた方もどうか大人しくお願いします」ガシッ、サッ
枢機卿A「反逆するつもりか!? 放せ! その剣をどかせ!」




17: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/01(金) 22:30:21.66 ID:7F9FnNVvo

神殿騎士A「反逆? ご冗談を」

神殿騎士B「天使様が味方についておられる御方のお言葉が正しくないとでも言われるのですか?」

神殿騎士C「女神様も女殿の事をーーいえ、『紅の天使』様の事を認めておられる証拠。正義はこちらにあり。あなた方ではない」

枢機卿B「ぐっ……!」


神殿騎士D「当然、あなた方も……」チャキッ

枢機卿C「……!」


神殿騎士E「大人しくお願いします。聖地を血で汚す事はこちらも本意ではない……」チャキッ

枢機卿D「いつのまに背後に……」


神殿騎士F「団長もそのまま動かないで頂きたい。既に神殿騎士団の三分の二は我等の味方となっております。つまらない事は考えないよう……」チャキッ

神殿騎士団長「クーデターか……。女殿の口先に乗ったか」

神殿騎士F「いいえ、勇者様と『紅の天使』様の活躍を見て、何が悪で何が正義かに目覚めただけの事です。我等は規律を大切にすれど、飼い慣らされた犬ではない」

神殿騎士G「御理解頂けたのなら剣をこちらに……。一時の身の安全だけは保証します」

神殿騎士団長「わかった。投降する……」ガチャッ…… (剣を渡す)


神殿騎士G「教皇猊下もです。あなたと言えど例外ではない。御無礼つかまつります」チャキッ

教皇「…………」




18: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/01(金) 22:31:40.92 ID:7F9FnNVvo

女「あなた方の裁きは聖女様と女神様に託します。それまでは身柄を拘束させて頂きます」

女「地下牢獄の件、及び、不透明な金の流れ。その全てを公表し暴かせてもらいますから、身に覚えのある方は覚悟をしておいて下さい」

女「もちろん、あなたもですよ。大司教」


大司教「……私とあなたとで、何が違う。虎の威を借る狐に変わりはない。その立場が逆になっただけではないか」ギリッ


女「違いですか……。そうですね……一言で言うのであれば」

女「信仰の深さが、です」


大司教「下らない事を! 信仰など生きてく上で何の役に立つのか!」


女「役に立たないと言うのであれば、あなたは何故今その様な状況に立たされているのですか? 魔王は何故、勇者様に倒されたのでしょうか?」

大司教「それは……!」

女「それを考えれば答えは出るでしょう……」


女「全員を隔離部屋にお連れして下さい。他にこの件で関わっていた方も含めて全員です。この機に教会に溜まった汚れを吐き出し一掃します」

神殿騎士たち「はっ!」


女「教会を本来あるべき姿へと。皆から慕われ尊敬される教会へと、聖女様共々変えていきましょう。引き続き皆の協力をお願いします」

神殿騎士たち「ははっ!」




19: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/01(金) 22:32:54.86 ID:7F9FnNVvo

歴史の流れは大きなうねりとなって、一つの終着地点へと進んでいく。

それは人間のみならず、魔物や竜にも同じ事が言えた。



ー 妖魔の森、北部、暗黒要塞 ー


魔軍師「引き上げる! 魔界へと戻るぞ! 全軍、撤退の準備をせよ!」

魔軍師「魔王様は既に倒れた! 我等は負けたのだ!」

魔軍師「だが、勇者の計らいにより、我等は生還を許された! 敗北を悔しく思うのは当然だが、まず我等は生きて故郷へと帰れる事の幸運を噛み締めよ!!」

魔軍師「他世界で無意味に散るよりは、魔界へと戻り、華々しく散る事を選べ!!」

魔軍師「全軍、整然と帰還する! 魔界へと帰るぞ!!」


「はっ!!」






20: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/01(金) 22:34:21.44 ID:7F9FnNVvo

がっくりと項垂れる魔物もいる。

気持ちの整理をつけられず、空へと咆哮する魔物もいる。

故郷へ帰れると、内心で安堵する魔物もいる。

やり場のない怒りを、木や建物にぶつけた魔物もいる。

納得出来ず、軍を飛び出して脱走した者もそれなりにはいたが、しかし、大半は意気消沈とした様子で粛々と撤退の準備を整えていった。


剣聖・聖女・女闘神・真魔王・女大富豪ら、勇者の仲間達五人も妖魔の森の各拠点に散り、それへと見張りに立ち会う。

時には過激な反抗者もいて、彼等は勇者の仲間達の姿を見るやいなや、怒りをあらわにして飛び掛かったが、全て一撃の元に倒された。

また、一部の武闘派が集まって拠点の一つを占拠し、第二の魔王たらんと独立をはかったが、これは魔軍師率いる八大将軍の手により即日陥落され殲滅された。

どさくさに紛れ、魔結晶等の軍事物資を懐に掠めようとした不届き者も多数いたが、これらの大半はすぐさま露見し、例外なく粛清された。

こうした大小の事件、出来事、襲撃、離反、立て籠り、それらを何個か重ねながらも、全体としては魔物達の撤退は全世界から速やかに行われていった。




21: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/01(金) 22:35:20.91 ID:7F9FnNVvo

また、戦後処理に加えて今後の事も勇者を中心に話し合われた。

勇者は基本的に全ての中核であり、代表者であり、無自覚的にその素質を持っていた。
全ての処理は勇者の決断に委ねられ、勇者もまたその決断を下すだけの器量と才覚と勇気とを有していた。

女神の神託は、意図はともかくとして、その結果は間違っていなかったと言える。

また仲間達も勇者をその様に扱った。彼等は自分達を勇者の手足と考え、良き手足であろうと努めた。
彼等の後押しと信頼がなければ、勇者もまた、この様な責任重い決断を下せなかったであろう事は間違いない。

勇者と竜王との会談が行われたのもその為だった。戦後に関する二つの重要な案件について、勇者は竜王と対談する事となる。




22: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/01(金) 22:36:33.64 ID:7F9FnNVvo

ー 妖魔の森、東部、竜王のねぐら ー


(鳴き声省略。聖女による通訳の省略)


竜王『なるほどの……。【次元の扉】の封印か……』

勇者「はい。魔軍師の話によると、そこから魔王軍は攻めいったとの事でしたので、これを封印すべきではないかと思いまして」

竜王『ふむ……。確かあれは元々、この世界が三つに分断された時の名残じゃったな……』

竜王『聖と魔、そしてそのどちらでもなくどちらも併せ持つ我等……』

竜王『その三者が遥かな大昔、覇権をかけて世界大戦を行ったと聞いておる……。だが、その戦争により三者とも絶滅の危機に追いやられ、仕方なく世界を三つに分けて住み分けを行ったとか……』

竜王『その時、お互いの世界の行き来が出来ないと支障をきたす恐れがあるのではと、あの扉は創られたそうじゃが……』

竜王『しかし、今回の事を思えばその必要はないかもしれぬな……。あの扉は今となっては不要なものかもしれぬ……』

勇者「では、竜王様もあの扉を封印する事に賛成をして頂けますか?」

竜王『他の世界に行く必要など、最早、今の世にはあるまい……』

竜王『構わぬ……。あの扉を封印せよ、勇者よ』

勇者「ありがとうございます。では、魔王軍の撤退が終わり次第、聖女と真魔王の二人にそれを行ってもらうようにします」

聖女「うん。わたしたちに任せて。二人で聖魔最強の封印結界をかけておくから。誰も通れない様にしておくよ」

竜王『うむ……。頼んだぞ、勇者。そして聖女よ』

勇者「はい」

聖女「うん!」




23: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/01(金) 22:38:30.97 ID:7F9FnNVvo

勇者「それと、竜王様」

竜王『なんじゃ』

勇者「魔王軍の代表と皆で協議した結果、魔王軍にはこれまでの賠償金として、こちらへと持ち込んだ軍事物資・魔結晶・金銀財宝・秘宝の類いを全て差し出してもらう事が決定しました」

竜王『そうか……』

勇者「ですので、その事も竜王様に御報告を。今のところ、得た物は全て竜族と人とで折半にしようかと考えております。その事で何か御不満や御要望があれば仰って下さい」

竜王『律儀な事を……。じゃが、我等は金銀財宝に価値を見出ださぬ。また、それを得たところで既に失われた命は決して戻っては来ぬ……』

勇者「はい……。確かにその通りなのですが、その報復として魔物を皆殺しにしたところで結果は変わりません……」

勇者「償いではなく、傷痕を埋める為に、あなた方もお受け取り下さい」

竜王『不要だ……。我等の仲間への絆は、どの種族よりも強く重い。仲間を多く失った此度の侵略を我等は未来永劫忘れぬし、不倶戴天の敵として今後も永久に魔物を憎み続ける……。故に、償いは受けぬ』

竜王『魔物の無傷での撤退を赦したのも、勇者よ、そち達の顔に免じての事だ。でなければ、竜族総出で生き残った魔物どもを八つ裂きにしておるところだ』

勇者「……申し訳ない」

竜王『いや、お主はそれで良いじゃろう……。魔物は憎めど、此度の件で勇者を憎む竜は一匹もおらぬ……』

竜王『お主はそのまま真っ直ぐでい続けよ……。それは暗闇を照らす一筋の光となる……』

勇者「はい……」

竜王『得た物はお前たちで全て分けると良い……。我等は欠片たりとも受け取らぬ。それが我等の、勇者と魔物達に対する心情と返事だ』

勇者「……わかりました。魔王軍にもそう伝えておきます」

勇者「それと……。私達に対するお心遣い、感謝致します、竜王様」

竜王『うむ……。お主は皆の希望であり続けよ。それを皆も望んでおるじゃろうからな』




24: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/01(金) 22:39:15.10 ID:7F9FnNVvo

失われし時間や命はもう戻らない。

だが、それでも、全てのものは前へと歩み続ける。

過去を嘆くより、未来を見つめよう。


それが、この時代、この時、この瞬間に生きる多数の人々の心情だった。


災厄が降り注いだ後に、最後に残ったのは『希望』だった。

『勇者』という揺るぎない希望がある限り、人々は前向きに生き続けるだろう……。






25: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/01(金) 22:40:18.98 ID:7F9FnNVvo

ー 数日後、次元の扉近く ー


剣聖「これで最後か……」

聖女「うん。この第八大隊が魔界へ戻るのに使ったらそれで終わり。封印するから」

女闘神「短かったな。思い返せば、あっという間だった気がするよ」

真魔王「うん。……早かったね」

女大富豪「少し複雑な気分ね……。これだけ早く、あっさりと片付いてしまったものだから……」



魔軍師「……それでは、我等はこれで魔界へと戻ります。短い間でしたが、勇者殿達の寛容さと御尽力に感謝致します」

勇者「いえ……。おかげでこちらも無用な犠牲を出さずに済みました。本音を言えば、わだかまりがなくはないですが……。あなた方とは別の形でお会いしたかったです」

魔軍師「申し訳ない……。御容赦を」

勇者「魔軍師殿はこれからどうするつもりなのですか?」

魔軍師「魔王様がいなくなってしまったので……。これから魔界はまた群雄割拠の時代へと逆戻りするでしょう。その戦乱の中、新しい主君を探すつもりです。向こうが敗軍の将である私を必要としてくれるなら、ですが」

勇者「あれだけの事があったのに、争いは止めないのですね……」

魔軍師「そういう種族なのです。好戦的で争いを好む血が私達には流れている。一時とはいえ、魔王様が君臨していた頃の魔界が一番平和でした。しかし、誰も平和を求めてなどいないのです」

勇者「そうですか……。残念です」




26: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/01(金) 22:41:52.82 ID:7F9FnNVvo

魔軍師「ですが、これでそれも魔界内部のみで留まるでしょう。別世界へと遠征をしに行くのは不可能になるとの事ですから」

勇者「ええ。私達は争いではなく平和を望むので。二度とこの様な事態が起きないようにしていきたい」

魔軍師「あなたなら、それをこの世界で作れるでしょうね……。敵ではありますが、その強さには敬意を払っています。魔界では強さこそが正義ですから」

勇者「嫌な正義です。強ければ全て認められるというのは、弱者を踏みにじる行為だ」

魔軍師「魔界ではそれが常識です。だからこそ、皆、強さに憧れる。魔王様もその一人でした」

勇者「…………」

魔軍師「失礼……。無用な話をしてしまいましたね。では、これで本当にお別れです。軍を離反した者や脱走した者の事については、申し訳ないが、あなた方にお任せします」

勇者「ええ、共存を望むのであれば、出来る限り手を尽くします。ただ、争いを望むのであれば、こちらもそれなりの対応をします」

魔軍師「はい。お願いします。それでは……」


魔導師A「魔軍師様。準備、整いました。外部盤は魔界へと繋がってる事を示しています。しばらくは安定しているはずです」

魔軍師「よし。始めよ。第八大隊全て魔界へと帰還する」

魔導師B「はっ! では、『次元の扉』、開けます!」

魔導師C「魔力を注ぎ込め!」サッ

魔導師D「」サッ

魔導師E「」サッ

魔導師F「」サッ


ヒュイーーーーーーーンンンンン……



魔軍師「最後にあなた方にこの言葉を……」


「武運長久を。強き勇者とその仲間達よ」


フインッ (まとめて次元移動)



シーン……






27: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/01(金) 22:43:17.91 ID:7F9FnNVvo

勇者「……去っていったね」

勇者「聖女、それに真魔王。次元の扉の封印を頼む」

聖女「うん」サッ

真魔王「わかった」サッ


「時間と空間を越えし力を持つものよ……。その働きを休め永久の眠りへとつきなさい……。またこの地を禁断の土地とし、如何なる者からもその侵入を阻みたまえ……」パァァッ……

「我が真魔王の名において命ず。幾星霜の長きに渡り、その虚無の力を封じよ。闇は闇に、光は光に、そして虚無は虚無へとあるべき場所に戻れ」ピカッ



次元の扉『』ゴゴゴゴゴッ……

パリッ、ピキッ、ガギッ (封印&結界&無力化)



勇者「これで……本当に終わりだね……」

勇者「魔王を倒す旅が、これで……」


剣聖「ああ……」

聖女「うん……」

女闘神「そうだな……」

真魔王「終わったね……」

女大富豪「うん……」




28: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/01(金) 22:44:40.93 ID:7F9FnNVvo

勇者「それじゃあ……みんな」


剣聖「ああ」

聖女「戻ろう、わたしたちの生まれ故郷に」

女闘神「派手に騒がないとな!」

真魔王「だね。みんなで最後の一戦をして」

女大富豪「締めだね! 頑張らないと!」


勇者「!?」


剣聖「それからだな! 勇者の凱旋パーティーは!」

聖女「そうだね。勝って気持ちよく終わりたいし」

女闘神「久々だからな、腕が鳴るぜ!」

真魔王「みんなで戦うのこれが初めてだからね、何か楽しみだな」

女大富豪「だよね! じゃあ、行こっか!」


勇者「え、え!?」オロオロ


「俺たちの戦いはまだ終わってないからな!」


勇者「ちょ、あ、あの!!」


真魔王「じゃあ行くよ! 天馬とか魔導機神も巻き込むからね! 全体移動魔法!!」


「ま、待っ」


ヒュインッ!!!






53: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/05(火) 16:27:22.31 ID:2Rv1NszTo

ー 山奥の村外、訓練場 ー


ヒュインッ……


真魔王「到着っと」スタッ

女大富豪「それじゃあ行こうか。天馬や鳳凰達はきっとここに置いていった方がいいね」スタッ

女闘神「ああ、危険だしな。お前達は適当にそこらで遊んでてくれ」


天馬「」ヒヒーン
鳳凰「」コクッ
天海竜『グルルッ』


剣聖「じゃあ、少し歩くか。牧場はもう少し先だしな」

聖女「そうだね。あと、それまでに勇者に軽く説明しておく?」

女大富豪「そうね。秘密にして欲しいって言われてるけど、魔王はもう倒したし、ある程度は私達で話してもいいでしょ」

真魔王「うん。いいと思う。いきなりだと話がややこしくなるだろうし、きっと勇者が困惑するだろうから」


勇者「え、え??」オロオロ




54: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/05(火) 16:28:01.13 ID:2Rv1NszTo

剣聖「とりあえず、勇者。歩きながら聞いてくれ」テクテク

女大富豪「簡単に説明するから」テクテク

勇者「ど、どういう事??」

真魔王「今から行くのは村の外にある牧場なんだ。って行っても普通の牧場じゃないけどね」テクテク

勇者「牧場? 何でそこにいくの?? まさか、そこで戦うの??」

聖女「うん。そうだよ」

勇者「何でわざわざ? 仲間同士なのに……。訓練って事……?」

女大富豪「ん? ああ、違う違う。訓練ってのは合ってるけど」

聖女「えっと、勇者。初めからきちんと説明するから、ちょっとそれを聞いてて」

勇者「あ、うん……。わかった……」


女大富豪「大元を辿ると、今から十年ぐらい前の話になっちゃうんだけど……」




55: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/05(火) 16:28:54.81 ID:2Rv1NszTo

ー 十一年前

  山奥の村外、訓練場 ー


少年B「さーて、今日こそ師匠に片足を使わせてやる。見てろよ」ブンッ、ブンッ (素振り)

魔老師「ふぉっふぉっふぉっ。そうじゃのう。今のお前ならそれぐらいは出来るかものう」


少女A「がんばってねー、少年B」

少女C「どうせまた最後にはやられちゃうだろうけど、応援してるぞー」

少年D「素直に応援してあげればいいじゃない」

少女E「だよね。昨日は惜しいところまでいったし、今日は本当に出来るかもしれないから」


少年B「当ったり前だ! 今日の俺は気合いが違ーー」ピクッ

魔老師「ふむ……」ピクッ


少女A「?」

少年D「どうしたの?」

少女C「今、この山に結構強めの魔物が来た……。その気配がしてる」

少女E「え、それ大丈夫なの?」


少年B「師匠、俺たちで見てきます。全員なら勝てない感じはしないですし」

魔老師「いや……必要ない。殺気や闘気は感じられんしのう。それに、この感じ……。ひょっとしたらワシの昔の知り合いかもしれぬ……」

少女A「え、お爺ちゃんの?」

魔老師「うむ……。しかし、何故あやつが竜界に……? おかしいのう……。何かあったのじゃろうか……」




56: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/05(火) 16:29:54.36 ID:2Rv1NszTo

ー 再会 ー


魔学者「ああ、ようやく見つけましたよ、魔老師さん。風の噂を頼りにここ何年かずっと探してましたから。会えて良かった」ニコッ

魔老師「やはりお前じゃったか……。久しぶりじゃのう。しかし、どうした? 確かアスタロトの下で気ままに研究をしておったのではなかったか?」

魔学者「ええ。ですが、魔老師さんも恐らく御存知でしょうが、アスタロト様も魔王様へと忠誠を誓う事になりましたので……」

魔学者「部下の私も出向という形で魔王軍に軍事研究要員として徴兵されまして……」


魔老師「そうか……。それはそうじゃろうな……。お前ほどの偉才をあの魔王が埋もれさせる訳がない」

魔学者「偉才かどうかは知りませんが、それで魔王軍の元に強制的に所属する事になってしまいましてね。ろくでもない扱いでしたよ」

魔学者「今まで趣味で好き勝手に好きな研究をやらせてもらえていたのが、一転して仕事に代わり、更には軍事研究所の所長として責任まで負わされる始末でしたから」


魔老師「今までがむしろ特別じゃったんだろうがな……。アスタロトみたいな物好きぐらいじゃぞ、お前のよくわからん研究に金をはたくような奴はな」

魔学者「千年先の研究は常に周りから理解されないもので」

魔老師「お前が言うと冗談に聞こえんからやめい」




57: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/05(火) 16:31:29.22 ID:2Rv1NszTo

魔老師「まったくのう……。ワシもあまり人の事は言えんが、お前は魔界の中でも相当な変わり者じゃったからな……。異端児と言ってもええ」

魔老師「魔導の研究に没頭するあまり、攻撃衝動を忘れてしまったような奴じゃ。おまけに、天才であるが故に誰からも理解されぬ。あの魔王ですら、さぞ扱いにくかったじゃろうて……」


魔学者「確かに魔王様からはあまり良い顔はされませんでしたね。それはこちらもでしたけど。資金を気にせず使えたのだけが救いでしたが、どうにも窮屈でして」

魔老師「それで、宮仕えに嫌気がさして逃げてきたというところか?」

魔学者「そんなとこですね。私が興味を持って取り組んでいた研究が途中で中断させられましたし。もういい加減、嫌になってきてたので」

魔学者「なので、次元の扉の解析が終わったところで、もう役目は果たしただろうと、ついでにこちらに逃げて来ました」


魔老師「……まあ、魔王から逃げる場所と言えば竜界ぐらいしかありはしないからのう」

魔学者「ええ。それに、噂で魔老師さんも竜界に行ったというのは聞いていましたからね。また秘術やら気功やらについて教わりたいという欲求が出てきてしまいまして、こうして探し回りましたよ」

魔老師「よくもまあ諦めずに見つけたもんじゃ……。しかも、たったそれだけの理由でのう……」

魔学者「私の理解出来ないものがこの世にあると知ったのは衝撃でしたからね。学者の好奇心や知的探求心は生存本能より強いですから、それぐらいの苦労はしますよ」

魔老師「それはお前ぐらいじゃ……。特に魔族の中ではな……」




58: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/05(火) 16:32:31.26 ID:2Rv1NszTo

少年B「なあ、師匠……。このおっさん、じゃなくて……この人は師匠の友達なのか?」

魔老師「友達……ではないのう。知り合い以上の関係ではあるが……」

魔学者「そこの少年らは? 人間にしては有り得ない程の強さを持っているようですが……」

魔老師「ワシの弟子達じゃ。全員筋がええぞ。将来が楽しみな逸材揃いじゃて」

魔学者「ほう……。魔老師さんがそう言うからにはそうなんでしょうね。なるほど……」


少女A「あの……。おじさんは、お爺ちゃんとはどういう関係なの?」

魔学者「んー、そうだな……。持ちつ持たれつの関係ってのが一番しっくりくるかな。魔老師さんが私に気功だとかのよくわからないものを教える代わりに、私は魔老師さんに色々な学問を教える感じで」

魔老師「ワシの弟子であり、同時に師匠じゃな……。今、女大富豪に教えとる事のほとんどはこやつから教わったものじゃ。知力だけで言えば、こやつを越える奴はどこにもおるまいて」

少女E「そうなんだ! 先生の先生なんだね! スゴい!」

魔学者「ありがとう。だけど、私より魔老師さんの方が凄いからね。私は生憎、武術の才能はあまりなかったから、そっちはからっきしだし」

【一万年先を生きる孤高の天才学者】
『体力 :  4万
 攻撃力: 25万
 防御力: 73万
 魔力 :319万
 素早さ: 47万』

 知力 :9999兆




59: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/05(火) 16:34:01.25 ID:2Rv1NszTo

ー 現在 ー


女大富豪「っていう事があってね」テクテク

真魔王「それで、それ以来、その人はこの村のすぐ近くに住む様になったんだ。そこで牧場をやってるから、僕らは牧場のおじさんって呼んでるんだけど」

勇者「へえ、そうなんだ……。とにかく、凄い人なんだね」

聖女「うん。あと、良い人だよ。十年も前から、わたしたちは皆、色々お話とか聞かせてもらったり、色々な事を教えてもらったり、訓練に付き合ってもらったりしてたんだから」

剣聖「俺達全員、かなりお世話になってるんだ。本当なら、勇者に先に紹介したかったんだけどな」

女闘神「だよね。だけど、おじさん、勇者に対して引け目を持ってたからさ」

勇者「引け目?」

女大富豪「さっき言った通り、次元の扉の解析をして、どこの世界に繋がっているかわかる様にしたのがそのおじさんなの。だから……」

真魔王「立場が違ったとはいえ、僕達からしたら侵略の手伝いをしたって事になっちゃうでしょ? その事をおじさんは気にしているんだよ」

聖女「仕方ない事だと思うし、わたしたちは別にもう気にしてないんだけど……」

剣聖「だけど、おじさん自身が気にしてるからな。だから、勇者が魔王を倒すまでは秘密にしておいて欲しいって言われてたんだ。魔王を倒したら、自分から言うからって」


勇者「そっか……。そういう事か……」




60: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/05(火) 16:35:05.57 ID:2Rv1NszTo

女大富豪「ただ、私達は勇者の事を信頼してるし、勇者の人柄も知ってるから、もう先に話しておこうと思って。もう魔王も倒した訳だし」

女大富豪「魔軍師の降伏を受けた勇者だから。きっとおじさんの事も許してくれると私達は思ってるんだけど……」


聖女「勇者、さっきも言ったけど、おじさん自身はとても良い人だよ。村の人達もおじさんの事を知ってるけど、みんな良い風にしか言わないし」

真魔王「うん。悪い人じゃないのは確かだから。それは保証するよ」

女闘神「だから、勇者。おじさんの事は責めないでやってくれないか」

剣聖「俺からも頼む。罪を憎んで人を憎まずの精神で、おじさんのした事は水に流して欲しいんだ。魔王に命令されてやった事だしな」


勇者「うん。大丈夫。わかってる」

勇者「皆が言わなくても、俺はきっと何も言わなかったと思うし、怒ってもいなかったと思う」

勇者「もう過去の事はいいよ。今、そのおじさんが何も悪い事や迷惑な事をしてないなら、それで良いと思うから」


聖女「良かった……。ありがとね、勇者」

剣聖「ああ、俺達もこれで安心しておじさんを紹介出来るな」

女大富豪「あ、着いたね。ほら、あれ」

女闘神「あの柵で囲ってる場所な。メチャクチャ広いだろ」

真魔王「あれがおじさんのやってる牧場。通称、『魔物牧場』だよ」


勇者「!?」




61: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/05(火) 16:36:35.90 ID:2Rv1NszTo

ー 魔物牧場、敷地内 ー


チビ暗黒ヒョウ「」トテトテ、タタタッ

【奇妙な魔物・タイプ豹】(全長3メートル)
『体力 :194万
 攻撃力: 67万
 防御力: 21万
 魔力 : 16万
 素早さ: 89万』


チビ皇帝ウマ「」パカラッ、パカラッ

【奇妙な魔物・タイプ馬】(全長4メートル)
『体力 :679万
 攻撃力:215万
 防御力:274万
 魔力 :116万
 素早さ:382万』


チビ三角クマ「」ノソノソ (全長8メートル)

【奇妙な魔物・タイプ熊】
『体力 :728万
 攻撃力:240万
 防御力:415万
 魔力 :133万
 素早さ: 92万』


チビ幻想ネコ「」タタタッ

【奇妙な魔物・タイプ猫】(全長2メートル)
『体力 :251万
 攻撃力:437万
 防御力: 85万
 魔力 : 26万
 素早さ:304万』


チビ幻想ネコ「」ガジガジ

女闘神「あ、こら、柵を噛んじゃダメだろ」ガシッ

チビ幻想ネコ「ニャー?」

女闘神「もうすんなよ、悪い子め」ペシッ

チビ幻想ネコ「フニャ」イタイ……


女大富豪「みんな、遊びたい盛りだからね。仕方ないか」

真魔王「まあ、柵には僕と聖女で、聖力と魔力のコーティングをかけてあるから、そうそう壊れる事はないけどね」

剣聖「ただ、数が多いからな。雨垂れ、石を穿つってやつだ。ちょっとずつ老朽化してくんだよな」

聖女「でも、この前替えたばかりだから、しばらくは大丈夫だろうけどね」


勇者「み、見た事ない魔物ばかり……」(呆然)




62: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/05(火) 16:38:39.03 ID:2Rv1NszTo

真魔王「あ、勇者、やっぱりびっくりした? そうなんだよね、ここにいる魔獣って全部合成魔獣だからさ。多分、図鑑とかにも載ってないはずだよ」

勇者「ご、合成魔獣って、あのキメラとかの!?」

真魔王「うん。合成魔獣を考えたのおじさんだからね。魔王がその研究に目をつけて、おじさんを引き抜いた様なものだし」

勇者「……な、何て言ったらいいか」←キメラに殺されかけてる

真魔王「あ、でも、キメラと違ってここにいる魔獣は全部大人しいよ。おじさん曰く、愛情を持って子供の時から育てれば魔獣は攻撃衝動に駆られない様になるんだって」

勇者「そ、そうなの? でも、魔王軍の軍師の人は元から争いを好む種族だって言ってたけど……」

真魔王「それは魔物に子供の時がないからだよ。魔物って魔界にある『煉獄の泉』から生まれてくるそうなんだけど、その時既に成人していて、子供期間がないらしいから」

女大富豪「魔界だと、力の弱い子供や妊婦はすぐ殺されるだろうからね。種族の繁栄が成り立たないから、そうなったんじゃないかっておじさんは言ってたね」

勇者「え? ……それ、何か話がおかしくない? 子供期間がないのは元からなんでしょ? 元々そういう生まれ方をする種族だったんじゃないの?」

真魔王「とは限らないんだよ。魔獣にこうして子供期間がある以上、逆説的に大元は魔物にも人間のような生殖機能があって、妊娠・出産をしていたと考える方が自然なんだ」

女大富豪「ところが妊娠期間や子供期間があると種族繁栄が上手くいかない。だから進化の過程を経てそうなったのか、もしくは、そういう風に誰かが調整したのかはわからないけど、『煉獄の泉』から成人して生まれる様になったと考えるべき……」

女大富豪「らしいんだけどね。正直ここら辺は私にも難しすぎてよくわからない」

真魔王「そもそも『煉獄の泉』自体がよくわからない代物らしいからね。決まった場所になくて突然現れたり消えたりするし、魔物がそこから出てくる事はあっても、こっちから入ると二度と戻ってこれないらしいし」

女大富豪「おじさんはそこを『生命の可能性が詰まってる空間』って定義してて、そこでは時間が一秒毎に何千億年単位で進んだり戻ったりの変動を繰り返してるらしいの。ただ、もうその話自体が私達じゃ説明を聞いてもよくわからないし」

真魔王「その『煉獄の泉』に似た小さな擬似的空間をおじさんは作って、更にそこで魔獣の毛とか爪だとかを元におじさんは魔獣を合成して、全く別の種類の新しい子供の魔獣を生み出してる……って言ってもきっと理解出来ないよね?」

女大富豪「実際、詳しい説明を何回か聞いたんだけど、私達の誰も理解出来なかったから。ある意味、聖女の奇跡みたいなものよ。おじさんの話は、本当、時たま難しすぎて何言ってるのか謎な事が多すぎるから」

勇者「…………あ、うん」




63: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/05(火) 16:41:23.00 ID:2Rv1NszTo

真魔王「まあ、あまり細かい事は考えなくていいと思うよ。ここにいる魔獣は全部大人しいって事だけわかってもらえたらいいから」

勇者「あ、ひょっとして……」

真魔王「?」

勇者「ここに来る前に、何匹も奇妙な魔物を見たんだけど、それって……」

剣聖「ああ、それはここの牧場の魔獣達の食料として、山で放し飼いにしてる弱い合成魔獣達だな。だから、全部デカかっただろ?」

勇者「」

聖女「ちゃんと山全体に魔物専用の特殊な結界を張ってあるから、勝手に他の場所には行かない様になってるよ。そこは安心して」

勇者「で、でも、そのせいで近くの町の人達から魔境みたいな感じで言われてたんだけど!」

女闘神「そうなのか? でも、あいつら、こっちから攻撃しない限りは大人しいもんだぞ? 植物や、特定の種類の魔物しか食べないから、人間が襲われる事なんてないし」

女大富豪「そもそも昔から交流とかほとんどなかったしね、この村。別に困る事はないんじゃないかな? 村の人達も何人か移動魔法覚えてるし……」

真魔王「この村だけでほとんどの事が賄えるから、町に行く必要もあまりないしね。僕らもちょこちょこ里帰りしてるから、その時に必要な物とかは全部調達してるしさ」

剣聖「まあ、何か問題があれば村長とかが言うと思うんだ。でも、この十年間、特に何もなかったからな」

女闘神「魔境は言い過ぎだけど、みんなもう慣れちゃってるからさ。別にいいんじゃないか?」

勇者「」




64: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/05(火) 16:42:50.81 ID:2Rv1NszTo

魔学者「」トコトコ

魔学者「おや……」


聖女「あ、おじさん! ただいま!」

剣聖「魔王を倒して戻ってきたぜ!」


魔学者「ああ、うん、聞いてるよ。おめでとう。魔老師さんもきっと冥界で喜んでくれてると思う。良かったね」ニコッ


真魔王「ありがとうございます!」

女闘神「おじさんにそう言ってもらえると嬉しいよ!」

女大富豪「あ、それで約束通り勇者を連れてきたわよ! 勇者、この人が魔学者さんね」

勇者「え、あ、うん!」


魔学者「そうか……君が例の勇者か」




65: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/05(火) 16:44:10.42 ID:2Rv1NszTo

魔学者「初めまして、勇者。ひょっとしてもう聞いてるかもしれないが、私は魔物でね。……申し訳ない。今更だが、勇者を含めてこの世界の人達には悪い事をしたと思ってるよ」

魔学者「虫のいい話かもしれないが、私の話を最後まで聞いてくれないかな。それで、私の事を判断して欲しい。その上で、出来れば私の罪を許してくれると嬉しいんだが……」

魔学者「どうか、お願い出来ないかな」


勇者「あ、いえ! もう皆から話は聞いているので……。少なくとも俺はあなたの事を恨みもしなければ、過去の事をどうこう言うつもりもないです」


魔学者「そうか……。もう聞いていたか……。すまないね、勇者。君の器量に感謝するよ。本来なら殺されても文句は言えない立場だからね」

勇者「いえ、気にしないで下さい。あなたは亡命してこちらに来たようなものなので。亡命者を冷遇するつもりはありませんから……」




66: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/05(火) 16:45:15.09 ID:2Rv1NszTo

魔学者「そう言ってもらえると、私も気が楽になるね。ありがとう」ニコッ

勇者「いえ。俺は大した事は何も」


魔学者「ところで……」チラッ

魔学者「君ら全員がここへ来たという事は、勇者を紹介するだけじゃないんだろう? 例の『あれ』かい?」

聖女「うん。そうだよ」

剣聖「魔王も倒したし、これで気持ちよく最後を飾りたいからな!」

魔学者「はははっ。そうだろうね。それに今回は勇者もいるし、尚更か」ニコッ

魔学者「だけど、今回、私が生み出した合成魔獣は強いよ。君達で相手になるかな?」

女大富豪「それ、必ず言うよね、おじさん」

真魔王「そして、毎回その『例のセリフ』を聞くたびに苦労させられてきたからね。だけど、今回は勇者もいるし、結構あっさりいくと思うよ」

女闘神「だな! あたしらも相当強くなってるし、今回こそはすぐ終わりにしてやるから!」


勇者「??」




67: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/05(火) 16:48:23.95 ID:2Rv1NszTo

勇者「あの……女大富豪、これは……」


女大富豪「ああ、いつもの事なの。おじさんが魔獣を掛け合わせて作った合成魔獣が毎回とっても強くてね」

女大富豪「だから、私達は子供の頃から、その合成魔獣で腕試しをしてきたのよ。牧場の奥の方に、おじさんが作ったそれ専用の洞窟があるから」

女大富豪「その中に強力な合成魔獣が何匹もいるって訳ね」

勇者「……それってもしかして、人工的に造ったダンジョンって事?」

女大富豪「そうね。仕組みは私達にもよくわからないんだけど、その洞窟は何か難しい装置で異空間と繋がる様にしてあるのよ。おじさんが言うには『次元の狭間』と繋げてあるらしいわ」

女大富豪「だから、そこでどれだけ派手な事をやっても平気なの。修行にはもってこいの環境になってるから」

勇者(……もう、何が何だか)


女大富豪「勇者、私達がこうやって強くなれたのも、そこでひたすら強敵と戦ってきたからなの。皆と協力して、おじさんが生み出した魔獣を倒していったから」

女大富豪「私はその中でほとんどおいてけぼりだったんだけど、今回は魔導機神があるから一緒に参加出来るし、ちょっとそれが楽しみなんだ」

女大富豪「それに、どれだけ強くなったか実感出来るから、今じゃ皆も楽しみにしてるみたいだしね。女闘神なんか特に」

女大富豪「って事で、勇者も一緒に参加して戦いましょ。これが皆でやる最後の締めだと思って。勝って気持ちよく終わりたいって皆が思ってるし、ね?」

女大富豪「どんなに強いって言っても、魔王よりは弱いだろうしさ。勇者なら楽勝だよ」ニコッ

勇者「……う、うん」


勇者(皆と一緒なら、多分、大丈夫かな……? それに、いざとなれば、ミナデイン使えばどうにかなるだろうし……)


勇者「わかった……。じゃあ、俺も参加するよ。皆がそこで一緒に戦いたいっていうなら、折角なんだし」

女大富豪「やった! じゃあ、決まりだね!」




96: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/06(水) 14:59:25.97 ID:M1hSCG3bo

ー 牧場奥の謎の洞窟 ー


魔学者「さてと……ここだよ。こうしてるとただの普通の洞窟なんだけどね。異空間と繋げる事で、無限の空間が広がる様になってるから」

勇者「はあ……」


剣聖「それで、ここの端にあるこの四角い巨大な機械な。これを操作すると異空間と繋げる事が出来るんだ」

聖女「おじさん、こういうの造るの得意なの。改めて思うけど、凄いよね」

女闘神「で、その異空間の中は階数式に作られてて、今のところ地下1861階まであるんだ」

真魔王「新しく強力な魔獣を生み出す度にフロアを一つずつ増やしていってるからね。つまり、これまで合計で1861体いるって事だね」

女大富豪「ただ、私達はそのフロア全部を今までに踏破してるから、今度行くのは地下1862階って訳だけど」

魔学者「そうだね。それじゃ、その地下1862階まで空間を繋げるから。少し待っててくれ」カタカタ、カタカタ、ポチッ


ヒュイーン…… (洞窟の中の景色が揺れる)


魔学者「うん、いいよ。繋がった。それじゃあ、皆で頑張って倒してきなさい」

魔学者「倒せるものならだけどね」ニコッ

剣聖「ああ! 任せてくれ! 目にもの見せてやるからな!」

魔学者「そうかい。期待しながら牧場で待ってるよ。魔獣達に餌をあげる時間なんで、私はこれで失礼するからね。また後で」ニコッ

女闘神「ああ、ありがとな、おじさん! すぐに勝利報告持って来るよ!」

魔学者「ははっ、了解。それじゃ」テクテク

聖女「うん、またね、おじさん」




97: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/06(水) 15:00:21.33 ID:M1hSCG3bo

剣聖「さて。それじゃ、行くか! 気合い入れてくぞ!」

女闘神「ああ! 魔王にぶつけられなかった分の拳を、ここで全部ぶつけてやる!」

聖女「勇者も女大富豪ちゃんも来るし、六人とか初めてだよね! 頑張ろうね!」

真魔王「そうだね! 勇者を含めた最強のパーティーの初お披露目なんだから!」

女大富豪「全力で一気に片付けるよ! ゴーレム、来なさい!」


ドヒュンッ……!!

魔導機神「」ドガァッシャン!!! (着陸)


女大富豪「よっと!」ピョンッ

女大富豪「それじゃ、準備はこれでオーケー!」ガコッ、ウィーン…… (搭乗)


聖女「行こっか、勇者!」ニコッ

勇者「あ、うん。そうだね。じゃあ、俺も気合い入れていくかな」


勇者「みんな、勝とうな!! そして、気持ちよく終わらせよう!!」


「おーーーっ!!!」


勇者「行くぞっ!」タタッ (洞窟内へ)

「うん!!」




98: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/06(水) 15:01:45.39 ID:M1hSCG3bo

ー 洞窟奥、異空間

  地下1862階 ー



ウニューン…… (ワープ)


勇者「ん……。何か変な感覚だね、これ。ちょっと揺れるっていうか……」

剣聖「初めてだとそうかもな。俺達はもう慣れてるけど」テクテク

聖女「でも、中は普通でしょ? 明るいし、いかにも洞窟の中って感じになってるし」テクテク

真魔王「そこら辺は幻想らしいんだけどね。僕らのイメージがそのまま景色になってるらしいから」テクテク

女大富豪『それで、魔獣がいるのはあの大きな扉の向こうね。初回は必ず周りのダンジョンを作ってないから、すぐ奥に今回おじさんが生み出した魔獣がいるはずよ』

剣聖「こうして、ここで一旦、戦いの準備が出来る様になってるんだ。それじゃ、聖女と真魔王、いつものを頼むぞ」

聖女「うん」

真魔王「了解」


勇者「いつもの?」


女大富豪『補助魔法。先にかけておいた方が良いからね』

勇者「ああ、そういう事か。確かにね」




99: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/06(水) 15:03:13.08 ID:M1hSCG3bo

聖女「それじゃ」チラッ

真魔王「うん。いくよ」


「世界に潜む全ての精霊達よ。この地、この場にいる者達に、聖なる加護と祝福を与えたまえ……」パァァ

「時の支配者よ。我らに力を貸せ。一時の加速を我らに与えよ」キュイーン

「慈愛と幸運をもって、わたしたちに再生の力を与えたまえ……」パァァ

「障壁魔法! 物理・魔力、その全ての攻撃に耐えうる力を我らに!」ピキンッ

「そして、わたしたちの身体を浄め祓いたまえ……。毒や麻痺などから身を守る力をわたしたちに……」パァァ

「倍力魔法! 物理・魔力、その全てを強化せよ!」ビキッ


『勇者達の全ステータスが8倍に上がった!!』

『勇者達の素早さが3倍に上がった!!』

『勇者達に自動回復がかかる様になった!!』

『勇者達の防御力が4倍に上がった!!』

『勇者達の状態異常が全て無効化された!!』

『勇者達の攻撃力が4倍に上がった!!』




女大富豪『で、私はエネルギーを先に出力限界までチャージしといてっと』ガチッ

魔導機神「」ギュイーン!!

女大富豪『そして、リミッター解除!』ガコンッ!!

女大富豪『よーし、準備完了よ。これで、二十分の間だけ、鬼の様に強くなるからね! 燃費とか全く考えないから、後から完全に動けなくなるけど!』ガチャッ

魔導機神「」ピカッッ!!!

『ウイングフリーダムゴーレムの性能が30倍に上がった!!』


剣聖「俺も久々に二刀流を使うぞ。一年ぶりだな」チャキッ、チャキッ

『剣聖の攻撃回数が倍に増えた!!』


女闘神「あたしも殺意を拳に混ぜてくぜ。鬼神化モードに入る!!」ゴオオオッ……

女闘神「滅ッッ!!!」グオオアアッ!!!

『女闘神の攻撃力が2倍に上がった!!』



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…… (震動)



勇者(なにこれ怖い……。みんなの気合いだけで空間揺れてるんだけど……)ガクガク




100: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/06(水) 15:04:47.22 ID:M1hSCG3bo

女闘神「」フシュルルルルルッ!! (鬼神化)

女闘神「殺ス……! 何モカモ……!!」グオオオオオッ!!


剣聖「理性まで完全に飛ばすなよ。抑え込めよ」

女闘神「ワカッテル……大丈夫……」フシュルルルルルッ!!


真魔王「勇者も準備はいい?」

勇者「あ、うん! 俺はこのままで大丈夫だから!!」アセアセ

真魔王「よし! じゃあ、みんな。開けるよ!」


「おうっ!!」



真魔王「突撃っ!!!」ガチャッ



女闘神「ウォアアアアアアアッッッ!!!!」ダダダダッ、ダンッ!!!

剣聖「推して参るっ!!!」ダンッ!!!

聖女「女神様、わたしたちに祝福を!!」ダダッ

真魔王「覚悟してもらうよっ!!!」ヒュインッ!! (飛翔)

女大富豪『いっけえええっ!!!』ガコッ
魔導機神「」ズギュンッッ!!! (急発進)


ドンッ!!! (衝撃&風圧)


勇者「うわああああっ!!」ゴロゴロ、ドンガラガッシャーン!!!




バタンッ!!! (扉閉まる)


『勇者は取り残された!!』




101: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/06(水) 15:06:53.07 ID:M1hSCG3bo

ー 扉の奥 ー



「いたぞっ!! 奴だなっっ!!」



全てを超えし者(竜タイプ)『む……?』ジロッ (全長78メートル)



剣聖「先手必勝!!」ダンッ!!! (大ジャンプ)

女闘神「覚悟ッッ……!!!」ダダダダッ!!!

聖女「みんなの最強技で一気に決めるよ!」サッ (構える)

真魔王「終わらせる!」ヒュインッ!! (空中旋回)

女大富豪『突撃っっ!!』ガコッ
魔導機神「」ドギュッッ!!!




全てを超えし者『ほう……。我に挑むのか……。無謀な挑戦者達よ』

【全種族を超えた最強の存在】
『体力 :物凄い
 攻撃力:計れない
 防御力:半端ない
 魔力 :ヤバい
 素早さ:おかしい』

特殊能力:即死攻撃無効
    :全ステータス異常無効
    :自動回復・自動再生
    :自動魔力回復
    :一撃死無効
    :強化変身(残り3回)




103: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/06(水) 15:09:58.57 ID:M1hSCG3bo

剣聖「刻めっ!!」

剣聖「我が魂を賭けた一撃っ!!!」


「最強奥義!! エ ン ド オ ブ ハ ー ト !!!」

「 二 刀 流 !!!!」

『右手で聖なる力を用いた魔法剣技を、左手で暗黒の力を用いた剛剣技を、流れる様に交互に連続で相手に斬りつけていく、全ての剣技を極めた剣聖ならではの最高技!』



剣聖「はあああああああっ!!!!」

ザシュッ!! ドシュッ!! ズバッ!!!! ズババババババッッ!!!

『9999億(攻撃力)×32倍(補助魔法効果)×100倍(技威力)×18連撃×2回(二刀流)!!!』
(トータル、3199兆×36撃)



全てを超えし者「ふむ……」

『全てを超えし者に36のダメージ!!』


剣聖「!!??」




104: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/06(水) 15:11:23.78 ID:M1hSCG3bo

女闘神「殺スッ!!!」グオオアアッ!!!

女闘神「アタシノ最強奥義デッッ!!!」ザッ!!


「 超 烈 波  真 滅 撃 乱 舞 !!!!」

『魔力を拳と足に凝縮させて強化し、更に全身を硬気孔で包みながら突撃して、一撃必殺の攻撃を連続して相手に叩き込む、攻撃に特化した最凶の荒技!』



女闘神「ウオオオアアアアアアアッッッ!!!!」ダンッ!!!


ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!!!!

『9999億(攻撃力)×32倍(補助魔法効果)×240倍(技威力)×19撃!!!』
(トータル、7679兆×19撃)



全てを超えし者『この程度か……』

『全てを超えし者に19のダメージ!!』



女闘神「!!??」




105: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/06(水) 15:12:15.76 ID:M1hSCG3bo

聖女「行くからね!!」

聖女「月よ! 星よ! 太陽よ!!」

聖女「この世の闇を払い、光と幸福をもたらす大いなる存在よ!!」

聖女「この者に裁きの鉄槌を!!!」


「 終 末 の 光 !!!」

『この世で最も質量の大きい存在である惑星や恒星の力を借りて、巨大な裁きの光を与える、五人の仲間の中でも最強に位置する全体攻撃!』



ピカッ!!!


ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッッッッ!!!!!

『9999億(聖力)×32倍(補助魔法効果)×6000倍(技威力)』
(トータル、19京1980兆)


全てを超えし者「…………」

『全てを超えし者に1のダメージ!!』


聖女「!!??」




106: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/06(水) 15:13:11.76 ID:M1hSCG3bo

真魔王「万物を司りし七種の魔力元素よ!」

真魔王「我が名の下、一つに集い、その力の全てを解き放てっ!!」ゴゴゴゴゴ


「七種合成!! ア ル テ マ レ イ ン !!!」

『火・水・風・土・木・光・闇、の七大魔法攻撃を全て一つに融合する事で、どの魔力属性にも属さない無属性の爆発魔法となるアルテマ。それを天から雨霰の様に降り注がせる真魔王オリジナルの最強全体攻撃魔法!』



真魔王「終われっ!! 終焉の時を見ろっ!!!」


キランッ!!!!


ヒューーーーーーーーーーーーンンンッッッ!!!

ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッッッッッ!!!!!

『9999億(攻撃力)×32倍(補助魔法効果)×2倍(技威力)×2500撃!!!』
(トータル、63兆×2500撃)



全てを超えし者「……消えよっ!!」バリンッ!!!

『全てを超えし者は気合いでかき消した!!!』


真魔王「!!??」




107: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/06(水) 15:14:30.57 ID:M1hSCG3bo

女大富豪『今こそこの技を使う時よっ!!』ガコッ

女大富豪『背面大型魔力サーベル起動! 出力最大! 限界突破して目一杯まで!』グイイッ!!!

魔導機神「」バサアアアアッ!!! (光の翼が出現)


『背後に取り付けられた巨大な魔力サーベルが展開されると、その形状から光る翼の様に見える事からこの名前がつけられた。本来は空中を駆け抜け敵を葬り去る多対一用の武装だが、出力の高さからその威力は最も大きい!』



女大富豪『突撃するよ!! 喰らえっっ!! 滅亡のプレリュード!!!』ガコッ!!!

魔導機神「」ドギュアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!

『9999億(攻撃力)×30倍(リミッター解除)×1000倍(技威力)!!!』
(トータル、2京9997億)



全てを超えし者『効かぬっ……!』ガギッ

『全てを超えし者は光の翼を止めた!!!』



女大富豪『まだよっ!! ここからが本番っ!! 喰らいなさい、零距離ツインバスターライフルをっっ!!』ガチッ!!

女大富豪『この距離なら防御も効かないわっ!!! いくわよっ! 破滅のレクイエム!!!』ガコッ!!!


女大富豪『光になりなさいっ!!!』

魔導機神「」ドッッゴゴゴゴゴゴゴゴゴオオオオオンンンンンンッッッ!!!

『9999億(攻撃力)×30倍(リミッター解除)×800倍(技威力)×6倍(距離補正)!!!』
(トータル、14京3985兆)



全てを超えし者『……それで終わりか。無駄な事を』

『全てを超えし者に1ダメージ!!』


女大富豪『!!??』




108: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/06(水) 15:15:31.29 ID:M1hSCG3bo

剣聖「お、俺達の攻撃が全く効いてないっ!?」

女闘神「ア、アリエナイッ……!!!」

聖女「わたしたちの最強の技が全部……!!」

真魔王「ろくなダメージを与えられないなんてっ!!」


女大富豪「そうだっ! ゆ、勇者は!! 勇者ならきっと!!」アセアセ

剣聖「ああ! 俺達じゃ駄目だが、勇者なら必ず……!! い、いない!!??」キョロキョロ

聖女「な、何で!? 何でいないの!?」オロオロ

女闘神「勇者! ドコニ消エタッ……!?」アタフタ

真魔王「まさか! いきなりやられたとかそんな事は……!!」オロオロ

女大富豪「そ、そんな訳ない!! 勇者の事だから絶対に無事よ!! どこに行ったのよ、勇者!!」アタフタ


ガチャッ


勇者「あいたたた……。まさか、あれだけで吹き飛ばされるなんてなあ……」


「勇者ぁぁ!! 良かった!! ちゃんといたんだね!!」


勇者「え、あ、うん……? そりゃいるけど……」




109: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/06(水) 15:16:19.80 ID:M1hSCG3bo

剣聖「勇者! 悪いが頼む、あいつを倒してくれ!!」

勇者「あいつ?」



全てを超えし者『……ほう。お前が伝説の勇者とやらか』(全長78メートル)


勇者「デカッ!!!!」



女大富豪『私達じゃダメだったの! 強すぎて歯が立たなかったわ! だから、勇者!!」

聖女「うん! お願い、勇者!! わたしたちの攻撃がほとんど効かなかったから、もう勇者に頼るしかないの!!」


勇者「!!??」


真魔王「勇者、魔王を倒したあの魔法を!!」

女闘神「アア! 『ミナデイン』ヲ!!」


勇者「え! で、でも……!!」



全てを超えし者『面白い……。これも一興だ……。試して見るがよい』


剣聖「勇者!! 決めてくれ!! ここなら全力で撃っても構わないから!!」

聖女「お願い、勇者!!」


勇者「う、うん……! わかった! よくわからないけど、皆がそう言うなら信用するよっ……!!」

勇者「最強の一撃を、あいつに!!」




110: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/06(水) 15:17:10.14 ID:M1hSCG3bo

勇者「」スッ (手を上にかざす)

勇者「加減はしない!! 全力で行くっ!!」


「伝説魔法!! ミ ナ デ イ ン !!!」



ピカッッッッ!!!

ズゴゴゴゴゴゴッッッ……!!!! (雷雲が一気に現れ、雷鳴が激しく轟く)


ドガガガガガガガガガッシャアアアアアアアアアアァァァァァァンンンッッッ!!!!!  (落雷)


『158兆(補正が入った全員の総攻撃力)×8倍(技威力)×20倍(仲間からの信頼補正)』
(トータル、2京5280兆)



全てを超えし者『む……』

『全てを超えし者に1のダメージ!!』


全てを超えし者『期待外れだな……』
残り体力:物凄い



勇者「」
剣聖「」
聖女「」
女闘神「」
真魔王「」
女大富豪「」




111: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/06(水) 15:17:56.69 ID:M1hSCG3bo

全てを超えし者『つまらぬな……。余興の時間もこれで終わりとするか……』

全てを超えし者『無へと帰すが良い』フインッ……


『全てを超えし者は魔力を溜めている!!!』


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!



勇者「あ、あ、あ……」ガクガク、ブルブル

剣聖「か、勝てない……!! 何だこの膨大な魔力は……!!」ガクガク

女闘神「む、無理だ……! こんな化物……!!」ガクガク

聖女「け、結界を張らないと……! し、真魔王も急いで……!!」ガクガク

真魔王「う、うん……!! ぼ、防御結界を早く……!!」ガクガク


『我らを救いたまえ!! 巨大な災厄からどうか我らを守りたまえ!!』ビキキキッ!!!


女闘神『ガ、ガードモード!! シールドに全魔力を注ぐわよ!!! 何とか耐えてっっ!!!』ガクガク

魔導機神「」ガキッ、ギュイーン!!! (盾を構える)




112: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/06(水) 15:19:04.67 ID:M1hSCG3bo

全てを超えし者『』ピタッ

シーン……


全てを超えし者『終わりだ』

『 世 界 が 崩 壊 す る 日 』

『 オ ー バ ー ザ メ テ オ !!!!』

(一撃で世界を崩壊させる巨大魔法弾。それが限りなく無限に近い個数、墜ちて来る)



ギガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!

『計測不能(攻撃力)×メチャクチャ(技威力)×ほぼ無限(攻撃回数)』
(トータル、激ヤバい威力×ほぼ無限の回数)



剣聖「ぐあああああああああああああああっっっ!!!!」バリンッ!!! バキンッ!!!

『天騎士の鎧が砕け散った!!』
『名剣デュランダルが折れた!!』
『伝説剣エクスカリバーが折れた!!』


聖女「きゃああああああああああああああっっ!!!!」バキンッ、バリンッ!!!

『奇跡のイヤリングが砕け散った!!』
『守護の宝石が砕け散った!!』


女闘神「うぎゃあああああああああああああっっ!!!!」バキンッ、バリンッ!!!

『豪力の籠手が壊れた!!』
『痛撃の具足が砕け散った!!』


真魔王「ぐああああああああああああああっっ!!!!」バキンッ、バリンッ!!!

『創成の勾玉が砕け散った!!』
『真実のペンデュラムが砕け散った!!』


女大富豪『きゃあああああああああああああっっ!!!!』

魔導機神「」メキャッ、バキッ、ボキッ、ズガンッ!!

『魔導機神は大破した!!!』


勇者「がああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!!」バキンッ、バリンッ、ゴキッ、メキャッ、ボキッ、ガキンッ、ズガゴラグワキィィィィーンンン!!!!

『伝説の剣が折れた!!』
『伝説の鎧が砕け散った!!』
『伝説の兜が壊れた!!』
『伝説の盾が砕け散った!!』


『勇者達全員に【とてつもなく恐ろしい】ダメージ!!!!』

全員の残り体力:→0



『勇者達は全滅した……!!!』




113: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/06(水) 15:20:21.62 ID:M1hSCG3bo

全てを超えし者『他愛なし……』



剣聖「」…… (骸)

聖女「」…… (骸)

女闘神「」…… (骸)

真魔王「」…… (骸)

女大富豪『』…… (骸)

勇者「」…… (骸)



全てを超えし者『いや……。これは……』



フワリ…… フイーンッ…… キラリッ……

『生命の波動が剣聖の体を優しく包む』

剣聖「っ……」ピクッ
残り体力:0→1


ピカーッ…… (どこからともなく光が照らされる)

【この者に祝福を……】

キラキラキラキラキラキラキラ…… (蘇生の光に包まれる)

聖女「ぅ……」ピクッ
残り体力:0→1


ドクッ…… ドクンッ……!!!

『自己蘇生の秘術』

女闘神「ぐっ……」ピクッ
残り体力:0→1


【まだです……。戻りなさい……】

『不老不死の秘法』

真魔王「ぅっ……」ピクッ
残り体力:0→1


魔導機神「生命維持装置、作動……」ガガッ、プシューッ……

バチンッ!!! ガコッ……(電気ショックによる心臓マッサージと、魔結晶の投与)

女大富豪『ぅぅ……』ビクンッ
残り体力:0→1



勇者「」…… (骸)
残り体力:0




115: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/06(水) 15:21:26.26 ID:M1hSCG3bo

全てを超えし者『…………』



女闘神「み……みんな……無事か……」

女大富豪『ギ……ギリギリ……だけど』

勇者「」…… (骸)

剣聖「なら……退くぞ……。逃げる……!」

聖女「お願い……真魔王……」

真魔王「……だ、脱出魔法……!」キランッ


フッ…… (脱出)



全てを超えし者『消えたか……』

全てを超えし者『ならば……腕を磨き、またいつでも来るが良い』



全てを超えし者『弱き者達よ』



全てを超えし者『我はそれまで眠りにつく……』

全てを超えし者『我を超えし者が現れるまで、我はここでいつまででも待とうぞ……』




118: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/04/06(水) 15:23:07.64 ID:0G3kKxelo

無事じゃなくて吹いたww




122: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/04/06(水) 16:09:43.16 ID:Bhs4PJo70

一名無事じゃないんですが...




125: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/04/06(水) 18:16:52.68 ID:cVS7Yi7Do

一人だけ返事じゃなくて吹いた




144: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/09(土) 18:19:00.05 ID:UTIW4pM7o

ー 牧場奥の謎の洞窟前 ー


フインッ…… (テレポート)


剣聖「うっ……」ドサッ (その場に倒れこむ)

聖女「あうっ……」ドサッ

女闘神「ぐぁ……」ドサッ

真魔王「くっ……」ドサッ

女大富豪「ぅっ……」ドサッ


魔導機神「」グラッ、ガラガラ (壊れて崩れ落ちる)



剣聖「な、何とか……帰って来れたな……」ゴロンッ (仰向けになって、その場に大の字で寝転ぶ)

聖女「うん……。でも……しばらく一歩も動けなさそう……」ゴロンッ

女闘神「あたしもだ……。ちょっとダメージがデカ過ぎだな……。キツい……」ゴロンッ

真魔王「うん……。想像以上でさ……」ゴロンッ

女大富豪「体、全然動かない……。みんな、よく生きてたよね……」ゴロンッ




145: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/09(土) 18:20:04.78 ID:UTIW4pM7o

剣聖「本当だよな……。全員よく生きて帰って来れたもんだ……」

聖女「うん……」

女闘神「だよな……。ヤバかったよ……今回は」

真魔王「強すぎだよね……あの魔獣……」

女大富豪「全滅するかと思ったもんね……」


剣聖「…………」

聖女「…………」

女闘神「…………」

真魔王「…………」

女大富豪「…………」


剣聖「wwwwwwwwwwwwwww」

聖女「wwwwwwwwwwwwwww」

女闘神「wwwwwwwwwwwwwww」

真魔王「wwwwwwwwwwwwwww」

女大富豪「wwwwwwwwwwwwwww」


剣聖「参ったよなwwwwwどれだけ強いんだよwwwwwwwwあの魔獣wwwwwwwwwwww」

聖女「反則だよねwwwwwあんなのwwwwwwwwww」

女闘神「ムリムリwwwwwww今のあたしらじゃ絶対ムリだしwwwwwwww」

真魔王「勝ち目ないよwwwwwあんなのwwwwwwwwww」

女大富豪「不可能だってwwwww勝てる訳ないしwwwwwwwwww」




146: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/09(土) 18:20:42.59 ID:UTIW4pM7o

剣聖「俺なんか名剣を二本も折られたぞwwwwwwもう修復も出来ないぐらい粉々にwwwwwwwwww」

女大富豪「私のゴーレムもwwwww完全に壊されちゃったwwwwwww造るの苦労したのにwwwwwwww」

聖女「もうあまりにも強すぎてwwwww逆に笑えるよねwwwwwwwwww」

女闘神「おじさんwwwwどうやったらあんな化物育てられるんだよwwwwwwwwwww」

剣聖「だよなwwwwwあれはもうズルいよなwwwwwwwwww」

真魔王「ここまで手も足も出なかったのwwwwww初めてだしwwwwwwwwww」

聖女「おじさんwwwww今回は気合い入りすぎだよねwwwwwwwwww」

女闘神「大口叩いといてwwwwwぼろ負けしてるしなwwwwwあたしらwwwwwwwwww」

真魔王「おじさんのwwwww勝ち誇った様な顔が浮かぶねwwwwwwwwww」

女大富豪「悔しいwwwwwww見たくないのにwwwwwwww」


ダヨナ、アハハッ、ハハハッ、ハハハッ







147: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/09(土) 18:21:25.18 ID:UTIW4pM7o

剣聖「いやあ、笑った笑った」

聖女「負けちゃったけど、なんか楽しかったね」

女闘神「ああ、そして次の良い目標が出来たな」

真魔王「うん。どれだけかかるかわからないけど、皆であの魔獣を倒そう」

女大富豪「そうね。とりあえず、一年二年じゃ無理だろうけど。……三年後ぐらいかしら?」

剣聖「それぐらいなら、どうにかいけそうだな。その間、みっちり鍛えて出直しと行くか」

聖女「うん! 次こそはみんなであの魔獣を倒そう!」

女闘神「だな! 三年後にまた!」

真魔王「ここに全員集まって、今回の雪辱を晴らそうか!」

女大富豪「そうね! 私も新しい魔導機神をそれまでに造っておくわ! 今度は更にパワーアップさせてね!」

剣聖「おう! 勇者もそれでいいよな!」


シーン……


剣聖「?」

聖女「あれ……勇者……?」キョロキョロ

女闘神「え……」

真魔王「いない……? 何で……」

女大富豪「……え、ど、どうしていないの!? 何でまたいなくなってるの!?」


「勇者ぁぁぁ!!! どこに消えたの!!?」






148: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/09(土) 18:21:59.09 ID:UTIW4pM7o

ー 洞窟奥、異空間

  地下1862階 ー



勇者「」…… (骸)




全てを超えし者『…………まだ一人いたのか』




149: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/09(土) 18:23:03.46 ID:UTIW4pM7o

勇者「」…… (骸)


全てを超えし者『屍ゆえ、脱出魔法にかからなかったようだな……』

全てを超えし者『そして、置いていかれたか……。哀れな……』


勇者「」…… (骸)


全てを超えし者『…………』

全てを超えし者『せめて……蘇生ぐらいはしてやるか……。肉体の損壊が激しいが問題なかろう……』スッ


全てを超えし者『蘇生術!』ピカッ

『全てを超えし者は自分の魔力を勇者に分け与えた!!』


勇者「っ……」ピクッ
残り体力:0→1

『勇者の全パラメータが上がった!!』

【伝説の勇者】
『体力 :307
 攻撃力:213
 防御力:210
 魔力 :175
 素早さ:192』
    ↓
【強さを極めし伝説の勇者】
『体力 :2487
 攻撃力:1592
 防御力:1375
 魔力 :1080
 素早さ:1266』

タラッタラッタッター♪
『勇者のステータスが最大上限値まで上がった!!』




150: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/09(土) 18:23:35.91 ID:UTIW4pM7o

勇者「ぅ……こ、ここは……」


全てを超えし者『気が付いたか……勇者よ』


勇者「え……あ、ああ……」

勇者「そうか……。俺は……やられて……」

勇者「でも……どうにか生きてたのか……。きっと女神様が守ってくれたんだな……」


全てを超えし者『…………』(哀れみの目)




151: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/09(土) 18:24:14.13 ID:UTIW4pM7o

勇者「でも……体が全く動いてくれない……」

勇者「結局……殺されるのか……」

勇者「みんなは……」


全てを超えし者『……生きているぞ。辛うじてだったが』


勇者「良かった……」

勇者「なら……頼みがある」


全てを超えし者『……何だ?』


勇者「殺すなら……俺だけにしてくれ」


全てを超えし者『…………』(困惑)


勇者「みんな、俺の大切な仲間なんだ……だから。……頼む」

勇者「みんなは見逃してくれ……。後生の頼みだ……」


全てを超えし者『…………』(憐憫の目)




152: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/09(土) 18:24:48.67 ID:UTIW4pM7o

全てを超えし者『良かろう……。お前のその仲間を想う心に免じて、他の仲間は見逃してやる』

全てを超えし者『それまでお前は眠りにつくが良い……』スッ

全てを超えし者『催眠魔法』キランッ


勇者「……そうか……良かった」

勇者「感謝……す……る…………」トロンッ……

勇者「」スヤスヤ、スヤスヤ



全てを超えし者『…………』(同情の目)




154: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/09(土) 18:25:44.89 ID:UTIW4pM7o

ガチャッ!!!

剣聖「ゆ、勇者!! まだここにいるのか!?」


全てを超えし者『ふんっ!!』バッ

ドッゴオオオオンンンンッ!!!!


剣聖「ぐはあああああああっっ!!!」ドンガラガッシャーン!!!


バタンッ!! (扉閉まる)



「ちょっと、剣聖! また死んでるじゃない!!」

「聖女、蘇生と回復を!!」




全てを超えし者『…………』

勇者「」スヤスヤ


全てを超えし者『強さはともかく……仲間想いの見上げた男だな……』

全てを超えし者『勇者に選ばれただけはある』

全てを超えし者『あの者らの中では一番弱いが……器量は誰よりも大きいかもしれぬな』

全てを超えし者『どれ……我の力を多少貸し与えてやるか……。褒美だ。今よりはマシになるだろう……』

全てを超えし者『むんっ』パァァ


勇者「ん……」ムニャムニャ




155: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/09(土) 18:26:41.82 ID:UTIW4pM7o

「剣聖、勇者は中にいた!?」

「いや! 暗いし一瞬だったから、確認出来なかった!」

「とにかく、もう一度準備を整えて突撃しよう!」

「勇者を見つけ次第、すぐに逃げるよ! あたしらじゃ、まだ歯が立たないから!」

「真魔王は脱出魔法の用意を! 突撃は俺と女闘神でやる!」

「あたしらが何とか足止めだけでもするから、その間に聖女と女大富豪は勇者を探して! 頼んだよ!」

「よしっ! それじゃあ、もう一回!!」

「うん! 扉を開けるよ!」


ガチャッ!!!


剣聖「うおあああああっ!!」ダダッ、ダンッ!!!

女闘神「ぬぐあああああっ!!」ダダッ、ダンッ!!!


聖女「勇者ぁぁ! いるっ!?」ダダッ

女大富豪「いたら返事をして! 勇者!」

真魔王「勇者、ここにいるの!?」



全てを超えし者『……消えよ』

『 強 制 全 体 移 動 魔 法 !!!』


「しまった! また戻」

シュインッ!!!


『勇者達は全員地上へと飛ばされた!』



全てを超えし者『……あの勇者に祝福あれ』




156: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/09(土) 18:27:33.53 ID:UTIW4pM7o

ー 牧場奥の謎の洞窟前 ー


フインッ…… (テレポート)


剣聖「くそっ!」スタッ

聖女「戻されちゃった!」ストッ

女闘神「ちくしょう! 先に無効魔法かけておくべきだったな! 迂闊だった!」ストッ

真魔王「慌てすぎたね! とにかくもう一回行かないと!」ストッ

女大富豪「ええ! 勇者は多分まだあそこにいると思うからもう一度……え?」スタッ


勇者「ん……」ドサッ

勇者「」スヤスヤ、スヤスヤ


「ゆ、勇者!!!???」






157: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/09(土) 18:28:15.89 ID:UTIW4pM7o

剣聖「勇者、何でここに!!??」

聖女「さっきはいなかったよね!??」

女闘神「しかも寝てるぞ!? 勇者、起きろ、勇者! 起きろ!!」ユサユサ

勇者「ん……」

勇者「」ムニャムニャ


聖女「目覚めの言魂! 起きて、勇者!」パァァ

勇者「ん……?」パチッ……


真魔王「勇者、大丈夫!? 平気!?」

勇者「……う、うん。あれ……でも、何で俺……生きて」

勇者「殺されたと思ったのに……」


女大富豪「勇者がそんな簡単に死ぬ訳ないじゃない! きっと女神様が守ってくれたのよ!」

勇者「そう……なのかな……? 不思議だけど……まあいいか」




158: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/09(土) 18:29:49.44 ID:UTIW4pM7o

真魔王「それより、勇者、ごめん! 何故かわからないけど、勇者にだけ脱出魔法が効かなかったみたいで!」

女闘神「悪かった! あたしらだけ逃げ帰ってさ! 悪気はなかったんだけど、それで許される事じゃないよな! 本当にごめん!」


勇者「……?」

勇者(……状況がよくわからない。みんな、俺の代わりに助けてもらったはずだよね……?)


剣聖「すまない、勇者……。俺達、あまりの事に気が動転していたというか、浮かれていたというか……」

勇者(どうにか皆で夢中で脱出して……。それで、俺の事に気付かず急いで逃げ帰っちゃったって事かな……?)


聖女「本当に何て謝ったらいいか……わからなくて……」グスッ

女大富豪「ごめんなさい……勇者……」


勇者「いや……みんなが無事ならそれでいいよ。……俺もこうして生きてるしさ」


聖女「で、でも……」

女大富豪「うん……。それでもやっぱり……」

剣聖「ああ……。勇者は良くても俺達が自分自身の事を許せないんだ。だから……」


勇者「……気にしないで。あの後、どうなったか俺は知らないしさ。……だけど、こうして全員無事に生きてるんだし、それでいいよ」

勇者「……絶対に死んだと思ってた俺も、運良く生き残れたんだ。それだけで俺は満足だよ」


勇者「だから、帰ろう。みんなで」

勇者「俺達の村に。あの魔獣にはやられちゃったけど、魔王を倒したんだし、それで十分だよ」


「ゆ、勇者ぁぁぁぁ!!!」グスッ

「ありがとうっっ!! ごめんねっっ!!」ポロポロ


勇者「うん」ニコッ






159: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/09(土) 18:30:47.20 ID:UTIW4pM7o

勇者「それじゃあ……」ムクッ

聖女「あ、待って、勇者。まだ起き上がらないで。今、回復してあげるから」サッ

「この者の失われし体力を元に戻したまえ!」パァァ


勇者「ん……」
残り体力:1→9999億

聖女「どう? これでもう大丈夫、勇者?」

勇者「ん……何かまだ。もう一回お願いしてもいい?」

聖女「え、足りないの? う、うん、じゃあもう一度さっきより強めで」パァァ!!

勇者「…………」
残り体力:9999億→3兆


聖女「これでもう平気? 勇者」

勇者「あ、うん……。大丈夫だけど……」




160: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/09(土) 18:31:43.51 ID:UTIW4pM7o

勇者(……何だろ? おかしいな……)

勇者(……正直、まだ全然回復してない気がするけど。そんなにダメージ受けたのかな……?)

勇者(あ、違う……。そうじゃない……。聖女が俺が弱いとわかって、手加減してくれてるのか……)

勇者(気持ちはありがたいけど……そこまで手加減しなくてもいいんだけどな……。まだろくに回復してない感じだし……)

【伝説を超えし最強の勇者】
『体力 :8623京
 攻撃力:5807京
 防御力:5598京
 魔力 :4031京
 素早さ:5207京』


勇者(でも、これ以上回復してもらうのもあれだし、もういいか……。後で自分で回復させよう)

聖女「どうしたの、勇者?」(心配)


勇者「あ、ううん。何でもないよ、それより村に帰ろう」

勇者「帰って村長さんとか村の皆に報告して、それで魔王を倒したお祝いをしよう。きちんとお祝いするの、これが初めてだしさ」


「うん!!」


勇者「それじゃあ、行こう、みんな!」

勇者「凱旋するよ!」


「うんっ!!!」






161: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/09(土) 18:32:50.58 ID:UTIW4pM7o

こうして少しの寄り道をした後で、勇者達全員は村へと戻る道を歩み出す。

その途中、魔学者にも報告しに行き、魔獣にあっさりと負けた事を告げると、魔学者は笑って「また今度挑戦しなさい」と得意げな顔を見せた。

勇者以外は全員笑って「はい!」と元気よく答えた。勇者は困惑しながらも、修行しようと心に決める。


彼もまた、あの仲間の一員。強き向上心を持つ者。


負けようとも、仲間に気後れを覚えようとも。最終的には、彼は前を向いてその先を目指す。


例え、強さの才能はなくとも。時に、弱き心を見せようとも。


勇者は常に歩み続ける。真っ直ぐに、道を間違える事なく。


そんな勇者だからこそ、仲間達は信頼し、その命を勇者に預け共に前へと進む。


強いだけが勇者ではない。強さだけでは勇者になれない。


先に立って前へと進める者。その後ろに人はついていく。


だからこそ、人は勇者を必要とし、憧れる。


彼は正真正銘の勇者、その事に一切の間違いはない。


勇者に栄光あれ、幸福あれ、そしてその道に光あれ……。


勇者の先に道はなく、しかして勇者の後に道は出来るのだから……。







164: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/09(土) 18:35:12.56 ID:UTIW4pM7o

ー 夜、宴会後

  約束の木の切り株近く ー


勇者「……楽しかったな、宴会。みんな喜んでくれて、祝ってくれて……」

勇者「お墓参りも済ませたし……。魔老師さんにも、俺の両親にもきちんと報告する事が出来た……」

勇者「ついこの前まで、こんな事、想像もしなかったな……。でも、本当に魔王を倒したんだよな……俺」

勇者「あっさり過ぎるぐらいに終わっちゃったから、感慨はあまりわかないけど……」

勇者「……でも、こうして祝われたり、報告したりすると、その実感が少しずつわいてくるから不思議だな」

勇者「素直に嬉しい……。それがどんどんはっきりした形になっていって……」

勇者「今まで魔王を倒す事を目標にしてたけど、実際はそうじゃなかったんだってのがよくわかるや……」


勇者「俺はきっと……」

勇者「魔王を倒したその先にある、平和な世界が欲しかったんだ……」

勇者「みんなが、ずっと楽しく笑顔でいられるようなそんな世界が……」







165: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/09(土) 18:37:45.89 ID:UTIW4pM7o

「いかにも勇者らしいな」


勇者「?」クルッ


剣聖「よう、酔いざましに外に散歩に出たって聞いたからな。俺も出てきたよ」

勇者「剣聖……」


剣聖「平和か……。確かにそれが一番だよな。師匠もよくそんな風に言っていた。争いは人を悲しませるだけで他には何も生み出さないってな」

勇者「うん。その通りだと思う。平和が俺は好きだよ。もっと言えば、人の笑顔が好きなんだ」

勇者「子供の頃に散々泣いたり、泣かされたりしてきたからかな……。泣くのが嫌でさ。自分だけじゃなく、誰かが泣いてるのを見るのも辛いよ」

勇者「だから、みんなが仲良く出来たらそれが一番だと思う。そして、そうなる様にしていきたい」


剣聖「師匠の教えを受けてないのに、師匠の教えを知る、か……。流石は勇者だな。俺では多分そうはいかないだろうからな」

勇者「そんな事ないよ。立場が逆だったら剣聖もきっと俺と同じ事を思うんじゃないかな」

剣聖「どうだろうかな……。俺がもしも子供の頃、勇者の境遇に立たされていたら、ひねくれて暴力に走ってそのまま育ちそうな気がするからな」

剣聖「勇者みたいに、人の辛さや痛さがわかる人間にはならなかったと思う。今でもどうだか。その自信がないしな」

勇者「そんな事はないよ、剣聖は立派だよ」

剣聖「いや……この歳になって、更には国王にもなったってのに、未だに俺は半人前だ。成長すればするほど師匠の偉大さが身に染みる日々だよ」

剣聖「これまでした失敗は数多くあるし、後悔はその倍以上あるからな。今日の事にしたってそうだ」

勇者「今日?」




166: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/09(土) 18:39:06.13 ID:UTIW4pM7o

剣聖「ああ、勇者がいない事に気が付かないまま、俺達だけで盛り上がっていた事だ」

勇者「ああ、なんか宴会の時、みんなからも似たような事を言われて、また謝られたっけ。全員、気にしないでって言っておいたんだけど……」

剣聖「酒も入ってて感情が出やすかったんだろう。みんな、許してもらったとはいえ、まだ気にかけていただろうからな」

勇者「前も言ったけど、正直、あの時の事を俺はほとんど覚えてないから、いいんだけどね。みんなが助かってほっとした事しか記憶にないし……」

剣聖「とはいえな。勇者はそれで良くても、俺自身にはわだかまりというか、しこりが出来てしまっているからな」

剣聖「だから、今からけじめをつけさせてくれないか、勇者」

勇者「けじめ?」




167: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/09(土) 18:39:55.81 ID:UTIW4pM7o

剣聖「ああ、俺を一発殴ってくれ。勝手な言い分かもしれないが、それですっきりさせたいんだ」

勇者「殴れって……。やめようよ、剣聖。そんな事しなくても」

剣聖「いや、頼む。それで俺は今回の事にけじめをつけるつもりだ。そういう気質だからな」

勇者「そういえば……昔もこんな事が一回あったけ。子供の頃にさ」

剣聖「ああ。あの時も最初は勇者は拒否したけど、最終的には一発殴ったよな。だから、今回も頼む」

勇者「……わかった。なら、これでお互い忘れようか。もうこの話はなしで」

剣聖「ああ。そのつもりだ。だから、勇者。手加減とかせずに、思いっきりいってくれよ」

勇者「うん。じゃあ……」スッ (構える)

剣聖「おう」(歯を食い縛る)


「行くよ!」

「来い!」


「せーのっ!!」



ズガゴラバキボキガッキーーーーーンンンンッッ!!!!!!!


「ごぶがらぎぶごふごあああああああああああああああああああああっっっ!!!!」


ヒューン……キラーン!!!



「け、剣聖ーーーーーーーーーーーっっっ!!!!」







168: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/09(土) 18:40:40.48 ID:UTIW4pM7o

その日、夜空に一つの流れ星が舞った。


それを眺めた人の何人かは、揃って夜空に向けて似たような願い事をした。


「この平和がずっと続きますように……」



その願いはきっと叶うだろう。

勇者と、その勇者の仲間達がいる限りは、永遠に……。








169: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/09(土) 18:42:45.63 ID:UTIW4pM7o

残された記録によると、勇者達の旅はここで終わりを迎える事になる。


勇者は途中でなついた天海竜と共に王都へと戻り、しばらく経った後で姫と結婚式を挙げた。

その後は、王族の一員として勇者として、教育制度や福祉制度の改善、軍から離脱したはぐれ魔物への対処などに尽力を注いだ。


剣聖は東の国へと戻り、王として再び政務に取り組んだ。後に東の国は完全な立憲君主制の国家へと変わる。


聖女は中央国へと戻り、女と共に教会の悪しき風習や規則を一新した。その後は妖魔の森へと旅立ち、そこで竜と暮らす道を選択する。


女闘神はアジトへと戻り、海賊団を解散させて新しく巨大な貿易商会を立ち上げる。


真魔王は異界へと戻り、そこで変わらず魔法の研究と開発の日々を過ごした。


女大富豪は各国を旅しながら、魔物がいなくなった為にこれから必要とされるであろう、街道の建設や整備、交易事業、交通事業、観光事業などに精力的に着手した。


全員が全員とも、自分の責務を果たし、平和でより良い世界を作る努力を惜しまなかった。


その傍ら、修行や訓練・研究や開発も怠る事なく、自身を磨き続けた。


そして、三年後……。






170: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/09(土) 18:43:50.67 ID:UTIW4pM7o

ー 山奥の村、牧場奥の謎の洞窟前 ー


名馬「」パッカ、パッカ


勇者「どうどう」

名馬「」ヒヒーン


勇者「ここに来るの、懐かしいな。全然変わってないや」ストッ

名馬「」バルルッ


「あ、来たよ! 勇者ぁー!!」


勇者「久しぶり、みんな! 元気にしてた!」




172: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/09(土) 18:45:13.47 ID:UTIW4pM7o

剣聖「ああ、この通り元気だ! 勇者も元気そうで何よりだな」

【天下無双の大剣聖】
『体力 :9999垓
 攻撃力:9999垓
 防御力:9999垓
 魔力 :9999垓
 素早さ:9999垓』


聖女「うん! わたしも元気だよ! 勇者だけなかなか会えなかったから寂しかった」

【竜に愛されし大聖女】
『体力 :9999垓
 攻撃力:9999垓
 防御力:9999垓
 聖力 :9999垓
 素早さ:9999垓』


女闘神「子供が生まれて大変だったのはわかるけどさ! あたしらの事も気にかけなよ!」

【武を極めし女大闘神】
『体力 :9999垓
 攻撃力:9999垓
 防御力:9999垓
 魔力 :9999垓
 素早さ:9999垓』


真魔王「みんな、勇者になかなか会えなくてがっかりしてたんだからさ」

【異界に君臨せし超真魔王】
『体力 :9999垓
 攻撃力:9999垓
 防御力:9999垓
 魔力 :9999垓
 素早さ:9999垓』


女大富豪「だよね。集まる度にまた勇者がいないんだってみんな残念がってたんだから」

真魔導機神「」…… (全長49メートル・人型)

【最終決戦兵器・真魔導機神ディスティニーエボリューションゴーレム、ミーティア装備】
『耐久力:9999垓
 火力 :9999垓
 装甲 :9999垓
 運動性:9999垓
 持続力:9999垓』


勇者「ごめん、各国を回る事が多かったし式典式典で都合がつかない時が多くてさ」

【伝説を超えし最強の勇者】
『体力 :8623京
 攻撃力:5807京
 防御力:5598京
 魔力 :4031京
 素早さ:5207京』




173: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/09(土) 18:46:20.35 ID:UTIW4pM7o

魔学者「おや、揃ったようだね」

勇者「はい。魔学者さんもお久しぶりです」

剣聖「おじさん、ようやく前回の雪辱を果たせそうだぜ。俺もあれから修行して相当強くなったからな」

女闘神「あたしも! 三年前とは比べ物にならないぐらい強くなったよ! 今度こそ、倒してみせるから!」

聖女「うん! わたしも頑張って特訓したからね!」

女大富豪「私だって、前回より格段にパワーアップさせた機体を開発したんだから!」

真魔王「僕も新しい魔法を幾つも開発したよ。今度こそは必ず倒してみせるから」

勇者「俺もそうだよ。皆に負けないよう限界まで修行してきた。今回はそう簡単には負けないつもりでいるから」


魔学者「そうですか。それは頼もしい。ですが、そう簡単にはいきませんよ」


剣聖「いや、いけるさ。みんな、装備も一新してきたし、次こそは」

聖女「うん!」


魔学者「ふふっ。わかりました。期待してまた待っていましょう。頑張って下さいね」


勇者「それじゃあ、行こうか、みんな! これで本当に最後の戦いにしよう!」


「おーっ!!」


魔学者「」ニコニコ




174: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/09(土) 18:47:01.84 ID:UTIW4pM7o

ー 洞窟奥、異空間

  地下1862階 ー




全てを超えし者『……そろそろあやつらが来る頃か』

全てを超えし者『再び絶望の狭間へと叩き落としてやろう……』




175: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/09(土) 18:47:29.38 ID:UTIW4pM7o

ー 洞窟奥、異空間

  地下1863階 ー




真・全てを超えし者『……奴が倒されたら我の出番か』

真・全てを超えし者『どこまでやれるか、見届けてやろう……』

真・全てを超えし者『我が元まで来れればの話だがな……』




176: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/09(土) 18:47:56.75 ID:UTIW4pM7o

ー 洞窟奥、異空間

  地下1864階 ー




絶・全てを超えし者『……奴らが倒されたら我の出番か』

絶・全てを超えし者『まだまだ当分はかかりそうだがな……』

絶・全てを超えし者『果たして生きてる内に我まで辿り着けるかどうか……』




177: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/09(土) 18:51:18.62 ID:UTIW4pM7o

……勇者に関する伝承は相当数残されているが、その中のどれ一つとして、勇者達がこの様な際限なき戦いに挑んだという記録はない。

勇者の戦いは魔王で終わり、それ以降は訓練以外で一度も剣を振るった事がないとされる。


だが、『名もなき告白』によると、この終わりなき戦いは28年後まで続き、そこで勇者達一行は遂に最下層の魔物を仕留めたと記述されている。


なお、その頃には、勇者は完全についていけなくなり、仲間の帰りを洞窟前で待っていたとある。


勇者はその時の心境をこう綴る。


「寂しくなかったと言えば、嘘になる。でも、同時に誇らしくもあった。これだけ強い仲間達が、それでもこんな弱い俺をいつまでも慕ってくれているのだから」


『名もなき告白』は最後にそう締めて、「ありがとう」という言葉と共にその物語にピリオドを打っている。


果たしてこの書物は、空想で紡がれた物語なのか、はたまた現実にあった出来事なのか。それは最早誰にも判別がつかない。


勇者もその仲間達も、多くを語らなかったから。


後に残るは人の噂とそれをまとめた記録のみ。


ただし、この二点だけは間違いなくはっきりとしている。


一つは、この勇者パーティーが、歴史上最も強いパーティーだという事。


そして、もう一つは……。


彼等の働きによって、この世界は長い間、平和な歴史が続いたという事である……。




今でも人々は勇者達に対して感謝する心を忘れない。

この平和をありがとう、と……。



かくて勇者の偉業は、親から子へ、子から孫へと、永遠に語り継がれていく……。



FIN




179: ◆bXfZj5FIu6 2016/04/09(土) 18:52:46.04 ID:UTIW4pM7o

長くなったけど、これで終わり

魔王倒したところで止めときゃスッキリ終われて良かったなと後悔。毎回、終わり方で悩む

何にしろお疲れ様




180: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/04/09(土) 18:53:50.74 ID:Ecv7hSQeO

>>1OTUUUUUUUUUUUUUUU!!




181: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/04/09(土) 18:58:24.09 ID:ioWK1NmAO

大変面白かった





183: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/04/09(土) 19:00:06.90 ID:MEhrNiVAO

乙!
完走お疲れさまでした!
勇者も幸せそうで良かった!




184: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/04/09(土) 19:12:11.27 ID:Xdf+Ijxio

この物語をよくもまあ綺麗に終わらせられたものだ
乙でした




185: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/04/09(土) 19:13:00.82 ID:H2rPPC72o

乙乙
素晴らしいインフレだった




・SS速報VIPに投稿されたスレッドの紹介でした
 【SS速報VIP】勇者「仲間TUEEEEEEEEEEEEEE!!」
管理人 のオススメSS(2015/07/04追加)
【流出画像】奥菜恵(34)フルヌード&フ●ラ画像の高画質で公開!⇒これが押尾学のリベンジポルノ…
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