※この記事は後編です。前編はこちら

■ライブ中にアラームクロックのアラーム音を録音

オープニングから15曲休みもなく立て続けに歌った後にMCが始まる。「KAT-TUN史上もっともはげしい前半。もう休む暇がない!歳とったのに(2月に30歳になったばかり)さらにこんなに踊らなきゃいけないって」という亀梨。「グチグチすみませんが10年だから愚痴もあります。メンバーが減ったせいで歌のパートが単純に2倍に増えましたからね」と中丸。「(笑いながら)全部田口のせい!」と上田。

明るくカラッと笑いにする3人だが、6人で歌い踊っていた曲を3人でやるのは実際ラクなことではないだろう。人数が減る度に歌割を変え、歌うパートが増えるのはもちろん、立ち位置、フォーメーションが変わりダンスもやり直してきた。6人の頃の歌は3回目の変更だ。単純に考えても倍の労力がかかっているが、それをKAT-TUNらしいレベルに仕上げるのに精一杯な感じはしなかった。

後半のMCでは、東京や大阪の駅構内などに掲示された“10Ks!”のポスターをプレゼントする抽選会のほか、ツアーグッズのひとつ、アラームクロックのアラーム音をライブ中に録音。KinKi KidsやNEWSも10周年でボイス入りクロックを販売しているが、ライブ中に声を録音するのは初の試みだろう。メンバーそれぞれが考え録音したセリフは、「(2回撮り直すが殆ど変わらない)うわうわうわうわぁー。朝だ〜。起っきろ〜!早く、早く〜!……中丸雄一です(中丸)」。「(優しい声で)起きろよ、起きろよ!……(声色激変)とっとと起きろってんだろ、このやろう!(上田)」。「(一緒に住んでいる設定で)起きろよ。早く起きてシャワー浴びろよ。早く起きないと先に行っちゃうよ。先に…イっちゃうぞ〜(亀梨)」ということで、それぞれの個性が表現された内容になっている。各ライブ会場で違うセリフが入るはず。特に参加した会場での録音が目覚ましになるのはうれしいだろう。

そして「みんなで普通におはようだけでも撮っておこう」という亀梨の提案で三人が声をそろえて“アイドルっぽく”セリフを録音することに。その場で打ち合わせしながら決めたセリフが「名古屋の“10Ks!”に来てくれたハイフンのみんな、おはよう〜!起きろ〜!」だが、なかなか覚えられない上田。公開リハーサルを見ているような3人の自然体の“ワチャワチャ”感がむしろ新鮮。

クールでかっこいいイメージが強い亀梨だが、ライブのMCではグループ最年少の自由な末っ子キャラを表に出す。いつものように下ネタに走り、ふと両親が見に来ていることを思いだし「お父さん、お母さん、こんな子に育ってごめんなさい」と謝るシーンも。脱線したら止まらない亀梨を、セーブさせたり注意するのはいつも中丸の役目だが、「あと4回、KAT-TUNでいさせてくれよ。自由にできる場所はここだけなんだからさ」という亀梨の言葉に胸がしめつけられる気持になったファンは少なくないだろう。

■ソロで歌ってもKAT-TUNはKAT-TUN

KAT-TUNのライブの目玉でもある各メンバーのソロ。今回は楽しく10年をお祝いするコンセプトから新たなソロの披露はないが、過去の楽曲から一人1曲を歌うコーナーがあった。

亀梨は、中丸クリニックの流れから黒マント、ドラキュラ姿で主演ドラマ『ヤマトナデシコ七変化(TBS系)』の主題歌『Love yourself〜君が嫌いな君が好き〜』を歌った。『ヤマトナデシコ七変化』のヒロイン、スナコのドクロマークが入った穴開きサングラスをかけて歌い、歌い終わった後にサングラスを外して自分のうちわを見て「ま、ま、まぶしーい」と叫ぶ。ドラマのパロディで会場は十分うけていたが、本人は「これ、ぜってーつまんないよ」と照れた感じで言ってはけた。

続いて、バイクのエンジンをふかす音が聞こえる。上田が三輪自動車に乗って外周を走りながら『CHANGE UR WORLD』を歌う。2008年の『QUEEN OF PIRATES』の田中聖のソロコーナーの登場シーンがよみがえったファンもいただろう。上田は客席に銃を撃ったり、手榴弾を投げつけたりしてヤンキー全開で走行するが、怖がるどころか喜ぶのがハイフンだ。

中丸は『STAR RIDER』を、珍しくサングラスをかけて、レーザーを手に光の線を芸術的に操りながら、エンティナーぶりを披露した。ステージに近い席より遠い席ほど楽しめる美しい演出。KAT-TUNのメンバーがムービングステージで横一列に並んで踊り歌った『STAR RIDER』も圧巻だったが、一人でもこれだけのクオリティが出せる。

6人でも3人でもKAT-TUN はKAT-TUN であるように、KAT-TUNの歌を一人でもKAT-TUNらしい世界観をつくれるのだとあらためて思わせるソロだった。

■未来を期待させる3人のハーモニー

炎、水、爆音、スモークなど、特殊効果や演出がスゴイといわれるKAT-TUNのライブ。今回は特殊効果がやや控えめだが、人気曲の『RAY』、そして2016年リリースの『TRAGEDY』『UNLOCK』は、炎に花火、爆音の特殊効果を駆使した豪華な演出に注目。カッコいいドラマティックなKAT-TUNを存分に堪能できる曲だ。また、『In Fact』のレーザーとダンスの融合も非現実的で個人的に好きだ。「KAT-TUNのライブでは一度は天井席に入りたい」という人がいるのは、こういう演出があるからだと思う。

また、昔の歌をアレンジした曲で、大人になったKAT-TUNを感じさせるのが『MOON』だ。和柄の布を巻き付けたマイクを着物姿の女性に見立てるように触れながら歌う、セクシーな演出。亀梨はマイクを優しく抱く感じで、上田はマイクのスタンド部分を外して担ぎ、中丸はマイクと一定の距離を保ち、それぞれのマイクの扱い方に個性が表れているのも面白い。

KAT-TUNが詞を書いた『Will Be All Right』も聞きどころのひとつだ。アカペラで始まり3人のハモリで始まり終わる。そのハーモニーの美しさに会場から自然と歓声があがった。

同じく、全く当時と生まれ変わった楽曲が『PRECIOUS ONE』だ。デビュー記念ライブ『Live of KAT-TUN“Real Face”』で、中丸、田口がようやくデビューできた感激で涙しながら歌った、ハイフンにとって想い出深い曲。『UNLOCK』の豪華な演出の後、会場が暗くなり、下から白いグランドピアノが現れた。ピアノに座り『PRECIOUS ONE』のイントロを弾く上田の美しさは二次元だ。そのピアノに合わせて丁寧にHHBをする中丸、そして亀梨がソロで歌いあげる新しいカタチ。それぞれの魅力が際だつ、息のあったセッションが贅沢なぐらい美しくて、こんな時期だからこそ悲しくもあり、会場はシーンと静まり返り聴き惚れた。2コーラス目は3人で歌う。

バラードの生歌には人間が出るという。メンバーの要望でスガシカオが作詞・作曲した新曲『君のユメ ぼくのユメ』にも言えるが、彼らの生歌には、傷つき苦難と真っすぐに向き合うことで培ってきた人間的な魅力、たくましい成長と変わらないピュアな気持ちをもつ彼らの背後におぼろげながら未来の足音を感じることができた。

ワンテイクという『ザ少年倶楽部プレミアム』のプレミアムショーの経験も大きいのかもしれない。『ミュージックステーション3時間スペシャル』など、テレビの生番組では生の脱退発表、4人最後の出演というシチュエーションなどで、音程が安定しなかったり、いつも通りのパフォーマンスが出来なかったこともあったが、安定した力強い歌声を聞かせてくれた。

■本音を真っすぐに伝える挨拶に涙あふれる

アンコール後の『君のユメ ぼくのユメ』の後、3人はメンバーとハイフンだけの安心できる場所だからこその本音を伝えてくれた。そのままではないが、一部を紹介する。

上田・挨拶「10年間、いろいろあって途中で船を下りてしまった人もいると思います。でも10周年のライブにこんなにも沢山の人たちが集まって応援してくれることが僕たちにとってとても励みになり勇気になります。5月1日で充電期間に入りますが、亀梨君が何かに出ている時は、僕のファンも中丸君のファンも応援してください、それぞれもそうです。一緒に戦ってください。そうすることがKAT-TUNという船が動き出す第一歩になると思うのでみなさんよろしくお願いします。(ライブの最初に『出航だ!』と叫んだことにからませて)充電期間が終わってライブをする時には、また『出航だ!』と言わせてください」。思えば初期の頃は上手に挨拶ができなかった上田だが、ドラマ『ランナウェイ〜愛する君のために(TBS系)』のあとぐらいからだろうか。ライブの最後の挨拶は、その場で感じたことをありきたりではない自分の言葉で伝えてくれるようになった。飾らない素直な気持ち、ファンへの思いやりが伝わってきて胸をうたれることが多い。そして、いつも「僕たち」という言葉を使うのも、KAT-TUNへの思いの現れだ。「一緒に戦ってください」という部分から、KAT-TUNを守るには、応援という生易しいものではないと感じさせられた。未来を阻む敵、例えば焦り、妬み、落胆、諦めといった、いろいろな負の気持ちを含む現状との戦いを意味するのだと思う。ハイフンはメンバーが減るたびに絆を深めてきた。個人担からKAT-TUNが提示・表現する世界観、歌の世界そのものを支持する人が増えてきた。「亀梨君が何かに出ている時は、僕のファンも中丸君のファンも応援してください」という言葉も、他ならぬメンバーから言われて、あらためて現状を認識し心をひとつにできたのではないだろうか。

亀梨・挨拶「KAT-TUNはひとつ自分がひとつ貫いてきた形です。11年目に向かうに当たって決断をしましたが(充電期間に入ること)、いろいろな意見が出るとは思うけれど、今日こうして一緒に過ごしてくれたハイフン、今日来れなかったハイフンも、普段から応援してくれる人たちは広い心で理解してほしいと思います。いろいろ散々な思いをさせてきているけど、一つ先に向かうための決断なので理解してくれるとうれしいです。今、この場に立てていることに感謝しています。さらに今以上に個々の活動を意識し、その先に素敵な笑顔、素敵な景色を見ることができたらいいなと思います。充電期間でも休んでいる暇はないと思ってください。KAT-TUNというグループを共に守り、進んできてくれてありがとうございます。これからもついてきてくれたらうれしいです」。テレビなど公の場ではKAT-TUNの顔、代表として何かあった時には真っ先にコメントを求められることが多い亀梨。一般には聞き上手で話し上手、冷静で落ち着いて対処する大人なイメージがあるかもしれないが、珍しく言葉が進まず、同じことを繰り返したり考えながらのたどたどしい挨拶だった。KAT-TUN、ライブは亀梨にとって素の自分でいられる“ホーム”なのだろう。アウエーではKAT-TUNを背負い引っ張る大人の亀梨だが、年上の中丸、上田のお兄ちゃんたちに挟まれ、安心して弱さを見せているようにも感じた。また、「理解してほしい」という言葉は家族や親しい友人に対して言っているようで、ファンを近しい存在として信頼していることがうかがえた。亀梨の「自分がひとつ貫いてきた形」であるKAT-TUNだからこそ、守りたいと思うハイフンは多いだろう。

中丸・挨拶「久しぶりのコンサートをするにあたって、この前ベストアルバムのDVDを見ました。昔の映像を見て、これまでメンバーが脱退したこととしっかり正面から向き合っていなかったことに気づきました。人数が減っていくことが何度もあったことは残念ですが、見てみるとメンバーが変わっていくたびにどうにか必死になって気合いを入れてやってきて、どうにかカタチになっていったのかなと。逆境に強いグループとも言えると思います。誰が悪いとかではなく、いったん整理する、清算する時間が必要ではないかと思いました。ファンの人はいろいろ思いがあるかもしれないですが、全員含めてこれから『KAT-TUNいいグループだな』と思ってもらえるように充電期間を過ごせたら正解なのかなと思います。また、ライブをやりたい気持ちはあるので、そこにむけて。上田くんもおっしゃっていましたが(緊張のせいか敬語だった)、個々の活動を頑張ります。また会いましょう」。「これまでメンバーが脱退したこととしっかり正面から向き合っていなかった」というのはそれだけ必死で前に進んできたということだろう。だから「いったん整理する、清算する時間」が必要だった、という説明は理解しやすい。全体を考えて誰も傷つけず誰にも誤解を生まないように話す中丸のコメント力は『シューイチ(日テレ系)』での経験もあるが、生まれもった性格によるものが大きいのだと思う。デビューから常にメンバーの真ん中で調整役となりバランスをとってきた繊細さの半面、揺るぎない強さの持ち主でもある。「誰が悪いとかではなく」という、中丸らしい気遣い。いつもと同じ落ち着いた調子で「メンバーが変わっていくたびに必死になって気合いを入れてやってきて、逆境に強いグループ」という言葉で、ファンに安心感を与えてくれた。

これまでも、今もKAT-TUNを大切にしている彼らの思いが伝わる挨拶。そして、笑いも感動も感謝も、成長したたくましさもカッコ良さもいっぱいつまったライブは、京セラドーム1回と東京ドーム3回の後グループとしての充電期間に入る。アイドルというには、表面を取り繕うことをしない、あまりに正直で真っすぐなメンバーたち。そして唯一無二の個性をもつ、ライブで本領を発揮するグループ。KAT-TUNという船をいったん休ませ、メンテナンスをして、もっと大きな海を渡るためのエンジンや装置を備えて出航できる日が一日も早く来ることを願いたい。

■ナゴヤドーム セットリスト

●GOLD
●Real Face
●BIRTH
●THE D-MOTION
●ONE DROP
●WHITE
(ひと言挨拶)
●PERFECT
●春夏秋冬
〜VTR〜
●DON’T U EVER STOP
●MOON
●In Fact
●NEVER AGAIN
●僕らの街で
●KISS KISS KISS
●Will Be All Right
〜MC〜カトゥネット高丸(VTR)〜
〔2006-2009〕
●ハルカナ約束
●RESCUE
●LIPS
●YOU
●White X'mas
〜HBB(中丸)〜中丸クリニック(&亀梨ドラキュラ)〜
〔2010-2012〕
●Love yourself〜君が嫌いな君が好き〜(亀梨)
●CHANGE UR WORLD(上田)
●STAR RIDER(中丸)
●Going!
●不滅のスクラム
●RUN FOR YOU
●TEN-"G"
〜ポスター抽選会、アラーム音公開収録〜
〔2013-2015〕
●RAY
●Dead or Alive
●BOUNCE GIRL
●4U
〜VTR〜
●TRAGEDY
●UNLOCK
●PRECIOUS ONE
〜挨拶(中丸)〜

アンコール
●GREATEST JOURNEY
●喜びの歌
●Keep the faith
●Peacefuldays
●君のユメ ぼくのユメ
〜挨拶(3人)〜エンドロール〜

Wアンコール
●BRAND NEW STAGE

※セットリストは変更になる場合があります。※ライブレポート、セットリストについては、多少の記憶違いがあるかもしれません。コメント欄などでハイフンさんにフォローしていただけると幸いです。
(ライター:佐藤ジェニー)


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